メイン > 週刊ダイヤモンド『ベストセラー通りすがり』 > 2006年7月1日~9月30日
| 他人を見下す若者たち | |
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格差社会の心理学
先週ここで取り上げた『世界の日本人ジョーク集』は中公新書に久々に出た大ヒットでしたが、今週もまた老舗新書の大当たり物件。
2月に出て半年で30万部超えって勢いは、新潮新書とか光文社新書みたいだし、タイトルも帯のアオり文句(「自分以外はバカ」の時代!)も刺激的煽情的で、これまたネオ新書系。『世界の~』が今どき珍しい“懐かしい新書”だったのとは対照的なれど、こっちも中身はワリと正統派です。
キイワードは「仮想的有能感」で、これ、他人が認める実績もないのに自分はデキると思い込んでる状態のこと。生きていくのに優越感が必須って状態は、「上見て暮らすな、下見て暮らせ」の時代と変わらなくて、つまりはそれが格差社会とやらの心理的側面か。
著者は1947年生まれの教育心理学者。名大大学院教授の分析っていうより団塊おじさんのボヤキに聞こえる部分もあって、この本がネット世界で「若者たち」からよくクサされてるのは、そのせいかしらん。【林 操 コラムニスト】
| 世界の日本人ジョーク集 | |
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笑うより安らぐ
東京都心の某大書店で『国家の品格』を抜いて新書売り上げ第1位! なんて、版元がメールマガジンで無邪気に喜んじゃってる。考えてみたら、中公新書も、そのお気楽版「ラクレ」も新書ブームには縁遠い。中央公論の本からしてココに登場するのはたぶん初めてです。
で、発売7ヵ月で10万部超え、珍しく大ヒットの気配が漂い始めたこの本、昔の新書っぽいタイトルは懐かしいし、中身が題名どおりなのもいまや珍しくて、ここんところ馬鹿売れしてきた高刺激系ネオ新書とはずいぶん違う。
集めてあるジョークも、解説風のエッセイも正調だから、著者が大新聞の解説委員じゃなくて30代のフリーライターだってのが、また驚き。オンライン書店の読者評にも「爆笑しました」なんてのが多くて、いや世の中、まだ擦れ切ったわけじゃないのね。
擦り切れてるワタシは大笑いはできなかったけれど、なぜだかちょっと安心はしちゃった。新書界にも、いまさらの癒やし系登場か。【林 操 コラムニスト】
| ゲド戦記 1 影との戦い | |
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見ると読むとじゃ……
公開初日の土曜日の朝に「大ヒット上映中!」ってCM打ってた映画が昔ありました。公取委に訴えたろか、なんてのは大人げないけれど、今よく似た状況にあるのが、この夏最大の話題作だったはずの「ゲド戦記」。
「寝た」「客、入ってなかった」その他いろいろ、ネットや雑誌には生々しい目撃談が溢れる一方で、TVじゃなぜかCMから番組まで「大ヒット上映中!」です。
そういう大本営発表が続かなくなったのは、ほかならぬ原作者が先月、自分のサイトで「だめだこりゃ」宣告下しちゃったから。原著シリーズが出始めたのは1968年。つまりは世界的反体制運動まっさかりの時期に現実の深い裏を描いた幻想文学なのに、40年後に日本で巨匠の息子(ただし素人)が手がけた映画版は、綺麗で薄いグローバルなオタク商品だもの。
というわけで、カネ払うなら映画版公開に合わせて廉価版が出た原作に。本誌の読者には、やっぱり安くて、けっこう平易な原著もお薦め。【林 操 コラムニスト】
| いわゆるA級戦犯―ゴー宣SPECIAL | |
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右の傲慢=左の怠慢
A級戦犯なんて言葉がまたぞろナウになった今年の夏が来る前の6月末、すでにこの本を売り出してた幻冬舎はさすがだ。それに間に合うよう、単行本1冊分のマンガ(&文章)を仕上げた小林よしのりとその取り巻きもさすがだ。結果、よく売れてるからさ。
中身については文句もある。A級戦犯は28人いるのに、よしりん節で詳しく絵解きしてるのは東条英機に広田弘毅、重光葵くらいで、あとは短文で駆け足かよとか、主人公はカッコよく、その敵は醜く描き分ける、いわゆるマンガ的手法で現実を扱うのは、やっぱ危ないでしょとか。
それでも、小林を単なるミギ扱いするヒダリとか、『ゴーマニズム宣言』シリーズを危険視するリベラルとかには同調する気が起きない。この手の劇薬が人気を集めて、それが商売になる下地をつくった責任は、怠慢カマしてきた彼らにこそあるわけだから。
『ゴー宣』と同じくらい強力で危うげなカウンターパンチ、とっとと出さないと、ホント手遅れになるよ。【林 操 コラムニスト】
インテリアコーディネーター資格試験受験願書・要項
産業能率大学出版部
女の夢
関連業界人はもちろん、短大生からOL、子育て一段落の主婦まで、女がいちばん取りたい資格のひとつがインテリアコーディネーターとか。
受験資格には実務経験だ学歴だ年齢だの制限が一切ナシゆえ間口は広くて、年1回全国7都市で実施の試験は1万5000人が受ける。
ただし、合格率は2割強。難しさは宅建主任や商業簿記2級並みらしいし、受かったからってすぐに仕事があるわけでもない。
そんな試験の受験要項と願書のセットが、8月半ばの紀伊國屋書店の週間総合ランキングでベスト5入り。調べてみたら、願書の締め切りが8月21日、駆け込み需要でしたってオチはありますが、人気資格なのは間違いない。
ちなみに、インテリアプランナーって資格もあって、試験の難易度はこっちが上だけれど、人気・知名度ともコーディネーターに劣る(受験者数は100人単位)。なお、プランナー試験やってる団体は旧建設省系、コーディネーターの方は旧通産省系です。【林 操 コラムニスト】
| 御社の営業がダメな理由 | |
![]() | 藤本 篤志 新潮社 2006-05-16 売り上げランキング : 647 おすすめ平均 ![]() ごく一部のダメな営業部隊しか対象にしていない 営業力の考察に深みが欠けるが,参考にはなる? 営業部のマネージャにお勧めの一冊!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「営業本」が売れる理由
このごろ新書に流行るミもフタもないタイトルの1冊。でも、これ見て素通りできる会社員はダメなのかも。
だって、営業ってのは常にダメ。他の部署に言わせりゃ「ウチは営業がダメ」だし、営業の管理職だって「ウチはダメ」。ダメじゃない営業ってのは、「スーパー営業マン」なんて呼ばれる個人が担ってるだけだったりする。
そういうの、まとめてホントにダメなのよ、と断じてるのがこの本で、語られるのは営業の凡人たちが組織で成果を挙げるための技術と哲学。
営業日報や管理職へのノルマは有害、営業セミナーなんてムダ、そもそも個人の営業センスは伸びない。著者が示す解決策は意外に常識的かつ合理的なんだけれど、フツーに考えられないことこそが、あちこちの営業がダメな理由なのか。
営業に縁遠い読者にも組織論として読みどころが多いから、発売1ヵ月強で10万部超えってのも納得。ただ、悪徳商法やってる連中まで読み始めてたらちょと怖い。【林 操 コラムニスト】
| 美しい国へ | |
![]() | 安倍 晋三 文藝春秋 2006-07 売り上げランキング : 125 おすすめ平均 ![]() 安部さんは,やっぱり一級の政治家である。 次期総理を知りたい人へ お粗末のきわみAmazonで詳しく見る by G-Tools |
美しくない日本の私
本人どアップの写真の脇には白地に赤く「自信と誇りのもてる日本へ」。そういう帯も含め、表紙は美しい。
なのに中身はツッコミどころ満載。「正直につづった」とあるけれど、「大叔父(佐藤栄作・当時大蔵大臣)」なんて注、フツー自分で入れるか? “昭和の妖怪”岸信介について「祖父は、私の目には(中略)真摯な政治家としか映っていない」って言い切るあたりは、正直だけど単純だし。
一方で、自身の出身大学名はなぜだか見当たらなくて、カバーの“著者”略歴も「1954年、東京生まれ。93年、衆議院議員当選」。生まれてすぐに政治家で、そのくせ就職先の神戸製鋼所の社名は本文中にバッチリ。
これじゃ成蹊大学が不憫だし、なによりこの本、ほかにもいろいろ書かれてないことがありそうに思えてくる。「自信と誇り」なら、まず自分の来歴に持てばいいのに。
こんな安倍チャンが次の首相の最ウヨク。その下地を生み出してきた馬鹿なヒダリの罪はデカい。【林 操 コラムニスト】
| 十和子塾 | |
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美人。だから何?
かつて「土曜ワイド劇場」でよく見た大根女優。君島ブランドの御曹司と婚約した途端、相手に隠し子が発覚し、それでも入籍したら、今度は舅が急死するわ、夫と義兄(腹違い)が跡目争い始めるわ。ワイドショーの渦に巻き込まれてたのが十和子でした。
あれから10年、気づいてみれば肩書は“美の強化部長”。ファッション、コスメからライフスタイルまで素人にあれこれ指南してみせるセレブマダム業がなんだか板についちゃってる。本人40歳の誕生日の5月30日に出たこの本も「大増刷」(帯より)を経て早20万部超だそうな。
もっとも、本文はどっかの女性誌の連載まとめたもんで、スッピン見せないための技術が延々。しつこく挿入されてる十和子のカラー写真はどれも単なる中年美人像。おまけのメイク術DVDは照明がキツくて十和子、鈴木その子一歩手前。
これが税込み2730円ってのも、エエ商売でんな。飛びついてる女たちの顔が見てみた……くない。【林 操 コラムニスト】
| オシムの言葉―フィールドの向こうに人生が見える | |
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「語録」のネタ元
「ライオンに追われているウサギは肉離れしない」その他いろいろ、最近急に引用転用盗用が増えたオシム語録は、たいてい、この本がネタ元。去年の暮れに地味に世に出てから半年、ついに週間ベストセラーのトップに立った。
欧州サッカー界の老兵に急に光が当たったのは、もちろん自称キャプテンとやらの“失言”から。ドイツで惨敗した途端、次のネタ提供して目くらましっていう崖っ縁戦略は、水面を歩く秘訣(最初の1歩が沈む前に次の1歩を踏み出せ)を彷彿させるけれど、版元は喜んだろな。
で、本の中身は、旧ユーゴでの生い立ちから老いて千葉に来てジェフなんとかを立て直すまでの生マジメな実録。手っ取り早く部下操縦術を盗みたいおじさんには退屈かと。
あと、サッカー通でもないのに新聞雑誌からの孫引きでオシム語録ひけらかしてると、ほら、後ろで若いのが笑ってるよ。あらゆる草食動物が追われて肉離れしないのなら、ライオンが飢え死にしちゃうだろ、とか。【林 操 コラムニスト】
| 毎日かあさん3 背脂編 | |
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当たるのは「女の週1」
ド突き漫才ならぬ悪態つき漫画の小っちゃい巨匠、西原理恵子が週1回とはいえ新聞連載! それも全国紙! 最初に知ったとき思ったのは「『毎日新聞』もそこまでキたか」。
始まったあとも、子育てがメインの私小説系エッセイ調なのに、サイバラは突然夫と別れちゃったり、息子の通う学校とこのマンガがきっかけでケンカしたり。一方、連載そのものはきわめて快調で、この秋にはもう4年目に突入かぁ。
単行本化はこれで3冊目。すでに文化庁メディア芸術祭賞やら手〓治虫(てづか・おさむ)文化賞やら受けてるし、なにより売れてる。読者の子育て体験の投稿を集めた関連企画モノまで出てるからサイバラ、『毎日新聞』に結構貢献してる。
考えてみたら、新聞マンガが長期低落ってのは、男の作家が毎日描いてる4コマ、1コマの話。この「毎日かあさん」とか読売の「あたしンち」とか、ちょっと長めの“女の週1”連載は着実に当たってる。新聞の雑誌化、そういうところにも表れてました。【林 操 コラムニスト】
| 明日の記憶 | |
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ターゲットはアナタ
いま公開中の映画版もこの原作も、「週刊ダイヤモンド」の読者はターゲットど真ん中。働き盛りの営業部長49歳が若年性アルツハイマー病にかかって、さて、仕事は? 家庭は? ほら、のぞいて見たくなってきたでしょ。実際、映画はロングラン、小説はベストセラーで、すでに20万部近い。
で、問題は見てから読むか、読んでから見るか、あるいはどっちだけで済ますか。同じ千ン百円払うなら満足感は映画版の方が勝る。原作も山本周五郎賞とかもらってるらしいが、主人公の日記が途中に挿入される『アルジャーノンに花束を』的工夫が、なんかスベってたりするんだ。
単行本の表紙のカバーがドーンと、映画のスチル写真ってのも、なんだか不思議。普通はせいぜい帯に載るくらいだから、商売としても映画主導ってことですか。
でも、よみもの、おはなしとしては決して悪くない。明日はわが身のホラーでもあり、脳トレに励みたくなる健康本でもあり。【林 操 コラムニスト】
| 五訂増補食品成分表〈2006〉 | |
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デカい重いプロ向け
6月の初め、紀伊國屋書店のランキングのトップ50に入ってたから買ってみたら、みごとに玄人用。
幅広い食材・食品を2000品目弱にまで分類して(牛だけで約100品目)、それぞれの栄養価がズラッと並んだ一覧表本体が250ページ。それ以外に栄養や食事、健康についてのデータや解説も山盛りだから全部で600ページ超です。
食品成分表そのものは文部科学省が出す官製データ。それを書籍化してる出版社は複数あって、一番人気はこの女子栄養大バージョン。役所より前、1938年から独自に食品分析表を出してた老舗ながら、大判化で表を見やすく、なんて工夫も怠らない。
外食だ中食だの産業は肥大し続けてて、老人ホームとかカロリー表示する飲食店とかも増えてるから、需要は増大してるんだろう。この本がベスト50入りしたのも、業務用かなにかのまとめ買いがあったせいみたい。古い四訂版モノだって97年までの15年間で510万部出たそうな(各出版社の合計)。【林 操 コラムニスト】
| DEATH NOTE (1) | |
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殺したい人間の名前を書くと、そいつが死ぬ。そういうノートを悪魔が落としていって、拾った高校生がウンヌン。始まりはいかにも「少年ジャンプ」の連載で、紙に書いたことが現実になるって設定は、童話の『はれときどきぶた』その他でおなじみでもある。
でも、このマンガ、その後の展開は妙にオトナびてて、友情・努力・勝利なんて“ジャンプ3大原則”からはどんどん乖離。ネクタイ締めて少年誌読んでる層には堪らないんでしょう、11巻の総計で1500万部以上売れてる。
で、「週刊ダイヤモンド」読者に注目していただきたいのは、売れ方とか売られ方。TVアニメ化される前から単行本が馬鹿売れ、トリビュートCDまで出てるってのは、あの『NANA』と同じ。
今、映画版が公開されてますが、これは前編で、後編が数ヵ月の時差おいて上映ってのは、あの「キル・ビル」と同じ。なんだか、今風コンテンツマーケティングの集大成なんです。【林 操 コラムニスト】


帯に価値あり
いつの時代も、というだけの気が

ジョークを楽しめるようになれたかな?
笑いをお忘れの皆様に・・・










