メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2007年7月30日~8月20日

憂い顔の「星の王子さま」―続出誤訳のケーススタディと翻訳者のメチエ
憂い顔の「星の王子さま」―続出誤訳のケーススタディと翻訳者のメチエ加藤 晴久

書肆心水 2007-05
売り上げランキング : 145546

おすすめ平均 star
starきわめて説得的、文体は人を選ぶ
starすばらしい翻訳指南書

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本邦女子学生必携のアクセサリーとまで言われ、半世紀以上にわたり絶大な人気を博してきたサン=テグジュペリの名作、『星の王子さま』。その人気は、名訳の誉れ高い内藤濯訳と一体であった。ところが、その内藤訳が迷訳、誤訳に満ちているというのが本書の眼目だから、聞き捨てならない。

翻訳の要諦は、第1に原文の意味を正確に移すこと、第2に原文にふさわしい「よい日本語」であること。誰しも異論のないところだが、言うは易く行うは難し。言語が違えば、発想、認識の仕方など、根底が違う。従って翻訳とはしょせん意訳にならざるを得ない。「翻訳者は裏切り者」というゆえんである。しかし、本書が説くがごとく、「すべてはテキストの中にある。そのすべてをテキストの内に発掘するのが翻訳者の仕事」であろう。

2005年に『星の王子さま』の独占翻訳権が切れて以来、高名な作家、仏文学者などによる、なんと14もの新訳が出版されている。本書では、仏語原文はもとより、内藤訳、すべての新訳、さらに3つの英語訳が比較検討されており、素材の提示は申し分ない。

では、著者による偶像破壊は成功しているか?

確かに内藤訳では解釈のずれ、読みの浅さが随所に見られることは、著者の徹底したテキストの読み込みが論証している。個所によっては致命傷に近い。ただし、総体としての内藤訳を落第と言い切れるかは微妙なところだ。新訳の多くも、相当の改良は見られるが、それぞれ細部には問題が残っている。結局、著者も認めるように、完璧な翻訳などない。少なくとも、内藤訳の『星の王子さま』という絶妙なタイトルには、素直に脱帽したいのだが…。

著者の真意も、内藤訳をこき下ろすことではなかろう。むしろ、1つの訳が神格化され、自由闊達な翻訳批評がはばかられる雰囲気が醸成されてしまう我が国の独特の状況を、是が非でも打破することにある。文学作品は皆の共有財産。翻訳者であれ誰であれ、その私物化を許さない著者の情熱には、拍手を送りたい。

それにしても、本書を読むと、翻訳とはこれほどにも深く、難しいものか、とため息が出る。同時に、文学作品のみならずあらゆる書を通じて、我々がこれまで目にした翻訳書には、実はトンデモ本が多数あるのでは、と疑心暗鬼になってしまう。ただ、本書に触発され、新訳も含め何通りもの『星の王子さま』を熟読できたのは、誠に幸いであった。オトナになり、俗事に追われてすっかり忘れていたものを、少し取り戻した気がする。【評者 ローンスタージャパン会長 岩下 正】

■2007/08/20, 日経ビジネス, 65ページ

日中合作―中国No.1ソフト企業誕生の物語
日中合作―中国No.1ソフト企業誕生の物語沓澤 虔太郎

小学館クリエイティブ 2007-05
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中国最大手のソフトウエア会社・東軟集団。その活動を積極的に支援した著者が、成長の軌跡を振り返る。

1988年、自動車部品会社アルパインの社長だった著者は、東北工学院(現・東北大学)の劉積仁教授(現・東軟集団総裁)と出会う。劉教授のソフトウエア技術や誠実な人柄に惚れ込み、合資会社を設立して、ソフトウエアの共同開発を進める。急成長した同社は96年、中国のソフト会社としては初めて上海証券取引所に上場。東軟集団として再編後も成長を続けている。

少年期を中国東北部で過ごした体験から、著者は日本と中国が信頼関係を築くことの重要性を痛感したという。停電が多く、情報通信産業も未成熟だった当時の東北部で、全幅の信頼を寄せて日中合作を進めた姿が印象的だ。

■2007/08/20, 日経ビジネス, 65ページ

財務3表一体理解法―決算書がスラスラわかる
財務3表一体理解法―決算書がスラスラわかる國貞 克則

朝日新聞社出版局 2007-05
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右脳でわかる! 会計力トレーニング
右脳でわかる! 会計力トレーニング田中 靖浩

日本経済新聞出版社 2007-03-24
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おすすめ平均 star
star図形&クイズで楽しむことはできるが
starセンスはいい。ただし不適切なケースが多い。
starシリーズ化を希望します。

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「決算書をスラスラ読めるようになろう」とうたう本が売れている。背景には、気になる企業の実力を評価したいと望む個人投資家の急増や、実は数字に弱い中小企業経営者が少なくないという現状があるようだ。

『財務3表一体理解法』(ブックファースト渋谷店9位、八重洲ブックセンター本店1位)は、経営コンサルタントの著者が考案した会計掌握法を指南する書。会計本にしては久々のヒットとなっている。損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書(CS)の3つを相互に連携させ、お金の流れを追う方法を説く。読者が小さな会社を立ち上げたと想定し、設備投資や買掛金、売掛金、給与・役員報酬などお金の流れの具体例を財務3表に当てはめていく。

一方、『右脳でわかる!会計力トレーニング』(八重洲ブックセンター本店6位)は、数字が苦手なら、まずは決算書を右脳的イメージで直感的に捉えよと勧めるユニークな書だ。Q&A方式で、例えば2社の売上高と利益だけを示す棒グラフを示し、「どちらがマツモトキヨシでどちらが大正製薬か?」などと問う。カラーの図表を多用し、知名度が高い企業の実例から財務3表の勘所に絞って解説する。

■2007/08/20, 日経ビジネス, 67ページ

金融NPO―新しいお金の流れをつくる (岩波新書 新赤版 1084)
金融NPO―新しいお金の流れをつくる (岩波新書 新赤版 1084)藤井 良広

岩波書店 2007-07
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おすすめ平均 star
star営利と非営利の金融をつなぐ制度設計

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金融NPO(非営利組織)法人とは、市民が自らの意思でお金を集め、社会に貢献する事業に取り組むべく資金を必要としている人々に回すことを最優先する非営利金融機関を指す。著者は報道関係者として、我が国や欧米の金融事情の取材を積み重ねてきた経験から、金融NPOの普及を現代社会の要請と捉えて、その仕組みを本書で解説する。また、昨年就任した上智大学地球環境学研究科教授という立場からは、「環境金融論」という新しい視座の重要性についても説く。

金融NPOには、銀行のように資金を貸し出す「NPOバンク」と、ベンチャーファンドに似た「市民投資ファンド(コミュニティーファンド)」の2つがある。貸し出しや投資の対象となる事業は、介護・福祉やリサイクル、社会教育、商店街振興から、風力・太陽光を利用した発電事業などにまで及び、いずれも公共性の高い事業であることを条件に選ぶ。また、急を要する目的としては、「多重債務者の救済」が挙げられる。金融NPOは債務の肩代わり資金を提供するだけでなく、債務処理のための相談も行っている。欧米ではこうした活動が多いと解説する。

欧米の先進的な事例とともに、我が国で産声を上げた組織の活動や今後の課題などを紹介する。

■2007/08/20, 日経ビジネス, 66ページ

インターネットは誰のものか 崩れ始めたネット世界の秩序
インターネットは誰のものか 崩れ始めたネット世界の秩序谷脇 康彦

日経BP社 2007-07-12
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おすすめ平均 star
starデジタルに限らずメディアに関心ある人には必読書
star知っておくべきこととは思うが

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我々の生活にとって欠くことのできない存在となったインターネットだが、利用者に見えないところで重大な問題が生じていると警鐘を鳴らす書。著者は総務省の官僚としてインターネットのブロードバンド(高速大容量)競争政策に取り組む専門家である。

最大の問題点は、動画配信など通信量の多いコンテンツの利用者が急増したことによる混雑だという。回線の許容量には限界があり、このままでは「ブロードバンドなのに通信速度が落ちる」「利用者の使用料負担が増える」といった最悪の事態が起こり得ると予測する。インターネットは通信会社やISP(インターネットサービスプロバイダー)といった、通信網の構築に巨額の資金を投じている事業者の存在がなければ成立しない。しかし現実には、米ユーチューブのように膨大な動画を配信して収益を上げているコンテンツプロバイダーと呼ばれる事業者らに、相応の費用負担を求める仕組みがないことを著者は危惧している。

米国では、通信会社らがグーグルなど急成長企業に対し「タダ乗り」と批判している。一方、コンテンツプロバイダー側も、プロバイダー自身や利用者が既に適切な使用料を負担していると反論するなど、大きな議論が巻き起こっている現状を紹介する。

■2007/08/20, 日経ビジネス, 66ページ

M&Aを成功させる組織・人事マネジメント
M&Aを成功させる組織・人事マネジメント西口 尚宏

日本経済新聞出版社 2007-05
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おすすめ平均 star
starMAに最強の味方!
star初心者にもやさしい親切本☆

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日本企業でもM&A(企業の合併・買収)が頻繁に行われるようになった。だが、統合前に破談になったり、統合後に期待通りの成果が出ないケースも多い。企業文化の違い、組織の複雑化、意思決定の遅れなど、統合後に顕在化するM&Aの問題は、統合前から始まる「統合マネジメント」に原因があると指摘。特に、カギとなる組織・人事の統合マネジメントを解説する。

統合後のシナジーを引き出すのは人の力である。どんな経営戦略も、実現するのは人材であり、その人材を生かすためには明確な人事哲学、人事戦略が必要である。M&Aの際には、初期に両社の経営陣、人事部が合同で経営戦略と組織・人事戦略を連動させる作業を進めることが欠かせない。どんな人材を採用し、育成・処遇していくか、どんな組織能力を求めるかというイメージを作り上げておく。遠回りに感じるかもしれないが、こうした統合の「基礎工事」が重要だと強調する。

人事哲学・戦略が固まったら、それに基づいて新しい人事制度を詳細に設計する。本書は両社の現状分析から新しい制度の設計手順、制度の安定稼働まで、M&Aが進行する時間軸に沿って、実行すべき事柄を説明する。昨今、急増している「国境を越えるM&A」についても、特徴や具体的な課題を示す。

■2007/08/20, 日経ビジネス, 66ページ

中田英寿誇り
中田英寿誇り小松 成美

幻冬舎 2007-06
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おすすめ平均 star
star中田とサッカー
star確かに的を突いてはいるが
star引退の理由

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「一流」という山には様々な登り方がある。芸術という登山道もあるだろうし、政治や経営を極めて山の頂に立つ人もいる。本書はサッカーという道でその山を登り切った元プロサッカー選手、中田英寿氏のドキュメンタリーだ。

著者は中田氏が10代の頃から彼の取材を手がけてきたジャーナリスト。昨年のワールドカップを前に中田氏が周囲に現役引退の意思表示を行っていたことを明かしたうえで、その決断に揺れながらも引退の準備を進める周囲の動きなどを通して、「なぜナカタは引退を決意したのか」を重層的に描こうとしている。

自分が理想とするプレーができなくなった――。現役を引退するスポーツ選手がよく口にする言葉だ。中田氏の引退理由も、これに類する。ただ、自ら完璧主義者と認めるだけに、その理想とするレベルが極めて高かった。加えて、「世界のナカタ」として周囲から注目され続けるプレッシャーも相当なものだっただろう。

若くしてスターになるのは大変なことだ。本人の関知しないところで、数々の虚像が形成されてしまう。他人が自分をどう見ているかというのは、周囲にとっては「目の前にある夕食のおかずが昨日より1品多いか」程度の意味しか持たない。だが、その些細な関心が集合体となると、本人には大きな重圧となってのしかかる。

相対的な価値観とどう向き合うのか。これがサッカーを続けてきた中田氏のもう1つのテーマだったような気がする。彼自身、本書で自分は団体競技には向いていないと告白している。チーム内で自分がどう見られているかを意識しつつ、司令塔として彼なりの方法でワールドカップの代表メンバーを鼓舞した。だが、最後までチームが一丸とならないことにもどかしさを感じつつピッチを去った。

今、中田氏は世界を回る旅に出ているという。その旅が終わり、引退から5年も経てば、多くのスポーツ選手がそうであったように、「世界のナカタ」も、少し有名な普通の人になる。死ぬまでスターであり続けた人など、ごくわずかである。美空ひばりや石原裕次郎ぐらいのものではないか。

その時に彼がどう生きるかに注目したい。団体競技が苦手と言っていた時のスタンスがこの先も続けば、彼の活動範囲は狭められる。芸術家として生きるのならいいだろうが、ビジネスにしろ、社会奉仕にしろ、チームワークで物事を進める仕事の方が圧倒的に多い。中田氏が次に取り組む世界では、チームワークで周囲と一緒に頂点を目指してほしいと思う。【評者 ワタミ社長 渡邉 美樹】

■2007/08/06, 日経ビジネス, 99ページ

環境問題はなぜウソがまかり通るのか (Yosensha Paperbacks (024))
環境問題はなぜウソがまかり通るのか (Yosensha Paperbacks (024))武田 邦彦

洋泉社 2007-02
売り上げランキング : 92

おすすめ平均 star
starゴミの街
star疑ってかかることの大切さ
star大きく広めたい

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「環境保護」が錦の御旗と化し、科学的議論や合理的判断を欠いた活動が行われている現状に警鐘を鳴らす。

例えば、ペットボトルのリサイクルは、プラスチックの大量消費を抑制するために始まったが、実際には分別回収が進むほど、消費量もごみも増えている。そもそも、日本が輸入する石油のうち、ペットボトルに使っているのは全体の1000分の1に過ぎず、リサイクルしても石油の節約効果は薄い。専門家の間では、毒性は強くないと知られるダイオキシンも、人々の不安を煽る報道が相次ぎ、「最大の猛毒」に仕立てられてしまったという。

環境問題は「故意の誤報」が溢れている。“ウソ”に振り回されないよう、事実を知ることが重要と主張する。

■2007/08/06, 日経ビジネス, 99ページ

危機管理役員手控帖
諸石 光熈 (著)

著者に聞く-パーソナルライフ-諸石 光熙 氏[大江橋法律事務所弁護士] 経営目線で法に備える

住友化学で長年、法務部長を務めた企業内弁護士の草分け的存在。「経営の最適化」という視点から、内部統制などへの対応を説く。法律順守は会社の利益にかなうと強調する。

──巷には内部統制に関する本が溢れていますが、企業で法務に携わってきた方の著書は珍しいですね。

単に法律を解説するだけでは、企業として内部統制やコンプライアンス(法令順守)にどう取り組めばいいのか分かりません。実際に経営にかかわってきた目線から、内部統制などのリスクマネジメントについて説く本があってもいいのではないかと思ってまとめました。

不祥事とは、会社にとって存亡につながる一大事です。まずそういう認識をしっかりと持っていなければ、どんなに内部統制やリスクマネジメントの本を読んで概念を理解したとしても意味がありません。規則を明確にし、手順を文書化するという内部統制の考え方は、確かに日本人の文化や体質に合わない面があるでしょう。ただ「守れ」と命令するだけでは意識を変えるのは難しい。「もし担当者が代わった時、手順を文書化していなくても仕事はスムーズに流れていきますか」といった具合に、より具体的な説得によって社員を意識づけていく必要があります。

──企業経営の中で法務部門が果たす役割を理解してもらうために、苦労されてきたのではありませんか。

30年ほど前、法務部を設けた当初は苦労しました。訴訟や事故は、企業活動であってはならない“病理”でしたから、同じ社内の人間とはいえ、なかなか相談に来てくれない。何かあったら、まず法務部に相談した方がいいと認められるのに10年かかりました。

法務部の仕事では、今でも訴訟などへの対応が占める割合が大きいのは事実です。しかし、法務部に求められる役割は時代とともに変わってきています。何かあったら動く「臨床法務」から、訴訟や事故を常に起こり得るリスクと認識したうえで備える「予防法務」へ、そして現在は経営を法的に最適化するための「企画法務」に比重が移っています。

私が勤めた住友化学では、法務部長のリポートは担当役員を通さず、会長、社長に提出する仕組みを導入していました。全社で展開されている様々なプロジェクトに対して、法務部としての見解を直接、企業トップに報告するわけです。もし、会社の中で異常なことが起これば、すぐにトップにも伝わります。会長や社長は法務部の報告をとても重視していました。それほど信頼されていたのだと思います。

──「経営の最適化」を図るために、法務部門としてどんなことに気を配りましたか。

「法的に間違っている」と指摘するだけで済むのであれば、法務部は要りません。単に非難するのではなく、コンプライアンスに反する行為は会社にとっても、社員本人にとっても結局はマイナスにしかならないのだということを理解させ、納得してもらえるように持っていかなければなりません。不祥事には私利私欲に走ったケースもありますが、「会社のため」と思い、自覚しながら不正を行ってしまうケースも少なからずあるからです。

もちろん、我々も企業組織の中の一員ですから、最終的には会社と一心同体の運命にあります。ですが、そのために法的、倫理的に視点が濁ることがないようにと、常に身を律してきたつもりです。法務部門に長く携わってきた経験から、法令を順守し、社会貢献に務めることは長期的に見れば必ず、会社の利益にかなうのだと確信しています。今後もこの視点に基づいて企業法務のお手伝いをしていきたいと思っています。

諸石 光熙(もろいし・みつひろ)氏
1960年東京大学法学部卒、同年住友化学入社。法務部長などを経て98年専務。2005年から大江橋法律事務所パートナー。

■2007/08/06, 日経ビジネス, 103ページ

インドの虎、世界を変える
インドの虎、世界を変えるスティーブ・ハーン 児島修

英治出版 2007-06-25
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急成長著しいインドのグローバルIT(情報技術)企業、ウィプロの軌跡をたどり、その強さの秘密に迫る。

創業者、アジム・プレムジ会長は植物油ビジネスで成功を収めた後、1980年代にコンピューター事業に乗り出した。90年代、インド政府が経済の自由化を推進し、世界の大手IT企業がインド市場に参入し始めると、こうしたIT企業を対象にソフトウエアプログラミングや電子機器のエンジニアリングサービスなどを開始。飛躍のきっかけをつかむ。現在、ウィプロはITコンサルティング、製品テスト、システムインテグレーション、データセンター運営代行、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)など、実に多様なサービスを提供している。

ウィプロは営業拠点を世界14カ国に構え、ソフトウエア開発拠点、ハードウエア製造拠点、BPOセンターも各地に持つ。世界各国に配置した経営資源の中から、必要に応じて最適な人材と機能を組み合わせ、優れたサービスを提供する「グローバルデリバリー」モデルの先駆者となっている。また、高い倫理観を維持し、多様な文化を許容する組織体制を整える。事業展開と組織体制の両面で、「超国籍企業」を志向し変革を続けていることが、ウィプロの戦略の核心と分析する。

■2007/08/06, 日経ビジネス, 101ページ

キリンの流儀―これが「頭で考える営業」だ カネに頼るな、自分に頼れ!
キリンの流儀―これが「頭で考える営業」だ カネに頼るな、自分に頼れ!猪口 修道

プレジデント社 2007-06
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今年3月、キリンビールはビールの大型新製品「キリン・ザ・ゴールド」を発売した。ゴールドは、キリンの「価値営業」によって支えられている。ライバルのアサヒビールに押され、苦戦していたキリンが、試行錯誤しながら取り入れた新しい営業スタイルだ。本書は古い営業体質を変えようと、キリンが遂行してきた変革の流れを追う。

2001年以降、キリンは第2の営業部隊「キリンコミュニケーションステージ(現キリンマーチャンダイジング)」の発足、「KISMAP」と呼ばれるマネジメントツールの導入など、営業担当者の意識や仕事のやり方を変える試みを行った。営業現場で衝撃が大きかったのがリベートの廃止だ。価格営業に代えて、店頭での陳列やプロモーションなど、店舗のためになる提案により商品を売り込む価値営業への転換を図った。この方針に対して反発もあり出入り禁止となった流通店も出たが、2~3年すると成功事例も生まれた。

2005年4月、キリンは第3のビールの新製品「のどごし〈生〉」を発売する。味、パッケージ、コマーシャルのいずれも高い評価を得たのどごしは瞬く間にトップブランドとなり、キリンの変革を後押しした。その勢いに乗り、商品力と持続的な営業力でゴールド拡販を目指すキリンの最前線を描く。

■2007/08/06, 日経ビジネス, 101ページ

反転―闇社会の守護神と呼ばれて
反転―闇社会の守護神と呼ばれて
幻冬舎 2007-06
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おすすめ平均 star
star闇の法律家たちとその周辺
starへぇー成る程ね
star良書ですが、

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東京地検特捜部の検事から弁護士に転じた後、詐欺罪で実刑判決を受け、現在、最高裁判所に上告中の著者が、自らの半生を振り返った自叙伝。

撚糸工連汚職、旧平和相互銀行不正融資事件、福岡県苅田町公金横領事件など大型事件に関わるエース検事だった著者は、特捜部の捜査方針や官僚的な体制に絶望し、検察を去った。その後、大阪で法律事務所を開業すると、暴力団、地上げ屋、バブル紳士などアウトローからの相談を多く受けるようになり、“闇社会の守護神”と呼ばれるようになった。宅見勝・山口組若頭(当時)、伊藤寿永光・元イトマン常務、仕手集団・光進の小谷光弘・元代表、末野謙一・末野興産元社長ら、様々な事件の主役とつき合った。法律家として道を踏み外すことはしていない信念を持って行動していたというが、石橋産業手形詐欺事件では、許永中被告と共謀し、約180億円をだまし取ったとして東京地検に逮捕・起訴された。

検事、弁護士としての活動の中では、様々な事件の背後で政治家、官僚、財界人が暗中飛躍する姿を目の当たりにしたという。著者自身の社会での立ち位置の変化にも驚かされるが、その周囲で、エスタブリッシュメントとアウトローが絡み合って引き起こした政界・経済界のドラマもまた興味深い。

■2007/08/06, 日経ビジネス, 101ページ

アメリカのベジタリアンはなぜ太っているのか?
アメリカのベジタリアンはなぜ太っているのか?矢部 武

あさ出版 2007-06-26
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私たち日本人が米国から影響を受けているものは多い。コカ・コーラやマクドナルドといった食生活、ウォルト・ディズニー、ハリウッド映画などのエンターテインメントから生活スタイルまで、その範囲は多岐にわたる。

著者の指摘通り、今や世界中の誰もが「自国と米国」という2つの国家を持っていると言われるほどだ。我が家を見回してもその実感は色濃い。「ハリウッドスターの愛用化粧品」、軍隊式トレーニング「ビリーズブートキャンプ」など、インターネットの通信販売が米国の消費文化との距離をより身近なものにした。

本書は米国人の日常に関わる諸問題を取り上げながら、そこに隠された米国人の建前と本音、矛盾、ウソと真実を明らかにしている。目を引くタイトルは、「アメリカ人の行動の矛盾を考える上で肥満問題は格好のテーマである」からだそうだ。

著者はフリージャーナリストで、米国滞在15年以上の経験を持つ矢部武氏。米紙の東京支局記者などを経て、銃社会、人種問題、少年犯罪など、米国社会の深部を追究するテーマを追ってきた。著者は日米双方を見渡しながら、「どんどん米国人化していき、日本人が本来の良さや考え方、人間関係などを失っている」との危機感を抱き、日本人は少し立ち止まって生き方や将来の姿を考えてみた方がいいのではないかと促している。

現在、米国人のおよそ3人に2人は太り過ぎで、肥満が主な原因と見られる病気で毎年40万人が死亡、肥満に関する医療費は天文学的な数字である。ベジタリアンと称し、野菜中心に食べていてもジャンクフードやバランスを欠いた食事をしている人は意外と多いと言う。原因として米国人が深刻な問題に対して、あまりに簡単な解決策を求める癖や、心の弱さが挙げられる。

ベジタリアンのほか、「クリスチャンの国になぜ離婚が多いのか」「民主主義の国がなぜ戦争マニアなのか」と、シニカルな表現が並ぶ。イラク戦争が典型だが、自由と民主主義を広めるという大義の下、多くの犠牲者を生み出したことを考えれば、「よくぞ言ってくれた」という思いがする。

多様性に富む国アメリカであるがゆえ、すべての米国人にこれが当てはまるのかと疑問に思う諸氏もいるであろう。著者もそれは織り込み済みで、本書に取り上げた例に当てはまらない人が増えてくれば「不可解な米国人が、より他国から理解をされやすい存在になる」と、最後まで手厳しい。【評者 関西大学教授 白石真澄】

■2007/07/30, 日経ビジネス, 89ページ

転換期の中国自動車流通
塩地 洋 (著)

昨年、中国の自動車販売台数は日本を抜いて世界第2位となり、2010年には1000万台に達するとも予測されている。中国自動車産業の生産に関する文献は数多いものの、本書のように「流通と販売」に焦点を当ててその歴史と実相をまとめた書は希少である。

中国で自動車の生産システムを転換させた出来事は過去に何度かあった。しかし、流通システムが劇的な変化を遂げたのは、世界貿易機関(WTO)加盟を契機とする2001年頃からの爆発的な市場拡大だったと著者は指摘する。郊外には複数の新車販売店が入居する米国型の巨大な「オートモール」が出現し、同時に中古車市場も活況を呈するようになった。ただし、日米で確立している業態とは異なる独自の仕組みやサービスも目立つと言う。

■2007/07/30, 日経ビジネス, 89ページ

これから食えなくなる魚
小松 正之 (著)

著者に聞く-パーソナルライフ-小松正之氏[水産総合研究センター理事] 日本の漁業が危ない

マグロだけでなく、多くの魚が食べられなくなる――。著者はこんな状況は決して空想の世界の話ではないと言う。手遅れになる前にどんな手を打つべきなのか。(聞き手は飯村 かおり)

――今の日本の漁業は、それほど危機的な状況なのでしょうか。

1970年代前半から80年代後半までの約20年間、日本は世界一の漁業生産国でした。この間、どこかに慢心があったのでしょう。水産資源を大切にしなかったうえに、旬の脂の乗った魚を食べたいという消費者のニーズに応えることもしてこなかった。

これに対して外国は日本の消費者が好むサケ、白身魚、エビ、サバなどを上手に市場に提供してきた。20~30年ほど前まで日本の食用魚介類の自給率は100%を超えていたのに、今ではその半分ほどしかない。魚2匹のうち1匹は外国産という有り様です。

しかも、世界各国でシーフードブームが起きており、水産資源は激しい争奪戦にさらされています。このままでは外国産の魚も入ってこなくなり、魚が食べられなくなってしまうかもしれない。漁業者も消費者も考え方を変えなければいけないという危機感を持ってこの本を書きました。

――魚の供給側にはどんな問題があるのでしょう。

やはり資源の乱獲です。今、海の中は一種の砂漠と言っていい状態です。これまで漁師は人一倍たくさん取って早く売ることこそが大事な職責だと思ってきた。意図してやったわけでなくてもそれが乱獲につながってしまったわけです。戦後ずっと続いてきたこの状態に大鉈を振るわなければなりません。

米国東海岸やノルウェー、アイスランドでは、マダラやニシンなどで同じような問題が生じました。これに対しノルウェーの場合、一人ひとりの漁業者に漁獲の割当量を決め、無駄な競争をしないような仕組みを築き上げた結果、漁業が復活し、輸出国となりました。同じようなことを日本的に修正したうえで実行できると思うのです。

既に資源状態が悪い魚ばかりです。特にキチジ(キンキ)、スケソウダラ、イワシ、マサバが心配です。これらは魚の親の資源量が回復するまで取るのを控えることが大事です。

一方でサンマやカタクチイワシなどたくさん取れる魚もあります。サンマが取れるのなら、生鮮で食べるだけでなく、カンパチ、フグ、ヒラメなどの養殖魚の餌にしたりすることも大事です。今、日本の養殖魚の餌の8割は輸入物。しかも有害な抗酸化剤が添加されていることがある。たくさん取れるものを有効に活用して関連産業を振興させ、枯渇したものは資源の回復を待つ。これができれば衰退した日本の漁業を復活させられると思っています。

もう1つには戦後60年以上の間、漁業を縛り、閉鎖社会を作っている制度や法律があります。もっと開放して資源を有効活用し、販売のノウハウを持った人たちが参画できるようにすべきだと思います。

――魚を食べ続けたいと思う消費者はどうすればいいのでしょう?

回転ずしで子供が本マグロのトロを注文することがいいのか悪いのか。マグロが安く食べられるのは、どこかに隠れた問題があるのです。つまり将来の資源まで食いつぶしているということを頭に入れておいてほしい。

魚を買う時はこの魚は天然か養殖か、今どんな魚が旬なのかをぜひ店の人に聞いてください。自然のサイクルに合った魚の買い方が大事です。

消費者は外国産の魚だけでは満足できないはずです。地で取れた生きのいい魚を求めている。魚と馴染みになる機会を供給者と消費者の双方が作っていくことが大切だと思います。

小松 正之(こまつ・まさゆき)氏
1953年生まれ。77年水産庁入庁後、漁場資源課課長などを歴任。著書に『国際マグロ裁判』(共著、岩波新書)、『日本人とクジラ』(ごま書房)など。

■2007/07/30, 日経ビジネス, 93ページ

イラク戦争の深淵―権力が崩壊するとき、2002~2004年
イラク戦争の深淵―権力が崩壊するとき、2002~2004年国末 憲人

草思社 2007-06-26
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2003年3月、独裁者サダム・フセインの排除と大量破壊兵器の一掃を目的に始まったイラク戦争。米ブッシュ政権は当然のように勝利したが、彼らが唱える大義とは裏腹に、「この戦争は何のために始められ、その結果、何がもたらされたのか」という疑問が、いまだに世界中を覆い尽くしている。2001年から2004年まで朝日新聞のパリ特派員を務めた著者は、中東や欧米各地の取材を通じ、この戦争の意味を問い、実像を描き出そうと試みている。

国際政治の表舞台に立つことが珍しいイラクが突如として「火薬庫」と化したのは、2002年、ジョージ・ブッシュ米大統領によりテロの温床たる「悪の枢軸」と名指しされてからだ。大量破壊兵器の開発疑惑はそれ以前からあったが、「9.11同時多発テロ事件」とは無関係という見方が支配的だった。2002年末にバグダッド入りした著者は、「虐げられる市民」「軍隊が闊歩する街」という先入観を裏切る、意外なほど普通の暮らしを目にしたと言う。独裁国家ならではの息苦しさや、反米運動の高まりを感じ取れない空気を、著者は「緩んだ緊張」と表現している。

開戦前夜の緊迫した国際政治とバグダッドの日常――。両者の間に生じていた奇妙なギャップへの違和感を起点に、著者は取材を深めている。

■2007/07/30, 日経ビジネス, 91ページ

コトラーを読む
コトラーを読む酒井 光雄

日本経済新聞出版社 2007-04-14
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マーケティングの大家として知られるフィリップ・コトラー氏の理論を通して、マーケティングの正しい基礎知識と実務に落とし込むためのノウハウをまとめた書。コトラー氏自身による著書は多数世に出ているものの、「入門」と銘打たれた書でさえ数百ページに及ぶ。誰もが日々の実務に生かせてこそコトラー氏の理論には意味があると考えた著者は、エッセンスのみを抽出して新書1冊分に凝縮した。

まず大前提として、広告や販売促進、市場調査などはマーケティングのごく一部だと理解せよと言う。コトラー氏の理論では、マーケティングとは「顧客を満足させて、利益を得る行為」を指し、単なる儲けの道具ではないと戒める。また、顧客とは個々の生活者だけではないとも言う。企業には社会と調和して人々の幸せを維持し向上させる責任があると言い、それを「社会的マーケティング概念」と呼ぶ。

これらを踏まえたうえで実践的手法をひもといていく。ユニークなのは、著者が日本の企業活動を想定し、テーマごとに「課題」を設定している点だ。例えば、携帯電話の新製品の価格を決める責任者として、読者は何を判断基準とし、どう決めていけばよいかと問う。コトラー理論を当てはめながら、解を導く法を指南する。

■2007/07/30, 日経ビジネス, 91ページ

日本の値打ち―外資が殺到する本当の理由
アンドリュー H.シップリー (著), 坂元 美智子 (翻訳)

在日15年の米国人アナリストが「日本経済は完全に立ち直った」と言い切り、その理由を説く書。その勢いは今後も持続し、日本は世界市場の中心で富を生み続けるであろうと予見する。もともとは海外の投資家向けに書かれたものだが、著者の分析は金融分野にとどまらず、知的財産や都市再開発、日中関係など多岐に及ぶ。従って投資に関心がなくても、現在の日本経済の実力を測る参考資料として、あるいは“日本通”の外国人による現代日本論として、興味深く読める。

海外の投資家から見た日系企業の魅力、つまり世界の競合企業を凌駕する強みの1つに「無形資産」があると言う。具体的には、ブランド、商標、版権、R&D(研究開発)などだ。外国人投資家のみならず、それらを保有する日系企業自身でさえ過小評価しがちな知的財産には、計り知れない富を生む可能性があると言う。その価値に着目する海外の投資家を追いながら、富士通や日立製作所などの現状を取材する。

東京の再開発は、著者の目には「アジアのマンハッタン」誕生前夜に映ると言い、これまで批判にさらされていた日本式経営でさえも、海外勢は熱い視線を注いでいると解説。森トラストの森章社長ら、日本企業のキーマンによるコメントも多数紹介されている。

■2007/07/30, 日経ビジネス, 91ページ

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