メイン > 日経ビジネス書評『新刊の森』(2005年) > 2005年8月22日~8月29日
| シルクロードの滑走路 | |
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■著者に聞く 黒木亮氏[作家] 常識が通用しない国々
国際金融の裏事情に詳しい著者が、中央アジアにおける航空機ビジネスを小説にした。日本ではほとんど馴染みのない国々だが、そこでのビジネスはまさに世界の縮図だ。ロンドン在住の著者は、海外から見た日本をテーマにしていきたいと語る。
――国際協調融資を描いた『トップ・レフト』や『小説エンロン』など、得意とされる金融小説とは随分違ったテーマを設定しましたね。
そう思われるかもしれませんが、実は私が作家としてデビューする前から書きたかったテーマなんです。1997年に原稿用紙100枚ほどの短編を書いて「文学界」という雑誌に応募しました。しかし、当時は全く見向きもされませんでした。その後に書いた『トップ・レフト』や『小説エンロン』がおかげさまで話題を呼び、この中央アジアを舞台にした航空機ファイナンスの話を雑誌の連載にしないかと、出版社からお話を頂きました。
中央アジアを舞台にした本はほとんどないし、私が商社マンとして経験した中でも最も強烈な印象を受けたので、何としても活字にしたかった。中央アジアには多くのアジア人、欧州人が住み、旧ソ連時代に強制移住させられた人たちも多くいます。人種も考え方も信じられないくらい多様性に富んでいます。書いているうちにどんどん膨れて原稿用紙640枚になりました。
中央アジアの社会は日本人や欧米の先進国では考えられない常識がまかり通っています。この本でも紹介しましたが、先進国の企業人なら当たり前の「上司の言うことを聞く」ことをしません。下は下で自分の判断で勝手に行動する。そのうえ自己保身には極めて敏感で、自分の責任が問われるようなことは極力避けようとする。契約書になかなか自分のサインを書こうとしないんですよ。これには商社時代、私自身、何度も泣かされました。
――小説の中の登場人物では紅一点であるキルギスタンの運輸省顧問は、自分を捨ててまで国の発展に尽くそうとします。奇特な人もいるんですね。
もちろん、全員が自己保身だけ考えているわけではありません。民間ベースでは利益や企業の成長に極めて敏感だし、交渉術といったら、さすがにシルクロード時代から鍛え上げられているだけあって、日本人にはなかなか真似できません。しかし、国や役所は全く別の世界です。長年の共産主義が染み込んでしまっていて、金利や減価償却という資本主義世界の基本中の基本も理解してもらえない。
ホテルなどの経営でも、旧ソ連時代は建物などの設備は国から与えられているので、ホテルの経営者は毎日の日銭を稼ぐことだけに集中すればよかった。そうした中では、航空機のリース料に占める金利の割合は全体の80%だということがそもそも理解されません。「おまえたちいくら儲けるつもりなんだ」と何度も怒鳴られた経験があります。
――会話の中身が、とても詳細に描かれています。実体験だと思いますが、記憶力がいいですね。
会話は小説の最も大切な要素だと思うので、そのリアリティーさにはこだわっています。実は、90年代に私がアジアに駐在していた時から将来は小説を書こうと考え、準備をしていました。それ以来、私の電話はほとんど録音してあります。その資産が今回の小説ではとても役に立ちました。
かつて当時の上司から「おまえ、あのこと覚えているか。忘れちゃったよな」と聞かれ、後で教えてあげてびっくりされたこともあります。もっとも、録音のことを知った知人の女性からは、「そんなことしてたの。信じられない」と呆れられてしまいましたが。 黒木 亮(くろき・りょう)氏 1957年北海道生まれ。カイロ・アメリカン大学大学院修士、大手都市銀行、証券会社、総合商社を経て2003年に独立。金融関連の著作が多い。
| ケーススタディ住友スリーエム―イノベーションを生む技術経営 | |
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「日本に根付くグローバル企業研究会」は、グローバル企業に関心を抱く経営者、研究者、ジャーナリスト及び政策経験者らによって昨年発足した。グローバル企業がわが国に定着して所得と雇用を増やすこと、それは日本経済の発展に、もはや欠かせない条件となっている。研究の第1弾に選ばれた企業が、住友スリーエムだ。
本書では研究会のメンバーと同社のトップをはじめとするキーマンらが、様々な角度から組織の優位性と今後の戦略について論じる。また、液晶用フィルムや「ポスト・イット」など、卓越した技術力とアイデアの融合によって、一大市場を築き上げた製品を取り上げて事例研究を示す。
まずは米国ミネソタ州に本社を置くスリーエム(3M)の現地取材などを通じて、技術経営における優位性を明らかにしていく。一方、住友スリーエムのポール・ロッソ社長には、日本市場への定着のカギについて聞く。ある幹部はその点について、「米国流でもなく、日本流でもなく、3M流カルチャーの創造が成功をもたらす」と言及する。今や世界中のオフィスで見かける「のり付きしおり」の代名詞ともなった「ポスト・イット」。研究者の熱意と失敗の経験が、世界商品を生み出した開発秘話などは興味深い。
| 失礼ながら、その売り方ではモノは売れません | |
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著者は、20年以上の長きにわたり車販売の世界に身を置き、トップセールスの道を歩み続けてきた。ホンダ、BMW、フォルクスワーゲングループと転身する中、マネジメントの分野でも才能を発揮。支店マネジャーなどを経て、2003年にはビー・エム・ダブリュー東京の代表取締役に就任。そして今年5月、ダイエー代表取締役会長兼CEO(最高経営責任者)に就任し、世間を驚かせた。
本書では、販売一筋に歩んできた自らの道を思い起こしながら、すべての商売の基本となる「モノを売る」ことについての哲学や独自の方法論を説いたもの。販売マニュアルではなく、あらゆる仕事に通じる顧客への愛情や、同僚や部下に注ぐべき信頼の必要性などについて力強く助言する。
マーケティングだけではモノは売れないと言う。 マーケティングでつかめる大局的な潮流と、一つひとつ異なる顔を持つ顧客のニーズは必ずしも一致しない。個別の商品の売れる売れないは「神のみぞ知る」だと言い、顧客の生活や思いを自らの目と心で確認していく労を惜しむなと助言する。また、長く男性社会で働いてきた経験から、台頭する女性たちに「細やかであることは、大事に目がいかないことでもある」など、厳しくも温かいエールを送る。
| 誰も書かなかった厚生省 | |
![]() | 水野 肇 草思社 2005-06 売り上げランキング : 6,840 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
わが国の医療が抱える病巣に鋭く切り込み、『誰も書かなかった日本医師会』(草思社)などの問題作を世に問うてきた著者が、本書では「医療行政」をテーマに据えその実像に迫る。
「厚生労働省」としないのは、労働関連行政には言及していないため。戦後の厚生省が、世界に比類なき日本の高度成長に重要な役割を果たしてきた事実は著者も認めるところだ。しかし今日はといえば、医療費増、薬害、医療ミス、高齢化社会への無策など、問題点が山積している。著者はまず、医療を含む社会保障政策を経済政策と同じ土俵で論じる政治家や、「小さな政府」の名の下に国民に負担を押しつける小泉純一郎内閣のやり方に対して不信感をあらわにする。
戦後の厚生行政で著者が最も国民のプラスになったと考えるのは、1961(昭和36)年から実施された「国民皆年金と国民皆保険」だ。経済の論理をかさに、健康保険不要論者が幅を利かせる今の状況と比較し、「弱肉強食の米国型社会を金科玉条としてよいのか」と改革の見直しを迫る。HIV(エイズウイルス)事件に象徴される薬害事件と医師の責任、介護保険制度の隙間に潜む落とし穴、社会保険庁という組織の欠陥などについても、歴史的経緯を踏まえながら丹念に論じていく。
| 経済の世界勢力図 | |
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■著者に聞く 榊原英資氏[慶応義塾大学教授] ドル暴落は起きる
ドル安、原油高は、米国が覇権を握る時代から転換していく兆候だ。それは近代資本主義が終わり、アジア中心の経済体制へのパラダイムシフトとも言える。日本は米国中心主義から脱却していく必要があると言う。
――現在、大きな構造転換が起きている、という認識を持たれています。
米国が超大国として政治や経済の覇権を握るパックスアメリカーナに陰りが見えてきました。イラク戦争で強い米国を世界に示したにもかかわらず、ドルはユーロに対して下落を続けました。米国が今後も唯一のスーパーパワーであるという確信があれば、基軸通貨であるドルの下落が続くことは考えにくい。マーケットでは、米国の経済的地位は今後、相対的に低下していくと見ているのです。
米国に代わって台頭していくのがアジアです。米ゴールドマン・サックスのいわゆる「BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)レポート」では、2050年の世界のGDP(国内総生産)は1位中国、3位インドになるといいます。この半世紀で最も成長するのは中国やインドといったアジアの国々です。
日本では、中国やインドというとまだ発展途上の国と見る傾向が強い。しかし、19世紀初頭までは中国やインドはGDPが突出し、アジアは世界経済の中心地でした。1820年頃から西欧が台頭し、アジアの没落が始まりました。現在は、アジアが再び世界経済の中心になるべく、本格的に動き始めた時期なのです。一方で、19世紀初頭に欧米の台頭によって形成された近代資本主義が終焉を迎えようとしていると言えます。そのような認識を持って、日本は今後、行動していく必要があります。
――どのような行動ポジションを取るべきなのでしょうか。
英国のように振る舞うべきでしょう。英国はEU(欧州連合)の一員でありながら、米国に最も近い立場を取ります。日本もアジアの共同体の一員でありながら、メンバーの中では米国と最も近い関係を築いていくのです。
経済に限らず安全保障の面から見ても、日本にとって米国は無視できない存在です。米国に安全保障を依存しない中国やインドと、依存する日本が対米政策で同じ行動を取ることはできません。だからといって、これまでのように何でも米国を中心にして行動する立場は、変えていくべきでしょう。
アジア諸国との関係では、領土問題や歴史認識が話題になります。それは交渉で解決できるものであり、解決しなくてはなりません。偏狭なナショナリズムをはびこらせ、交渉を困難にすることは避けるべきです。
――新しい経済勢力図の中で通貨は今後、どのように動くのでしょう。
いずれドルの暴落は起きるでしょう。それが数年後になるのか20年後、もっと先になるのかは分かりません。経済の中心地がアジアに移り変われば、当然起こることです。ドルに代わって力を持つのがアジア共通通貨です。アジアの経済圏が拡大していけば、共通通貨の必要性は確実に増していく。
アジア共通通貨を形成していく中心になるのは人民元です。この7月の改革で、しばらくは大幅な切り上げは行われず、管理フロート制を維持していくと見られます。9月の胡錦濤国家主席の米国訪問時に、変動幅を0.3%から、例えば0.5%に広げることはあるかもしれません。騒がれているような、数十%の大幅な切り上げは、中国の実情を考えると難しいでしょう。
小幅な切り上げを続ければ投機を招き、市場を混乱させるリスクがあります。しかし、元の弾力化は長期的に成長を続ける原動力となるでしょう。
榊原英資(さかきばら・えいすけ)氏
1941年生まれ。65年東京大学大学院経済学研究科修了、同年大蔵省(現財務省)入省、99年勇退。現在、慶応義塾大学教授。
| 真相 ライブドアvsフジ 日本を揺るがせた70日 | |
![]() | 日本経済新聞社 日本経済新聞社 2005-06-23 売り上げランキング : 7,968 おすすめ平均 ![]() 「真実は小説より奇なり」とは、まさにこのこと まずまず ニッポン放送買収騒動を上手にまとめた本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
日本中が騒然となったライフドアとフジテレビジョンによるニッポン放送株の買収戦。その裏では、何が起きていたのか。事件の真相に迫る。
2003年11月にポータル(玄関)サイトを開設したライブドアは先行大手との差を縮めるためメディア買収を志した。新聞社、出版社の買収が失敗する中、ニッポン放送とフジテレビの資本関係のねじれに注目するようになる。
そんな時期にある人物から、ニッポン放送株買い取りを持ちかけられた。関係者は口を閉ざすが、その人物とは村上世彰M&Aコンサルティング社長だという声がある。ライブドアはその提案に乗り、立会外取引でニッポン放送株を大量取得した。政財界からの批判、法廷闘争、ソフトバンク・インベストメント(現SBIホールディングス)の登場などで、経営陣に動揺が走る中、財務担当役員は強気一辺倒の主張で社内を鼓舞し、結果、ライブドアは巨額の資金と資本・業務提携を手にした。堀江貴文社長の個人商店的イメージが強い同社だが、実際には取締役5人による合議制で運営されている実態が明らかになる。
黒子として動いた投資銀行や投資ファンドなどの動きも紹介。取材のこぼれ話や識者へのインタビューなども掲載し、多面的に事件を追う。
| 知らなかったでは済まない改正独禁法~談合、不当表示、下請けいじめが会社をダメにする | |
![]() | 諏訪園 貞明 東洋経済新報社 2005-06-24 売り上げランキング : 22,201 おすすめ平均 ![]() 独禁法って怖いってわかったAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ここ数年、下請法、景品表示法、独占禁止法などの法律改正が相次いだ。本書は公正取引委員会の担当官が、法律改正の概要と、それによって生じるビジネスリスクを詳細に解説する。
独禁法改正によって、カルテル・入札談合行為を取り巻く情勢は格段に厳しいものとなった。刑事罰が強化され、罰金額は企業犯罪の中でも最高額の5億円に引き上げられた。カルテル・入札談合を行う企業は巨額の財務リスク、法的措置を受けることに伴う国際信用リスク、競争力低下のリスクなどにさらされることになったのである。
独禁法同様、景品表示法、下請法も厳格化され、事業撤退の憂き目に遭ったり、体力が蝕まれる企業も出てきた。今や社員は社内の違法行為・不正行為をかばったり、「見て見ぬふり」していれば、失業や更迭のリスクが生じる。会社のためにも、自分のためにも、事実をきちんと報告することが最低限の常識であると主張する。
一方、本書は新規ビジネスを成功させる方法としての独禁法活用にも触れる。「取引拒絶」「コスト割れ販売」「不可欠施設の利用妨害」など、新規参入を排除しようとする行為に対する独禁法上の規制を明確に認識しておくことで、事業拡大に大きな差が出ることを指摘している。
| 会社はだれのものか | |
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2003年に出版した『会社はこれからどうなるのか』の続編。「会社とは何か」という、より基本的な問いから出発して、「会社はだれのものか」を詳しく解説していく。
会社とは「法人企業」の別名である。法人とは「法律上、ヒトとして扱われているモノ」のこと。会社はヒトとして会社資産を所有し、それを自由に管理し、そこから生み出される利益を受け取る権利を持っている。一方、株主は会社をモノとして持ち、会社がヒトとして持っている権利、具体的には株主総会の議決権や配当への請求権などを所有している。
会社は、2階部分で株主が会社をモノとして所有し、1階部分ではその株主に所有されている会社がヒトとして会社資産を所有する2階建て構造になっている。「会社は株主のものでしかない」という株主主権論は、2階部分のみしか見ていないことになる。2階部分を強調するのが米国型の会社のあり方で、1階部分を強調するのが日本型の会社のあり方。その時々の状況に応じて選び取っていく選択肢の1つと理解すべきだと主張する。
後半は著者と小林陽太郎・富士ゼロックス会長、コピーライターの糸井重里氏らとの対談を収録。会社の未来を考察している。


商社はリスクを取ってなんぼ
やはりおもしろい





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