メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2006年3月13日~3月27日

文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)ジャレド・ダイアモンド 楡井 浩一

草思社 2005-12-21
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文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)ジャレド・ダイアモンド 楡井 浩一

草思社 2005-12-21
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『銃・病原菌・鉄』でピュリツァー賞を受賞した著者の新著。前書は、生態系や地形の特徴など環境要因で文明が発展するメカニズムを説いたが、本書は文明の“崩壊”に焦点を当てる。

古代マヤ、イースター島、グリーンランドのノルウェー人入植など、様々な時代の様々な場所で崩壊した社会の実例を検証する。社会の発展が人口増加を呼び、食糧・エネルギーの消費が増大することで環境への負荷が過大になり、崩壊へと至る道筋を描き出す。

下巻ではアフリカのルワンダ、中国、オーストラリアなど現代の事例も取り上げる。トップダウン方式で持続可能な林業を構築した江戸時代の日本など崩壊を免れた例も紹介し、文明崩壊を回避する方法を探る。

■2006/03/27, 日経ビジネス, 123ページ

日はまた昇る――日本のこれからの15年
日はまた昇る――日本のこれからの15年ビル・エモット 吉田 利子

草思社 2006-01-31
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著者に聞く-パーソナルライフ-ビル・エモット 氏[英エコノミスト誌編集長] 復活、成長にお墨付き-『日はまた昇る』

バブルのさなか、いち早くその崩壊を予言した著者がこれからの15年を展望。着実に変化を積み重ねた「日本の復活はリアル」「将来成長も楽観」と強調する。中国や韓国の反日感情、靖国問題などについても明快に論じる。

――急ピッチの株価上昇などでバブル再来との懸念も出ていますが、どう見ますか。

日本の景気回復は実体を伴ったリアルなものです。消費拡大が見られ、企業も負債、設備、雇用の3つの過剰を解消しつつあります。日経平均株価の上昇ペースが速すぎたことで、今は調整局面にありますが、これはミニバブル崩壊とは全く違います。実際の企業収益の成長が追いつくまで、株価が足踏みをして待っているということでしょう。株価収益率20倍以上の水準はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)で説明しきれない部分もありますが、今後の経済成長について私は至って楽観的ですよ。

ライブドア事件も株価操作、粉飾という個人の犯罪の問題で、資本市場への影響は大きくありません。ライブドア自体が実体の乏しい会社で、マクロ経済に及ぼす影響も限定的です。現に株式相場は堀江貴文被告が逮捕された後、3日間は下落したが、すぐに回復したじゃないですか。こうしたインサイダー取引のような証券犯罪は、日本では1980年代から珍しくなく、ホリエモンも特段、目新しい事件でもない。むしろ私が興味深く感じたのは、検察がこれまでになく迅速に動いたことです。資本市場が正常化する、厳しい運営のための規範が作られていくという点において、歓迎すべき動きだと思います。

――小泉純一郎内閣に代わる政権が秋に誕生します。東アジア諸国との関係改善も大きな課題です。

郵政民営化に見られるように、経済活動における官(政府)の役割はますます小さくなっていく。この流れは変わらないでしょう。また巨額の財政赤字、政府債務を減らすよう必死で努力しなくてはならない点も同じです。

問題は中国や韓国など、隣人との接し方です。アジア経済が長期的に欧州連合(EU)のような共同体を構築していくうえで、リーダーシップを取るべき立場にあるのが日本です。しかし、今のままでは逆に緊張関係に発展しかねない。靖国参拝で隣国から反感を買うのは、本来は不要なことで、実につまらないことでもあります。私は、靖国神社を改革して、戦没者や戦争の犠牲者を祭る国立の慰霊施設と位置づければよいと思っています。政府が靖国神社を管理するのです。そして、その改革ができるまでは首相は靖国に参拝すべきでないと考えます。

――日本の多くの読者はこう感じていると思います。15年かかって「日はまた昇る」局面を迎えましたが、いつか再び「日はまた沈む」のではないかと…。

そんな先のことは誰も予測できないし、15年ごとに循環的に動くわけでもないでしょう。ただ忘れてならないのは、この15年間の変化は、緩やかではあったが非常に深いものだったということです。80年代の英サッチャー政権が行ったようなショック療法ではなく、ゆっくり着実に改革を積み重ねて今の姿になったわけです。1929年にバブルが崩壊した世界恐慌後の米国が、移民や金融システムなど多くの問題を50年代までかかって解決したのと同じパターンです。

日本では今、所得や将来の希望を巡る格差が問題になっているようですね。資本市場の役割が大きくなって規制緩和が進めば、超お金持ちが増え、さらに所得格差が開く可能性もあります。いつとは言えませんが、そうした日本の将来の姿について、再び本を書く機会があるかもしれません。

ビル・エモット(Bill Emmott)氏
1956年生まれ。英エコノミスト誌東京支局長として1983~86年に日本滞在。90年、著書『日はまた沈む』がベストセラー。93年編集長。近く勇退。

■2006/03/27, 日経ビジネス, 127ページ

ゼロ金利との闘い―日銀の金融政策を総括する
ゼロ金利との闘い―日銀の金融政策を総括する植田 和男

日本経済新聞社 2005-12
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歴史に例を見ない量的緩和策の解消とともに、日本銀行の動向に改めて注目が集まっている。ゼロ金利政策、株式や資産担保証券の買い取りなど、デフレ脱出のために発動してきた施策に対しては、いまだに賛否両論が渦巻く。本書はそうした金融政策の基本となった理論を解説し、さらに効果について検証したもの。

著者は現在、東京大学大学院の経済学部長であり、1998年から昨年までは日本銀行政策委員会の審議委員として、各種政策決定の中枢にかかわった。ゼロ金利やその後の量的緩和は、「中央銀行が、それをデフレ懸念払拭まで継続するという約束」、すなわち「時間軸政策」と一対になった時に効果を示すと論じる。時間軸効果があった場合となかった場合の国債の長期金利を比較して見せ、ある程度良い影響をもたらしたと分析する。

とはいえ、金融緩和策全体の効果は、期待したほど浸透しなかったとも総括。その原因の1つは、日本経済が抱える「構造問題」だと言い、マクロの視点から解説を加える。「より踏み込んだ施策を日銀は講じられなかったのか」という疑問に対しては、中央銀行が取れる財務リスクには限界があると論じ、国民が選ぶ政治家が取るべき政策との違いなどについて持論を示す。

■2006/03/27, 日経ビジネス, 125ページ

The Panasonic Way 松下電器「再生」の論理
The Panasonic Way  松下電器「再生」の論理長田 貴仁

プレジデント社 2006-01-28
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技術経営や経営者論をテーマに様々な研究を行っている著者は、特に松下電器産業グループの歴史と将来に注目する。同社には、21世紀に勝者として生き残る製造業のあるべき姿が見え隠れしていると言う。「失われた10年」を象徴するかのように低迷が続いた時代から、2003年度を境にV字回復を成し遂げた秘密に迫る。

その牽引役を果たしてきたのが2000年に社長に就任した中村邦夫氏だ。著者は中村氏が社長就任に先立って掲げた「破壊と創造」というキーワードを軸に、同社が断行したグループ事業の再編、「Panasonic」ブランドのグローバル化戦略、“松下幸之助精神”を踏襲しつつ再構築した新たな経営哲学などについて論じる。

トヨタ自動車との比較がユニークだ。「日本最強の企業」と呼ばれて久しい同社の一部には今、驕りが蔓延していると感想を述べ、「経営の品質で松下がトヨタを超える日を待ち望んでいる」とまで言う。しかし、それは批判というよりも、松下がかつて陥った罠から学ぶべき教訓が多いというトヨタへのエールである。また、一時の低迷期から再興に向けて動き始めた好敵手のソニーが着手した改革と、中村改革の中身を比較して、共通点や相違点などを示していく。

■2006/03/27, 日経ビジネス, 125ページ

団塊諸君 山もいいぞ―夢と勇気とサムマネー
団塊諸君 山もいいぞ―夢と勇気とサムマネー大野 剛義

日本経済新聞社 2005-12
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団塊世代を顧客として取り込む施策に躍起になっている企業は少なくない。しかし、シニアビジネスに詳しい著者は「誤解が生じている」と警鐘を鳴らす。団塊世代を個々の消費行動という視座から見ると、それは決して「塊」ではなく、言わば「多様なミクロ市場の集合体」だと持論を述べる。

つまり一筋縄ではいかないということだ。多くの企業で“常道”とされているマーケティングの手法や売り方そのものが間違っていると指摘し、シニア市場に斬り込むヒントを挙げていく。まずは市場調査の定番になりつつある「ネットアンケート」という手法について、シニアに関しては役に立たないと注意を促す。それよりも現場の販売員が記した「顧客ノート」や、顧客が綴った「ご意見はがき」などのアナログ情報を重視せよと言う。

さらにシニアは金銭的な価値よりも精神的な価値に重きを置くから「商品ではなく体験を売れ」と助言して、中高年向けパック旅行などの成功事例を示す。また、練りに練った広告コピーよりも「商品に惚れ込んだ顧客自身が『語り部』になると売れる」と言う。心の満足度を得たい顧客が「他人に自慢したくなるようなコミュニティ文化」を醸成できるような販売戦力が勝ちを呼び込むと説く。

■2006/03/27, 日経ビジネス, 125ページ

「かわいい」論 ちくま新書
四方田 犬彦 (著)

様々な場面で使われる「かわいい」という形容詞。著者は「かわいい」を21世紀の日本の美学と位置づけ、その分析を試みる。

まず「かわいい」の源流が11世紀の『枕草子』にあり、江戸期の歌舞伎や大衆小説を経て、太宰治ら現代の作家にも受け継がれ、独自の美学へと洗練されてきたことを解説する。また、「かわいい」の構成要素として、美しさのほかに醜さ、不気味さなどのグロテスクも微妙に交じっていることを指摘。重要な属性である小ささと、日本文化の「縮み」志向との関係も探る。

ハローキティ、パフィー、ポケモンなど、「かわいい」が世界で受け入れられ、巨大な市場を作り出している背景を検証。「かわいい」文化を多方面から分析したユニークな1冊である。

■2006/03/20, 日経ビジネス, 115ページ

団塊諸君 山もいいぞ―夢と勇気とサムマネー
団塊諸君 山もいいぞ―夢と勇気とサムマネー大野 剛義

日本経済新聞社 2005-12
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著者に聞く-パーソナルライフ-大野 剛義氏[治コンサルタント社長] お金は少しだけがいい-『団塊諸君  山もいいぞ』

著者は元大手都市銀行の専務で、バブルの処理に粉骨砕身した典型的会社人間。その人が退職後、かつては忌み嫌っていた登山と出合い、人生が大きく変わる。定年を迎える団塊世代に向け人生は何かを問い直した1冊。

――本の終わりに出てくる「夢と勇気とサムマネー」というタイトルが、今の世相を強烈に風刺していますね。

古い方なら覚えているかもしれませんが、この言葉は映画「ライムライト」の中でチャーリー・チャップリンが話すセリフです。夢と勇気があれば、お金なんか少しあればいい。必要以上のお金は、人生を決して豊かにはしないというメッセージです。ライブドアの事件などを見ていて、バブルに踊って深く傷ついた過去の教訓が全く生かされていないと思いましたね。そんなにお金を儲けてどうするんでしょう。

私はこの本を書き上げた後、タンザニアのキリマンジャロと東京の雲取山に登りました。アフリカでは、山岳ガイドなどを雇う登山費用なども全部入れ、おまけに帰りにはエジプトも観光して使ったお金は44万円。雲取山では運賃はもちろん宿泊に温泉と料理、極上の酒をつけて1万7000円だけ。これで、俺の人生は最高だなぁ、と思わせてくれるんですよ。

企業の一線から身を引くと、お金はなくても時間はたっぷりできます。いくらでも安く旅行する方法を見つけられる。その作業も楽しいものです。アフリカ行きの飛行機はもちろんエコノミーでしたが、すいている便を探し、客室は3分の1しか埋まっていませんでした。ホテルも最盛期なら1泊7万円する部屋に1万円で泊まれました。

――登山は昔からの趣味ではなく、60歳を過ぎて都市銀行の役員を退任した後に始めたそうですね。家族からはものすごい反発を受けたとか。

現役の銀行マンだった頃は、わざわざ危険を冒して山に登る意味が全く分かりませんでした。遭難のニュースを見るたびに「救助隊の人たちに迷惑をかけるなんて、何とわがままな人たちだ」と家族に言っていたので、私が登山を始めると聞いた妻と子供は目を丸くし驚き、猛反発されました。

それでも、私が本気でトレーニングを開始し、三日坊主にもならずに真剣に取り組んでいるものだから、国内の山を登ることは許可されました。しかし、エベレストに行くと言った時には、さすがに拒否されましたね。兄にまで「その年で嫁さんを泣かせるようなことはよせ」と諭されました。

でも、妻とよく話し合い、万が一私が死んだ場合のお墓のこととか相続、遺言のことなども一気に片づけてしまうと、あれだけ反発していた妻が、意外と簡単に折れてくれました。夫婦がよく話し合うチャンスを作ったのがよかったのだと思います。

――これから団塊世代は大量定年時代を迎えます。彼らにはどんなメッセージを込めたのでしょうか。

団塊の世代は意外にお金を持っています。親から不動産を相続しているケースが多いし、老後の蓄えも十分に持っている。働き蜂の人が大半だから、定年後も生活には困らないでしょう。ただ定年になったら、自分を見つめ直して会社人間から脱却してほしい、というのが私のメッセージですね。

典型的な会社人間だった私が登山によって全く新しい自分を発見したように、夢と勇気と少々のお金があれば、新しい人生が待ち受けています。私は70歳を超えましたが、最近は1年1年、今年が人生最高の年だと感じています。もし、多くの団塊の世代の人たちがそうなったら、日本という国は大きく変わるんじゃないでしょうか。団塊世代にはそのパワーがあります。

大野剛義(おおの・たけよし)氏
1935年生まれ。58年慶応義塾大学卒業、三井銀行入行。87年取締役、常務、さくら銀行専務を経て96年にさくら総合研究所社長。9QQ9年から現職。

■2006/03/20, 日経ビジネス, 117ページ

ドラッカー わが軌跡
ドラッカー わが軌跡P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-01-27
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『傍観者の時代』の新訳。第1次世界大戦と第2次世界大戦の間の四半世紀に著者が出会った人々を描き、自らの軌跡をたどる。フロイトやタイムワーナーの創始者であるヘンリー・ルースのような有名人から、祖母、小学校時代の教師まで、著者の心を打ち、強く印象に残った人物が登場する。

1937年、著者は英国紙の在米特派員、英金融機関の在米投資顧問として米国に渡った。その後、ゼネラル・モーターズ(GM)のマネジメントと組織について調査する機会を得る。GMで出会った幹部たちは「今日に至るも鮮やかに脳裏に残る傑出した人物」たちだった。特に、CEO(最高経営責任者)のアルフレッド・スローンは、誰に対しても親身で人好きのする性格で、「ミスターGM」と呼ばれ、不動の権威を保持していた。スローンの全面的な協力を得て調査し、刊行した『企業とは何か』は、組織構造、社会的責任、意思決定プロセス、地域関係、環境問題までを取り上げたマネジメント論の先駆けとなった。

登場人物の生き方や様々なエピソードを読むにつれ、2つの戦争に揺れ、ナチズムに翻弄された欧州、不況であるがゆえに人を助け、受け入れようとする“お人よし”だった米国など、当時の社会の様子が伝わってくる。

■2006/03/20, 日経ビジネス, 117ページ

家族的経営の教え
原 邦生 (著), 海田 悠

7年連続の増収増益を達成し、売上高経常利益率10%を誇るメリーチョコレートカムパニー。本書は2代目社長として創業者である父の教えを引き継ぎ、発展させた著者の経営論だ。

創業者は「経営者は親になれ」と繰り返したという。著者は、メリーの成長の背景に「家族的経営」があるとする。社員は家族という気持ちで接してこそ、その潜在能力を発揮させることができるからだ。実力主義や成果主義を導入する企業が増える中、メリーは一貫して終身雇用制度と年功序列による給与体系を維持している。成果主義に走ると、売れればいい、作ればいいということになりかねない。人間らしい血の通ったサービスを行うためには、社内でも血の通った評価制度が必要との方針だ。家族的経営では、社員同士が信頼で強く結びつくことが重要として、疑心暗鬼のもとになりがちな給与データはすべて公開している。

積極的に進めるIT(情報技術)武装の中身も紹介。大手企業に先駆けて店舗情報システム、テレビ会議システムを導入したほか、現在は独自開発のPOS(販売時点情報管理)システムで顧客情報を収集。商品企画、陳列、生産・販売計画などに活用している。

多くの写真と語録の掲載で、著者の人物像にも迫る内容となっている。

■2006/03/20, 日経ビジネス, 117ページ

エコロジストのための経済学
エコロジストのための経済学小島 寛之

東洋経済新報社 2006-01-27
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環境問題は今、世界中で関心を集めるテーマ。にもかかわらず、なかなか改善しないのはなぜか。経済学者である著者は「環境問題は経済問題である」と指摘。人間が賢く合理的に経済行動をする生き物であるがために、簡単に解決しないと説明する。本書で、具体例を挙げながら、現実の環境問題と関連のある経済理論を紹介していく。

例えば、地球温暖化問題に絡めて「コモンズの理論」を取り上げる。コモンズの理論とは「オープンアクセス可能なコモンズ(共有地)があると、キャパシティーを超えて過剰利用され、回復不能なまでに荒廃してしまう」という考え方。オープンアクセスにまき散らされる二酸化炭素が荒廃をもたらす地球温暖化と通ずるところがある。回避するには自由競争の論理に任せず、掟によって管理することが必要であり、京都議定書はそのような掟の最初の取り組みと位置づける。そのほか、大気汚染問題と戦略的ゲーム理論、干拓・ダム問題とケインズ理論、水俣病とコースの定理などを紹介する。

環境問題が経済学的にいかに難しい問題かを示したうえで、正義感を振り回す安易な提案は問題をこじらせるだけと指摘。本書では解決策などはあえて取り上げず、問題解決には市民の相当の「覚悟」が必要であると訴える。

■2006/03/20, 日経ビジネス, 117ページ

日本のがん医療を問う
日本のがん医療を問うNHKがん特別取材班

新潮社 2005-12-20
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欧米先進国では、ガン死亡率が下がり始めているのにもかかわらず、我が国では依然として右肩上がりが止まらないのはなぜか。医療現場の構造的な問題や国のガン対策に疑問を抱いたNHK取材班が、米国の医療改革と比較しつつ、この問題を徹底究明する。昨春放送されたNHKスペシャル「シリーズ日本のがん医療を問う」の内容にさらに取材を加えて再構成した書。

世界標準薬として各国で使用されている抗ガン剤が、臨床試験体制の不備などによって日本では使えない。全国でガンの集団検診を実施していても、見落としが絶えない。一方、米国には適切なガン治療を行う医療施設を認定する厳格な基準と、それを監視する権限を持つ委員会、言わば「ガン医療の番人」が存在する現状などを報告する。

■2006/03/13, 日経ビジネス, 139ページ

千円札は拾うな。
千円札は拾うな。安田 佳生

サンマーク出版 2006-01-20
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著者に聞く-パーソナルライフ-安田佳生氏[ワイキューブ社長] 嫌な顧客とつき合わない-『千円札は拾うな。』

著者は中小企業向け経営戦略・人事採用コンサルティング会社の社長。未上場の中堅ながら、大学生の就職ランキングで常に上位に挙がる人気企業だ。既成の常識を捨て去ることで、人や会社は成長できると説く。

――「売り上げを伸ばすために顧客を捨てる」など、常識を覆す指摘が目を引きます。

実際、うちの会社では「嫌なお客は断る」という方針を取っています。価格をいつも値切ったり、何かあるとすぐに呼びつけるようなうるさい顧客は、社員の仕事に対するモチベーションを下げるだけだからです。

ただ、そうやって顧客を切れば、確実に得られるはずの売り上げを失い、新たな顧客を見つけて稼がなければならなくなる。これも結構きついことです。でも、どちらの苦労を選ぶかと考えれば、嫌な客を我慢するよりもずっと健康的だと思いませんか。好きな客とだけつき合えば気持ちよく仕事ができますし、売り上げだって伸びていく。「苦労は買ってでもしろ」というのは真理ですが、買ってでもすべき苦労と、そうでない苦労があるのです。

――目先の利益にとらわれると、もっと大きな利益を見失うことを、タイトルで「千円札」に例えましたね。

以前、朝礼を毎日開いているという顧客に、「やめたらどうですか」と提案したことがあります。そうすると、「貴重な情報交換の場だから、やめることはできない」と言うんですよ。朝礼をやるのと、やらない場合との比較しかしないから、そういう結論になってしまう。私が言いたいのは、朝礼にかけている時間やエネルギーを何か別のことに傾けたら、もっと大きな利益につながる可能性はないか、改めて考えてみてはどうかということなんです。

大して儲かってもいない事業を断ち切れない会社も、“千円札”にしがみついているんです。なまじゼロじゃなく、少しは利益が出ているからやめられない。そうじゃなくて、もっと大きな利益、つまり100万円儲かるような方法を考え、実行してみることが企業の成長につながっていく。失敗することもあるかもしれませんが、現状にしがみついているよりもいい。それこそ環境変化への対応と言えるでしょう。

――「人材への投資を惜しむな」と強調しています。とはいえ、人への投資は設備投資と違い、その効果を測定するのが難しいですね。

確かにカンでしかつかめない。すぐに売り上げや利益の増加につながるなら、どの経営者も積極的に人に投資するでしょうが、そういうものでもありません。

しかし、人に投資した効果がマイナスになることはまずない。投資したカネの何倍もの価値を会社にもたらしてくれることだってあります。決算書には出てこないけれど、社員がもたらすそういう付加価値が結局、企業の力の差になって表れるのです。私自身は、人材に対する投資は他の投資と比べて非常にリターンが大きいと思います。だから、うちは採用活動に莫大な時間とコストをかけています。大事な顧客への営業の時間を割いてでも、採用のために時間を費やしますから。

会社の中にカフェやワインセラーを設けているのは、気持ちよく社員に働いてもらうためです。残業はしなくていいし、時間の管理もしない。それでも社員がサボらず、熱心に働いてくれるのは「信頼されている」という実感があるからです。利益を社員にすべて還元すれば、自分たちの力でその快適な環境を維持しようという気になりますよ。そこそこの投資で優れた人材を確保しようとしても無理ですね。

安田佳生(やすだ・よしお)氏
1965年大阪生まれ。リクルートでの営業職を経て、90年にワイキューブ設立。著書に『採用の超プロが教える  できる人できない人』など。

■2006/03/13, 日経ビジネス, 131ページ

官邸主導―小泉純一郎の革命
官邸主導―小泉純一郎の革命清水 真人

日本経済新聞社 2005-12
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大臣というポストに対する国民のイメージが変わりつつある。かつては党内派閥、族議員、官僚の思惑など、自分たちがあずかり知らぬところで成立する“妥協の産物”というイメージが拭えなかった。しかし、今は「小泉純一郎内閣総理大臣自らが呼び集めた閣僚たち」という印象が強い。

本書は、日本経済新聞社の経済解説部編集委員である著者が、過去10年間に官邸で繰り広げられた政治史を取材、分析し、政策決定のメカニズムが官僚主導から官邸主導へと変貌を遂げる過程を明らかにするドキュメント。

不良債権処理を巡ってリーダーシップを一切発揮できず、旧大蔵省に処理を丸投げした村山富市政権に始まり、政治主導の道へと転じるきっかけを作った橋本龍太郎内閣、小渕恵三内閣における、政官財の主役たちによる駆け引きを描く。また、小泉時代への幕間と見られがちな森喜朗政権下で、今日の官邸主導政治の象徴である「経済財政諮問会議」のお膳立てがなされていた事実を明らかにする。

小泉改革が“変人のこだわり”などでは決してなく、官邸主導を目指す改革の必然であったことを示すと同時に、「冷静な意志と戦略を併せ持った改革者」という、小泉首相が持つもう1つの姿を浮き彫りにする。

■2006/03/13, 日経ビジネス, 141ページ

発明家たちの思考回路 奇抜なアイデアを生み出す技術
発明家たちの思考回路 奇抜なアイデアを生み出す技術エヴァン・I・シュワルツ 桃井緑美子

ランダムハウス講談社 2006-01-27
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今、世界に「発明部」と名のつく部署を持つ企業がどれだけあるだろうか。本書はそんな疑問を出発点にする。画期的な発明によるイノベーションが企業を育て、社会を豊かにしてきたことは疑いもない事実ではあるが、「発明は本業の副産物か添えものにすぎなく、発明がいたるところでないがしろにされている」という姿が現状であると指摘する。

画期的な発明とはどのような人材、環境から生み出されるのか。本書では、エジソンやノーベルといった歴史上の偉大な発明家の所業と、様々な分野で活躍する現代の発明家たちを子細に取材し直して、その秘密を解き明かす。

まずは発明の“始まり”に注目する。想像力と現実の観察力を駆使したところから生まれる「可能性の発見」こそが発明家の最初の仕事だと言う。

発明の初期段階は「すでに利用されているものの欠点を改良する」「人が気づいていない可能性を見つける」「電球、飛行機のような大きなニーズに挑む」「蒸気機関、レーザーのように発明した当人の予想以上の用途への応用が後になされる」という4つのタイプに分類が可能だと解説し、それぞれの実例を示す。また、失敗を生かした事例、発明を利益に変える特許の事例などについても紹介する。

■2006/03/13, 日経ビジネス, 141ページ

大賀典雄、15歳に「夢」を語る
大賀典雄、15歳に「夢」を語る大賀 典雄

丸善 2006-01-26
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ソニーの名誉会長を務め、日本経済団体連合会顧問に就く著者が、「夢」「個性の育成」をテーマに自らの半生を振り返る書。

「今は何をやらせてもソツのない人が多すぎる」と語り、若い人たちには「小さくまとまるな。一つのことをとことん極めよ」とエールを送る。幼少期には機械いじりと音楽に夢中になったと言い、そんな一途さを認めてくれた両親や先生の存在を明かす。それがビジネスパーソンとして働く自分の基盤となり、強みになったと振り返る。

実際にCBS・ソニーの社長時代の採用面接で「大学の成績表はいらないから、小学校の成績表をもってきてください」と指示したこともあったと言う。声楽家を志して入学した東京芸術大学で、テープレコーダーを必要としたことがソニーとの出会いだった。国産初のテープレコーダーを芸大に導入すべく、旧文部省に自ら直談判して予算を得たという秘話を明かす。

その頃にソニーの創業者である井深大氏、盛田昭夫氏と出会い、「昼間はソニーに勤めなさい。夜はあなたの時間だから、音楽家をやったっていいじゃないですか」と口説かれたと言う。夢を夢で終わらせずに現実社会で貫こうとする人間には、必ずそれを支えてくれる人が現れるものだと説く。

■2006/03/13, 日経ビジネス, 141ページ

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