メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2007年8月27日~9月10日
| 前田建設ファンタジー営業部Neo | |
![]() | 前田建設工業 幻冬舎 2007-07 売り上げランキング : 8844 おすすめ平均 ![]() 今回は、陸橋です 見習いたい技術者の誇りと遊び心 前田建設の「狙い」にはまったかな…。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本のゼネコンが人気のSF漫画やアニメーションに登場する空想の創造物を、真剣に作ろうとしたらどうなるのか――。前田建設工業の設計者や技師らがプロジェクトを結成し、本書でそれに挑んだ。目指すは『銀河鉄道999』の中で、超特急999号が地球から旅立つ際に駆け上がる、巨大高架橋の設計と施工計画の策定だ。
荒唐無稽とも言えるこの企画に、同社メンバーは三菱重工業や東日本旅客鉄道などにも相談を持ちかけて、技術者や専門家らとまじめな議論を重ねていく。また、ゼネコン内部における部門間の調整なども描かれており、建設業関係者でなくても興味深く読める。土地代を除く予算は37億円、工期3年3カ月での受注が可能だと言う。
| 21世紀の国富論 | |
![]() | 原 丈人 平凡社 2007-06-21 売り上げランキング : 278 おすすめ平均 ![]() 日本が進むべき方向性を示す 日本復活に向けた具体的な提案 インターネットベンチャーの薄っぺらさAmazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-原丈人氏[デフタ・パートナーズ・グループ会長]
米シリコンバレーで成功したベンチャーキャピタリストが描く国家繁栄論。米国流の株主資本主義に追随する日本に強い警鐘を鳴らす。新しい技術を作り出すことにこそ、真の豊かさへの道はあると説く。
──米国でベンチャーキャピタリストとしての数々の実績をお持ちですね。
私がやっているのは、コンピューターの次の基幹産業を作る技術を世界から見つけ出し、きちんとした経営術を提供し、その会社を通じて技術を実用化させることなんです。例えば、液晶やプラズマパネル用の画像処理半導体を開発するオープラス・テクノロジーズは技術の完成まで3年以上かかったが、2005年に米インテルが買収しました。古い時代の会社が新技術を手に入れるため動いた象徴的な例です。
基幹産業は40年前は鉄、その前は繊維でした。コンピューターの時代は間もなく終わります。もともと計算機だったのをコミュニケーション用に使うから、極めて使いにくい。2015年以降はもう誰も使わなくなりますよ。人間が機械に合わせるのではなく、機械が人間に合わせる新しい設計思想に基づいた技術体系が必要なんです。
──米国の経験が長いのに米国流の株主資本主義に異を唱えるのはなぜでしょう。
現在の米国のベンチャーキャピタルには新しい技術を育てようとする潮流がなくなりました。それは、会社は株主のものだという間違った考え方があるからです。会社の経営者の最大の仕事が短期間で時価総額を上げること、すなわち、いち早く株式公開を目指すことになってしまった。だから、技術の完成まで売上高ゼロで3~5年も待ってくれる株主はいなくなりました。このように変質したのは、すべてがマネーゲーム化したネットバブルの頃からです。
私自身、米スタンフォード大学のビジネススクールで学びましたが、あれはくだらない。一攫千金のテクニックばかり教える。米国の資本主義はお金が儲かるだけで人が幸せにならないんです。日本が米国の物まねに走っている現状は、私は米国に住んでいる日本人として大変残念です。
──昨年から税制調査会特別委員、産業構造審議会委員など日本政府の仕事を引き受けたのはそんな思いからですか。
それはあります。私は2050年から2080年ぐらいにかけて、日本が世界の中で絶対に必要だと思われる国にしておきたいと願っています。ポストコンピューター時代の基幹技術の担い手として先進国から必要とされ、その技術で世界の途上国の貧困問題を解決するリーダー役を務める。
具体的には法人税や個人所得税、消費税などの税率が最低水準の国にしたい。遺伝子データ解析で医療費を抑制するなど新技術で歳出抑制は可能です。さらに、次世代のコア技術を持つベンチャー企業を発掘しリスクマネーを提供する仕組みを各国に先駆けて作り上げたい。 ──国連本部の大使を務めるなど、活動の範囲が相当に幅広いですね。
2003年の国連の世界情報社会サミットで部会議長を務めるなどを機に、国際会議の議長役などを頼まれることが増えました。貧困問題の解決では、2005年秋にバングラデシュで識字率向上や衛生医療の改善を目指した新事業を始めました。現地NGO(非政府組織)と合弁でブロードバンド(高速大容量)無線技術を使った遠隔地教育・医療を手がけています。
ただ、たくさんのように見えても、すべては「技術を使って人を幸せにする」という1つのことに過ぎません。それに、私の言っていることは実現可能な計画ばかりで、決して机上の空論ではないと自負しています。
原 丈人(はら・じょうじ)氏
1952年大阪市生まれ。慶応義塾大学法学部卒業後、米スタンフォード大学経営学大学院、国連フェローなどを経て84年にデフタ・パートナーズ創業。
| 悲劇の発動機「誉」―天才設計者中川良一の苦闘 | |
![]() | 前間 孝則 草思社 2007-07-24 売り上げランキング : 6037 おすすめ平均 ![]() MOT入門としてどうぞAmazonで詳しく見る by G-Tools |
著者の前間孝則氏は、歴史の隙間に埋もれた日本人エンジニアの苦闘と偉業を掘り起こし、今の世に問い続けるノンフィクション作家である。著書『日本のピアノ100年』では、楽器作りに人生をかけた職人たちの所業を通じて、近代化にひた走る我が国の底力を描き出した。本書は、第2次世界大戦の最中に開発され、「奇跡のエンジン」と呼ばれながら、その力を発揮するに至らなかった航空機用エンジン「誉」と、それにかかわった人間たちが織り成す実話を綴ったものだ。
当時の世界水準を一気に超える画期的エンジン「誉」を設計したのは、中島飛行機(現・富士重工業)の若き設計者、中川良一氏であった。「誉」は陸海軍から驚きをもって迎え入れられ、伝説の戦闘機「疾風」や「紫電改」、爆撃機「銀河」などに搭載された。
しかし、実戦投入される中で「誉」の力は十分に生かされなかった。原因の1つは、量産を行う際に軍部から強制的に出される“注文”であった。低コスト化、生産のスピード化を優先して低級な代替材料を用い、作業方法の変更を余儀なくされたのである。著者は、それを「誉」だけの悲劇ではないと見ている。日本の航空機やロケット開発分野において今も存在する、製造業界の落とし穴だと警鐘を鳴らす。
| 団塊マーケティング (電通選書) | |
![]() | 電通シニアプロジェクト 電通 2007-07-30 売り上げランキング : 548 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
長寿高齢化社会の今と未来を描き、「団塊シニア」と呼ばれる約1000万人の人々が形成する市場の実相を、マーケティングの視点から解き明かす。本書を手がけた「電通シニアプロジェクト」とは、シニア市場開発を目的とした社内横断的な事業で、45人のメンバーから成る。同社は既に1980年からシニア市場の研究に着手しており、その知見の集積は昨今のシニア研究ブームに便乗した急仕上げの分析書などとは一線を画する感がある。
「シニアの辞書に隠居という言葉はなくなる」と言い、シニアは仕事の担い手であり続けるのと同時に、消費拡大のカギを握ると指摘する。ある調査結果は、年齢別1人当たりの消費支出額が50代で平均を上回り、60代で最も高い水準に達することを示している。この傾向はさらに強まると予測、「したい生活像」というキーワードを掲げてシニアの消費行動を6つのグループに分類し、個々の特徴を読み解く。
その1つ、全体の約1割を占めるという「全方向アグレッシブ派」は、好奇心・チャレンジ精神旺盛で、積極的に自分探しを行うグループだと言う。仕事面では「独立・起業」を志向して、私生活では「オシャレ」を楽しみ、高級車やホームシアター、別荘などの購入に意欲的であると分析している。
| グローバル人事課題と現実―先進企業に学ぶ具体策 | |
![]() | ヘイコンサルティンググループ 日本経済団体連合会出版研修事業本部 2007-08 売り上げランキング : 2403 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
加速するグローバル化経済の波に、多くの日本企業は順応しているかに見える。しかしそれは、研究開発や製造、販売といった側面であって、「『人と組織』に限っては著しく後れを取っている」というのが著者の見解だ。著者のグループは、累計500社を超える企業に対して、組織E人材マネジメントを中心とする経営コンサルティングを行ってきた専門家集団である。
グローバル人事を推し進める3つのキーワードとして「トラスト(相互信頼)」「ナレッジ(情報と発想の共有)」「モチベーション(意欲)」を挙げる。日本人だけで仕事をしていれば当たり前とも取れるこれら3つの基本認識を、戦略的に構築して維持する仕掛けが不可欠であると指摘する。そのうえで、グローバル人事体制の構築にいち早く着手し、一定の成果を収めた企業のキーマンとともに、具体的な施策などについて検証を進める。
三菱商事グローバル人材開発チームのマネジャー、松田豊弘氏は「日本発のビジネスを英語あるいはバイリンガルでどのようにナレッジマネジメントしていくかは、特に日本企業のグローバル化にとって非常に重要かつ喫緊の課題だ」と指摘。同様にキヤノン、トヨタ自動車、帝人における先進的な取り組みについて解説する。
| サマンサタバサ 世界ブランドをつくる | |
![]() | 寺田 和正 日本経済新聞社出版局 2007-07-26 売り上げランキング : 1137 おすすめ平均 ![]() パワフル社長 世界ブランドをめざしてAmazonで詳しく見る by G-Tools |
バッグの人気ブランド「サマンサタバサ」の創業社長が会社の軌跡やブランドに対する独自の考え方を記す。
ブランドを支えるのは「人」「もの」「宣伝」「場所」だと説明する。能力を評価し採用してきた結果、社員900人のうち、9割以上を女性が占める。ただ、女性はがむしゃらに頑張り、ポキンと折れて辞めてしまうこともあるため、無理をし過ぎない環境の整備に気を配る。モデルの蛯原友里さんやテニスのマリア・シャラポワ選手らを起用した宣伝は「自分が好きなものをあの素敵な人も持っている」という“喜びのサプライズ”を考えて仕掛けている。
著者が説くのは基本的な原則ばかりだが、その当たり前のことでブランドは成り立っているという。原則を徹底し世界ブランドを目指すと綴る。
| 経済再生の条件―失敗から何を学ぶか | |
![]() | 塩谷 隆英 岩波書店 2007-06 売り上げランキング : 8204 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
者に聞く-パーソナルライフ-塩谷隆英氏[元経済企画庁事務次官] 検証なくして教訓なし
バブル経済と、その崩壊――日本経済の激変の時代を最前線で分析。
金融機関の破綻処理など政策面で誤りがあったと率直に振り返る。政策過程を記録し、公開、検証する仕組みこそ必要と説く。
──副題「失敗から何を学ぶか」にあるように、1980年代以降の経済政策について反省点があるとしていますね。
出来上がった本を知り合いに配ったら、とりわけ民間企業に勤めていた友人から多かった反応が、「官僚は政策の継続性を優先して自らの誤りを認めない、官僚の無謬性が言われてきた中で、本の中では政策の失敗を率直に認めている点に驚いた」というものでした。
私がいた旧経済企画庁は、旧大蔵省や旧通商産業省という巨大組織に小突き回されてきた“弱小官庁”だったこともあり、官僚は過ちを犯さないという神話など信じたことがありません。
金融機関の破綻が相次いだ97年。財政構造改革か、景気対策かの選択を迫られた時期でした。当時の橋本龍太郎首相も後日、反省したという旨の発言をしていますが、あれは政策の順番の間違いです。バブルに踊って不良債権を増やした金融機関の責任は大きいですが、いくつかの金融機関は潰さずに済んだはずです。ハードランディング路線を選んだことで、結果的にバブル処理のコストは高くついたでしょう。バブル発生の過程も、ある種の政策失敗と言えますしね。
──担当者に強制的に証言させたり、文書をきちんと残す仕組みを設けるべきだと主張しています。反省や総括には、まず記録が必要だと。
どのような過程で政策が立案され、遂行されていったかということをすべて文書の形で残し、何年か後に、一定の条件の下で公開することを法律で義務づけるんです。役所の書類は公文書、公共財産という概念を確立しなければいけない。こうした仕組みがないから、社会保険庁のような問題が起きるんじゃないですか。
情報がきちんと記録、管理されず、公開も検証もされないために、結果的に事態の認識が遅れ、次の政策を打つ手も遅れてしまう。認知と政策発動のタイムラグをできるだけ小さくすることが、経済危機に立ち向かう唯一の手立てだと思います。危機が発生するのは避けられないことで仕方ない面もある。重要なのは、政策過程の透明性なんですね。
私は97年当時、企画庁の事務方の代表の立場で、日銀の金融政策決定会合に出席していました。ちょうどその年、決定会合の議事録の公開を義務づける法改正があった。もうじき閲覧できるはずです。どんな議論だったのか、改めて振り返るのは懐かしいですね。
──執筆を思い立ったのは、2005年7月。『経済財政白書』がきっかけだったとか。
当時の竹中平蔵・経済財政政策担当大臣が「バブル後と言われた時期を確実に抜け出した」と宣言した、ちょうどあの時です。ああ、そうか、随分長かったがバブルの後処理とバブル後の長期不況がやっと終わったんだなと。その20年間の記録を残さなければという気持ちになったのです。
未曾有の金融システム不安という戦後日本経済の中でも特殊な時期を経験し、日本の企業の体質は変わってきました。非効率な企業は淘汰され、強い企業はより強くなった。経済学で言う「不況の効用」の一例かもしれません。もっとも当時、政策担当の現場にいた人間としては、その後の長期不況、デフレの犠牲になった人たちのことを考えると、到底、喜べません。「たられば」ですが、別の手法があったわけで…。失敗から、後世の人々が教訓を学び取ってほしい、そんな思いです。
塩谷 隆英(しおや・たかふさ)氏
1941年生まれ。東京大学法学部卒。66年に旧経済企画庁入庁。98年に事務次官。退職後は総合研究開発機構(NIRA)理事長などを歴任。
| 石油 もう一つの危機 | |
![]() | 石井 彰 日経BP社 2007-07-26 売り上げランキング : 41 おすすめ平均 ![]() 現代石油市場を読み解くための良書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
国際石油市場は近年大きな地殻変動、構造変化にさらされている。著者はこの傾向が今後も続き、世界経済や人々の暮らしに大きな影響を与えると指摘。石油が抱える問題、石油市場の変化の実態を明らかにする。
まず、現在の石油価格高騰は中国やインドの石油需要急増による需給逼迫が主要因ではないと分析。世界の石油価格は、実態的にはニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油の先物取引価格で決まる。近年、そのWTI先物市場に膨大な投機・投資資金が流入し、価格の暴騰をもたらした。「石油市場の金融商品化」による価格高騰は過去にはなく、21世紀型の新たな石油ショックと表現する。
中長期的な問題として、産油国の国営石油会社が躍進する一方で民間石油会社が相対的に退潮し、市場メカニズムが利きにくくなっている点を指摘する。石油業界の斜陽イメージからマンパワー、特に技術者が不足して、研究開発や技術革新も先細りになっている。環境問題意識の高まりで、油田開発への投資も停滞気味。こうした重層的な変化から、将来の石油市場の安定は一段と困難になると予想する。資源寿命を延ばすような石油開発投資、技術革新の努力が求められると結ぶ。
| 社会的責任のマーケティング―「事業の成功」と「CSR」を両立する | |
![]() | フィリップ・コトラー ナンシー・リー 早稲田大学大学院恩藏研究室 東洋経済新報社 2007-08 売り上げランキング : 4241 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
企業が社会的責任を果たすための取り組みを「コーズ・プロモーション」「コーズ・リレーティド・マーケティング」「ソーシャル・マーケティング」「コーポレート・フィランソロピー」など、6分類で論じる。それぞれの取り組みについて、企画、検討、開発する際に役立つ代表的プログラム、将来発生する利益や影響、成功へのカギなどを解説する。
例えば、コーズ・プロモーションは企業が資金や物資、そのほかの企業資源を寄付することで、自らの社会的コーズ(主張)への意識や関心を高めるもの。地球温暖化への意識を高める活動をした米ベン・アンド・ジェリーズ・ホームメード、動物の里親探し活動を行った米ペッツマートなどの事例を取り上げる。製品の売り上げから得た利益を何らかの組織に寄付するコーズ・リレーティド・マーケティングでは、「ピンクリボン」のついた製品の売り上げの一部を「乳がんにさようなら運動」に活用した米エイボン・プロダクツの事例などを紹介する。
大手企業に対して行った調査のまとめとして、「経営目標に最も適した取り組みを選択する」「計画策定のために社内で機能横断的なチームを編成する」など、社会的取り組みの実践に関する25のベストプラクティスを示す。
| ウォルマートに呑みこまれる世界 | |
![]() | チャールズ・フィッシュマン 中野 雅司 三本木 亮 ダイヤモンド社 2007-08-03 売り上げランキング : 2753 おすすめ平均 ![]() コスト削減の本当の姿が学べますAmazonで詳しく見る by G-Tools |
世界最大の小売業であり、ここ10年間のほとんどを世界最大の、かつ史上最大の企業であり続けた米ウォルマート・ストアーズ。本書はジャーナリストの著者がウォルマート関係者やサプライヤーへのインタビューに基づいて、客観的に分析・評価する。
ウォルマートのビジネス手法によって起きる様々な影響、つまり「ウォルマート・イフェクト」を示す。商品の値段、中身から消費者の価値観、購買習慣、160万人に及ぶウォルマート従業員の生活、出店した地域の物価、サプライヤーや競合企業の経営など、極めて広範囲に影響が及んでいることを明らかにする。中国のおもちゃ工場で働く人、バングラデシュの縫製工場でシャツを縫う人など、一度もウォルマートの店舗を訪れることはないであろう人たちの生活にもウォルマート・イフェクトは及ぶ。1つの巨大な企業が地球規模で、経済・社会システムに影響を与えている様子を考察する。
ウォルマートはペットフード、家具、一般衣料品など多くのカテゴリーで全米ナンバーワンの地位を占める。こうした支配力と「エブリデー・ロープライス」を徹底する価格戦略、サプライヤーのビジネスを人質に取るやり方が、消費者の見えないところで市場を歪曲していると警告する。
| 2020年の日本人―人口減少時代をどう生きる | |
![]() | 松谷 明彦 日本経済新聞出版社 2007-06 売り上げランキング : 137 おすすめ平均 ![]() レベルの違いを痛感した一冊Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人間の認識や知識は、しばしば自分が育った時代の体験に依拠し、それに拘泥し、素早く変化する時代の流れに大きく取り残される。自分が取り残されたことに気がつくのは、多くのケースにおいて時代の方がかなり進んでからだ。老経営者にはそういう人が多いが、集団的に起きることもまれではない。
私を含めて、今の日本人は非常に特殊な時代に生きてきた。戦後8000万人ちょっとだった人口は、60年余りで1億2700万人へと4500万人以上増加して、日本の歴史の中で一番の人口爆発時代だった。江戸時代の日本の人口は3000万人ちょっとだったと言われるから、60年間で江戸時代の人口が1.5個分生まれたことになる。
そんな時代に、日本はほかの時代には通用しない特殊な制度やシステムを生み出した。大規模製造業に軸足を置いた日本は、地方から若者を都市に集中させて、終身雇用制もこうした人口動態の中で生まれた。年金システムは保険金を払う人が増え続ける前提で組まれた。「人口の減る日本」は、想像さえできなかったのだ。
しかし日本は、「人口減少時代」への曲がり角をしっかりと曲がった。これからはどう考えても、最初は年に数千人、そしてその後は万の単位で人口が減少し、人口構成も高齢化する。赤ちゃんはしばらく100万人前後の出生が続くだろう。
本書は、今から干支で1回り先の日本はどうなっていて、何をすべきかを真面目に考えている。副題は「人口減少時代をどう生きる」である。表紙の帯には「日本人は準備ができているのか」とある。私もそうだが、多分多くの人は準備できていない。だからこの本は読む価値がある。
やり玉に挙がっているのは、「終身雇用」「年功賃金」「薄利多売的経営手法」「投資偏重の経済運営」「急ぎすぎた地方制度改革」「公共事業」「年金制度」「破綻した財政」など。多くの点で賛同できる。特に、参議院選挙の与党惨敗を受けて地方をどう立て直すかのアイデアの中に、またぞろ「公共投資」が入っているのはいただけない。画一的な公共事業こそ、地方から個性を奪ってきたからだ。
この本が提示する働き方やライフスタイルの「多様化」は、企業や行政が後押ししなければなかなか実現しない。「消費」の重要性の指摘も的を射ている。製品の高付加価値化は日本経済にとって大きな挑戦だ。時代の流れは時に誰の想像をも超える。国の、企業の、社会の、そして個人のチャレンジは始まっている、と思わせられる。【評者 住信基礎研究所主席研究員 伊藤洋一】
| 生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891) | |
![]() | 福岡 伸一 講談社 2007-05-18 売り上げランキング : 18 おすすめ平均 ![]() 冗談ではなく日本のファインマンさん。 きわめて私的な本であるが面白いことは否定できず 期待外れAmazonで詳しく見る by G-Tools |
生命の仕組みを追い求める分子生物学者が、読者を知的好奇心の旅に誘う。20世紀最大の発見と言われる「DNAの二重らせん構造解明」における競争の舞台裏では、個性豊かな学者たちの思惑がぶつかり合ったという。彼らが残した成果と最先端技術による新たな発見を手がかりに、「生命とは自己複製するシステムである」という旧来の見方を一歩進め、「生命とは動的平衡にある流れである」と再定義する。
自己複製機能だけならウイルスも持っているが、「ウイルスは生物と無生物のあいだ」をただよう何物かであると著者は見る。専門用語を織り交ぜながらも、生物学に詳しくない読者にも分かりやすい言葉で、神秘のベールに包まれたミクロの世界の一端をうかがわせてくれる。
| 資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略 | |
![]() | 野口 悠紀雄 ダイヤモンド社 2007-06-01 売り上げランキング : 1096 おすすめ平均 ![]() 星はなんとなく 切れ味のよい論説 論理の刃Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-野口悠紀雄氏[早稲田大学大学院教授]
半ば常識となった「円安は日本の国益」論に異議を唱える。円安は旧来型産業の延命に力を貸しただけと厳しい評価を下す。真の構造改革を断行しなければ日本は衰退すると説く。
――足元は円高だが、長く続いた円安で輸出産業が潤った。だが、それは日本には大きな問題と指摘しています。
本来は円高になってこそ、日本人が経済的利益を享受できるのです。当たり前ですが、円高になれば、海外の品物を安く買える。それで日本人の消費は豊かになる。円高というのは、日本人の労働の価値が高く評価されることにほかなりません。
しかし、日本政府は確信犯的に円安に誘導してきたと思います。自動車や電機などの輸出産業にはメリットもあるし、(鉄鋼のような)旧来型産業を生き延びさせることにもなりました。
政府は円高阻止のために2003~04年に大量の円売りドル買い介入を行いました。同時に日本銀行が実施したゼロ金利誘導、量的緩和政策は、それを助けるのが目的だったのではないかと思えます。
介入は(大量の円売り資金を市場にそのまま残す)不胎化と呼ばれる政策を実施しないと効果がなく、量的緩和はそのためだったのではと考えられるのです。
――円安を防ぎ、同時に真の構造改革を行うには、世界から資本を導入できる仕組み作りが必要と説いています。
世界の通貨の中で円が独り安くなっているのは、日本の金利が異常に低く、他国との金利差が開いているためです。(金利の低い円を調達して金利の高い国の通貨に投資する)円キャリートレードで、日本の個人や海外のヘッジファンドなどの投機が続いているのは、本格的な円高にならないとの予測によるものです。
日銀がこの後も大きく金利を上げないと見られたら、本格的なキャピタルフライト(資本の海外逃避)が起きる危険もあります。そうなれば、本当に非常時ですが、実は日本は過去の介入で9100億ドルに上るドル資産(米国債など)を外貨準備として抱えています。円高になると、ここに含み損が生じるので、国自体が円高にしにくいという問題を抱えているのです。
そうでなくても世界の中での日本の経済的な地位は着実に低下しています。小泉純一郎・前内閣は構造改革を叫んできましたが、実際には古い産業を温存した。1993年に主要国の中でトップだった日本の国民1人当たりGDP(国内総生産)は、2003年には10位に落ち、2005年には14位に低下しました。この状況を打破するには、外国から資本を入れることが不可欠です。
――外国から日本への直接投資を増やす、あるいは証券投資が増えるとどうなるのでしょう。
1993年以降、日本の1人当たりGDPの順位が落ちる間に、大きく順位を上げた国があります。英国とアイルランドです。両国が行ったのは外資の導入に力を入れ、同時に規制緩和を行うことです。アイルランドはIT(情報技術)、特にソフト産業を、英国は金融業を拡大し、脱工業化を実現したのです。
日本には自動車、機械など強い産業がありますが、製造業はいずれ新興国に追い上げられる運命にあります。また、現在の好況は中国の勃興に原因がありますが、中国の高成長は来年の北京オリンピック以後も続いていくのでしょうか。日本が将来とも成長と豊かさを維持するには、今の産業構造のままでは難しくなります。
英国とアイルランドは、外資の導入が経営を抜本的に変え、金融業を強化するカギになりました。日本は今、その岐路にあるのです。
野口 悠紀雄(のぐち・ゆきお)氏
1963年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省。一橋大学、東京大学教授などを経て2005年4月から現職。
| 地に墜ちた日本航空―果たして自主再建できるのか | |
![]() | 杉浦 一機 草思社 2007-05-31 売り上げランキング : 23849 おすすめ平均 ![]() まだ手ぬるい指摘じゃないかな? 何にも知らない学生向け 昔国鉄、今はJALAmazonで詳しく見る by G-Tools |
今年2月、自主再建に向けた中期計画を発表した日本航空(JAL)。航空アナリストとして長年、航空業界を見てきた著者が、JALが行き詰まった原因を分析し、再建のシナリオを記した。
JALの数多い問題点、課題はどこにあるのか。何より、ほかの優良航空会社に比べ、人が多すぎ、生産性が低すぎる。パイロットの高給与も経営の圧迫要因だ。営業部門、管理部門の対立は根深く、8つに分かれた労働組合も取り込みながら、熾烈な人事抗争を繰り返している。JALの構造改革は湾岸戦争後に始まったが、同時期にリストラを断行した全日本空輸(ANA)に比べて動きは鈍く、経営課題を放置し先送りしてしまった。その後、同時多発テロなどによる需要の急減、燃油価格の急騰などで業績が悪化。旧日本エアシステム(JAS)との統合で収益を拡大し、経営を安定させようと図ったが、統合効果は一向に表れず、逆に運航トラブルの続出で顧客離れを招いた。
JALの社員、経営陣には「日本を代表するナショナル・フラッグ・キャリア」という意識が強すぎ、それが、「採算を度外視した経営」につながっていると分析する。今は「自主再建の最後のチャンス」。派閥や労組などの問題を乗り越え、一致団結しなくてはその実現は不可能だと指摘する。
| 食糧争奪―日本の食が世界から取り残される日 | |
![]() | 柴田 明夫 日本経済新聞出版社 2007-07 売り上げランキング : 392 おすすめ平均 ![]() 交差しつつある資源問題―エネルギーと食糧 バランスよい問題提起本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ブラジル、ロシア、インド、中国からなる発展著しい国々、いわゆるBRICsの人口は約30億人に達する。彼らが我々日本人と同じ水準の食生活を求めたら、世界の食糧事情はどうなるのか――。丸紅経済研究所所長であり、国の食糧政策に助言を行っている著者は、世界を襲う食糧問題の核心を整理しつつ、無策であった場合に起こり得る最悪のシナリオを示す。
著者が強調するのは「食糧が有限資源になりつつある」という考え方だ。原因は発展途上国の急成長だという。例えば中国の1年間の卵の生産量は約4600億個に達しているというデータなどから、こうした勢いを「爆食」と表現する。これによって近い将来、国家間の食糧争奪戦が始まると予測。「お金を積んでも食糧が手に入らない」事態を回避すべく、自給率の改善など日本が取るべき方策を示す。
しかし、問題はさらに複雑だ。価格が高騰するガソリンの代替財として、主に植物を原料とするバイオマス燃料に世界中の熱い視線が注がれている。つまり、小麦やトウモロコシを巡っては、食糧市場対エネルギー市場という構図も描く必要があるという。さらに、世界規模の環境異変による肥沃な土地や水資源の不足も深刻だと言い、現状を伝えるとともに打開策を検証する。
| 日本人だけが知らないアメリカ「世界支配」の終わり | |
![]() | カレル・ヴァン・ウォルフレン 井上 実 徳間書店 2007-07-20 売り上げランキング : 3021 おすすめ平均 ![]() 物語を日本は語りえるか? いやそのとおり、、、Amazonで詳しく見る by G-Tools |
欧州からの視点で日米関係や東アジア情勢を見つめてきた著者の最新作。1970~80年代にオランダの高級紙の特派員として日本の社会や経済について取材、現在はアムステルダム大学で教壇に立つ知日派でもある。
まず、著者が指摘するのは、グローバリゼーションの誤謬だ。
これまでグローバリゼーションが進展すれば、発展途上国でも経済や産業が振興し、国内の貧困が解決すると信じられてきた。ところが、フィリピンの例を見ても分かるように、実際にはマルコス元大統領とその側近だけが権益を握る「ネットワーク型資本主義」がはびこり、貧富の差は拡大した。
途上国が金融制度を近代化し、労働市場を開放した結果、米国から大企業が進出したものの、利益のほとんどは米国に回り地元は潤わない。ほかに人件費が安い国が登場すれば、米企業はそちらに生産拠点を移し、残された人々は貧困に逆戻りしたと指摘する。
こうした中で、中国、ロシア、南米、欧州などでは、米国と距離を保つことで、自国経済が健全な発展を遂げている、と指摘する。世界の経済や外交の中心が米国という1極から、多極へと分散しつつある。その中で、米国一辺倒を貫いてきた日本の外交や産業政策のあり方について再考を促している。




日本復活に向けた具体的な提案









きわめて私的な本であるが面白いことは否定できず
期待外れ



