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週刊東洋経済「この経済本がすごい!-年末・年始にぜひ読みたい2007年決定版-経済・経営書ベスト100」
2007年12月29日号, 週刊東洋経済, 172~191ページ

【7位】

拡大するユーロ経済圏―その強さとひずみを検証する
拡大するユーロ経済圏―その強さとひずみを検証する田中 素香

日本経済新聞出版社 2007-04
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躍進するユーロ経済 そのダイナミズムに迫る

●加盟国が中東欧にも広がり、現在27カ国にまで達したEU(欧州連合)。実現を危ぶむ声も強かった通貨ユーロも、域内流通だけでなく、代替的な準備通貨としての地位を高めている。

著者は中東欧諸国のEU加盟プロセスを歴史的にも経済的にも分断されてきた「ヨーロッパの再統一」と位置づけ、こうした欧州統合の背景にある現実と理念を明快に論じている。(竹井 豊)

●堅調な推移を見せているユーロ経済圏は、市場から信頼感を取り戻している。紆余曲折や、いくつかのハードルを越えながらの、これまでの試練の成果により、最近のユーロ経済圏の拡大と深化が実現されつつある。

現在、ユーロ経済圏は西欧先進国に加え、中東欧の新興国も含んだものになっており、経済統合、通貨統合、歴史などの状況については、直ちには把握しにくい。

本書はユーロ経済圏について理解されるべき諸分野が網羅されている。全体の分量はさほど多くはないが、各分野の記述は詳細である。ユーロ経済圏の理解に最適な一冊である。(米山章吾)

●サブプライムローン問題というつまずきによるドル離れ、米国経済の陰りで、ユーロとユーロ経済圏の相対的な地位が高まっている。地域統合、通貨統合を進めるユーロ経済圏の強さとひずみの双方を見据えたうえで、ヨーロッパのリージョナリズム(地域主義)には未来があると結論づける本書は、まさにタイムリーな一冊である。(伊藤さゆり)

●最近のユーロ高が示すように、拡大を続ける欧州経済への期待が強まっている。

しかし、特にEUの東欧への拡大を経済の観点から描いた書籍は少ないとみられる。したがって、タイムリーかつ今後の欧州経済を占ううえで手放せない好著といえる。(佐野一彦)


【8位】

円の足枷―日本経済「完全復活」への道筋
円の足枷―日本経済「完全復活」への道筋安達 誠司

東洋経済新報社 2007-02
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おすすめ平均 star
star処方箋書いてあるじゃん
star日本経済をすっきりとさせない「強い円」へのこだわり

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日本経済が陥った「通貨政策」のわな

●2007年もやはり日本経済のデフレからの脱却はならなかった。

よく、デフレ(物価下落)にもかかわわらず景気回復が達成されたのだから、デフレを重視する議論は間違っているということがいわれる。

しかし、これは奇妙ではないか。景気回復について、「実感のなさ」が語られている。実際、現状の景気回復の勢いは極めて弱い。デフレ(物価下落)の下では実感がないのは当然で、名目値が上がらないかぎり、企業収益が増えても賃金は増えないという構図が続く。それにもかかわらず、景気回復の過程でデフレの度合は小さくなっていた。デフレ率が減少する中で失業率が改善するという、フィリップス曲線にわれわれははまり込んだままである。

そして、近年の景気への先行き不安は、サブプライム危機以上に、日本経済の回復の弱さによっている。

こうした中で日銀は利上げ、財務省は増税のタイミングをうかがっている。本書はこの状況を見通していたともいえる。金融市場の国際連関をふまえながら、依然としてデフレを軽視する経済論壇に警鐘を鳴らす本書の意義は大きい。(若田部昌澄)

●「新ブレトンウッズ体制」というべきアメリカとその他の先進国・新興市場諸国との金融的な関連を実証的・理論的に鋭利に分析することに成功している。本書を読む者は、サブプライム危機で不安定な世界経済の先に何が待っているかを知ることができるだろう。(田中秀臣)

●景気拡大、資産価格上昇にもかかわらずデフレ脱却が確信できない。この原因を円高観測として歴史的背景を明確に解説、デフレが完全に終わるための条件までも提示している。著者は実務家であるが、その実務家としての立場からの提言として大いに注目されるところだが、理論の背後には実務家ならではのデータの裏付けなどが背後にあり、理論に説得力がある。(吉野貴晶)


【9位】

株式会社はどこへ行くのか
株式会社はどこへ行くのか上村 達男 金児 昭

日本経済新聞出版社 2007-08
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おすすめ平均 star
star読み物として
star「法学者」と「会計実務家」の放談 -少しアンフェア?
star道学者の書き物

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必要不可欠だが、凶器にもなる存在

●今や経営者も社員も社会の人々も、「株式会社がどこへ行くのか」という問題について一様に漠然とした不安を持っている。欧米の市民社会の歴史の中で育ち、個人を中心とした市民社会によってコントロールされて来た状況と違い、外形だけを取り入れた日本の新会社法下の株式会社は、この先人々の幸せに役立つのだろうか。

表層的なステークホルダー論や株主主権的に陥らず、株式会社制度が社会の中で健全に育つために二人の著者が交わした議論は具体的でとても理解しやすい。(福原義春)

●株式会社はさまざまな商品を生産し、雇用機会を提供し、多額の納税を行うなど国家や個人を支える金の卵である。しかし時には巨大な凶器となって人々に襲いかかる存在でもある。

こうした株式会社を語る際には多面的・複合的な視点が不可欠だが、現状は「株主価値の最大化」といった一面的で底の浅い議論が横行し、そこで思考停止に陥っている感がある。本書は、欧米では株式会社や証券市場をめぐる議論には、自立した市民の尊厳をいかに守るかという思想が根底にあることを指摘し、「株式会社を語ることは市民社会を語ること」との立場から株式会社、市場、会社法のあり方を考察する。市場や企業のあり方に関する知的格闘の端緒となる書。(金木利公)

●株主全員が有限責任である、というのが株式会社の原理であり、その利便性のために世界に普及するようになったのだが、それは同時に非倫理性という側面を持っている。それを放置しておけば株式会社は暴走するが、その暴走が起こっているのが現在の米国であり、日本である。

06年の日本の会社法改正は、この株式会社の暴走を是認したものだというのが著者の見解だ。法律関係者だけでなく、株式会社に関心を持っている人すべてに薦める。(奥村 宏)


【10位】

経済財政戦記―官邸主導小泉から安倍へ
経済財政戦記―官邸主導小泉から安倍へ清水 真人

日本経済新聞出版社 2007-06
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おすすめ平均 star
star終焉
star2007年最高のノンフィクション!
starなるほど、そうだったのかい!

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成長路線か、増税路線か。息詰まる政治闘争

●「与謝野の方程式」をめぐる「上げ潮派」と「財政タカ派」の攻防の記録。経済政策のテクニカルな論点をめぐる政策論争と、ポスト小泉をにらんだ政局の主導権争いが交錯し、「政策闘争」が展開されていく過程が詳細に描かれている。

郵政解散を経て、政策決定プロセスが官邸vs.抵抗勢力という「対決型」から、政府・与党一体の「協調型」に移行していく中にあって、経済財政運営をめぐる政治力学が微妙に変化し、それとともに経済財政諮問会議の位置づけも変わらざるをえなかったことが明確に示されている。

「上げ潮派」の退潮と「財政タカ派」の復権によって、永田町の景色は様変わりした感があるが、「霞が関埋蔵金」をめぐる最近の論争からもわかるように、両者の論争は経済財政運営の方向性をめぐる対立の基本的な構図であり続ける。福田内閣の政策運営がどう展開されていくかを考えるうえでも必読の書。(中里 透)

●著者の前作『官邸主導』にもいえるが、一国の経済財政政策を担う政治家同士の緊迫したやり取りを、まるでその場に居合わせたように生き生きと語る取材力にはいつも感心させられる。

06年以降の小泉政権の末期には、経済財政諮問会議の勢いが落ちたといわれるが、「これは諮問会議と党政調会を車の両輪とし、政府と与党の双方に首相のリーダーシップを貫徹、一元的に統制する、官邸主導の政策決定メカニズムの『ニュー小泉モデル』である」という解説はなるほど思わせる。量的緩和解除前後の日銀と政府の緊迫したやり取りも興味深い。日銀の金融政策が政治的圧力と無縁ではいられないということがよくわかる。(小玉祐一)

●骨太方針2006をめぐる経済財政諮問会議を舞台にした政策論争の舞台裏を余すところなく再現しているドキュメント。おそらく当事者も、この書物で当時の全体像を理解できるのではないか。(米山秀隆)


【10位】

構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌
構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌竹中 平蔵

日本経済新聞社 2006-12-21
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おすすめ平均 star
starハラハラ、ドキドキ
star今、そこにある危機
star詭弁にしかすぎない

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政策運営の舞台裏を赤裸々に描く

●小泉首相の信念に、竹中大臣の優れた政策推進能力が組み合わさることで、改革を推し進めることができたのだと実感させられる。「戦略は細部に宿る」と述べているように、優れた戦略論の書物でもある。

ただ、竹中的戦略論は、世論の後押しを受けつつ、抵抗勢力を敵に見立てる構図の下で、効果を発揮できた性質のものである。政治状況が大きく変わった現在では、諮問会議主導ではなく、与野党の政治家が正面から政策立案を競い合っている。

政策立案モデルは変わっても、それを外部からチェックする政策専門家の役割が今後高まっていくのは、竹中氏が指摘したとおりである。(米山秀隆)

●小泉政権の名参謀として経済政策を指揮した竹中平蔵元大臣の貴重な回顧録。「政治プロセスを経ない経済政策などありえない」との認識の下、小泉・竹中モデルともいうべき政策プロセスを構築した過程と成果を生き生きと振り返る。

その内容は、当事者にしか語りえない臨場感にあふれ、読み始めたら最後、一気に読み終わるまで読み手を引き付けて離さない。とりわけ、不可能と思われていた郵政民営化が、与党の厳しい反対に遭いながらも、最終的には衆院選の大勝を経て実現に向かう過程の筆致は生き生きとして雄渾を極める。(小玉祐一)

●小泉改革をめぐる「ゲリラ部隊」(竹中チーム)と「正規軍」(官僚機構)の、5年半にわたる攻防の記録。本書を読むと、霞が関と永田町に抗して改革を進めていくことがいかに大変なことかがわかり、金融再生と郵政民営化を実現できたのがほとんど奇跡のように思えてくる。

構造改革をめぐる最近の情勢はどことなく「逆コース」との感があるが、今後の政策運営のあり方を考えるうえでも示唆に富む。「戦略は細部に宿る」「政策は難しい」という言葉が印象的である。(中里 透)


【10位】

「健全な市場社会」への戦略―カナダ型を目指して
「健全な市場社会」への戦略―カナダ型を目指して八代 尚宏

東洋経済新報社 2006-12
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おすすめ平均 star
star読み物としてはgood、政策提言の書としては大きな課題
star幅広い分野を扱う自由な経済への指針

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日本が目指すべきはカナダ型社会だ

●労働、社会保障、教育、農政、地方分権など広範な分野にわたって市場を活用した制度改革を提案する。しかし、市場経済原理主義を強調するものではなく、個人にとって人生のさまざまなステージにおいて選択の自由が拡大することを強調する。処方箋の一部にはやや強引な感もあるが、本書が既得権益擁護をもくろむ勢力への防波堤となることを望みたい。(金木利公)

●格差拡大などに悩む現状にあえて範を求めるとすれば、著者が主張するように、市場経済と効率的な社会保障をうまく組み合わせたカナダ型社会だろう。(櫨 浩一)

●年金制度改革や医療制度改革、規制改革など各分野の構造改革における課題と方向性が提示されており、論点の整理に役立つ。(北田英治)


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