メイン > 日経ビジネス書評 『新刊の森』 > 2006年1月30日~2月13日

ジャーナリズムの情理ー新聞人・青木彰の遺産
ジャーナリズムの情理ー新聞人・青木彰の遺産青木塾 天野 勝文 山本 泰夫

産経新聞出版 2005-12-15
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インターネットの出現や若者の活字離れによって、新聞はどうなるのか。また、昨今の過熱取材や誤報問題で、国民のジャーナリズムへの信頼が揺らいでいる。こうした状況を憂える新聞人らが、組織や現役・OBの壁を超えて集う場がある。元産経新聞記者で、生涯を国民のための報道とその研究に捧げた故青木彰氏が開いた「青木塾」だ。門下生と彼を知る新聞界OBらが、「新聞は人なり」と説いた青木氏の姿勢を通して、日本の戦後ジャーナリズムの原点をいま一度問い直す。

青木氏は特定のイデオロギーにくみしない「無思想の思想」、そして世に問うべき「理」と、1人の人間として問われる「情」を備えていた。それらを基に、今日の政治報道やライブドア事件の報道のありようなどを検証する。

■2006/02/13, 日経ビジネス, 77ページ

働く過剰 大人のための若者読本
働く過剰 大人のための若者読本玄田 有史

NTT出版 2005-10-25
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star経営者、人事こそ読むべきだと思う
star多くの人に読んでほしい本
star本書で問題提起を

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著者に聞く-パーソナルライフ-玄田有史 氏[東京大学社会科学研究所助教授] ニートを科学的に分析-『働く過剰』

若者との接し方が分からなくなった大人の方にこそ問題がある。

「ニート(働かず教育も職業訓練も受けていない無業者)」の概念を定着させた若手社会学者が、蔓延する過剰な不安を払拭すべく、「大人のための若者読本」を書いた。

――面白いタイトルです。

先の総選挙で自民党が大勝し、株価が高騰し始めた。去年の秋頃から、世の中の「過剰感」が高まってきた気がします。時代の横ブレが大きくなった。そのブレに翻弄されているのが若者ではないかと思います。

「即戦力の人材にならなければならない」「コミュニケーション能力を磨かないと負け組になってしまう」と思い込み、資格取得や語学の勉強に邁進するわけです。でもそんな努力が実ることは少ない。就職活動に失敗して、ニートになってしまう。

社会が若者に過剰に求め、若者もそれに過剰に答えようとする。最近の若者が切迫した時に「いっぱい、いっぱい」という言葉を使いますが、彼らの気分をよく表している。だから、この本では「中庸」の良さを言いたかった。ほどほど、ボチボチ。「ちゃんといい加減に生きる」くらいがちょうどいい。

――「ニート」という言葉が定着し、若者が働けない社会を何とかしようという動きも出てきました。

ちょっと前まで「怠け者のニートは自衛隊の代わりにイラクに送れ」みたいな議論がありました。「正社員じゃなきゃ駄目だ」というフリーター批判はいまだにありますが、上場企業など1つもない僻地に住む若者に言えますか?

深刻なのは、社会とうまく関わりを持てない人が増えている事実です。若者だけの問題ではない。中年のニートや引きこもり、孤立した老人が増えたら、社会全体がとてつもなく重い負担を背負うことになる。「自己責任」の一言で、そういう人たちを突き放すわけにはいかないでしょう。

ニートはかなり前から40万~50万人のレベルで存在した。これが企業の正社員減らしで80万人くらいに増え、顕在化したわけです。いろいろな対策が始まれば50万人くらいには減るかもしれないが、なくなりはしない。

数が減って無関心に戻るのが一番怖い。社会とうまく関われない人たちがどんどん高齢化している。取り返しがつく早い段階で、みんなでおせっかいを焼いた方がいい。

――本にも出てきますが、最近、研究を始めた「希望学」は、一言で言うとどんな学問ですか。

「希望を持つことには意味がある」ということを科学的に証明する試みです。今の若者は無気力なのではなく、不器用なのです。最初は希望を持っているのに、挫折するとそこで立ち止まってしまう。失望した後に、希望を修正して現実と折り合うことができない。ともすると「最初から希望なんか持たなければよかった」と思い込んでしまう。

でも違うんです。1989年に新日本製鉄が高炉を休止し、町全体が大きな挫折を味わった岩手県釜石市は今、「国産キャビアを作ろう」という挑戦で活気づいている。挫折を知った人は強い。希望を持つことは無駄ではない。

――厳しい競争にさらされている企業に「若者の面倒を見ろ」というのは無理がありませんか。

若者が職場に一番求めているのは賃金や福利厚生ではないと思います。大切なのは職場の価値観です。「うちの会社の一員なら、これだけはちゃんとやれ」とか「これだけは絶対やるな」とか。格好よく言えば「プリンシパル」。職場の誇りを語る上司や先輩がいる会社なら、若者は辞めません。

玄田有史(げんだ・ゆうじ)氏
1964年生まれ。労働経済学を専攻する。『仕事の中の曖昧な不安』『ニート』などの著書でいち早くニート問題を提起した。

■2006/02/13, 日経ビジネス, 79ページ

失敗百選 41の原因から未来の失敗を予測する
失敗百選 41の原因から未来の失敗を予測する中尾 政之

森北出版株式会社 2005-11-02
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star「失敗は生きている」、失敗を活かしましょう

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東京大学大学院の工学教授である著者は“失敗のしくみ”に着目し、それらのパターン化を試みた。タイタニック号の沈没やチェルノブイリ原子力発電所の爆発、まだ記憶に新しい米国の9.11テロ事件などの歴史的事件・事故から、国内で相次いでいる企業の不祥事に至るまで、200近い事例を徹底的に精査してその教訓を整理していく。

失敗を分類していくと41のパターンに集約できると言う。我々が犯しがちな日常生活の失敗も、そのいずれかに当てはまるはずだと説く。こうした失敗を招くのは、ポツポツと発生する似たような小さなミスの連鎖であり、それを看過した体制にあると指摘。ミスには装置の「疲労破壊」「腐食」など、エンジニアが関わる技術的なものが多いが、「コミュニケーション不足」「倫理問題」などの組織的原因もあるとして、それぞれ実例を挙げる。

例えば2000年に起きたコンコルド墜落事件のケースなら、「別の普通旅客機の金属片落下」「それによるコンコルドのパンク」「タイヤ破片による燃料タンクの損傷」などと、因果関係をシナリオ形式で整理してから解析を行う。企業経営者に対しては、文書化できない暗黙知を持つ人材の安易な入れ替えが失敗の一因になり得ると警鐘を鳴らす。

■2006/02/13, 日経ビジネス, 78ページ

信用リスクで読むM&A・企業再生
上野 孝司 (著), ブルームバーグニュース (著)

金融市場における「企業の信用リスク(債務不履行となる可能性、確率)」という考え方が、日本においても欧米並みに重視され始めている。企業の不祥事による価値の急落はもとより、今日では企業の合併や買収などM&Aや資本参加によって、格付け機関による信用リスク格付けの見直しや変更が日常的に行われるようになった。著者は金融・経済情報の世界的メディアである「ブルームバーグ ニュース」の債券市場担当記者であり、早くから信用リスクという見方の重要性を唱えてきた実績がある。本書では信用リスクの基本知識に加え、事業の再生や産業再生、あるいは大規模なM&Aが信用に与える影響やその評価方法などについて実際の事例とともに詳しく論じていく。

「クレジットストーリー」という観点が信用リスクを読み解く1つのカギになると言う。企業が持つ信用力のストーリー、すなわち「今後のシナリオ」は、現時点での株式時価総額がいかに優良でも、大規模な合併や買収によって突然悪化する可能性がある。ライブドア事件などがその好例であろう。本書では合併後も打開策が見えない三井住友建設や、再建計画を発表するも厳しい評価が与えられた三菱自動車の事例などを挙げる。その他、世間を賑わした大型買収劇についても解説する。

■2006/02/13, 日経ビジネス, 78ページ

ワイルドグラス―中国を揺さぶる庶民の闘い
ワイルドグラス―中国を揺さぶる庶民の闘いイアン ジョンソン Ian Johnson 徳川 家広

日本放送出版協会 2005-12
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著者は、1994年からの8年間を米「ウォールストリート・ジャーナル」紙などの特派員として中国で活動し、現在は同紙のベルリン支局長に就く。本書は、今日の中国に生きる3人の庶民が、時の政府に対して起こした“反乱”についてのルポルタージュだ。表面的には経済の自由化や民主化に向かっているはずの中国が内に抱える矛盾とともに、庶民らの声なき声をあぶり出したリポートとして世界中で高く評価されている。米国ではジャーナリストの最高の栄誉とされる「ピュリツァー賞」を受賞した(第三部「法輪功」)。

第1部で取り上げる馬文林弁護士は、課税制度の矛盾に苦しむ多くの中国農民を率いて政府に対する集団訴訟を起こし投獄され、“農民英雄”と呼ばれた。著者は馬氏の支援者や夫人への取材を通じて、この国の屋台骨を支えてきた農民と農村をないがしろにしている政府の実相を浮き彫りにしていく。次いで登場するのは、北京という大都市の開発政策の裏で住む家を奪われていく庶民だ。法制度の矛盾はもちろん、時の為政者の号令に翻弄される人々の心の叫びを描く。終章では、法輪功を「邪教」として禁じた政府に反発する女性信者の闘いと悲劇を通じて、今日の中国を蝕む「精神の危機」を明らかにする。

■2006/02/13, 日経ビジネス, 78ページ

四〇歳からの勉強法
四〇歳からの勉強法三輪 裕範

筑摩書房 2005-11
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おすすめ平均 star
star中間管理職も勉強しよう
star新味に欠ける。ちょっと退屈。

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ビジネスマンが能力と自身の価値を高めるにはどのように勉強すればよいか。伊藤忠商事に勤める著者自身の体験を踏まえ、適切な方法を紹介する。

勉強するには、時間が必要だ。著者は、毎朝1時間と土日祝日に3時間ずつ確保し、年間600時間作る方法を勧める。特定の分野・テーマを専門的に勉強するなら、本を中心としたやり方が効率的。図やグラフを多用した手軽な入門書や高校の学習参考書は、本格的な勉強への導入役として役立つという。英語能力試験「TOEIC」985点を取得した著者は、英語の勉強では会話より読解が重要と主張。高校入試の長文読解問題、英字新聞などを利用した上達法を解説する。

同じビジネスマンの立場での具体的な指南は大いに参考にできそうだ。

■2006/02/06, 日経ビジネス, 99ページ

郵政攻防
郵政攻防山脇 岳志

朝日新聞社 2005-12
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2005年の政界を大きく揺るがした郵政民営化問題。朝日新聞論説委員で、郵政問題を10年以上取材してきた著者が、郵政問題から見えてくる日本の政治・経済の変化を追った。

前半で、郵政攻防に関わった人々の激動の日々を記録する。最大のキーマンである小泉純一郎首相が「反郵政」に傾いたきっかけ、党内の一匹狼として郵政民営化論を維持し続け、孤独に闘った経過などを描写する。そのほか、民間の経営手法を持ち込む改革者と期待されたが、「現場を知りすぎた」「抵抗勢力」との批判も出た生田正治日本郵政公社総裁、常に閣内で郵政民営化の旗振り役となってきた竹中平蔵総務・郵政民営化担当相、「郵政民営化」というワンワードで仕掛けられた昨夏の衆院選に適切に対応できなかった岡田克也民主党前代表らの言動をドキュメントで追う。

後半は、郵政改革の意義、懸念を経済・政治の両面から整理する。「政府の民営化法案には様々な問題があると感じつつも、民営化は必要」という見解の著者は、郵便局ネットワークを効率的に再配置するための都市部の見直し、巨大な郵政事業の分割の検討などに言及する。郵政攻防は改革の中身だけでなく、政策決定の手法を巡る闘いでもあったと振り返る。

■2006/02/06, 日経ビジネス, 100ページ

改革の経済学
改革の経済学若田部 昌澄

ダイヤモンド社 2005-11-05
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郵政、年金、財政など、日本経済には改革すべき問題が山積している。本書は経済学をツールとして、改革をどう進めるべきかを考察する。

経済学の最も重要な原則として、「人々はインセンティブに反応する」と「ただのランチはない」という考え方を紹介する。例えば、年金改革において、制度設計の基本視点には「インセンティブ」を置き、参加する人がその制度維持を望ましいと思うよう設計することが必要だと指摘する。保険料未納者の道徳・倫理を問う論調が出ているが、問題なのは制度設計。国民皆保険が前提となっている公的年金の保険料は強制的に徴収すべきであり、この点から考えれば、国税庁と社会保険庁を統合して徴収業務を一本化する改革などの議論が必要と指摘する。

後半は、改革を支えるために必要な持続的回復を達成する政策を提言する。歴史を振り返り、マクロ経済学の考えを紹介しながら、日本経済はインフレ目標を導入し、デフレ脱却を確実にすべきという主張を展開する。日本経済の抱える問題は複合的であり、問題の適切な切り分けが必要だとも強調する。現実には、政策の失敗は繰り返し起きる。過去と現在の経済危機を題材に、経済政策決定までの様々な要因も分析している。

■2006/02/06, 日経ビジネス, 100ページ

慕われる上司 捨てられる上司
慕われる上司 捨てられる上司幸田 達郎

誠文堂新光社 2005-10
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おすすめ平均 star
star実感あふれる本でした

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リーダーシップの本に登場するような「理想の上司」になるのはなかなか難しい。完璧を目指す必要はないが、部下がついてこない状態は避けなくてはならない。本書は心理学に裏打ちされた手法などを取り入れながら“等身大のリーダー”になるコツを伝授する。

部下から見捨てられる上司のタイプを詳しく説明する。何があっても動かない「庭石型」、頭が石のように固い「石地蔵型」、上から伝えられることを単に表示するだけの「ホワイトボード型」、地位の高い特定の人に必死でぶら下がっている「小判鮫型」などだ。部下が上司を見捨てる時には、返事をしなくなったり、言われたこと以上は絶対にしなくなったり、飲みに誘ってもついてこなくなったりするから注意が必要だ。

「捨てられない上司」から「慕われる上司」へと変身するには、まず「毅然とした態度でやるべきことをやる」ことが重要。そのうえで、日常、しておくとよい言動として、部下に頻繁に声をかける、単純な作業は命じ、高度な課題は依頼する、肝心なところで温かみを示す、自分の上司に対して直言する姿勢を示すなど15項目を紹介する。基本は部下を信じ、愛すること、部下を守ること、良心を失わないこと、率直なことの4点に尽きると結ぶ。

■2006/02/06, 日経ビジネス, 100ページ

がんになっても、あわてない
がんになっても、あわてない平方 眞

朝日新聞社 2005-11
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日本人の3人に1人はがんになるのだから、この病気を人生設計に組み込んではどうか――。医師としてがん患者を支える緩和ケアを実践してきた著者の思いである。多くの患者と向き合い看取った経験から、がんに対する知識不足と、それが原因となって生じる無用な不安が、一度きりの人生をつまらないものにしてしまうと憂える。

本書は「がんに関する『義務教育の教科書』」であると言い、予防、検査、手術、治療、告知などについて、最新事情を分かりやすくまとめている。告知を受けた患者の絶望、焦り、現実の拒絶などについても、多くの患者の実体験や言葉を基に詳しく紹介する。常日頃から命とがんの関係に思いを巡らしていることが、この病気と正しくつき合うコツだと呼びかける。

■2006/01/30, 日経ビジネス, 97ページ

黒字亡国―対米黒字が日本経済を殺す
黒字亡国―対米黒字が日本経済を殺す三國 陽夫

文藝春秋 2005-12
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著者に聞く-パーソナルライフ-三國 陽夫 氏[三國事務所代表] 内需主導型経済へ転換を-『黒字亡国  対米黒字が日本経済を殺す』

輸出主導の景気回復で、脱デフレも言われ始めた。しかし、輸出立国で黒字を蓄え続ける構造にデフレの要因があると指摘する。脱デフレのカギは、内需主導型経済への転換と言う。

――輸出が好調で経常黒字が拡大するほどデフレになる、と指摘されています。

デフレの根本は黒字を貯め込みすぎることにあると見ています。日本は輸出で稼いだ黒字をほとんどドルで受け取ります。これが円に交換されて日本に持ち帰られれば問題はありません。国内に入った円は、社員の賃金や次の生産のための仕入れなどに使われて生産を増やして新たな所得が生まれ、消費につながっていきますから経済成長をもたらします。

ところが、実際にはそうではありません。例えば、日本の自動車メーカーが輸出でドルを稼ぐと、メーカーは確かにドルを円に交換します。しかし、そのドルを買い取る相手は日本の銀行などで、ここがドルをそのまま持ち続けるのです。

そして、それを米国に投資したり、融資をしたりしてしまうため、ドルが米国に戻っていきます。ということは、最終的に黒字は円にならず、ドルとして米国に還流してしまうことになり米国で使われてしまうのです。

つまり、米国は貿易赤字にもかかわらず、ドルは減らないで、米国内経済を刺激するのに使われる。一方、日本は国内経済で使われる通貨が増えず、経済をそれ以上活性化できない。ここにデフレの要因の1つがある。この本では、そのことを指摘したのです。

――でも、米国も経常赤字を永遠に続けることはできないのでは。

米国は経常赤字が続いても、ドルが還流してくるから、ドル安にならず購買力は衰えない。金利も安定して赤字になるほど景気を刺激するという不思議な構造になっています。

米国の企業、家計、政府部門の全負債の規模を1920年代以降で見ると、大恐慌の後の33年にGDP(国内総生産)比300%に達し、その後低下していきましたが、80年代からまた増え始め、今また300%を超えています。誰が借金を増やしているかというと家計です。代表は住宅投資で、住宅価格が上がると、担保価値が上がって借り増しできる。それでさらに消費する、といった格好で使いまくっているのです。

言ってみれば、住宅ローンの増加は、消費者ローンの増加に異ならない状態です。そして、その米国の赤字を補うお金を提供しているのが日本とアジアなのです。赤字が景気を刺激するこの構造は、米国の負債能力がどこまで持つか、日本銀行の金融緩和継続能力がどこまで持つかによるのでしょう。既に黄色信号ですね。

――日本は輸出立国だし、ドルを円に“完全に”交換してしまうと円高を招きかねないからこの構造から抜け出せない。

欧州はドルと金の交換を停止した71年のニクソンショックの後、黒字をドルで持つとデフレの危険が増すことに気がついたのだと思います。フランスなどはドルを自国通貨に換えて黒字を累積しない方針を取り始めた。

しかし、日本は輸出立国という従来の考え方を変えませんでした。輸出を重視するとなると、当然、円高は困ります。一方、黒字で稼いだドルを円に交換し続けると、円高になりますからできません。

黒字が貯まれば貯まるほど、それは難しくなるから余計にこの構造から抜け出しにくくなる。国益を考えれば、輸出と輸入が均衡するところでいいのですが、内需主導経済はできないままになっていますね。

■2006/01/30, 日経ビジネス, 101ページ

五感刺激のブランド戦略
五感刺激のブランド戦略マーチン・リンストローム

ダイヤモンド社 2005-10-07
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消費者の欲求は複雑化、多様化しているという昨今のマーケティングの定説に一石を投じる書。多くの消費者の心に訴求し、ファンを獲得し続けるブランドは、小手先の理屈ではなく、生活者の誰もが持つごく自然で直感的な“五感”を巧みに刺激していると言い、様々な企業ブランドや製品の事例を通してその効果を証明していく。

マーケティングの担当者に対しては、広告やパッケージなどの視覚的効果に偏りすぎるなと言う。著者らが世界13カ国でマクドナルド、ボーダフォン、ナイキなどの企業イメージや新製品のイメージについて調査を行った結果、「パワー・ブランド」として成功を収める企業とは、視覚に聴覚や臭覚、さらには皮膚感覚を組み合わせた戦略を巧みに展開していることが分かった。車を購入しようと考える消費者は無意識に「新車の匂い」を期待していると言う。また、米国のダイムラークライスラーには、車のドアの開閉時の“完璧な音”を研究する部署があることを紹介する。こうした視座から、ソニーとパナソニック、コカ・コーラとペプシの「感覚プロフィール」を数値化し、分かりやすく比較してみせる。マーケティングのみならず、ホームページの製作や刷新を行う担当者にも、多くのヒントを提示する1冊。

■2006/01/30, 日経ビジネス, 99ページ

デフレから復活へ―「出口」は近いのか
デフレから復活へ―「出口」は近いのか伊藤 隆敏

東洋経済新報社 2005-10
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著者は日本経済研究の第一人者として海外からも高い評価を得ている東京大学教授の伊藤隆敏氏。2004年には日本経済学会会長も務めた。伊藤氏は、日本経済の回復傾向を認めながらも決して楽観視はしていない。「失われた10年」と呼ばれる失速の時代について、まだ明確な原因究明がなされていないからだ。日本経済に果たして何が起きたのか、「住専問題」とは何だったのか、政府の何が失策で、何が功を奏したのかなどを子細に検証し、今後の持続的成長に必要な条件を導き出す。

景気回復を鈍らせている大きな要因の1つがデフレである。1930年代以降、先進国では見られなかった現象であり、その点で世界の経済学者が日本の対応に注目していると言う。デフレからの完全脱却に即効性のある処方箋はないとしつつも、日本銀行や財務省が行うべき金融政策について解説する。デフレ対策と並行して、真の構造改革を断行せよと言い、財政再建、年金改革、FTA(自由貿易協定)の推進について具体案を示す。金融機関の連鎖的破綻、失策と言われるゼロ金利解除、IT(情報技術)バブルとその崩壊などは、つい最近の出来事であるのにもかかわらず忘れ去られようとしている。それら負の遺産の清算こそが、日本経済復興のカギとなると訴える。

■2006/01/30, 日経ビジネス, 99ページ

ヒットを読む
ヒットを読む品田 英雄

日本経済新聞社 2005-11
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長らく低迷していた消費が回復傾向を見せている。とはいえ従来の売り方を踏襲しているだけでは時流に乗ることはできない。月刊誌「日経エンタテインメント!」の発行人であり、流行やブームを検証し続けてきた著者は、何より消費者の姿が変わったのだと言う。仕掛ける側の感じ方が時代の売れ筋と重なっていなければ、販売促進に巨額を投じても失敗する可能性が高いと指摘し、近年の成功事例や失敗事例を基に、ヒットを読むためのコツを分かりやすく指南する。

「結婚しない女性たち」と同じように結婚しない30代の男たちが急激に増えている。会社のつき合いや贅沢なデートに興味を示さない彼らに共通するキーワードは「飲まない・食わない・吸わない」。しかしインテリアや趣味、身だしなみには自己投資を惜しまない点に注目せよと言う。また「オタク」と言えば男性を想像しがちだが、近年大ヒットしたマンガやインターネット・コンテンツの一部は「女性のオタク」が支えていると解説。その他「ペットブーム」や「モテオヤジ」など、気になるキーワードについて分かりやすく掘り下げる。「本物志向」が叫ばれて久しいが、本当の“本物”は実は重すぎて、今の消費者ニーズにそぐわないという分析も興味深い。

■2006/01/30, 日経ビジネス, 99ページ

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