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『テーマで探す現代を読み解く良書・話題本』
週刊東洋経済 2006年8月12日・19日合併号 66~67ページ)

団塊世代におくる定年後海外ロングステイ
定年後の自由な時間 海外で質の高い生活を

選者 旅行作家 千葉千枝子(ちば・ちえこ)
1988年中央大学経済学部卒業、富士銀行入社。シティバンク東京支店、日本交通公社を経て、独立。現在旅行作家。



物価は日本の3分の1、気候が温暖で治安がよく、親日的で医療水準も高い多民族国家マレーシアに、定年後移住する人が近ごろ増えている。年金の範囲内で豊かに暮らせる国だ。

定年後に質の高い生活をマレーシアで実現

「マイセカンドホームプログラム」というビザ制度を利用するのが一般的だが、2006年1月から取得条件が緩和され、滞在許可期間も5年間だったものが、10年間に延長された。

ご褒美人生マレーシア
ご褒美人生マレーシア阪本 恭彦

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『ご褒美人生マレーシア』の著者阪本恭彦氏は、定年後の余命が20年だとすると、毎日が休日なのだから、自由な時間は現役時代の10倍、すなわち自由な人生が200年分あると考え、満足のいく生き方をするためにマレーシアの地を選んだと語る。タイトルにあるように、これまで頑張ってきた自分たちへのご褒美に、質の高い生活を選択したことで夫婦の絆も深まった。

早朝の涼しい時間帯はゴルフをして、そのあとはプールサイドでゆったりくつろぐ。午後は男声合唱団の練習に出掛け、奥様はボランティアや趣味のお稽古。

クアラルンプール日本人会は、ロングステイヤーを積極的に受け入れているので、こうした趣味のサークルにも不自由しない。自炊するより、屋台での外食のほうが安上がりだが、それでもメイドつきの暮らしをしている。家族の一員というより、あくまでも家事のプロと割り切って雇うことが肝要と、雇用の心得も説く。

海外生活をテーマにした書籍が多い中、等身大の著者が実体験に基づく暮らし術を伝授する点で、関心も高い。定年まで勤め上げて以降の、自分らしさを大切にしたライフスタイルに、共感する読者が多い。

本著では、現地老人介護事情や、移住生活の果ての葬儀や墓地にも話が及ぶ。著者は、社会問題となりつつある「年金難民」ではなく、その土地に魅せられ、ほれた結果移り住むことになった理想的なケースで、マレーシアの魅力が伝わる一冊だ。

ハワイガイド本の決定版 ロンリープラネット

ロングステイ先として根強い人気のハワイ。成熟したリゾート地だけに情報量が多く、関連書籍も星の数ほど出版されている。ハワイのリピーターを自認し、ロングステイに対するモチベーションも十分な人なら、携行できる硬派な現地ガイドブックをお探しではあるまいか。

そこでお薦めなのが、『ロンリープラネットの自由旅行ガイド』シリーズだ。豪州に本社を置く世界最大級の旅行系出版社で、600を超える国と地域を網羅。

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原書は英語版だが、仏・伊・西語など15カ国語に翻訳、世界中で愛読される。近年、完全翻訳版が日本にも上陸。従来の抜粋編集ではなく、原書を忠実に再現している点で好感が持てる。

ロンリープラネット社の創業は1973年、トニーとモーリーンというアドベンチャー好きのカップルが世界を旅したおり、陸路の情報を集約した書物がないことに気づき手製したことに始まる。旅行ガイドブックの「元祖」といわれ、信奉者も多い。

日本人がよく行く先ばかりを紹介する和製ガイドブックとは異なり、自由自在に個人旅行ができるよう、情報は微に入り細に入る。

特定の場所や企業を取り上げて報酬を得ることはなく、広告ページがない。著者たってのお薦めプランや情報源を明示する姿勢も、読者の心を引き付ける。歴史や文化、自然環境など読み物的な要素が強く、ロングステイ前の事前準備にもお薦すめだ。

カラーページや写真点数が少ないせいか、若干読みづらさを感じるきらいもあるが、密度の濃い内容にきっと満足することだろう。

「永遠の旅人」パーぺチュアル・トラベラーPerpertual Traveler (以下PT)という言葉が、近ごろ話題になっている。98年の外為法改正以降、海外での資産運用が原則自由になり、PTという考えが日本にも上陸した。合法的な租税回避を目的に居住国を転々とすることを意味し、富裕層を中心に着目される。


生活の本拠を海外に日本の税率も回避できる

生活の本拠を国外に移し、税法上の非居住者となることで、日本の高い税率を回避するというPT手法を、紹介する書物が花盛りだ。その中でも、とりわけ平易で初心者向けに書かれているのが、『億万長者だけが知っている 雨の日の傘の借り方 入門・海外個人投資』。

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億万長者だけが知っている雨の日の傘の借り方―入門・海外個人投資オーレン ロース Oren Rose 大楽 祐二

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著者のオーレン・ロース氏の肩書きは、国際資産コンサルタント。PTの由来となった欧州人の資産哲学を前半で紹介するとともに、後半では海外分散投資を実践するためのノウハウ、たとえば「タックスヘイブンに暮らそう」「スイス銀行に口座を開く」「トラストを支える文化」等々、国境を超えた個人の投資術を紹介。金持ちならずとも、海外に目が向いている読者なら興味をかき立てられる話題ばかり。

海外ロングステイのロングステイとは、実は和製英語で、ロングステイ財団の定義によれば、「日本に本拠を置きながら、海外の生活を楽しむ」という意味であり、租税回避を目的にしたPTとは似て非なるものである。

ところが、現地情報を収集してみると、実際の生活では、海外ロングステイとPTの間にあまり差がないようだ。その意味で、海外ロングステイにとっても、PTについてのノウハウ本は参考になるだろう。

まるで渡り鳥のように、夏の暑い時期はカナダで過ごし、冬の寒い時期は南半球のオセアニアで暮らす。夢のようなライフスタイルだが、実践者は確実に増えている。

ただ、巻末の「リタイアメントビザで優雅に暮らす」は、本著の発行年が03年であるため、取得条件のほとんどが改定されているから注意されたい。

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