メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2006年5月15日~6月5日
| この国のけじめ | |
![]() | 藤原 正彦 文藝春秋 2006-04 売り上げランキング : 143 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 滅びゆく国家 日本はどこへ向かうのか | |
![]() | 立花 隆 日経BP社 2006-04-13 売り上げランキング : 842 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「小泉構造改革によって景気は回復に転じたかもしれないが、我々はその見返りに大事なものを失いつつある。このままでは手遅れになってしまう」という論調の書が売れている。
藤原正彦・お茶の水女子大学教授は、一大ベストセラーとなった『国家の品格』に続き、『この国のけじめ』(丸善丸の内本店4位)の中でも今日の日本人のありさまに、「No」を突きつけている。市場原理信奉者が大手を振って歩く社会は「無慈悲の世界であり、古来より我々の有する美質、惻隠の情の耐えられるものではない」と怒りをあらわにする。多くの日本人が羨望の眼差しを注ぐIT(情報技術)寵児についても、「虚業により億万長者となった小型ホリエモン」が増殖しているにすぎないと手厳しい。
評論家の立花隆氏は『滅びゆく国家』(丸善丸の内本店23位、旭屋書店本店5位)の中で、「この国は今、百年に一度あるかないかの危ない大きな曲がり角を曲がりつつある」と警鐘を鳴らす。弊社の情報ウェブサイト「nikkeibp.jp」の人気コラム「立花隆のメディア ソシオ-ポリティクス」(連載継続中)を再構成した書であり、小泉改革や憲法問題、中国問題に見え隠れする“病巣”に、圧倒的な取材力でメスを入れる。
| 会社はムダの塊だっ!―まだまだやったもの勝ちのコスト激減策100事例 | |
![]() | 佐伯 弘文 幻冬舎メディアコンサルティング 2006-03 売り上げランキング : 642 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者は神鋼電機社長。2000年6月の就任時、会社は7年連続赤字で倒産寸前だった。再建のため「ムダ撲滅運動」に注力。本書で一部を紹介する。
部門ごとに加入する各種団体への参加を見直し、年会費を削減する。ビル指定の清掃業者との契約を解除し、パートを採用する。外注していたカタログを内製化し、必要な時に必要な部数を出力する…。あらゆるムダの排除で、2005年度には年間30億円のコスト削減を実現。業績を立て直した。
著者は、社員もこうしたムダに気づいていたが、それが自分の懐に跳ね返るとの意識が欠如していたと振り返る。ムダの撲滅が「自分のため」と理解してからは、自主的な改善改革が進んでいるという。多くの企業で、見習うべき点がありそうだ。
| 世界デフレは三度来る 上 | |
![]() | 竹森 俊平 講談社 2006-04-21 売り上げランキング : 5125 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 世界デフレは三度来る 下 | |
![]() | 竹森 俊平 講談社 2006-04-21 売り上げランキング : 6962 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
19世紀後半から現代までの経済政策の歴史を振り返る。インフレ、デフレの変動に焦点を当て、財政、金融政策でその変動を管理するという思想がどのように深まったのかを考察する。
19世紀末、世界の主要国は金本位制に転換した。その過程で「金の分捕り合戦」が生じ、世界的なデフレに陥る。このデフレは南アフリカで金鉱が見つかり、マネーサプライ(通貨供給量)が増加したことで解消された。著者は、マネーがデフレ不況を解決するカギになった明確な例だと指摘する。
一方、日本は西南戦争の戦費調達のために、不換紙幣の大量増発に追い込まれ、戦争後にはインフレに悩まされた。著者は高インフレ解消のため、緊縮財政で支出を大幅削減することを目指した松方正義と、外国からの借金で財の供給不足を補うことを目指した福沢諭吉、大隈重信らの経済論戦を解説。明治時代のリーダーが先端の経済認識を持っていたことを評価する。
21世紀初頭に「来る」と喧伝された3回目の世界デフレはどうやら回避されそうだ。米政府と連銀が提携して強力な景気刺激策を実行したのがその要因。本書は構造改革か、景気対策かと思い悩み、どちらも中途半端にしか実施しなかった日本との差異はどこにあるのか、分析を試みる。
私の部下はイギリス人―アングロサクソンが世界を牛耳っているわけ
デンゾー高野 (著)
最近、定年退職するまで日本メーカーの英現地法人社長を務めた著者のエッセイ。英国人従業員、在英日本人らとの関わりの中で見聞きした英国文化をユーモラスに描く。
中心となるのが「人種差別」の話。英国は、もともと「ジャップ」という差別語が作られた国という説があるくらい東洋人蔑視が浸透しているという。社長だった著者も、裏では人種差別的な陰口にさらされた。海外の駐在員は、必ず経験するであろう人種差別に対して、ある程度の免疫や対処方法を身につけることが、快適な住環境や親切な医者を見つけるのと同じくらい重要と指摘する。
「訴訟」にも度々遭遇した。著者は、販売実績の上がらないセールスエンジニアに対し、やる気が出るよう、個人的にいろいろと取り計らっていた。だが、結果が出ず、結局、解雇に至る。その途端、その社員は「不当に高い販売ターゲットを設定し、過剰なプレッシャーを与えた」として著者を訴えたという。それに対し、会社の弁護士は限りなく真実に近い「騙し」の手も取り入れて対抗し、勝利した。
英国人は複雑怪奇で、裏の裏をかくようなところがある。日本人の性質、習慣とは大きく異なるアングロサクソン文化の一端がうかがえる。
| 晩年の美学を求めて | |
![]() | 曽野 綾子 朝日新聞社 2006-04 売り上げランキング : 714 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人は晩年をどのように生きるべきか。朝日新聞社「一冊の本」で連載したエッセイを加筆修正し、収録した。
晩年に美しく生きている人とは、「できればごく自然に、それができなければ歯を食いしばってでも、一人で生きることを考えている人」だとする。最近は依存心の強い高齢者が目立つ。年を取ったら、できないことが出てくるのは当然だが、生活を単純化したり、手数料を払ってしかるべき人にやってもらうことを考えるべきである。人に頼むお金がなければ、したいことを我慢して、諦める。「分相応」を知ることが重要だと指摘する。
精神の老化度合いを測るには、「くれない」と言っている頻度を調べるといいとも記す。配偶者が、息子や娘が、嫁や婿が「してくれない」と連発する年寄りは多い。経験豊富な高齢者こそ、他人が自分の思う通りにやってくれないことを早々に悟るべきだ。日本でボランティア活動が広がっているのは、人のために尽くすことが幸福感につながると実感する人がいるから。人からもらうだけでは不満が生じ、与える立場になれば満足感を得る。精神的に壮年でいられるか否かは、この点を理解するかどうかにかかっていると説く。
豊かな老後、豊かな人生について、大いに考えさせられる1冊である。
| ビジネスマン必携!デキる人の数式 | |
![]() | 中島 孝志 廣済堂出版 2006-03-27 売り上げランキング : 3716 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
秀でた経営者の頭の中には、世の道理を瞬時に読み解く「数式」が詰まっていると言う。経営コンサルタントとして活動する著者が、それらの「数式」を集めて解読する。まずは“経営の神様”松下幸之助氏の「知恵=(知識×熱意)+(体験&経験)」を例に挙げて、熱意が「0」なら知識も「0」だと、「かけ算」の妙味について説く。
普通の経営者なら「ヒット商品×(時間&回数)」を「=儲かる」として喜ぶところを、セブン&アイ・ホールディングスCEO(最高経営責任者)の鈴木敏文氏は「=飽きる」と捉えて次の手を打つ。また、ある企業買収の達人は「1300円<名刺100枚のコスト」で有望企業を見抜く。「名刺に無駄金を費やすのは、買収後に合理化の余地がある証拠だ」と指摘する。
| マンガに教わる仕事学 | |
![]() | 梅崎 修 筑摩書房 2006-03 売り上げランキング : 2286 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-梅崎修氏 [法政大学キャリアデザイン学部専任講師] 「成功への憧れ」は不要-『マンガに教わる仕事学』
ビジネスマンガ40作品に登場する40人の生き様を検証し、職探しや会社勤め、定年後などシーン別に仕事人生を考えるヒントを探る。主人公の言動を読み解き、その経験を学ぶことの重要性を説く。
――仕事学を考える題材として、なぜマンガに着目されたのでしょうか。
昔は大会社に入りさえすれば、後は電車に乗ったようなもので、レールの上を走るだけでした。しかし、今は違います。自分で運転する時代ですから、自らキャリアを意識しないと、いい働き方を見つけ出せないと私は思っています。現状に不安を感じているビジネスパーソンは「キャリアアップの仕方」「成功する手法」などが書かれた一般のビジネス書を読み、解答を得たと皆は安心するわけですが、往々にして憧れだけで終わってしまうのです。
多くの人にとって必要なのは、キャリアアップ志向ではなくて、「自分がどう生きるか」を考えることではないでしょうか。特に若い人はどうしても今の仕事だけに目が向いてしまいがちですが、時々は10年後や20年後、定年後の自分に思いを馳せることは大切です。『釣りバカ日誌』『総務部総務課 山口六平太』といったビジネスマンガには、日常の仕事生活に身近な出来事が描かれており、ヒーローらしいヒーローもいません。ここに登場する普通に生きている人の仕事の在り方を読み解くことで、アップではないキャリアを提示できると考えたわけです。
――終身雇用の崩壊など労働環境が大きく変わっていることが、キャリアアップ願望を後押ししています。
ビジネスマンガの舞台となる職場には、昭和30年代の雰囲気が流れています。一方、現実のビジネス社会は成果主義の浸透や終身雇用の崩壊で大きく様相が変わりつつあります。そこで、世の中の変化に合わせて、自分も変わらないといけないと主張するのがビジネス書でしょう。
では、本当に皆、競争したいのでしょうか。ほのぼのとした職場が出てくるマンガをビジネスパーソンが読んで「ああ、いいな」と思うのは、自分の職場もそうであってほしいという願望があるからではないでしょうか。考えてみてください。例えば、社員とパートでは、給料が違います。そして、パートの中には、社員にキャリアアップしたいと思っている人もいるでしょう。でも、それだけで会社が成り立つわけではありません。立場を超えてお互いに協力した結果、店が良くなって売り上げが伸びればうれしいという気持ちは誰しも同じでしょう。
ヒトは何を喜びに働くのかを見直してみませんか。業績主義が徹底された職場になればいいのか、そうであっても協力や信頼を重視すべきととらえた方がいいのか。格差社会だなんだと言っても、仕事には変わらない部分もあるのだから安心しようと、私はビジネスマンガを通じて訴えたい。
――ご自身、マンガはお好きですか。
はい。マンガは大好きです。1980年代半ばに全盛期を迎えた「少年ジャンプ」に始まって、ずっとあらゆるマンガ雑誌を読んでいます。ただ、学生時代はビジネスコミックだけは「何が面白いんだろう」と不思議でした。内容に実感が伴わず、理解できなかったのです。それが、労働経済学を研究するようになって、改めて読んでみると、職場の現場に関する面白い話が出ているじゃないかと気がつきました。
今は、書店でビジネス関連のマンガを見つけると、内容チェックのために初巻だけを購入しています。学者としてはとても参考になりましたが、悲しいかな、純粋な読者としてはマンガを楽しんでいませんね。
梅崎修(うめざき・おさむ)氏
1970年東京生まれ。2000年に大阪大学大学院経済学研究科博士課程修了。専門は労働経済学、人事労務管理論、キャリア管理。
| アスピレーション経営の時代 | |
![]() | 江幡 哲也 講談社 2006-04-21 売り上げランキング : 12700 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者はIT(情報技術)系ベンチャー企業「オールアバウト」の創業者。昨年にはジャスダック証券取引所への上場を果たした。独立前のリクルート社員時代には、新規IT事業を次々に立案し、「リクルートの立ち上げ屋」と呼ばれた人物でもある。本書は、自らの経営哲学と「オールアバウト」創業の舞台裏について余すところなく語ったもの。昨今注目を集めている「IT系若手経営者」の胸の内を知るうえで、興味深い1冊となった。
自らの経営哲学の柱として「アスピレーション(志)」を挙げ、「企業経営は世直しのためにあるのだ」とけれん味なく言い切る。同社が提供するのは社名の通り様々な事象についてユーザーが手軽に知識を得られるインターネットサービスであり、特徴は各テーマに精通する専門家が案内人となる点だ。既存のメディアや情報サービスとは異なり、案内人の「伝えたい、知ってほしい」という思いで綴られた子細な情報が人気を呼んでいる。
現在では月に1500万人が利用すると言われるこの新規事業に込めた著者の「志」について、ビジネスを勝ち抜く秘訣を交えつつ、自ら解説を加える。日本人の情報リテラシーが高まれば暮らしは潤い、さらなる起業機会が創出されるであろうと予測している。
| シュガーマンのマーケティング30の法則 お客がモノを買ってしまう心理的トリガーとは | |
![]() | ジョセフ・シュガーマン 佐藤 昌弘 石原 薫 フォレスト出版 2006-03-08 売り上げランキング : 281 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者は米国のダイレクトマーケティングの世界で大きな成功を収めた人物だ。カタログ販売やテレビのショッピング番組で売り上げを左右するのは言葉の力だと言う。たった1つの表現、説明の順序、力点の置き方を工夫するだけでセールスの成績は劇的に上がると言い、そのノウハウを30のポイントに絞って明かす。また、通信販売のみならず、人的販売の現場でも応用できるように解説を加えていく。
手ごわい顧客の心を動かし、ついには購買を決めさせてしまう「心理的トリガー(引き金)」の存在を見極めろと指南する。“引き金”の1つが「一貫性の原理」だ。ある商品本体と付属品を売りたい場合、まずはシンプルに本体のみの購入を促せという。セットの価格には二の足を踏んでいた顧客も、本体を買うと決断した瞬間から一貫した購買行動を取ろうとする心理が働く。結果として「ついで買い」には寛容になると解説。また、商品に欠点がある場合は、最後に明かすのではなく、真っ先に伝えてしまうと案外納得してもらえると言う。
そのほか「顧客はまず商品を感覚で納得し、その後に理屈を求める」「その商品を既に所有する人々を魅力的に語って、『帰属欲求』を満たしてやれ」など、ユニークな助言が続く。
| 孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生 | |
![]() | ロバート・D. パットナム Robert D. Putnam 柴内 康文 柏書房 2006-04 売り上げランキング : 624 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書はハーバード大学教授である著者が、米国における「社会関係資本」の衰退について論じた書である。
「社会関係資本」とは、市民が自発的にコミュニティーを形成、あるいは参加し、金銭的・物質的な見返りを求めることなく活動する社会的絆を指す。経済行為に関わる「物的資本」や主に高等教育に関わる「人的資本」とともに、豊かな社会づくりには不可欠の財だが、「社会関係資本」を体系的に論じた研究者、書物は欧米でも極めて少なかった。
善意の米国市民が育んだ「社会関係資本」は、宗教団体や労働関連組織からPTAや社交クラブといったものまで社会の隅々に根を張り巡らしてきた。ボウリング場には誰でも参加できるリーグが存在し、ともにゲームに興じれば人種や年齢、職業を超えた絆が生まれ、“愛他主義”に基づく互助活動が行われていた。今ではそれが失われ、黙々と「孤独なボウリング」に興じる市民が増えたと著者は憂える。
本書では様々な統計を読み解きながら、「善意のコミュニティー」の生成と崩壊の歴史を丹念に追う。伝統的な家族構造の衰退や、企業の巨大化、グローバル化の影響を負の要因として挙げるなど、日本の社会にとっても、見過ごせぬ教訓を提示している。
| 気候変動 +2℃ | |
![]() | 山本 良一 Think the Earth Project ダイヤモンド社 2006-04-07 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
地球の平均気温が工業化以前よりも2度上昇したら、気候変動は人間の手に負えず、社会や生態系に破滅的な影響を与える可能性がある――。世界の研究者が憂える「+2℃」の境界線を今のままでは2028年には超えてしまうという結果予測を、日本が誇る世界最大規模のスーパーコンピューター、「地球シミュレータ」がはじき出した。
本全体の右ページには、「地球シミュレータ」が描き出した1950年から2100年までの3年ごとの地球平均気温を示すCG(コンピューターグラフィックス)画像を掲載。パラパラとめくることで変化のすさまじさを実感できる。海面水位の上昇による洪水やマラリア患者の増加を手をこまぬいて待つのではなく、今こそ英知を結集すべしと訴えて、解決の具体策を提案する。
| サザエさんと株価の関係―行動ファイナンス入門 | |
![]() | 吉野 貴晶 新潮社 2006-02 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-吉野貴晶氏[大和総研投資戦略部次長] 安易な投資家への警鐘-『サザエさんと株価の関係 行動ファイナンス入門』
サザエさんの視聴率が上がると、株価は下がる。株価を動かす意外なファクターを、身近なテーマから解き明かす。株式投資を安易に考える個人投資家への警鐘でもある。
――サザエさんの視聴率のほか、「イヌの人気が高まると株価も上がる」など、人々の身近な行動と経済の意外な関係を、独自の視点でひもといています。
天気が良いと投資家の気分が上向くので株価が上がる、という晴天効果は、過去のデータを分析する限り、実際に存在します。インフルエンザや花粉症の流行する時期、梅雨時などは逆の現象が起こります。
面白いのは、サンタクロースラリーという現象です。日本の12月24日から年末の30日まで、過去10年に東証株価指数(TOPIX)が上昇した確率は何%だと思いますか? 何と100%です。一般的には、クリスマス気分で盛り上がるのと、悲観的な投資家は年末の休日前にポジションを手仕舞いするため、市場に楽観主義者しかいなくなるから、と言われています。
――サザエさんの視聴率と株価はどのような関係なのですか。
サザエさんの視聴率と株価の推移を調べてみると、2003年以降、相関係数で0.86という極めて高い逆相関の関係がありました。これは2005年の1カ月間のニューヨーク株式相場とTOPIXの相関性を上回ります。
まず、日曜夕方6時半のサザエさんを自宅で見るということは、在宅率が高く、外食など消費をしないことが考えられます。また、休日に外に出る気もしないというネガティブな投資家心理も想像できます。必ずしもこれですべて説明できるわけではありませんが、株価は意外に、投資家の微妙な心理で動くものです。
――なぜ今、このような話題を取り上げたのでしょう。
経済というと難しく考えがちです。株式市場も一見複雑で、得体の知れない世界と思いがちです。でも、身近な動きをつぶさに見ていくと、人間の気持ちや季節といった情緒あふれる世界と意外に関係があるものです。今回はそれを調べようと思ったのがきっかけです。それに身近な話題なら、幅広い人に興味を持ってもらえますから。
経済の分析に、こうした人間の心理や行動を取り入れる手法を、「行動ファイナンス」と言います。従来はややこじつけのような見方もされましたが、2002年にこの理論の第一人者がノーベル経済学賞を受賞して注目されました。日本でも研究が広がっています。
本書の狙いはもう1つあります。個人投資家への警鐘の意味合いです。最近では株で1億円儲けた、などの話題につられ、株式投資を始める個人も多いようです。中には、株価の動きを見るチャート分析すら行わず、有名人のブログに載った銘柄というだけで買う人もいます。それはそれでいいのですが、儲かるから楽しい、ではなく、もっと世の中を分かったうえで投資をしてほしい。そんな願いもありました。
――今後の株価はどう見ますか。
企業業績は堅調ですが、金利の上昇懸念や原油価格の高騰などもあります。個人によるインターネットを使った株式売買もブームの様相となっており、何か引き金があれば調整局面に向かうのではないでしょうか。
さらに、行動ファイナンスで見ても、気がかりなことがあります。実はサザエさんの視聴率が昨年末から上がっているんです。この理論が正しいとするならば、株価は徐々に調整局面、もしくは下落するのですが…。果たしてどうなりますか。
吉野貴晶(よしの・たかあき)氏
1965年埼玉県生まれ。筑波大学大学院を修了し、大和総研に入社。様々な統計データを定量的に分析し、投資戦略を立案する第一人者。
| 幸せを奪われた「働き蟻国家」日本―JAPANシステムの偽装と崩壊 | |
![]() | カレル・ヴァン ウォルフレン ベンジャミン フルフォード Karel Van Wolferen 徳間書店 2006-03 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「小泉純一郎政権は自衛隊と日本の貯金を米国に与えようとしている」「日本社会のシステムの下では人間は幸せになれない」など、過激な日本批判で名を馳せる2人の外国人論客による対談集。ベンジャミン・フルフォード氏はテレビ出演なども多いフリージャーナリスト。カレル・ヴァン・ウォルフレン氏は知日派として知られるアムステルダム大学教授であり、ベストセラー『人間を幸福にしない日本というシステム』の著者でもある。
フルフォード氏はまず、小泉政権による構造改革の成果を真っ向から否定する。民営化や規制緩和は「官の保護」の隠れ蓑に過ぎず、実際には既得権益を有する「見えない役所」が肥大化しているだけだという見方を示す。ウォルフレン氏も「小泉内閣は当座しのぎであり、アマチュアの仕事しかしていない」と苦言を呈する。今の米国については、「もはや対立する超大国がなくなって外交政策にも真剣さを失い、根拠のない復讐心と世界支配を目指す狂気の構想に突き動かされている」と批判。米国に寄り添う日本の政治に対しては、未成熟な民主主義や官僚支配の弊害など、まずは自身の手直しを優先せよと論じる。ほかにも金融、ヤクザ、建設業界の悪しき慣例を例に挙げ、歯に衣着せぬ物言いで斬る。
| アメリカ型資本主義を嫌悪するヨーロッパ | |
![]() | 福島 清彦 亜紀書房 2006-02 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
政治、経済、大衆文化などいずれの側面においても米国追随の傾向が顕著な我が国のあり方に一石を投じる書。著者は野村総合研究所ヨーロッパ社長、主席エコノミストなどを経て、現在は立教大学で教壇に立つ。日本人がこれまで“西欧”と一括りにしてきた文明は今、欧州と米国の2つに分裂してしまったと言う。欧州は資源循環と安定成長を、片や米国は世界に弊害をもたらす金融崇拝と成長至上主義を選んだと言い、我が国がどちらと手を取り合うべきかは明白だと論じる。
2004年に欧州連合(EU)が採択したヨーロッパ憲法については、「西欧文明が進化して新段階に入ったことを示す画期的なもの」と解説。例えば、「中世に戻ったようにキリスト教信仰が高まる米国」に対して、この憲法は「長く引きずってきた宗教への狂熱から醒めた、世俗の国家であることを正式に宣言」したものだと評価する。
福祉国家を目指すか否かの違いも両者の間では決定的だと言う。成長至上主義の御旗の下、小さな政府、市場自由化の道をひた走る米国を相手に、今の欧州には同じ土俵で戦うつもりがないと解説。軍事力や経済の国際競争力で米国に見劣りしても、次代の繁栄を担う正当性は我にありという、覚悟と誇りが欧州にはあると述べている。
| 成功する会社の「女性力」 | |
![]() | 梅森 浩一 ソフトバンククリエイティブ 2006-03-07 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
団塊世代の一斉退職や少子化によって生じるであろう労働不足を補う切り札として、女性の労働力に注目が集まっている。チェース・マンハッタン銀行、ソシエテ・ジェネラル証券東京支店などで人事部長を歴任後、現在はコンサルティング業に就く著者が、自らの体験を基に「女性が力を発揮しやすい会社」について論じる。
「いま仮にあなたが『できない部下』――しかも『男性』を持っているとしたら、なぜもっと優秀な女性や外国人の部下を持とうとしないのか?」と問う。「まさか“ハーレム”とからかわれるのが嫌だからではないだろう」と語り、「部下はできれば男性」という固定観念にとらわれた上司がいまだに多い現状に不満を漏らす。また、ある調査では「『年下の女性の上司』の下で働いている人」が500人中13.5%もいるという事実を示し、これに驚くようでは年功序列や終身雇用の文化から抜けきれていないと指摘する。
「女性力」を活用したい会社は、女性特有の「燃え尽き症状」を引き起こさない環境づくりを心掛けよと言う。「結婚や出産を経てもこの会社で働けるのだ」と思わせよと説く。また、女性が「おんならしさ」をビジネス上の武器にすることの是非についてなど、独自の調査から考察を加えていく。
| 「物語力」で人を動かせ!―ビジネスを必ず成功に導く画期的な手法 | |
![]() | 平野 日出木 三笠書房 2006-03 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人を動かすのに、「論理」をかざすだけでは限界がある。本書は、ビジネス現場では、メッセージを効果的に伝え、命令ではなく影響力で動かす「物語」を使った方法が重要になっているとして、物語法の習得術を示す。
まず、基本テクニックを説明する。優れた物語には相手を共感させ、感情移入させる力がある。「障害を乗り越えながら、願望の実現を目指す」というのが基本の型。誘因、紛糾、危機、山場、解決という5つの変化を効果的に見せることも重要になる。また、その場の会話などをリアルに再現すると、聞き手は体験を共有でき、印象に残りやすいと指摘する。
応用編では、新製品リリースの作り方、ビジョンの伝え方など、物語法の実践を実例を挙げて解説する。
| 新しきこと面白きこと―サントリー・佐治敬三伝 | |
![]() | 廣澤 昌 文藝春秋 2006-03 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-廣澤昌氏[コピーライター] 消費者を怖がるな-『新しきこと 面白きこと サントリー・佐治敬三伝』
――題材は自分が勤めていた会社のトップ。書き手として、距離感を保つのが難しかったのではないですか。
世に最初に出る佐治敬三の評伝ですから、彼の人生をできるだけ正確に伝えることを意識しました。ただ、評伝である以上、正確に書くだけでは読み物にならない。ですから、「どう書いたら、佐治敬三という人物を分かってもらえるか」に心を砕きました。
そうなると対象に向き合う姿勢がおのずと定まってきます。サントリーで宣伝を手がけていた頃に「角瓶」や「山崎」などの商品広告を作っていた時と同じ。誤解を招く言い方かもしれませんが、彼の生涯を“商品”として見つめ直した。そうなると迷いや妙な遠慮はなくなるものです。
商品を伝えるには、その商品をよく知る必要があります。私自身、宣伝部時代に彼の下で仕事をしたのは事実ですが、それは「広告人・佐治敬三」という一側面に触れていたに過ぎない。様々な人に会い、資料をたどるうちに、経営者として、文化人として、財界人としてなど、実に多くの顔を持ち、それぞれ第一線で実績を上げていることに気づかされました。
――佐治敬三という人物を伝える相手、想定読者は誰に設定したのですか。
サントリーのお酒と一緒に人生を送ってきた人たちです。ただ、もう1つ、意識した読者層があります。
「あなたの生涯を書きます」と佐治さんの墓前に報告し、執筆を始めたのは昨年7月でした。折しも世間は「ホリエモン」の大ブーム。私は大学で広告論を教えていますが、そこの学生たちに、皆が熱狂している人物とは違う大人の生き様を伝えたかった。「ああいう人たちとは違う生き方をしたオッサンがいたんだぞ」、とね。
佐治少年は中学時代に養子に出され、その翌年には母が他界。さらに自らも病弱で中学校を留年してしまいます。己の不遇を嘆き、失意のどん底にいた時、不遇でありながらも強く生きる主人公を描いた『次郎物語』と出合い、勇気づけられます。チャレンジ精神の塊と言われた人も、こうした葛藤を繰り返しながら、自らの器を大きくしていった。こんなエピソードを書く時、学生たちの顔がよく浮かんだものです。
――マス広告では商品が売れない時代と言われます。広告に携わってきた立場から、現状をどう見ていますか。
本書でも紹介していますが、サントリー宣伝部に在籍していた開高健さんは、「宣伝とは消費者を“口説く”こと」と表現しています。媒体がテレビであろうが、インターネットであろうが、この本質は変わりません。
確かに今の消費者は目が肥えていて、どんな仕掛けをしてもなかなか踊ってくれない。ただ、そのせいか、今はどの広告を見ても刺激が強過ぎるように感じます。刺激を競うから、かえって互いを殺し合ってしまう。メーカーは必要以上に消費者を怖がっているのではないでしょうか。
でも、消費者の変化を負の側面だけで捉える必要はないんです。例えば今、小学校で地球環境の大切さを教えるようになっていますよね。20~30年前にはなかったことです。悪い方には行っていないんじゃないですか。
その分、宣伝も、豊かな心の世界を表現すれば伝わるはずです。それこそ、佐治さんが生きていたら、「最近は心に響くものが少ないなあ」とでも言うんでしょうね。
廣澤昌(ひろさわ・まさる)氏
1943年生まれ。一橋大学卒。サントリー入社後、宣伝部に配属。同社の企業理念「人と自然と響きあう」も著者の作。現職は江戸川大学講師。
| 猪瀬直樹 道路の決着 | |
![]() | 猪瀬 直樹 小学館 2006-04-05 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
小泉改革の象徴とされた道路公団民営化。2005年10月、民営化した高速道路会社が発足するまでには壮絶な「闘い」があった。道路関係四公団民営化推進委員会委員として活動した著者が、内実を詳細に記す。
委員会は2002年にスタートしたが、民営化の組織形態などを巡って議論が紛糾。意見書(答申)は一本化できず、多数決で決める事態となり、今井敬委員長は辞任した。本書は、その裏事情を赤裸々に明かしている。
著者は、国民にとっての関心事は借金返済、料金値下げ、コスト削減であるとの信念を持ち、「上下一体論」にも、公団への税金投入にも強く反対した。2003年末、日本道路公団を民営化と同時に3分割すること、4公団の資産と債務は保有・債務返済機構が引き継ぐことなどを盛り込んだ政府・与党の「民営化の基本的枠組み」が決定した。メディアは「公団民営化は骨抜き」と批判したが、著者は「なんとか『及第』はとれた」とする。
委員の多くが辞任・欠席状態となった後も、著者は公団の膿出しを続け、偽造ハイウェイカードによる巨額損失、無駄な社宅や豪華保養所の実態、官製談合の事実を明るみにしていった。関係者との生々しいやり取りも記された、迫真のドキュメントである。
| 伸びる会社の人財力 | |
![]() | アイキュー「日本の人事部」編集部 朝日新聞社 2006-04 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
企業にとって貴重な経営資源である「人財」の活用に関して、各界の著名人の考えを紹介する。ウェブサイトで掲載した記事の中で、反響が大きかった16人分のインタビューを収録する。
この10年ほど、日本企業はこぞって成果主義を導入したが、問題が発生し、変更に至ったケースも多い。富士通の元人事部員・城繁幸氏は、「『人事部主導』の成果主義は暴走する」と主張する。人事部は、社員を評価する全社一律の「魔法の公式」を探し求めがちだが、そんな公式は存在し得ないからだ。年功序列でポストに就いた管理職に、部下を評価し、説明する能力が乏しいことも、社員の不満の種となる。管理職から先に、一般社員よりも厳しく適用するなど、企業は成果主義と上手につき合うべきと強調する。
東京大学社会科学研究所助教授の玄田有史氏は、即戦力をかき集めるような人事方針に疑問を投げかける。業績を伸ばす会社は人を育てるのがうまい。「今、職場にいる人」を大事にする感覚が重要と指摘する。また、人事部員は一人ひとりの人生を左右する仕事に「畏れ」を持って、人間味のある姿勢で社員と向き合うべきと説く。
ジャーナリスト、作家ら人事・組織論とは無縁の著名人も多く登場し、新鮮な発見がありそうだ。
| 再分配とデモクラシーの政治経済学 | |
![]() | 須賀 晃一 若田部 昌澄 東洋経済新報社 2006-03 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
デモクラシーという政治体制は、国民が望ましいと思う再分配を実現しているのか。早稲田大学が2005年3月に実施したジョン・ローマー・米イェール大学政治学部教授の講義を基に、政治学、経済学から分析する。
ローマー教授は、市場経済において、所得不平等をもたらす原因として、職業などの選好、遺産、教育投資、生まれ持った能力などの資源、運を挙げる。幾つかの国で、親の教育水準が所得分配に及ぼす影響を比較したうえで、利益集団間で発生する政治的な競争が教育政策に及ぼす影響を理論的に分析。すべての子供に平等な教育投資を行うような政策は実現しないことから、デモクラシーは平等な所得分配をもたらすものではないと結論づける。
歴史的に、政府は最低所得を保障する法律を定めたり、累進課税を適用するなどして、貧困に対応し、再分配の不公平性を解消しようとしてきた。一方で、こうした制度は個人の労働意欲などをそぎ、効率性を損なっているとの批判もある。「どんな所得分配が望ましいか」「公平と効率はどのようなトレードオフ関係にあるべきか」といった問題は、価値・規範に関係する。本書は社会契約に基づく国家の形成・役割、政治・経済哲学思想などにも触れながら、この問題を考察している。





















