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『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』
週刊東洋経済 2006年8月12日・19日合併号 50~51ページ)
「円の支配者」と「世界の中央銀行」
日銀・FRBを知らずに経済は語れない
選者 専修大学教授 野口旭(のぐち・あさひ)
1958年生まれ。88年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。専修大学経済学部助教授を経て、97年より現職。
金融政策は、経済の成り行きにとてつもなく大きな影響を与える。その一例は、日本の「失われた10年」とアメリカの「すばらしき10年」という、1990年代における日米両国の経済実績の相違である。これは、両国の同時期における中央銀行の金融政策運営の巧拙によって生み出されたといっても過言ではない。だが、金融政策の担い手である中央銀行が、何を目的として何を行っているのかは、必ずしも国民には十分に知られていない。
ところが、日本では、長期にわたるデフレ不況が、日銀の金融政策に対する一般的な関心を高めることに大いに寄与した。日本は、1930年代の大恐慌期以来のデフレの下で、ゼロ金利政策と量的緩和政策という未曾有の政策を実行した。当然ながら、多くの専門家や当事者たちが、それらの政策の検証をさまざまな観点から行っている。
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日銀の金融政策は正しかったのか
『縛られた金融政策』と『ドキュメント・ゼロ金利』は、ゼロ金利政策からその解除と、その後の量的緩和政策の導入に至る速水優前総裁時代の日銀の波乱に満ちた政策決定過程を、ジャーナリストならではの手法で検証したものである。『日銀はこうして金融政策を決めている』は、福井俊彦総裁の就任によって日銀の何が変わったのかを、同様にジャーナリストの観点から検証したものである。
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『強い円 強い経済』『ゼロ金利との闘い』『日銀はだれのものか』は、それらの政策を担った当事者たちの証言である。評者著『エコノミストたちの歪んだ水晶玉』は、この間の金融政策への評価を含む。
これらの中で評者が最も感銘を受けたのは、速水総裁時代に日銀審議委員であった中原伸之氏の回顧録『日銀はだれのものか』である。中原氏は、経済状況の悪化に手をこまねくばかりであった速水日銀にあって、日銀執行部との対立と日銀政策委員会内部での孤立を恐れず、一貫して積極的な政策措置の実行を主張し続けた。本書を読めば、速水時代の日銀が曲がりなりにもゼロ金利政策や量的緩和政策を導入するに至ったのは、ひとえに中原氏の孤軍奮闘によるものであったことがわかる。
また、その中原氏の政策提案が、内外の優れた専門家との交流から生み出されたものであったことも示されている。福井時代へと続く日銀の5年にわたる量的緩和政策によって日本経済がよくやくデフレから脱却しつつあることを思えば、中原氏こそ日本経済回復の最大の功労者であったとさえいえる。
逆に評者が最も不満を感じたのは、中原氏と同時期に日銀審議委員であった植田和男氏の『ゼロ金利との闘い』である。植田氏の基本的な立場は、日本経済低迷の原因はデフレそのものではなく不良債権による金融システムの毀損であり、したがってゼロ金利政策にせよ量的緩和政策にせよ、その役割は本来的に補完的でしかなかったというものである。これは、より積極的な金融緩和措置の導入に抵抗し続けていた、速水時代の日銀執行部の政策論理そのものである。
評者にとってとりわけ受け入れ難かったのは、「1~2%のデフレのコストはデフレ克服策のコストよりも小さい」(185ページ)という本書の主張である。これは、「インフレ率の1%の変化は2・5~5%のGDPギャップに対応する」(145ページ)という本書のもう一つの言及とは矛盾する。GDPの5%にも及ぶ損失が「小さい」はずはないからである。デフレの弊害をかくも過小評価する植田氏が、政策当局者としてデフレ克服に積極的になれなかったとしても、それは当然である。
しかし、その同じ植田氏が、不良債権問題がほぼ解決されて以降も、日銀は量的緩和解除を慎重に行うべきという、それ自体は適切と思われる提言をしていた理由は、評者には不明である。
同時期の金融政策を対照的な立場から描いたこの二つの書は、金融政策遂行において個人の果たす役割の大きさをあらためて浮かび上がらせている。『ゼロ金利との闘い』は、学者的観点からの日本の金融政策に対する分析としては、評者のように立場の異なる者にとっても明快である。しかし、その筆致は一傍観者のようであり、中原氏に見える実践家としての果断さは少しも見られない。
中央銀行総裁の考え、力量が経済を決める
この傍観者的な印象は、前日銀総裁による『強い円 強い経済』でより一層強まる。読者は、速水氏の「強い円」なる個人的信念が、ニクソンショックなど政策当局者としての、氏自身の苦い経験から発したものであるらしいことを知ることができる。しかし、金融政策の最高責任者としての速水氏が、ゼロ金利とその解除、そして量的緩和へと至る金融政策の歴史的な歩みをどのような考えで主導したのかは、わずか二十数ページの断片的叙述からしか知ることができない。
このように、金融政策の現実は、中央銀行総裁の個人的識見や指導力が大きな役割を果たすことを示している。それは、アメリカにおいてもまた同様である。
| グリーンスパン | |
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実際、90年代におけるアメリカ経済の繁栄は、しばしば米FRB議長アラン・グリーンスパンの巧みな金融政策運営によるものとされてきた。評者も、それは半ば真実であると考える。グリーンスパンについて書かれた本は数多くあるが、その決定版は、「マエストロ」と呼ばれる金融政策職人ぶりを世界最高峰のジャーナリストが巧みに描き出した『グリーンスパン』であろう。
| ベン・バーナンキ 世界経済の新皇帝 | |
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| バーナンキのFRB | |
![]() | 加藤 出 山広 恒夫 ダイヤモンド社 2006-03-03 売り上げランキング : 13870 おすすめ平均 ![]() バーナンキFRB議長を評価するヒントがある 資料本として最適 FRBの政策が分かった気がしました。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
グリーンスパンを引き継いだ新FRB議長ベン・バーナンキについても、すでに何冊かの本が出版されている。その焦点は、学者であったバーナンキの年来の主張であるインフレ目標を、FRBが明確に導入するのか否かである。『ベン・バーナンキ』はインフレ目標を強く肯定する立場から、『バーナンキのFRB』はインフレ目標に対してやや批判的な立場から、バーナンキのこれまでの研究、政策提言、言動等を分析している。FRBがインフレ目標を導入すれば日銀もそれに追随するのはほぼ確実であるから、FRBのこの課題は、同時に日本の課題でもある。











マクロ経済学の超入門編としては良いが。。。
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