メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2007年5月28日~6月11日

抵抗の場へ―あらゆる境界を越えるためにマサオ・ミヨシ自らを語る
抵抗の場へ―あらゆる境界を越えるためにマサオ・ミヨシ自らを語るマサオ・ミヨシ 吉本 光宏

洛北出版 2007-04
売り上げランキング : 38325


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

どこから来たのかではなく、どこへ行くのかこそ問われなければならない――。

本書の対談の主役、マサオ・ミヨシ氏の一貫した主張である。にもかかわらず、特筆すべき氏の経歴には触れざるを得ない。まだ戦後間もない時代に米国に留学、米国女性と結婚し、同国の有力大学で英文学(!)を教える初めての日本人教授となる。養子を含めほぼ同時期に生まれた、それぞれ人種の異なる3人の子を持つ。米国を拠点に今日まで続く学究、評論活動は文学、政治、経済に限らず、環境、生物、宇宙にまで及ぶ。というか、そうした分野の細分化をミヨシ氏はおよそ認めない。

国境を超え、学問や文化の壁を打ち破ってきた越境者ミヨシ氏は言う、「日本の美」など存在しない、と。「我々日本人は…」「日本では…」の発想をやめよ、日本は特殊ではない、という意味だ。同様に、イスラムだから、黒人だから、韓国系だから…といった類の一切に否定的である。権力、反権力双方に頻繁に援用される「アイデンティティーによる政治」を認めない。この思想は、先に引いた氏の人生の軌跡と密接不可分であろう。

常に批評精神を忘れない越境者は、必然的にあちこちで衝突を生んできた。親友や恩顧ある人にも遠慮なく疑問をぶつけ、批判する。結果、日本では気まずい沈黙と摩擦を呼んだ。しかし米国では違った。人間関係を捨象した議論、討論の素地があるからだ。

ミヨシ氏の米国への態度は、アンビバレントである。最悪の貧富差、社会保障の不在、世界中での軍事介入などを容赦なく批判する一方、氏の主張に分け隔てなく耳を傾けるのも米国文化、社会のなせる業、と認めている。越境者にとって最も住みよい国は依然、米国である。

国際政治は米国に、国内政治は企業に乗っ取られ、あらゆる場所で富める者の支配が進行している、という氏の政治観は、古いマルクス主義と同工異曲かもしれない。しかし氏には、イデオロギーより、むしろ時の支配的な力に抵抗しようとするあまのじゃく精神が溢れている。戦時中、中学生の身にもかかわらず敗戦の予測を公言し、他方、日米戦の正邪は別問題で、畢ひっ竟きょう、米国とは戦わざるを得なかった、と振り返っているのは、その一例であろう。

比類なき知性の持ち主でありながら、「知識人」という概念を拒み、単なる人間として問い続け、考え続けてきたミヨシ氏。今なお新たな学問的挑戦をやめない反骨を貫いた生き方は、主義主張を超えて、読む者に迫ってくる。【評者 ローンスタージャパン会長 岩下 正】

■2007/06/11, 日経ビジネス, 85ページ

敵対的買収―新会社法とM&A
敵対的買収―新会社法とM&A渡邊 顯

角川書店 2007-03
売り上げランキング : 71143

おすすめ平均 star
star良書です

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

かつては日本の風土にはそぐわないと言われたM&A(企業の合併・買収)だが、今では経営戦略の日常的な選択肢の1つとして定着しつつある。著者は、昨年施行された新会社法が、M&Aを含めた柔軟な企業再編の促進に正当性を与えていると指摘する。あらゆる企業にM&Aの好機と、買収される危機が訪れているとも言う。

その前提に立って、正当な手続きに基づいたM&Aの方法や、敵対的買収を仕掛けられた場合の防衛策を解説する。外国人投資家や国内の機関投資家は、投資先企業が買収されるリスクよりも、株主価値が希薄化するのを嫌う傾向が強い。従って、経営陣にとっての「最大の経営リスク」とは株主総会であると指摘。高配当・高株価の維持が企業防衛策には不可欠だと論じる。

■2007/06/11, 日経ビジネス, 85ページ

ホスピタルクラウン 病院に笑いを届ける道化師
ホスピタルクラウン 病院に笑いを届ける道化師大棟 耕介

サンクチュアリ出版 2007-02-08
売り上げランキング : 3356

おすすめ平均 star
star無償でもプロ。
starただ、笑ってくれるだけでいい
star優しい巨漢のとぼけた奮戦記

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

著者に聞く-パーソナルライフ-大棟耕介氏[プレジャー企画代表] クラウン文化を日本にも-『ホスピタルクラウン  病院に笑いを届ける道化師』

クラウン(道化師)として、病院で子供たちに会い続ける。その根底にあるのは、クラウンという職業に対するプロ意識だ。サービスをテーマに企業からの講演依頼も増加中だ。

――病院に出向いて、子供たちを笑わせるというホスピタルクラウン(道化師)の活動は日本では馴染みがありません。

誤解されたくないのは、私は「助けになってあげたい」というようなラブ&ピースの塊ではないということです。プロのクラウンの活動の1つととらえています。私にとっては病気の子供を相手にしているのではなくて、たまたま病院に子供がいただけなのですから、その子供たちを和ませ、笑わせ、一瞬でもいいから日常のことを忘れてもらうのが私の仕事です。そうすることで、病院という特殊な環境にある子供たちのストレスを軽減することができるのです。

ラブ&ピースの塊で子供に接したら、たちまち拒否されるでしょうね。プロのクラウンとは、相手の気持ちを読み取り、相手を主役にする力を持っていなければなりません。子供たちだって、いつも何かの芸を見たいわけではないでしょう。時には子供だってゲーム機に熱中したい時もある。自分の存在を押しつければ、逆に子供の心を傷つけることにもなりかねません。

それにラブ&ピースの精神でやっていたら、その人自身が持たないのではないでしょうか。病状が良くなっていく子もいれば、悪くなっていく子もいます。死ぬ前日に会う子もいる。悲しみも喜びもためないようにすることが必要です。

――米国でホスピタルクラウンを実施した経験が非常に印象に残っているそうですね。

米国でのクラウンは芸がとてもうまいというわけではありませんでした。しかし、彼らは底抜けに明るく、相手を和ませる技を知っている。

ホスピスに行った時に、何もできない自分に気づき愕然としました。自分の芸には自信があったのですが、手も足も出ないのです。ホスピスでは「How are you?」という言葉は使ってはいけない。体調が良いわけはないから。家族の話もしてはいけない。家族に見捨てられている人も大勢いるのです。風船も使ってはダメ。アレルギーを持っている人がいるからです。

そうした中でも米国人のクラウンはあっという間に病室に入り込み、人々を和ませて、優しい空気で満たしていった。芸や道具がなくても、仕事ができるということを知りました。

――最近では企業からの講演依頼も増えているようですね。

クラウンはコーチングによく似ていると思います。その場の状況に応じてパフォーマンスをして、コミュニケーションを構築し、相手を引き出します。これは接客業やサービス業の基本ではないでしょうか。生命保険会社に呼ばれたこともあります。

海外ではこうしたクラウンの力は高く評価されています。それに比べて日本でのクラウンの評価はまだまだ低い。私が経営しているプレジャー企画は約40人のクラウンを抱えていて、クラウンのリーディングカンパニーです。だからこそクラウンの文化を広めなければならないと考えています。

クラウンがいなくても済むストレスのない社会が理想なのかもしれませんが、現実にはそうはいかないでしょう。特に病院にはもっとクラウンが必要です。クラウンがいれば、病院の空気があっという間に変わります。

もっと身近にクラウンの存在を感じられるような社会になってほしいと考えています。

大棟耕介(おおむね・こうすけ)氏
1969年生まれ。鉄道会社勤務を経て98年、クラウンの育成などを手がけるプレジャー企画を設立。2003年にクラウンの世界大会「WCA」で銀メダルを受賞。

■2007/06/11, 日経ビジネス, 87ページ

新富裕層プロファイリング―キューブリッチを狙え!
新富裕層プロファイリング―キューブリッチを狙え!鶴岡 謙吾

ダイヤモンド社 2007-03-09
売り上げランキング : 1786

おすすめ平均 star
star新富裕層について最も解りやすく解説された一冊
star思わず妄想しました
star21世紀のキーワード

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

良質な顧客が多数潜む“宝の山”として、「新富裕層」が注目を集めている。本書は、富裕層に特化したマーケティング調査などを専門に行う会社の代表者が、「新富裕層」とは何者かを解き明かそうと考察を試みたもの。

「新富裕層」とは、主に30代後半から40代半ばで、世帯年収1500万円から3000万円の“隠れ金持ち”を指すと言う。そうした富裕層の予備軍は、これまでの「お金持ち」のイメージとは異なる。純金融資産が5億円以上の超富裕層や、同じく1億円以上の富裕層は今も昔も存在するが、その数は少なく、ライフスタイルにも一定のパターンがある。しかし、富裕層予備軍は、例えば独BMWの6シリーズ(上級モデル)に乗って100円ショップに買い物に行ったり、高額のロレックスを着けてラーメン店の行列に並んだりするなど、従来のお金持ち像に当てはまらないライフスタイルを生み出している。彼らのユニークな日常生活のリポートを通じて、彼らの好むもの、好まざるものを明らかにしていく。

高級スポーツクラブ通いや自然派の食品・衣料を好む彼らの嗜好は、健康と環境を重視するライフスタイル、「LOHAS(ロハス)」というキーワードで読み解けると言い、幾つかのタイプに分類して特徴を解説する。

■2007/06/11, 日経ビジネス, 86ページ

国際競争力強化の処方箋―日本の製造業飛躍への提言
国際競争力強化の処方箋―日本の製造業飛躍への提言野村総合研究所技術・産業コンサルティング一部

野村総合研究所広報部 2007-04
売り上げランキング : 16480


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

本書は、野村総合研究所で主に製造業界の顧客を持つコンサルタントらが記した論文をまとめたものだ。同研究所が発行する月刊誌「知的資産創造」に掲載された論文から、1つの顧客企業への提言に限らず、日本の製造業全体が共有すべき課題と対策をテーマに、19編を整理し直して示す。

第1部では「日本のものづくり力を支えている素材・部品業界への提言」と題して関連する論文を集めた。「デジタル素材」と呼ばれる液晶ディスプレーなどに用いられる素材の製造・販売において、日本企業は長らく優位性を保つ。しかし、今後は韓国、中国企業の追い上げや原材料費上昇などのリスク要因を無視できないと指摘。成長維持のポイントは、製造力(技術と設備)重視から、戦略的な顧客開拓に重きを置く経営への転換を図れるかどうかにかかっていると論じる。

第2部では「国際競争力を試される機器業界への提言」を、また第3部では「成長産業である社会的ニーズ先取り製造業界への提言」と題して、映像における「次世代4Kデジタル技術」との関わりに分析を加える。第4部では、低迷期を経て復活に動き出した我が国の電子・電気機器業界を例とし、コアコンピタンスの再考など、製造業全体の課題を探っていく。

■2007/06/11, 日経ビジネス, 86ページ

激辛書評で知る中国の政治と経済
激辛書評で知る中国の政治と経済矢吹 晋

日経BP社 2007-05-03
売り上げランキング : 952

おすすめ平均 star
star本当の現実と向き合うための「激辛」批判

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

急速な経済成長を遂げる一方で、共産党独裁体制を堅持する中国。この国の素顔を解き明かそうと試みる書籍や論文は多いが、長きにわたり中国研究に取り組んできた著者は、それらに偽りや誤謬が少なくないと論じる。「中国は実にとらえどころのない巨象であり、それゆえに虚像があふれている」と言い、日本社会の中国観に大きな影響を与えた書物の誤りを徹底的に究明する作業を通じ、中国の実像に迫る。

2005年に出版され話題となった『マオ 誰も知らなかった毛沢東』については「三文小説」と一蹴し、同書の著者はもちろん、この本の内容を高く評価する書評を記したジャーナリストや大学教授の実名を挙げて、「虚偽宣伝にまんまと乗せられて、宣伝に努めている」と酷評を加える。著者の目から見て疑わしい記述に対する分析は徹底しており、批判の対象は、原文著者の取材の甘さから、邦訳版の翻訳者による誤訳・表記ミスにまで及ぶ。

そうした厳しい視点によって、江沢民氏や0小平氏、経済自由化路線のカギを握る人物である朱鎔基氏など、中国現代史のキーマンについて書かれた本を批判的に読み解いていく。同時に、中国ブームに乗じて深い取材を行うことなく書を出版し、無用な危機論を煽った言論人に対しては猛省を促す。

■2007/06/11, 日経ビジネス, 86ページ

核武装論――当たり前の話をしようではないか
核武装論――当たり前の話をしようではないか西部 邁

講談社 2007-03-16
売り上げランキング : 36201

おすすめ平均 star
star核への思考停止は国益を損ねる
star内容が薄い
star米中を仕分けした「核武装論」が必要

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

北朝鮮の核問題が騒がれる中、日本では核論議自体が封印されている。著者は、世界中に核をため込んでいる現代社会で「思考停止」は許されないとして、日本の核武装を考察する。

日本では「唯一の被爆国」というフレーズで、非核化を提唱することが多い。一方で「核の傘」と称して「依存的核武装」の状態にあることを是認しており、偽善的な平和主義が蔓延していると指摘する。その「核の傘」は、有事には閉じたままである可能性が高い。自主防衛の体制を整えるためには、核を「持たず、作らず」という原則を変え、技術的な中核として核武装を射程に入れる必要があると主張する。

核拡散防止条約(NPT)の問題点、国際社会のパワーバランスなどを解説しながら、核武装の是非を論じる。

■2007/06/04, 日経ビジネス, 69ページ

天才をプロデュース?
天才をプロデュース?森 昌行

新潮社 2007-05
売り上げランキング : 3637

おすすめ平均 star
star真のインターナショナルとは

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

著者に聞く-パーソナルライフ-森昌行氏[オフィス北野社長] 着地点を想定しよう-『天才をプロデュース?』

芸人・ビートたけしと、映画監督・北野武という2つの顔を持つスターのパートナー。才能に惚れ込む一方で、客観的に状況判断して最大限の力を引き出す。 「世界のキタノ」を支えるプロデュース術は、経営そのものだ。

――北野武とつき合う魅力はどこにあるのでしょうか。

たけしさんとの関係は、ものすごく緊張感があります。昔は一緒に飲み歩いて、たけしさんの部屋に転がり込んでいました。私は寝てしまいますが、たけしさんはシャワーを浴びて酔いをさまし、黙々とネタを大学ノートに書いていました。人には見せませんが、今でもノートを持ち歩いていますから。映画撮影の時も3冊ぐらい持ってきて「えーっと」と言いながら我々に話しかけてきます。想像するに、寝る前に何かをまとめて書くことを繰り返している人なんです。

そうすると、私も飲んでいてもおのずから仕事としてつき合うことを考えるようになる。たけしさんと飲んでいる席でいくら盛り上がっても、実は企画は生まれないのです。改めて昼間に企画の話としてやらないと絶対にまとまりません。仕事目当てに毎晩たけしさんと飲みに行こうとする人には、「仕事の話はどっちみち私のところに来ますよ」とご注意申し上げるのですがね。

――映画監督・北野武は「その男、凶暴につき」で鮮烈にデビューした印象があります。 もともとビジュアルで考える人だから、頭に映像があったと思うんです。ツービートの漫才を聞いていても、たけしさんは「田舎者」という言葉を使わずに、村の風景を言葉で表現する。「松山容子のボンカレーの看板」みたいに。ですから、正直言ってデビュー作「その男、凶暴につき」という映画では、世間ほど私は驚きませんでした。このぐらいはできるだろう、という感覚です。むしろ次作「3-4×10月」で、たけしさんの映画監督としての才能にショックを受けました。粗削りで未完成ですけれども、セリフにムダがないし、カットの積み重ねがすごい。

プロデューサーとしては恵まれていますよ。たけしさんは、予算や日程をオーバーしたことが一度もないんです。「できる」「できない」と結論を出せば、的確に対応してくれます。現場でもリハーサルして、うまくいかなければ撮れる形に変更する。ハリウッドで「BROTHER」を撮影した時は、現地のスタッフがあまりに早く撮影を済ませるのに驚いていました。向こうは同じシーンを11回ぐらい平気で撮ったりしますから。撮影を開始して1週間ぐらいで、「本番」の声がかかると、「OKだろう」と拍手がわくようになった。邪魔にならないところで踊っているスタッフもいましたね(笑)。

――日本映画は活況を呈していますが、プロデューサー不在を指摘しています。

映画を作る環境だけではなく、見せる環境までも考えるのがプロデューサーの仕事です。本来であれば、大量に広告を打つのか、映画祭に突然登場するのか、作品によって違うはずです。旧来型の宣伝方法だけではなくて、インターネットなどを含めてどう顧客にアプローチしていくか、このあたりを考えていかないと本当に映画を見せる環境は作れません。そういう意味で、全体のイメージ、つまり着地点をきっちり想定していない人が多い。

優れた才能を持っている映画監督は、日本では伝統的に生まれてきています。監督たちがやりたいこと、ビジネスとして出資者が望むこと、それぞれあると思いますが、そのバランスシートを作っていくプロデューサーの役割を全うできる人がもっといてほしい。教育機関のような場で人材を育成することも必要だと感じています。

森昌行(もり・まさゆき)氏
1953年1月、鳥取県生まれ。青山学院大学卒業後、テレビ番組制作に携わり、ビートたけしに出会う。88年、オフィス北野に参画。92年2月から現職。

■2007/06/04, 日経ビジネス, 71ページ

サラ金崩壊―グレーゾーン金利撤廃をめぐる300日戦争
サラ金崩壊―グレーゾーン金利撤廃をめぐる300日戦争井手 壮平

早川書房 2007-03
売り上げランキング : 1059

おすすめ平均 star
star外からは見えなかった上限金利引き下げの舞台裏の攻防を詳述!
star血の通った金融ルポ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

「利息制限法」が定める上限金利(元本の金額に応じて年15~20%)と「出資法」が定める上限金利(29.2%)の間の、「グレーゾーン金利」廃止までの動きを追ったノンフィクション。金融庁、消費者金融業者、政治家など、関係者の攻防を描写する。

始まりは2006年1月の最高裁の判決。アイフルの子会社が債務者に返済を求めて訴えを起こし、グレーゾーン金利の有効性を争った裁判で、1審、2審は原告が勝訴したが、最高裁は「原判決を破棄。高等裁判所に差し戻し」との判断を示した。この判決以後、金融庁はグレーゾーン金利廃止と上限金利引き下げに向けて動き始める。

消費者金融には高金利、過剰な貸し出し、過酷な取り立てという構造的問題が指摘され、これらが多重債務者、自殺者を生んでいるとの批判もあった。この時期、悪質な取り立てが表面化したアイフルに対し、金融庁は大規模な行政処分を下す。世間で消費者金融業者に対する悪いイメージが広がり、業者側は反対する力を失っていく。米国からの“外圧”、少額・短期の貸し付けに高金利を認める「特例」設定の動きなどをくぐり抜け、2006年12月、上限金利を引き下げる「貸金業法」が成立した。その陰で起きた様々な人間ドラマを克明に描き出している。

■2007/06/04, 日経ビジネス, 70ページ

社員満足の経営―ES調査の設計・実施・活用法
社員満足の経営―ES調査の設計・実施・活用法吉田 寿

日本経済団体連合会出版研修事業本部 2007-03
売り上げランキング : 3754


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

成果主義的な人事制度の問題が明らかになる中で、ES(社員満足)に配慮する企業が増えている。社員満足の向上が顧客満足につながり、ひいては業績向上による株主利益に結びつくと考えるからだ。本書は、ゲーム業界の経営統合という架空のケースを基に、「ES経営」の手法を解説する。各章とも、ES経営の考え方を物語形式で示す「ビジネスストーリー」と、「ES調査」の実務を説明する「Let’s ES サーベイ」で構成する。

ESの要因には満足度を強化する「動機づけ要因」と、不満足度を強化する「衛生要因」がある。動機づけ要因は仕事や評価、処遇などを、衛生要因は報酬水準や福利厚生、組織風土などを含む。衛生要因はあって当たり前で、低下・悪化すると満足度が下がる。動機づけ要因はより積極的で、刺激すると、総合的満足度が向上するという。

ES調査で評価の高い項目、低い項目を確認したり、所属部署、年齢などセグメント別データを比較したりすることで、会社に潜む問題点や課題を把握できる。総合満足度への影響度が大きいのに、現在の満足度が低い項目は最優先で改善に取り組む必要がある。スポットで行うのではなく、継続的にES調査を実施し、ES経営を目指す姿勢が重要と指摘する。

■2007/06/04, 日経ビジネス, 70ページ

東大のこと、教えます―総長自ら語る!教育、経営、日本の未来…「課題解決一問一答」
東大のこと、教えます―総長自ら語る!教育、経営、日本の未来…「課題解決一問一答」小宮山 宏

プレジデント社 2007-03
売り上げランキング : 1560

おすすめ平均 star
star浅薄でつまらない
starそうだ 東大に行こう!
star想定外の面白さ・・・梅田氏も登場します

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

東京大学総長の著者が、東大について一問一答形式で解説する。

著者は、東大を「世界の知の頂点」とし、日本、さらには世界の課題解決に役立つ大学に変革するビジョンを持つ。変革のキーワードは、細分化した知識を相互に関連づけて捉える「知の構造化」と、各分野でトップレベルの研究者たちが互いに「協調」する「自律分散協調系」。本書はこうした変革のコンセプトをより具体的に説明する。

例えば、「東大に新しい学部をつくるとしたらどんな学部か」という問いには、「各学部に分散しているものを活用し、ネットワーク型のマネジメントスクールをつくりたい」と答える。「早慶やハーバードよりも東大のいいところはどこか」という問いには「一番の強みは真の意味での総合大学だという点。教授陣の厚みは圧倒的」と答えるが、雑多なものが無秩序に存在する「自律分散系」では価値は生まれないとして、「自律分散協調系」に持っていくため、「経営」という軸を組織に通す必要があると指摘する。

「『受験テクニック』で東大に合格できるか」「なぜ日本にはグーグルのような企業が生まれないのか」「東大の卒業生が専業主婦になったら、もったいないと思うか」といった興味深い質問に、著者なりの考えを示す。

■2007/06/04, 日経ビジネス, 70ページ

ビジョナリー・ピープル
ビジョナリー・ピープルジェリー・ポラス スチュワート・エメリー マーク・トンプソン

英治出版 2007-04-07
売り上げランキング : 144

おすすめ平均 star
starビジョナリーな人たちからのメッセージ
star事例が豊富
star自己啓発書としてなら

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

時代を超えて一流であり続け、繁栄を続ける企業の条件を探った名著『ビジョナリー・カンパニー』が日本に紹介されて10年余りが経つ。当時の本はこんな一文で始まっていた。「本書はビジョンを持ったカリスマ的指導者についての本ではない」。

当時の共同執筆者の1人であるジェリー・ポラス氏らが、その「ビジョンを持ったカリスマ的な指導者」の共通項を探る作業に挑戦し、結果をまとめた。本書では「ビジョナリーな人」と名づけた、並外れた人生を送り、衰えることのない影響を周囲に与え続けている200人余りにインタビューを行っている。取材に応じたのは米ゼネラル・エレクトリック(GE)のジャック・ウェルチ元CEO(最高経営責任者)や英ヴァージン・グループ創業者のリチャード・ブランソン氏といった財界人、政治家、人道支援家などだ。

もっとも、「ビジョナリー」という言葉につられて、本書を「ビジョナリー・カンパニーの人物版」と思って読み進めると肩すかしを食らうことになる。ビジョナリーな組織とビジョナリーな人との間には決定的な違いがあるからだ。ビジョナリーな組織は誰でも努力次第で作り上げることが可能だが、ビジョナリーな人には、努力次第でなれるものではない。

例えば、ビジョナリーな人には、「自分がなし得た取り組みに社会的な意義がある」という共通項がある。何かの意義を感じるために努力をしたという人はいないだろう。本書で取り上げた人の多くは、自分が熱中できることしかやっていない。それが結果的に社会的に意義のある内容と重なっていたり、途中で意義のある取り組みだと自覚をしたりしたということだ。

本書ではほかにも「自分の生き甲斐に対して誠実である」「本能的、直感的に言語を使う」「思いがけない幸運に備えている」など、ビジョナリーな人に共通する項目が明かされていく。ただそれはビジョナリーな人の因数を分解して公約数を提示したのであって、ビジョナリーな人になるための方程式を示したものではない。

脇目も振らず、自分の好きなことに没頭するという意味で、ビジョナリーな人は「バランスの悪い人」と言える。ただ、短所を自分のこととして受け入れ、消化しているから、長所である突破力を殺さずに済む。組織はこうはいかない。少しでもバランスが悪いと、崩壊への坂道を転がってしまう。組織も人の集合体だが、集団になった途端に成功への必須条件が変わる。当たり前なのだろうが、その違いを自然と意識させてくれる1冊だ。【ワタミ社長 渡邉美樹】

■2007/05/28, 日経ビジネス, 71ページ

社員力―ITに何がたりなかったか
社員力―ITに何がたりなかったか浜口 友一

ダイヤモンド社 2007-03-16
売り上げランキング : 6194

おすすめ平均 star
star当たり前のことが難しい

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

NTTデータのトップが、今、IT(情報技術)業界各社に求められている変革の重要性を説く。変革の要となるのは「社員力」であり、最新の経営理論やビジネスモデルに目が行きがちな状況にあっても「ものをつくるのは人間」という原点を忘れるなと言う。

経営者には「社員の成長を信じよ」と呼びかける。自身の苦い体験を含め、確かな理論に基づくプロジェクトであっても失敗することがあるのは、システム構築の先に「それらを活かすのは社員」という視点が欠けていたからだと指摘する。さらに、変革を力強く推進する組織に必要な戦略立案法や人材の登用法などを具体的に指南する。著者が説く「現場からの変革」の重要性は、IT業界に限らず、あらゆる企業の参考になり得るだろう。

■2007/05/28, 日経ビジネス, 71ページ

オバサンの経済学
オバサンの経済学中島 隆信

東洋経済新報社 2007-04
売り上げランキング : 4072

おすすめ平均 star
starオバサン≠おばはん

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

著者に聞く-パーソナルライフ-中島隆信氏[慶応義塾大学教授] オバサンって何だ?-『オバサンの経済学』

声が大きくずうずうしいその一方で、消費の主役にして貴重な労働力…。無視できない存在感を持つオバサンを経済学の視点から読み解く。その未来は女性の生き方、社会の在り方とも重なる。

――オバサンもそうでない人も含めて、いろいろな立場の女性から、いろいろな反応があったのではないですか。

オバサンを45~65歳の既婚、無職で「女性らしさを放棄した存在」などと、あえて定義しましたからね。この本の校正作業をお願いした50代の女性からは、「オバサンをバカにしている」という内容のかなり厳しい批判を頂戴しました。私の妻は、自分がオバサンだと自覚しているからなのか、読んで笑っていましたけど…。

「女性のことについてよく書いたね、勇気あるね」という声もありました。一般的に男性が女性のことについて語るのは、微妙な問題で、タブーのような意識があるのかもしれません。断っておきますが、私はオバサンをネガティブな存在として論じてはいません。見栄を張らずに値切る、といった行為は極めて合理的で、それによって企業の競争を促すメリットなども大きいのです。そもそも経済学は物事を善悪では捉えないのですから。

実際に多くの女性にインタビューする中で、「自らの意思で積極的にオバサンという生き方を選ぶ人は多く、オバサンは社会に役立っている」と説明すると、ある意味で“解放”されるようです。家庭や職業などの制約によって仕方なくオバサンになった方は、面と向かってオバサンと言われるとカチンとくるのでしょうね。

――オバサンが「生き方の問題」だとすれば、10年後、20年後にオバサンは変貌していますか。

オバサンとしての生き方を選ぶかそうでないかを決めるのは、オバサン世代に突入する直前に当たる30代の頃の意識や生活スタイルです。取材したお医者さんによると、女性の平均余命は延びているにもかかわらず、更年期障害になる年齢は45歳頃で昔と変わらない。それだけオバサンでいる年月が長くなっているわけです。

晩婚化が進んだり、女性の雇用の形態が変化したりすることで、私が定義したようなオバサンの絶対数は減っていくのかもしれません。もともとオバサンは家=主婦をベースにした存在ですからね。様々な制約が外れて生き方の選択肢が増えれば、まず女性の労働機会の増加という形で表れます。オバサンは巨大な消費パワーの主役ですから、その力が労働人口の増加に回って賃金所得の増加と消費の底上げにつながります。単純に考えればGDP(国内総生産)は増加すると言えるでしょう。

――もともと統計学がご専門ですが、今回の対象であるオバサンには統計らしい統計がありません。

ひたすら観察し、ひたすら当事者にインタビューするしかありませんでした。それでも表面的にオバサンなだけなのか、身も心も完全にオバサンなのかはなかなか分からないことも多い。大阪市内の主だった商店街も歩き回りましたが、大きい声で値切って買い物しているような、いわゆる「大阪のおばちゃん」ばかりということもなかったですし。きちんとした統計が揃っているものは、逆に言えば誰でも研究できますから、ほかの人が手がけにくい分野を調べてみるという楽しみも大きいですよ。

今回は時間がなく踏み込んだ議論を展開できませんでしたが、動物の世界や海外のオバサンとの比較にも興味がありました。それから江戸時代の大奥。女性だけの世界で君臨しているお局様は、いかにもオバサン的な存在だと思いませんか。

中島隆信(なかじま・たかのぶ)氏
1960年生まれ。83年慶応義塾大学経済学部卒。現在、商学部教授。著書に『大相撲の経済学』『お寺の経済学』(いずれも東洋経済新報社)など。

■2007/05/28, 日経ビジネス, 73ページ

ナノフューチャー―21世紀の産業革命
ナノフューチャー―21世紀の産業革命J.ストーズ・ホール 斉藤 隆央

紀伊國屋書店 2007-03
売り上げランキング : 33068


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

「ナノ(メートル)」とは10億分の1mを表す単位であり、一般的に「ナノテクノロジー」と言えば、こうした超微小スケールで材料開発を行う技術だとされる。しかし、この分野に詳しい著者は、その程度では従来の研究を一歩進めただけにしかすぎないと指摘。真のナノテクノロジーとは、物質を構成する原子や分子のレベルでその配列を操作し、様々な目的に応用可能な超微小「装置」を生み出すことであると定義し直す。

その意味でナノテクノロジーは、蒸気機関やインターネットの登場をも上回る衝撃を、人類に与える可能性が高いと言う。空気抵抗ゼロの飛行物体、食品から日用生活品までおおよその「モノ」を作り上げる装置、さらにはクローン人間の開発なども決して夢物語ではないと語り、我々は今からその功罪を議論すべきだと警鐘を鳴らす。

とはいえ、この技術を正しく用いれば、我々の生活は劇的に便利かつ効率的になると言い、その想定例を示していく。完璧な保温、自由なデザイン、通信機能内蔵を実現した極薄のナノスーツ、人間に代わって危険な作業や24時間継続すべき仕事をこなす“存在”を作り出す「自己増殖マシン」など、奇想天外な発想ではあるが、その実現の可能性について真剣に論じていく。

■2007/05/28, 日経ビジネス, 72ページ

超地域密着マーケティングのススメ―小さな会社は当然。大きな会社もおさえておきたい、エリアNo.1に向けた戦略と戦術
超地域密着マーケティングのススメ―小さな会社は当然。大きな会社もおさえておきたい、エリアNo.1に向けた戦略と戦術平岡 智秀

クロスメディア・パブリッシング 2007-03
売り上げランキング : 471

おすすめ平均 star
star今こそ考えなければいけないマーケティング手法!
star「やられた!」古くて新しいマーケティングの視点!!
star地域密着の真髄が込められています!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

IT(情報技術)の発達で中小規模の商売の商圏は無限に広がるように見えるが、現実はどうか。インターネットや電子メールを利用したマーケティングや販売促進に手を広げてみたが、目に見える効果が上がらないという企業も少なくないだろう。著者は「あなたの会社のお隣10軒の名前を正確に言えますか? あるいは相手はあなたの名前や会社名を正確に知っていますか?」と問い、それに答えられないのであれば、すぐ実行できるはずの地域密着型の販売促進活動を怠っているのではと疑問を投げかける。

著者が水道工事店を営んでいるのは、人口3万人弱の和歌山県有田川町である。しかし、大手メーカーが主催する設備機器販売レースで、同店は2年連続県内1位を獲得した。秘訣は自らが考案した「超地域密着マーケティング」にあると言い、「顧客の人生の“登場人物” に自分がなる」をキーワードに据えてその方法を解説する。

営業には方言を用いる、思い出話をする、嫌な人でも好きになる努力をするなど、人間臭い方法が有効だと指摘。自らの商品・サービスが持っている強みを徹底的に洗い直して隣人にアピールする方法を考え直せとも言う。中小企業が大企業の攻勢に対抗する策としても有効だと説く。

■2007/05/28, 日経ビジネス, 72ページ

人をあきらめない組織―育てる仕組みと育つ現場のつくり方
人をあきらめない組織―育てる仕組みと育つ現場のつくり方HRインスティテュート 野口 吉昭

日本能率協会マネジメントセンター 2007-03
売り上げランキング : 428

おすすめ平均 star
starかなり読みごたえあり!
star柏っ子
star考える切り口が具体的で、深さがある

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

経営コンサルティング会社、HRインスティテュートの代表者らが、専門職の中途採用や派遣社員の確保に傾倒し生え抜き社員の育成をおろそかにしがちな企業に注意を促す書。成果主義を単なる数値目標とすると、組織の中で人が育たない原因になると言う。企業それぞれが「らしさ・ならでは」を再認識したうえで、その「企業遺伝子」を吸収して実践することを成果と認めて評価する仕組みを作れば、「育ててもらう」ではなく「自ら学んで育とうと努力する社員」に変わると説く。

多くの企業の社員にとって、高い給与や昇進といった“実弾”が「働きがい」に直結する時代は終わったと指摘。就職活動に臨む優秀な新人たちは、社員の満足度が低い企業への就職を避けるという統計を示し、「今いる社員をあきらめない」組織作りや研修こそが急務であることを強調する。

「企業遺伝子」の継承の牽引役を担うのは、各職場のリーダーである。にもかかわらず、そもそも「リーダーが育つ遺伝子」を持たない企業が少なくないと言う。トップは常に「教育的な行動」を取っているか、「企業遺伝子」を表現した言葉が目に見える形で存在しているか、意見を言いやすい職場を実現する施策を取っているかなど、具体的なチェック項目を挙げる。

■2007/05/28, 日経ビジネス, 72ページ

決定版 仕事は楽しいかね? 会社の宝になる方法
決定版 仕事は楽しいかね? 会社の宝になる方法デイル・ドーテン

きこ書房 2007-03
売り上げランキング : 2156

おすすめ平均 star
star会社の宝
star秘法 秘宝 飛報
starマックスおじさん、健在!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

人気シリーズの第3弾。ビジネスの天才マックス・エルモアと甥、そのフィアンセの会話劇を通して、「会社の宝」と呼ぶべき有用な人材には、どんな資質が備わっているのかを示す。

マックスは「会社の宝」とは「完璧以上に素晴らしい」社員と表現する。完璧な人物に対しては萎縮してしまうが、完璧以上に素晴らしい人物がそばにいると、インスピレーションがどんどんわいてくるというのだ。3人は一緒に働く人々の中にいる「宝」を語り合う。偉大な社員には、「愛される非常識人である」「他人の頭脳を惹きつけるセクシーな頭脳を持っている」「人がコミュニケーションを必要としていることを感じ取る能力、組織的直感を持っている」という、典型的な会社人間とは異なる点があるとまとめる。

■2007/05/21, 日経ビジネス, 79ページ

鈍感力
鈍感力渡辺 淳一

集英社 2007-02
売り上げランキング : 172

おすすめ平均 star
star根拠が無い!
starなんら特別なことは書いていない
star著者が「鈍感力」という言葉を思い付いたことに自ら酔っているだけの本

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

生き方―人間として一番大切なこと
生き方―人間として一番大切なこと稲盛 和夫

サンマーク出版 2004-07
売り上げランキング : 517

おすすめ平均 star
star一人でも多くの人に
star稲盛哲学の原点!
star良くある原理原則論だが

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

自己啓発本の売れ行きが好調だ。近年の傾向としては「デキる人間に見られる法」など、他人に負けるなと読者をせきたてる内容が目立つ。しかしその反動からか、世間の風潮に流されずにどっしり構えて生きよとエールを送る書を支持する読者も増えている。

『愛の流刑地』などのベストセラー小説で知られる作家、渡辺淳一氏は、『鈍感力』(ブックファースト渋谷店6位)の中で「己を磨くのはしたたかで鈍い鈍感力だ」と論じる。叱られても落ち込まない人や五感を研ぎ澄まさずに日々を暮らす人は、外野の声に動揺することなく何事にも粘り強く取り組むから、願いが成就しやすいと説く。さらに医学博士の立場から、鈍感力は健康に欠かせない良質の睡眠をもたらしてくれると語る。

京セラ名誉会長の稲盛和夫氏による『生き方』(旭屋書店本店12位)は、2004年に発行されて以来、約50万部を売り上げているロングセラーだ。「思念が業をつくる」という仏教の教えを引用しつつ、強く心に描いた目的を「ど」がつくほど真摯に追い求めることを勧める。そのような生き方を愚直なまでに継続すれば、平凡な人間も非凡な人間へと変貌すると言い、企業経営の道理も同じであると論じる。

■2007/05/21, 日経ビジネス, 83ページ

クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング
クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティングコグレ マサト いしたに まさき

日経BP社 2007-03-29
売り上げランキング : 327

おすすめ平均 star
starブロガーの視点から書かれたブログマーケティングの方法
starBlogを用いたマーケティングを俯瞰できる。リアルな世界でのクチコミについては記述ないので注意。
star読ませる文章力こそ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

低コストで効果的な販売促進手法の1つとして、ブログなどインターネット上の口コミを活用しようとする企業が増えている。本書はブロガーの視点から、ネットで口コミを起こすための考え方、ノウハウを示す。

最初に検索エンジンから見つけやすく、読者がブロガーに親近感を持ちやすいといった特徴のあるブログが、口コミに向くツールであることを説明する。企業は口コミを広げるきっかけとしてまず、自社のブログを立ち上げる必要がある。話題となるブログにするには、「担当者が自分の言葉で語る」「ストーリーを提供する」「ネタを提供する」といったことがポイントと指摘する。

アニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」は、原作通りに話を進めないなど、ある種の“不親切” な演出をした結果、ネット上で番組について語る人が増え、謎を解明しようと原作本を買う動きが広がった。日産自動車はブロガー向けの新車発表会を開催するなど新しい取り組みで、成果を上げてきた。こうした事例から、どんなブログがブロガーの心をつかみ、話題を呼ぶかを解説する。

消費者が「Web2.0」のツールやサービスを使いこなしている現状を指摘、企業側も従来のマーケティング手法の踏襲から脱却すべきと主張する。

■2007/05/21, 日経ビジネス, 81ページ

世界を変える人たち―社会起業家たちの勇気とアイデアの力
世界を変える人たち―社会起業家たちの勇気とアイデアの力デービッド・ボーンスタイン 井上英之 有賀 裕子

ダイヤモンド社 2007-02-17
売り上げランキング : 4116

おすすめ平均 star
star「世界を変える勢力」:社会起業家の情熱と実力
star世界を変えることは可能だ!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

社会の抱える問題に事業として取り組み、根本的な解決を目指す「社会起業家」。本書は、米環境保護庁出身のビル・ドレイトン氏が創設した社会起業家の支援組織「アショカ」が後押しする社会起業家たちを紹介する。

ブラジルの小児科医ヴェラ・コルデイロ氏は、退院した子供の多くが環境の悪いスラム街で再び体調を崩すケースを目の当たりにし、病気の子供と母親の退院後のケアをする組織「ヘナセ(再生)」を設立する。その取り組みはリオデジャネイロ、サンパウロ、レシフェの3都市に広がり、2万人の子供に恩恵をもたらした。いずれは公立病院すべてと連携することを目指す。

インドのジェルー・ビリモリア氏はストリートチルドレンを救うための24時間電話サービス「チャイルドライン」を手がける。病院や警察などと協力しながら、身の危険を感じて電話をかけてきた子供に対応する。フランチャイズ方式で仕組みを拡大。2005年には15都市にサービスが広がり、累積50万件の電話を受けてきたという。

新しいアイデアと不屈の精神でより良い社会を作ろうとする社会起業家は、医療・福祉、環境保護、教育などの分野で成果を上げつつある。こうした社会起業家は今や「世界を変える」勢力になっていると結ぶ。

■2007/05/21, 日経ビジネス, 81ページ

社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論
社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論イヴォン・シュイナード 森 摂

東洋経済新報社 2007-03
売り上げランキング : 372

おすすめ平均 star
star自然の大切さとビジネスの融合
starタイトルだけ残念
starパタゴニア的経営に共鳴できる株主は増えるか?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

米パタゴニアの創業者でオーナーである著者が、その歴史と理念を綴る。

書名の通り、パタゴニアの社員は勤務時間中、いつでもサーフィンに行っていい。サーフィンに限らず、登山、釣り、自転車など、どんなスポーツでも構わない。その分、仕事をする時には熱心に、効率よく、責任感を持って取り組むことを求める。「社員をサーフィンに行かせよう」という精神は、フレックスタイム、ジョブシェアリングなどの思想を具現化したもの。こうした融通性で、アウトドアスポーツに深い知識と経験を持つ貴重な人材を社内にとどめてきたという。

著者は、ビジネスで最も重要で最優先すべき使命は「地球を守ること」だと強調する。飲料ペットボトルを再生してジャケット用素材に変える処理法を開発したり、製品をオーガニックコットンへ切り替えたりしてきたのは、そうした方針の表れだ。2001年には、売上高の1%以上を環境保護団体に寄付する企業同盟「1% for the Planet」を共同設立。現在ではこの同盟に約500の企業が参加する。

著者は「パタゴニアが100年後も存在することを前提として経営している」と記す。ビジネス界の常識を覆すような様々な取り組みから、「永続する企業」のあり方を探ることができる。

■2007/05/21, 日経ビジネス, 81ページ

Edit

 
Copyright (C) 2004-2006 Ambitious Kanda, All Rights Reserved.