メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2007年10月8日~10月22日
| 弱き者の生き方 | |
![]() | 五木 寛之/大塚 初重 毎日新聞社 2007-06-21 売り上げランキング : 2994 おすすめ平均 ![]() 人生の指針を与えてくれる良書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
亡くなった私の父は、第2次世界大戦で徴兵され、あの沖縄戦で生き残った。幼少の頃は折に触れて当時の話を聞かされたものだ。ただ、人間には言いたくないこともある。本当に悲惨で、忘れたいと思っていたことについて、父は自分の胸にしまい込んでいたと思う。毎年、沖縄戦が終結した時期に、沖縄の空に向かって手を合わせる様子を見てそう感じたものだ。
自分の息子にも語れないほどの何があったのか。そして、戦争とはどういうものなのか。それを教えてくれている気がして、本書を一字一句、丁寧に読んだ。考古学の第一人者である大塚初重氏と、作家の五木寛之氏による、戦争体験と生に関する対談集である。
五木氏はこの対談で「とても小説には書けない」という凄惨な引き揚げ体験を明かす。海軍での兵役時に自らが乗った船が2度も撃沈され、生き延びた大塚氏も、「忘れようにも忘れられない罪悪感」を伴った体験を語る。
船が沈没した時、甲板から下がっていたワイヤに大塚氏は必死で飛びついた。火の海と化した船底に落ちそうな仲間が、その足にすがりついてくる…。平壌から引き揚げる途中、五木少年がいた集団は、ロシア兵に見つかり、「女性を出せ」と言われる。人身御供になった女性が翌朝ボロボロになって戻ってくる。自分たちの命を救ってくれた恩人である女性に対する、集団の心ない扱い──。
極限の状態で、人々は生きるために必死だった。業の深さを見せつけられつつ、自らの命を守るために、他人の「生」を犠牲に生きてきた。その自責の念は“澱”と言うにはあまりに重い。
ただ、お2人とも、その自覚の中で、人間という存在に希望を持っており、極限の状態で受けた他人からの情けについても披露されている。そんなエピソードを読み進めるうちに、私は映画「七人の侍」に登場する農民を思い出した。嘘をつくし、ずるい。でも明るく生きている。本書のタイトルにある「弱き者」とは人間そのものであり、その人間は「愛しき者」でもある。
お2人は現代を「命を軽んじる時代になった」と嘆く。希望を語ることはたやすいし、他人に「死ぬな」と言うのも簡単だ。だが、十字架を背負いながら生きてきたお2人が言う、「死と隣り合わせの毎日を送っていても、今のように自殺することは考えなかった」との言葉は圧倒的な説得力がある。悲しみを胸に秘めて生きている人の言葉は深く、重い。読み応えのある1冊だ。【評者 ワタミ社長 渡邉美樹】
| お節介なアメリカ (ちくま新書 676) | |
![]() | ノーム・チョムスキー 大塚 まい 筑摩書房 2007-09 売り上げランキング : 305 おすすめ平均 ![]() 内容は良い、しかし翻訳が… アメリカ社会の病巣の深さ 包丁を持つ「手」Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者は現代言語学の大家であり、また、米国の覇権主義的な軍事E外交政策や、グローバル資本主義に基づく経済政策を激しく批判し続ける思想家としても知られる。本書では、2001年の9.11テロ事件から1年を経た米国の姿を起点に、多くの国々を巻き込みながらテロとの戦いにのめり込んでいった過程に沿って時評を加えていく。
「われわれ(米国人)は、世界の国々の多くが米国政府をテロリスト政権と見ていることに気づくべきだ」と言い、現行の体制を市民の力で軌道修正せよと呼びかける。これまで世界の模範と呼ばれていた米国の民主主義は危機に瀕しているとまで指摘。名家の出身で財界の後押しを勝ち取った政治家だけがリーダーの座を競い合うような米国大統領選挙のあり方を批判する。
| いつまでもデブと思うなよ (新潮新書 227) | |
![]() | 岡田斗司夫 新潮社 2007-08-16 売り上げランキング : 3 おすすめ平均 ![]() 実践してみよう! いろんな読みが出来る自己啓発本 ★デブがなに言ってんだ!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-岡田斗司夫氏[作家・評論家] 日本の社会は見た目重視
オタク文化に詳しい評論家として知られる著者がダイエットに挑んだ。全食事を記録するところから始め、約1年で50kg減量した。ダイエットは人生において有利な投資と言う。
――13カ月で117kgから67kgに減量したわけですが、まずダイエットを始めた経緯がユニークですね。
おいしいものに目がなかったので、美味なものだけをもっと効率的に食べられるように、食事の内容を手帳につけ始めたのがきっかけです。ところが、始めて1カ月くらいすると、体重が自然に減っていることに気づきました。
今度は間食なども含めて口に入れる食事をすべてメモすることにしました。すると、目に見えてやせるようになったのです。太り気味の人は「ほかの人と同じものを食べているのに自分だけが太る」と嘆くことが多い。ところが、実際には様々なものを食べて、無意識のうちに「太る努力」をしているのです。太る努力さえやめることができれば、運動とか1つのものだけを食べ続けるなどという難しい方法に頼らなくても、自然とやせるはずです。
──食生活を「見える化」するのですね。
こうしたダイエットはレコーディングダイエットとも呼ばれます。産業界で言えば、まさに「見える化」ですね。
この方法では、自分に与えるストレスを段階を追って1つずつ増やしていきます。最初は記録を取るだけで、次に食べたもののカロリーを調べる。それからカロリーのコントロールを考える。最初はダイエットを始めることを我慢して、メモすることへの慣れが大切です。
──しかし、アフター5のつき合いなどはどうすればいいのでしょうか。
1000円しか持っていかないようにするんです。1000円分だけ楽しんだら帰るか、または人に支払ってもらう。最初は友人も奢ってくれますが、そのうち誰も無理には誘わなくなります。
このダイエット法では長期間で体重をゆっくり落とすことを考えますから、カロリーを多く取ったら翌日は減らすとか、夜に飲みたいなら朝昼を抑えるとか、工夫すればいいのですよ。
またパーティーなどへは1時間ほど遅れて行く。そうすれば、食事がほとんど残っていないうえに、「よく来てくれた」と感謝されますから。
──やせることには、どのような利点があるのでしょうか。
日本の社会は「見た目至上主義」になっています。やせたらいいことがあるのに、太っている人は気づいていない。35歳以上の多くの男性は、仕事さえできればいいと考えて、見た目が重視される風潮を見落としている。例えば、若いお笑い芸人を見てください。面白ければいい職業なのに、かっこいい人が増えている。この変化は明らかです。
自分の例では、やせたら高校生の娘がなついてくれて、「一緒に歩こう」と言ってくるようになりました。大学で教えていても、昔は男子学生ばかりが前に座っていたのに、今では女子学生が前に集まるようになってきた(笑)。
この変化から目をそらすのは、つまずきのもとになります。社会全体の流れは、100年ぐらいの準備期間を持って動いている。近視眼的に社会の流れに抵抗するよりも、その中でいかに快適に生きるかを考える方が大事です。
ダイエットは人生の中でも最も効率的な投資だと思います。健康になって医療費がかからなくなりますし、衣料費も抑えられるでしょう。100万円使って世界旅行しても、思い出しか残らない。しかし、ダイエットをすれば経験や達成感のほかに、やせた自分の体が残ります。たとえ5億円もらっても昔のように太りたくはないですね。
岡田斗司夫(おかだ・としお)氏
1958年大阪府生まれ。オタク文化の評論家として注目を集め、テレビなどへの出演や著作も多数。現在は大阪芸術大学の客員教授も務めている。
| インドと中国―世界経済を激変させる超大国 | |
![]() | ロビン・メレディス 大田 直子 ウェッジ 2007-09 売り上げランキング : 250 おすすめ平均 ![]() 2大大国を写し出すAmazonで詳しく見る by G-Tools |
今後の世界経済勢力図を一変させてしまうほどのパワーを誇るインドと中国。アジア版「フォーブス」誌の編集者である著者は、「インドのゆっくりだが着実なアプローチと、中国のロケット並みの急発展とは対照をなしている」と言う。本書は両大国が経済成長路線へと舵を切った歴史的背景を検証しつつ、自らの足と目で取材した現場の実相をリポートする。
中国については、“世界の工場”と呼ばれる生産力もさることながら「数年後にはヨーロッパのどの国の人口より多い1億人の中国人が、中産階級の購買力を手に入れるだろう」と読む。高級品の購買市場においても中国は既に世界第3位で、2015年までに米国を抜いて世界市場のほぼ3分の1を占めると予測し、日本と肩を並べる可能性が高いとの調査結果を示す。
それに対してインドの開発プロジェクトは「進んだり止まったりしている」と指摘、その原因となる宗教的、文化的背景について考察を加える。インドで目を見張るのは、米国企業によるオフショアリング(ホワイトカラーの仕事を海外に移すこと)が加速度的に進行している点だと言い、米IBMなど巨大企業の現状を例示。こうした変化が今の先進国の労働市場にもたらす負の影響は計り知れないとも指摘する。
| 捨てられるホワイトカラー―格差社会アメリカで仕事を探すということ | |
![]() | バーバラ・エーレンライク 曽田 和子 東洋経済新報社 2007-09 売り上げランキング : 2553 おすすめ平均 ![]() 中国・インドに侵食されるアメリカAmazonで詳しく見る by G-Tools |
米国の女性社会評論家、コラムニストとして知られる著者が、近年深刻化しているホワイトカラー層の失業問題を告発する書。著者が得意とする“覆面記者の体験ルポ”という手法を、本書でもいかんなく発揮している。氏名を旧姓に戻して社会保険カードを取得し、履歴書を作成するところから、著者の再就職活動体験記は始まる。
その過程で著者が出合ったのは、自分が完全に負け組に加わったという認識を持ち得ず、それでいて何が不足かも分からぬままに解雇されているホワイトカラー失業者たちだった。再就職準備のために高額な授業料を支払わされた揚げ句、性格改造を要求されることもある。著者も「個性的、完全を求める」といった自身の長所を無視されて、欠点である「融通が利かない」という面の改善を迫られた。
想像以上に困難な再就職活動を強いられる中で、著者はついに保険会社の保険販売員として「合格」を言い渡される。しかし会社側からの条件は、健康保険もオフィスも自腹という、世間が描くホワイトカラーの働き方のイメージとは程遠いものだった。「零落したホワイトカラーの物語は、ブルーカラーの極貧物語のように簡単な説明で片づけることができない」と、新たなる難問の出現に警鐘を鳴らす。
| トヨタはどうやってレクサスを創ったのか―“日本発世界へ”を実現したトヨタの組織能力 | |
![]() | 高木 晴夫 ダイヤモンド社 2007-09-29 売り上げランキング : 1117 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
慶応義塾大学大学院で組織行動学や情報組織論の教壇に立つ著者が、「日本発世界へ」をテーマに据え、トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」の誕生と成長の仕組みを解き明かす。
テーマを読み解く第1の視点は、同社の開発とマーケティングに注がれている。1980年代の北米市場において、大衆車やトラックで存在感を示していた同社が新たに市場投入したプレミアムカー「レクサス」は大成功を収めた。しかし、「メルセデス・ベンツ」などと対等に競える高級車の開発の遅れや、欧州での認知度の低さといった問題の克服が、同社の課題として残っていた。見方によっては従来のトヨタブランドと相反する可能性すらあったプレミアムブランドの立ち上げに際し、いかなるマーケティングを行い、社内合意を形成したのかを分析する。
次いで、新ブランドを支える組織作りや人材育成の工程に焦点を当てる。製造現場から販売・サービスの最前線に至るまでの人員が対話と議論を尽くし、日本企業ならではの「高級の本質」にたどり着くまでのプロセスを解説する。また、同社が醸成してきた機能横断型(クロスファンクショナル)の組織文化や「個人が横に効果的に動く柔軟性」の存在が成功を支えたと言い、その仕組みを解き明かす。
| 現役社長秘書が語る できるボスの条件 | |
![]() | 京野 友香 ダイヤモンド社 2007-09-14 売り上げランキング : 746 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
大手メーカーの「カリスマ経営者」と呼ばれる社長の秘書を務め、社内外の様々な人間を見てきた経験を基に、「できる人」の条件を探る。
著者の “ボス”は若い社員にも、掃除のおじさんにも気軽に話しかける。相手の立場で態度を変えることはしない。成功者となっても、昔からの人間関係を大事にしている。こうした言動から、徳のある人として尊敬されている。取引先、政治家、役員などには、ボスとは反対に高圧的な人、自社のトップの顔色だけをうかがう人、メンツと肩書にこだわる人なども多くいた。尊敬できる人とそれと対照的な人とは、結果として「できる人、できない人」につながっていたと解説する。
会社の裏側や役員たちの行動、秘書の本音を知ることができ、興味深い。
| 世界一やさしい問題解決の授業―自分で考え、行動する力が身につく | |
![]() | 渡辺 健介 ダイヤモンド社 2007-06-29 売り上げランキング : 25 おすすめ平均 ![]() 利己と利他 子供向けというコンセプトが面白い 若い頃に読みたかったな。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| レバレッジ・シンキング 無限大の成果を生み出す4つの自己投資術 | |
![]() | 本田 直之 東洋経済新報社 2007-06-29 売り上げランキング : 44 おすすめ平均 ![]() 4つの分野に自己投資 レバレッジを掛けて習得できます! 他人のアイディアを自分のものにするAmazonで詳しく見る by G-Tools |
競争社会を勝ち抜くために、「問題解決力」や「考える技術」を身につけて強化すべしと説く書が売れている。
『世界一やさしい問題解決の授業』(ブックファースト渋谷店5位、アマゾンジャパン6位)は、「学校では教えてくれない考える力を指南する」と銘打ち、中高生を対象に出版されたもの。しかし、オトナにとっても十分有用なビジネス書として支持され、異例のベストセラーとなっている。著者は経営コンサルティング会社、マッキンゼー・アンド・カンパニー出身で、その経験を通じて体得したノウハウをまとめたのだという。問題の原因分析から仮説立案、目標設定、行動計画策定といったポイントを分かりやすく解説している。
『レバレッジ・シンキング』(ブックファースト渋谷店14位)は、日頃の労力や、知識習得、人脈形成にかける時間に無駄はないかと問いかけ、考え方の改善を迫る。
いずれの著者も米国で経営学を学び、外資系企業を経てコンサルティング会社を起業した人物である。『世界一やさしい問題解決の授業』の著者は、論理的思考法は、米国なら小中学生の頃から学ぶ基本の“き”だとも言い、我が国の詰め込み教育が抱える問題点を指摘する。
| 経営知能―リーダーは育てるより、探し出せ! | |
![]() | ジャスティン・メンクス 高遠 裕子 光文社 2007-08 売り上げランキング : 1833 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
名経営者は目覚ましい業績をもたらすような類まれな知能を持っている。本書はビジネス分野に特有の認知スキルを「経営知能」と名づけ、その具体的中身や評価方法を示す。
経営知能とは、仕事で重要な3つの分野、つまり業務の遂行、対人関係を円滑に進める能力、自分自身の思考や行動を評価し、修正する能力の組み合わせと定義づけられる。有能であるためには、これらすべてに秀でていなければならない。その基礎となるのがクリティカル・シンキングだ。情報を巧みに収集、処理、加工することで、目標達成や複雑な状況を乗り切るための「最適な解」を見いだす力である。
組織の成否を決めるのは人材の質であり、企業は有能な人材を揃えることが重要だ。そのためには有能な人材を発見する評価法が必要である。本書はこれまでの評価方法は経営知能の測定には十分でないことを示し、経営知能専用の評価法を確立すべきと主張する。知能測定は、実生活でスキルが使われる状況に近いものでなければならない。対話形式で、実際の仕事で起こり得るシナリオを基に、業務の遂行、対人関係、自己評価の3つの分野で、幹部に必要な認知スキルを測る質問を次々にしていくのが適当として、具体的な測定方法を示す。
| 雇用改革―「雇用の質」を改善せよ | |
![]() | 島田 晴雄 根津 利三郎 東洋経済新報社 2007-09 売り上げランキング : 7541 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人口減少経済となる日本が今後も発展し続けるには、同じ労働力でも、より高い生産性を達成できるように、仕事の中身や環境条件を整備して、「雇用の質」を高めることが必要である。本書は、その具体的な方策を探る。
現在の日本の労働市場には問題点が多い。企業は構造改革とイノベーションで生産性を向上したが、その間、賃金は据え置かれたため、ユニット・レーバー・コスト(単位当たり労働コスト)は国際的に見ても著しく低下した。フリーター、ニートなど、貴重な労働力が適切に活用されない事態も進んでいる。一方で、就職氷河期に運良く就職できた30代前後の勤労者はサービス残業など過重労働を強いられ、ワークライフバランスがゆがんでいる。
こうした問題を解決するためにも、雇用の質を高めることが不可欠だと説く。日本ではとりわけ、建設・建築、サービス、流通、農業分野の生産性が低い。低生産性部門の生産性が上昇すれば、国際競争にさらされる製造業などの部門への要素投入のコストが下がり、国際競争力を強化できる。徹底的な構造改革と先進的な経営革新、IT(情報技術)の活用、仕事の見直し、人的投資への支援、家族への政策支援など、雇用の質を高める施策を積極的に講じるべきだと指摘する。
| ビジネスロードテスト 新規事業を成功に導く7つの条件 | |
![]() | ジョン・W・ムリンズ 秦 孝昭 出口 彰浩 英治出版 2007-09-07 売り上げランキング : 809 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ロンドン・ビジネス・スクールでアントレプレナーシップについて教壇に立つ教授が、ビジネスの「7つの成功条件」を解説する。起業家が思案中のビジネスについて、クルマを購入する際に行うように、“ロードテスト”できるツールを紹介する。
起業を成功させるうえで重要なのは市場、業界、経営陣という3つの要素。市場と業界は同じではないこと、市場と業界はマクロ・ミクロ両方のレベルで考えること、起業家としての資質は履歴書だけでは評価し切れないことなどの認識が重要という。
これらを踏まえた7つの成功条件とは、「市場の魅力」「魅力的なターゲットセグメントの存在」「業界の魅力」「持続可能な競争優位性」「使命・野心、リスク許容度」「CSF(主要成功要因)に対する実行力」「バリューチェーン上での人的ネットワーク」である。各条件について、成功例、失敗例を紹介しながら説明する。7つの成功条件は複合的に作用し合い、時には意外な影響を及ぼし合うこともあるという。
どんなビジネスにも不確実性はつきものだ。ビジネスプランをまとめる前に、7つの成功条件モデルでのロードテストを行うことで、不確実要素を取り除き、修正を済ませ、失敗を防ぐことが必要だと主張する。
| 日本カジノ戦略 (新潮新書 226) | |
![]() | 中條 辰哉 新潮社 2007-08 売り上げランキング : 6483 おすすめ平均 ![]() カジノの経営に興味がある方に 完璧と思える米国のカジノAmazonで詳しく見る by G-Tools |
私自身は人並み外れてギャンブル好きではないが、これまでカジノは米ラスベガス、中国のマカオ、韓国・ソウルの3カ所を訪れたことがある。残念ながら「一攫千金」とはならなかったものの、非日常的で独特の雰囲気を醸し出すカジノを単純に面白いと思った。
カジノというと、反社会的勢力が暗躍する場として危険なイメージを抱く人もいるが、現在のカジノはホテルやショービジネスなど、複合的体験を組み込んだ究極のエンターテインメントビジネスである。本書は日本では深く知られていないカジノについて、歴史や法律的・社会的側面を織り交ぜながら紹介し、日本でカジノを成功に導くためのカギを解き明かしている。
著者は「将来、日本でカジノを経営する」ことを夢見て米ネバダ州立大学でカジノ経営学を専攻し、ラスベガスの大手カジノで長年働いた経験を持つ中條辰哉氏。まさに理論と実践の双方を知り尽くした人で、現在もアミューズメント産業の研究を行っている。
日本でもカジノは、海外からの観光客獲得、地域の産業振興、雇用拡大や税収増といった波及効果が期待されている。2002年には「国際観光産業としてのカジノを考える議員連盟」も結成され、経済界にもカジノ合法化を望む声は多い。だが、日本でのカジノ誕生は前途多難と言うしかないらしい。
カジノが合法化されている国は世界中で120カ国、その数は優に2000軒を超え、特にアジアでは競争が激化し、日本は一歩どころか百歩も出遅れている現状だそうだ。
著者は「日本でもカジノ構想を打ち出している地域は多いが、その内容は経営側の視点から見ても、顧客側の視点で見てもカジノの基本からずれている」と指摘、「海外の成功事例や市場データをそのまま当てはめるのではなく、独特の世界における『掟』と顧客の『感覚』を理解し、日本の独自性を創出しなければカジノの成功は難しい」と言う。保守的・官僚的な考え、安易な模倣を捨て去らずして成功を勝ち取ることができるほどカジノという業界は甘くないそうだ。読み進めれば、カジノへの投資額、言葉の壁、アクセスやリピーター獲得、人材育成など、カジノの魅力を構成する要素が見えてくる。
巻末にはルーレット、ブラックジャック、バカラといった代表的なゲームの簡単なルールが記されている。「なぜ、かくも多くの人々がギャンブルをし、負けてもまたラスベガスに戻るのか」という著者の問いかけに、またカジノに出かけてみたくなった。【評者 関西大学教授 白石真澄】
| はまる人、はもる人、はめる人 「強味」の人材像 [朝日新書061] (朝日新書 61) | |
![]() | キャメル・ヤマモト 朝日新聞社 2007-08-10 売り上げランキング : 17666 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
今は海の向こうで働いている誰かが、明日には自分の地位を脅かすライバルになるかもしれない――。日本企業のグローバル人事戦略に詳しい著者は、新たな競争の時代を勝ち抜き、自らの仕事を守るには、「自分の強味」を再確認して生かし切るしかないと断じる。本当の強みとは自分の内側からわき上がってくるもので、容易には見つからないとも言い、人間のタイプ別に強みを分析しながら、読者自身がそれを発見するまでの道筋を示す。
「はまる、はもる、はめる」とは、没頭し、他者と共鳴し合い、自ら描いた構想に仲間をはめ込む、という意味。その境地に近づく方法として自身の履歴を文章にしてまとめ直す作業を推奨する。見逃していた自分だけの強みが浮かび上がってくると言う。
| 暴走老人! | |
![]() | 藤原 智美 文藝春秋 2007-08 売り上げランキング : 247 おすすめ平均 ![]() 新老人予備軍の思い込み 藤原さんは時にこんなのも書くのか、、、 年をとること、生き難さへのまなざし。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-藤原智美氏[ノンフィクション作家]
IT(情報技術)社会の到来で、取り残され、隔離されつつある老人。老人もITスキルを身につけるような老人教育の場を提唱する。団塊の世代には新しい老人の姿を期待する。
――キレる老人を目の当たりにしたことが本書執筆のきっかけです。
老人が些細なことに怒り心頭する様子にも驚いたのですが、老人による軽犯罪が増えていることにも注目しました。実際に耳を疑うような事件が報道されています。例えば、コンビニエンスストアで1日中、漫画の立ち読みをしている老人を店員が注意したところ、老人がチェーンソーを運び出し、店の前で脅すという事件が起きました。
これはただ事ではありません。なぜここまでキレてしまうのか。その理由として考えられるのは、老人が以前よりも暮らしにくくなっているという現状です。私たちと老人の生活では、大きく異なるものがあります。
それはIT(情報技術)を使いこなせているかどうかということです。現在は税金もインターネットで申告できる。実際にそれが便利かどうかは分かりませんが、老人は「ネットという便利な仕組みがあるけれど利用できない」というもやもやとした気持ちで、税務署の窓口に並んでいるのです。
ほかにも、新幹線や航空機の予約を携帯電話から車中でできる。一方で、老人は旅行代理店や「みどりの窓口」まで出かけなければならない。圧倒的に老人が不利です。現代の携帯電話やパソコンは単なる便利な道具ではなく、生活の基盤になりつつあるのです。この事態に対応できない老人は焦りを抱えているのでしょう。情報難民となっていることが、老人を暴走させる要因の1つではないでしょうか。
──ITを基盤とした社会は老人を世間からより遠ざけているわけですね。
よく言われることですが、社会にITが入り込みすぎると、コミュニケーションが希薄になってしまう。こうした変化は老人の環境にも影響をもたらしています。これまで老人の役割は、困った時の相談役であることが多かった。しかし、IT時代には老人に意見を聞きに行くことが少なくなった。
そもそも、老人の意見はそれほど重要ではないのです。老人が経験によって蓄えた知識も、少しの時間ネットで調べれば、すぐに追い抜いてしまう。つまり、老人が力を発揮する場所が減っているのです。
誰かと関わりたくても、関われない。そんな孤独感が根底にある。コンビニの店頭でチェーンソーを持ち出した行為も、1つのコミュニケーションと考えられます。脅す凶器はナイフでもノコギリでもいいのに、なぜチェーンソーを持ち合わせていたのか。「いずれは一戦を交えてやる」と用意していたに違いない。これはある種のコミュニケーションなのです。
──老人の暴走を止めるにはどうすればいいのでしょうか。
私は「老人育て」が必要だと思っています。子供だけでなく、老人にも積極的にITスキルを教えるべきだと思います。そうしたうえで「自分たちが損をしている」という感覚を排除することが先決です。
それだけでなく、老人同士が生活しやすいスタンダードを作り出し、周りに認知させることが必要なのではないでしょうか。誰だって、いつまでも最先端の技術に追いついていけるはずはありません。だからこそ自分たちのやり方で、生きやすい社会を構築すべきなのです。そういう意味で、常に時代のスタンダードを作り上げてきた団塊の世代が老人に差しかかろうとしていることは、注目しています。
藤原智美(ふじわら・ともみ)氏
1955年、福岡市生まれ。92年、『運転士』で芥川賞受賞。「家族」と「家」を題材にした著書が多く、ノンフィクションでも健筆を振るう。
| ゆうちょ銀行 | |
![]() | 有田 哲文/畑中 徹 東洋経済新報社 2007-09-07 売り上げランキング : 4498 おすすめ平均 ![]() 新聞連載記事のとりまとめAmazonで詳しく見る by G-Tools |
郵政民営化問題への国民の関心は、小泉純一郎政権の幕引きの時点から失われたままのように見える。朝日新聞の記者としてこの問題を追い続ける著者らは、今年10月から民間企業として市場に解き放たれた4つの企業、ゆうちょ銀行(郵便貯金銀行)、かんぽ生命保険(保険事業会社)、郵便事業会社、郵便局会社の前途に克服し難い課題が山積していると警鐘を鳴らす。
ゆうちょ銀行については「危ない国立銀行が衣替えし、危ない民間銀行が生まれ、しかも図体は巨大なままだ」との見方を提示する。これまで財政投融資という“便利な財布”の役割と、国債を買い続け、支えるという役割を担ってきたのが郵便貯金だった。前者の仕組みは民営化とは関係なく、既に切り離されている。しかし、国債を支える役割を担い続けるためには、個人ローンや海外投資など、新規事業で収益を確保し続けなければならない。様々な構想が練られているのは事実だが、いずれについても現状では勝算が見えにくいと、著者らは指摘する。
また、郵便事業会社についても、ドイツポストを模範として国際物流事業に打って出るという構想はよいが、既に大手物流会社との提携に頓挫している例などを示し、銀行事業と同様にその行く末を案じている。
| 「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ | |
![]() | 小宮山 宏 中央公論新社 2007-09 売り上げランキング : 4238 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
化学工学の研究者として知られ、2005年からは東京大学総長に就く著者が、日本の目指すべき国家像を描き出した書。今、日本が直面している多くの問題は、何も手を打たなければ遅かれ早かれ他の国にも起こり得ると指摘する。その意味で日本は「課題先進国」なのだと言い、これまでのように「外国」や「過去の日本」から学ぶのではなく、自らが「課題解決先進国」となって世界に手本を示せと主張する。
人類史上に例を見ないエネルギー問題や温暖化現象を含む環境問題について、我が国にはそれらを解決し得る技術と英知があると論じる。著者は、2050年頃が地球と人類の大きな岐路になるだろうと言い、そこまでの見通しと我々がなすべきことを「ビジョン2050」にまとめて示す。その1つが、エネルギー効率を現在の3倍に引き上げることにより、発展途上国の成長を妨げることなく、エネルギーの総消費量を現在と同等に維持する施策だ。
また、太陽電池を中心とする自然エネルギーの利用を現在の2倍にする施策も欠かせないと解説する。これらの分野で日本の科学技術が世界に果たせる役割は計り知れないと言う。同様に少子高齢化や教育、医療問題においても「日本の課題=世界の課題」という視点から解決への道筋を提示する。
| グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換 | |
![]() | ニコラス サリバン 東方雅美/渡部典子 英治出版 2007-07-12 売り上げランキング : 970 おすすめ平均 ![]() 起業する人はとても参考になります こいつは現代の信長だ!! 営利事業なのに社会貢献して社会を変えることができるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
起業家に関する書といえばその人物の精神論や半生記を紹介する内容が多いが、本書では起業家の事業そのものの真価を問う。「グラミンフォン」とは発展途上国バングラデシュ出身のイクバル・カディーア氏が起こした携帯電話会社だ。彼は国民1人当たりのGDP(国内総生産)が約450ドル、1億4000万人強の国民のほとんどが農村で日々の暮らしに追われていたこの国の隅々にまで、IT(情報技術)が持つ本来の恩恵をもたらそうと試みた。
カディーア氏の起業理念は「牛に代わる携帯電話」。先進国で熟成を遂げた携帯電話網のモデルを最も必要としているのは発展途上国であるという、シンプルかつ大胆な着想を得た彼は、様々な投資家から協力を得て、村ごとに携帯電話普及を担う小規模事業者を立てる「ビレッジフォン」戦略を推進した。これが功を奏し、同国での携帯電話普及率は飛躍的な上昇を遂げた。
先進国や国際援助組織による発展途上国への資金援助は、政府の失政や汚職、硬直化した公共事業にしか資金が回らないなどの理由で機能していないことが多いと著者は指摘する。それに代わり、大志を抱く起業家と海外投資家、ITという3つの要素が揃えば、発展途上国の形を変えてしまうような事業が起こり得ると解説する。




アメリカ社会の病巣の深さ












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新老人予備軍の思い込み


