メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2007年1月8日~1月22日

迷いと決断
迷いと決断出井 伸之

新潮社 2006-12-14
売り上げランキング : 517

おすすめ平均 star
star読む価値あります
star日本で一番有名なサラリーマン
star批判された経営者の反撃

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ソニー元会長兼CEO(最高経営責任者)の出井伸之氏が、自らの企業人人生、とりわけ社長就任後の10年間を振り返った自叙伝。創業者チームの出身ではない出井氏は、ソニーが真の国際企業に脱皮するために、強い危機感で近代的な企業統治を導入し、事業の整理・統合を行った。その過程の真意や、当時の心情を明かしている。

当社がなぜ外食だけでなく、有機農業や介護事業を手がけるのか。なぜ「地球で一番多くの『ありがとう』を集めるグループになる」ことを目標に掲げているのか──など、今は全社員が共有している基本認識についても、より丁寧に説明した。「これを100年後の社員にも読んでほしい」。そんな思いが強くなり、当初の予定をオーバーし、分量はA4判で7枚になった。

私は本書を、創業者の立場で読んだ。そして感じたのが、「今は亡き井深大さんや盛田昭夫さんは、今のソニーの姿を想像していただろうか」ということだ。経営はいつか後任に託される。その経営者も自分の会社を愛し、創業者と同じ愛情で会社の存続と発展に身を削るはずだ。出井氏もまさにそうだった。ただ、会社を発展させるために取る方法は人によって異なる。

出井氏は自分が愛する組織だからこそ、EVA(経済付加価値)の概念で事業の中身を入れ替えた。結果的に、創業メンバーの思い入れがあった事業が整理された。そして今、多くの人が、「ソニーらしさが失われた」と言う。私もユーザーとして同意見だ。

事業投資には、利益率には表れない「見えない投資効果」がある。当社も、利益率だけで事業を判断すれば、採算性の低い農業は撤退対象になるかもしれない。だが、農業は当社のポリシーである「食の安全・安心」の確保に欠かせない。撤退をすれば、社内の士気も顧客からの信頼も下がるだろう。

収益性だけを見れば、サントリーのビール事業だって、とうの昔に消滅していたはずだ。しかし、創業家のロマンであるビール部門があり、そこで奮闘する社員がいることで、社内の求心力は高まってきたのではないか。企業が守り続けるべきものは何か。創業者は将来の社員に事業への思いをどう託せばよいのか──。考えさせられる内容が多い、問題提起の書である。【評者 ワタミ社長 渡邉美樹】

■2007/01/22, 日経ビジネス, 71ページ

小泉純一郎です。―「らいおんはーと」で読む、小泉政権の5年間
小泉純一郎です。―「らいおんはーと」で読む、小泉政権の5年間時事画報社「Cabiネット」編集部

時事画報社 2006-10
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“小泉節”がメディアから消え去って久しい。本書は小泉純一郎内閣の発足から昨年9月の総辞職まで5年半にわたり、毎週、計250回配信された「小泉内閣メールマガジン」の中から、前総理自身の言葉によるコラム「らいおんはーと」をまとめたもの。郵政民営化、教育、少子高齢化、イラク問題などのテーマごとに再編集している。

圧倒的な支持率を背景に、小泉政権は国民に何を求めたのか。賛否両論が渦巻く中で靖国神社参拝を強行したことについては、自らの信念や政治的行為としての正当性を淡々と訴える。改革に伴う“痛み”を国民に強く求めた政策については、テレビの報道番組などで繰り返し流れたエキセントリックな物言いとは裏腹に、分かりやすい論理展開でその真意を論じている。

■2007/01/22, 日経ビジネス, 71ページ

大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す
大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す久坂部 羊

幻冬舎 2006-11
売り上げランキング : 61863

おすすめ平均 star
star著者の戦略?
starタイトルが内容にまったく一致しませんがむしろ良かったです。
star「病院」である以上、病院としての機能を果たすべきだ。

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著者に聞く-久坂部羊氏[作家、医師] 日本の医療は崩壊する?- 『大学病院のウラは墓場』

これまでは医療の最高峰とされていた大学病院が機能不全に陥っている。 報酬や勤務条件を嫌い、一部の科では医者を目指す若手も不足し始めている。 「20年後にはうまい医者はいなくなる」と危惧する。(聞き手は伊藤  暢人)

テレビや新聞などの報道は、大学病院の実態と乖離しています。医療従事者はきれいごとに終始して、マスコミは理想論を追いかけ過ぎています。医療の現場は追い詰められる一方なのに、患者さんは医療に対してますます期待を膨らませてしまう。

この格差を放置しておくと、期待通りの医療が受けられず、最終的には患者さんに被害が及ぶことになる。今、大学の医局を取り巻く問題をきちんと整理しなければ、20~30年後には日本の医療は崩壊しかねないのです。

──既に予兆は見えているのですね。

例えば、大学の医学部の教授は、自分の研究に割く時間もないまま、自分の科に入ってくる学生のリクルーティングに奔走しています。医局制度が事実上廃止され、学生は自分で進路を選べるようになりました。すると大学病院は勤務時間が長く、ポストが不足しており、外科などでは医療訴訟を受けるリスクも大きいことが白日の下にさらされてきました。

最近では、「安全性」の高い眼科や耳鼻科、皮膚科には学生が集まりやすいのに、内科や外科の医局は人集めに四苦八苦しているのが実情です。優秀な人材は海外に留学したまま帰ってこないこともザラにありますよ。

若者が入ってこなくなった産業は悲惨です。優秀な人材が育ちませんから。我々のような50歳前後の医者仲間が集まると、いつも「20年後には診てもらえる医者がいなくなる」と嘆いています。自分が病に倒れやすくなる頃に、特に手術がうまい外科医を見つけるのは難しくなりそうですから。

我々は医療を闇雲に信じずに、現状を冷静に見つめています。できることとできないことの境界線を理解しているので、将来についてはどちらかといえば諦念の方が強いのです。

──なぜこのような事態に陥ったのでしょうか。

大学病院の側にも問題がありました。かつての医局制度の下では過労死した研修医が出ましたし、医療事故も起きてしまいました。こうした問題を解決するために厚生労働省などが様々な手を打ってきたわけです。

ただ、その対策は対症療法に終わり、全体を見渡した総合的な見地が伴っていませんでした。そのため、ふたを開けてみると、医者は忙しいだけで、儲からない。大病院でもポストは足らず、患者さんからは尊敬も感謝もされにくい仕事になってしまったのです。

一方で、患者さんは病気や治療法などについて自分でも情報を集められるようになり、専門的な知識を持った報道関係者も増えてきました。医師の立場が以前に比べると相対的に下がってしまったために、その魅力も薄らいできたのです。

──現在40代や50代の一般の方々は将来にどう備えればいいのでしょう。

医療に対する過大な期待は持たず、ある程度の覚悟をしておいた方がいいでしょう。例えば、大学病院は将来の患者さんを治すための治療法を探すために医療実験をするところなんですが、そういう認識はあまり浸透していないようです。こうした現実を受け入れていただく必要もありますね。

久坂部羊(くさかべ・よう)氏
医師として国内の病院や在外公館で勤務し、最近は老人医療に携わりながら執筆活動に取り組む。医療を題材にした『破裂』『無痛』などがヒット。

■2007/01/22, 日経ビジネス, 75ページ

搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!
搾取される若者たち―バイク便ライダーは見た!阿部 真大

集英社 2006-10
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おすすめ平均 star
star世の中を眺める一つのきっかけとすることができると思います。
star論文のネタの派生品
starいいルポ

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「引きこもり」や定職に就かない「ニート」といったイメージが浸透していることから、20代の若者たちは一般的には怠け者が多いと思われがちかもしれない。本書は、事実はその正反対であると告発するユニークな視点の書だ。東京大学大学院生の著者が「バイク便ライダー」として働いた経験を基に、現代の若者、特に「団塊ジュニア」と呼ばれる世代がワーカホリック(働き過ぎの人間)となり、その弱みにつけ込む経営者から低賃金重労働を課せられて搾取を受けていると力説する。

バイクやガソリン代は自腹で、「荷物を何個届けたか」のみで支給される歩合制の報酬のために、バイク便ライダーたちは命を削るような働き方をしているという。さらに不幸なことに、それを「おかしい」と感じ取る知識や経験にも乏しい。著者は同じような搾取の構造が、SE(システムエンジニア)や介護士の世界にも存在すると指摘し、本書を通じて彼らに情報交換の重要性と連帯を叫ぶ。

社会学的な見地から、団塊ジュニアが経験してきた激烈な受験戦争とその後の就職難についても考察を加える。そうした体験により、与えられた職務に盲目的に挑む従順な性格が醸成された可能性が強いのではないかという推察にも行き着いている。

■2007/01/22, 日経ビジネス, 73ページ

御手洗冨士夫「強いニッポン」
御手洗冨士夫「強いニッポン」御手洗 冨士夫

朝日新聞社 2006-10
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おすすめ平均 star
star終始一貫した主張に好感
star財界総理

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1995年、窮地に陥っていたキヤノンの社長に就任するやいなや改革の大鉈を振るい、高収益企業に変身させた御手洗冨士夫会長。現在は日本経済団体連合会会長でもある。本書は、御手洗氏がこの2つの立場から日本の社会と経済の課題、さらには次代に向けて取るべき施策を論じたものだ。メーカーのトップとして願うのは、“もの作り大国ニッポン”の復権である。そのために国、地方、個人はいかに変わるべきかについて力強く訴えかける。

著者は他国との間に技術における「コンペティティブ・エッジ(競争力格差)」を作り出し保持することが、我が国が最も注力すべき課題であると指摘する。キヤノン改革の命題であった「選択と集中」の論理を国家にも当てはめ、無駄で発展の見込めない分野を大胆に切り捨てる一方で、「防災の科学技術」など日本が世界を牽引できる分野では国家的プロジェクトを立ち上げよと呼びかける。そのためには、大学の教育や研究の抜本的改革、若者のやる気を喚起する教育改革、横並び意識を排してリーダーを育成する仕組みの創造などが急務であると断じる。

また、松下電器産業の中村邦夫会長や東京証券取引所の西室泰三社長(前東芝会長)との対談から、日本企業再生の道筋を探っていく。

■2007/01/22, 日経ビジネス, 73ページ

金満破産、待ったなし! 葬送行進曲が聞こえる
金満破産、待ったなし! 葬送行進曲が聞こえるベンジャミン・フルフォード

あ・うん 2006-10-13
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おすすめ平均 star
star後半はシブイ

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著者は日本での生活が長いカナダ人ジャーナリストで、米「フォーブス」誌のアジア太平洋支局長を務めた経験もある。「日本の経済システムには暴力団の影が見え隠れしている」「国民に“痛み”を求めた小泉内閣による構造改革は欺瞞に満ちている」など、この国の在り方に痛烈な批判を浴びせることでも知られている。自らはこのような言動について「日本という国を愛するが故だ」と説明している。

本書では、主に「マネー」という視点から、国家の財政赤字や国民の心にある拝金主義について論じている。今日の我が国は「金満主義」に毒されていると言い、劇的に方向転換を図らない限り“破産”は近いと警告する。

国の借金を測る尺度は多々あるが、財務省の最新データを読む限り、国債と借入金、政府短期証券を合わせた2006年3月末時点の債務残高は827兆円強に上ると見られる。しかしこの数字でさえも、財務省側による「大本営発表」にすぎず、地方の借金や国の「隠れ借金」などを足していくと1600兆円から2400兆円に膨れ上がるという危険性を厳しく指摘する。

とはいえ、日本には世界をリードし尊敬を受けられる素地が十分にあるとも述べ、環境対策など「日本マネーの賢い利用法」に関して持論を展開する。

■2007/01/22, 日経ビジネス, 73ページ

東京番外地
東京番外地森 達也

新潮社 2006-11-16
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おすすめ平均 star
star 影の部分に焦点をあわせたエッセイ
star読んでみると意外と重い・・・

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「番外地」という言葉から何が連想されるだろうか。一定年齢以上の人には、「網走番外地」、すなわち刑務所のイメージが定着しているだろう。本書において選ばれた東京都内15カ所の番外地の1番目も、小菅の東京拘置所である。しかし、著者も言うように、そんな具体性は要らない。あえて定義すれば、「平均値から逸脱した…過剰または希薄な場所、マージナルな場所」であり、また、ある種の聖域でもある。ネガティブな場所ばかりではない。端的な例は、究極の番外地、皇居である。

番外地への小さな旅、それは日常からは見えてこないもの、感じ取ることが容易でないものを見いだす旅だ。といっても、まずは、先入観を取り除きその場所の実態を見るだけでよい。2~3の例を挙げよう。東京拘置所が改築で高層化され、被収容者が外界を見ることは一切不可能となった。代々木上原のイスラム寺院は、あきれるほど開放的である。日本中に増殖しつつある監視カメラが、その発祥の地である山谷のドヤ街には見当たらない。

個々の場所の実態を超えて見えてくるものも、もちろんある。番外地は、「少しずつ、でも確実に変質していく社会」を映す、いささか屈折した拡大鏡だ。著者が看取した社会の変質、それは単純な二分法の広がり、深まりである。黒と白、善と悪、正常と異常等々、とにかく明快でないと受け入れ られない。本来、曖昧かつ複雑、あるかなきか不明なところに、無理にでも境界線を引き、「自分たち」と「彼ら」を必死に区分して、安寧を得ようとする。そこから生じる「彼ら」への後ろめたさが、不可視の領域を人工的に作ってしまう。オウム事件以降の日本、イラク戦争以降の世界で一層進行した現象、と著者は喝破する。このことは、精神障害者を収容する都立松沢病院、芝浦と(屠)場、港南の入国管理局といった「番外地」の名を挙げれば、より分かりやすいだろう。

番外地の実情を目の当たりにして、著者はついキレることもある。刑が確定した死刑囚には、「心の平安を乱さないために、誰にも会わせないし、音信も途絶えさせる」、拘置所の法執行のばかばかしさ。全く同感。

つまりは、番外地とはわれわれの精神の所産である。プラス、マイナスあらゆる「禁忌の共同幻想」の反映だ。小旅行紀行文の体裁を取りながら、テレビドキュメンタリー「放送禁止歌」以来、著者が追求してきたテーマは本書でも変わらない。「知って最終的に損することなど、この世界には1つもない」。【評者 ローン・スター・ジャパン会長 岩下正】

■2007/01/15, 日経ビジネス, 70ページ

中国が世界をメチャクチャにする
中国が世界をメチャクチャにするジェームズ・キング 栗原 百代

草思社 2006-09-28
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おすすめ平均 star
star中国が引き起こす世界勢力構造変化を捉えている
star中国の指導者にも読んでもらいたい良書
star「自転車を漕ぐ像」の行く末?

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元「フィナンシャル・タイムズ」北京支局長の著者が「メチャクチャ」と表現するのは、「世界の工場」で作った製品を世界にあふれさせ、資源を買いあさり、模倣品を氾濫させ、環境を破壊し、それぞれの国の社会・経済秩序を壊していく中国のあり様である。700年の歴史を持つイタリア北部の織物生産の町・プラート、米国中西部の工作機械産業の拠点・ロックフォードなど、ルールと国際秩序を尊重しない中国によってメチャクチャにされ、没落した町や社会の様子を丹念に描く。

ナポレオン3世は「中国を眠らせておくべし。目覚めた中国は世界を揺さぶる」との警句を残したという。世界一の人口を抱える国を変容させるエネルギーは今、確かに世界を揺さぶり、脅かしていると感じさせられる。

■2007/01/15, 日経ビジネス, 70ページ

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来城 繁幸

光文社 2006-09-15
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おすすめ平均 star
star現代日本の格差社会の原因に迫る
star国の年金制度と同じ。逃げ切り世代を逃げ切らせるために支える。
star極端な書かれ方はあるが、鋭い指摘がされてます

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著者に聞く-パーソナルライフ-城繁幸氏[人事コンサルタント] 今年がラストチャンス-『若者はなぜ3年で辞めるのか?』

『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』の著者が、年功序列を斬った。3割を超す新卒離職率は、いまだに残る「昭和的価値観」ゆえと指摘する。「日本企業離れ」を防ぐために「今こそ改革を」と訴える。

――入社3年以内の離職率が3割を超えました。今の若者は企業のどこに、それほどの不満を感じているのでしょうか。

成果主義を導入していると言いながら、実態は年功序列を残したままの日本企業のあり方そのものでしょう。年功主義は若い頃の頑張りに対する報酬を、45歳頃を過ぎて上位のポストに就いてから受け取る制度ですが、そんな制度がこれから20年、30年と続くはずがない。そこに気づくようなキャリア意識の高い人ほど、早い段階で辞めてしまう。企業にとっては深刻な問題です。早くこの「昭和的価値観」から抜け出さないと、企業は貴重な人材を失い続け、取り返しのつかない事態になります。

一方で2006年から「揺り戻し」が目立っていることが懸念されます。昨年の有効求人倍率は1.89倍。完全な売り手市場です。だから私から見たら「終わっている業界」である金融の志望率が高くなるなど、学生の間に「寄らば大樹」とでもいうような安定志向が復活しています。

確かに景気は良くなっていますが、それもいつまで続くか分かりません。学生が安易に大企業志向に流れるようだと、企業の側の危機感が薄れ、せっかくの改革の好機を逃すことになりかねません。

――実際には、どのような層が会社を辞めているのでしょうか。

年功序列が色濃く残っている会社ほど、優秀な人から辞めていく傾向があります。きちんとした成果主義を導入し、若くてもある程度のキャリアを用意できる会社なら、優秀層ばかりが辞めることはありませんから、「辞める人の質」でも格差が生じてきています。

最近は東京大学、早稲田大学、慶応義塾大学、一橋大学クラスの学生は初めから日本企業を志望しない傾向が強まっています。先日、東大生の勉強会に招かれ、彼らの志望先を聞く機会がありました。驚いたことに、その場にいた学生30人のうち、日本企業を第1志望に挙げた人はゼロ。全員、外資系金融機関やコンサルティング会社などを志望していました。

私が富士通に入社した10年前(1997年)には、東大生でも外資系希望者は10人に1人いるかどうかでした。全くの様変わりですよ。

変化のきっかけはインターンシップ(就業体験)制度です。会社の実態を隠さず見せるという意味では良い制度ですが、見えすぎてしまったのでしょうね。日本企業に勤めたら、10年後、20年後にどうなるかという厳しい現実が。これからも形ばかりの成果主義から脱却できない企業は、ますます優秀な学生を採りにくくなっていくでしょう。

――日本企業はどのような人事制度を目指すべきでしょうか。

それははっきりしていて、勤続年数などの年功的な要素を排除した完全なる職務給に移行することです。どこもお題目としては唱えているわけですが、実現しているところは本当にわずかです。有名どころで言えばキヤノンや武田薬品工業、そしてリクルートくらいでしょう。

2007年は、団塊の世代が大量に退職するので、人事制度を一変させる好機です。ここで一気に人事制度改革に乗り出す企業と、そうでない企業との格差は一層開くことになります。今後、リーディングカンパニーの条件として、人事制度改革はこれまで以上に重要になると思います。

城繁幸(じょう・しげゆき)氏
1973年山口県生まれ。東京大学法学部を卒業後、富士通入社。同社の「成果主義」の現実に失望して退社。現在は人事コンサルタント。

■2007/01/15, 日経ビジネス, 72ページ

おじさん通信簿
おじさん通信簿秋元 康

角川書店 2006-10
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おすすめ平均 star
starあなたが45歳以上のおじさんなら

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「おじさん」を楽しむことができると、年を取ることが楽しくなる。季節が変わると山の色合いが移ろうように、「おじさん」になって見える世の中もまた味わい深いという。おじさんライフを楽しむ著者のエッセイを収録する。「スポーツニッポン」などでの連載に加筆修正した。

著者の今の趣味は「健康」。ただし、運動したり、食事を制限したりするような努力は苦手で、一番好きなのは「検査」だという。PET(陽電子放射断層撮影装置)検査など、最新の設備で受ける検査は“ゾクゾクする”ほど大好きで、しばらく行かないと禁断症状が出る。薬も好きで、通常のサプリメントや持病の薬に加え、頭が痛い、くしゃみをしたといっては薬を飲む。誰かが薬を飲んでいると、どんな薬か知りたくなり、講釈したくなるという。

携帯電話の様々な機能はおじさんにとっては“宝の持ち腐れ”と思われがちだが、著者は知り合いから使い方を教わって以来、携帯電話でのテレビ電話にはまっている。テレビドラマの脚本と小説を書くためにホテルに泊まり込んでいる時、子供が初めて乗れるようになった自転車をこいでいる姿を見た時には涙が出たそうだ。

笑ったり、驚いたり、共感したりしながら楽しく読める1冊だ。

■2007/01/15, 日経ビジネス, 71ページ

イスラム石油戦争
イスラム石油戦争宮田 律

NTT出版 2006-10-13
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世界最大の産油地帯である中東の湾岸諸国の問題を中心に、現在の逼迫するエネルギー事情を解説する。

湾岸地域は今、最も不安定な時代を迎えている。イラクは戦争後の混迷が深まり、イランの核問題は国際政治リスクとなっている。サウジアラビアは、若者層の人口増加で十分な雇用を確保できず、社会不安が生じている。一方で、米国は依然として石油に依存した経済システムで、今後10年間は不安定で非民主的な国家からの石油輸入に依存せざるを得ない。石油輸入大国として存在感を高める中国も、中東の石油により一層の関心を高めていくと考えられる。著者は、今後、この2国間で湾岸の安定についての協力関係が構築されなければ、石油供給に支障が出ると予測する。

さらに本書は、中央アジアやアフリカでの資源開発の状況、これらのエネルギーを巡る米国、中国、ロシアなどの競合状況を解説する。こうした中で日本は、依存度の高い湾岸地域で良好なイメージを持たれるよう、公正・公平な外交政策を追求すること、中央アジア諸国などとの友好関係を強化すること、ロシアと協力関係を築き、極東ロシアやシベリアの石油、ガス開発を支援することなど、独自のエネルギー政策を採用すべきだと主張している。

■2007/01/15, 日経ビジネス, 71ページ

人口減少 新しい日本をつくる
人口減少 新しい日本をつくる日本経済新聞社 日経= 日本経済新聞=

日本経済新聞社 2006-11
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2005年、日本の人口減少が始まった。現代の世界で、戦争や疫病などの特殊要因によらず人口が減ったのは我が国が初めてだ。しかも、総人口の減少は、若者の比率の急激な低下という構造変化を伴う。衰え行く経済社会の実態と、企業や社会の対応を描く。

現在、国内の自動車販売台数は年間約600万台。だが、人口減で2010年代には550万台に減る見通しだ。そんな中でトヨタ自動車の戦略にも変化が見える。1台売ると数百万円の利益が転がり込むとされる高級車「レクサス」を投入したのはその表れ。2005年の愛知万博(愛・地球博)では、1人乗り電気自動車「アイユニット」を出展し、子供や高齢者にもアピールした。

社会の安全や安心を守る活動でも、新しい試みが始まっている。静岡県由比町では消火器の使い方や三角巾での応急手当て、可搬式ポンプでの放水などの消防訓練を中学生が受けている。大半の大人が近隣の静岡市や沼津市に働きに出かけるため、万一の災害時には中学生を即戦力にせざるを得ないためだ。住民による、報酬ゼロの自主防犯組織・自警団も全国で増えている。

人口減社会に揺るがない企業、社会を作るには、発想の転換が必要。現実への危機感と未来への想像力を持って、モード転換に備えるべきと訴える。

■2007/01/15, 日経ビジネス, 71ページ

2010年の日本―雇用社会から起業社会へ
2010年の日本―雇用社会から起業社会へ山田 澤明 神尾 文彦 齊藤 義明

東洋経済新報社 2005-12
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おすすめ平均 star
starテーマを絞った深い考察
starすぐに到来する5年後の日本がイメージできます

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政権交代や北朝鮮問題などで、先行きの不透明感が強かった2006年に、人気を集めたのは2007年以降の変化を読み解く書だった。まず、丸善丸の内本店総合ランキングで1位を獲得したのは、野村総合研究所が我が国の明日を占った『2010年の日本』である。

同研究所では、経済のグローバル化、人口の減少、団塊世代の大量退職と高齢化社会の到来など、日本人の目の前に山積する問題を多角的に分析し解決策を探る「2010年の日本」プロジェクトを開始した。本書はその一環で、これから重要となるのは「社会資本の“創造的破壊”」と指摘。人口増や国益優先を前提に、交通インフラやライフラインを整備し続けた政策は限界を迎えており、スリムで柔軟な社会資本作りへの転換を訴える。

フラット化する世界(上)
フラット化する世界(上)トーマス・フリードマン 伏見 威蕃

日本経済新聞社 2006-05-25
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おすすめ平均 star
starもっと早く読んでおくべきだった!!!
star多少難しい本ではあるが・・・
star2006年マイベスト、星6つ!

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フラット化する世界(下)
フラット化する世界(下)トーマス・フリードマン 伏見 威蕃

日本経済新聞社 2006-05-25
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おすすめ平均 star
star自分の視野って??
starグローバル化ということの真の意味
star視野が広がります!

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一方、「グローバル化」の正体を明らかにしようとしたのは、『フラット化する世界(上・下)』(上はアマゾンジャパンのビジネス書20位)だ。2010年前後に表れるであろう世界の姿を予測し、各国で注目を集めている。IT(情報技術)の進歩は、企業の多国籍化を当然のものとし、個人のボーダーレス化を加速させている。半面、民族や宗教の問題は克服できずに根深く残ることについても持論を展開する。

なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?誰も教えてくれなかった!裏会計学
なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?誰も教えてくれなかった!裏会計学小堺 桂悦郎

フォレスト出版 2006-05-20
売り上げランキング : 333

おすすめ平均 star
star読者を選ぶ本
star残念
star文章、内容ともに稚拙

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「ビジネスパーソンとして、競争社会をいかに賢く生きるか」という命題に、ユニークな視点からヒントを与える書は、東京、大阪、インターネットを問わず幅広く人気を集めた。

『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?』(アマゾンジャパン2位など)は、日常業務で誰もが目にする数字、すなわち会社や個人の借金、給与、税金などの裏にある本当の意味を、会計理論に基づきひもとく。著者は、銀行相手の資金繰りを得意とする税理士だ。

本書では、「なぜ年商の4倍の借金のある旅館が潰れないのか?」「なぜ社長は生命保険が好きなのか?」など興味深いテーマを並べて答える。借金だらけの社長が黒字決算に躍起になる逸話から「粉飾決算とは何か」を解説するなど、面白おかしく会計のカラクリを解き明かしていく。

千円札は拾うな。
千円札は拾うな。安田 佳生

サンマーク出版 2006-01-20
売り上げランキング : 540

おすすめ平均 star
star物の見方を変えることの大切さ
star示唆に富んだ良書
star精神論だけで役に立たない

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『千円札は拾うな。』(旭屋書店本店6位など)は、ベンチャー企業に強い経営コンサルティング会社、ワイキューブの安田佳生代表が、「お金と時間の賢い利用法」を指南する書だ。勤勉であり過ぎることや、何でも仕事を引き受けてしまう行為は、美徳どころか自分の価値を引き下げると言う。ビジネスの世界で見え隠れする“常識のウソ”を次々に指摘していく。

■2007/01/08, 日経ビジネス, 88~89ページ

働くみんなのモティベーション論
働くみんなのモティベーション論金井 壽宏

NTT出版 2006-10-13
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「やる気」とは何か。「やる気」を呼び起こす動機が人それぞれ異なるのはなぜか。経営学でも特に「働き方」に注目する著者が、この問いに答える。

旧来の学術的理論と、著者が集めた実務家の生の言葉にはギャップがある。この現実を踏まえて、その動機を、圧力や危機感による緊張系、夢や自己実現願望による希望系、様々な動機を巧みに組み合わせた「持論」で自己調整を図る持論系の3つに大別した。

著者は持論系を重視する。自らのやる気の源泉を理解し、それを自己調整できれば、最大限の力を持続的に発揮することが可能と言う。会社と従業員の関係が変わる中で、重要な役割が期待される持論系の生成プロセスについても研究成果を披露する。

■2007/01/08, 日経ビジネス, 87ページ

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