メイン > 日経・日経産業新聞書評(2005年) > 2005年5月15日~5月29日
| NHK―問われる公共放送 | |
![]() | 松田 浩 岩波書店 2005-05 売り上げランキング : 16,454 おすすめ平均 ![]() NHK問題に関する最新最良の解説書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『NHK』松田浩著 元プロデューサーによる制作費着服に端を発した受信料不払いの広がりに揺れるNHK。記者として一九六〇年代からNHKを取材してきた著者が、不祥事を生んだ構造と再生への道筋を探る。権力からの自立、視聴者への情報公開、公共放送のあり方をめぐる国民的論議、の三点がNHK再生には欠かせない、と指摘する。
| 働くということ - グローバル化と労働の新しい意味 | |
![]() | ロナルド・ドーア 中央公論新社 2005-04-25 売り上げランキング : 1,078 おすすめ平均 ![]() グローバリゼーション下の「公正」とは何か。 自分で考えよということ 類を見ない「広さ」Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「二十世紀の終わりには、週五時間程度働くだけになるだろう」――。ケインズの外れた予言から、知日派の英社会学者の問いは始まる。本書は「労働」を切り口に、競争を至上とする産業社会のあり様を分析したものだ。
労働時間短縮の流れが、主要先進国では一九九〇年代以降明らかに逆転している。労働の場で競争が重視され、労働市場の流動性が好ましいとする流れが強まった。レーガン、サッチャー革命以降の市場重視の反映である。
国際競争に負けるなというかけ声の下、その流れは日本を含む国々をのみ込んだ。経営における株主価値の最優先や、経済学における新古典派の支配などが、市場志向を促す。
最高経営責任者(CEO)の所得が平均的従業員の千倍を超える米国。合理的説明を超絶する格差は、「貪欲を貪欲とけなすのをためらう」傾向の産物だ。「避妊が一般化する以前の性欲抑制は、自己満足の抑制を要求した規範を強化した」が、今やそうしたタガがはずれ貪欲が独り歩きしている面もある。著者が「市場個人主義」と呼ぶ生き方の根は、思いのほか深い。
米国流のビジネススクールと、マネー全能の金融資本主義は、こうした価値観を強化する。その半面で、社会の格差を広げ、不安定化を招いている。著者は、多様性への愛を表明し本書を閉じる。しばらく流れは変わるまいという諦観が、行間に漂う。
| 再生巨流 | |
![]() | 楡 周平 新潮社 2005-04-21 売り上げランキング : 3,409 おすすめ平均 ![]() 再生巨流 プロジェクトのダイナミズムを体験できる 元気の出るビジネス書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
従来とはひと味違う経済小説である。物語の主人公は、大手運輸会社のスバル運輸に勤める吉野公啓。大手商社から転職して十五年、営業一筋にかなりの実績をあげてきたが、強引な性格が災いし、新規事業開発部に「左遷」される。それでも吉野はあきらめない。文具の通信販売をヒントに、画期的な物流システムを思いつき、その構築に自らの会社員人生をかける。 心強い味方となったのは、スバル運輸で配達運転手をしていた蓬莱(ほうらい)秀樹。学生野球のスターだった蓬莱は、その実績をかわれて入社したが、ひじの故障で野球ができなくなり、運転手に転じていた。蓬莱の実家が経営が悪化した家電店であったことから、吉野は物流システムに家電店のネットワークの活用を着想するとともに、蓬莱を新規事業開発部に呼び寄せる。 新しい事業を認めようとしない保守的な上司、態度を鮮明にしない取引先、刻々と迫る先行投資した資金の決済日……。次々に押し寄せる困難を、吉野らが乗り越えていく姿に、会社員の読者は、自らの体験を重ねて心を熱くするだろう。 この小説では、外資系企業に十五年勤めた著者の体験に基づき、新しいビジネスモデルが提示されているという。在庫管理の仕組みや必要な投資額などが詳細に書かれており、こうしたビジネスが実際にあっても不思議ではないと思わせる。そのリアリティーも本書の魅力である。
| 〈育てる経営〉の戦略―ポスト成果主義への道 | |
![]() | 高橋 伸夫 講談社 2005-04 売り上げランキング : 3,100 おすすめ平均 ![]() グローバル下での『個人の人生』と『企業に殉ずる』バランスは何処か? 高橋伸夫経営哲学の集大成 ケンカを売っているのですAmazonで詳しく見る by G-Tools |
『虚妄の成果主義』を著して話題になった著者は、時間のかかる人材育成を阻害する点に成果主義の根本的な誤りがあると指摘する。企業が永続的に発展するために欠かせないヒトを育てる経営を実現するには、「日本型年功制」が最適だという。カネでつるのではなく、意欲をかき立てる「次の仕事」で報いるシステムである。札束さえ積めば人材は外部からスカウトできるというのも幻想で、自前で育てるしかないと論じている。
| 環境ビジネスウィメン――11人 成功の原点と輝く生き方 | |
![]() | 小池 百合子 環境ビジネスウィメン懇談会 日経BP社 2005-04-13 売り上げランキング : 4,186 おすすめ平均 ![]() 図書館で借りたけれども、手元にほしくなり新品を買ってしまいました。 一押し! パワフルな女性たちAmazonで詳しく見る by G-Tools |
環境対策の主導権は女性にあり、と思わせるのが本書だ。京都議定書の発効で、地球温暖化対策はグローバルな政策課題となったが、その行く末を左右する環境ビジネスの最前線で活躍する女性たちの奮闘ぶりを、ビジュアルにまとめている。「環境ビジネスウィメン」は、小池百合子環境相が呼びかけた懇談会に由来する。環境税を巡る「男どもの不毛の論争」とは一線を画した女性たちのしなやかさとしたたかさが魅力だ。
| やる気を引き出す成果主義ムダに厳しい成果主義 | |
![]() | 野田 稔 青春出版社 2004-10 売り上げランキング : 43,941 おすすめ平均 ![]() 「トヨタの場合」のみでも読む価値あり 心が温まりますAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ほとんどの企業で導入する成果主義だが、企業の評価は必ずしも高くない。だが、かつての年功序列型の賃金制度に戻る企業はなく、途方に暮れがちだ。慶応丸の内シティキャンパスで講師を務める著者が実例などを用いたケーススタディーを通じ、うまくいく成果主義を提案する。
厳しい経済状況にさらされた企業が、“聖域”だった人件費に手を付ける言い訳が成果主義と指摘。給料と稼ぎが合致していない中高年社員らのコストカットを始めた。しかも成果主義が短期の結果主義に陥っているという。トヨタ自動車などの例を挙げながら、成果主義を成功させるポイントを紹介する。満点でなく「七五点社員」を目指せという提言に著者の考えが集約されている。
| 日産が危ない―V字回復後の問題点を洗う | |
![]() | 松平 智敬 エール出版社 2005-04 売り上げランキング : 110,175 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ゴーン社長の下でV字回復した日産自動車。生え抜きの志賀俊之常務が最高執行責任者(COO)に任命され、改革路線の継承が注目される。著者は、V字回復はムダを一気に切り落とす欧米流コスト削減策の効果で、問題は多いと主張する。先ごろの鋼材不足による生産調整も、調達先絞り込みで取引先の信用という財産を失ったためと警告する。 また、航空・宇宙事業の売却は、トヨタ自動車との格差是正の面から得策ではなかったと述べるが、ここは意見の分かれるところだ。「スカイライン」などのモデルチェンジによる従来のファン離れも、新規顧客開拓の必要性を考えると一概に批判できない。ゴーン改革が一つの節目を迎えた今、改革を評価するあまたの本と比較して読むのも面白い。
| 私の「人生」ノート―ハッピーエンディングメッセージ | |
![]() | 本田 桂子 全日出版 2005-04 売り上げランキング : 49,919 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人生の終末を意識した時、人は自らの足跡を振り返り、次世代に何をのこすかを考える。本書は、遺言や相続を支援する特定非営利活動法人(NPO法人)の副理事長を務める著者が作った、いわゆる「エンディングノート」だ。
構成は「自分史」と「万一の時のための記録」の二本立て。自分史のページでは、仕事、結婚、友人との交流などの項目を多く設定し、記入しやすくした。万一の時の部分では、将来の介護や葬儀、相続について希望を書き込めるようにしたほか、次世代への贈り物になるよう、大切な人へのメッセージ欄も設けた。巻末に正式な遺言書を作るための簡便な記入シートをつけるなど、実用性にも気を配っている。
| 当世カンサイ人―8000人調査でわかったすごい実像 | |
![]() | 日本経済新聞大阪本社 日本経済新聞社 2005-04 売り上げランキング : 43,860 おすすめ平均 ![]() ちょっと母数少な目?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「関西人」と聞いた時、どんなイメージを持つだろうか。ことお金に関して言えば、その多くは「がめつい」「けち」「しぶちん」など、どちらかというと後ろ向きのイメージが強いのではないだろうか。関西に縁もゆかりもない人なら、なおさらだろう。
しかし、実際に関西で暮らしてみると、関西人は決してけちではないし、特別お金に細かいわけでもない。むしろ、大阪市内の谷町筋にちなむ「タニマチ」の語源にみるように、関西人は寄付やビジネスへの資金援助に積極的で、使うときは思い切ってお金を使う。
本書はそんな関西人の金銭感覚や経済観念、毎日の暮らしなどについて、日本経済新聞大阪本社版で一年間に渡って連載した「当世カンサイ人」に加筆、再構成したものだ。新聞連載にあたって、関西圏と首都圏で延べ八千人にアンケート調査をした。お金の借り方や使い方、働き方と給与の満足度、女性の結婚観、買い物での値切り方や宝くじを買う頻度まで、様々な角度から今どきの関西人の実像を浮かび上がらせた。
アンケート結果は実に興味深かった。赤い羽根の募金や震災などへの義援金、母校が甲子園に出場したときの寄付などは、関西圏の方が首都圏より積極的だった。いわゆるキャリア女性の結婚への意識も大きな違いがあった。関西では一流大学卒、大企業総合職の女性でも専業主婦を志向。共働き、家事分担は当たり前と考える首都圏のキャリア女性とは人生観が基本的に違っていた。
関西と言えば阪神タイガース、たこ焼き、お好み焼きぐらいしか思い浮かばない人や、関西人にあまりいいイメージをもっていない人にこそ、是非お読み頂きたい。
| 日本のお金持ち研究 | |
![]() | 橘木 俊詔 森 剛志 日本経済新聞社 2005-03 売り上げランキング : 307 おすすめ平均 ![]() お金持ちにアンケート ありそうでなかったデータ お金持ちへの道Amazonで詳しく見る by G-Tools |
このほど発表された2004年分の高額納税者番付で、サラリーマン(給与所得者)が初めてトップになり話題になった。通常は「お金持ち」とサラリーマンは縁遠いと思われているからだろう。ではお金持ちとはどんな人々なのか。本書では2人の経済学者がアンケートなどを通じて高所得者の実情を探っている。
お金持ちというと「社長」「医師」「弁護士」といった職業が思いつく。実際、本書は「企業経営者と医師が高額納税者の2大メジャー職業」と指摘。ただ医師の場合、大学病院の教授より、眼科や美容外科の開業医の方が経済的成功を収めているという。
経営者に関しても似たようなことがいえる。1960年代の高所得者は製造業、建設業など大企業経営者だったのに対し、現在はITなどの情報通信や化粧品製造、飲食チェーンなどサービス業を自ら始めた人が圧倒的に多い。
米国では医師よりも高所得者が多い弁護士はどうか。「日本では高所得者の中に占める弁護士の数がきわめて少ない」というのが調査結果だ。法律への需要があまり大きくないことや、情報や科学技術の専門知識を持つ弁護士が少なく、活躍の場が限られていることが背景にあるという。
お金持ちになるにはどうしたらよいかといった本は多いが、その実態を学術的にとらえた本は少ない。本書を読むと「名門大学から大企業へ」という成功モデルが揺らいでいることも実感できる。
| 小山内薫―近代演劇を拓く | |
![]() | 小山内 富子 慶応義塾大学出版会 2005-01 売り上げランキング : 1,072,193 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本近代演劇の開祖ともいえる演出家で、詩人、小説家でもあった小山内薫の評伝。著者は薫の二男と結婚した児童文学作家。本人と接点はないが、夫人とは20年暮らしをともにした。夫人の言葉や執念で集めた逸話は貴重だ。
鴎外をはじめ多くの文学者に支えられた小山内は明治演劇界で、芸術的な近代劇(新劇)を根付かせようと腐心した。盟友の市川左団次と結成した自由劇場がイプセンで幕を開けた日の熱気はすさまじい。近代文学を志す作家がことごとく顔を出すさまが描かれるが、壮観と言うほかない。
新劇が文芸改良運動の先頭を走った時代の栄光は、だが悲惨をも背負う。戯曲を重んじる余り俳優は素人でよし、適当な台本がないから当面は翻訳劇しか上演しない、との悪名高い主張は物議をかもす。モスクワ芸術座で記録したノートの存在はコピー演出家の印象を生む。同時代ばかりか、反新劇を唱えた戦後の小劇場運動でも標的にされたのは啓蒙家の不幸だった。
著者が書くとおり、歌舞伎通の小山内が文学を超えた舞台の力を認識し、民族芸能への着眼も備えていたことは、もっと知られていい。
とはいえ本書は演劇論に深入りせず、おしゃれへの目配り、女性関係などをこまめに紹介し、家系や初恋のてんまつまで入念に追って明治青年の姿を活写する。美青年のプラトニックな初恋の味が、新劇の性格に重なって見えるところに妙味がある。
| 進化する日本的経営―全員リーダーの時代へ | |
![]() | 吉村 久夫 日経BP企画 2005-03 売り上げランキング : 152,486 おすすめ平均 ![]() 新日本的経営を展望Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本古来の武士道や商人道は高い倫理観と社会貢献の志を備え、こうした精神文化が企業の永続を重視する日本の経営のバックボーンにあるという。日本的経営は長い歴史と文化のなかから生み出され、簡単に崩壊するような柔なものではないという。
強みを再確認したうえで、環境変化に合わせ見直すべき点は見直し、日本的経営をさらに進化させる時だと説く。トップから新入社員まで一人ひとりが主体的に行動する「全員リーダーの経営」を提唱する。
| 中国製造業のアーキテクチャ分析 | |
![]() | 藤本 隆宏 新宅 純二郎 東洋経済新報社 2005-04-22 売り上げランキング : 21,308 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
世界市場を席巻しつつある中国の製造業を、いかなる「設計思想=アーキテクチャ」によって成り立っているのかという視点から分析している。どのような組織的な特徴が現場に見られるのか中国における物づくりの論理を、14人の研究者がそれぞれの専門分野で探った。自動車や電機産業などをケースに、日本と中国との基本的な違いを追究している。これに基づけば、日本企業の共生可能な対中戦略が展望できるという。
| 脳はどこまでわかったか | |
![]() | 井原 康夫 朝日新聞社 2005-03-11 売り上げランキング : 7,155 おすすめ平均 ![]() 脳科学の現状の概説書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
科学研究の成果をわかりやすく社会に伝えることは、ますます重要になってきている。とりわけ、最近は「科学のたこつぼ化」が進んだためか、全体を体系づけて語ることが少なくなっている。こうした現状を打破しようという試みが本書に現れている。一線の研究者たちが記憶、知能、心といった基礎的分野から、認知症やプリオン病まで脳に関する自分たちの最新の成果を述べている。
| 開発のディレンマ | |
![]() | ジョン・トーイ 原 洋之介 同文舘出版 2005-02 売り上げランキング : 1,480,113 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
開発経済学の泰斗の初めての邦訳。本書によれば、政府の市場への介入が経済成長に効果を持たなかったという見解は誤りであり、政府の「強力だが思慮深い選択的な介入」こそ台湾や韓国など東アジア地域の経済発展に結びついたのだという。一方的な市場自由化論、市場自由化をベースとした開発経済学へのレベルの高い反論書として、経済援助にかかわる政策担当者、研究者に一読を勧めたい。
| 世界を見る目が変わる50の事実 | |
![]() | ジェシカ・ウィリアムズ 酒井 泰介 草思社 2005-04-22 売り上げランキング : 849 おすすめ平均 ![]() 面白かった!! 私は少なくともちょっとだけは世界を見る目が変わりましたAmazonで詳しく見る by G-Tools |
英国放送協会(BBC)のジャーナリストである著者が、世界情勢をめぐる50項目の「事実」を具体的な数値を挙げて紹介する。「世界の5人に1人は1日1ドル未満で暮らしている」「世界の人口の70%以上は電話を使ったことがない」といった発展途上国の貧困を示すものから、「米国で摂食障害を患っている女性は700万人」「英国の15歳の半数はドラッグ体験済み」などの先進国の社会問題まで幅広く指摘。原因や改善策を探っている。
![]() | ドラえもん学 横山 泰行 PHP研究所 2005-04-16 売り上げランキング : 4,552 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
藤子・F・不二雄の漫画『ドラえもん』が1969年に初めて雑誌に登場してから、アニメ化を機に国民的な人気を得ていく過程をたどる。著者は作品の魅力を学問的に研究する「ドラえもん学」を提唱する富山大学教授で、海外での国ごとの評価の違いも紹介。中国は「内容が健全」と好意的だが、イタリアではドラえもんの協力で難問を解決する主人公、のび太の生き方が自己中心主義の社会になじんでいない、と指摘する。
| 中村邦夫「幸之助神話」を壊した男 | |
![]() | 森 一夫 日本経済新聞社 2005-04 売り上げランキング : 7,640 おすすめ平均 ![]() 読者をも元気にする本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
松下電器産業の歩みのなかで現社長・中村邦夫氏の改革にはどんな歴史的な意味があるか。本書から鮮明に浮かび上がるのはこの点だ。
1977年に抜てきされた山下俊彦社長は総合エレクトロニクス企業への脱皮を掲げた。続いて登板した谷井昭雄氏、森下洋一氏も、国際化など経済の構造変化に合わせ松下の体質改善を目指した。
だが、これらの歴代トップはある大きな壁を破りきれなかった。創業者・松下幸之助氏が築き上げた経営を変えてはならないと、抜本改革をタブー視する空気である。「(幸之助氏が)偉大であるがゆえに大きな虚像が独り歩きを始め、革新を阻害する存在へと祭り上げられていった」
そうしたカリスマ創業者の呪縛と決別したのが森下氏の後継の中村氏だという。幸之助氏が死去した89年4月、中村氏はアメリカ松下電器の社内分社社長に就任し経営者への道を本格的に歩み始めた。創業者時代が幕を閉じると同時に新時代の準備が始まる形となった。
米国駐在で合理的な考え方に磨きがかかり、松下の社長に就いてからは伝統的な事業部制の否定や人員削減の断行など、タブーを次々に破った。ようやく松下は創業者の影から脱し、「自立した経営者」の時代に入ったという。 革新的な経営者はいかにして生まれるのか、リーダーシップとは何か、問い続ける姿勢が本書を貫く。松下を題材にした経営者論。
| 脳と創造性 「この私」というクオリアへ | |
![]() | 茂木 健一郎 PHP研究所 2005-03-19 売り上げランキング : 3,297 おすすめ平均 ![]() 腑に落ちる 個と普遍を架橋する稀有な試み 日本語で書かれた最高の書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
物質である脳が意識を生み出す不思議。脳科学者の著者はこのテーマを科学的手法にこだわらず追究してきた。今回の論集は「創造性」に焦点を当てる。創造性が天才だけのものでなく、人間誰しもが持つ特性であることを豊富な事例から論証する。
例えばチェス。コンピューターがありとあらゆる可能性を検討して指し手を決めるのに対し、人間は直感で決めた指し手を論理的に裏付ける。この「いける」という感覚はチェスの世界チャンピオンをコンピューターが破った今も脳にしか生み出せない。
何気ない会話のやり取り一つにも、脳の驚異的な能力が潜む。相手の言葉をとらえ、臨機応変に自分なりの言葉を「創造」する。会話のうまい下手は「程度問題」であり、天才と凡才の創造力の差もコンピューターと比べた場合は紙一重にすぎないという。
著者は現代という時代の特殊性にまで踏み込んでいく。肉体労働第一の時代から、産業革命後の情報処理能力が尊ばれた時代を経て、現代はコンピューターが持てない「創造性」を発揮することが人間に最も求められているとする。その上で、脳に潜む創造性を発揮することが、現代における生きる喜びに直結すると結論づける。
人生をどう生きるか。脳を脳神経の機能からだけでなくクオリア(感覚質)という重要な概念から考えてきた著者の、新たな一歩を示す著作と言えよう。
| 電力産業の経済学 | |
![]() | 穴山 悌三 NTT出版 2005-03 売り上げランキング : 54,214 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
1988年に始まった電力自由化は、今年4月の小売り自由化範囲の拡大、卸電力取引所の創設で大きな節目を迎えた。自由化対象は電力需要の三分の二近くに達し、自由化進展の障害とされていた新規参入者の電力調達にも取引所という新たな手段が設けられたからである。制度的には、過去十年で日本の電力自由化はかなりのスピードで進展したといっていいだろう。
本書は電力産業の歴史を整理しながら、主に95年以降の自由化の動きを欧米の自由化事例も含め分析、評価している。規制産業を研究する経済学者からすでにかなりの類書が出ている。だが、本書は著者が電力会社社員であるためか、モデルを使った経済学的な分析にとどまらず、実務家としての視点が生きているのが特色といえる。
電力を論じる際には当然だが、本書もキーワードは「安定供給」である。高度成長期には「目的」であった安定供給が規制緩和を迎えるとともに「前提」とされ、様々な問題が生じたと指摘する。2000年以降、欧米で頻発した大規模停電などである。
そうした中で、著者は現代の電力産業が「不完全な市場」と「市場を通じた安定供給」の二つのチャレンジに直面していると強調。「垂直統合型の電気事業者の公正・透明な行動への行為規制」を効率性の点で望ましいとみる。電力会社寄りの結論ともいえるが、全体としては公平な議論が展開されている。
| 若者と仕事―「学校経由の就職」を超えて | |
![]() | 本田 由紀 東京大学出版会 2005-04 売り上げランキング : 8,819 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
企業社会はこの10年、激動の時代にあった。定職に就かないフリーターやニートと呼ばれる無業者の増加など若者の就業環境も急激に変化している。本書は「学校経由の就職」が定着した歴史を振り返り、1990年代にそれがどう変容したかを検証。
新しい時代の教育のあり方を提言している。従来の抽象的で断片的な教育でなく、若者が社会で確かな存在感を発揮できるための具体的な能力や知識を手渡さなければならないというのが著者の主張だ。
| お寺の経済学 | |
![]() | 中島 隆信 東洋経済新報社 2005-02 売り上げランキング : 2,012 おすすめ平均 ![]() お寺の仕組み、仏の道。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
江戸時代のキリスト教弾圧で生まれた檀家制度と墓地を媒介とする日本独特のお寺の経営が大きな転機を迎えたと警告する。過疎化に伴う地方のお寺の経営難、檀家寺から切り離された都市部の住民。頼みとする葬儀の主導権は葬儀社が握り、お布施など不明朗な料金が消費者の不信を買い、お寺離れに拍車をかける。墓地もお寺の独占分野ではない。日本の仏教の歩みを要領よくたどりながら、お寺の構造改革を提起する。
| [実学・経営問答]高収益企業のつくり方 | |
![]() | 稲盛 和夫 日本経済新聞社出版局 2005-03-15 売り上げランキング : 1,224 おすすめ平均 ![]() 本気の経営者必見 納得の一冊! 稲盛さんの経営哲学がわかりますAmazonで詳しく見る by G-Tools |
京セラの創業者である著者が高収益企業のつくり方について指南する。多くのページは著者が塾長を務める「盛和塾」の塾生が質問を投げかけ、著者がそれに答える形式になっている。
「新分野に進出する時の成功の鍵とは」「デキの悪い社員をどうすればよいか」など、幅広いテーマが取り上げられており、同じような悩みを抱える経営者には興味深く読めるだろう。厳しい経営環境のなか、企業が成長を持続するための近道を示してくれる実用書でもある。







グローバル下での『個人の人生』と『企業に殉ずる』バランスは何処か?
高橋伸夫経営哲学の集大成





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