メイン > 日経・日経産業新聞書評(2005年) > 2005年5月1日~5月13日
| さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 | |
![]() | 山田 真哉 光文社 2005-02-16 売り上げランキング : 3 おすすめ平均 ![]() 経営学の入門書として さらりと読んでみよう 実生活と会計のつながりが分かる会計入門書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
一般的には、会計の入門書といいながら専門用語も多く決して易しくない。何とか本当の入門書を提供したいとたどり着いたのが、「会計の常識から離れた、日常の気になる疑問から話を始める」という本書の手法だ。「さおだけ屋」の章では、さおだけ屋の不思議なビジネスモデルを解明し、利益の出し方という会計の本質に迫る。
「ベッドタウンに高級フランス料理店の謎」の章では連結経営の本質、「あの人はなぜいつもワリカンの支払い役になるのか?」ではキャッシュフローについて、物語仕立てで筆を進めている。会計アレルギーの人向けの工夫として、「くだらない話」も豊富に盛り込んだ。著者が主張する「会計は生活に密着したもの」を身近に感じられる入門書だ。
| 中村邦夫「幸之助神話」を壊した男 | |
![]() | 森 一夫 日本経済新聞社 2005-04 売り上げランキング : 2,832 おすすめ平均 ![]() 読者をも元気にする本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
松下幸之助の呪縛で身動きが取れなくなっていた松下電器産業。1977年の山下俊彦社長の大抜てき以来、経営改革を目指したが、制度や組織には手を着けられなかった。「不毛の十年」を経て、2000年に登場したのが現社長の中村邦夫氏だ。
「破壊と創造」をスローガンにした中村氏は、松下ではタブーだった人員削減に着手し、事業部制を破壊。V字回復を果たしつつある。歴代社長にできなかったことがなぜ果たせたのか。著者は中村氏の破壊力の源を、合理主義者であった創業者との共通点にあるとみる。巨大システムをバラバラにして再組織化したのも、創業者の精神である「顧客第一」「素直な心」を取り戻す作業にすぎないと、逆説的に説く。
| 奇人と異才の中国史 | |
![]() | 井波 律子 岩波書店 2005-02 売り上げランキング : 557 おすすめ平均 ![]() 中国史を彩る56人のキャラクターAmazonで詳しく見る by G-Tools |
古代から近代までの中国でユニークな生き方を貫いた56人を紹介しているのが、井波律子著『奇人と異才の中国史』(岩波新書、700円)。中国の英雄・豪傑といえば一人でも本一冊が書けてしまいそうだが、本書は、中国文学者がそれぞれの生涯をぐっと圧縮。短い文章の中に、一人ひとりの波乱万丈の人生を浮かび上がらせた。
発行部数は今年2月下旬の刊行以来、6刷で4万部と好調だ。
儒教の祖である孔子、「三国志」の曹操、諸葛亮、唐時代の詩人である李白、白楽天らも出てくるが、それほど有名でない人物も登場する。
中でもユニークなのは東晋の政治家の王導。たぐいまれなバランス感覚で亡命王朝である東晋の体制を軌道に乗せた。晩年には放任主義に徹したが、それは考え抜かれた高度な政治テクニックだったという。彼のおいが書聖と称された王羲之だった。
「日本人にあまりなじみのない明代及び清代の人物にも目を配っているのが特徴」(岩波書店の井上一夫氏)。例えば明末期から清前期に活躍した蔵書家・出版家である毛晋。古書の収集に尽力する一方、その中から出版に値する本を選び、校訂した上で刊行した人物である。
「人物という具体的なイメージを通じて、中国の歴史を語ることを狙った」と井波氏は語る。吉川英治著『三国志』、司馬遼太郎著『項羽と劉邦』など中国の人物モノでベストセラーとなった作品は過去にも多い。
反日デモによって多くの日本人は現在の中国に複雑な感情を抱くようになったが、中国の歴史に魅せられる日本人は、今も決して少なくない。
諸葛亮は後年、軍事家としても手腕を発揮するが、もともとすぐれた行政能力の持ち主であった。政治家としての彼は、劉備のライバル曹操と同様、法や制度を重視する法家主義者だった。
| 四畳半再生記 | |
![]() | 佐子 武 智書房 2005-04 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
住宅関連書籍の編集者である著者は、築百年近い自宅の旧家屋を解体することになった。その際、四畳半の和室と風呂場を新築家屋の離れとして残した。「旧屋一部再生」の過程を文章と写真で紹介する。家族の歴史が染み込んだ家に対する愛着だけでなく、日本家屋が持つ「古い日本の美しさ」へのこだわりが感じられる。
| 大丈夫! 医療・介護・年金 これで安心 | |
![]() | 日本経済新聞社 日本経済新聞社 2005-04-08 売り上げランキング : 37,184 おすすめ平均 ![]() 知らなきゃ損Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「入院したらいくらかかる?」「老後に働くと年金は減る?」――少子高齢化の中で募るお金や健康の不安にどう対処すればいいか。年金、医療など社会保障制度について見過ごしている点はないか。こうした疑問に平易に答える。本紙連載記事に加筆。人生設計のガイドとして活用できる。
| これならできる簡単エクササイズ | |
![]() | 湯浅 景元 岩波書店 2005-03 売り上げランキング : 6,433 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
元気で長生きするには適度な運動が必要といわれるが、何をすればいいか戸惑う人も多いだろう。むやみに体を動かして逆効果になる場合も少なくない。
本書は、医学博士の著者が目的別、体の部位別に室内で簡単にできるストレッチ方法をわかりやすく解説。目的別では疲労回復やストレス解消など、部位別では脚や腰について、それぞれに合った体の動かし方を提案している。どれも苦しい姿勢や無理のない動きなので、年齢を問わずに実践できる。また脳の老化予防にも触れ、脳の血行促進に欠かせない指先を使った運動や、大きめに切った歯応えのある食べ物をゆっくりとかむ効用なども紹介している。
| 誰がダニエル・パールを殺したか ? (上) | |
![]() | ベルナール=アンリ・レヴィ 山本 知子 NHK出版 2005-03-27 売り上げランキング : 12,216 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 誰がダニエル・パールを殺したか? (下) | |
![]() | ベルナール=アンリ・レヴィ 山本 知子 NHk出版 2005-03-27 売り上げランキング : 14,303 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2002年1月、米国人ジャーナリスト、ダニエル・パールは、パキスタンのカラチで狂信的なイスラム主義者の手で惨殺された。著者は、丹念な取材をもとに「ロマンケート(調査報告小説)」の手法を駆使しながら、パール誘拐と殺人の驚くべき動機と背景を探っている。
パールはパキスタンの情報機関の一分派に操られたイスラム主義過激派に殺害されたというのが著者の結論である。そして、パールはアルカイダの隠れ簑(みの)となっている慈善財団の所有する家に幽閉されたというのだ。直接パールの誘拐にあたったオマル・シェイクはロンドン大学で数学や統計を学んだ秀才であったが、ビンラディンの部下となり、アルカイダのウェブサイトの構築とセキュリティの開発にあたった。このオマルこそ、アルカイダとISI(パキスタン軍統合情報部)をつなぐ人物だったという。
事態は、パールがユダヤ人であり、軍の一部とテロリスト組織との間の情報提供や密輸の秘密をかぎつけたから殺害されたという単純なものではない。イスラム主義の核爆弾の父アブドゥル・カディル・カーンと北朝鮮やイランとの秘密の関わり、パキスタン政府とテロリスト・ネットワークとの複雑な共謀について、記事を書ける証拠を握ったことが死を招く原因になったと推測するのだ。
パールは、「狂信的な科学者たちとアッラーの狂信者たち」の陰鬱な世界、情報機関と核機密が共有している闇に近づき、「好奇心のあまり、入ってはいけない領域に足を踏み入れた」(ムシャラフ大統領)のである。彼は、米国の同盟国として「テロとの戦い」に参加するパキスタンが、テロリストも含めた顧客相手の恐るべき核拡散に加担している事実を書きたかったのではないか。
著者はパールの志を継いで、パキスタンこそ「今日のならず者国家のなかにあっていちばんのならず者」にほかならないと強調する。パールによる「文明間戦争を唱えるあらゆる教条主義者」との戦いを継承する本書は、取材力と想像力に加えて、フランス人特有の哲学的洞察力にも溢れた力作といえよう。
| ウチの社長は外国人―成功起業家10人のサムライ精神 | |
![]() | 大宮 知信 祥伝社 2005-02 売り上げランキング : 16,052 おすすめ平均 ![]() 日本が受入れるべき「外国人」の姿Amazonで詳しく見る by G-Tools |
祖国を離れ、日本で地位を築いた外国人経営者の奮闘ぶりを追ったノンフィクション。難民認定を受けた後、電子工業の会社を立ち上げたカンボシア出身の男性、日本人の夫の死を乗り越えてペルシャじゅうたんの輸入販売会社を創業したアフガニスタンの女性、企業や自治体に環境問題のコンサルティングをしているデンマーク人男性など10人を取り上げる。偏見や異文化摩擦にめげずに道を切り開いた不屈の精神が伝わる。
| 日本文明77の鍵 | |
![]() | 梅棹 忠夫 文芸春秋 2005-04 売り上げランキング : 2,111 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『日本文明77の鍵』梅棹忠夫編著 日本を紹介する書物として1980年代に出版され、海外でも評判を呼んだ書物の改訂版。「貝塚」「日本人はどこからきたか」など古代の事象から「ニュータウン」といった現代社会の問題まで、77のキーワードで日本の多様な側面を、研究者が分析する。「日本」の特性がギュッと一冊に凝縮されている。
| フリーターとニート | |
![]() | 小杉 礼子 勁草書房 2005-04 売り上げランキング : 979 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
定職に就かずパートやアルバイトを繰り返すフリーター。そうした仕事にすら就かず職業訓練も受けていない無業のニート。その数は合計270万人とも言われ、大きな社会問題になっている。こうした若者を生み出す背景には何があり、実態はどうなっているのか。三人の著者が労働政策と家族社会学の視点から考察を試みている。
まずはデータで実像に迫るが、本書の特徴はフリーターあるいはニートと呼ばれる51人の若者への丁寧なインタビューの分析だろう。ここから浮かび上がるのは、彼らの抱える問題や背景は一様ではないということだ。かつての日本は中学、高校と企業が協力し、学窓を巣立つ若者を社会に受け入れるシステムができていた。しかしここ10年の変化の中でスムーズな移行が難しくなっている。
経済状況が厳しい家庭の子どもたちは、自立のためにカネを稼ぎたいと普通の子ども以上に熱望する。しかし、彼らの前にあるのはパートやアルバイトなどの仕事だけだ。一方、都会に住み親が高学歴で比較的裕福な家庭に育った若者たちは、自分に自信が持てず大学進学や就職を前に立ちすくむ。学校や家庭、社会は何ができるのか。
一人の事例がテーマごとに分断され随所に出てくるためやや読みにくさはあるが、口調も含めて忠実に再現されており、生きた人間像が伝わってくる。今後の対策を考える上で、示唆に富む一冊だ。
| MBA全1冊 | |
![]() | ジョエル・クルツマン ヴィクトリア・グリフィス グレン・リフキン 船川 淳志 日本経済新聞社 2005-02-25 売り上げランキング : 4,120 おすすめ平均 ![]() 一冊 内容 星 4.5 で 装丁 星 2.0:重み配分で星4個Amazonで詳しく見る by G-Tools |
どうすれば強い企業をつくれるかをテーマに、米国の経営学者、経営者、コンサルタントなどからの寄稿を一冊にまとめた。「世界最強のビジネス思考ガイドブック」という副題のように、経営戦略の立案やマーケティングなどの手法を指南するのでなく、押さえるべきツボや問題意識を説く。「マーケティング戦略はその担当部門とセールス部隊の連携がなければ成果が出ない」など、さまざまな提言を紹介する。
| 競争に勝つ大学―科学技術システムの再構築に向けて | |
![]() | 沢 昭裕 寺沢 達也 井上 悟志 東洋経済新報社 2005-02 売り上げランキング : 4,109 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
経済産業研究所の経済政策レビューシリーズの一冊。国立大学の法人化、専門職大学院の創設など、日本の大学制度は大きな転換期を迎えている。日本の大学が競争力を高めるためには何が必要なのか、産学連携が成果をあげるためにはどんな環境整備を行う必要があるのか、といった問題を米国の大学システムと比較しながら検証した。最終章には九項目の具体的な提言も記載されている。米国に一方的に範をとった提言には正直違和感も大きいが、豊富な実例紹介には一読の価値がある。
| ネット社会の自由と安全保障―サイバーウォーの脅威 | |
![]() | 原田 泉 山内 康英 NTT出版 2005-03 売り上げランキング : 65,142 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
インターネットで拡大した中国の反日デモ、ウィルス対策ソフト会社が招いたシステム障害、偽造カードによる現金の盗難――。IT(情報技術)の発達は我々の生活を便利にしたが、一方で新たな社会問題も引き起こしている。国家レベルではサイバーテロが安全保障を脅かす新たな要因だ。本書は日本、米国、中国のシンクタンクの研究者がネット社会の様々な問題点を浮き彫りにした。
インターネットはもともと米国の国防技術に始まるが、技術の発展を担ったのは自由な風土に育つ西海岸の技術者たちだった。いわゆるハッカー文化と呼ばれる自由な思想がそこに生まれ、米政府とも距離を置いたことがその後の世界的な普及につながった。
ところが2001年9月11日、世界を仰天させる事件が発生する。米同時テロだ。ブッシュ政権はわずか2カ月で「USAパトリオット(愛国者)法」を制定、国家の安全保障の前には個人のプライバシーや言論の自由をも制限するという方針を打ち出す。こうした政策転換はネット信奉者との間で大きな摩擦を招いた。
一方、インターネットが急拡大する中国でも「黒客」と呼ばれるハッカーと政府との攻防が始まった。コンピューターウィルスの発生は米国に次ぎ、中国が二番目に多い。今回もネットによる反日デモの増幅に対し政府は有効な対抗手段を見いだせなかった。
こうした様々な問題に対し、01年11月には「サイバー犯罪条約」が採択され、03年12月には「世界情報社会サミット」が開かれた。ところがこの会議はもう一つ別の問題を露呈した。IT先進国として世界の情報通信インフラを抑えにかかる米国と、技術の新しい発展機会を求める中国など途上国との対立問題である。 日本でも四月から「個人情報保護法」が施行され、情報セキュリティーへの関心が高まっている。社会の枠組みが従来の人的組織からネットワークへ移りつつある今後は、こうした問題点を一つひとつ解決していく必要があると本書は訴える。日本企業の中国進出が進む今、米国と中国が抱えるIT政策の課題を知るという意味では一読に値する本といえよう。
| 通貨燃ゆ―円・元・ドル・ユーロの同時代史 | |
![]() | 谷口 智彦 日本経済新聞社 2005-03 売り上げランキング : 644 おすすめ平均 ![]() 人民元は経済のみならず、政治の問題である。 わたしには読みやすかったです なるほど、と思いましたAmazonで詳しく見る by G-Tools |
国際金融の動態は、政治と経済の絡み合いの中から生まれてくる。その劇的な展開には、人を引きつけるものがある。本書は、熟達のジャーナリストが、その魅せられたゆえんを伝えるべく、国際金融の同時代史を叙述したものである。
本年は戦後60周年であるが、このことはドルを基軸通貨とする時代が還暦を越えたことも意味している。本書では、時間の流れの前後はあるものの、一巻全体を通じて、ブレトン・ウッズ体制が成立してドルが基軸通貨の地位に就いたときから、ニクソンショックを経て、現在に至る歴史が語られている。
記述は平易で、良質の知的エンターテインメントとして読むことができる。しかし、その分析視角は、スーザン・ストレンジに範をとった底深いものであり、内容はきわめて示唆に富んでいる。
中心テーマは、通貨の政治性である。通貨の背後には、常に政治権力が存在する。いわれてみれば当然のことではあるが、しばしばわれわれはそのことを忘れがちである。そうした忘却からわれわれを覚醒させるようなエピソードが豊富に語られている。
例えば、ドルが基軸通貨になったのは、自然にではなく、ブレトン・ウッズでの会議の結果、結ばれた条文中の規定による、という事実が示される。その記述によって、ドルの基軸通貨化が米国の明確な覇権奪取の意志の所産であることを、われわれは改めて確認させられる。
したがって、人民元の行方やユーロの意味、円の国際化といった問題を考える際にも、権力の意志を考慮に入れなければならないということになる。ましてドルの将来を検討するときには、権力の意志を考えるのは当然だとされる。
これは、全く正しい指摘である。ただし、経済学の範疇に収まらない政治的要因を考慮に入れたからといって、為替相場の予想が容易になるわけではない。本書の出版直後に、米国の経常収支赤字が過去最悪を更新したことが発表されたが、皮肉なことに、その後はむしろドル安是正の流れとなっている。まさに予想の範囲にとどまらないがゆえに、国際金融の動きはドラマティクだというべきである。
| 魔術師は市場でよみがえる―タイガー・マネジメントの興亡 | |
![]() | ダニエル・A.ストラックマン 東洋経済新報社 2005-02 売り上げランキング : 8,700 おすすめ平均 ![]() ジュリアンロバートソンの伝記。 市場の魔術師の興亡Amazonで詳しく見る by G-Tools |
東京株式市場で存在感を高める外資系ヘッジファンド。空売りなどリスクを伴う取引にヘッジファンドが登場することが多く、昨年には経営危機に陥った三菱自動車の資金調達に絡んで話題を集めた。だが、その素顔はベールに包まれ、なかなかうかがい知ることができない。
本書は、ヘッジファンド業界ではジョージ・ソロス氏と並ぶ巨頭と言われたジュリアン・ロバートソン氏の物語だ。ヘッジファンドについての書籍は多数出版されているが、本書はロバートソン氏という人間に焦点を当てており、ヘッジファンドとは縁がない一般のサラリーマンにとっても比較的抵抗感なく読める内容だ。
加えて題材にドラマ性がある。ロバートソン氏が創設したタイガー・マネジメントは、二十年間に及んで圧倒的な運用成績をたたき出してきたのに、情報技術)バブル絶頂期の2000年に突如として崩壊したからだ。猛烈なIT関連株の値上がりに翻弄され、ロバートソン氏は瞬く間に奈落の底に突き落とされたのだ。
資産運用業界に身を置く著者は、ロバートソン氏自身のほか多数のタイガー関係者に取材し、興味深いエピソードをいくつも聞き出している。その中の一つはロバートソン氏を一躍有名にした取引であり、日本とも関係がある。
1990年代半ば、徹底した調査を基に銅の価格がいずれ下落すると判断し、大規模な空売りに向かった時のことだ。結局、住友商事のトレーダーによる巨額の不正取引が発覚し、銅相場は暴落。日本では住友商事の不祥事として注目を集めたが、その裏でロバートソン氏は1日で3億ドルもの利益を上げていたのである。
類書には、1998年に破たんの危機に見舞われたヘッジファンド大手、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)を題材にした『天才たちの誤算』もある。これはジャーナリストによる本格的ノンフィクションだ。それと比べると本書は文体も淡々としており、食い足りなさもある。だが、ヘッジファンドについて地道な調査に基づいて分析した本として読めば、様々な示唆を与えてくれる。


経営学の入門書として














なるほど、と思いました
