メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2006年10月2日~10月16日
| 外資系トップの仕事力―経営プロフェッショナルはいかに自分を磨いたか | |
![]() | ISSコンサルティング ダイヤモンド社 2006-09-08 売り上げランキング : 148 おすすめ平均 ![]() ポジティブに生きる人に神は優しい 猛烈ビジネスマンの原型を見る 価値観を築く意欲Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「ガイシ(外資)」といえば、個人主義・拝金主義のイメージが濃く、「外資系トップ」という言葉には、エリート臭もつきまとう。海外留学を経て、MBA(経営学修士)を取得し、転職を繰り返しながら実力主義の世界を生き抜いてきた、そんな人物像をつい想像しがちになる。
しかし、本書の読後、外資に対する画一的なイメージや偏見は見事に打ち砕かれ、良い意味で期待を裏切られる。それぞれの企業に強烈な個性があり、プロフェッショナルに徹する真摯なトップの姿がそこにある。
本書は12人の世界的企業の日本法人トップに対し、「彼らがどのような意識でそのキャリアを選び、どのように考えながら仕事をしてきたか」についてインタビューした内容が綴られている。
業種も消費財、IT(情報技術)、金融、製造業など多岐にわたり、登場する人物も実に多様である。企業トップがあからさまに自分を語っていることが新鮮で、仕事観や経営哲学に加え、「どう生きていくか」という人生哲学も垣間見える。
聞き手は10年以上にわたって外資系企業を中心に人材紹介を行ってきたISSコンサルティングの関口真由美氏。
登場するトップの中には、MBA取得者やコンサルティングファーム出身者も多いが、それらが必ずしも必要条件ではなく、どのトップも「与えられた仕事に全力を尽くす誠実さ」「自分を伸ばすために困難な仕事を選ぶ成長意欲」「成功してもさらに高みをめざす謙虚さ」を持ち合わせていることが共通点であり、成功の秘訣だと感じる。
例えば世界40カ国で事業を展開し、1万5000人以上のスタッフを擁する世界最大の組織・人事マネジメント企業、マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティングの日本法人社長を務める柴田励司氏。
彼は入社日前日になって、入社予定であった映像の製作・配給会社から内定取り消しをされるという経験をしている。いったんは内定を蹴ったホテルに頼み込み、宴会場のウエーターの職を得ることができ、その後、在外大使館への出向も経験した。
悪いことや嫌なことが起きてもクヨクヨせず、次の一歩を踏み出すこと、さらに与えられた職務に対し、最大限の努力をしてきたことが、彼に今の舞台を与えてきたのである。
12人のトップから読み取れる「奢らず、恐れず、あきらめず、仕事に対してピュアになる姿勢」が読む者にエネルギーを与えてくれる。【評者 白石真澄 東洋大学経済学部教授】
| カウンターから日本が見える 板前文化論の冒険 | |
![]() | 伊藤 洋一 新潮社 2006-09-15 売り上げランキング : 4077 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
上質な料理を食べる場所としてのカウンター席。日本料理には定着しているが、世界のどこにもないスタイルだ。無類のカウンター好きという著者が、その秘密に迫った。
カウンター割烹の源流は80年ほど前、大阪市西区新町にできた「浜作」だという。格式と権威のお座敷料理へのアンチテーゼとして登場した浜作は、各界の著名人が通う人気店となった。経済人らの後押しを受けて東京にも進出。食材流通網や交通の発展とともにカウンター文化も全国に広まった。
日本で生まれ、発展したのは、階級制度・階級意識がなく、誰と座っても問題がないこと、職人を尊ぶ意識が強く板前が顧客の前に出ることを受容する慣習などが理由と分析。極めて日本的で世界に誇る文化だと指摘する。
| 心にナイフをしのばせて | |
![]() | 奥野 修司 文藝春秋 2006-08 売り上げランキング : 8 おすすめ平均 ![]() 告発にも似た問題提起 違和感 せめて人間らしくAmazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-奥野修司氏[フリージャーナリスト] 犯罪少年の「更生」を問う-『心にナイフをしのばせて』
1969年、高校生が同級生をナイフで殺し、首を切断する事件が起こった。 遺族が地獄の生活を送る一方、加害少年は弁護士となって社会復帰する。 犯罪少年の更生とは何かを問うノンフィクション。(聞き手は西頭 恒明)
――今では記憶している人も少なくなった40年近く前の事件を取り上げたのはなぜですか。
1997年に神戸で起こった「酒鬼薔薇(さかきばら)」事件の取材がきっかけでした。少年が児童を連続殺傷するという事件の背景を、似たような事件から探れないかと考えたのです。そんなことから、神戸とこの事件の取材を進めていくうちに、少年犯罪の更生に対する疑念が膨らんできました。どちらの事件でも、加害者を正しい道へと導き、社会復帰させるという一点だけに重きを置き、被害者の家族をどうサポートするかという視点が欠落していたからです。
これは順番が逆ではないか。本来は被害者の心情を汲み取り、心のケアをしてあげることから始めなければならないと思います。そのうえで、加害者の更生計画を立てるというのが順序です。もちろん、どれだけ時間をかけたとしても、被害者家族の心が癒やされ、起こった出来事を納得するような心境にはなれないかもしれません。それでも、公的なカウンセラー制度を導入するなど、国が予算をつけて、被害者を支援する仕組みを作るべきです。
私が会った被害少年の母親は事件後、ショックで数年間の記憶を失ってしまい、自殺未遂も引き起こしました。胸の内を打ち明けたくても、血のつながった家族や親族には遠慮して話せない。親族でもない人には余計に事件のことは話しづらい。もし、この家族にきちんとしたカウンセラーがついて相談に乗っていたら、ここまで悲しみを引きずることはなかったかもしれません。
――被害者側が今も塗炭の苦しみに喘いでいる一方で、加害者は事件を消し去り、弁護士として活躍している。割り切れなさを感じます。
直接、加害少年の更生にかかわったという関係者には会っていませんが、少年院の刑務官を経験した人に聞いてみると、「立派に更生させた成功例だろう」と言っていました。
しかし、彼はまだ被害者家族に一度も謝罪をしていませんし、事件後に支払うことになっていた補償金も結局、支払っていません。弁護士になったことを知った被害者家族が苦悩したうえで接触し、苦しい生活ぶりを伝えても、「カネがないなら貸してやる」という態度を示しました。恐らく本人にしてみれば、「社会復帰したのに、何で今さら責められないといけないのか」という思いだったのでしょう。
――それでも、加害少年に対する更生計画は正しかったと言えるのでしょうか。
彼の個人的な性格によるところもあるでしょうが、少年院で受けた教育が影響していると思います。極端に言えば、「人を殺して何が悪いんだ」という間違った考え方を改める教育を受けてこなかったのではないでしょうか。もちろん、少年院のカリキュラムの中には被害者の心情を考え、反省や謝罪の心を養わせる時間もあるでしょうが、まだ不十分です。
少年法はここ数年、厳罰化されてきたと言われますが、一定の期間を過ぎれば更生したものと見なされ、社会に復帰することに変わりありません。全員が一定の期間で更生できるとは思えませんが、今の制度では少年院を出てこられる。期限を一律に区切るのではなく、本当に更生したと言えるまで教育し続けることが必要だと思います。犯罪が「前科」となって残る成年者と違い、少年は人を殺した過去さえ、抹消されて社会復帰するのですから。
奥野修司(おくの・しゅうじ)氏
1948年生まれ。1978年から南米で日系移民調査に従事し、帰国後フリージャーナリストに。著書に『ナツコ 沖縄密貿易の女王』など。
| 男の晩節 | |
![]() | 小島 英記 日本経済新聞社 2006-07 売り上げランキング : 3440 おすすめ平均 ![]() 主人公達の人生に共感する予定のある人には良書。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
長寿大国・日本で、人がいかに人生を全うするかは大きなテーマである。明治維新以降の日本で、珠玉の晩節を送った20人を取り上げる。
住友財閥の2代目総理事を務めた伊庭貞剛は「老いの達人」だった。「事業の進歩発達に最も害をするものは、青年の過失ではなくて老人の跋扈である」と、58歳であっさり総理事を退き、41歳の時から用意していた生まれ故郷に近い別邸に隠退した。山野に樹木を植え、日本式家屋と2階建ての洋館を建て、「活機園」と名づけた。活機園には、伊庭の徳を慕って来客が絶えなかったという。
74歳の御木本幸吉は呼び集めた内外ジャーナリストの目の前で、大きな焼き釜に大量の真珠を投げ入れた。「出来の悪い真珠は焼き捨てる。選り抜きの良い物だけを売る」ことをアピールするパフォーマンスだった。養殖真珠という目標に邁進するエネルギーレベルがずばぬけて高く、96年の生涯を終えるまでその精神を持ち続けた。
自ら提案した社長の「63歳定年」の通り、ヤマト運輸の社長を潔く退き、「お世話になった社会への恩返し」と福祉事業に力を注いだ小倉昌男や、78歳から恋をし、段ボールいっぱいの恋文を残したコラムニストの山本夏彦ら、心に残る晩節が描かれる。
| 下流社会マーケティング | |
![]() | 三浦 展 日本実業出版社 2006-09-05 売り上げランキング : 10116 おすすめ平均 ![]() 残念!寄せ集め資料で作った新聞のような解説本でした! 看板とは異なると思います マーケット概観Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ベストセラー『下流社会』(光文社新書)の著者が、階層化社会におけるマーケティングを解説する。
団塊ジュニア世代の男性のうち48%は自分の生活水準を「中の下」または「下」と感じている。かつての「一億総中流」の流れは完全に変わった。また、人口減少、高齢化により、消費スタイルも変化している。「夫婦に子供2人」という構成の標準世帯が減り、単身世帯、夫婦のみ世帯などが増えたことで、ファミリー消費から総シングル消費へと転換しつつある。
自分の問題は自分で解決しなければならない社会で、注目すべきマーケティングキーワードが「ライフスタイルケア」だ。健康、美容、メンタルなどの「人のケア」、資産、保険などの「お金のケア」、リサイクル、修理、リフォームなどの「物・都市のケア」という3つのケアの視点で、商品・サービスを開発することが重要と説く。2極化が進む中では、「中」に向けて物を作っても、「上」「下」ともついてこない。「上」に向けた、よりレベルの高い「高次のニーズ」に応えるコンシェルジュ的な商品・サービスが必要だと指摘している。
著者が長年、調査してきた団塊・団塊ジュニア世代マーケティング、デザインマーケティングも詳しく解説する。
| 日本の電機産業再編へのシナリオ―グローバル・トップワンへの道 | |
![]() | 佐藤 文昭 かんき出版 2006-08 売り上げランキング : 868 おすすめ平均 ![]() 電機、金融関係者には良著 業界の人向け データに富んでおり日本の電機業界を理解するのに最適な本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日経金融新聞「人気アナリストランキング」の企業総合部門で、6年連続1位となった著者が、電機産業界の再編を提言する。
2007年5月、会社法に基づいて、外国企業による日本企業との三角合併が可能になるなど、企業の国籍を超えた本格的なM&A(企業の合併・買収)の環境が整う。日本の大手電機メーカーは収益性が低いため時価総額が低く、外国資本のM&Aのターゲットとなる可能性がある。著者は、収益性が低いのは、家電、電子部品、IT(情報技術)機器など、幅広い分野で事業を手がけ、優れた技術・エンジニアを非効率に分散させてしまっているためだと指摘。現在の横型コングロマリットの抜本改革が必要と訴える。
具体的には、「グローバル・トップワン」を提言する。既存の大手電機メーカーを事業分野別の縦型の組織形態に変え、事業単位で統合する。こうすることで日本の大手電機メーカーが持つ技術・人材のポテンシャルが十分に生かされ、世界に対抗し得る企業が各分野で1~2社実現するというわけだ。
主要9分野について、再編した際の海外企業との比較も示す。道のりは平坦ではないが、少しでも有利なポジションを確保するため、1日も早く業界再編に向けた行動が必要だと説く。
| 企業価値評価 第4版 【上】 | |
![]() | マッキンゼー・アンド・カンパニー ティム・コラー マーク・フーカート ダイヤモンド社 2006-03-10 売り上げランキング : 3817 おすすめ平均 ![]() 翻訳は良くできていると思うが… 翻訳がいまいち より実務的になったAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| 企業価値評価 第4版 【下】 | |
![]() | マッキンゼー・アンド・カンパニー ティム・コラー マーク・フーカート ダイヤモンド社 2006-03-10 売り上げランキング : 3859 おすすめ平均 ![]() 流石の如くAmazonで詳しく見る by G-Tools |
国際競争を勝ち残り企業価値を高めるためのキーワードの1つが、資本効率。 日本企業はさらなる「選択と集中」が不可欠と指摘する。
――業績回復が鮮明な日本企業ですが、一方で、株主や資本市場を向いた経営は欧米に比べてまだ不十分との指摘もあります。
私は必ずしもそうではないと見ています。企業価値を高めるというのは収益成長と資本効率の向上の2つをバランスよく実現することです。従来の日本企業の経営の視点が、ROIC(投下資本利益率)をはじめとする資本効率よりも収益成長に向いていたのは確かですが、最近は大きく変わっています。
例えばトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の自動車上位3社に関して言えば成長性、効率性ともに国際的に高い水準にある。トヨタの「カンバン方式」を見習って運転資本の圧縮を強く意識して取り組んでいる企業も少なくありません。
企業価値は、資本に対するリターンをどれだけ上げられるかで決まります。間違ってはいけないのは、多額の配当を実施しさえすれば株主重視だというわけではなく、株価をいつも気にするのが価値を高める経営でもないということです。かつての村上ファンドのようなアクティビストと経営者の対決という図式だけで考えても、あまり意味がありません。
――資本効率に関しては、無借金こそ最善という一時期の極端な考え方が後退し、全体の資本コストをどう最適化すべきかという議論が広がってきました。
私たちは財務アドバイザーではないので、新株や社債の発行コストをどう最小化すべきかという点までは踏み込みません。ただ、どの事業がキャッシュフローを生み出しており、必要な資金のうちどれぐらいを借り入れで賄い、どれぐらいを株式で調達するのがよいのかという方向性を決めるうえでアドバイスはします。
もちろん負債を増やせば支払利息の負担も増えるので「節税効果」は出る半面、増やしすぎると、それ以上の負債調達がしにくくなり戦略的な自由度は落ちる。非常に重要な投資機会があっても、それをタイミングよく実行できなくなるマイナス面を考えなければなりません。戦略的自由度と税金負担、キャッシュフロー創出力、この3つを常に見比べながら資本構成を考えることが重要です。
――デフレ、構造改革を乗り越えて競争力を取り戻した日本企業が、より企業価値を高めるには何が必要ですか。
この十数年で人員、設備、負債の3つの過剰は解消されたわけですが、もう1つ、「ノンコア(非中核)事業の過剰」が残っています。
経営者はまず、自社が最も長けている分野は何なのか、継続して価値を創造できるのは何の事業なのかを把握して、特定しなくてはなりません。性格の大きく異なる複数の領域を束ねて経営するのは難しいことです。複雑性を解消することでさらに高いリターンを得られるのであれば、MBO(経営陣による企業買収)など様々な再構築の手法を検討すべきです。切り離された会社や事業部門にとっても、成長率を高めれば、優秀な人材確保に道が開けるメリットなどもあります。
株式市場は本来、企業をこうした長期的な視点で見ているはずです。資本コストを上回るリターンをきちんと上げているかどうかで企業価値を測っているのです。私は、日本企業は価値創造の可能性や余地が大きく、その向上分が株価に反映される余地も決して小さくないと見ています。
ティム・コラー(Tim Koller)氏
1958年生まれ。シカゴ大学ビジネススクール修士課程修了。スターン・スチュワートなどを経て87年にマッキンゼー・アンド・カンパニー入社。
| グローバリゼーション・新自由主義批判事典 | |
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この広い世界の主人公は誰か!?
あなたであり、私だ。彼であり、彼女でもある。要は個人一人ひとりの全員が、それぞれの人生劇場で主役を演じている――。
そう考えてきた。だが、いつの頃からか、自信がなくなった。グローバリゼーションの時代においては、普通の人間など支配され、収奪されるだけの存在に過ぎないのではないか。帝国主義の時代への回帰というのとはやや異なる。現代の地球における主たるアクターは多国籍企業や巨大な金融資本であって、国家はこれらをサポートする役割を果たしているようだ。
「グローバリゼーションは、国を征服するよりも、市場を征服しようとするものである。この近代的権力の狙いは、大々的な侵略が行われた植民地時代のような領土の征服ではなくて、富の所有権の奪取である。この新たな征服には、圧倒的な破壊がともなう」
本書の書き出しを読んで、合点がいった。「グローバリゼーション/グローバル化」「自由主義/新自由主義」といった基本的な用語から、「多国間投資協定」「タックス・ヘイブン」などのキーワード、「悪の枢軸」「パトリオット法」などの派生語まで、100項目について詳説した事典。「“部分的かつ偏向的”な分析でしかないのだが」との屈折した表現付きで、しかし、現実世界の本質が鋭くえぐり出されて戦慄を余儀なくされる。荒唐無稽にも思える「トービン税(すべての投機目的の取引に対する課税)」なる発想が浮上してくるのも当然だと認識させられた。
主要著者のイグナシオ・ラモネ氏は、欧州を中心に盛り上がってきたアンチ新自由主義運動の象徴的人物。とはいえ、昨年秋から年末にかけて、あまりに無体な労働政策に反発した若者たちがパリ郊外で暴動を起こしたフランスでさえ、マスメディア全般の堕落ぶりは目を覆いたくなるほどという。征服と破壊の時代の、むしろ最大の受益者として、情報操作の主体に成り下がっているのは、日本のジャーナリズムだけではなかった。
真摯な筆致が全編を貫く。にもかかわらず、ビアスの「悪魔の辞典」を連想してしまったのはなぜだろう。知れたことだ。グローバリゼーションと新自由主義の絶対化が、世界をブラックジョークそのものに染め上げてしまいつつあるから。
「この地球上の全人口のうち、最も豊かな5分の1が80%の資源を所有し、最も貧しい5分の1は0.5%以下の資源しか所有していない」
いわゆる格差社会の深層を知ろう。【評者 斎藤貴男 ジャーナリスト】
| 憲法九条を世界遺産に | |
![]() | 太田 光 中沢 新一 集英社 2006-08-12 売り上げランキング : 30 おすすめ平均 ![]() 太田ドンキホーテとしてシリーズ化希望 憲法9条を博物館に 大田が中沢に圧されているAmazonで詳しく見る by G-Tools |
人気お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光氏と、文化人類学者であり気鋭の評論家としても知られる中沢新一氏。この一見相容れない2人が、日本国憲法第9条の今日的な意義について語り尽くした書。日に日に高まりつつある改憲派の声に異を唱える内容だが、通り一遍の反戦談議ではない。対話は戦前の童話作家、宮沢賢治が示した世界観の再評価に始まり、ついには「笑いが人を殺すこともある」といった過激な物言いにまで及ぶ。
太田氏は、憲法9条を「たった1つ日本に残された夢であり理想であり、拠り所」と称える一方で、突然変異の「珍品」として崇めるべきものだなどと皮肉を込めて斬る。中沢氏は太田氏の発言の裏に見え隠れする正当性を、学術的な立場から拾い上げていく。
| 公益を実践した実業界の巨人 渋沢栄一を歩く | |
![]() | 田澤 拓也 小学館 2006-08-25 売り上げランキング : 3391 おすすめ平均 ![]() 渋沢栄一を辿る道Amazonで詳しく見る by G-Tools |
幕末から明治、大正と激動の時代を駆け抜け、1931年に91歳で他界するまでに500社にも上る企業の設立にかかわった渋沢栄一氏。まさに日本経済の礎を築いた立役者の1人である。しかし、一部の例外を除いては企業や施設に自らの名「渋沢」を与えず、また一大財閥を形成することもなかったため、その偉業に対する敬意は次第にこの国から失われつつあるのも事実だ。本書はノンフィクション作家が渋沢氏ゆかりの地を訪ね歩き、その生涯と今に残すべき理念を再評価するもの。
明治政府では大蔵官僚として辣腕を振るうが退官、その後は実業家として国立銀行の設立や東京ガス、秩父セメント(現・太平洋セメント)、王子製紙、清水建設など日本の基幹産業起こしに奔走した。同時に教育事業にも尽力し、商法講習所(現・一橋大学)や早稲田大学、東京女学館、同志社大学など多数の大学の創設に関わった。
渋沢氏は、国が富むためには道徳と経済が合致すべきだとして、「企業は人なり」と説いた。「私がもし一身一家の富を積もうと考えたら、三井や岩崎(三菱財閥創業家)にも負けなかったろうよ」などと晩年に述懐していたと言う。利潤追求を最優先しがちな今日の風潮に対して、渋沢氏の教えをいま一度見直せと著者は訴える。
| 社員が進んで働くしくみ 「働かされない働き方」が強い会社をつくる | |
![]() | 桑原 耕司 PHP研究所 2006-07-27 売り上げランキング : 3800 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
バブル経済真っ只中の1988年、著者は大手ゼネコンを飛び出して、自らが理想とする建設会社「希望社」を創業した。希望社は官民の馴れ合いを否定し、談合を一切行わない。“常識外れ”と揶揄されることもあったが、「建築主に良い建築をより安く」の信念を貫き通して成長を持続しており、各方面から注目を集めている。
本書ではそんな会社を支えているユニークな仕組みを紹介するが、建設業界に限らず、あらゆる会社に「仕事の原点を見直そう」という提案でもある。キーワードは「働かされない働き方」だ。人件費は固定費ではないと言い切り、全社員に報酬は自ら稼ぎ出すものだという考え方を徹底している。内定者とて例外ではなく、ある研修では個々に会社から15万円を貸し出し、どのような事業でもよいので2カ月の間に利益を生むことを求める。元金は必ず返金、利益が出た場合は会社と本人が2対8の割合で分配する。
このような方法をすべての社員が受け入れるわけではないとも言う。事実、同社の18年間の社員在職率は20%に満たない。しかし著者はそれでもよいと言い、「多く採用して少なく育てる」やり方こそが、仕事を楽しみながら自力で利益を上げられる社員と出会う、唯一の方法だと主張する。
| 日本の経済システム改革―「失われた15年」を超えて | |
![]() | 鶴 光太郎 日本経済新聞社 2006-07 売り上げランキング : 58622 おすすめ平均 ![]() 良書ではない 全体をサーベイするには良いかも 読み応え有りですAmazonで詳しく見る by G-Tools |
経済産業研究所で上席研究員に就く著者が、近年の日本経済を多角的に分析しつつ、さらなる発展に向けて提言を行う書。著者が強調するのは、バブル経済崩壊後の停滞期、いわゆる「失われた10年」を「負の遺産」と見なすのは誤りという点だ。「はたしてこの期間は本当に『失われて』しまったのか」と疑問を投げかけ、特に停滞の一因を日本型経営システムの制度疲労だとする論理を真っ向から否定する。
景気が上向けば手のひらを返したように日本型経営を称賛するような単純な主張にも異を唱える。例えば金融において、金融機関が長期的に企業のサポート役を果たす旧来の「関係依存型金融システム」と、外国や個人にまで広く投資を求める「市場型」とは、相反するものではないと解説。それぞれが最適に機能する環境や条件とは何かを示す。経済システムとは社会の諸条件や環境の変化に応じて、必然的に進化し融合し合うべきものであると主張し、短絡的な見方の危険性を訴える。
今日生じている格差問題については、小泉改革が「市場原理主義」をこの国に根づかせたことが原因だとする論法を否定。「格差」の出発点は、1990年代に始まった雇用システムの変化が生んだ「歪み」だとして子細に諸原因を挙げ、改善への道筋を提示する。
| 戦う動物園―旭山動物園と到津の森公園の物語 | |
![]() | 小菅 正夫 岩野 俊郎 島 泰三 中央公論新社 2006-07 売り上げランキング : 20894 おすすめ平均 ![]() 動物園の使命とはなにか 「旭山」と「風太」の違いAmazonで詳しく見る by G-Tools |
「行動展示」と呼ばれる動物の見せ方で人気の北海道旭川市の旭山動物園。小菅正夫園長の30年来の親友が北九州市・到津の森公園の岩野俊郎園長だ。動物園のどん底期を経験し、再生に賭けてきた2人がその軌跡を語る。
小菅氏はかつて、市民や学校の先生が動物園と一緒になって子供のための事業を作り上げる到津遊園(現・到津の森公園)を見て、動物園の大きな可能性を感じたという。それが現在の動物園作りの原点となっている。入場者数の減少に苦しんだ時期に、動物園の社会的意義を自問。「野生動物の命を感じてもらうこと」と答えを出し、工夫を凝らした施設を導入して実現した。2人の姿からは、苦難の時期のリーダーのあり方を教えられる。動物園への愛情・思い入れも存分に伝わる。
| 二代目経営塾 | |
![]() | 関 満博 日経BP社 2006-08-18 売り上げランキング : 4536 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中小企業に横たわる「後継者問題」。著者は、中小企業の経営者となるにはよほどの覚悟が必要と指摘し、子供の頃から親の背中を見て、その苦労を身をもって知っている息子、娘が継承するのが望ましいと主張する。全国各地で事業を継承した後継者の行動、そこに秘められた思いを、「父の代の仕事を劇的に変える」「第2創業、新規事業分野に向かう」「引き継いだ仕事を着実に高める」など、6つのカテゴリーに分けて紹介する。
東京都内で最も元気な板金業として注目されている浜野製作所。浜野慶一社長は家業を継いだ直後に両親を亡くし、何も分からないまま必死に営業活動を続けた。「納期は絶対に守る」をモットーに、徹夜でもやり抜く。5年前に3~4社にすぎなかった受注先は口コミで約120社に広がっている。松山市の名門企業である農用運搬車メーカーをアテックスと社名変更したうえで電動車市場に参入させたのは3代目の村田裕司社長。介護保険が追い風となり、電動車は売上高の20%を占める中核事業の1つに成長した。
家業継承は、親が築いた資産をベースに新たな挑戦もできるまたとないチャンスだと強調する。「良質な後継者」が次の日本を作り上げると、後継者やその予備軍にエールを送る。
| トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇 | |
![]() | 『週刊東洋経済』村上ファンド特別取材班 東洋経済新報社 2006-07-28 売り上げランキング : 2502 おすすめ平均 ![]() 村上批判本です。 さすがの東洋経済 村上氏の正体とは…テレビのイメージと現実Amazonで詳しく見る by G-Tools |
村上ファンドのデビュー戦である昭栄への敵対的TOB(株式公開買い付け)以後、取材を続けてきた「週刊東洋経済」記者が、村上ファンドとインサイダー事件の背景を描く。
まず、村上世彰被告の極めて縁故主義的な内向きの体質を解説する。ファンド設立、投資先へのアプローチ、投資の出口戦略などの過程で、村上被告は個人的な人脈をフルに活用した。その人脈は主に「灘中学・灘高校」「東京大学」「旧通産省」「経済同友会」「ベンチャー」「六本木ヒルズ」の6つに大別できる。村上被告は人脈作りでは非凡な才能を発揮。特に宮内義彦オリックス会長を土台に人脈を広げていった。その広大な人脈を背景に、村上ファンドは投資のプロなら普通はやらないような“縁故投資”を実行し、インサイダー取引にはまっていった。
村上被告は「プロ中のプロ」を自任したが、果たして本当に「金融のプロ」「株式投資のプロ」なのか。本書は、村上被告が語ってきた「小学生の時から始めた株式投資」「子供の頃からの愛読書は『会社四季報』」などのエピソードが、いずれも信憑性に乏しいと明かす。自身の不足分を埋めるために意識的にこれらのエピソードを語り、人格を偽装した稀代の「トリックスター」だと説明する。
| 世界最強CMOのマーケティング実学教室 | |
![]() | ブラッドフォード・C・カーク 田中 洋 山本 暎子 ダイヤモンド社 2006-08-25 売り上げランキング : 912 おすすめ平均 ![]() マーケティングの実学を「味わう」。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
英蘭ユニリーバ、米20世紀フォックスなどでマーケッターとして手腕を発揮してきたCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)が記すマーケティングの教科書。マーケティングリサーチの手法、広告術、広報戦略、流通戦略などを実践的に解説する。
マーケティングリサーチには、消費者インサイト(深層心理)の発見のために行う場合と、意思決定の根拠として使うために行う場合がある。マーケッターは目的や予算、時間的条件に応じて、行動調査、インタビュー、アンケートなどを組み合わせる。グループインタビューのような定性調査を行う時は、ベストの布陣で臨むことが重要。多くのインサイトはインタビュールームの裏側で得られるからだ。
広告は消費財マーケティング業務の正念場だとする。マーケッターは製品のカテゴリー、ブランドコンセプト、ブランドパーソナリティーを定義し、ブランドポジショニングを定めたうえで広告代理店と一緒にクリエーティブ戦略を構築する。自分の仕事を担当する人材の質、量を含め、すべての面で最高の環境を手に入れられるよう、自分自身とブランドを積極的に代理店に売り込むことも必要だと指摘する。
マーケティング現場で得たノウハウやテクニックの要素が詰まっている。
| 小沢主義 志を持て、日本人 | |
![]() | 小沢 一郎 集英社 2006-09-01 売り上げランキング : 412 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 誰が日本を救うのか―ポスト小泉・有力政治家に見る人間力 | |
![]() | 篠原 文也 致知出版社 2006-08 売り上げランキング : 243224 おすすめ平均 ![]() ポスト小泉たちのそれぞれの素顔Amazonで詳しく見る by G-Tools |
有力政治家の原点を探る
安倍晋三・自由民主党新総裁が誕生し、「ポスト小泉時代」が幕を開けた。我々国民には、命運を託す政治家たちが示す目先の政策だけではなく、個々の政治的信条や人となりを改めて検証し直す必要がある。そのヒントになり得る書がランクインした。
『小沢主義』(丸善丸の内本店2位)は、来年夏の参院選で巻き返しを狙う民主党の代表、小沢一郎氏が、自身の信念である「日本の自己改革」について綴った書だ。「民主主義国家とは何か」という根本的な問いに始まり、小沢氏の目に映る戦後政治の深刻な“歪み”をあぶり出す。肥大化する官僚機構に関しては小泉構造改革も効を奏さず、日本はいまだに「官僚社会主義国家」であると言い切る。政治家はもちろん、国民全体の意識改革が不可欠だと訴える。
『誰が日本を救うのか』(丸善丸の内本店5位)は、安倍氏をはじめ、麻生太郎氏や谷垣禎一氏、中川秀直氏ら10人の与党有力政治家と、政治コメンテーターである著者の対談をまとめたもの。小泉路線の堅実な継承者を標榜する安倍氏も、目指す政治家像を問われると、激動の時代に我流を貫いた高杉晋作や英国のチャーチル元首相の名を挙げ、野心家の一面をのぞかせる。


ポジティブに生きる人に神は優しい





残念!寄せ集め資料で作った新聞のような解説本でした!
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