メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2007年4月2日~4月16日
| 格差社会スパイラル コミュニケーションで二極化する仕事、家族 | |
![]() | 山田 昌弘 伊藤 守 大和書房 2007-03-08 売り上げランキング : 4869 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
定年まで安定していた職場環境が崩壊するなど、様々なリスクが発生する社会となった。新しい社会に適応できる人、できない人の間では格差が広がりつつある。格差問題の論客とコーチングのエキスパートが、格差社会を分析する新たな視点を提供する。
本書は格差問題の根底に「コミュニケーション」があると指摘する。コミュニケーション能力がない者はフリーターやニートになりやすく、安定した生活を営むことも難しい。コミュニケーションとは「場」を共有し五感を伴うもの。メールで文字をやり取りするのは真のコミュニケーションとは言えない。今、求められるのは「関わりを創り出す知能」であることなど、格差社会を生き抜くために必要なコミュニケーションの本質を解説する。
| できる人の勉強法 | |
![]() | 安河内 哲也 中経出版 2006-12-19 売り上げランキング : 37 おすすめ平均 ![]() 良いですね 単なる勉強法だけではない サプリメントとしても有効Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| スラスラわかる! スラスラ解ける! 大人のための数学「検定外」教科書―もう一度やり直したいあなたへ | |
![]() | 高橋 一雄 ダイヤモンド社 2007-03-09 売り上げランキング : 4105 おすすめ平均 ![]() 初心者のため代数入門Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「脳トレ(脳のトレーニング)」ブームの火つけ役となった携帯型ゲーム機ソフトが引き続き支持されている。一方では3大検定試験(英語、漢字、数学)の受験者が幅広い年齢層で増加中だという。本の世界でも、「頭を鍛え直す法」をテーマに据えた書籍の売れ行きが好調だ。
『できる人の勉強法』(丸善丸の内本店25位、ジュンク堂書店大阪本店1位)は、予備校のカリスマ講師が自ら編み出したという効率的かつ効果的な学習法を説くもの。ポイントは「学習時間」の組み立て方にあると言い、毎日やると決めたら30秒でもテキストを開くことを勧める。「睡眠時間を削ってもやる」はほとんど無意味で、頭が回る時間に集中する、音読を繰り返すなど、言われれば納得するが忘れがちなコツを整理して示す。
『大人のための数学「検定外」教科書』(丸善丸の内本店29位)は、「大人になるとあれだけ毛嫌いしていたはずの“数学”がなぜか気になりますよね」という著者の問いかけから始まる。数学検定がおおよそ義務教育の習得プロセスに準じて「級」を設定しているのに対し、本書はそれには縛られず、テーマを「代数」に絞り、因数分解や方程式・不等式を解く法を指南する。
| 円の足枷―日本経済「完全復活」への道筋 | |
![]() | 安達 誠司 東洋経済新報社 2007-02 売り上げランキング : 25942 おすすめ平均 ![]() 日本経済をすっきりとさせない「強い円」へのこだわりAmazonで詳しく見る by G-Tools |
2003年から始まった日本のデフレ解消プロセスを解説し、デフレ完全克服への条件を考察する。
著者は、米クリントン政権が対日通商摩擦解決のため戦略的に為替レートを操作したことで、中長期的に円高トレンドとなり、それが日本経済の長期的な低迷とデフレをもたらしたと分析する。さらに本質的な問題として、日本の通貨当局にとって円高トレンドが当然の前提となり、デフレ解消に必要かつ効果的な金融政策を取れなくなったことを挙げる。円高トレンドは日本経済にとっての「足枷」、つまり完全復活の障害になっていると主張する。
2003年春以降のデフレ解消プロセスは、財務省の史上最大の円売りドル買い介入とそれに追随した日銀の量的緩和政策の拡大がきっかけだった。だが、こうした介入や政策は当局による主体的な政策レジーム転換によるものではなく、2001~03年にかけて、デフレ懸念が生じた米国で、政策当局がリフレーション政策に転換したことが影響している。
いまだ「円の足枷」は克服できておらず、デフレも解消していない。今後、1ドル=125~130円程度の円安水準を維持するような金融政策を取ることが、デフレが完全に終わるための条件だと指摘する。
| リクルートのDNA―起業家精神とは何か | |
![]() | 江副 浩正 角川書店 2007-03 売り上げランキング : 1412 おすすめ平均 ![]() 社員皆経営者主義 元在籍者。今も感謝しています! DNAは受け継がれるだろう・・・Amazonで詳しく見る by G-Tools |
リクルート事件で経営危機に瀕したリクルートだが、現在、負債は実質ゼロ、売上高営業利益率30%の優良企業に復活している。強さの秘密はどこにあるのか。創業者自身がビジネスモデルやDNAを解説する。
現在、リクルートやリクルートコスモス出身者が社長を務める上場企業は20社近くに上る。著者は、その背景にリクルートの「社員皆経営者主義」があると分析する。リクルートは社内にプロフィットセンター(PC)という名の小さな会社を作っている。社長の役割を担うPC長には大幅な権限が与えられ、同時に高い成果が求められる。PC長同士は協調的に競い合い、高業績を上げた人は組織の階段を上っていく。こうした仕組みによって、社内に経営者が育っていったとする。
リクルートと言えば自由闊達な風土も特徴。社員はニックネームやファーストネームで呼び合う。経営者は現場の社員との対話を重視し、社員の名前、仕事内容、スキルレベルまで認識している。管理職に対しては、他者からの評価を基に自らの問題点を知り、自己変革につなげる教育プログラムROD(Recruit Organization Development)を課してきた。RODを継続して実行したこともリクルートの風土に大きく影響したと振り返る。
| 人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか | |
![]() | 水野 和夫 日本経済新聞出版社 2007-03 売り上げランキング : 1330 おすすめ平均 ![]() 資産運用を行っている人に必読の書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
1990年代半ば以降、急速に進展したIT(情報技術)革命とグローバリゼーションにより、世界経済システムは大きく変革した。本書は、グローバリゼーションの本質とそれによって起きている構造的変化について解説する。
グローバリゼーションは、これまで「国民国家」単位で成立していた同質性、均質性を破壊する。90年代半ば以降、世界中で格差が広がっているのはその表れだ。1億総中流化によって近代化に成功した日本でも、格差は先鋭的に生じている。16世紀には資本は国家と結びつき、共存共栄してきた。資本が容易に国境を越えるグローバリゼーションの時代には、資本は「帝国」との親密性を高める。著者は、中国、インド、ロシアなどかつての帝国が台頭しているのはその一例だと主張する。
19~20世紀は実質賃金が上がり続ける「労働者の黄金時代」だった。だが、グローバリゼーションによって「資本の反革命(資本による利潤回復運動)」が起き、先進国の賃金は抑制される。先進国にはディスインフレ、またはデフレが定着。金融政策は緩和基調となり、マネーの膨張で資産価格が上昇しやすくなる。先進国経済は資産価格依存型に陥りやすいと指摘する。
グローバリゼーションの複雑かつ多様な姿を詳細に示している。
| ロマンチックウイルス―ときめき感染症の女たち | |
![]() | 島村 麻里 集英社 2007-03 売り上げランキング : 24495 おすすめ平均 ![]() 長寿世界一の秘訣ですか ロマンチックラブ破れてロマンチックウイルスに罹りやすくAmazonで詳しく見る by G-Tools |
大きく納得し、今まで自分の周りにいた「感染症の女たち」に対して優しい気持ちになれる本だ。
副題にある「ときめき感染症の女たち」とは、ぺ・ヨンジュンをはじめとする韓流スターであろうと、氷川きよし、ハンカチ王子であろうと、彼らに熱狂とお金を捧げる中高年女性を指す。ウイルスに罹患したように熱にうなされ、何かに取りつかれたようにその魅力を語り、仲間を作り、そして行動的になる。
2004年だった。私より年上で、社会事象に鋭い舌鋒を持つ女性評論家がペ・ヨンジュン、「冬のソナタ」を熱心に語り、周りの女性に視聴を推薦し始めた時、正直私は「何が起こったのか」といぶかった。しかし冬ソナファンは、その後、燎原の火のごとく日本の女性の間に広まり、今もってペ・ヨンジュンは何十億円という所得の大部分を日本で稼ぐ。冬ソナは私も見た。古くさい日本の昔のドラマを見ているようで最後の方は飽き、嫌になった記憶がある。それ以来、「なぜ」がずっと続いていたのである。多分この現象は男には分析できないと思って。
私がいぶかった「甘く、ソフトで適度に古くさい」ことこそが最大の感染要素だと本書は喝破する。あるのは純愛であり、家族。言ってみればそこに持てる安心感こそ、感染源なのだと。確かにぺ・ヨンジュンも氷川きよしも、そしてハンカチ王子も限りなく清潔で安心感がある。
著者は、日本を含めて東南アジアに広く見られる“ウイルス罹患者”の特徴として、欧米のカップル社会に対して男だけの世界、女性だけの世界があること、女性のお出かけ文化が昔から花開いていたこと、入り口がテレビという安価なものであったこと、などを指摘する。
一番のポイントは、若い時の夫や恋人に対する熱が冷めた後の彼女らにとって、こうした“古くさい”スターは、安心できる対象であり、疑似恋愛ゲームの対象たり得ると指摘する。現実の煩わしさとリスクを伴う恋愛の代替行為だというのだ。スターを相手に夢想する分には、たとえ夫がいても何の障害もない。
この本はウイルスの効用について「今日からでも感染者になれる」「お仲間ができる」「1人で楽しめる」「エコノミーに続けられる」点を挙げた後、「性的欲求の自己コントロールができる」と指摘する。実に興味深い。
反論もあるかもしれない。しかし、本書は、私がずっと感じてきた「なぜ」をかなりの程度理解させてくれた。男の「萌え」との共通点は読んでのお楽しみということにしよう。【評者 住信基礎研究所主席研究員 伊藤洋一】
| 定年後―豊かに生きるための知恵 | |
![]() | 加藤 仁 岩波書店 2007-02 売り上げランキング : 635 おすすめ平均 ![]() 定年後の生き方サンプル満載。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
25年以上にわたり、3000人を超える定年退職者を取材し続けてきたノンフィクション作家が、充実した定年後を過ごす術を指南する。最も重要なのは自分だけのこだわりを持つことで、つまり「自分本位」に生きることだと説く。会社生活で自らの体に染み込んだ“勤め人モード”を払拭するのは並大抵のことではない。一般的な定年後セミナーが提唱するような「定年後の定番メニュー」に身を任せるだけでは答えは見つからないと指摘する。
仕事を作る生き方や家族を見つめる生き方、地域社会でやりがいを探す生き方などに成功した多数の実例を提示。その後、介護を受ける状況に至ったとしても、幸か不幸かを決めるのは本人であると呼びかける。「収入は二の次」と割り切ることも重要だと説く。
| 真贋 | |
![]() | 吉本 隆明 講談社インターナショナル 2007-01 売り上げランキング : 1798 おすすめ平均 ![]() ほんものと、にせもの=真贋 吉本流同時代批評 最新の情勢論Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-吉本隆明氏[思想家・批評家] 考えること忘れた日本人-『真贋』
格差問題に代表されるように、日本は「金持ち」対「貧乏」などの二元論に単純化されつつある。だが、複雑な社会の動きに合わせ、より深い洞察が必要という。
――最近、日本では「考える」ことの評価が低くなっていると主張されています。
実は、日本だけでなく、世界各地で同じようなことが起きています。考えることを専門にする人々、つまり思想家や批評家、もしくは研究者などに対して、世間があまり評価しない風潮が見られます。そのため、考えることに対する報酬が低くなっています。
そのためか、一般の人々もあまり考えなくなっているのではないでしょうか。人真似や他人の意見に迎合するケースが増えてきています。真似ばかりしているので本来の姿が見えなくなっていたり、真似し続けている間に真似をした対象がすっかり変化してしまい自分のあり方が分からなくなっていたりなど、笑い話にもならないケースが珍しくない。
例えば、最近、判決が出たライブドア事件。多くの人は、堀江貴文被告がなぜ有罪なのか、よく分かっていないと思います。一般には、「目立ちすぎた」と考えられているのではないでしょうか。ただ、テレビなどで「悪い」という報道が大量に流れたため、世論が必要以上にそちらに引き寄せられているという印象を持っています。
――とはいえ、堀江被告に対しては1審で懲役2年6月の実刑判決が出ました。
もしかしたら、判決が揺らいでいるのではないか、とすら懸念しています。そもそも、儲けることは悪くありません。以前はそれを世の中が持ち上げていたのですが、逮捕後は儲けること自体を大罪のように扱っていますよね。
私自身は証券取引法については素人ですが、「ホリエモンは本当は無罪じゃないか」などと考えることもあります。選挙への出馬などで反発が強まっていたところで、足を踏み外してしまった感じでしょうか。多分、数年後にまた彼が事業を起こせば、そこに人材や資金が集まってくるでしょう。それだけの才能と器量を持つ人物と、評価しています。そこが、ライブドアのほかの役員とは違うところですよね。
――こうした考えない風潮は世代を超えて起きているのでしょうか。
我々の世代に比べれば、30代ぐらいまでの若い層は、随分幅広に物事を考えるようになりましたよね。党派とか派閥などの制約を受けることも少なくなりました。だからこそ、しっかりと踏み出して考えてほしい。
ところが、その一歩を踏み出す積極性が感じられない。「遠慮している」と言えば聞こえがいいのかもしれませんが、実際には「おとなしい」とか「臆病」というか、そういった印象が強いので残念です。
――日本では格差が広がってきたことも指摘されています。
世の中の仕組みが欧米化しているから、こうした現象が出ているわけです。とはいうものの格差は欧米から比べればまだ小さいと思います。
ただし今、日本では、言葉を換えれば、中間層が消滅しかかっているのです。例えば、町中にあった個人商店はほとんどが閉店してしまっている。こうした層への手当てがないまま、社会が急速に変化しているわけです。
取り残されてしまった我々のような中間層はどうすればいいのか。自らの生活基盤が消えつつある中ですら、なかなか自分で方策を考え出すことができなくなっているのが我が国の現状かもしれません。
吉本隆明(よしもと・たかあき)氏
1924年東京生まれ。東京工業大学を卒業後、いったんサラリーマン生活を送った後、著作業に。代表作は詩集『固有時との対話』など。
| 市場の真実―「見えざる手」の謎を解く | |
![]() | ジョン・ケイ 佐和 隆光 佐々木 勉 中央経済社 2007-02 売り上げランキング : 143 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
支配的な経済モデルなど存在しない。今は米国型市場経済モデルを善として、それに倣う機運が世界を覆っているが、それが正しい選択とは言い難い。ある時代に一部の地域が到達した繁栄とは、様々な限定的要素から成り立つ経済的環境が複合的に生み出した繁栄である――。英国の経済学者である著者はそのように論じ、「市場経済とは何か」という地球規模の疑問に対する答えを模索していく。
「市場経済は誰がデザインしたのであろうか。誰でもない」と断じ、時の為政者や巨大企業が意図的に制御できるものではないうえに、新古典派経済学者が唱える「競争的均衡モデル」のような方程式が当てはまるわけでもないことを強調する。著者の見解に従えば、市場経済とは「自然発生的な秩序」にほかならない。その論拠として、人間の経済的行動は基本的に「合理性」を欠くもので、環境に適応しようと努めるが、それは必ずしも効率的ではなく、最適でもないと指摘する。
鉄鋼王のA・カーネギー氏からビル・ゲイツ氏に至るまで、米国において多くの企業が成功を収めたのは、実は世界各国が倣おうとしている「アメリカンモデル」の通りには米国経済そのものも動いていないからだという、大胆かつユニークな説を披露する。
| 組織を伸ばす人、潰す人 社員の「成長スイッチ」をONにするリーダーの条件 | |
![]() | 柴田 励司 PHP研究所 2007-02-24 売り上げランキング : 1719 おすすめ平均 ![]() わかりやすい言葉で混乱した組織の問題を解きほぐす!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人事マネジメントや組織のリーダーのあり方に関して独自の提言を行っている著者が、自らの豊富な経験を基に「今日的リーダーの条件」をまとめた書。有能なリーダーとは、日々の仕事を通じて部下を消耗させてはならず、むしろ成長させるような度量とノウハウを備えていると指摘する。
周りの社員にポジティブな影響を与えることができる人間を、著者は「成長スイッチをオンにするリーダー」と呼ぶ。リーダーとともに働くことに喜びを感じ取れるような、信頼関係に満ちた職場環境を作ることがリーダーの第一の仕事だと説く。
具体的には、「その人を大切に思う心を言葉にする」ことが重要だと言う。実際には多忙が原因で部下のケアにまで手が回らない上司がほとんどだろう。しかし、その状態が続くと、組織全体が消耗し始めると警鐘を鳴らす。部下をケアする習慣を笑顔で継続するために、リーダーはタフであれと指摘して、失敗や不運に遭遇しても落ち込むのは一晩限りにせよと訴える。
さらに、メールやブログ(日記風簡易ホームページ)などを率先して活用する積極性も、タフな上司の条件になると言う。一方で、失敗に悩む部下をよい方向へと導くべく、組織的にバックアップする方法を指南する。
| トヨタの世界 | |
![]() | 中日新聞社経済部 中日新聞社開発局出版開発部 2007-02 売り上げランキング : 14317 おすすめ平均 ![]() トヨタの新しい一面を見ましたAmazonで詳しく見る by G-Tools |
2007年、トヨタ自動車の世界生産台数は942万台、販売台数は934万台に達する見通しだ。米国のゼネラル・モーターズ(GM)を抜いて世界1位になることが確実視されている。本書はトヨタと同じ愛知県に本拠地を置く中日新聞社が、昨年長期連載した記事をまとめたもの。トヨタの強みや世界戦略について解説した書籍は多数あるが、本書ではトヨタと政治、労働組合のパワーなど、意外な角度からその“素顔”を垣間見ることができる。
連結売上高がデンマークのGDP(国内総生産)にほぼ等しいトヨタにラブコールを送る国は少なくない。同社のグループ首脳が名誉領事に就任している国は、ポルトガルやオーストリアなど10カ国に上る。他の大企業が1~2カ国程度であることを考えると、改めてトヨタという企業が特別な高みに達していることが分かる。また、社長、会長時代に小泉改革を支援して、政界と太いパイプを築いた奥田碩取締役相談役(日本経済団体連合会名誉会長)に「政経蜜月」に動いた真意を問う。
26万6000人の会員を擁し、政界に多数の組織内議員を送り出している全トヨタ労働組合連合会に焦点を当てるなど、企業という枠には収まりきらない“トヨタ王国”の実相を多角的な取材により明らかにしていく。
| 創るということ | |
![]() | 佐々木 昭一郎 宝島社 2006-12 売り上げランキング : 143826 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
偶然チャンネルをひねったテレビ番組に私の目は釘づけになった。素人と思われる人の自然な会話で、展開が紡ぎ出されていく。しかしドキュメンタリーではなくフィクション。紛れもない生の現実感がありながら、詩的、幻想的としか形容できない、それまで見たこともない映像だった。四半世紀も前、佐々木昭一郎氏のプロデュースによるドラマ、「四季・ユートピアノ」との出合いである。
氏の新作は、当時でも稀にしか発表されなかった。が、それらの作品は芸術祭大賞、イタリア賞をはじめ、内外の幾多の栄誉に輝き、世界的に高く評価されてきた。その佐々木氏の映像芸術論、制作にまつわる話の独白を中心に構成されたのが本書である。
佐々木作品ではプロの俳優はほとんど起用されない。「日本の俳優はテレビ、映画を通じて徹底的に人形にされ、駄目にされる」から。素人の天性を一瞬にして見抜き、その人の見ること、聞くこと、感じることにピッタリ寄り添って映像が作られる。化粧はさせないし、持ち物、衣装もすべて出演者自身のもの。型にはまった演技や情緒過多を排する。悲しい目に遭った時、顔を歪めてワンワン泣くのではなく、一筋の涙にむしろほほ笑みを添える。「テレビは感覚、映画は官能」が氏の持論だ。
実は、氏の制作は10年以上途絶えている。所属していたNHKが、作品をなかなか作らせず、最後には事実上解雇したからだ。佐々木氏側の言い分だけを鵜呑みにするのはアンフェアかもしれないが、天賦の才と組織の論理の衝突であろうことは容易に想像できる。どれだけ仕事をやらせてもらえるかは、才能の有無、作品の良し悪しより、「局内の位置の高さ、上司の政治力で決まる」。
創作者間の嫉妬の激しさも想像を超える。嫉妬自体は自然な感情としても、権力を使って競争者を叩き潰すのだから、何をかいわんや。しかしそうした中でも、氏は自らの系譜を「世阿弥、ジョン・フォード、佐々木」とまで述べるほど、矜持を保っている。
どれほど言葉を費やしても、佐々木作品の魅力を表現できないのがもどかしい。幸い、昨年から今年にかけ、CS放送やケーブルテレビで、氏の全作品が放映された。根強い支持者がいることの証左で、日本もまだ捨てたものではないと思う。願わくば、蔵元のNHKさん、さらなる再々放映とともに、氏を再び起用して、氏の夢である「川シリーズ」連作を完成させてやってほしい。営利を超えた公共放送の面目にかけて。【評者 ローンスタージャパン会長 岩下正】
| 満足死 寝たきりゼロの思想 | |
![]() | 奥野 修司 講談社 2007-02-16 売り上げランキング : 541 おすすめ平均 ![]() 理想的な本来あるべき死の姿だとAmazonで詳しく見る by G-Tools |
高知市から離れた山間部の町で、30年以上、取り組まれてきた先進的な医療を追う。主役は80歳を過ぎても診療所の医師を務めた疋田善平氏。疋田氏は患者が納得し、家族も医療側も満足するような「満足死」を提唱する。
大抵の人は「チューブだらけの“スパゲティ状態”で延命してほしくない」「自宅でぽっくり死にたい」と願う。つまり、満足な死を迎えるには直前まで元気でいる必要がある。満足死は満足な生活の延長線上だと考える疋田氏は、「健康出前教室」「終身カルテ」など予防医学に取り組んだ。集落全体を病院に見立てた「全村病院構想」なども推進。寝たきり老人の激減、医療費の削減を実現した。満足死の哲学は高齢化社会の医療のあり方、個人の生き方を考える材料となりそうだ。
| 校長先生になろう! | |
![]() | 藤原 和博 日経BP社 2007-03-21 売り上げランキング : 691 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-藤原和博氏[東京都杉並区立和田中学校長] 日本再生は学校から-『校長先生になろう!』
都内初の民間人中学校長が書いた校長になるためのマニュアル本。多様な経験を積んだ企業人こそ、学校の改革に必要と持論を展開。「学校から地域と日本を変える」、その方法とは。
――校長になるためのマニュアル本というのは、これが日本初でしょうね。
僕が4年前に和田中学校の校長になる時も、仕事を覚える際の教材は専門家が手作りしたプリントでした。小中高合わせると全国に3万数千人の校長がいますが、ほとんどが教頭からの内部昇格です。「(校長の仕事は)見ていれば分かるだろう」という感じです。
僕はいろんな業界で経験を積んだ民間出身者が校長となり、改革を進めてほしいと考えています。とはいえ、民間だから成功するとは限らないのも事実です。120人ほどいた民間出身者が今は80人くらいに減っているのは、失敗した例が少なくないからです。
だからこの本は、民間の校長志望者だけでなく、内部から昇格してきた現役の校長や教頭にも読んでほしい。3万数千人の現役校長のうち、恐らく1万人くらいは変われる可能性がある。彼らの意識が変われば、学校のあり方も大きく変わります。
――校長にはネットワーク経営のセンスが必要だと説いています。
いじめや学力低下で学校の機能低下が指摘されますが、本当は地域や家庭が「子供を大人に育てる」機能を失ったことの方が問題です。学校が3倍の仕事を引き受けているような状態で、先生方への負担は増すばかりです。
といって、地域や家庭を復活させるには時間がかかってしまう。発想を変えて学校を地域に開放し、学校の中に地域を持ち込もうと考えました。
昔は、やたらと遊びを教えてくれるお兄ちゃんとか、子供たちに交じって野球ですごいヒットを打ってみせるおじちゃんなどが周りにいましたね。そういう人間関係に揉まれながら大人になることを学んだわけですが、今や、地域の人間関係はどんどん希薄になっています。だから和田中では子供の親、大学生、会社員など60~70人が始終学校に出入りして、子供たちと接する環境を作っています。必要なのは学校を核に地域と家庭を結ぶネットワーク組織で、校長はその経営者なのです。
――どういう人が校長に向いているのでしょうか。
企業で経験を積んだ団塊の世代にはぜひ挑戦してほしいですね。功成り名を遂げた人にとっても、校長になるのは理想的な老後の1つになりますよ。
私立学校を一から作ろうとすると100億円、既存の学校を買うにしても30億円はかかります。公立校の改革なら3000万円もあれば十分です。欧米のように、まとまった寄付をして、自分の名のついた図書館や体育館を残すこともできる。
「自分は大企業の経営者だった」といっても、引退すればやがては世間から忘れ去られてしまいます。だったら人生の最後に、地域や学校に貢献して自分の名を残してみませんか、ということなんですね。
学校の活性化は、地域経済にもプラスの効果を生みます。和田は杉並区の中でも東の端で、庶民的な町ですが、和田中が全国に知られたために、今では和田に住みたいという人たちが増え、住宅の賃料もかなり上がっているようです。
校長というのは、人生の最後に手がけるには最高の仕事です。多くの企業人が、この名誉な仕事に関われば、日本は変わります。教育が変わるだけでなく、地域社会も変わる。志を持った人が数多く出てくることが、日本を蘇らせることにつながるのです。
藤原和博(ふじはら・かずひろ)氏
1955年生まれ。リクルートを経て、2003年4月に都内初の民間人校長として東京都杉並区立和田中学校に赴任した。
| 証券詐欺師―ウォール街を震撼させた男 | |
![]() | ゲーリー・ワイス 青木 純子 集英社 2007-01 売り上げランキング : 3614 おすすめ平均 ![]() なかなかですね。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
1990年代、米ウォール街では大量購入した超低位株を投資家に売りつけ、株価操作によって不当な利益を得る悪徳証券ブローカーがはびこっていた。そうした悪徳ブローカーの1人である25歳のルイス・パシュートを追ったノンフィクション。ルイスが個人投資家から冷酷非情にカネを搾り取る様子を記録する。
ルイスはあるチョップハウス(小企業の超低位株を扱う会社の俗称)の経営幹部に見いだされ、証券業界に足を踏み入れた。その後、幾つものチョップハウスやバケツショップ(無認可営業のブローカー事務所)を渡り歩き、最終的には自らもバケツショップを設立し経営者となった。証券取引業免許を替え玉受験で取得、株の知識など微塵も持ち合わせていないルイスだが、手練手管で顧客からカネを巻き上げ、巨万の富を手にした。そのカネは、“用心棒”であるチャーリー・リコットーネに渡り、さらには厳格なピラミッド構造を持つマフィア組織の頂点に流れていった。
ルイスの赤裸々な告白からは、ウォール街に巣食う証券詐欺師やマフィアの実態、それに対して徹底した措置を取ろうとしなかった規制当局など、米国の株式市場の構造的な問題が浮き彫りになる。
| 反経営学の経営 | |
![]() | 常盤 文克 東洋経済新報社 2007-02 売り上げランキング : 4423 おすすめ平均 ![]() 日本人の時代背景にあった経営学という視点が新鮮。 またしても同じことの繰り返しだった。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
現在、日本のビジネスの中心を成すのは米国流の経営学である。本書は、こうした米国流経営学とは異なる、新たな日本型経営を確立すべきだと論じる。ひな形として想定するのは江戸に始まる「職商人」の人生観、仕事観、価値観を基にした経営である。
米国の経営学は、会社(作り手・売り手)と顧客(使い手・買い手)を独立した個別の存在ととらえる。マーケティング戦略を駆使することで、前者は後者をコントロールできると仮定する。一方、日本の職商人の世界では、作り手・売り手と使い手・買い手は互いに商品を介して対話をしながら心を通わせ、高まり合う存在である。両者は一体不可分で、互いに喜び合い、その喜びは循環すると考える。
米国の経営学では、働く人は金銭など外的な刺激に動機づけられると想定しているが、反経営学の経営では、作り手・売り手は考え、工夫してモノ・サービスを提供する「創造の喜び」や世のため、人のために役立つという「社会的な喜び」を感じ取るとする。「カネ」を中心に置く経営では、人々は働く幸せを感じることはできない。日本企業は、日本固有の精神文化・風土に根ざして、生きがい、働きがいなど、「人の幸せ」を中心に置く経営に転換すべきだと訴える。
| マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー | |
![]() | エリザベス・イーダスハイム 村井 章子 ダイヤモンド社 2007-03-02 売り上げランキング : 1400 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
米マッキンゼー・アンド・カンパニーを世界的な経営コンサルティング企業に育てたマービン・バウワー氏の軌跡をたどり、功績を明らかにする。
バウワー氏は経営コンサルティングという職業を定義し、概念を浸透させた人物である。法律事務所で働いていた時代、大恐慌で倒産した企業の後始末を手がけるうちに、経営者には外部からの助けが必要だと気づいたのがきっかけだ。その後、経営システムの改善・効率化などを主とするマネジメント・エンジニアリング・ファームだったマッキンゼーに入社。「全国展開する」「共通の価値観・共通の問題解決手法・実行を確立する」「高い専門能力を持つ意欲的な人材を集めて育てる」といったビジョンを掲げ、経営者や指導者に高度なコンサルティングを提供する組織に変えていった。
バウワー氏は有言実行を旨とし、マッキンゼーにいた59年という長い年月、ビジョンの実現に率先して尽くした。本書は時系列に従い、彼が下した重要な9つの決断を振り返る。「MBA(経営学修士)の採用」「海外進出」「女性の登用」など、ビジネス界に新しい地平を切り開いたものが多い。どのエピソードからもバウワー氏の信念の強さ、類まれなリーダーシップ、高潔な人格などが伝わってくる。



良いですね
単なる勉強法だけではない


DNAは受け継がれるだろう・・・

長寿世界一の秘訣ですか










