メイン > 日経産業新聞『気になる2冊』 > 2007年3月2日~3月30日

排除型社会―後期近代における犯罪・雇用・差異
排除型社会―後期近代における犯罪・雇用・差異ジョック・ヤング 青木 秀男

洛北出版 2007-03
売り上げランキング : 4202

おすすめ平均 star
star私たちはこれから何を考えるべきか
star血にまみれたルソーの手

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

日本に限らず格差社会が政治テーマになっている。技術は進んだが、果たして人々の幸福感はかつてよりも高まったのだろうか。犯罪学、社会学を専門とする著者は、同化や結合を求める「包摂型」から、個人主義を基軸とする「排除型」に社会が変質したと指摘する。

著者は産業の近代化が、ほぼ正規雇用者だけで構成されていた社会に非正規雇用者や構造的失業者を生み出し、個人主義の台頭と相まって常に自分と異なる存在を排除する社会をつくり上げたと指摘する。解決策として完全雇用や富の再配分に加え、寛容さを持つことなどが提案されている。格差社会を歴史的、社会学的な視点から考え直すのに最適な一冊だ。

■2007/03/30, 日経産業新聞, 34ページ

不動産保有の意味を問う―オフバランスによる企業価値の創出
不動産保有の意味を問う―オフバランスによる企業価値の創出三菱UFJ信託銀行不動産コンサルティング部 小沢 善哉

東洋経済新報社 2007-01
売り上げランキング : 20014


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

「持たざる経営」が言われて久しいが、どれだけの企業がその言葉を実践しているのか。日本企業は総資産の約四分の一を不動産で保有しているという。安定や値上がりを期待するからだ。しかしイメージと違い、不動産は資産としては運用が難しい。価格変動や流動性をはじめとしたリスク、修繕をはじめとしたランニングコスト。不動産保有のリスクやコストは時に本業の利益をのみ込んでしまう。

著者らが指摘するようにオフバランスによる不動産の収益力向上と企業価値の拡大が常に正しいとは言い切れないかもしれない。だが、経営に説明責任が求められる今、経営者は不動産を保有する理由を改めて問い直す必要がありそうだ。

■2007/03/30, 日経産業新聞, 34ページ

企業創造力―組織の可能性を呼びさます6つの条件
企業創造力―組織の可能性を呼びさます6つの条件アラン G.ロビンソン サム・スターン

英治出版 2007-02
売り上げランキング : 872


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

企業が競合との違いを明確にして競争を勝ち抜くためには、新しいアイデアが不可欠だ。だが、どうすれば新しいアイデアを生み出せるのか。本書は企業が秘める創造力を呼び覚ますために必要な経営の条件について、成功例や失敗例を取り混ぜながら解説している。

企業の創造力を高める最も重要なポイントは、まず、新しいアイデアを誰がどんな形で生み出すかは予測不能だと認識することだと本書は強調する。だからこそ、少数の天才的な社員を発掘しようとするよりも、社員全員の創造性を伸ばす経営手法が重要という。具体的には自発的な活動を促し、非公式な活動を認め、社内の交流を増やすといった六つの条件を指摘している。

■2007/03/23, 日経産業新聞, 26ページ

M&A(ジャングル)資本主義―「敵対的M&A・三角合併」防衛法
M&A(ジャングル)資本主義―「敵対的M&A・三角合併」防衛法小倉 正男

東洋経済新報社 2006-11
売り上げランキング : 108174


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

二〇〇七年五月に「三角合併」が解禁となる。解禁後は、外国企業が株式交換で日本企業を買収できるようになる。本書は三角合併解禁後の日本経済を弱肉強食の「ジャングル」にたとえる。新日本製鉄や武田薬品工業、ソニーなどの有力企業でさえも株式時価総額が見劣りするために買収対象になりかねないと警告する。

副題は「『敵対的M&A・三角合併』防衛法」。投資家向け広報(IR)こそが敵対的買収への防衛策と指摘する。配当性向を八〇%とする配当施策が市場の支持を得て株式時価総額を高めた靴専門店のチヨダの例などを挙げながら、経営姿勢を株主価値の追求に転換する必要性を訴える。

■2007/03/23, 日経産業新聞, 26ページ

吉野家安部修仁逆境の経営学
吉野家安部修仁逆境の経営学戸田 顕司

日経BP社 2007-03
売り上げランキング : 2337


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

吉野家ディー・アンド・シーは午前十一時から午後三時に限定していた牛丼の販売時間を三月から、午前零時まで延長した。米国産牛肉の調達量を増やせる見通しが立ったからだ。本書は主力商品の消滅という危機に見舞われた安部修仁社長の経営哲学を紹介する。

安部社長が語る哲学の中で興味深いのは「変えてはならないものがある」ということ。中途半端な牛丼を売ればブランドが損なわれるとして、牛丼の販売中止を選択した。

本書にはマッキンゼー・アンド・カンパニーによる吉野家の強さの分析も盛り込まれている。それによると、強さの源泉は一貫した組織理念や風土などで、安部社長の経営哲学とも重なる。

■2007/03/16, 日経産業新聞, 22ページ

「法令遵守」が日本を滅ぼす
「法令遵守」が日本を滅ぼす郷原 信郎

新潮社 2007-01-16
売り上げランキング : 154

おすすめ平均 star
star「法を強化しても事態はたいしてよくならない」
star真のコンプライアンスを明かしてくれる本
starコンプライアンスに違和感を感じている人へ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

不祥事を起こした企業による謝罪会見での決まり文句の一つが「コンプライアンス(法令順守)の徹底を図りたい」だが、著者はそれだけでは本当の問題解決にはならないと指摘する。

高度化、複雑化する経済の実態と法令が乖離(かいり)している場合があり、順守だけでは企業が抱える課題の解決にはならないからだ。今後は、法令の背後にある社会的要請が何かを見極め、適応することが求められており、それが本当のコンプライアンスだと著者は強調する。

社会の中で会社が存在を認められているのは、社会の要請に応えているからだという本書の指摘を、企業経営者は再認識する必要がありそうだ。

■2007/03/16, 日経産業新聞, 22ページ

シニアに優しい旅のコツ―海外旅行の実践講座
シニアに優しい旅のコツ―海外旅行の実践講座田中 嘉文

角川書店 2007-01
売り上げランキング : 159114

おすすめ平均 star
starパッケージツアー推進派の足掻き
star久々の海外への誘い
star充実の内容

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

団塊世代の大量退職が始まる今年、彼らに照準を合わせたビジネスが注目を浴びている。旅行業もそのひとつだ。長年、旅行業界で活躍した海外旅行コンサルタント兼シニアライフ・アドバイザーの著者が、「いい旅」をシニアにしてもらうためのノウハウを詰め込んだ。

本書のいう「いい旅」とは、「自分に適した旅」のことだ。そのためのホテルの選び方やパッケージツアーの活用法などのポイントを列記した。旅先での健康管理法など、多くのシニアにとってうれしい内容が盛り込まれている。

海外旅行に出かけようというシニア層だけでなく、彼らのニーズに合う旅行商品の開発を考える人にも参考になりそうだ。

■2007/03/09, 日経産業新聞, 22ページ

聖書に学ぶトップセールスマンになるための10の教え
聖書に学ぶトップセールスマンになるための10の教え伊藤 浩一

宝島社 2007-01
売り上げランキング : 20926

おすすめ平均 star
starできることからコツコツと
star今の自分を肯定して良いんだ、と気づきました

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

書名に「聖書に学ぶ」とあるが、宗教色はほとんどない。なかなか成果をあげられなかった著者がどのように営業のコツを体得したかが書かれている。営業の心構えを聖書の有名なフレーズと共に十項目にわたって解説しているのだが、精神論や根性論に陥ってはいない。体験を交えながら、具体的にどう行動すれば顧客に信頼される営業マンになれるのかが理解できるように記述されている。

「私たちは、ことばや口先だけで愛することをせず、行いと真実を持って愛そうではありませんか」。引用されている聖書の一節だ。契約額の多寡で顧客を差別せず、平等に接することが信用につながると著者は説く。

■2007/03/09, 日経産業新聞, 22ページ

M&A 賢者の意思決定―成功企業に学ぶ4つの基本原則
M&A 賢者の意思決定―成功企業に学ぶ4つの基本原則デイビッド・ハーディング サム・ロビット 山本 真司

ダイヤモンド社 2007-02-17
売り上げランキング : 8934


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

今やM&A(企業の合併・買収)は経営者にとって成長手段の一つとして定着した感がある。だが、北米クライスラー部門の売却問題で揺れているダイムラークライスラーなど、かつて市場を沸かせた経営統合も厳しい局面を迎えており、改めてM&Aの難しさを感じさせられる。

本書はコンサルティング会社、ベイン・アンド・カンパニーのパートナーらによるM&Aの指南書。M&Aを成功に導くための被買収企業の選択方法、うまくいかない時に何をすべきかなど四つの基本原則に加え、七つの警告を豊富なケーススタディーで説明している。企業、経営者にとってのM&Aの意味を改めて考えさせてくれる一冊だ。

■2007/03/02, 日経産業新聞, 30ページ

あなたが年収1000万円稼げない理由。―給料氷河期を勝ち残るキャリア・デザイン
あなたが年収1000万円稼げない理由。―給料氷河期を勝ち残るキャリア・デザイン田中 和彦

幻冬舎 2007-01
売り上げランキング : 91549

おすすめ平均 star
star需要と供給を意識する
starタイトル通りの中身を期待するとやや物足りなさも・・・?
starこの本を読んで年収1000万円稼げるようにはなりません

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

サラリーマンをはじめ多くの働き手にとってひとつの目標や指標になっている「年収一千万円」。だが、本書は決して一千万円をどう稼ぐかというノウハウ的な解説本ではない。終身雇用や年功序列がなくなり、本格的な能力主義や成果主義が定着する中で、自分を高めてキャリアアップをなし遂げる必要性を説いている。

年収は需要と供給で決まる。他人と際立った能力のある人材でなければ水準以上の給与は望めない。そのためには期限を決めて自分の夢を達成していくことが必要だという。自分という商品をいかに価値あるものにするかが大事だ。気構え次第ですぐに始められる内容だけに説得力がある。

■2007/03/02, 日経産業新聞, 30ページ

Edit

 
Copyright (C) 2004-2006 Ambitious Kanda, All Rights Reserved.