メイン > 東洋経済『経営者が薦めるこの夏の必読書』 > 「自分の血肉になるまで熟読玩味してこそ読書」北尾吉孝 SBIH CEO


『この経済本がすごい!! この夏ビジネスマンに薦める必読書
-「自分の血肉になるまで熟読玩味してこそ読書です」-北尾吉孝 SBIホールディングスCEO』
週刊東洋経済 2006年8月12日・19日合併号 56~57ページ)

総合金融グループを目指して東奔西走する毎日。「本を読む時間を作るには睡眠時間を削るしかない」。そこまで精力的に本を読み続ける北尾氏が紹介するのは「人間学」の本だ。



毎日の仕事で忙しい中、本を読む時間を作るには睡眠時間を削るしかない。私の場合、朝から夜まで切れ目なくアポイントが入っている。夜は大半が食事会です。

寝る前にベッドの中で1時間程度、夜12時ごろに寝て朝4時に起きて6時までの2時間、合計3時間を読書の時間に充てています。

修身教授録―現代に甦る人間学の要諦
森 信三

いちばんお薦めする本は、森信三さんの講義をまとめた『修身教授録』。教育者で哲学者でもある森さんが師範学校の講師をしていたときの内容で臨場感がある。生徒が筆記していた内容が本になっており、わかりやすい。友達関係や人生のあらゆる課題、出処進退はどうあるべきかなどなど、さまざまなテーマが記されています。

出版されたのは1989年で、発売されてすぐに買いました。赤で線を引いたり黄色で丸をして付箋をつけ、さらにページを折る。そうして何度も読んだので、本がボロボロになってしまった。

「人生二度なし」森信三の世界
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それから、『人生二度なし』。悔いなく生きるためにはどうすればいいのかが書かれており、これも繰り返し読みました。

本というのは熟読玩味して、自分の血肉になるまで読まないといけない。逆にいうとそれぐらい読める本でなければ駄目です。

ホリエモンが書いた本などは読む時間がもったいない。お金持ちになる方法とかはくだらないですよ。今はそういった本が山ほど出ていますが、読んでも血肉にならない。私も専門知識を身につけるために本を読むことはあります。しかし、読書でいちばん大事なことは精神の糧にすることだと思います。

このように人間学の本を紹介するのは、今の若い人たちが家庭や学校、人間学を勉強していないから。

京セラの稲森和夫さんは、人生・仕事における成功の方程式について、考え方、能力、熱意という三つの掛け算だと言われています。確かに、ホリエモンには熱意や能力があったかもしれない。しかし、考え方が間違っていたから、ものすごくマイナスが大きくなったのでしょう。

人間学というと古めかしいと思われるかもしれない。だが、今の社会がそれを教えないから、自分で勉強し正しい倫理的価値観を持つべきです。学校で英国数理社だけを勉強するだけでは足りません。

いかに生くべきか―東洋倫理概論
安岡 正篤

森さんの本以外では、安岡正篤先生から学ぶところが多い。『いかに生くべきか』は、若年、中年、晩年、それぞれのときに人は何をすべきかが東洋倫理の哲学に基づいて書かれている。示唆に富む話があり、非常にいい本だと思います。

この本は彼が32歳のときに書いたものですが、東洋哲学に関する該博な知識には感服させられます。32歳で書けといわれても、とても書けない内容ですよ。それだけ勉強の量が違うわけです。安岡先生の書かれた本はほとんど読みましたが『経世瑣言』もいい本でした。

経世瑣言〈総編〉
安岡 正篤

また、『論語』に関する書籍を読むこともお薦めします。なぜ、論語がいいか。読み返すたびに新しい発見があるからです。読み手の経験や知恵が増すにつれて、短い句の中に秘められた奥深い意義が読み取れるようになる。

私は昔から何度も論語を読んでおり線を引いてきました。短い言葉ですが訴える力があり、昔はあまりピンと来なかったところが、年齢を重ねるに従って琴線に触れたりするものです。論語をあらためて読むと、必ずといっていいほど自己反省する材料を与えてくれます。最近で気になったものは「義をみてせざるは勇なきなり」「徳あるものは必ず言あり」など。中国の古典は、いろいろなところで実践の書になり、自分を戒めてくれる。

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人間学のほかに経済関連の本を挙げるならば、日本総合研究所にいらした田坂広志さんが書いた『金融業の進化』です。これは私にとって因縁がある本。出版されたのは98年の5月。私がソフトバンクグループから事業を独立したのは99年4月です。独立をするまでに、どういうグループを作ろうかと模索している中で、田坂さんの本に出合った。 

読んでみると私が金融業界でこれからやろうと考えていたことと、ピッタリと合致した。非常に共感をしたので「この人しかいない」と思って、田坂さんのいる日本総合研究所へ出向き「私のグループへ入ってくれませんか」と口説いた。それでソフトバンクインベストメント(現SBI)が出資して設立したのがシンクタンクのソフィアバンクです。田坂さんには日本総研を辞めて代表取締役になってもらいました。

今はスピンアウトしてご自身の会社になりましたが、最初はSBIグループの中にあった。この本はいつ読んでも新鮮ですね。

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普段も週に1回は本屋さんに行って、いろいろな分野の本を4~5冊は買う。 時事問題に関するものや経済書など基本的には何でも読みます。つい最近、週末 に読もうと思って買ったのがアルビン・トフラーの『富の未来』(上・下)。 ピーター・ドラッカーの著作も非常に学ぶところが多く、ほとんど全部読みまし た。原書が発売されてから翻訳されるまでが早いのもいいですね。他の洋書はな かなかそうはいかない。

ほかにも、経済関連では今の景気局面がどうなるのかという本もよく読みます。 たとえばデフレがどうなるかとか。SBIグループは次々と新しい事業を始めて おり、銀行業についてずいぶん長くいろいろな本を読みました。これからは保険 業務もやっていくので、関連する書籍をたくさん読み込んでいるところです。

そのほかには、医学に興味があり、専門書などを読んでいるうちに、さまざま な病気や薬について非常に詳しくなりました。健康を心掛けて適度な運動はして います。しかし、ゴルフはいっさいしません。ゴルフ場へ行って帰るだけでも半 日が潰れる。半日あれば1冊本が読めますから時間がもったいないですよ。

いかに時間を惜しむか。その感覚を持つか持たないかで自分の人生が大きく変 わると思います。

ただ、人生でやることすべてが成功するなんてことはありえない。最初からあ まり期待しないことも大事です。私自身は全力で物事を成功させようと思って、 あらゆることに真剣に取り組んでいます。ただ、失敗をしても教訓にはしますが、 後悔はしない。やるだけやって駄目ならば仕方がないのであっさりあきらめて忘 れます。そうでなかったら、いつも前向きに走れませんから。


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