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『この経済本がすごい!! この夏ビジネスマンに薦める必読書
-「人間を知り、動かすために経営者が読む本」-丹羽宇一郎 伊藤忠商事会長』
週刊東洋経済 2006年8月12日・19日合併号 34~35ページ)

伊藤忠の丹羽会長は、社長時代の2001年に経済広報センター主催の優秀経営者賞を日産のゴーン社長とともに受賞した。伊藤忠を蘇生させた丹羽会長は、大の読書家でもある



人間 この未知なるもの
人間 この未知なるものアレキシス カレル Alexis Carrel 渡部 昇一

三笠書房 1992-04
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おすすめ平均 star
star人間を理解するためには部分ではなく全体を捉える
star近年あらためて注目を浴びている話題をすでに指摘
starちょっと危険な本というのが実感

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『人間この未知なるもの』は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した科学者アレキシス・カレルが書いた本です。約70年前の本ですが、人間の肉体と精神について考えさせる力を持って迫ってきます。企業の経営力とは人間を動かす力です。人間を知らずに経営はできない。経営者にぜひ読んでいただきたい。

人間とは不可解な存在であることを知る

この本には、人間とは実に不可解な存在であること、人間の肉体と精神は密接な関係があることなど、興味深い指摘が数多くあります。

「精神は肉体ほど強壮ではない」カレルの言葉です。精神の病の原因は遺伝と環境にある、現代社会に神経症や精神の病が多いのは現代社会の欠点であるとも指摘しています。今の日本でも精神の病からいろいろな事件が起きています。

われわれが公理のように信じている「人間はその能力を開花させて、無限に進歩する」と考える進化論的な世界観や、「人間はみな平等で、弱者や劣った人間には可能なかぎり支援するべきだ」という平等論的な価値観が、カレルが指摘した人間の永久に変わらない生理構造から見て本当に正しいのか、非常に重い提起をしている本です。最近の日本の悲惨な事件を見ると、私はむしろ「人類は退化しているのでないか」と考えてしまうほどです。

新編 東洋的な見方
新編 東洋的な見方鈴木 大拙 上田 閑照

岩波書店 1997-04
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『東洋的な見方』は、禅の思想家である鈴木大拙によって書かれた本です。鈴木は米国に何年も住み、米国を肌で感じた人です。鈴木は日本の禅文化を米国に広めましたが、西洋のキリスト教に基づく一神教的世界観と対峙する東洋的な世界観を提示しています。鈴木は西洋文化と接して、東洋文化を再認識したのです。

西洋は物事を分別していく文化であり、知性は分別することから始まる。主観と客観、物と心、静と動などです。一方で東洋の思想は分別する前に、その幹にあるもの、さらにはその根にある無分別を見ていく。たとえば、「般若心経」にある「色即是空」「空即是色」という一見理屈が通らない世界観ですが、そこに無分別の分別があります。物事の幹や根は分別しがたいものであるという主張です。知性以前に「心」で物事を見る、日蓮、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、西郷隆盛などの代表的日本人が持っている思想です。

エセー〈1〉人間とはなにか
エセー〈1〉人間とはなにかモンテーニュ Michel Eyquem De Montaigne 荒木 昭太郎

中央公論新社 2002-09
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エセー〈2〉思考と表現
エセー〈2〉思考と表現モンテーニュ Michel Eyquem De Montaigne 荒木 昭太郎

中央公論新社 2002-10
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エセー〈3〉社会と世界
エセー〈3〉社会と世界モンテーニュ Michel Eyquem de Montaigne 荒木 昭太郎

中央公論新社 2003-03
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教育者にも読んでほしいモンテーニュの『エセー』

『エセー』は、フランスの思想家モンテーニュが1580年に出した本です。著者がギリシャ、ローマ時代の文献を読みこなしていることと、自分を赤裸々に語っていることに感心しました。著者はアリストテレスが弟子のアレクサンドロス(のちの大王)に、三段論法や幾何学など知識の教育をしたが、それよりも勇気、武勇、寛大、節制、自信などを教えることを重視した、と書いています。知識を詰め込むことはある意味たやすいことですが、徳目や倫理を得ることは簡単なことではありません。本来あるべき教育を受けたからこそ、世界史を変えたアレクサンドロス大王のような偉大な人物が生まれたのでしょう。

経営理論 偽りの系譜―マネジメント思想の巨人たちの功罪
経営理論 偽りの系譜―マネジメント思想の巨人たちの功罪ジェームズ フープス James Hoopes 有賀 裕子

東洋経済新報社 2006-02
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おすすめ平均 star
star学説・思想の背景を知るための好著
starあとからでは何とでも批判できる

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社長は神のような存在このことに畏怖せよ

『経営理論 偽りの系譜』も経営者にぜひ読んでいただきたい本です。経営者は自身の体験だけでは自信を得ることはできませんが、経営理論という極めて一般化されたパラダイムがあると、自身の経験に肉付けをすることで普遍化することができます。

しかし、だからといって経営理論だけでは経営はできません。なぜなら人間は、非合理的な判断に基づく行動をとることが多いからです。

この本はテイラーやガント、デミング、ドラッカーなど「経営理論の巨匠」たちの素顔、裏の顔を暴こうとしています。テイラーは狂信者、ガントは単なる技術者、ドラッカーは道徳家であると指摘しています。巨匠たちの素顔を知ると、経営理論が身近に理解できるし、その言葉も冷静に聞かなければならない気になります。

私は企業ほど非民主主義的な組織はないと考えています。なぜなら、有史以来自らを裁く力を持つのはほかならぬ神以外いなかったはず。ところが企業では、社長が自分自身を裁く力を持っています。企業という小さな世界ではありますが、神と同じ力を持っているのです。それゆえに責任のすべてが小さな世界の独裁者たる社長にあるのは当然です。トップは心すべきです。こうした重みも学んでほしいと思います。

恐怖の存在 (上)
恐怖の存在 (上)マイクル・クライトン 酒井 昭伸

早川書房 2005-09-09
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恐怖の存在 (下)
恐怖の存在 (下)マイクル・クライトン 酒井 昭伸

早川書房 2005-09-09
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おすすめ平均 star
star環境問題に新たな視点
starいつものクライトンとは少々異なるものの・・・
star20ページで十分

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環境問題についても冷静に議論を

『恐怖の存在』は『ジュラシック・パーク』などで知られる米国の作家・映画監督マイクル・クライトンの力作です。テーマは環境問題です。話のストーリーは、人為的環境災害を起こそうとする環境テロリストと戦う弁護士たちの物語です。

二酸化炭素(CO2)増大による地球温暖化説は、著者によると、科学的に実証されていない仮説です。しかし、それを真理だと信じて、地球温暖化を阻止することを使命とした、「環境テロ」さえいとわない狂信者が出かねない状況になっています。そうした風潮に対して、著者はミステリー仕立ての小説で、冷静に考えましょうと、提示しています。

歴史を考えなおす
歴史を考えなおすキース ジェンキンズ Keith Jenkins 岡本 充弘

法政大学出版局 2005-09
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starポストモダニズム時代に歴史はいかにして可能か?

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『歴史を考えなおす』はイギリスの歴史学者キース・ジェンキンズが書いた学術的な本ですが、歴史(History)は一つではなく、歴史書はある歴史家の立場から書かれた「ヒズ・ストリー(His Story)」であることを指摘しています。歴史書を読むときは、必ずわれわれが一つの立場を選択していることを忘れてはならないのです。過去と歴史は違う。こう考えると、中国・韓国と日本の歴史認識問題もお互い冷静に考えることができると思います。

サムスンの研究―卓越した競争力の根源を探る
サムスンの研究―卓越した競争力の根源を探る日本に根付くグローバル企業研究会 日経ビズテック

日経BP社 2005-12
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最後は『サムスンの研究』です。幹部と専門家が証言する「サムスン強さの研究」ですが、サムスンがどのように強大になったか、自信を持って書いています。サムスンが女子工員を日本企業に研修で派遣し、日本企業の現場の強さを「盗む」という記述を読んで、日本企業とはつくづく迫力が違うと思いました。日本は企業もスポーツもハングリー精神を失いつつあるように思います。

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