メイン > 日経・日経産業新聞書評(2005年) > 2005年5月29日~6月12日
| テレビアニメ魂 | |
![]() | 山崎 敬之 講談社 2005-05-19 売り上げランキング : 7,597 おすすめ平均 ![]() 現場の熱気を語るAmazonで詳しく見る by G-Tools |
『テレビアニメ魂』山崎敬之著 三十年以上、アニメのシナリオを書き続けてきた著者が苦労話をつづった。「巨人の星」は原作より先に放送が最終回を迎え、結末に腐心した話や、広告主の事情で終わった名作などを思い出を交えて記す。「ドラマが弱い」と最近の作品を嘆きつつ、自らも「第二次アニメ人生」への意欲を見せる。
| 犯罪精神医学入門ー人はなぜ人を殺せるのか | |
![]() | 福島 章 中央公論新社 2005-05-26 売り上げランキング : 4,925 おすすめ平均 ![]() 事件がわかるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
『犯罪精神医学入門』福島章著 刑事被告人の精神鑑定を数多く手掛けた犯罪精神医学者の著者が、社会に衝撃を与えた殺人事件を題材に犯罪者の精神構造を分析する。取り上げるのは大阪教育大付属池田小の校内児童殺傷事件や永山則夫元死刑囚の連続射殺事件、東京・池袋の通り魔事件など。典型的な殺人者の多くは脳に変異を持って生まれ、環境への不適応から自らの死を果たす代わりに人を死に至らしめる、と結論づける。
| 日本の「ミドルパワー」外交―戦後日本の選択と構想 | |
![]() | 添谷 芳秀 筑摩書房 2005-05 売り上げランキング : 5,783 おすすめ平均 ![]() ミドルパワー=混沌とした世の中を生きぬくための処世術? 久々に出会った骨太の外交論 話題性Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者の年来の主張であるミドルパワー論を熟成させた成果が本書である。ミドルパワーを著者は「大国が規定する国際システムを所与とし、かつ大国との全面的対立を外交上の選択肢として放棄しつつも、それ以外の領域で一定の主体性を保持しようとする外交」と定義する。カナダ、豪州のような国際協力に熱心な国のイメージだろうか。
世界第二の経済大国である日本はミドルパワーではないと多くの国際的批判を受けてきた議論だが、長期的に考えれば、中国、インドがいずれ日本の経済規模を上回る日が来る。日本は好むと好まざるとにかかわらずミドルパワーになる。したがって意味ある議論である。
重要なのはあとがきに引用された「添谷さんはずるい、ミドルパワー外交といいながら実は日本の役割と存在は今よりずっと大きくなる」との五百旗頭真氏の言葉である。内容をみると総論は挑戦的だが、各論は中曽根康弘防衛庁長官(当時)の非核中級国家論を除けば、テーマとの関連性がもうひとつわかりにくい。日本外交史の教科書としての機能も重視したのだろうか。
ミドルパワー論をいま世に問うのは憲法改正をめぐる議論に一石を投じたいとの意図があるのだろう。が、そこで使われている「逆噴射改憲論」の表現には首をかしげる。表現に学問的エレガンスを欠き、意味も必ずしもよくわからない。著者の情熱のほとばしりは感じとれる。
| ホンダ 夢を実現する経営 世界を快走する秘密を探る | |
![]() | 小宮 和行 PHP研究所 2005-04-21 売り上げランキング : 36,842 おすすめ平均 ![]() ホンダを知るにあたっての導入書にぴったりAmazonで詳しく見る by G-Tools |
サーキットを疾走するF1。ドライバーは何と福井威夫社長といったエピソードを織り交ぜて、ホンダが今なぜ元気なのかを解き明かす。米国、ブラジル、東南アジア、中国、ヨーロッパと、世界に広がるホンダ精神を人間くさく伝える。創業者の本田宗一郎氏に始まる奔放な企業のDNAがどのように伝承され、進化しているのか。時代は変わっても「違い」を失わない。トヨタ自動車とは異質の個性が強みだと著者は指摘する。
| 開発法学―アジア・ポスト開発国家の法システム | |
![]() | 安田 信之 名古屋大学出版会 2005-03 売り上げランキング : 82,442 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
発展途上国が次の段階に進むためには、法律を中心とする制度整備が欠かせない。本書はアジア諸国などを中心に、法制度の整備が政治や経済、社会構造の発展にどのようにかかわってきたか、今後どういった貢献が見込めるか――などを分析した研究書である。研究書ゆえ概念論が先行しすぎの感はいかんともしがたいが、社会発展を法律と結びつけた切り口は新鮮で、興味深い。
| はつらつ力―この人たちの元気をもらおう | |
![]() | 日本経済新聞社 日本経済新聞社 2005-04 売り上げランキング : 139,632 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
聖路加国際病院理事長の日野原重明氏、精神科医の斎藤茂太氏、映画監督の鈴木清順氏など十九人が生い立ちから転機、仕事の哲学や死生観を率直に語る。人生八十年時代、だれもが老年に無関心ではいられない。だが、超高齢社会での生き方が見えず、不安やいら立ちを感じているのではないか。八十歳を超えてなお新しい仕事に挑む。病気にもくじけない。そんな先輩たちの人生の知恵をもらえる。序章の日野原・斎藤対談も興味深い。
| 株主総会の議長・答弁役員に必要なノウハウ | |
![]() | 鳥飼 重和 商事法務 2005-02 売り上げランキング : 27,846 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
株主総会で予想される質疑や回答、問題発言に対する介入、採決の方法などを具体的な発言を例に、リハーサルの仕方から手ほどきする指南書の体裁だが、株主総会の意義や運営の在り方など本質に迫る解説もコンパクトに盛り込んだ。
株主総会の目的を議案決議型、消極的IR(投資家向け広報)型、積極的IR型、会社改革型に分類。経営の状況に応じて柔軟に選択し、大きな権限を持つ議長が自由に運営すべきだと説く。敵対的企業買収や企業価値向上が話題となり証券市場を意識した経営が求められるなか、株主総会での答弁を通じて経営方針・目標を態度で示す重要性は一段と大きい。弁護士らしく実務を踏まえながら、新しい時代への適応を促す内容となっている。
| 危機管理―リスクマネジメント・クライシスマネジメント | |
![]() | 宮林 正恭 丸善 2005-03 売り上げランキング : 17,494 おすすめ平均 ![]() 読むとたしかに!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者は旧科学技術庁原子力安全局長などを務めた千葉科学大学副学長で、危機管理学部長を兼任している。在米日本大使館や旧宇宙開発事業団などに在籍した官僚時代の多彩な経歴を生かし、外交、内政をはじめ自然災害や交通、医療、食品衛生などの事故、環境破壊、情報操作・流出、種の絶滅危惧などにおける危機管理の体制や現状を概括的に示した。
危機管理には危機回避や計画策定など事前の準備、危機に直面したときの対応、危機脱出後の克服・改善といった段階がある。著者は事前の分析、対策、準備行動に重点を置くべきだと指摘。一連の段階を通して最大の責務を負うのは組織の人事権や予算執行権を握るトップであると強調している。
| 美人の日本語 | |
![]() | 山下 景子 幻冬舎 2005-03 売り上げランキング : 310 おすすめ平均 ![]() 大切にしたい一冊 タイトルは内容とそれほど関係無いかな 残り香のある本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日常生活でよく使われる言葉から現在はほとんど聞かない古い言葉まで、独自の視点で選んだ言葉の由来や意味を紹介する『美人の日本語』(幻冬舎・一、四〇〇円)。刊行から三カ月弱で十二刷、発行部数は十八万部に達している。
一年間の日付を四月一日から三月三十一日まで一ページに一日ずつ順に記し、主にその日にちなんだ言葉を掲げて説明する。取り上げた言葉は冒頭の「四月朔日(わたぬき)」から最後の「ありがとう」まで三百七十語。
著者の山下景子氏は音楽教室講師で本書が初の著作。作詞のために印象に残った言葉を書き留めていたノートが昨春、十数年ぶりに見つかったのを機に、好きな言葉を一日に一語ずつ紹介するメールマガジンを始めた。
メルマガを読んだ編集者から出版の話が持ち込まれたのは昨夏。「自分が奇麗だと思う言葉」を基準に季節感を重視して選んだ結果、「忍冬(すいかずら)」「狗尾草(えのころぐさ)」「爪紅(つまくれない)」といった花や草の名前が多くなった。語源辞典などで由来や意味を確認し、感想や思いを添えてまとめた。
編集者とデザイン、イラストの担当はいずれも女性。ほかの「日本語本」に比べ文章が柔らかく、女性が好みそうな繊細なデザインに花や草などのしゃれたイラストを配しているのが目を引く。
読者はやはり女性が多い。自分や子供の誕生日のページをまず開いた、という声や、「寝る前にその日の言葉を読むと心が和む」「出勤してその日の言葉を読むと元気が出る」といった感想が寄せられているという。
言葉の紹介にとどまらず、日めくりカレンダーや占いに似た要素を加味した点が女性読者の心をつかんでいるようだ。
六月九日 蝸牛(かたつむり) 蝸牛の「かた」は「潟」、陸(おか)を意味します。「つむり」は「つぶり」が変化したもので、巻き貝という意味だそうです。(中略)古くから親しまれてきた蝸牛の、ゆっくりとした歩みこそ、今の時代、見直したいことだと思うのですが。
| 赤塚不二夫のことを書いたのだ!! | |
![]() | 武居 俊樹 文藝春秋 2005-05-26 売り上げランキング : 2,097 おすすめ平均 ![]() かくて伝説は蘇えるのだAmazonで詳しく見る by G-Tools |
漫画編集者を三十六年務めた著者が、赤塚不二夫についてつづった。人気絶頂期の『おそ松くん』『もーれつア太郎』といった作品が描かれる舞台裏や、アシスタントに気を使い、妻に甘える素顔などを紹介。次第に作品発表の場を失い、病に倒れるまでを愛情あふれるまなざしで描いている。
| 京都花街もてなしの技術 | |
![]() | 相原 恭子 小学館 2005-04 売り上げランキング : 38,235 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
京都のお茶屋で接待されたいと思いながら、一見さんお断りとあって遠慮する旅行客は多い。本書はそんな思いを抱いた人への入門書。欧州の紀行物を書いている著者は、芸者に関する英語の本を出した時に花街を知るようになった。花代の仕組み、芸妓の仕事など京都独自の接待文化を平易に説明している。
| コーポレート・レピュテーション | |
![]() | チャールズ・J.フォンブラン セス・B.M.ファン・リール 花堂 靖仁 東洋経済新報社 2005-04 売り上げランキング : 8,888 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
企業不祥事が急増中だ。例えば、三菱自動車によるリコール(無料回収・修理)隠しですでに傷ついていた三菱グループの評判は、橋梁(きょうりょう)工事の入札談合事件で三菱重工業、土壌汚染隠ぺい事件で三菱地所と三菱マテリアルが登場したことなどで一段と低下している。
不祥事が起きるたびに「利益ばかり追い求める企業風土に原因がある」といった批判が出る。しかし、企業が真剣に利益を増やし、企業価値を高めようと考えているならば、不祥事の防止こそ第一に取り組まなければならないテーマだ。
不祥事はバランスシート(貸借対照表)に突然表れる「偶発債務」と見なせる。一歩間違えば、どんな名門企業でも一夜にして多額の偶発債務を抱え込み、破綻に追い込まれる。
●定量化を試みる
世界的に続発する不祥事を背景に、米国を中心に、評判や名声などを意味する「レピュテーション」を企業の重要な資産としてとらえようとする動きが広がっている。この定量化を試みたのが、チャールズ・J・フォンブランとセス・B・M・ファン・リールの『コーポレート・レピュテーション』(花堂靖仁監訳、東洋経済新報社、二〇〇五年)だ。企業にはバランスシート上に載る工場や土地などの有形資産のほか、「目に見えない」無形資産がある。無形資産は一般に、知的資本とブランドで構成されると言われる。知的資本は独創的な知識や技術であり、ブランドは特定の製品に対して顧客が抱くイメージの集積だ。
ブランドとレピュテーションは同義語なのか。フォンブランとファン・リールは「重要な点で違いがある」と指摘する。
二人は一例として米スポーツ用品大手ナイキを取り上げる。同社は抜群のブランドを持ちながら、途上国で未成年労働者の雇用をやめる努力をしなかったとのイメージが強いとする。ブランドの価値が高くても、企業として消費者や従業員、投資家などのステークホルダー(利害関係者)全体から高い評価を受けているとは限らないわけだ。
そんな考察を踏まえ、フォンブランとファン・リールは無形資産から知的資本を除いた部分を「レピュテーション資本」と定義し、それを「ブランド資本」と「ステークホルダーとの関係性」へ要素分解する。さらに、広範なアンケート調査を基にレピュテーション資本を指数化、これを「レピュテーション指数(RQ)」と名づけた。
●ブランド外の要素
レピュテーション資本の増大のためには、ブランドの魅力を高めることはもちろん、職場環境を改善したり、企業の社会的責任(CSR)に取り組んだりすることで、ステークホルダーとの関係を向上させることが欠かせない。高いRQと長期的な企業価値の創造には密接な関連性があるという。ロナルド・J・オルソップの『レピュテーション・マネジメント』(トーマツCSRグループ訳、日本実業出版社、二〇〇五年)は、レピュテーションの構築・維持・修復に必要な十八の法則を示す。オルソップは経済紙の記者としての経験を生かして、かつて「死の商人」とのレッテルを張られた化学大手デュポンなど豊富な実例を紹介しながら、「己を知る」「社員を主役にする」「最後の手段は社名変更」などの法則を説く。
日本では企業のレピュテーションについての研究は実質的に皆無だった。そんな状況下で、櫻井通晴の『コーポレート・レピュテーション』(中央経済社、二〇〇五年)が出た。フォンブランの研究も含め欧米での現状を紹介する形を取りながらも、レピュテーションの観点から日本企業を対象にした各種の企業番付なども分析する。
「レピュテーションを築き上げるのには何年もかかるが、台無しにするのは一瞬で可能だ」(オルソップ)。米名門会計事務所アーサー・アンダーセンは、巨額の不正会計に手を染めた米エンロンに協力したことで、階段を転げ落ちるようにして消滅した。財閥時代から百年以上かけてでき上がった「三菱」というレピュテーションも例外ではない。
| 株式市場を読み解く―大買収時代の備えと憂え | |
![]() | 前田 昌孝 日本経済新聞社 2005-05 売り上げランキング : 31,160 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ライブドアが仕掛けたニッポン放送争奪戦で株式市場に対する一般国民の関心は一気に高まった。著者は株式市場を長年にわたって取材してきた。ニッポン放送争奪戦のほか西武鉄道株の上場廃止などタイムリーなテーマを取り上げ、記者ならではの視点で市場の問題点や課題を浮き彫りにする。
| 世にも美しい数学入門 | |
![]() | 藤原 正彦 小川 洋子 筑摩書房 2005-04-06 売り上げランキング : 74 おすすめ平均 ![]() 素晴らしい あなたの美意識が問われる 数学の好き嫌いに関わらずAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ベストセラー小説『博士の愛した数式』を書いた作家の小川洋子とお茶の水女子大学教授で数学者の藤原正彦が、数学の魅力について語り合った『世にも美しい数学入門』(ちくまプリマー新書・七六〇円)。刊行以来二カ月で七刷、発行部数は十三万部を数える。
教科書のように問題を解く技術を説明するのでなく、数学の本質に目を向けているのが特徴だ。話題は「素数」や「虚数」、「フェルマー予想」など幅広い。数学の世界には様々な定理が存在する。典型は「三角形の内角の和は180度」というものだが、そうした永遠の真理をとらえて二人は「数学は美しい」と口をそろえる。特に小川は『博士の―』を執筆するため藤原に取材、数学が「芸術や自然と同じように人に感動を与える」ことを知ったという。
二人の対談は数学者の人間性にも及ぶ。生涯をかけ難問を解こうとする数学者は執念深く、「数学者に愛されたら、たまらない」(藤原)。小川は「一種のストーカー的資質を持っていないと、数学の真理は得られない」とユーモラスに擁護する。またノーベル賞に数学賞がないのはノーベルの恋敵が数学者だったからという説を紹介するなど、挿話にも味がある。
数学関連書では、この一年間でも畑村洋太郎『直感でわかる数学』(岩波書店)、小室直樹『数学を使わない数学の講義』(ワック)などが出版された。面白さを強調する二冊の売れ行きは好調。今回の対談集は人気作家が数学者に聞くというより親しみやすいスタイルで、数学コンプレックスのある文系人間の向上心をくすぐった戦略が功を奏したといえそうだ
小川 数学的な発見をするためには、何が大事なんですか。
藤原 (中略)数を転がして、ころころと手のひらで弄ぶことが一番重要なんです。足したり、引いたり、ひっくりかえしたり、想像したりね。
| 博士の愛した数式 | |
![]() | 小川 洋子 新潮社 2003-08-28 売り上げランキング : 220 おすすめ平均 ![]() 思い出はいつまでも消えない! 1-1=0 あたたかいAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| 直観でわかる数学 | |
![]() | 畑村 洋太郎 岩波書店 2004-09 売り上げランキング : 3,967 おすすめ平均 ![]() 日常と数学との架け橋(のひとつ) この方向で考えて行きたい! こんな本があればよかったのにAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| 数学を使わない数学の講義 | |
![]() | 小室 直樹 ワック 2005-04 売り上げランキング : 849 おすすめ平均 ![]() まさに いまさら「超常識の方法」!? 数学をネタにしたエッセーAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| 新版 年収300万円時代を生き抜く経済学 | |
![]() | 森永 卓郎 光文社 2005-05-10 売り上げランキング : 3,870 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
単行本の刊行は2003年。政治の構造改革と経済の「米国化」で一握りの富裕層と多数の低所得層への国民の二極化が進むとの論を展開し、ベストセラーになった。続編と併せ一冊の文庫に再編集。著者は「予測したことは、実によく的中していた」と振り返る。
| グローバリゼーションを擁護する | |
![]() | ジャグディシュ・バグワティ 鈴木 主税 桃井 緑美子 日本経済新聞社 2005-04-21 売り上げランキング : 3,285 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書はグローバリゼーションに対する様々な批判、非難を一つ一つ取り上げ、それらを論破しグローバリゼーション擁護の論陣を張った書物である。著者は貿易論など国際経済学の分野で世界の第一人者だ。
グローバリゼーションの被害者になっているというクレイムは発展途上国に限らない。「外資系ハゲタカ・ファンドにまたやられた。規制が必要だ」といった声をよく耳にするわれわれ日本人にとっては問題の所在は明らかだろう。しかし、貿易、国際的な資本移動、移民などを通して基本的にグローバリゼーションは人々の厚生を増進する。これがスタンダードな経済学の結論である。
個々の論点については本書にゆずる。このことをわれわれ日本人が理解するためには明治開国以来現在に至るまでの日本経済の歩みを振り返るのが一番だろう。それはグローバリゼーションの一途であった。グローバリゼーションが無ければ今日の日本経済は無かったと言ってもよい。その間に生じた摩擦は大海の中のさざ波だったのではないか。
固有の文化に対してグローバリズムがもたらす「脅威」については言語も含めてたしかに深い問題がある。しかし文化を口にする反グローバリズムの中には単純な「外国嫌い」も多い。「グローバル・スタンダード」たる英語にもxenophobiaという立派な言葉があるではないか。こうした狭量な考え方に対しては本書にも引用されているミルの言葉を思い出せば十分だろう。「自分と異なる人間と接することの価値、馴染みのない思想や行動様式に出会うことの価値は、どんなに高く評価してもしすぎることはない。かつて、このような出会いの機会といえば主に戦争だったが、いまは通商なのである……」
本書はグローバリズムを「無条件」で礼賛しているわけではない。一九九七―九八年に起きたアジアの通貨危機は「外圧によって強いられた早計かつ軽率な金融自由化の産物だった」としてこれを痛烈に批判している。したがって、グローバリズムの進展により「ときおり生じるマイナス効果に対処する制度をととのえること」が必要だと説く。本書はバランスのとれた、それゆえ、説得力に富む書物である。【評者 東京大学教授 吉川 洋】





















いまさら「超常識の方法」!?
数学をネタにしたエッセー

