メイン > 週刊ダイヤモンド『学び直しの5冊』 > 2008年4月5日~5月3日

【イノベーションと技術】

イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)
イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき (Harvard business school press)クレイトン・クリステンセン

翔泳社 2001-07
売り上げランキング : 524

おすすめ平均 star
star必読です
star破壊的イノベーションについての名著
star破壊的イノベーションには感動!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

MOT“技術経営”入門 (マネジメント・テキスト)
MOT“技術経営”入門 (マネジメント・テキスト)延岡 健太郎

日本経済新聞社 2006-09
売り上げランキング : 9219

おすすめ平均 star
starMOTの入門本
star最強のMOTテキスト

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

サイエンス・ビジネスの挑戦 バイオ産業の失敗の本質を検証する
サイエンス・ビジネスの挑戦 バイオ産業の失敗の本質を検証するゲイリー・P・ピサノ 池村 千秋

日経BP社 2008-01-24
売り上げランキング : 5970

おすすめ平均 star
starバイオ(製薬)産業に身をおく人間は必読!
star“バイオテクノロジー神話”の検証?
star誰に、どのような示唆を与えるのか?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

キヤノン特許部隊 (光文社新書)
キヤノン特許部隊 (光文社新書)丸島 儀一

光文社 2002-02
売り上げランキング : 39838

おすすめ平均 star
star知財立国になるためにどのように行動するか
star特許部の仕事の醍醐味と厳しさ
star知的財産権強化の鍵が書かれている

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

イノベーションの収益化―技術経営の課題と分析
イノベーションの収益化―技術経営の課題と分析榊原 清則

有斐閣 2005-12
売り上げランキング : 133858

おすすめ平均 star
star技術革新の成果をいかに企業収益につなげるか
star収益化に失敗した事例が多い
star稀に見るMOTの良書

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

技術と製品の革新をいかにイノベーションにつなげるのか

イノベーションに技術の革新がどうかかわるのかについてはクリステンセンの『イノベーションのジレンマ』(二〇〇一年)が必読書。革新的な技術を生み出した企業が、そのまま覇権を握ってイノベーターとして名を残すことはないという逆説を、ハードディスク産業を例に検証する。新たな社会をつくるのは、往々にして最先端よりも一歩下がった技術的には陳腐なものであることを示している。

では、技術と競争力はどのような関係にあるのか。延岡健太郎著『MOT[技術経営]入門』(日本経済新聞社 二〇〇六年 三〇〇〇円)は、日本の自動車業界を念頭に、効率的な製品開発を競争優位に結び付けている秘密を探っている。

科学の成果は競争優位となるのか。G・ピサノ著『サイエンス・ビジネスの挑戦』(日経BP社 二〇〇八年 二二〇〇円)は、米国のバイオ産業を分析し、科学的成果を武器に生まれた会社のほとんどが収益を生み出すビジネスモデルを構築できていない現状を報告している。だが、そうした企業にもリスク覚悟のカネは流れている。この本は日本に二つのことを示唆する。日本にはリスクマネーが回るほどの魅力的な企業がないことと、科学の成果を産業化するための「出口」戦略の重要さだ。

特許の立場からイノベーションを考えられるのが丸島儀一著『キヤノン特許部隊』(光文社新書 二〇〇二年 六八〇円)。キヤノンが複写機市場に参入した際、立ちはだかったのがゼロックスの知的財産権の壁だった。そうした生い立ちもあり、知財の戦略的な活用の重要性を説いた意義深い著作だ。

最後に拙著『イノベーションの収益化』(有斐閣 二〇〇五年 三六〇〇円)を挙げる。この中で私は、日本の時計産業を取り上げた。クオーツムーブメントでは世界の六割のシェアを握る技術力を持ちながら、スイスの高級品と香港の中級品に挟撃され、時計で儲けられない現状を分析し、収益ビジネスを確立するための方策を探っている。【選・評 榊原清則 慶應義塾大学総合政策学部教授】

■2008/05/03, 週刊ダイヤモンド, 163ページ

【イノベーション概論】

イノベーションと日本経済 (岩波新書)
イノベーションと日本経済 (岩波新書)後藤 晃

岩波書店 2000-08
売り上げランキング : 113295

おすすめ平均 star
star解説チック過ぎる
star日本におけるイノベーションの言及

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメント
イノベーションの経営学―技術・市場・組織の統合的マネジメントジョー ティッド キース パビット ジョン ベサント

NTT出版 2004-10
売り上げランキング : 13146

おすすめ平均 star
star研究成果をまとめて紹介
star統合されていない!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

マンキュー経済学〈1〉ミクロ編
マンキュー経済学〈1〉ミクロ編N.グレゴリー マンキュー N.Gregory Mankiw 足立 英之

東洋経済新報社 2005-09
売り上げランキング : 10430

おすすめ平均 star
starかゆい所に手の届く良書
star分り易い。良書。
star楽しみながら学べる

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

マンキュー経済学〈2〉マクロ編
マンキュー経済学〈2〉マクロ編N.グレゴリー マンキュー N.Gregory Mankiw 足立 英之

東洋経済新報社 2005-09
売り上げランキング : 5038

おすすめ平均 star
star日本人には違和感があるテキスト

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

イノベーション・マネジメント入門―マネジメント・テキスト (マネジメント・テキスト)
イノベーション・マネジメント入門―マネジメント・テキスト (マネジメント・テキスト)一橋大学イノベーション研究センター

日本経済新聞社 2001-12
売り上げランキング : 11837

おすすめ平均 star
star思わぬ拾い物が・・
star思わぬ拾い物が・・
star一橋イノベーション研究の集大成

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質 (経済産業研究所・経済政策レビュー)
モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質 (経済産業研究所・経済政策レビュー)青木 昌彦 安藤 晴彦

東洋経済新報社 2002-02
売り上げランキング : 16836

おすすめ平均 star
starわかりやすくて便利
star重要!!モジュールという考え方!!!
star「モジュール化」について、理論から応用事例まで丁寧に解説

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ライフサイクル イノベーション 成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーション
ライフサイクル イノベーション 成熟市場+コモディティ化に効く 14のイノベーションジェフリー・ムーア 栗原 潔

翔泳社 2006-05-16
売り上げランキング : 13506

おすすめ平均 star
star淘汰とは絶滅ばかりを言わない
star難しい本ですがよく分析してある。
starなるほど!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

技術革新を超えた広い視野でイノベーションをとらえ直す

日本ではイノベーション=技術革新で、新しい技術開発と単純に理解されている。しかし、それはイノベーションの一部を示しているにすぎず、新産業につながる社会的・経済的な価値を創造しなくてはイノベーションとはいえない。

イノベーション理論ではシュンペーターやドラッカーの著作を紹介するのが筋だろう。しかしここでは、私たちの身近なところからイノベーションを考えられる著作を中心に紹介したい。

日本経済の全体的な状況とイノベーションの重要性に論究したのが『イノベーションと日本経済』(二〇〇〇年)だ。マクロ的に経済とイノベーションの関係についての全体像を俯瞰できる良書だ。

イノベーションの最も体系的な論述がJ・ティッド著『イノベーションの経営学』(NTT出版 二〇〇四年 四八〇〇円)だ。技術経営を中心として最も確立された教科書で、経済学でいえば『マンキュー経済学』に匹敵する定番本だ。これに類するのが一橋大学イノベーション研究センター編『イノベーション・マネジメント入門』(日本経済新聞社 二〇〇一年 二八〇〇円)で、各分野の専門研究者がイノベーションの歴史から企業経営や経済政策への影響などについて幅広くまとめている。

「モジュール化」というものづくりの仕組みが産業競争力に与える影響をまとめたのは青木昌彦、安藤晴彦編著『モジュール化』(東洋経済新報社 二〇〇二年 二八〇〇円)。家電製品では世界を席巻した日本メーカーは、なぜPCでは勝てなかったのか。垂直統合モデルの限界と、モジュール化時代のイノベーションを考える。

G・ムーア著『ライフサイクルイノベーション』(翔泳社 二〇〇六年 二〇〇〇円)は、実務家に今最も人気のある本だ。革新的な技術を大需要につなげるには、初期の製品形態やユーザーの熱気から離れ、市場の洞察に基づくギアチェンジが必要であることを示している。「よい製品さえ作れば」という古典的発想に再考を迫る。【選・評 榊原清則 慶應義塾大学総合政策学部教授】

■2008/04/26, 週刊ダイヤモンド, 151ページ

【イスラムの生活】

アラビアン・ナイト〈18〉 (東洋文庫)
アラビアン・ナイト〈18〉 (東洋文庫)池田 修

平凡社 1992-06
売り上げランキング : 518304

おすすめ平均 star
starアラビアの夢、人類の夢
starvery attractive and interesting book !

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

バイナル・カスライン 上
バイナル・カスライン 上ナギーブ・マフフーズ 塙 治夫

河出書房新社 2006-10-07
売り上げランキング : 365703


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

バイナル・カスライン 下
バイナル・カスライン 下ナギーブ・マフフーズ 塙 治夫

河出書房新社 2006-10-07
売り上げランキング : 412977


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み (中東イスラム世界)
文明としてのイスラム―多元的社会叙述の試み (中東イスラム世界)加藤 博

東京大学出版会 1995-11
売り上げランキング : 444717


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

イスラームにおける女性とジェンダー―近代論争の歴史的根源 (叢書・ウニベルシタス)
イスラームにおける女性とジェンダー―近代論争の歴史的根源 (叢書・ウニベルシタス)ライラ アハメド Leila Ahmed 林 正雄

法政大学出版局 2000-08
売り上げランキング : 529484


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

イスラームの日常世界 (岩波新書)
イスラームの日常世界 (岩波新書)片倉 もとこ

岩波書店 1991-01
売り上げランキング : 41521

おすすめ平均 star
star具体的なイメージを持って読めました。
star多くの読者に新たな視点を提示するだろう
star西洋を斬り捨て、イスラムを一方的・一面的に礼賛する護教論の典型

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

戒律の厳しさばかりではないイスラム教徒の普通の生活

二〇二五年には世界で四人に一人はイスラム教徒になるといわれる。なぜイスラム教徒が増えるのか。彼らの日常生活を知れば、おのずとわかってくる。

イスラム世界では、『コーラン』は一種の“人生マニュアル”であり、神髄は「すべては最後の審判で決まる」にある。だから個人責任で、他人にとやかく言われたくないし言わないことを原則とする。同時に最後の審判に備え、正しい日常生活を送るための集団的な行為規範を発達させた。

現実に対し柔軟に対応することも、イスラムの特徴の一つである。たとえば、「ラマダン(断食)」には過酷な修行のイメージがある。しかし食事を取らないのは日の出から日没までで、小さな子どもや、妊婦、病人などには断食が免除される。また、一日我慢した後には、楽しい晩餐が待っている。ラマダン月には食料品の消費量が増える。

徹底して個人として生きながらも信徒共同体(ウンマ)の一員として助け合って生きる姿を描いたのが『アラビアン・ナイト』(一九六六年)だ。現代作家ではN・マフフーズが、『バイナル・カスライン(上・下)』(河出書房新社 二〇〇六年 上三二〇〇円、下三〇〇〇円)で、カイロ旧市街に住む一家を舞台に、現代エジプトの庶民生活をリアルに描いている。

イスラムの生活と文化を知るにはイスラムを狭義の宗教としてでなく、文明としてとらえればよい。加藤博著『文明としてのイスラム』(東京大学出版会 一九九五年 二六〇〇円)は、自然環境から政治、経済、社会生活まで、イスラム文明を多元的に解説している。

イスラム世界の女性についてはA・ライラ著『イスラームにおける女性とジェンダー』(法政大学出版局 二〇〇〇年 四五〇〇円)と片倉もとこ著『イスラームの日常世界』(岩波新書 一九九一年 七四〇円)を挙げておく。伝統的なイスラムの価値観と近代的な女性の権利のあいだで、自立的な生き方を模索するイスラム教徒の女性たちの活躍を知ることができる。【選・評 加藤 博 一橋大学大学院経済学研究科教授】

■2008/04/19, 週刊ダイヤモンド, 121ページ

【イスラム経済】

イスラム世界の経済史 (ネットワークの社会科学シリーズ)
イスラム世界の経済史 (ネットワークの社会科学シリーズ)加藤 博

NTT出版 2005-07-09
売り上げランキング : 90973


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

イスラーム経済論
イスラーム経済論ムハンマド・バーキルッ=サドル 黒田 寿郎

未知谷 1993-12
売り上げランキング : 234726

おすすめ平均 star
star細部はともかく全体を知るのには、いい本だと思います

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

緑の資本論
緑の資本論中沢 新一

集英社 2002-05
売り上げランキング : 20972

おすすめ平均 star
star衝撃でした。
star資本主義を超えるという話
star考えるヒント、、になる1冊です。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

イスラームと資本主義
イスラームと資本主義M.ロダンソン 山内 昶

岩波書店 1998-05
売り上げランキング : 933807


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

中東の経済開発戦略―新時代へ向かう湾岸諸国 (MINERVA現代経済学叢書)
中東の経済開発戦略―新時代へ向かう湾岸諸国 (MINERVA現代経済学叢書)細井 長

ミネルヴァ書房 2005-03
売り上げランキング : 388689


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

イスラム教と資本主義の現代的折り合いのつけ方

イスラム世界に対する最も大きな誤解の一つに経済がある。たとえば「イスラム教は資本主義を否定している」とし、その論拠に『コーラン』が「リバー(利子)」を否定していることを挙げたりする。

しかし、イスラムはカネ儲けを否定しておらず、むしろ奨励さえしている。現代の「イスラム金融」と総称されている金融の市場動向を見るに、資本主義的な金融理論であるヘッジ手法を駆使している感さえする。しかし、近代経済学の理論で分析してみても、イスラム経済の本質をとらえることはできない。問題は、その根本的な思考法がどのようなものであるかを知ることだ。

歴史のなかでこの解明を試み、現代のイスラム経済の潮流を探ったのが加藤博著『イスラム世界の経済史』(NTT出版 二〇〇五年 二二〇〇円)である。そこでは、イスラムと市場経済の親和性に焦点が当てられている。

現代のイスラム経済論の基本的な考え方を知るには少々難解であるが、現代のイスラム教思想家、M・バーキルッ=サドル著『イスラーム経済論』(未知谷 一九九三年 七〇〇〇円)が体系的な知識を与えてくれる。

イスラムと資本主義との関係については、これまで相反する見解が主張されてきた。『緑の資本論』(二〇〇二年)は、リバー問題を軸にイスラム経済の反資本主義的な性格にアプローチする。一方、M・ロダンソン著『イスラームと資本主義』(岩波書店 一九九八年)は、イスラムと資本主義を学問的に比較してイスラムの市場経済に対する価値中立性を論じている。

現在、イスラム諸国の経済はどのような実態なのか。この疑問に答えてくれるのが細井長著『中東の経済開発戦略 新時代へ向かう湾岸諸国』(ミネルヴァ書房 二〇〇五年 四〇〇〇円)。近年において経済発展の顕著な湾岸諸国の経済事情と経済政策を体系的に論じた貴重な一冊で、地域経済の統合の進化や石油に依存しない経済構造の模索など、最新の動向を学ぶことができる。【選・評 加藤博 一橋大学大学院経済学研究科教授】

■2008/04/12, 週刊ダイヤモンド, 111ページ

【イスラムの定義】

イスラム世界論―トリックスターとしての神 (東洋叢書)
イスラム世界論―トリックスターとしての神 (東洋叢書)加藤 博

東京大学出版会 2002-04
売り上げランキング : 589551

おすすめ平均 star
star座標軸の建て方
star刺激的なイスラム社会論
starイスラム世界への冷静なアプローチ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

イスラーム世界の創造 (東洋叢書)
イスラーム世界の創造 (東洋叢書)羽田 正

東京大学出版会 2005-07
売り上げランキング : 334448


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ジハード―イスラム主義の発展と衰退
ジハード―イスラム主義の発展と衰退ジル ケペル Gilles Kepel 丸岡 高弘

産業図書 2006-04
売り上げランキング : 358660

おすすめ平均 star
starイスラム主義の比較政治学

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

歴史の現在と地域学―現代中東への視角
板垣 雄三 (著)

現代イスラーム世界論
現代イスラーム世界論小杉 泰

名古屋大学出版会 2006-04
売り上げランキング : 332189


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

そもそもイスラム世界とは何か 現実のとらえ方で概念は変わる

なにげなく「イスラム世界」と表現してしまうが、中東研究の領域では、「そもそもイスラム世界と表現できるものはあるのか」という定義と存在をめぐる議論がずっとある。実際、イスラム教徒しか住んでいない国などない。「仏と神の国・日本」で日本人がすべて仏教徒でないのと同じ理屈だ。イスラム世界でも政治は国家が定める行政法に、ビジネスは商人たちの慣習法に基づくことが多かった。すべての社会生活がイスラム教義で彩られているわけではない。これについての論点は、『イスラム世界論』(二〇〇二年)で整理されている。

イスラム世界という地域概念の虚構性を批判しているのが、羽田正著『イスラーム世界の創造』(東京大学出版会 二〇〇五年 三〇〇〇円)であり、イスラム世界という言葉を、ウンマと呼ばれるイスラム信徒共同体の意味でのみ使うべきだと主張されている。

この羽田のように、「イスラム世界という呼称を安易に使うな」とする論もあるが、現実には、イスラムは一つの勢力であり運動である。この運動は「イスラムの政治化」と呼ばれる。たとえばイスラム諸国会議機構は一つの政治勢力として力を増しつつある。こうしたイスラムの政治化について論じているのがジル・ケペル著『ジハード イスラム主義の発展と衰退』(産業図書 二〇〇六年 五二〇〇円)。ヨーロッパで初めてイスラム復興を学問的に分析した著者の近年の大著だ。

またイスラム勢力を含む、現代中東の政治体制を体系的に論じたのが板垣雄三著『歴史の現在と地域学 現代中東への視角』(岩波書店 一九九二年 四四〇〇円)で、主として中東「国家」体制の成立から湾岸戦争までを扱っている。

イスラム諸国会議機構をはじめ、イスラム復興の巨大な運動の全体像を国際社会との関係を軸にしながら見るには、小杉泰著『現代イスラーム世界論』(名古屋大学出版会 二〇〇六年 六〇〇〇円)がよい手引きとなろう。【選・評 加藤 博 一橋大学大学院経済学研究科教授】

■2008/04/05, 週刊ダイヤモンド, 157ページ

Edit

 
Copyright (C) 2004-2006 Ambitious Kanda, All Rights Reserved.