メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2006年1月9日~1月23日

いま知りたい日本国憲法
いま知りたい日本国憲法東京新聞政治部

講談社 2005-11
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永田町では憲法改正の論議が盛んだ。本書は改憲、護憲の先入観なく憲法を理解するため、各条文を知るべきポイントに絞って解説したハンドブック。東京新聞、中日新聞の連載「逐条点検・日本国憲法」を単行本化した。

改正論議の最大の焦点が第9条。本書は「戦争放棄」をうたう1項の内容は必ずしも日本独自のものではなく、「国際標準」に過ぎないと説明する。戦力の不保持に踏み込んだ2項こそが特徴的な内容で、平和主義の核であり、改正に当たっては、2項をどう扱うかに注目すべきだと指摘する。

表現の自由を定めた第21条と個人情報保護、教育を受ける権利を定めた第26条と義務教育費の国庫負担問題など、今日的な問題が憲法と密接に関わっていることが実感できる。

■2006/01/23, 日経ビジネス, 81ページ

本当に「中国は一つ」なのか―アメリカの中国・台湾政策の転換
本当に「中国は一つ」なのか―アメリカの中国・台湾政策の転換Jr.,ジョン・J. タシク Jr.,John J. Tkacik 小谷 まさ代

草思社 2005-12
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著者に聞く-パーソナルライフ-ジョン・J・タシク・Jr. 氏[ヘリテージ財団中国政策専門研究員] 正しい対中政策を問う-『本当に「中国は一つ」なのか』

米国の曖昧な「1つの中国」政策は中国の台湾に対する主権を認める印象を与える。対中政策専門家が台湾と中国両国の武力衝突を助長する米外交に警鐘を鳴らす。中国政府の戦略に正しく対応すべきだと主張する。

――米国が長年貫いてきた「1つの中国」政策は今や限界に来ていると主張しています。

米国は外交上「1つの中国政府しか認めない」という意味で「1つの中国」という表現を使ってきました。中国の台湾に対する主権を認めたわけではないのです。しかし曖昧な政策名称のため、あたかも「台湾は中国の一部だ」と米国が認めているかのような印象を与えてきたのです。

実際に中国は「台湾に対して主権を持っている」という根拠に基づき、台湾の独立を阻止するためには武力行使も辞さないと表明しています。

実態に即さない名称を使い続ければ台湾と中国両国の武力衝突を米国が承認しているとも受け取られかねない。だからこそ、私は米国の本来の意図を反映しない政策名称は変更すべきだと主張しているのです。中国はメンツを重んじる国です。「1つの中国」政策も北京のメンツを保つよう工夫して名づけられた政策の名称でした。しかし、この政策に対する明確な説明や定義がなされてこなかったために、米国の政治家もこの政策の持つ意味を正確に理解できていません。

もはやこの名称はメンツを保つための法的な虚構ではなく、中国の台湾への武力行使を黙認するものになっています。中国の暴走を止めるためにも、米国は「1つの中国」政策を放棄すべきだと思います。

――「1つの中国」を主張する中国の共産主義そのものが、岐路に差し掛かっているという見方もありますね。

国際化が進み、中国が世界の資本主義国家と接触している今、中国の共産主義の正当性が問われています。

ある西欧のメディアが中国の広東省の農村部で起きた反政府デモを報じたことがありました。汚職を行った村長に村民が抗議デモを起こしリコールを断行、退任させたというものでした。

この報道を聞いた時、私は「中国も変わった」と感じました。しかし、1週間後には政府が村民にこの抗議を撤回するよう求め、事件を報じた記者も暴力行為を受け、何事もなかったかのような状態に戻ってしまったのです。ただし以前はこうした住民のデモ自体、考えられませんでした。指導力が低下したことで、中国の共産主義政府には明らかに焦りが見えます。

中国政府は共産主義を完全に理解し、国民を豊かにできるという根拠に基づいて自らの権力を正当化してきました。しかし、国の繁栄に共産主義の指導は不要だとの認識が高まったため、アジアの覇権を握ることで政権基盤を維持しようとしているのです。

――中国の経済発展で日中関係が重要になる一方、外交面での冷え込みが懸念されます。

中国はアジアでの覇権を握るために、日本をアジアの二流国に位置づけたいと考えています。事あるごとに日本を攻撃してくるでしょう。

それが最も端的に表れているのが小泉純一郎首相の靖国参拝に対する批判です。昨年春の参拝に伴う抗議デモは、明らかに中国政府が扇動し起こしたものです。しかし、デモによって「中国は恐ろしい国」という印象を日本企業に与えたことは中国政府にとって誤算でした。日本企業の対中投資を再検討させる契機となってしまいました。

私は小泉首相の毅然とした態度を評価しています。安易な譲歩は、中国のさらなる不当な要求を招くと懸念するからです。中国政府の方針を正しく理解し、中国との外交を慎重に検討すべき時に来ていると言えるでしょう。

ジョン・J・タシク・Jr.(John J. Tkacik, Jr.)氏
1949年生まれ。国務省に23年間在籍し、中国広州総領事館副領事、国務省中国担当分析官などを務める。2001年から現職。

■2006/01/23, 日経ビジネス, 83ページ

中国がひた隠す毛沢東の真実
中国がひた隠す毛沢東の真実北海 閑人 寥 建龍

草思社 2005-09-25
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star本当の中国を知りたいなら・・・
star中国・アジア史の再考

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中国共産党の古参幹部が、「建国の父」毛沢東の実像と失政の実態を明らかにする。厳しい言論統制の中、ペンネームで香港のオピニオン誌「争鳴」に綴った文章24編をまとめた。

毛沢東統治下の中国では、4000万人以上の人的被害が生じたとされる。本書は、今まで明らかにされてこなかったエピソードを紹介する。例えば、1930年代初頭、紅軍(人民解放軍の前身)の内ゲバ事件では、毛沢東がAB団(国民党の反共右派組織)分子抹殺の名目で紅軍将兵を大量殺戮したという。内外から理想郷と憧憬された延安時代にも、実は共産党内では「整風運動」と名づけられた凄惨な粛清が行われていた。中国を代表する文化人・学者の迫害も熾烈を極めた。

毛沢東の統治システムを最も特徴づけるのが特務政治。一般民衆、末端組織の党・政幹部に対する制度と省・軍クラス以上の高級幹部に対する制度とを巧みに使い分けた。前者の代表例として全国に設置した「告発摘発箱」、後者の代表例として、幹部を警護すると同時に監視する「警護制度」、幹部に仕えつつ、毛沢東にのみ忠誠を尽くす「秘書制度」などを解説する。

空虚な毛沢東賛美を続け、恐ろしい歴史を隠してその政治手法を踏襲しようとする現政権を手厳しく批判する。

■2006/01/23, 日経ビジネス, 82ページ

未来から選ばれる企業 オムロンの「感知力」経営
未来から選ばれる企業 オムロンの「感知力」経営立石 義雄

PHP研究所 2005-10-20
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創業者が提唱して以来、オムロンの経営の羅針盤となってきた「SINIC理論」を解説しながら、今後の企業のあり方を探る。

SINICはSeed Innovation to Need Impetus Cyclic Evolutionの略。人類社会の変遷を振り返り、今後どのような社会に発展していくかを予測した一種の未来シナリオである。世界は農業社会から工業社会に進んできた。SINIC理論では工業社会の後、世界は「最適化社会」に入り、やがて、個人が自らの人生設計に基づいて生活様式や仕事を選び、人生をエンジョイする「自律社会」へ進むと予測する。著者は、現在、既に工業社会から最適化社会への移行が始まっていると指摘。最適化社会の姿と、それに対するオムロングループの取り組みを説明する。

生きる喜びや自己実現が追求される最適化社会では、より人間に近づいた技術が求められる。オムロンは、人間が五感で感じ取る情報を機械が感知し、最適な行動を取る「センシング&コントロール」技術をコアコンピタンスに据えて事業を展開しつつある。また、従業員が自分なりの働く喜びを得られるよう、就業体制、賃金体系などの選択肢を増やしている。社会や人々から必要とされる「未来から選ばれる企業」への改革の一端を紹介する。

■2006/01/23, 日経ビジネス, 82ページ

楽して、儲けて、楽しむ 80対20の法則 生活実践篇
楽して、儲けて、楽しむ 80対20の法則 生活実践篇リチャード・コッチ 高遠 裕子

阪急コミュニケーションズ 2005-09-28
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starリチャード・コッチの最新作
starすごくいい。

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企業や経済の分野では、しばしば「80対20の法則」が主張される。「利益の80%は20%の顧客がもたらす」「成果の80%は原因や努力の20%から生まれる」といったものだ。本書は、80対20の法則を個人の生活に取り入れることで、成功と幸福を手にしようと説く。

人間にとって何より大切で、しかも不足しがちなのが「時間」。時間の使い方を変えることで、生活の質は大幅に向上できる。時間には、望んでいることの80%以上が達成できる20%の時間と、望んでいることの20%も達成できない80%の時間の2種類がある。著者は、自分が幸せになれることに焦点を絞り、「やるべきでないこと」を見定めることが重要だと強調する。人生で重要な分野として自分自身、仕事と成功、お金、人間関係、シンプルな生活の5つを挙げ、それぞれに80対20の法則を当てはめる具体的な方法を説明していく。

著者自身、80対20の法則を実践し、経営コンサルタントのキャリアを捨てて、ゆったりしたライフスタイルを楽しみながら、多くの成果を上げているという。「多くの労力で多くの成果をあげる」ストレスから脱し、「少ない労力で多くの成果をあげる」習慣を身につけようと呼び掛ける。

■2006/01/23, 日経ビジネス, 82ページ

子どもが壊れる家
子どもが壊れる家草薙 厚子

文藝春秋 2005-10-20
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おすすめ平均 star
starフィクションとして読んでみるのはどうだろう?
starよく出来ている
star何を言っているんだろう…

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凶悪化する少年犯罪の原因は、親の過干渉とテレビゲームによる悪影響である――。法務省東京少年鑑別所の元法務教官であり、現在はジャーナリストとしてこの問題を追う著者は、神戸児童連続殺人事件を起こした少年らの言動や家庭環境を徹底的に取材したうえで、そう結論づける。

「普通の家庭」で育った「いい子」が、むかつくからという理由だけで引き起こした事件を世間は“異常な犯罪”と見がちだ。しかし、欲しいものを与え、叱らず、暴力的なテレビゲームに熱中できるような環境が、「普通の家」なのかと著者は問う。テレビをつけっ放しの状態で育った小児の脳にはある種の問題が生じやすいという医学的調査結果を示しつつ、子育てマニュアルを根本から見直す必要があると訴える。

■2006/01/16, 日経ビジネス, 65ページ

国家と外交
国家と外交田中 均 田原 総一朗

講談社 2005-11
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著者に聞く-パーソナルライフ-田中均 氏[外務省元外務審議官] 外交と世論の橋渡しを-『国家と外交』

北朝鮮拉致問題のキーパーソンが田原総一朗氏に初めて本音を語った。大使の地位を固辞したのは、外務省と世論の橋渡しが必要と考えたから。記者や学者向けに塾を立ち上げ、外務省を側面支援する。

――北朝鮮との交渉では成果を上げる一方、独断専行だとか秘密主義と批判されました。

2002年9月17日の小泉純一郎首相訪朝で、北朝鮮が拉致を認めて謝罪し生きている人を帰したことは、既定方針通りでした。先方には何ら譲歩していません。十数年にわたって北朝鮮が否定してきた拉致についての交渉が、途中段階で漏れると結果を出せない恐れがありました。拉致を実行した人がいるのに、向こうの権力構造が分からないからです。僕個人のことを考えると、批判されないよう身を守る方法があったかもしれませんが大事ではありません。当時のやり方は間違いなく国益にかなっていました。

北朝鮮には「拉致を認めるなどとんでもない」という勢力がいて、彼らが状況をひっくり返す可能性があったのです。沖縄の普天間基地の返還についても同様です。米国内には反対の勢力がいます。途中で国民に説明して壊れたら、一生後悔しても後悔し切れません。でも、官僚の独断ということはあり得ません。総理大臣や外務大臣には細目にわたるまで相談してやってます。田中真紀子さんが大臣だった時でもです。

交渉中の情報については、国益を損なうようなら開示しません。外国の秘密コードは日本よりよほど厳しいですよ。キッシンジャー元国務長官とニューヨークで話した時、1972年のニクソン大統領(当時)訪中も秘密外交で、最後まで漏れなかったと言っていました。

――本にも外務省を辞めた理由は書かれていますが、大使になるべきだったのでは。

2001年9月にアジア大洋州局長になってから外務省を辞めるまでは、寝ている間も朝起きた時も交渉や国家のことばかり考えていました。とても笑顔など見せられませんでした。だから、外務省を辞めてから柔和になったとよく言われます。

日本の外交は今、重要な分岐点に差しかかっています。この5年ぐらいが大事です。国内の世論や環境を含めて、これまでハッキリしていた座標軸が変わり、中国やインドなど世界的な規模の国が出現しています。日本の選択肢は増えています。東アジアで能動的な外交をやらないといけないのですが、そのためには世論や有識者の支えが必要です。外国に行っていろいろな人と議論をしたり説明をし、外交を世論に近づけたい。今の世論は外交というものの認識が欠けているので、橋渡しがしたいのです。大使になってしまうと、その国の担当にならざるを得ません。

――小泉首相の靖国参拝もあり中国との関係はギクシャクしています。これからどう動きますか。

この問題だけは心残りですが、中国も日本に譲らないといけないことがたくさんあります。日中はもっと構造的な問題を解決しなければなりません。反中や嫌中は日本のためになりません。好むと好まざるとにかかわらず、13億人が隣にいます。どうつき合うかを今から考えておかないと間に合いません。

これからの外交は、有識者の役割が大きいと思います。今までは情報発信が欠けていました。英語で物を書き、学生に教えたい。今年の4月から大学で講座を持つ予定ですが、それとは別に「田中塾」というものを考えています。記者に外交の考え方を知ってもらったり、学者に現場の臨場感を持ってもらったりするのが狙いです。2月頃のスタートを目指して準備中です。

田中均(たなか・ひとし)氏
1947年生まれ。外務省でアジア大洋州局長、外務審議官などを歴任し2005年8月退官。現在、日本国際交流センター・シニア・フェロー。

■2006/01/16, 日経ビジネス, 67ページ

アルジャジーラとはどういうテレビ局か
アルジャジーラとはどういうテレビ局かオルファ ラムルム Olfa Lamloum 藤野 邦夫

平凡社 2005-10
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中東サウジアラビアの隣に位置し、人口わずか74万人程度の小国カタールのテレビ局がアルジャジーラである。反米テロの首謀者とされるウサマ・ビンラディンのメッセージを独占的に発信したことで、世界中に衝撃を与えた。

しかし我が国ではこの放送局について、それ以上のことはあまり知られていない。世界の “火薬庫”に根を下ろし、絶対君主制のアラブ諸国、欧米諸国、さらにはイスラエルとまで絶妙な距離を保ちながら、独自の報道スタンスを取り続けることがなぜ可能なのか。

冷戦以後、特に「9.11」と呼ばれる米国同時多発テロ事件の前後の国際情勢を絡めて、アルジャジーラの成り立ちと転機を追う。フランスの政治学者である著者は、同局を「多様化するアラブ世界の新しいアンバランスの証明」だと分析。アラブの民と世界のイスラム教徒に信頼されるためには、米国の覇権主義を糾弾する必要がある。

しかしその一方で同局は、アラブの民に伝統的保守主義の限界と、真の民主化、経済改革の必要性を訴えるという、一見相反する役割をも担っている。米国によるイラク侵攻についての同局の報道と、CNNなど米国巨大メディアが世界に発信した報道とを比較して、その特徴を解き明かしていく。

■2006/01/16, 日経ビジネス, 66ページ

2005年体制の誕生―新しい日本が始まる
2005年体制の誕生―新しい日本が始まる田中 直毅

日本経済新聞社 2005-11
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著者は評論家で21世紀政策研究所理事長を務める田中直毅氏。4月に発足する郵政民営化委員会の委員長に就く。日本の政治経済の行く末に提言を行っている田中氏は、今日の政治状況を「55年体制の崩壊、2005年体制の幕開け」と読む。小泉純一郎政権による「郵政選挙」の大勝を、一時的な「小泉バブル」と見る向きも確かにある。

しかし、1955年体制の耐久年限が過ぎたこれからの時代は同政権のように劇的な改革案を示し、目に見える形で実行する者にしか新たな権力基盤を築くことはできないであろうと論じる。

2005年の総選挙は日本の政治空間に大変革をもたらした。著者は政策・政党・首相候補を有権者が一気通貫で選択する選挙の下では、旧勢力が復活を遂げることは難しいであろうと言う。政治的想像力豊かな有権者と、一点突破型政策を標榜する政治的指導者によって、既得権益の枠組みは解体の一途をたどると読む。

そのような破壊力と能動性を持ち得た新体制は、いかなる政治課題に向かうべきか。人口減少がもたらす年金制度の歪みや地方自治の問題などを挙げ、改善の糸口を示す。1955年体制の功罪に関する記述も多く、小泉政治を歴史的視座から見直す、一助となり得る1冊だ。

■2006/01/16, 日経ビジネス, 66ページ

モチベーション―「達成・パワー・親和・回避」動機の理論と実際
モチベーション―「達成・パワー・親和・回避」動機の理論と実際デイビッド・C. マクレランド David C. McClelland 梅津 祐良

生産性出版 2005-10
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優れたマネジメントに欠かせないものの1つが、部下やプロジェクトメンバーをやる気にさせる技術である。人材の個性や適性を分析し、適所への配置を促す手引書は既に数多く出版されており、1987年に米国を代表する心理学者によって記された本書も、その範疇の1冊である。しかし、人の行動の原点である「動機(モチベーション)」にテーマを絞り込み、徹底した実証研究による成果をまとめているという点で、本書は際立っている。訳者によれば、今日広く活用されている「コンピテンシー理論」も著者の研究を起源とするものだという。

動機には、「達成動機」「パワー動機」「親和動機」「回避動機」の4つがあることを明らかにする。高い達成動機を有するタイプの人からは、「成功と失敗の確率が五分五分であるような課題に対して最も意欲的に取り組む」という特性を見いだす。一方、パワー動機の強い人材とは、他人に影響力を及ぼすことを強く求めるタイプだ。主にリーダーが有する動機としてこれを分析し、米国の歴代大統領の発言をスコア化するなどして示す。飲酒の量がパワー動機に与える影響やその男女差などについて検証を加えたり、「愛情」をキーワードに親和動機をひもとくなど、人材活用に役立つヒントも多い。

■2006/01/16, 日経ビジネス, 66ページ

畑村式「わかる」技術
畑村式「わかる」技術畑村 洋太郎

講談社 2005-10-19
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「わかる」とはどういうことなのか、「わかる」と感じる仕組みを解説する。

世の中の事象は「要素」と幾つかの要素が絡み合って作り出す「構造」、異なる構造がまとまった「全体構造」から成る。人間は頭の中に要素や構造、過去の経験や知識を基にしたテンプレート(型紙)を持っている。目の前の事象とテンプレートを比較して一致すると「わかる」と感じる。合致するテンプレートがなく、理解できない場合には、要素や構造を使って新しいテンプレートを作り理解しようとする。

現代社会で必要とされるのは、「課題解決」ではなく、事象を見極めて問題を探る「課題設定」。知識・解法パターンを詰め込むだけではなく、自分の力でテンプレートを作る訓練を続けることが重要と説いている。

■2006/01/09, 日経ビジネス, 77ページ

なぜ企業不祥事は起こるのか―会社の社会的責任
なぜ企業不祥事は起こるのか―会社の社会的責任ローレンス・E. ミッチェル Lawrence E. Mitchell 斎藤 裕一

麗澤大学出版会 2005-11
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過去100年の歴史を振り返ると、米企業は素晴らしい成果を上げてきた一方、環境を汚染し、危険で粗悪な有害商品を作り、あらゆるレベルの労働者を使い捨て同然に扱うなど反社会的な行為も数多く行ってきた。商法学者である著者は、こうした米企業の「無責任性」は短期的な株価最大化への傾倒が主因だと指摘。米国型経営を批判しながら、長期的に繁栄する企業経営のあり方を考察する。

米企業のモラルが薄れている根底には「行き過ぎた個人主義」「他者を思いやる心性の抑圧」といった米国の社会・文化・倫理的な問題があると解説する。また、米国の会社法は、経営者に対し、責任と道徳観を持って行動する自由を制限し、短期的な業績達成へと走らせているとして、構造的な不備にも触れている。

著者は無任期取締役会の創設、株主に短期的投機ではなく長期的投資をさせるような税制上のインセンティブ導入など、責任ある企業行動と持続可能な繁栄を実現するための具体的な措置を提言する。短期的視点に基づいた株主価値優先の企業行動は、米国、ひいては世界の繁栄を危険にさらすものであり、こうした米国流経営スタイルの“輸入”は「将来に禍根を生む選択」とも警告している。

■2006/01/09, 日経ビジネス, 78ページ

金融越境バトル―異業種格闘戦を制するのは誰か
金融越境バトル―異業種格闘戦を制するのは誰か日本経済新聞社 日経= 日本経済新聞=

日本経済新聞社 2005-10
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star続編希望

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金融市場では業態の垣根を越えたサービス競争が加速している。金融自由化が進み、ライバルが膨れ上がった金融市場の攻防を、日本経済新聞社の金融担当記者が追った。

「中小企業向けの無担保融資を一気に拡大するには、銀行のブランドが有効」。消費者金融大手アイフルの福田吉孝社長はこう公言する。消費者金融を核に、カード、銀行融資へと事業領域を広げた中小・個人向けの総合金融機関を作るという野望を抱き、既に大都市圏の地方銀行を軸に相手先を研究中とされる。「買収の申し入れがあった」など、様々な情報が飛び交い、その一挙手一投足に関心が集まる。

2004年12月、銀行に解禁された証券仲介業。三井住友銀行が獲得する個人の証券口座数は1店舗当たり1日1~2件と多くはないが、野村証券の3倍の約400店舗で一斉に口座獲得を進めた結果、開始から1カ月後の新規口座獲得数は800件と野村に迫る勢いとなった。一方、野村ホールディングスは2006年4月にもインターネット専業の証券会社を設立し、取引が少なかった若年層の取り込みを狙う。野村証券が野村信託銀行の代理店となり、預金サービスも手がける意向だ。

従来の金融業界の常識を覆すような熾烈な競争の最前線がうかがえる。

■2006/01/09, 日経ビジネス, 78ページ

経営は十年にして成らず
経営は十年にして成らず三品 和広

東洋経済新報社 2005-11
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利益率の高い優良企業の条件には、経営者の「長任期」があるというのが本書の主張。

前半ではリコーの浜田広氏、花王の丸田芳郎氏、田辺製薬の平林忠雄氏を取り上げ、経営者が10年を超える任期を務めることの重要性を指摘する。1983年、49歳でリコー社長に就任し、以来13年間務めた浜田氏は、長期的視野で複写機のデジタル化、ソフトウエア技術など研究開発への投資などに取り組んだ。低落傾向にあったリコーの利益率を91年度以降、10年以上反転上昇させる立役者となった。

後半では、キヤノンとゼネラル・エレクトリック(GE)を例に、揺るぎない優良企業を築き上げるには、長任期の社長が少なくとも3代にわたって続くことが必要と説明する。収益力の高いグローバル企業に成長したキヤノンは現在の御手洗冨士夫社長の前に御手洗毅氏、賀来龍三郎氏が長期間、経営の舵取りをしていた。御手洗社長を迎え、キヤノンのポテンシャルは開花したが、そこに至る前からポテンシャルは醸成されていたと解説する。

名経営者としての能力を持っていても、短任期という構造に縛られていては十分な成果を実現できない。経営は四半世紀、できれば半世紀という尺度で見るべきと結論づけている。

■2006/01/09, 日経ビジネス, 78ページ

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