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週刊東洋経済「この経済本がすごい!-年末・年始にぜひ読みたい2007年決定版-経済・経営書ベスト100」
2007年12月29日号, 週刊東洋経済, 172~191ページ

【4位】

1997年――世界を変えた金融危機 (朝日新書 74)
1997年――世界を変えた金融危機 (朝日新書 74)竹森 俊平

朝日新聞社 2007-10-12
売り上げランキング : 11957

おすすめ平均 star
star1997年の金融危機についてわかりやすく解説している一冊。
star不確実性への対応
star必読。ただし、危機は常に予想もしない形でやって来る。

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アジア通貨危機が米国のバブルを生んだ

竹森俊平(たけもり・しゅんぺい)/慶應義塾大学経済学部教授。1956年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。著書に『経済論戦は蘇る』(第4回読売・吉野作造賞)、『世界デフレは三度来る』など。

今日の深刻化する米国サブプライム危機の起源が、1997年のアジア通貨危機にあると指摘しています。

10年前の97年は世界経済にとって非常に重要な年でした。中でもアジア通貨危機は大きなインパクトがありました。世界の成長セクターであるアジアで通貨危機が起こり、それを最後のドルの貸し手である国際通貨基金(IMF)が流動性を供給して救済することをしなかったため、アジア諸国は、その苦い教訓から資金の借り手であることをやめて、かつての日本のように自己の貯蓄の範囲で投資をするようになり、さらには逆に貯蓄を海外に出すことになりました。そのことが、世界的な過剰貯蓄を生み出します。それが米国に集まり、ITバブルを起こすことになります。

ITバブルが2001年ころに崩壊すると、世界的な過剰貯蓄の受け皿がなくなり、デフレを伴う深刻な不況が襲う危険が生まれました。

これに対応するためには、ITバブルに代わる投資対象を発見し、それを金融緩和で刺激するしかない。グリーンスパン前FRB議長が強力な金利引き下げを行ったとき、それに敏感に反応した投資対象が何かといえば米国の不動産でした。

その後、新興国を含めたおカネが米国に流れ、長期金利を下げる段階で不動産投資は一層刺激される。その傾向はしばらく続き、04年に連銀が金融引き締めに転じてからも長期金利がしばらく上昇しなかった事態を指して、グリーンスパン前議長は「謎(コナンドラム)」と呼んだ。

米国の住宅バブルが進行すると、ホームエクイティが増え、米国の個人消費が伸びる。米国の個人消費は世界のGDPの20%を占めているので、世界経済も拡大します。

ところが、その後、長期金利にようやく金融引き締めの効果が表れだし、住宅バブルが崩壊します。07年のサブプライムローンの不払いの増加の原因はこれです。サブプライムの中でも、不払いは金融政策の転換を受けて金利がハネ上がった変動金利ものに集中している。この結果、世界経済は97年より深刻な金融危機に直面しつつあります。

サブプライムローンは通常のプライムローンとは異なり、与信の審査さえ十分にはしていません。プライムローンの個別リスクは与信審査でチェックされ、危ないものは落とされているので、プライムローンの危険とは、景気循環によるシステマチックなリスクです。ところが、与信審査が不十分なサブプライムでは個別リスクがこれに混合している。しかもサブプライムのデータは少ないので統計的にもリスクが満足に計れない。なにしろサブプライムローンの残高は93年にはほぼゼロで、03年でもまだ7~8%程度。それが急成長して20%にまで増えた。過去のデータは不十分です。シカゴ学派の経済学者ナイトが指摘した計測できない危険、「不確実性」がその結果、サブプライムのローンには混入します。しかも、そのような「不確実性」が証券化によって全世界の投資家にばらまかれていた。

投資家にひとたび「不確実性」の危険が認識されると、「質への逃避」が起こる。国債のような安全で流動的な資産か、現金、預金かに資産のシフトが起こるわけです。だから「流動性への逃避」といってもよい。そのため信用収縮が起こり、ひどい場合にはデフレになります。

――「質への逃避」は、97年の東南アジアや日本の金融危機で経験済みですね。

97年に日本でも北海道拓殖銀行、三洋証券が破綻して金融危機が始まります。97年には初めてインターバンクの市場の無担保コールローンの債務不履行が起こり、現金以外のものは信用できないという心理が広がり、信用収縮が加速しました。

北拓は債務超過ではなかったと思いますが、インターバンク市場での資金調達ができなくなった。これを日銀も見捨てた。日銀は「最後の貸し手」という中央銀行本来の役割さえ果たせなかったのです。

サブプライム問題では、主要国中央銀行は相当な無理をしてでも、金融システムへの打撃につながる銀行の経営破綻を避けようとしている。なぜ、あのとき、日銀にそうした踏み込んだ行動が取れなかったのか。

サブプライムも当初はまさに「流動性の危機」を思わせたのですが、07年7月に発生してから5カ月経っても沈静化しないのは、この問題が単なる「流動性の危機」ではないからだという見方が最近は強くなりつつあります。こんなに危険な「不確実性」を世界中にばらまいた現代の英米の金融業界のあり方そのものへの不信が、問題の根本にある。 サブプライム危機を生んだグリーンスパンの金融政策

――もし、グリーンスパンが97年の金融危機後、金利を下げなかったら、世界的な不況が起きていたという指摘ですね。

アジア通貨危機後、アジア各国が取った慎重な行動は、この地域での危機の再発を防ぐことには有効だった。一方で、ほかの地域に危機の種を移植することになったのは皮肉です。世界的な貯蓄過剰傾向が生まれ、不況圧力が高まったところに、折あしく米国でITバブルが崩壊する。世界景気が総崩れする危機に、連銀は住宅バブルまで起こして、金融緩和で世界景気を立て直したのです。そこまではよかった。ところが今度は、住宅バブルがサブプライムの膨張を生んで、その変調で世界的な規模の金融危機が進行中です。当然、01年からのグリーンスパンの金融政策が正しかったのか議論が起こる。

――これからの世界経済は……。

サブプライムの実体経済への影響が顕在化するのはこれからです。米国の住宅投資と住宅価格が下がり、それが消費の下落を招くという展開が予想されます。もちろん金融システムも打撃を受ける。サブプライム関連の損失が信用収縮につながり、住宅価格の下落、消費の減退を生むスパイラルも懸念されます。

――これを防ぐにはさらなる金融緩和しかない……。

金融緩和は必要です。問題は資源価格が上がり、生産性が低下しているのでインフレ懸念があることです。通貨の信用喪失のシグナルはインフレです。米国の金融緩和がドルに対する信用喪失を招くことにもなりかねない。それゆえ金融緩和にも限度があるかもしれない。これからの金融政策は非常に困難です。

ベスト100アンケート回答者のコメント

●1997年のアジア通貨危機を中心にして、「ナイトの不確実性」という新しい角度から金融危機を見たもの。リスクを完全にヘッジしたように見えた金融技術が、逆に確率を計算できない不確実性を生み出している。今回のサブプライムローン問題でも、10年前と同じ「流動性への逃避」が起きている。(池田信夫)

●「ナイトの不確実性」をテーマに据え、これがいかに金融危機を増幅させるかを極めて平易に説明している。97年の金融危機にとどまらず、住専問題から直近のサブプライム問題に至るまで、その危機発生の経路を分析している。数式をまったく使わず、リスクと不確実性の比較を実験等も使って説明し、これを過去の事例に当てはめている。極めてわかりやすく、内容も変化に富んだ良書である。(大槻奈那)

●著者は97年を一見正常な経済の背後に潜む危険が明らかになった年と位置づけるが、2007年もリスクが顕在化した年として記憶されることは間違いない。(奥田壮一)

●ITバブル崩壊後の景気後退からの脱出策として功あった金融緩和策のツケが、サブプライムローン問題として表面化してきており、その広がりはまさにリスクを計れない不確実性の世界にある。歴史的な視点に立脚しつつ、経済理論的な解説を交えながらダイナミックに自説を展開していく筆致は圧巻。(門多 治)

●歴史から学ぶ場合、ある問題をさまざまなスケールで切り取ってみることが非常に重要である。またリスクに関する経済学史上の知られざる(忘れられた)重要なエピソードも浮かび上がらせており読者を知的興奮に誘ってくれる。(中村宗悦)


【4位】

資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略
資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略野口 悠紀雄

ダイヤモンド社 2007-06-01
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没落する日本、経済構造を変えるしかない

●常識に疑いを持ち、本質を見抜く著者の姿勢が遺憾なく発揮されている。評者も、2000年に「金融開国」という書を著した。主張は野口氏と共通する部分も多い。それから7年が経ったが、いまだに同じような「開国論」を唱えねばならないのはなぜか。国際化は、規制緩和だけでは測れないことの証左であろう。(益田安良)

●私は野口ファンで日本経済に関する政策提言では氏を最も高く評価してきた。そしていつも私が直感的に考えていた事柄を氏の書は論理的に正しいことを裏付けてくれてきた。

日本は今大きな岐路にある。1人当たりGDPは93年の世界第1位からもう16位になり、もはや世界の中で豊かな国ではないともいえる。産業構造を脱工業化社会のものへと転換していかなければ、日本の将来は暗いものとなろう。著者はさまざまな経済理論をわかり易く説明しながら、統計データを駆使し、日本の現状を冷徹に分析し、進むべき道を提言している。(北尾吉孝)

●日本経済の構造問題がどこにあるのかをわからせてくれる良書。冷静沈着な分析力で日本経済を一刀両断している。世界第2位の経済大国と思っているが、1人当たりGDPではアイルランドやイギリスに追い抜かれている。日本の産業構造の転換が遅れていることが原因だと指摘されているが、まさにそのとおりだと言わざるをえない。(中野雅至)

●成長率が落ちた日本経済を活性化するには、資本市場を開放して、外資による買収などの対内直接投資で古い産業構造を変えるべきだとする。経済学者にとっては常識的な議論だが、財界が「三角合併」に反対するなど、開国への道のりは遠い。(池田信夫)

●製造業依存からの脱却、外資導入が必要という著者の結論に異を唱える向きもいるだろう。しかし、現在の日本経済の問題点を的確にとらえ、進むべき方向性を明確に示している。内容も平易である。(佐野一彦)


【6位】

超長期予測老いるアジア―変貌する世界人口・経済地図
超長期予測老いるアジア―変貌する世界人口・経済地図小峰 隆夫 日本経済研究センター

日本経済新聞出版社 2007-10
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starアジアに長期投資する人が知っておくべきこと

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東アジアが成長センターでなくなる日がやがて来る

●日経センターが07年3月に発表した長期予測がベースになっている。2050年までの世界経済の長期予測を、人口・アジアを軸に展開したもの。人口構成が成長にプラスに働く「人口ボーナス」と、逆に働く「人口オーナス」という概念を分析に使っている。アジアが世界の成長センターになったのは、「人口ボーナス」がもたらしたもので、「人口ボーナス」の時代がまもなく終わりを告げるという。(宅森昭吉)

●今後、アジア諸国が順次、人口に占める勤労者層の割合が低下して経済が停滞しやすくなる「人口オーナス」の時代へと移行していくことが、本書の分析のカギとなる。「気を引き締めて政策対応を行わないと、人口の激変がアジアの時代を終わらせるだろう」との警告が杞憂に終わることを祈りたい。(嶋中雄二)

●少子高齢化に関する書物にはやや食傷ぎみの感があるが、本書は日本の将来と密接な関係を持つアジアの人口問題に焦点を当てた実に興味深い分析を提示している。従来抱いていた次のような常識を覆されてショックを受ける人もいるだろう。〔1〕日本は少子高齢化の影響を最も強く受ける、〔2〕アジアは世界の成長センターだ、〔3〕日本は世界第2の経済大国だ。「アジアの世紀」と呼ばれる21世紀が、実は「アジアの危機」であることが具体的な数値を掲げて示されている。われわれは日本の斜陽化を意識するあまり中国の脅威などに神経質になりすぎていたが、ここに示されている将来像を踏まえると、東アジア諸国は一致協力すべきことが理解できる。(西村吉正)

●世界の相当数の国々、特にアジア諸国の多くで、場合によっては、日本以上に急速な勢いで少子高齢化、そして人口減少が進行しそうであり、それによって経済や社会にマイナスの圧力が加わる可能性があると指摘している。(野神隆之)


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