メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2006年7月24日~8月7日
| 働く女は腕次第 | |
![]() | 遙 洋子 朝日新聞社 2006-06 売り上げランキング : 5068 おすすめ平均 ![]() 今日も力はいってるなぁ・・・・ 毒にも薬にも。パワーアップ!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本誌に2001~05年まで連載したコラム「働く女性の眼」を収録する。小泉チルドレン、マンションの耐震強度偽装事件、女帝問題など、話題のニュースに絡んだ書き下ろしを加えた。
マニュアル漬けで機転の利くサービスができない有名高級旅館、賞味期限の切れた菓子を売ってもきちんと詫びることができない大手スーパー、顧客との会話能力すら問題がある自動車販売店など、著者が遭遇した日本のビジネス現場の問題点を鋭く指摘する。鍋の宴会に見るセクハラ問題、女性部下をつぶす男性上司の存在など、男性読者には耳の痛い内容も多い。
当初はクレームが続出したが、やがて数多くの応援団に恵まれるようになったという。随所に当時の反響、著者自身の心境など、回想も加えている。
| 食欲礼賛 | |
![]() | 安藤 百福 PHP研究所 2006-06 売り上げランキング : 7070 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 食品の裏側―みんな大好きな食品添加物 | |
![]() | 安部 司 東洋経済新報社 2005-10 売り上げランキング : 36 おすすめ平均 ![]() 快適・便利のなれの果てにあるもの・・・ 食に対する意識が変わります! 喜ばれた添加物屋さんのセールストークAmazonで詳しく見る by G-Tools |
食の喜びや安全を担う企業の高い志を示した書と、食卓の信頼を脅かす食品添加物ビジネスの実態にメスを入れた書が同時にランクインした。
『食欲礼賛』(旭屋書店本店1位、丸善丸の内本店18位)は、日清食品創業者会長であり今年で96歳になった安藤百福氏の食に対する熱い思いや体験をエッセイ集としてまとめたもの。世界的ヒット商品となった「チキンラーメン」や「カップヌードル」の誕生秘話をはじめ、日本各地で古くから愛され続けている食材の魅力、食と長寿の関係などについて大いに語る。BSE(牛海綿状脳症)問題などを憂えつつ、食品会社は聖職であらねばならないと業界全体を戒める。
一方、食品添加物商社の元セールスマンは『食品の裏側』(丸善丸の内本店2位)の中で、毎日の食に潜む危険性を指摘する。我々は食品添加物の特性についてあまりにも無知だと主張。その毒性ばかりを煽り立てる報道は良くないとしながらも、ラーメンやハム・ソーセージ、明太子など人気の食品の一部が、無害とは言えない添加物にまみれている実態を次々に明らかにする。添加物の大量摂取によって「子供たちの舌が壊れていく」と警鐘を鳴らす。
| あなたの会社が買われる日 | |
![]() | 山田 修 PHP研究所 2006-05-27 売り上げランキング : 42234 おすすめ平均 ![]() 1冊で3度楽しめる内容です 会社経営・投資ファンドの裏側がわかる一冊です! ちょっと、想定読者がわからないですが、現実味のある内容ですAmazonで詳しく見る by G-Tools |
米国、欧州、アジア企業の日本法人の社長を歴任してきた著者が、外資系企業によるM&A(企業の合併・買収)の舞台裏を小説仕立てで描く。3本のストーリーを収録する。
外資系企業の日本法人社長にスカウトされた新社長は就任早々、様々なトラブルに見舞われる。生え抜きの副社長らは新社長とコミュニケーションを取らず、情報も与えない。新社長の学歴詐称疑惑すらでっち上げる。本社と新社長の意向を無視した営業を展開し、新社長を糾弾するメールを本社に送りつける。ついに新社長は副社長の解任を決意。暴力沙汰に備えて臨時でガードマンを雇い、退去を言い渡す。
最高級システムキッチンメーカーのトリアニーは投資ファンドに買収される。他の外資系企業からスカウトした社長の下、再建を進めるトリアニーだが、投資ファンドから出向してきた非常勤取締役がオーナー気取りで経営に口出しするようになる。公私混同の言動にあきれたトリアニー経営陣は投資ファンドとの決別を模索する。
著者は企業の資本が移動する現場を幾つも経験し、観察してきた。いずれの場合も、内部では激しい化学反応が起きたという。それらを基にした本書のストーリーは、企業買収の現場をリアルに感じることができる。
| プロスポーツクラブのマネジメント―戦略の策定から実行まで | |
![]() | 武藤 泰明 東洋経済新報社 2006-05 売り上げランキング : 20963 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
Jリーグの経営諮問委員長を務める著者が、その経験を基に、団体競技のプロチーム会社のマネジメントの枠組みを示す。ガバナンス(統治)、財務、組織・人事、マーケティングなどの項目で解説する。
クラブチームは、株主、経営者、従業員、選手、監督、サポーター、スポンサー、地方自治体など、一般的な企業に比べ、多くのステークホルダー(利害関係者)が存在する。いずれのステークホルダーもクラブチームが存続し、強くなることを求めている。一般的な企業が収益を巡って株主、経営者、従業員の間で緊張関係があるのに対し、クラブチームは緊張や葛藤が希薄で、ガバナンスが機能しにくい。本書はこうした前提のうえで、クラブチームがそれぞれのステークホルダーをどのように位置づけ、関係を構築すべきかを示す。
収入構造もチケット販売、スポンサーからの広告収入、選手の移籍金・レンタル料、物品販売、スクール収入など類型が多い。財務管理も複雑になることから、その留意点を整理する。また、マーケティングの対象も観客、スポンサー、マスメディアによって間接的に接触する2次的な顧客など多様であることを指摘。それぞれの対象に向けたマーケティング方法を示す。
| 銀座の怪人 | |
![]() | 七尾 和晃 講談社 2006-05-30 売り上げランキング : 87684 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2004年、米連邦捜査局(FBI)はニューヨーク在住のユダヤ系イラン人画商、イライ・サカイを逮捕した。この事件によって、日本の美術品資産に対する信頼は根底から揺るがされている。イライは、1970年代以降20年以上にわたって、日本に絵画・骨董の贋作を送り続けてきたことが明らかになったからだ。本書は、日本ではほとんど知られていない贋作事件の全貌を追ったルポルタージュである。
イライが持ち込んだ贋作は、国立大学教授が「素晴らしい」と意見書を書き、東京・銀座を中心とする一流画廊が企業やオーナー経営者に斡旋し、著名な美術評論家が「値打ちもの」と評価する構造で日本の隅々に浸透した。舶来崇拝、のれんや権威に弱い日本人の欠点が露呈した格好だ。イライは贋作をつかまされたことを恥と考える日本独特の「恥の文化」も理解し、より大胆な贋作商法を繰り広げていった。
減損会計制度の導入によって、企業は美術品などの動産類も時価換算する必要が生じている。美術品が贋作と判定されれば、億単位の絵画や骨董も価値ゼロとなる。本書は「銀座の怪人」イライが仕掛けた贋作バブルによる「もう一つの不良債権」が、回復しつつある日本経済を直撃しかねないことを指摘している。
| 日本のポップパワー―世界を変えるコンテンツの実像 | |
![]() | 中村 伊知哉 小野打 恵 日本経済新聞社 2006-05 売り上げランキング : 36918 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
マンガやアニメ、テレビゲームなどの大衆文化に関わる商品が日本経済に少なからず活力を与えている。著者らはそれらを「ポップカルチャー」として括り、官による支援政策や諸外国の現状との比較、将来の市場性などについて多角的に分析を加えていく。「ポケモン」の世界市場を含めた累積の売り上げは何と3兆円に達するという。また中国では、報じられている対日感情とは裏腹に、「クレヨンしんちゃん」がアイドル的存在になっていることなどを種々のデータから示す。
これに対する国の取り組みはどうか。著者らは諸外国と比較しながら我が国の振興策を紹介するが、いまだ不十分であると論じる。次代を担う人材の育成を含むスキームを、産学官が協力して描き直すべきだと指摘する。
| 株式会社に社会的責任はあるか | |
![]() | 奥村 宏 岩波書店 2006-06 売り上げランキング : 672 おすすめ平均 ![]() 会社を考えるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-奥村 宏 氏[株式会社研究家、元中央大学教授] 空疎なCSR論に異議-『株式会社に社会的責任はあるか』
世界的ブームになっているCSRを、企業による自己宣伝と切って捨てる。相次ぐ不祥事などで株式会社の在り方が限界に来ていると説く。経営者の自己満足を諫め、返す刀を「CSR学者」にも向ける。
――このところ議論が盛んなCSR(企業の社会的責任)に対して、真正面から疑問を投げかけています。
企業が社会的に善いことをして、しかも儲かる。実現できるなら、これほどうまい話はないわけですが、それは本当なのかという疑問を感じていました。そもそも「企業に社会的責任があると言えるのか」という議論を棚上げしたまま、「企業は清く正しくあれ」と、まるで昔の修身の教科書のようなことばかりを言っている。40年近く株式会社の研究を続けてきた私の目から見ると、全く空疎な議論に映ります。
かつての公害問題からこの方、欠陥商品問題や事故の隠蔽など、企業が絡んだ事件や問題は後を絶ちません。問題を起こした企業は、民事上の損害賠償責任は負うものの、基本的に刑事責任は問われません。犯罪の責任すら取らない企業が、なぜ社会的責任については取れるということになるのか。非常におかしな話だということが、分かるでしょう。
――ではなぜ、CSRに関する議論がこのところ盛んになっているのでしょうか。
株式会社の在り方自体が大きな転換点を迎えている、言い換えれば、限界に来ていることの表れでしょう。
株式会社の大原則は、株主の責任は有限だということ。会社が破綻すれば株券が紙くずになるリスクは負いますが、それ以上の責任は問われません。三菱自動車の一件でも、株主責任の議論は全くありませんでした。
ですから、株式会社が株主のものだとするなら、株式会社に社会的責任なんてあるはずがない。にもかかわらず、社会的責任を果たすと言わなければならないのだとすれば、これは大きな矛盾であり、問われるべきは株式会社の在り方の方だと考えられます。
企業の行動が問題視されるケースは、数が減るどころか、増えているのが実情です。環境や人権、女性差別の問題など、問題の対象が幅広くなってきているからです。CSRで言われているような、至極当然のことを大上段に構えて言わなければならないのは、企業批判に対する対抗策、防衛策という側面があるのでしょう。
「うちの会社は社会に役立つ寄付やボランティア活動をこれだけ実施しています」などといった主張はまさに企業宣伝でしかありません。企業が意識しているかどうかは分かりませんが、それが企業に対する外部からの改革圧力を弱めたり、防ぐ役割を果たしているのです。
――宣伝のためだとしても、企業が寄付やボランティアなどに取り組むことにはある程度の意義があるのではありませんか。
誰が寄付や献金を決めているのでしょうか。経営者ですよね。相手が政党や政治家であっても、株主総会での議論を経ずに、自分の都合の良い相手に寄付や献金をする。こうして“他人のカネ”を勝手に献金しておいて、企業の社会的責任だなどと言うなら、まさに噴飯ものの議論です。
逆に言えば、現状の株式会社では経営者の力が非常に強いわけですから、社会的責任を経営者が最終的に負うというようにルール化することも考えられます。社会的責任を果たさない経営者は処罰されたり、追放されるといった形です。こうした議論がまるでなされていないことが残念です。CSRブームに乗り、愚にもつかない議論ばかりしている学者の責任も大きいと思いますよ。
奥村宏(おくむら・ひろし)氏
1930年生まれ、岡山大学法文学部卒。産経新聞記者を経て、中央大学商学部金融学科教授。2001年定年退職。
| 戦後戦記 中内ダイエーと高度経済成長の時代 | |
![]() | 佐野 眞一 平凡社 2006-06-13 売り上げランキング : 6633 おすすめ平均 ![]() ダイエーを通して戦後日本を識る 佐野眞一による中内ダイエーの総括Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「中内ダイエーの繁栄と転落の軌跡には、戦後六十年の大衆の赤裸々な欲望が、すなわち戦後消費社会の実相が、どんな統計や指標よりも鮮明な稜線となって刻みつけられている」。故・中内功氏の波瀾万丈の人生を追い続けたノンフィクション作家、佐野眞一氏はそう総括する。
本書は、本誌に連載され好評を博した『カリスマ』(書籍は日経BP社及び新潮文庫から発売中)の続編である。過酷な戦争体験を経て神戸闇市で商いに目覚め、ダイエーの驚異的成長を担い、我が国最大級の経営破綻を招くまでを描いた『カリスマ』に続き、本書では産業再生機構入りした前後の動向から中内氏の他界までを追う。併せて、元セゾングループ代表、堤清二氏との対談や思想家、吉本隆明氏が寄せた評論などから、中内ダイエーを通して見える日本社会の姿をあぶり出す。
著者は記述の中で繰り返し「中内ダイエーをつぶしたのは、小泉純一郎氏と竹中平蔵氏だと思っている」と述べる。水面下の政治的駆け引きが、カリスマ商人を葬ったのだと示唆する。原稿を寄せた1人、エッセイストの中村うさぎ氏は、安売りダイエーの拡大戦略が幻想だったとすれば、それは国民が夢に描いた“賢い消費者像”も虚像であったのだと大胆に総括する。
| 2015年アジアの未来―混迷か、持続的発展か | |
![]() | 日本貿易会「2015年アジア」特別研究会 東洋経済新報社 2006-06-01 売り上げランキング : 12637 おすすめ平均 ![]() うならせる刺激的アジア像Amazonで詳しく見る by G-Tools |
アジア経済の今後10年の動きを総合商社の視点から子細に描き出した書。日本貿易会が昨年度事業の1つとして行った特別研究の成果であり伊藤忠商事、丸紅、住友商事、三井物産のアナリストらが執筆に当たっている。
まずは小説風のシミュレーションから始まる。上海、ホーチミン、サハリンを舞台に、2015年の商社マンがどのような事案に奔走しているのか、いかなる問題にぶつかっているのかを分かりやすく描く。「世界の工場」中国が際限なく生み出す製品は世界市場で供給過多となり、中国は慢性化するデフレと過剰な公共投資に苦しんでいる。ベトナムでは国家規模の植林計画に、極寒の地サハリンでは石油に代わるエネルギーとしてのガス田開発に、我が国商社が深く食い込んでいる。
中国の急速な発展は10年後のアジアに何をもたらすのか。著者らは予想し得る原油価格の高騰や人民元の切り上げに加え、貧困層の激増による数千万人単位の大量難民の流出にも、周辺諸国は備えよと警告する。
急速な発展を遂げているかに見えるもう1つの大国インドについては、貧困問題と農業基盤の整備が「1990年代後半から政策面でなおざりにされている」と指摘。水面下のリスクを冷静に分析しつつ日本の取るべき道を示す。
| ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代 | |
![]() | ダニエル・ピンク 大前 研一 三笠書房 2006-05-08 売り上げランキング : 271 おすすめ平均 ![]() ストリート・スマート力を鍛える本 ボーダレス時代に個として生き抜く処方箋 相変わらずのオーマエさんAmazonで詳しく見る by G-Tools |
高度情報化社会に適応した知識労働者だけが闊歩した時代は間もなく終わり、代わりに「コンセプト創造」や「感性」に長けたビジネスパーソンが悠々自適に暮らす社会が到来すると予見する書。例えば医師や弁護士、教育者、プログラマーの仕事は代用が利くと言う。発展途上国の低賃金の労働力で補える作業、高度なコンピューターやロボットにできる作業、そして反復性のある作業の3つは、欧米及び日本など先進国において、年々その価値を失っていくであろうと指摘。本書の翻訳を手がけた大前研一氏もこの見方に賛同し、その兆候が今もあちこちに見て取れると自身の見解を披露する。
著者は「専門力」ではなく「6つのセンス」を磨くことに専念せよと言う。具体的に「デザイン、物語、調和、共感、遊び、生きがい」というキーワードを挙げ、それぞれに長けた者たちが先端ビジネスを切り開いている事例を示す。これは、現在日本でも話題になっている「右脳ブーム」にビジネスのエッセンスを加えた提案とも言える。
「見たままを絵に描く人」と「頭の中を絵にする人」の違いを分析して説くなど、読み手が身近に感じられる話題やクイズ形式のトレーニングをふんだんに盛り込みながら、6つのセンスを磨く法を指南していく。
| 重役室のサル 人間も組織も、こんなに「動物」だった | |
![]() | リチャード・コニフ 光文社 2006-06-23 売り上げランキング : 971 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
あなたが会議室に向かっていると、みんなから恐れられている事業部長が同じ会議室を目指して歩いてきたとする。次の3つから行動を選ぶとすれば、あなたはどれを選ぶだろう。
1「目を伏せて、部長を先に会議室に通す」2「不自然になるのを避け、会議室に急ぐ」3「挨拶して脇により、部長に道を譲る」
正解は1である。チンパンジーと同様、上位者に敬意を表することを怠れば大変な事態になる。
本書は最新の動物行動学の見地から、人間のおかしい生活を描くというユニークな手法を取った。著者のリチャード・コニフは全米雑誌賞や最優秀テレビ台本に与えられるワイドスクリーン賞を受賞した著述家で、スタントカーレースや探検など、幅広い活動領域を持つ。
「ヒトは生物であり、ヒトの遺伝子は99%までチンパンジーと同じ。進化の過程で継承されてきた本能的欲求や性質がある。こうした事実を受け入れるなら動物の世界に教えられることは多く、動物界の教訓を生かせば職場のジャングルも快適な環境に変えられる」と著者は主張する。数々の研究報告を基に書かれた具体例は興味をそそられる。
例えば「地位の高いチンパンジーたちは、共謀して潜在的ライバルを蹴落とそうとする」「霊長類の毛づくろいは社会的ネットワークづくりの手段である。争いが起こったときは、毛づくろいをしあう仲間が真っ先に援護にかけつけてくる」といった動物界の習性を読めば、社内政治に長けている上司やゴマすりの同僚など、誰しも頭に浮かぶ職場の顔があるだろう。
一見、人間は他の動物と比較できないほど拡散し、複雑な社会を作っているように見えるが、実は動物の本能や習性をしっかりと受け継いだ遺伝子を持っているようだ。
どの職場でも、他人との日々の格闘やフラストレーションなど、常識では考えられないばかばかしいことが多く、仕事そのものよりも人間関係に疲弊している人は多い。進化に関する心理学や人間行動生態学はまだ新しい学問領域だが、自分も、また、周囲の人間も動物であると承知し、学問の成果を実践に結びつけることで、職場でも賢く立ち回れる。
これによって、人間にだけ与えられた理性の力を結集させ、職場に渦巻く喜怒哀楽の波を優雅に乗りこなせる。自分だけが動物園の檻の外からのぞき、職場の動物を観察しているような、密やかな楽しみを抱かせてくれる1冊である。【評者 東洋大学経済学部教授 白石真澄】
| 老いの超え方 | |
![]() | 吉本 隆明 朝日新聞社 2006-05 売り上げランキング : 5745 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「現在のわたし自身を顧みれば、自分の身体を素材に考古学の発掘をやっているような気がしている」。そう語るのは今年で82歳になる思想家、吉本隆明氏である。戦後の文化や政治的論争に影響を与えてきた“知の巨人”も、老いと持病によって身体の自由を奪われ、今では歩くこともままならない。しかしその精神はどうか。
タイトルの通り、「老いを超える」が本書のテーマである。身体の不自由さを他人事のように見つめ、時にはそれを楽しみながら自由な心で生きる吉本氏の姿がそこにはある。身体は衰えても意思が機能する老人は「超人間」だと言い、その境地に至ったからこそ見える社会や政治、宗教、文学について大いに語る。老いを悲観的に捉えがちな人々に送るエールでもある。
| 資源インフレ―日本を襲う経済リスクの正体 | |
![]() | 柴田 明夫 日本経済新聞社 2006-04 売り上げランキング : 19202 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-柴田明夫氏[丸紅経済研究所所長] 食と燃料の連動が始まる-『資源インフレ 日本を襲う経済リスクの正体』
資源価格が高止まりを続けるメカニズムを多面的に分析、解説した。食糧との連動、プラントの人材不足など、高騰の意外な側面が明らかに。省資源への対応で日本はアジアのリーダーになるべきと説く。
――小麦や大豆などの食糧を、鉄や原油などの工業原料と同じ「資源」として論じている点がユニークです。
本来、食糧も、鉄や原油などのエネルギー鉱物も「資源」であることに変わりはありません。ただ、エネルギー鉱物は再生が不可能で、食糧は再生が可能と認識されてきたことから、これまで市場は分かれていました。
ところが近年、その食糧も「再生不可能で有限な資源」であるとの認識が広まりつつあります。世界的な人口増加と中国などの経済発展で需要は旺盛なのに、地球温暖化の影響などで、食糧生産に必要な耕地や水が不足し、供給に影響を与え始めた。「土地も水も無尽蔵ではない」という現実が価格形成に直結しています。
さらに、原油価格の高騰で、エネルギー市場でも食糧の需要が生まれている。トウモロコシがエタノール原料に、大豆がバイオディーゼル原料として使われるといった具合に、食糧を2つの市場で取り合う構図が生まれています。もう別々の市場として論じることはできません。事実、世界の食糧在庫率は2000年に3割を超えていましたが、来年の在庫率は15.7%。1973年に食糧危機が起こった時の15.3%に近い。来年は要警戒です。
――高値が続いているエネルギー鉱物では、生産者の人材不足が増産のネックになっていると指摘しています。
生産を増やそうにも、オイルメジャーで生産設備を運営するエンジニアが足りないのです。90年代、産業の花形はIT(情報技術)や金融で、“オールドインダストリー”である鉄や石油に就職する動きは少なかった。その反動です。現在は採用を強化していますが、育つのに4年や5年はかかる。この間はタイトな需給が続きます。
生産設備の開発に対しても供給者の腰が重い。原油価格が低迷した80年代以降、エネルギー鉱物の業界で再編が進み、資源メジャー化が進んでいます。せっかくプレーヤーの数が減ったのに、生産能力を増やして価格が暴落したら元も子もないというわけです。
「回収に10年もかかる投資をするくらいなら、株主に還元しろ」という資本市場の声も強まっていますし、産油国なら「国民に利益を還元しろ」という要望もあります。加えて、前述したように人材もいない。だから川上への開発に資本の全部を振り向けるわけにはいきません。
――ということは今後もエネルギー鉱物の高値は続くことになりますね。もう一段の高騰はありますか。
今は「安い資源」から「高い資源」へと価格がシフトしていて、その均衡点を模索している局面です。原油は1バレル当たり70ドル台まで来たことで、インフレ懸念もあって、この辺が落ち着きどころという気がします。非鉄金属はマネーゲーム化して価格が上ブレしていましたが、アルミなどの例外を除けば、均衡点を探る展開になっています。鉄も需要が抑制され始めた。
いずれにせよ、資源高止まりでダメージが大きいのは、経済が発展途上のアジアです。その中で日本は省エネ・省資源への取り組みでは一日の長がある。日本は石油ショックを契機にエネルギー効率の改善を続けた結果、現在は原油の使用効率が当時の2倍になっています。資源価格の下落を待つのではなく、資源の高価格を前提とした社会の変革に国を挙げて取り組み、新エネルギーの開発などを通じて、アジアでリーダーシップを発揮すべきです。
柴田明夫(しばた・あきお)氏
1951年生まれ。76年東京大学農学部卒業後、丸紅入社。鉄鋼第一本部、調査部、丸紅経済研究所副所長などを経て、2006年より現職。
| 黄金の人生設計図―人生九〇年をどう生きるか | |
![]() | 榊原 英資 中央公論新社 2006-06 売り上げランキング : 42513 おすすめ平均 ![]() タイトルはちょっと違う。もっと社会経済論的Amazonで詳しく見る by G-Tools |
旧大蔵省では要職を歴任し、現在は早稲田大学教授・インド経済研究所所長に就く榊原英資氏。また、様々なメディアを通じて、日本の社会状況を憂える発言や改革への提言を積極的に行っている。本書は、団塊世代が一斉退職を迎える今を「戦後日本の終焉」、さらには「500年に1回の大変革」の時代と捉え、我々が取り組むべき「人生の再設計案」を示すもの。
まずは市場原理主義や利益至上主義こそが経済の規範であるという考えが錯覚であったことを認めよと言う。それは、ここ10年の社会を振り返れば明らかであり、否応なく訪れるポストモダン社会では、知識や技術、情報こそが企業と人の繁栄をもたらすと強調する。言うなればそれは「人本主義」であり、古い組織を定年退職する今こそ、プロフェッショナルとしての個を確立し、社会貢献を果たすチャンスであると団塊世代に呼びかける。
ポストモダン化は企業にとどまらず、これまでの家族や地域社会のあり方をも劇的に変えると言う。知識や技術、すなわちそれを生み出す「人」こそが国家の宝であるならば、教育はどうあるべきか、新たなコミュニティーや文化はどう醸成されるべきか。それらについて、著者は豊富な経験から斬新な“設計図”を描き出し我々に示す。
| ハゲタカの饗宴 | |
![]() | ピーター タスカ Peter Tasker 田村 義進 講談社インターナショナル 2006-05 売り上げランキング : 2880 おすすめ平均 ![]() 物語としては「読ませる」ものの・・・Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本通のマーケットアナリストとして人気を誇る著者が、巨大なマネー市場の暗部を描いた金融小説。国策銀行の破綻や外資系投資銀行の暗躍、関係者の不可解な死や事件の背後に見え隠れする経済ヤクザの存在など、フィクションでありながらも近年日本で起きた様々な出来事を重ねて読める。難解な金融用語を極力排し、経済事件の核心に迫ろうとする主人公らと謎解きを楽しむサスペンス小説でもある。
英国の有名銀行で一時は名を馳せたマーク・ウィリアムスは、内部抗争により退職に追いやられてしまった。再起をかけて選んだ会社は日本の金融市場を虎視眈々と狙う、いわゆるハゲタカファンドであった。一方、元警視庁刑事で、今は探偵事務所所長に就くユミの元に、ある銀行マンの死の謎を追ってほしいという依頼が持ち込まれる。ファンドが関わる破綻銀行買収劇の舞台裏で進行する不穏な動きに疑念を抱いたマークと、別の入り口から同じ闇に足を踏み入れたユミ。2人は奇しくも出会い、巨大な敵に翻弄されながらも真相の解明に奔走する。
著者はまえがきで「フィクションは現実をなぞる」と言う。マネーゲームのもたらす悲劇と闇の深さは、事実報道として我々が知り得る以上に深いと訴え、現状に対して警鐘を鳴らす。
| 日本スーパーマーケット創論 内食提供ビジネスのマネジメント | |
![]() | 安土 敏 商業界 2006-05-09 売り上げランキング : 3950 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者の本名は荒井伸也氏。サミットストア(現サミット)の元社長であり、現在はオール日本スーパーマーケット協会会長など複数の要職を兼ねる。かつて執筆した『日本スーパーマーケット原論』は日本における同業態を体系的に論じた“教科書”と評価されるなど、経営者としてのみならず、同業態の理論的支柱としての信頼も厚い。
著者は「スーパーマーケットは高等動物的システムである」と表現する。その言葉を踏まえ、本書では最新のマネジメント理論及び組織論を核に据えて最強のスーパーマーケットとは何かを論じていく。キーワードは「機能的分業」だ。本部と店舗、店舗開発部門と販売促進部門、そして無数の流通経路からなる同業態の組織は想像以上に複雑であり、「なめてかかれば失敗する」と言う。機能的分業の神髄は各部門が個々の専門業務を確実にこなしながらも、1つの情報、1つのコンセプトが高等動物の血流のように瞬時に行き渡ることであると述べ、その実践法を具体的にひもといていく。
人材育成法にも触れ、いかなる部門に配属されても全社の動きを俯瞰しつつ目の前の仕事に集中できる新入社員を作れと言い、それを「オールラウンドマン」と呼ぶ。他業種のマネジメント責任者にも参考になり得る書だ。


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