メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2006年10月23日~11月13日

写真家の旅―原日本、産土を旅ゆく。
写真家の旅―原日本、産土を旅ゆく。宮嶋 康彦

日経BP社 2006-10
売り上げランキング : 21605

おすすめ平均 star
star心の中の原風景を呼び起こす

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

著者に聞く-パーソナルライフ-宮嶋康彦 氏[写真家]
空を見上げる気持ちを-

誰にでも生まれた土地、産土がある――。この思いで著者は日本中を旅する。北海道から沖縄まで38カ所、102点の写真と文章で、この国の風景を描く。長らく風景写真を撮影してきた著者の集大成とも言える1冊。

――日本の原風景のことを原日本と呼んでいます。「産土」をテーマに原日本の風景を撮影しようと思い立ったのはなぜですか。

産土という字を見て「うぶすな」とすぐには読めないと思います。見ただけで理解した人は、とうに現役を退いている世代の方でしょう。あえてこの言葉をタイトルに使い、辞書を引いてもらいたいと思いました。そこに原日本があるからです。

出生の地のことを産土と言います。そこには土地の守り神である産土神がいると、かつて生き生きと信じられていた時代がありました。日本中を撮り歩き、今では忘れられてしまった光景の中で、産土神と出会えるのではないかと思ったのです。

旅をして感じるのは、地方が疲弊しているということです。皮肉なことに、土地が疲弊して初めて、美しい山河に気づくという現象が起きている。

青森県に金木町(現五所川原市)というところがあります。太宰治の故郷で冬は毎日吹雪くような土地柄です。

人々の暮らしは難儀です。その困難さの中に、旅人としてではありますが、飛び込んでみる。雪と寒気への諦念が身に染みる。しかし、すぐに吹雪と共生する彼らの、暮らしの根っこの力強さが伝わってきます。彼らにとっての原風景と共鳴する瞬間です。そんな感動や物思いが、産土撮影の動機なのです。

――自然を撮り続ける背景に、どんな問題意識をお持ちなのですか。

もともと自然写真なんて絵はがきみたいなもので、自分の仕事ではないと思っていました。きっかけは1981年に東京から栃木県日光市の標高1500mの山間に引っ越したことです。

自然写真に目覚めて間もない頃、華厳の滝の滝つぼを目指しました。直前で怖い、恐ろしいという思いで足がすくみました。その恐れや畏怖心こそが自然信仰の始まりに通じていると感じたのです。僕は今、太古の人々と同じ畏れを共有しているのだと。こういった日本人に固有の自然観に共鳴しない限り、風景写真には深みが出てこないんですね。

以来、女性の裸、人々の暮らし、動物、花、セルフポートレート、そして都会の風景ですら、すべて自然の一部なんだという考えが自分の中で深まっていきました。

――人間が自然をすべて制御できるという発想は企業人が陥りやすい過ちです。

仏教がもたらした想像力は日本人の財産でしょう。祈れば救われるという、生活の中に根づいた自然な思想です。ただ、明治以降の近代化を境に、祈りが非合理で迷信的なものとされたところから乱開発が始まりました。

組織の中で働いている人はどこか抑圧されています。名刺を出す時に、無意識にその人の本性が隠れてしまうのでしょう。

でも、夕日や夏の雲、星空や月がきれいだと感じられる感性は、誰もが持ち合わせています。

その感性は万葉集や源氏物語にも通じます。1000年も昔に自然が奥深い神秘であると気づき、文学にまで昇華させた国は日本くらいでしょう。風景を愛でる瞬間に、我々は1000年前の人々と自然観を共有しているのです。

この本を読んで、ふと、通勤の途上で立ち止まって風を感じたり、月を見上げたりしていただけたなら、読者と1000年前の人々と僕とが一体になる、そんな美しい現象が出現するのではないでしょうか。

宮嶋康彦(みやじま・やすひこ)氏
1951年長崎県生まれ。風景写真のほかカバもテーマの1つ。著書に『誰も行かない日本一の風景』『脱「風景写真」宣言』『たい焼の魚拓』などがある。

■2006/11/13, 日経ビジネス, 75ページ

格差病社会―日本人の心理構造
格差病社会―日本人の心理構造加藤 諦三

大和書房 2006-09
売り上げランキング : 2075

おすすめ平均 star
star今の日本人に必要な事は?
star痛快な政治文化経済論

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

私は自分が理事長を務める中高一貫校で、「夢教育」と称する教育を実践している。医者でもスポーツ選手でも何でもいいから、将来なりたい職業を定め、その夢の実現に必要な学習を行わせるもので、生徒には偏差値一辺倒ではない自分なりの価値観を持ってほしいと願っている。その多様性を前提とした教育方針と、今や流行語になった「格差社会」とがこんな形で接点を持つとは不思議なものだ。

著者は、日本の格差社会は実際の経済的な格差とは無関係で、意識の問題だと指摘する。日本人は過剰なくらい競争意識の強い国民で、あらゆる分野での競争原理の導入で、他人より遅れたと感じる人が増えた結果だという。

例えば、多くの企業で成果主義が年功序列制に取って代わりつつある。年功序列はむき出しの競争意識を抑制する装置として機能していたが、「横並び」が崩れたことで、そのタガが外れた。賃金の絶対額ではなく、「他人より多いか少ないか」に強い関心が向く。

会社での地位や賃金以外にも個人が労働観を持っていればよいが、日本はそのような多様性に乏しいから、敵意むき出しの競争意識が姿をもたげ、他者への要求もきつくなる。結果的に、ストレスを抱えた人が増える悪循環に陥る。だから、まずは企業にはカウンセラーなどによるメンタルヘルス対策が必要で、国民に対する生き方の教育が求められていると説く。

現実の格差ではなく、格差を感じる意識が問題なのだという論旨には同感だ。ただ、本書では心の病にかかる教師が増加した理由も同じ構造に求めている。偏差値教育の弊害として親が学校に無理を要求することが増え、教師に負荷がかかっているというものだ。これには異論がある。

学校を経営して驚いたのだが、教師の世界には適性のない人材を排除する仕組みが不在だ。資格継続の試験もなく、努力をせずに安住の地にとどまることができる。子供のことだけを考え、行動する熱意や徳が備わっていない人材が教壇に立ち続けている。だから、大人として耐えるべきプレッシャーにも白旗を揚げてしまう。

先日も、いじめに担任教師が加担していたとの報道があった。当の教師は自分が嫌われないように、子供たちに迎合して共通の敵を作るという稚拙な行動に出た。その対象となった生徒が命を絶った。こんな教師が現場にいるのが今の教育界だ。不適格者を排除しろと言うと「かわいそう」と反論が出る。だが、そんな先生に教わる子供がいることの方が残酷ではないか。【評者 ワタミ社長 渡邉美樹】

■2006/11/13, 日経ビジネス, 71ページ

経済政策を歴史に学ぶ
経済政策を歴史に学ぶ田中 秀臣

ソフトバンククリエイティブ 2006-08-17
売り上げランキング : 8818

おすすめ平均 star
star今日までそして明日から
star意外に根深い「構造改革主義」の歴史
star「構造改革主義」の源流

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

「マクロ経済の基本書」をイメージさせるタイトルとは裏腹に、本書の主題は「格差問題の解消」という今日的なテーマだ。著者は、経済思想史を専門とする経済学者であり、長期経済停滞を脱するには、政府が市場に介入して積極的な金融・財政政策を実行すべしとするリフレ派(リフレーション=通貨の再膨張)の論客でもある。

小泉政策に象徴される構造改革主義、すなわち経済の非効率部分を淘汰し、市場の自然治癒力に頼るという方策では、格差問題を解決できないと主張。真の原因は停滞の長期化がもたらした社会の不安感であると言い、解決のヒントは過去の恐慌や経済思想家たちの言動に隠れていると説く。同時に今日の経済学者やエコノミストの主張の問題点を厳しく糾弾する。

■2006/11/13, 日経ビジネス, 71ページ

ザ・リコール
ザ・リコール志摩 峻

ダイヤモンド社 2006-09-29
売り上げランキング : 30667

おすすめ平均 star
starコンプライアンスとは何か?
star一気に読破!
star良い意味での物足りなさ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

企業の社会的責任の重さが叫ばれる一方で、組織ぐるみの法令違反やそれを隠蔽しようとする工作が次々と明るみに出ている。本書は、大手損害保険会社の顧問であり、経済小説家としても活動する著者が、自動車メーカーのリコール隠し事件と、それを巡る保険会社の対応を内側から描いたフィクションだ。今年9月には、「第3回ダイヤモンド経済小説大賞(ダイヤモンド社主催)」を受賞している。

大手自動車メーカーの主要車種「イーグル」に、使用者の安全に関わる重大な欠陥が存在することが判明した。製品を管理する部門の責任者である飯原は、外部はもちろん、社長を含む社内の人間にさえ情報を閉ざしたまま、クレームを個別に処理しようと画策する。方法は保険会社に「絶対に欠陥ではない」と告知したうえで、通常の自動車保険か、最悪でも製造物責任法(PL法)違反に対する保険(PL保険)で、クレーム処理の費用を補填するものであった。保険会社は事件の重大さを察するが、リコールに発展して巨額の保険金を支払うことになるのを恐れ、飯原の描いた青写真通りに事を運ぼうとするのだが…。

企業が生き残るための非情な道理が、法令順守の精神や倫理観をのみ込んでいく様を、現実的に描き出す。

■2006/11/13, 日経ビジネス, 73ページ

リスク社会を見る目
リスク社会を見る目酒井 泰弘

岩波書店 2006-09
売り上げランキング : 32306

おすすめ平均 star
star経済学者が見る目線

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

1つの行為から出る結果は1つとは限らず、概して複数個の結果が生まれるものであり、「マイナスの効果」を我々に及ぼすことが多い。そのリスクを熟知したうえで、「プラスの効果」にも目を向けよ――「リスク関係学」の第一人者である著者はそう指摘したうえで、社会リスクとは何か、リスクとどうつき合うべきかを解き明かす。

本書の核となる社会リスクは、かつての「地震、雷、火事、親父」から、今日では「放射能、温暖化、ゴミ、エイズ」に変化していると言う。その背景を学術的に論じつつも、リスクの本質を読者がより幅広く理解できるように、身近な例を挙げて論を進める。例えば推理小説家、松本清張氏の代表作『点と線』を挙げ、鉄道ミステリーにおける時刻表トリックが、降雪や人為的ミスなどの“あり得る”要因によって崩壊してしまう可能性(リスク)を解説。一方、英国の女流作家、アガサ・クリスティ氏の『オリエント急行殺人事件』では、時刻表通りの運行を阻害するリスクそのものが、物語に織り込まれている違いを示す。

終章では「社会主義か、資本主義か」という、近代以降の人類の大テーマに焦点を移し、人間の「品格」と社会リスクの関係を手がかりに、独自の見解を導き出していく。

■2006/11/13, 日経ビジネス, 73ページ

ビジネス人間学―「超」のつく成功者になる94の法則
ビジネス人間学―「超」のつく成功者になる94の法則ハーヴィ マッケイ Harvey Mackay 栗原 百代

日本経済新聞社 2006-02
売り上げランキング : 4637

おすすめ平均 star
starビジネス雑文集・・・・
star具体的なノウハウが沢山あります
star人間学の本ではありません

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

米国では事業家、ボランティア活動家、ビジネス作家という肩書を持ち、いずれの分野でもひとかたならぬ実績を残してきた著者が、仕事、人生、人間関係で成功を収めるために不可欠の“流儀”を指南する書。本書は、1988年に刊行されて以来、世界80カ国で出版されている。著者の体験談と行動マニュアルを交ぜ合わせた構成で、興味深く読み進めることができる。

全体は「94のレッスン」から成る。セールスの心得を説いた章では、「どんなにすばらしい提案にも反論はくる。有能なセールスマンは、顧客自身が売りこんでくる状況をつくりあげる」と言い、饒舌な売り口上を披露することよりも、「他人も同じものを欲しがっているのだ」と思わせるために知恵を絞れとアドバイスする。さらに著者流の顧客分析法「顧客プロフィール66」を示して、徹底的に買い手を知るべしと檄を飛ばす。

交渉の技術を説いた章では、「にっこり笑って舌がちぎれるまでノーといおう」と言い、商談の場では「ノー」と言う勇気こそがこちらに有利な状況を導き出すのだと説く。上司に対しては、部下を「こっぴどく叱る方法」を確立しておけと言い、それでもダメなら解雇するしかないと、厳しくも説得力のある教訓を提示する。

■2006/11/13, 日経ビジネス, 73ページ

文学賞メッタ斬り!リターンズ
文学賞メッタ斬り!リターンズ大森 望 豊崎 由美

パルコ 2006-08
売り上げランキング : 13468

おすすめ平均 star
star切れ味激減。
starエンターテイメント性の高い書評&作家論の本
starW杯がわからなかった。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

正真正銘の小説通、大森望氏、豊崎由美氏の両人による文学賞徹底解剖座談第2弾だが、今回は文壇の貴公子、島田雅彦氏も加わっての言いたい放題。豊崎氏は、口は悪いが情熱家、褒めもけなしも半端じゃない。大森氏は、一筋縄ではいかぬ手練、出版界の腹黒きフィクサーと揶揄されるのも一面の真実と思わせる。芥川賞6回落選の強者、島田氏も舌鋒の鋭さ、ユーモアのセンス、端倪すべからず。

現代文学への興味の有無を問わず、本書には3つの楽しみ方がある。

まずは、激辛批評の芸を存分に味わうべし。主な標的は圧倒的知名度を誇る芥川賞、直木賞。作家、作品への仮借なき評に加え、選考委員、選評への痛撃がたまらない。斬新な小説が受容できない「テルちゃん」と「シンちゃん」(シンちゃん自身、昔々に大人の腰を抜かす小説で芥川賞を取ったのだが)、候補作をロクに読まない「ツモ爺」、下ネタと人物造形にうるさい(が、ワンパターンのエロ小説が得意な)「ジュンちゃん」といった具合で、ここでは本名を記すのがはばかられる。

当たり前のことだが、選者の問題が文学賞には決定的に重要ということだ。書店員が選ぶ「本屋大賞」の成功もにらみながら、プロアマ選者の最適ミックスを巡って、本書でも白熱した論戦が展開される。

第2に、文学賞はビジネスそのもの、そこから処世上有用な教訓を読み取るべし。すなわち、賞は利権であり人事である。人事権者たるスポンサー各社、選考委員を意識し、賞を狙う者はゴマをすり、傾向を調べしっかり対策を立てねばならぬ。本当に書きたいことは受賞後に取っておく。また、文学賞は福祉とも心得よ。老人や長年の苦労人を厚遇して、悪いことはない。しかし、時に将来有望なとびきり若い人を取り立てることは、ビジネス上極めて有効である。美少女コンビ(綿矢りさ、金原ひとみ両氏)の芥川賞ダブル受賞による盛り上がりは記憶に新しい。

第3に、もちろん最新小説案内として活用すべし。権威と価値は別物、受賞作必ずしも尊からず。要は各人の好みと判断である。しかし、本書が述べるごとく、単に面白いだけでは通俗テレビドラマと同レベルに過ぎず、後に残る何物かと、異国でも通用する普遍性がなければならぬ。ちなみに、ツモ爺並みの読書量でおこがましいが、筆者の私設大賞は、無冠の『チョコレートコスモス』(恩田陸著)に進呈したい。舞台演技の描写だけでこんなに素晴らしい小説が書けるのは、1つの奇跡である。【評者 ローンスタージャパン会長 岩下正】

■2006/11/06, 日経ビジネス, 75ページ

アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役
アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役稲盛 和夫

日本経済新聞社 2006-09
売り上げランキング : 61

おすすめ平均 star
starくにゃくにゃ
star物足りなさが残る
star「コマ」ではなく「主役」の社員たち

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

「突破」の戦略、「志」の経営
「突破」の戦略、「志」の経営中 静夫

ダイヤモンド社 2006-09-01
売り上げランキング : 2356

おすすめ平均 star
star納得の1冊です
starコンサルタントの生の声が面白い
star事例盛りだくさんで説得力あり

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

時代の要求に応える経営理論

競争力増強と内部統制強化――内と外、異なる2つの今日的経営課題を同時にクリアするヒントを示す経営理論書がランクインした。

京セラ、KDDIの創業者である稲盛和夫氏は、『アメーバ経営』(ジュンク堂6位、丸善丸の内本店16位)で、徹底した「部門別採算管理制度」を確立せよと呼びかける。従来の常識的な区割りではなく、社内のみで生じる取引までをも精査して、「事業として成り立つ最小単位」にまで切り分けよというもの。その一つひとつが「アメーバ」であり、それらの会計をガラス張りにして誰もが業績をチェックできる仕組みこそ、新しい管理会計の極意であると語る。

経営コンサルタントとして「消える企業」と「伸びる企業」の差を目の当たりにしてきた著者が、主に中小企業を対象に、戦略とマネジメントを再構築せよと訴えるのは、『「突破」の戦略、「志」の経営』(丸善丸の内本店11位)だ。競合と差別化を図るマーケティング戦略から、環境に応じた人事・労務戦略までを詳しく解説する。いずれの著者も戦略以前に欠かせない条件として、経営者自身の哲学や倫理感、志を挙げる。方法論のみならず経営の原点を問い直す書としてもひもとく価値があるだろう。

■2006/11/06, 日経ビジネス, 79ページ

餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?
餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?林 總

ダイヤモンド社 2006-09-29
売り上げランキング : 516


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

企業経営に不可欠な会計の知識を物語仕立てで分かりやすく説明する。

主人公は父の急逝でアパレル会社社長に就いた由紀。銀行からリストラを迫られ、会計の専門家・安曇に教えを請う。由紀は安曇と日本料亭、寿司屋、フランス料理店、餃子屋などで食事しながら、「経営情報そのもの」である会計の読み方や儲かる商売のあり方を学ぶ。標題の「餃子屋と高級フレンチ」に関しては、利益構造と損益分岐点の分析が必要であることを気づかせる。“素人社長”だった由紀は会社の新成長戦略を描くまでに成長する。

ビジネスマンが知るべき会計の内容がコンパクトにまとまっている。会計は「だまし絵」「隠し絵」のようなもので、過信すべきでないとも強調する。

■2006/11/06, 日経ビジネス, 75ページ

粉飾の論理
粉飾の論理高橋 篤史

東洋経済新報社 2006-09
売り上げランキング : 3071

おすすめ平均 star
starカネボウとライブドア

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

ライブドア、カネボウ、メディア・リンクスなどの事例から、粉飾決算が行われる背景、構造を描く。

長年、巨額の損失を隠し続けたカネボウ。その主因の1つとなったのが大口取引先の毛布メーカー、興洋染織の存在だ。経営危機に陥った興洋染織の全面支援に乗り出したカネボウは、商社を含めた3者間で在庫毛布を回す「宇宙遊泳」と呼ばれる手法で架空の売り上げを計上し、傷を広げた。本書はこうした粉飾の過程を淡々と描く。カネボウには、戦後、粉飾に関する疑惑がついて回った。熾烈な権力闘争も影響し、経営陣が抜本的な対策を講じられなかった事情などを説明する。

IT(情報技術)サービスのメディア・リンクスは、エンドユーザーに直接販売するのではなく、システムコンサルティング企業などに営業活動を行う「パートナー営業」を営業政策の特徴とうたっていた。その実態は同業者間の架空循環取引。メディア・リンクスは対象商品さえないまま、取引伝票とそれに伴う資金移動の形だけを整えるようになっていく。多くの大手企業が疑問を持たず、取引に参加した。

粉飾は極悪人が密室で行うものではなく、数多くの関与者、傍観者がいる。周辺を含めたありのままの光景を生々しく描いている。

■2006/11/06, 日経ビジネス, 77ページ

オランダの個別教育はなぜ成功したのか イエナプラン教育に学ぶ
オランダの個別教育はなぜ成功したのか イエナプラン教育に学ぶリヒテルズ 直子

平凡社 2006-09-07
売り上げランキング : 2373

おすすめ平均 star
star日本の教育の流れを変えかねない
star教育に希望が持てる本

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

オランダで教育や社会情勢を研究する著者が、一人ひとりの個性を尊重するオランダの教育を解説する。

かつては画一教育が主流だったオランダだが、1960年代後半、「画一から個別へ」という教育改革の方針が定められた。以後、子供の個別の発達に焦点を当てた新しい学校教育を実践している。オランダの個別教育を支えるのは「個別指導」「自立学習」「共同学習」の3要素。少人数の子供に対し、能力やテンポに合わせて学びを支え、励まし、指導するのが個別指導。自立学習では新しい知識や技能をより確実にするために、多様な教材を基に子供が自分で復習したり、問題を解いたりする。共同学習では他の子供たちとの関係の築き方、役割分担のやり方を学ぶ。

著者は、オランダの個別教育には「イエナプラン教育」が重要な役割を果たしたと説明する。イエナプラン教育の最大の特徴は、学年の違う子供を混合して編成した学級で行う点にある。教えたり助けたり、教えられたり助けられたりする立場を交互に体験することが、人間関係の築き方の訓練となる。真のリーダーシップが養成され、能力の発達が刺激されるという。

オランダの「画一から個別へ」の改革は、日本が教育改革を検討するうえで多くの示唆を含むと結んでいる。

■2006/11/06, 日経ビジネス, 77ページ

J.D.パワー 顧客満足のすべて
J.D.パワー 顧客満足のすべてクリス・ディノーヴィ、J.D.パワーIV世

ダイヤモンド社 2006-08-25
売り上げランキング : 3070

おすすめ平均 star
starクリアな指針を示してくれた

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

CS(顧客満足)に関する調査・コンサルティングを手がけるJDパワー・アンド・アソシエイツの経営幹部が、事例を挙げながら、CSの神髄、CSを高める方法を解説する。

最初に「CSは利益の源泉」であると強く主張する。同社によれば、1999~2004年の間に顧客満足度が上がった米企業は、業種を問わず、株主価値が50%以上上がっていた。顧客の声をビジネスに活用することは、激しい競争市場を勝ち抜く不可欠な要素だとする。

本書は、顧客は大きく3つに分けられると説明する。商品・サービスを積極的に人に薦めるのが「推奨者」。逆にわざとけなしてダメージを与えるのが「刺客」。「無関心者」はその中間で最低限の期待しか満たされず、無関心・無感動な顧客。企業にとって、圧倒的多数を占める無関心者を推奨者に転換することが課題である。「顧客の声を軸にインフラを構築する」「顧客コミュニティーを形成する」「問題解決でひいき客を作る」など、そのために必要な原則を示していく。

CSはトップダウンによって牽引される。一方、下支えするのは日々第一線で奮闘する従業員である。優れた人材を採用・教育し、適切な行動を取れるように権限を与えることが、将来の推奨者を生むカギだと指摘している。

■2006/11/06, 日経ビジネス, 77ページ

インターネット広告による売上革新
インターネット広告による売上革新オプト ETIM研究所

同文舘出版 2006-09
売り上げランキング : 18831

おすすめ平均 star
star活用事例の踏み込み方に満足

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

インターネット広告については、効果測定が難しいといった不安から、いまだに導入を躊躇する企業もある。そこで、eマーケティング事業に早くから取り組んできた広告会社、オプトが多様化の一途をたどるネット広告の活用法と効果測定法を初級者にも分かりやすく整理した。

一口にネット広告といっても、よく知られるテキスト広告やバナー広告から、自動的に表示面積が拡大するエキスパンド広告など、10のパターンが存在する。それぞれの特性解説に加え、実際の企業の活用事例を写真で見せる。また、顧客を分類し、特定の対象に絞ってアプローチするメール広告や、最近急増している動画広告などについても詳しく解説する。

■2006/10/30, 日経ビジネス, 97ページ

分断される日本
分断される日本斎藤 貴男

角川書店 2006-07
売り上げランキング : 23793

おすすめ平均 star
star最近の記事・講演の作品集
star怒りの滲み出た、滲み出すぎた一冊。

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

著者に聞く-パーソナルライフ-斎藤貴男氏[ジャーナリスト]
格差は分断から始まる-『分断される日本』

生活、教育…所得以外に広がる格差に、街角を見張る監視カメラ。不平等社会と監視社会が、気づかないうちに市民階層を「分断」する。構造改革の陰で劣化する日本に警鐘を鳴らす。

――マスコミが取り上げるかなり以前から「格差」「不平等」をテーマに取材を続けてきました。

格差は大昔からあるわけで、当然、大金持ちも貧乏人もいますが、戦後はそれではいけない、格差を何とか小さくしようというのが社会の建前だったわけでしょう。その建前さえ壊してしまったらおしまいだと言いたいのです。本当に差別のない社会にするのは簡単ではないが、せめて「差別なき世の中に」という理想とか共同幻想は持つべきで、それを現実に近づけるのが政治の役割だと思うからです。それがなくなったら弱肉強食の獣の世界。救いようがありません。

1億総中流と言っていた時代がすべて正しかったとは思わないし、改革が必要でないとも言いません。ただそれでも、これだけは守らなければならないという最低限の部分がある。教育機会の均等とか、人間は本質的に平等という哲学です。今の政治のやり方は、明らかに恩恵を受ける層が限られて、政治を動かしている人に都合の良い社会を作っているだけとしか思えない。

「競争、格差は活力の源」という論調もありますが、競争と言うならスタートラインが同じでないと…。僕に言わせれば、有名政治家の家系に生まれた安倍晋三首相などはゴールの1m手前からスタートしているようなもので、競争だと言っても話にならないでしょう。

――その安倍首相は、政策で「再チャレンジ社会」の構築を掲げました。格差は国会論戦のテーマにもなっています。

再チャレンジうんぬんを言う前に、フリーターなど非正規雇用の立場の人たちを何とかしないと。同じフルタイム労働でも非正規社員は正社員の60%の給料しかもらえないというデータがあります。また雇用政策に関わる議論をする人たちは、「基本的にニートは怠け者だからニートなのだ」との前提に立つことが多い。怠け者がいないとは言わないが、そもそも正規雇用の絶対数が少ないのだから、それを改善するのが政治じゃないですか。

ところが現実は逆だ。市場原理の名の下に、もともと持てる者が持たざる者を支配し、持たざる者の富まで分捕るだけでしかないのが新自由主義の本質だと僕は考えています。

この本で一番指摘したいのは、格差そのものでも、格差政策論でもなく、世の中を動かす立場にある人々の目線なんですよ。すべての人に都合の良い世の中などあり得ないにせよ、その格差を積極的に拡大しようとしている人たちの姿勢は傲慢に映ります。

――差別する側とされる側の「分断」が、今この国で起きていると。

そうです。それは監視する側、される側でも同じです。犯罪防止の名目で増え続ける街頭の監視カメラ、生活安全条例や地域触れ合い協議会の名を借りた相互監視システム…。これは市民の目線を見張る者と、見張られる者に区別するだけです。警察が「警備、公安」型になるということですよね。でも貧困や差別などといった犯罪の原因を取り除かない限り、重度の犯罪はなくならないでしょう。

格差社会も監視社会も、「我々vs奴ら」の構図を作り、さらに「奴ら」に対してどんどん不寛容になっていく点で同じです。これはまさしく社会システムの劣化、退化と言うしかない。「分断される日本」というのは、実にうまいタイトルをつけてもらいました。

斎藤貴男(さいとう・たかお)氏
1958年東京生まれ。新聞、週刊誌の記者などを経てフリーに。『機会不平等』『プライバシー・クライシス』など著書多数。

■2006/10/30, 日経ビジネス, 101ページ

新平等社会―「希望格差」を超えて
新平等社会―「希望格差」を超えて山田 昌弘

文藝春秋 2006-09
売り上げランキング : 1566

おすすめ平均 star
star「希望格差」というのがキーワードですね

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

「家族社会学」という学問の視点から格差問題に取り組むのは、東京学芸大学の山田昌弘教授だ。生産性の高い仕事に就く者と就けない者、その結果として豊かな生活を築く者と築けない者の違いを単純に比較するだけでは、格差問題の本質は見えないと言う。

深刻なのは、生産性の低い仕事に就くが故に生活に窮している状態から、「いくら努力しても、いつまで経っても脱することができない人」が増えていることだと指摘する。さらに、こうした者同士が家族を形成すれば、自分の子供の将来にすら、希望が持てなくなる。著者はこうした負の連鎖を「希望格差」と呼び、この国の活力を急速に奪い取っていると憂える。

では、現在の日本社会に必要な平等性とは何か。著者は自由経済がもたらす「結果の格差」を認めつつも、市場原理にすべてを委ねることをよしとしない。競争原理を前提とする一方で、参入機会の平等、及び能力開発機会の平等をあらゆる人に担保することが、「希望格差」を緩和すると説く。収入の格差については、税や社会保障以外に、家族形態別に生じる不平等を補うような分配のシステムが必要だと訴える。非婚化や少子化、高齢化は、「希望を喪失した家族」の増加を加速させると警鐘を鳴らす。

■2006/10/30, 日経ビジネス, 99ページ

ソニー インサイド ストーリー
ソニー インサイド ストーリー立石 泰則

講談社 2006-09-01
売り上げランキング : 21656

おすすめ平均 star
star出井氏の苦悩
starまさにソニーのインサイド・ヒストリーだ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

昨年3月、ソニーの会長兼グループCEO(最高経営責任者)のポストが、出井伸之氏からハワード・ストリンガー氏に引き継がれた。出井氏の退任を巡っては、エレクトロニクス部門の業績不振や株価の低迷といった理由のほか、同社OBや社外取締役らの意向が強く働いたのではないかと報道された。ノンフィクション作家として1990年代中頃から同社の取材を進めてきた著者も、出井氏退任の裏に働いた不透明な力学に疑問の念を抱く。

95年、末席の常務から社長に抜擢された出井氏。著者は出井氏へのインタビューなどから、出井氏が取り組んだ改革の中身とその意義を再検証する。数字に表れる実績だけでなく、著者が高く評価するのは、個人商店から急成長を遂げた同社に根づいていた“極めて個人的なつながり”に基づく経営の継承を、出井氏が断ち切ろうとした点だ。創業者である盛田昭夫氏と井深大氏の忠実な継承者であったと言われる前任者、大賀典雄氏の影響力を排除した出井氏は、同社としては初めての「プロフェッショナル経営者であった」と論述している。

出井氏退任の真相は、出井流改革をよしとしない旧勢力の逆襲であったのか。同社の歴史をひもときつつ、関係者の声を集めて、その真実に迫る。

■2006/10/30, 日経ビジネス, 99ページ

日本を二流IT国家にしないための十四ヵ条―佐賀市「電子自治体」改革一年の取り組みから
日本を二流IT国家にしないための十四ヵ条―佐賀市「電子自治体」改革一年の取り組みから木下 敏之

日経BP企画 2006-09
売り上げランキング : 4183

おすすめ平均 star
star地方自治に関わるものが、本書から学ぶべき点
star行政電子化担当者必読です。
star真の地方自治体のIT化戦略と首長のリーダーシップの実録

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

著者の木下敏之氏は、農林水産省を退官後、1999年の佐賀市長選挙に出馬し、県庁所在地の市長としては当時最年少となる39歳で当選を果たした。以後、昨年9月まで、IT(情報技術)化を核とする徹底した行政改革を断行し、300億円以上を節約して佐賀市の財政を立て直した。現在は全国で自らの経験を広める講演やコンサルティング活動を行っている。

木下流改革のヒントは、2003年に視察に出向いた韓国ソウル市の江南区役所にあった。日本ではいまだに試行錯誤が続く「電子申請手続き」が、当時同区では1日に1500件以上利用されていた。さらに同区のIT行革が、単純な人員削減やコスト削減にとどまらず、住民の満足度を明らかに向上させていた点に心を打たれたと言う。

しかし、日本に戻ると、IT行革を阻む大きな“敵”が待ち受けていた。例えば、自治体に基幹コンピューターを販売する大手コンピューター会社である。プログラムに精通したプロがいない役所では、それらの価格は売る側の言い値だ。必然的に業者への“丸投げ”が暗黙の合意となっていた。

著者はそれらの壁を打ち破った体験を踏まえ、「市長・助役がITを勉強せよ!」などから成る14カ条を示し、真の行革とは何かを説く。

■2006/10/30, 日経ビジネス, 99ページ

下流喰い―消費者金融の実態
下流喰い―消費者金融の実態須田 慎一郎

筑摩書房 2006-09
売り上げランキング : 232

おすすめ平均 star
star消費者金融の生々しい実態
starそんな儲け方を社会が許さない時代をつくろう
starタイトルに偽りは無い

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

違法貸金業、通称「闇金」での多重債務の果てに、新宿・歌舞伎町の「おんな市」で違法風俗業者の競りにかけられる女性たち――。この信じられないような現実を、著者は潜入取材で目の当たりにする。多重債務者が350万人に達すると言われる一方、消費者金融業界は増殖を続け、メガバンクは業界大手に多額の資金を注ぎ込む。しかしその餌場となるのは、いわゆる“下流”と呼ばれる低所得者層なのだ。

著者はこうした負の連鎖を引き起こす仕組みを「悪魔のビジネスモデル」と呼び、グレーゾーン金利やそれを放置してきた行政の怠慢にメスを入れる。また、巨額の広告費を支払う消費者金融業界に対して多くのマスメディアが及び腰であり、時には批判が封殺されることもあると痛烈に抗議する。

■2006/10/23, 日経ビジネス, 87ページ

紛争と難民 緒方貞子の回想
紛争と難民 緒方貞子の回想緒方 貞子

集英社 2006-03
売り上げランキング : 19029

おすすめ平均 star
star難民保護という理想を求めて現実的な対応を模索する

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

著者に聞く-パーソナルライフ-緒方貞子氏[国際協力機構(JICA)理事長]
復興援助に方程式なし-『紛争と難民 緒方貞子の回想』

アフリカ、中東、バルカン半島…。紛争で発生する難民の救援は世界の課題に。 1991年から10年間、国連難民高等弁務官だった著者が集大成の回想録を綴る。難民保護から国家再建までやるべき仕事は数多い

――アジア、アフリカ、欧州などで多くの難民救済を指揮されました。

アフガニスタンや(東欧の)バルカン半島など世界で難民問題に対処した体験を、資料も用いてまとめました。

書いていて気づいたのは、難民救済という概念の広がりです。

難民問題というと今は、(難民が発生した)国家の平和構築や復興支援という議論がすぐに出てきます。国連でもピースビルディング(平和構築)という活動を増やしています。これは新しい動きです。そこで執筆では、「紛争から平和まで」あるいは「復興と問題解決」という視点をより意識してまとめました。

復興援助を理論的に学ばれている方には、具体的なケースはどれも独自なもので、すべてが異なるということが伝わるといいと思います。動き続ける社会で起きる、生きた人間の問題なのです。1つの方程式を持ってきて「これが復興援助です」と考えないようにしてほしいのです。

――難民問題といえば、かつては冷戦の終焉に起因する側面が強かったと思います。しかし、そこにテロリズムという新しい問題が加わりました。2001年の米同時多発テロ後に再びアフガニスタンの問題が注目されたのはその一例です。

テロの影響で(難民問題も)国内紛争の側面に加え、国家を超えた要素を強めています。

対立といえば、民族や部族間というまとまった人間同士の抗争でしたが、今はそれを離れて宗教やイデオロギー(主義)という本来なら個人に属するものとも結びついています。グローバル化の影響もあり「次の時代」に入っている気がします。

背景には格差の問題もあると思います。貧富の格差だけではなく、身分の違いや将来への可能性の差などです。「もう浮かび上がれないのでは」という気持ちが悪影響をもたらしています。その意味で(難民や復興についての)研究も多様化していかなくてはなりません。

この本について「1990年代の時代史として非常に優れている」との評価を頂くことがあります。しかし21世紀の今、(90年代の経験則だけで)すべてを解決できなくなっているのも事実なのです。

――難民支援と国家復興という大きな課題を解決するには、やはり超大国である米国が本気で動くことが欠かせません。

米国が本腰を入れなくては、ほかの国はついてきません。

一番の典型例に96年のルワンダ難民への対処があります。難民が国外にも離散して、無秩序と絶望的な瞬間がありました。そこでカナダは援助に動いてくれました。そこで、もし米国が「もっと支援をする」と言えば、欧州諸国も動いてくれたと思います。しかし、米国は「これだけの難民を見つけたのだし、もういいじゃないか」と兵隊を引き揚げたのです。

かつて私は米国のマドレーン・オルブライト国務長官に「(発信者が無料通話できる)800番台の電話番号が欲しい」と頼んだことがあります。

どうしても支援の軍隊が欲しい時に出てきてくれる警察行為と、平和維持行為を兼ねた部隊があるといいなと思ったのです。その時は実現しないで終わりましたが、今もその希望は捨てていません。被害を防いだり、最悪の事態を避けたりする救助体制が、この世界には必要だと思っています。

緒方貞子(おがた・さだこ)氏
1927年生まれ。米カリフォルニア大学バークレー校で政治学博士号を取得。国連難民高等弁務官を経て、2003年から国際協力機構(JICA)理事長。

■2006/10/23, 日経ビジネス, 91ページ

企業の作法 CSRが会社の未来を拓く
企業の作法 CSRが会社の未来を拓く立石 信雄

実業之日本社 2006-07-27
売り上げランキング : 66088

おすすめ平均 star
starCSRの現在がわかる

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

1959年に立石電機販売(現・オムロン)に入社、95年には会長に就任し、2003年から相談役を務めている立石信雄氏。本書は、独自の技術力を背景に、グローバル企業として堅実な成長を歩んできた同社の立ち位置から、近年の企業経営の重要課題であるCSR(企業の社会的責任)について論じたもの。著者は既に10年前に『市民と共存する経営』と題した書を執筆しており、欧米企業の最新事情にも明るい。そうした経験と視点から、社会の公器としての企業とは何かを、分かりやすく解説していく。

会社は誰のものか――。コーポレートガバナンス(企業統治)やステークホルダー(利害関係者)を巡る近年の議論に関して、「日本型よりも欧米型」といったようなステレオタイプな見方からは卒業すべきだと言う。企業統治の方法論に普遍性はなく、各企業は「倫理性」、すなわち「社会正義に基づいた勇気ある行動」を基軸としたそれぞれの使命や環境に応じてCSRを高めていくべきだと提案する。

日本の企業に対しては、隣人である中国との関わりにおいてCSRのあり方を考えよと提言する。著者自らが関わるシンポジウムや中国要人との交流を基に、両国間に存在するギャップとそれを克服するヒントを挙げていく。

■2006/10/23, 日経ビジネス, 89ページ

タックス・シェルター
タックス・シェルター幸田 真音

朝日新聞社 2006-09
売り上げランキング : 3793

おすすめ平均 star
starなかなかよかった
star税金のとらえ方

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

外資系銀行や証券会社での債券ディーラー業を経て、経済小説家に転身した幸田真音氏。巨大マネーが飛び交う金融業界の舞台裏と、その大波に翻弄される人間たちの生き様を描写し、多くのファンを獲得している。本書は昨年「週刊朝日」誌上で連載された同名の小説に加筆・修正したもの。「タックス・シェルター」とは、税法の網の目をかいくぐって、巨額の財産を保有し増やすための方法のことで、「課税逃れ商品」とも呼ばれる。

中堅証券会社、谷福証券の創業者にして辣腕経営者である谷山福太郎が、突然の病でこの世を去った。家族に100億円にも及ぶ資産を残した谷山だったが、ただ1人、心を許した部下であり、自分を慕ってくれた財務部長の深田道夫にだけは、秘密裏に築いた海外の隠し口座の存在を告げ、管理を託していた。谷山の死後、深田は金融ブローカーの助言などもあって、隠し資産の中から絵画の売却で得られた一部の450万ドルを運用し始める。

一方、深田が好意を寄せる女性、宮野有紀は、国税調査官であった。宮野も深田を1人の男として意識し始めるが、ある偶然から深田による脱税の事実を知ってしまう…。「タックス・シェルター」によって人生の歯車を狂わせていく者たちの心理を巧みに描く。

■2006/10/23, 日経ビジネス, 89ページ

あなたがリーダーに生まれ変わるとき―リーダーシップの潜在能力を開発する
あなたがリーダーに生まれ変わるとき―リーダーシップの潜在能力を開発するジョン・マクスウェル 宮本喜一

ダイヤモンド社 2006-09
売り上げランキング : 337


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

米国の企業や軍、プロスポーツ機構などで、リーダー養成のための講演や研修を数多く行っている著者が、リーダーシップの本質とそれを体得するための方法を解説する書。「リーダーシップ」と銘打った書物は少なくないが、そのほとんどはマネジメント(組織の職務や目的が徹底されていることを確認するプロセス)について書かれたものだと指摘。マネジメントを学ぶだけでは“リーダーシップのあるマネジャー”にはなれないと断言する。

では、リーダーシップとは何か。著者は「ビジョンを生み出し、周りの人たちに仕事に取り組む意欲を持たせるもの」と定義する。リーダーシップとはすなわち、他者への「影響力」であり、上位の地位に就くためのノウハウではないと力説する。また、それは決して先天的なものではなく、誰もが訓練で身につけられる資質だとも強調。「地位」を第1レベルと認識し、「相互理解」「成果」「人材育成」「人間性」までの各ステージをクリアできてこそ、真のリーダーになれると言う。

強調点の1つにリーダーの「誠実さ」を挙げる。一見青臭くも感じられるこの資質だが、実は組織内の規範意識や、企業イメージなど外部にまで及ぶ評判に重大な影響を与えている事実を、実例とともに解き明かしていく。

■2006/10/23, 日経ビジネス, 89ページ

Edit

 
Copyright (C) 2004-2006 Ambitious Kanda, All Rights Reserved.