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『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』
週刊東洋経済 2006年8月12日・19日合併号 62~63ページ)

沸騰するインド経済の明日
21世紀の経済大国は親日的で多弁なインド

選者 早稲田大学教授 榊原英資(さかきばら・えいすけ)
1941年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院修士課程修了後、大蔵省入省。国際金融局長、財務官を経て現職。



中島岳志著『中村屋のボース』は、2005年に大佛次郎賞を受賞した労作である。今後のインド経済を分析するうえで一見関係のない内容のようだが、日本とインド、アジアの中での日本・インドを考えるための重要な示唆に満ちている。

中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義
中村屋のボース―インド独立運動と近代日本のアジア主義中島 岳志

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イギリスに追われて日本に亡命し、最終的に日英同盟を結んでいた当時の日本政府からも国外追放の命令を受けるが、頭山満などの庇護によって、新宿中村屋にかくまわれる。

日本政府の追及は短期間で終わり、ボースは中村屋の相馬俊子と結婚し、日本に帰化した形で日本からインド独立運動を助ける。

インドの時代 豊かさと苦悩の幕開け
インドの時代 豊かさと苦悩の幕開け中島 岳志

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インドと中国の対日感情はなぜ対照的なのか

1910年代から20年代にかけては、孫文など中国独立を目指す人々が日本に滞在し、日本はアジアにおける反植民地運動の一つの拠点になっていた。戦後の東京裁判史観で戦前のそうした動きが全否定されてしまったが、実は日本アジア主義のプラスの側面もあったということは十分意識されなくてはならない。

現在でもインドの対日感情が一般レベルで大変良好なのは、ラース・ビハリー・ボースやチャンドラ・ボースを通じて日本がインド独立に手を貸したという歴史的事実に起因するところが少なくない。

中国については辛亥革命(1911年)のあたりまでは、日本は独立運動を支援する立場にいるが、21カ条の要求前後から、帝国主義的拡張政策に走り、ついには1937年の「シナ事変」で、中国と戦端を交えるところまでいってしまった。抗日運動を主導した中国共産党と今でも折り合いがつかない遠因は、戦前のアジア主義の日本主義への傾斜と、その失敗にあるといえるだろう。

実はこの7月に来日したインド投資委員会の財界人たちに、この本の話をしたら、ぜひ英訳してインドで出版したらいいと言ってくれた。

特にインド独立運動の中心であった西ベンガル洲(首都はコルカタ)では売れるのではないか、とのことだった。そうなると、ベンガル語がいいのかなという気がしないでもないが……。

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インドを一言で表すと「多弁な社会」になる

『The Argumentative Indian』(AMARTYA SEN)は、英語の著作ではあるが、インドを多少とも理解しようという人にとっては必読の書である。早い時期に翻訳されればそこそこの部数は売れるのではないだろうか。著者はノーベル経済学賞を受賞したアマティア・セン。彼が最近の数年に発表したエッセイをまとめた本である。

The Argumentative Indian
The Argumentative IndianAmartya Sen

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多様かつ複雑なインドを一言で表現することはとてもできないが、一言でどうしても表現するならば、 Argumentattion つまり、多弁、議論好きということになるのだろう。

センによると、国連での長口舌の記録はかつてのインド外務大臣メノンの9時間だという。

また、よく知られるジョークの一つに、国際会議の議長として成功する二つの条件は、インド人を黙らせ、日本人をしゃべらせることだというのがある。

インド人と接触ある人々は彼らの多弁、論争好きについて異論を挟まないだろう。そして、センによれば、この多弁こそインド民主主義の原点であるというのだ。

周知のようにインドは人種的、宗教的、文化的にも極めて多様な国である。公認された国語は英語、ヒンズー語を含めて18。宗教的にもヒンズー教が多数派だが、イスラム教、シーク教、キリスト教、ユダヤ教、ジャイナ教、仏教などが共存している。

最近、ヒンズー原理主義、イスラム原理主義によってテロ事件も発生しているが、歴史的には宗教についての寛容さがインドの文化の特色であった。

巨大な仏教王国をつくった紀元前3世紀のアショカ王も、ムガール帝国全盛期に活躍したアクバル大帝も宗教の統合を説き、異教徒に寛大であった。中東や北アフリカで迫害された異教徒たちもインドに逃れ、平和裡に他の宗教と共存してきた。

一般に宗教と政治を峻別し、宗教についても寛容な政策をとることをSecularism (世俗主義)と呼ぶが、インドの世俗主義とヨーロッパの世俗主義とはかなり異なった性格を持つ。

ヨーロッパの場合、学校へのイスラム教徒のスカーフ着用を禁止するなど、世俗的場面での宗教の持ち込みを制限して、宗教によって差別しないようにするが、インドの場合、これも許容する。

こうした宗教的寛容さを薄める最近のヒンズーナショナリズムの動きにセンは批判的である。

インドの宗教的寛容さ、そして多弁な民主主義の伝統を守りながら、インドが高成長をどう継続していくのか、文化的、宗教的にもインドは新しい局面に入りつつある。

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ヒンドゥー教―インドの聖と俗森本 達雄

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「世界最大の民主主義国」インドへの投資ガイド

インド投資委員会著『インド 世界最大の民主主義国への投資機会』は、インド政府の機関が作成したインドへの投資ガイドブックである。国際協力銀行が翻訳に協力した。

インド投資委員会は首相官邸の要望で財務省が民間人のみでつくった外国直接投資促進のための政府機関。タタ財閥の総師ラタン・タタを委員長とし、ディパック・パレク(HDFC会長)、アショク・ガングリー(ICICI・ワン・リース会長) を委員とする。

本書はインフラ、サービス、製造業などそれぞれの分野の具体的セクターでの投資機会をわかりやすく列挙している。また、外国投資に関する法律やビジネスに関する重要な法律を簡単に説明している。

入門書ではあるが、インド直接投資に関心のある人々にとって極めて有益であろう。

詳しい説明やフォローアップについては、インド投資委員会がさらにアドバイスをする用意があるという。

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star4-5年前に出版していれば好著だったのですが。。。

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