メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2007年2月19日~3月5日

ぼくらが惚れた時代小説
ぼくらが惚れた時代小説山本 一力

朝日新聞社出版局 2007-01
売り上げランキング : 7513

おすすめ平均 star
star時代・歴史小説好き、時代劇好きなら読んで損は無い

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「週刊朝日」が実施した「読者が選ぶベスト『歴史・時代小説』」のアンケート結果を基に、時代小説ファンを自称する3人が、その魅力を語る。

アンケート1位は司馬遼太郎の『坂の上の雲』。縄田一男氏は、変革期には個人の可能性が最大限に発揮されるという司馬の乱世史観が託された本であると解説。また、読者が高度経済成長期への思いを引きずりながら同書を読んでいると指摘する。児玉清氏は、時代小説の魅力は目標に向かって自らを改善し、創意工夫で人生を乗り越えていく主人公に自分を重ね合わせられる点にあると語る。吉川英治の『宮本武蔵』などは、困難に負けずに生きる人生観が日本人の好みに合っている。

数多くの時代小説に言及しており、ガイドブックとしても活用できる。

■2007/03/05, 日経ビジネス, 77ページ

イン・ザ・ブラック 継続的な黒字会社をつくる9つの原則
イン・ザ・ブラック 継続的な黒字会社をつくる9つの原則アレン・B・ボストロム 広瀬 元義

あさ出版 2007-01-25
売り上げランキング : 552

おすすめ平均 star
star経営者以外の方にもおすすめです。
star一見難しそうではあるが
starとっても分かりやすい経営本です

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宇宙が味方する経営
宇宙が味方する経営伊藤 忠彦

講談社インターナショナル 2006-10-16
売り上げランキング : 3283

おすすめ平均 star
star「解釈力」を示唆してくれる本
star評価が難しい
starこういう社会的立場の方がこういう本を書く時代

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ベストセラーを斬る 黒字を継続する経営とは

会社の持続的成長を実現するための経営者の心得を説いた2冊の書がランクインした。いずれの著者も「まずは自らの足元を固めよ」と戒める。

どのような経営者にも「会社を黒字化して維持したい」という願望はある。しかし、意思だけでなく明確な方法論が備わっているかと問いただすのが、米日両国で多数の顧客を持つ会計士らの共著、『イン・ザ・ブラック』(丸善丸の内本店8位)だ。黒字を継続する会社にはマーケティング、プロダクション、会計の3つの機能に揺るぎない原則が存在すると言う。

原則があれば経営者は決断を下しやすい。例えば「無借金経営か?借入か?」の悩みには、「2~3%程度の銀行金利を収益が上回らない商売なら始めるな」と明言する。

『宇宙が味方する経営』(丸善丸の内本店24位)の著者、伊藤忠彦氏は、旧関西銀行(現関西アーバン銀行)を破綻寸前の窮地から救った辣腕頭取として知られ、現在も同行頭取として陣頭指揮を執る。自らが敬虔なキリスト教徒として培った理念と、生き馬の目を抜く経済競争の論理は決して相容れないものではないと言う。崇高な理念に基づく経営こそ会社を立て直し継続させる力の源であると説く。

■2007/03/05, 日経ビジネス, 79ページ

大学病院革命
大学病院革命黒川 清

日経BP社 2007-01-25
売り上げランキング : 5750

おすすめ平均 star
star「出羽の海」の医療放談
starすべての組織、メンバーが読むべき
star前向きに振り返る

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日米の大学病院に勤め、現在は東京大学名誉教授、特定非営利活動法人・日本医療政策機構代表理事を務める著者が、医療事故や不祥事が相次ぐ大学病院の改革に向けた処方箋を示す。

大学病院は医療設備への過剰投資、検査や先進機器への過度の依存、患者や家族とのコミュニケーション不足、教授が支配する閉鎖的な医局制度など、様々な問題を抱えている。医療不信の元凶であり、もはや医師の教育機関としても、先端医療機関としても十分機能していないと指摘する。

特に著者は現在の医療教育を問題視する。近年、エリートが安心して選べる道として医学部人気が高まっている。しかし、医者の仕事には知力のほか、技力、体力、人間愛が必要。教養を学び、人間力を養う仕組みが求められる。そのうえで、一定のスクリーニングを経て、「医者に向く」と判断された者が医療教育を受けられる制度が望ましい。本書は米国やカナダのメディカルスクールの事例を紹介しながら、医療教育のあり方を探る。

大学病院は、一度その組織や機能を解体し、治療と教育の仕組みを再構築すべきだと主張する。地域医療機関との連携、手術室の開業医への開放、救急以外の外来診療中止などの方策を提案する。

■2007/03/05, 日経ビジネス, 78ページ

愛国者の条件―日本海軍の理想と昭和史の失敗に学ぶ
愛国者の条件―日本海軍の理想と昭和史の失敗に学ぶ半藤 一利 戸髙 一成

ダイヤモンド社 2006-12-15
売り上げランキング : 15605

おすすめ平均 star
starナイーブな愛国者にサヨウナラ
star日本周辺に仮想敵国は存在しないというナンセンスな見解

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憲法改正、教育基本法改正の議論などを通じ、愛国心のあり方が問われるようになってきた。愛国心は言葉で学べるものではない。歴史に関する正しい知識こそ、愛国心を養う土壌となる。過去の悪かった面、素晴らしかった面を知ることで国を愛することができるからだ。昭和の日本はどんな失策を犯したのか。改めて軌跡をたどる。

幕末から明治時代の国民には、極めて健全な愛国心があった。欧米列強からいつ侵略されるか分からない状況で、「国を守ろう」「列強に追いつこう」という共通意識が芽生え、愛国心も生まれた。だが、昭和に入る頃から、誰もが「私心」で動くようになる。特に、軍部の指揮官クラスは立身出世ばかりを優先し、国のことを考えなくなった。それが日中戦争、太平洋戦争へとつながっていったと説明する。

特攻作戦で、上官たちは「俺も後から行くから」と約束して隊員を送り出した。が、終戦時には「戦後の復興に尽くすことが自分の役目」と約束を破った。こういう人間が築いた現在の日本は、公約を守らない政治家、虚偽隠蔽体質の企業であふれている。そんな社会で育った子供たちが国に自信や誇りを持つのは難しい。愛国心、愛国教育は子供ではなく、我々大人にこそ求められていると指摘する。

■2007/03/05, 日経ビジネス, 78ページ

「決定」で儲かる会社をつくりなさい
「決定」で儲かる会社をつくりなさい小山 昇

河出書房新社 2007-01-06
売り上げランキング : 254

おすすめ平均 star
star読むと元気になる
star考えさせられる
star全体像の中の行動

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著者は、ダスキンのフランチャイズ店などを展開する武蔵野の社長。2000年度には日本経営品質賞も受賞した。本書では、「社長の仕事は決定すること」と指摘し、著者が下してきた決定と、実現の過程を記す。

モノを作るのに道具が必要なように、立派な会社を作るにも道具が必要。その道具として著者は経営計画書を活用する。社長が決定した方針や計画が詰まっている経営計画書は、口頭で伝えるだけではなく、必ず明文化する。社員が常に携帯するよう、手帳サイズにしたうえで、休みの日程などを記した事業年度計画も載せる。あまり欲張らず、「できないことは書かない」「ちょっと無理をすればできることを書く」ことが重要だという。

著者が社長に就任した時、社員にはやる気も会社への誇りもなかった。著者はモチベーションを向上させるため、「どんなに小さなことでもいいから一番になる」と決めた。まず目指したのが地域一、業界一、きれいで整理整頓の行き届いた会社にすること。全社員に毎朝の朝礼後、30分間の清掃を義務づけた。この環境整備活動を賞与評価に結びつけ、目標を達成した。

銀行とのつき合い方、人材の活用法など、中小企業の経営に必要な各種の決定のノウハウを幅広く紹介する。

■2007/03/05, 日経ビジネス, 78ページ

レバレッジ・リーディング
レバレッジ・リーディング本田 直之

東洋経済新報社 2006-12-01
売り上げランキング : 85

おすすめ平均 star
star読書観が変わりました
star30分以内でOK
star共感と非共感と

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毎月数百冊のペースで新刊が登場するビジネス関連書から、自分に役立つものだけを効率よく選び、しかも短時間でモノにする方法はないか――。年間400冊以上を読破して、確実にキャリアアップに役立てているという著者は、いわゆる「速読」とは全く異なるやり方で、多忙な日常に「多読」の習慣を取り入れる方法を提案する。

まず、本選びには戦略性が必要だと言い、目的とするテーマや専門性をしっかり設定した後に、新聞や雑誌、オンライン書店などが薦める書籍をチェックして選抜せよと助言する。また、1冊を端から端まで読むのでは効率が悪く、「自分にとって重要な記述は2割程度」だと割り切って考えよと言い、目的とする知識だけを拾い上げていくユニークな読書法を指南する。

■2007/02/26, 日経ビジネス, 117ページ

それでもボクはやってない―日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!
それでもボクはやってない―日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!周防 正行

幻冬舎 2007-01
売り上げランキング : 14118

おすすめ平均 star
star裁判官の無理解をデフォルメ

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著者に聞く-パーソナルライフ-周防正行氏[映画監督] 裁判制度に物申す-『それでもボクはやってない 日本の刑事裁判、まだまだ疑問あり!』

11年ぶりに監督を務めた映画「それでもボクはやってない」が公開中。日本の裁判制度の異常さを世に広く訴えるため、本まで出した。「一番問題なのは裁判官」と語る、その真意とは。

――今回、刑事裁判をテーマに映画を作られたきっかけは何でしょうか。

痴漢事件の逆転無罪判決の記事でした。刑事裁判というものを全く知らなかった人たちがどのように裁判を闘い、2審で無罪を勝ち得たのか。しかし、取材を始めてみると、日本の刑事裁判そのものが、僕が漠然と信じていたものと違うことに気づきました。

例えば、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則がどうも行われていないようだとか、自白を強要するかのような調書の取り方を行うこととか。調べるにつれ、僕が考えていた公平な裁判の姿とは懸け離れていた。だから、これは何としても映画にしなきゃいけないと思ったんです。

――取材に3年半もかけましたね。

裁判のモチーフになっている多くの冤罪事件の当事者の方はもちろん、弁護士、支援者のお話を聞き、刑事裁判に関する書籍も読みました。現役の裁判官や検察官はなかなか取材できないので、OBの方にも話を聞きました。実際の裁判も、無罪を争う事件約20件を対象に、計200回を超える数の傍聴をしました。

先日、英国で現役の裁判官の方と話をしたのですが、99.9%という日本の有罪率は信じられないようでした。英国の場合、無罪を争う事件、つまり否認事件の有罪率はざっと50%。だから半分は無罪だという。日本はこれが3%にも達しないと言われています。

――何が問題なのですか。

つい先日も、富山県警は2002年に逮捕し、婦女暴行・同未遂容疑で懲役3年の実刑判決が出た男性が、誤認逮捕だったと発表しました。こうした例のように、警察や検察が取り調べる際の自白の強要や、ずさんな捜査などがよく指摘されますね。確かに訴追側が行き過ぎになるのは珍しいことではない。なぜなら彼らの職務は犯人を突き止めることですから。でも、それは決して許されることではない。そういった警察、検察の行き過ぎを指摘して、正すことができるのが誰かといえば、裁判官しかいないわけですよ。

裁判官がこうした問題をいつまでも指摘しないから、システムそのもののいびつさが浮き上がってこない。だから、僕は裁判官が悪いと思いますね。

――ではどんな改革が必要でしょう。

日本は大学を出て、司法試験に通ったら、あとは司法研修所に入って、裁判官は裁判官の道をまっしぐらですね。こうした硬直的な仕組みを見直すべきです。1つは、海外のように法曹一元制度の方向に導くこと。つまり、弁護士経験者から裁判官を選ぶ仕組みです。英国では弁護士を10年以上経験し、さらに3年間、適性を見て判事になる。弁護士でありながら検察官の仕事をすることもあるそうです。法曹3者の立場を経験することで、チェック機能が働く。すぐには変えられないかもしれませんが、今から議論して、少しずつでも変えないと。

2009年には国民が参加する裁判員制度が導入される予定です。これは今の裁判制度を見直す、いいきっかけです。ここで動かないと、今の官僚的な裁判官システムは永遠に変わらない。

皆さん男性も女性も、いつどういう立場で自分が裁判に巻き込まれるか分かりません。だから、極めて現実に忠実に作ったこの映画を多くの人に見てもらい、考えてほしい。特に裁判官にはぜひ見てほしいですね(笑)。

周防正行(すお・まさゆき)氏
1956年東京都生まれ。映画監督。大ヒット作「Shall we ダンス?」(96年)は97年日本アカデミー賞で13部門を受賞、後に米国でもリメークされた。

■2007/02/26, 日経ビジネス, 121ページ

外国人投資家
外国人投資家菊地 正俊

洋泉社 2007-01
売り上げランキング : 6305

おすすめ平均 star
star意外な面も
star団塊世代にお勧めの一冊
star思い切っていえば「100万円の価値がある本」じゃないかな

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現在、我が国の株式市場で最大シェアを占めるのは「外国人投資家」である。メリルリンチ日本証券で株式市場の分析を行っている著者は、「日本は本当に外国人投資家が買わないと上がらない市場だ」と指摘。金融業界はもちろん、株を上場している企業の経営者から急増する個人投資家まで、今の時代は外国人投資家の動向から目を離すことはできないと言う。

まずは、外国人投資家とは誰であるかを定義する。破綻企業の転売例が強調されるあまり「ハゲタカ」などと悪者扱いされることもあるが、こうした動きは巨大かつ多様な外国人投資家群のわずかな一面だと解説する。

投資信託、年金基金、ヘッジファンド、プライベートエクイティなど各業態の外国人投資家が、我が国の政治、経済、企業の成長率を予想する視点は、国内投資家のそれと異なる。金融理論やテクノロジーの分野では、外国人投資家たちに一日の長があることは否めず、それだけに彼らが打つ手を研究する必要があると指摘する。

また、彼らが買う株や売る株の特徴を分析する。かつて衰退産業として市場では敬遠される傾向にあった素材産業だが、ハイテク素材の開発や中国での需要増加などを背景に外国人保有率が高まっている現状をデータで示す。

■2007/02/26, 日経ビジネス, 119ページ

ダイナスティ 企業の繁栄と衰亡の命運を分けるものとは
ダイナスティ 企業の繁栄と衰亡の命運を分けるものとはデビッド・S・ランデス 中谷 和男

PHP研究所 2006-12-21
売り上げランキング : 902

おすすめ平均 star
star経営の落とし穴を指摘
starファミリー企業の繁栄と衰退がよくわかる一冊
star「ダイナスティとは、革新である」 (面白く読めます)

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ダイナスティ(dynasty)とは、「王朝」「世襲による権力の継承」「支配階級」を意味する。本書のテーマは、歴史に名を残すファミリー企業の研究だ。米ハーバード大学の名誉教授であり、世界的歴史家として名を馳せる著者は、金融界の「ロスチャイルド」や「モルガン」、自動車産業の「フォード」や「トヨタ」など、一族による経営が3代以上継続した巨大ファミリー企業に注目し、歴史学、経済学、経営学などの視点から、それらの企業がなぜ世界各地で高い地位を勝ち得たかを明らかにしようと試みる。

著者は本書をまとめるに当たり2つの点を重視したと言う。1つは「誰と知り合いで、誰を信用できるか」といった、いわば個人的なコネクションの強弱だ。もう1つは家族の経営哲学とも言うべきもので、「金と権力の追求者」か、「物質至上主義者」かなどに分類できると言う。

ともすれば「時代遅れ」とも受け取られがちなファミリー企業ではあるが、新たな価値の創造という経済の核心において彼らが果たした役割は大きく、その重要性は今日でも変わらないと説く。最近テレビドラマ化されて再び注目を集めている山崎豊子原作の『華麗なる一族』と重ね合わせて読むとさらに興味が広がるだろう。

■2007/02/26, 日経ビジネス, 119ページ

スズキのインド戦略―「日本式経営」でトップに立った奇跡のビジネス戦略
スズキのインド戦略―「日本式経営」でトップに立った奇跡のビジネス戦略R.C. バルガバ R.C. Bhargava 島田 卓

中経出版 2006-12
売り上げランキング : 14978

おすすめ平均 star
starスズキvsインド政府

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我が国の企業にとって、インドは魅力的な市場となる素地を秘めている。しかし、既に進出した日系企業の多くが失敗に終わっているのも事実だ。

原因としては、現地における社会資本の未整備や非効率的な行政システム、文化慣習の根本的な差異などが指摘されている。自動車産業を例に取ると、1983年から85年にかけてインドで合弁企業を設立したトヨタ自動車、日産自動車、三菱自動車、マツダの試みは苦戦を強いられたり、失敗に終わっていると、本書の著者であるR・C・バルガバ氏は指摘する。

しかし、スズキだけは違っていたと言う。80年代、スズキが経営に参画したマルチ・ウドヨグは、その後インドの乗用車産業を牽引する大企業に成長し、今も国内市場でシェア50%以上を占めている。同社の設立当初から要職に就き、90年代には社長を務めた著者は、スズキの社員らとともに様々な経営課題を克服してきた過程を振り返りながら、インドで日本企業が成功するためのヒントを示す。役職に関係なく従業員は同じ制服を着て同じ食堂を使うことが、階級意識の強いインドでいかに困難であるかなどのエピソードは興味深い。注目を集めるスズキのインド戦略について描いた数少ない書籍のうちの1冊だ。

■2007/02/26, 日経ビジネス, 119ページ

「健全な市場社会」への戦略―カナダ型を目指して
「健全な市場社会」への戦略―カナダ型を目指して八代 尚宏

東洋経済新報社 2006-12
売り上げランキング : 4783


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小泉純一郎政権が進めてきた「小さな政府」を目指した改革が、市場主義を過度に推し進め、失業や所得格差をもたらしたという見方が広がっている。この背景には一生懸命働いても低賃金で身分も不安定な「ワーキングプア」、100万世帯を超える生活保護など、国民の所得格差が急速に拡大したことがある。本書はこうした見方を「既得権を重視する立場からの批判」であると一蹴し、むしろ改革は今始まったばかりの段階にあると言う。

著者は経済財政諮問会議のメンバーである八代尚宏氏(国際基督教大学教授)で、これまで構造改革特区推進本部や規制改革・民間開放推進会議の主要メンバーとして、市場経済と効率的な社会保障を組み合わせた「健全な市場社会」の必要性を主張してきた。「健全な市場社会」の実現には何が残された課題であるか、それを解き明かすのが本書の意図である。

「労働市場の規制緩和が非正規社員を増やし、賃金格差を拡大させた」との批判に対しては、「統計上の所得格差の拡大は1970年代からの長期的減少で、もともと所得格差の大きい高齢者層の人口割合が高まったことで説明される」と説き、「仮に規制改革がなければ非正規社員が正社員として雇用されていたのか、それは90年代以降の長期経済低迷で多くの過剰雇用を抱えた企業にとってはあまりにも非現実的である」と反論する。

また、構造改革で日本が目指すべき将来像として「世界に開放された経済社会」「働き方・生活の多様な選択肢」「効率的な所得再分配を行う社会保障」の3つを提示し、この3つの目標を最もよく実現している国としてカナダを、当面の日本の目標とすべきと主張する。カナダは面積が日本の26倍と大きく、一方の人口は4分の1に過ぎないが、一時はわが国同様、大幅な財政赤字を抱えたものの、規制改革や公企業の民営化を進めたことで経済を活性化させ、大規模な増税なしに税収を増加させてきた。また労働市場の規制も緩やかで、フレックスタイムやパートタイム労働の活用によって女性の就業率の向上に成功してきた。

各論では高コストで利用者の期待に応えていない公的な保育サービス、自由な選択を許さない義務教育制度、世代間で給付と負担の不均衡が残されたままの年金制度など、身近な問題について制度改革の必要性が分かりやすく説かれている。日本が直面している外的・内的変化のダイナミズムを考えれば、過去に作られた制度や慣行がいかに疲弊し、機能不全に陥っているかを実感させる1冊である。【評者 東洋大学経済学部教授 白石真澄】

■2007/02/19, 日経ビジネス, 89ページ

東京おさぼりマップ―リフレッシュスポット230件徹底ガイド
東京おさぼりマップ―リフレッシュスポット230件徹底ガイド東日本仕事と憩い研究会

山海堂 2006-12
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意欲的、効率的に仕事をするためには、適度に休息して気持ちを切り替えることが必要だ。本書は東京都で「20分間のリフレッシュ」つまり「おさぼり」が可能なスポットを紹介する。

日常生活の息継ぎに当たる「おさぼり」にはできるだけお金をかけないことが重要となる。公共施設を活用したり、ビルの屋上、マイナーな博物館など普段意識しない場所に足を運んだりするとよいという。「ちょっと安メシ」「ちょっとひと汗」「ちょっと探訪」など14のジャンルと地域に分けて、お薦めのスポット230カ所を取り上げる。大学の学食、健康家電の無料体感コーナー、水上バス、卓球ホールなど、意外な場所が出てきて面白い。

安西水丸氏、堀田力氏ら著名人の「おさぼり体験コラム」も収録する。

■2007/02/19, 日経ビジネス, 89ページ

金融マーケティングとは何か これがプロの戦略だ!
金融マーケティングとは何か これがプロの戦略だ!広瀬 康令

ソフトバンククリエイティブ 2006-11-16
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おすすめ平均 star
star金融マーケティングの現場
star人々を巻き込みマインドをシフトしてく「実践の軌跡」
starマーケティングといえばそうだけど

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著者に聞く-パーソナルライフ-広瀬康令氏[ドイチェ・アセット・マネジメントディレクター] マーケティングの基本は営業-『金融マーケティングとは何か』

イメージ広告が主流だった金融業界で、高金利を訴えた広告を展開したり、漫画による金融商品の解説を作成したりするなど、新たな手法を編み出してきた。金融マーケティングの第一人者はひたすら「現場主義」を説く。

──最初からマーケティングに興味を持っていたのですか。

シティバンクに入行した時は、金融にマーケティングがあることさえ知らなかったぐらいです。マーケティング部門に配属され、本を読んで勉強したのですが、どうもピンときません。そこで、銀行員としての基礎を作ろうと、自ら希望して支店で4年ほど働きました。すると、商品の売り方と、お客さまのニーズにギャップがあることが分かりました。シティバンクに来店するのは、何も大金持ちばかりではありません。お客さまの消費行動を観察していると、スーパーストアの特売チラシや自動車の販促キャンペーンなどに反応しています。銀行に対しても同じだろうと考えて、高金利の文字を前面に出した新聞広告を試しました。これが当たったのです。

広告は、費用対効果を測定します。何件の電話があったか、資料をどのぐらい送付したか、いくつ口座が開設したか。失敗もありました。その時は原因を考えて、やり方を変えてみる。こうした試行錯誤を続けていると、新聞広告でも何曜日のどの面に出すと効果が高いといったノウハウがたまってきます。この作業が楽しかった。

──現場を知らないと、消費者が望む情報を伝えることができない。

マーケティングは、宣伝やブランドではないのです。人材募集で「マーケティング」と打つと、ワッと人が集まります。ところが「要、営業経験」とつけ加えると、応募がドッと減ってしまう。皆、頭で考える“きれいな仕事”がしたいのでしょう。ですが、全く違います。マーケティングは営業です。私はチームを組む時は、必ず営業経験者を選びます。本ばかり読んでいる人は、言葉は悪いですが、使い物になりません。

企画だけ立てて、後は他人任せというわけにはいかないでしょう。マーケッターは、旗振り役でもありますから。以前、銀行で「土曜日営業」を始めた時のことです。お客さまのためとはいえ、現場には「何で土曜日に…」という不満はあったでしょう。私は率先して毎週土曜日は店舗に行って支援していました。マーケッターとしては、そのぐらいやらないと。まだ若かったので、寝なくても死なないと思っていましたし(笑)。

──消費者のニーズをつかむのは、難しい作業です。

お客さまは、ある意味、無責任と言えます。「あれが欲しい」「これが欲しい」と言いながら、本当に欲しいものは違っていることが珍しくありません。金融商品のアンケートでは「元本保証がないと嫌だ」「配当が安定的でないと絶対に買わない」という結果が出てきます。ところが、回答者と対面で話すと、株式や先物を持っているのです。言っていることと、やっていることが全く違う。理由を探ると、例えば「知っている人から勧められたから」が購入動機になっています。薄っぺらな調査では、本当のニーズは浮かび上がってきません。

お客さまが変わることも忘れてはなりません。社会人になる前、ラジオ局で番組を作っていたのですが、最初はリスナーの対象を大学生に設定していました。いつの間にか高校生が聞くようになっていて、中学生まで広がっていました。金融も同じです。想定していなかったターゲットが食いついてきたり、意外なところから情報を取っていたり…。マーケッターはアンテナを張り巡らせておく必要があります。

広瀬康令(ひろせ・やすのり)氏
1965年東京生まれ。中央大学商学部卒業。シティバンク、チューリヒ、東京スター銀行など外資系金融機関でマーケティングを手がける。

■2007/02/19, 日経ビジネス, 93ページ

製造業崩壊―苦悩する工場とワーキングプア
製造業崩壊―苦悩する工場とワーキングプア北見 昌朗

東洋経済新報社 2006-12
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おすすめ平均 star
star一気に読んでしまいました。
star愛知県だけの問題ない
star企業は人なり

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愛知県内を中心にコンサルティング業を営む著者は、顧客の中小企業で働く従業員など1万4000人分の賃金データを集めて統計を作成した。この独自調査と公的な調査とを様々な角度から分析し、中小製造業の賃金、労務上の問題を浮き彫りにしている。

入社3年以内に離職し、特別な技能を持たないまま安易な転職を繰り返し、年収ダウンを余儀なくされている人が増えている。著者の調査では、30代後半までに月間の賃金が30万円以上になった人、ならなかった人に2層化していることが明らかになった。男性が結婚するには一定の収入が必要なので、「賃金30万円」は1つの分岐点である。30万円以上になれなかった人の間では、未婚化が顕著という。

中小企業の経営から見ても、一人前になる前に辞める社員が多いのは負担が大きい。不慣れな従業員が増えると生産性が落ちるうえ、技能が継承できず、品質の維持が難しい。実際、中小製造業の経営者は、「品質問題が日常茶飯事」と口を揃えているという。

「中小製造業の崩壊」は「日本経済の崩壊」につながりかねない。著者は「長期的な安定した取引関係」を背景に、企業と社員も「長期的な安定した雇用関係」を築く、「良き日本的経営」を再構築すべきだと提言する。

■2007/02/19, 日経ビジネス, 91ページ

千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン
千年、働いてきました―老舗企業大国ニッポン野村 進

角川書店 2006-11
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おすすめ平均 star
star老舗企業のレポート
star新しい視点からの企業論
star面白く読める老舗企業論です

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日本には創業100年以上の老舗企業が10万社以上あると推定されている。これほど老舗が多い国は世界でも例がない。本書は特に老舗製造業に焦点を当て、職人集団としての製造業が、どのように生き続けてきたのかを追う。

老舗製造業に共通するのは、時代の変化に柔軟に対応してきた点だと指摘する。例えば、1885年の創業以来、貴金属の売買を手がけてきた田中貴金属工業は現在、携帯電話の振動モーター用に小さな金属製ブラシを製造する。300年以上の歴史を誇る福田金属箔粉工業は、携帯電話の配線基板などに使う電解銅箔を製造している。両社は、長年築いた技術を生かし、時代の要請に応じて新分野に進出している。

一方で、創業以来の家業を頑固に守り抜く面も持つという。呉竹は、液体墨や筆ペンのほか、微粒子分散技術を活用した融雪剤なども製造している。墨の売り上げは全体の5%程度に過ぎないが、墨作りの工房を社内に設け、墨職人の育成も続けている。利益には直接結びつかなくても、「ここだけは譲れない」という意思、理念を受け継いでいると解説する。

「血族に固執せず、よそから優れた人材を取り入れる」「“分”をわきまえる」など、老舗製造業のその他の共通項も明らかにする。

■2007/02/19, 日経ビジネス, 91ページ

あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実
あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実ピエトラ リボリ Pietra Rivoli 雨宮 寛

東洋経済新報社 2006-12
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米フロリダ州で買った1枚5ドル99セントのTシャツについて、原料である綿の生産現場、繊維工場、小売店、古着の回収・流通などをたどる中で、グローバル化の問題を考察していく。

綿は米テキサス州産だった。同州ラボック周辺の農地は現在、世界のTシャツの生まれ故郷である。綿作りのように単純な川上産業が、高度なサービス業中心の米国経済で繁栄し続けているのはなぜか。著者は歴史をひもとき、米政府の補助金制度、つまり200年以上にわたり発達してきた綿の生産・販売におけるリスクを緩和する政策が競争優位に影響していると分析する。

綿は遠く海を隔てた中国・上海で糸に紡がれ、布に織られ、Tシャツに縫い上げられる。18世紀に産業が興って以来、繊維・衣料品生産の単純労働は低賃金、長時間労働、粗末な労働環境に耐えて働く労働者が担ってきた。中国は労働者の移動を制限する戸籍制度の下で、従順な労働者を尽きることなく供給している。豊富な労働力と低い人件費により、現在、中国は世界の繊維・衣料品産業に君臨している。

Tシャツの「一生」の大部分に、政治による保護や介入が関わっていることを示し、グローバル化を引き起こしているのは市場ではなく政治や歴史であると結論づける。

■2007/02/19, 日経ビジネス, 91ページ

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