メイン > 日経ビジネス書評『新刊の森』(2005年) > 2005年5月9日~5月30日

腐蝕の王国〈上〉
4093797323江上 剛

小学館 2005-04
売り上げランキング : 53,524

おすすめ平均 star
star腐蝕の大国を読んで

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腐蝕の王国〈下〉
4093797331江上 剛

小学館 2005-04
売り上げランキング : 42,928

おすすめ平均 star
starメガバンクを舞台とした壮絶な人間模様

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■著者に聞く 江上剛氏[作家] カリスマ経営の検証

バブル発生からその清算までの約20年間に及ぶ日本経済を描いた“経済小説”。剛腕な上司と忠実な部下が、1人の女を通して密接につながり、銀行の経営を握っていく。上下2巻の大作だが、展開がスリリングで一気に読み通せる。

――主人公が勤める銀行は架空だと思いますが、彼の強烈な上司である藤山は、どうしても三井住友銀行の西川善文頭取にイメージが重なります。

この小説は実際に起きたことをできるだけ忠実に再現しようという「経済小説」ではないので、主人公や主人公の上司に明確なモデルはいません。しかし、バブル経済の発生から崩壊、現在に至るまでの銀行を中心とした様々な事件を扱っている以上、実在の人物と重なる部分は多くなりました。

特に、小説のテーマの1つに設定した「日本で最後のカリスマ経営者」を、主人公の上司、藤山に演じさせたため、そのモデルが三井住友の西川さんだと思われるのは自然だと思います。日本がバブル経済に突入する起点となったのが、住友銀行による平和相互銀行の吸収合併でした。それ以来、激しい出店、貸し付け競争に銀行は没頭し、バブル経済を膨らませました。

西川さんはその中心にいて、また後始末を一手に引き受けてきた人です。今度、退任されることになりましたが、時折、言葉に詰まった退任会見を見ていて、平和相互を吸収合併して以来ずっと引きずってきた不良債権の処理にようやく片がついたんだと思いました。西川さんの退任によってカリスマ経営は終わり、小説の中で主人公として描いたテクノクラートが銀行の経営を担う新しい時代が到来することは間違いないと思います。

――この本で最も訴えたかったテーマは何ですか。

最後のカリスマ経営者を描く一方で、正義感を持って仕事に打ち込みながら、ワンマン経営の下で浮かばれなかった人たちを描こうというのが第1の狙いでした。本の最初のページに引用した陸軍統帥綱領には次のような一文があります。「幕僚は決して指揮官に非ず。これを混同するに至らば、軍は最早や無政府状態に陥るべし」。本物のリーダーと言えない人がリーダーになった組織で起きる不合理と混乱。そして、そこに身を置いた人たちの悲哀を描きたかったのです。

しかし、それだけでは非常に暗い小説になってしまうので、美しい女性との究極のプラトニックラブを展開させました。最近の日本では目を覆いたくなるような性犯罪が増えています。そういう行為に対する反発もあって、男女の肉体関係ではなく、美しい心と心のつながりを描きたかったのです。少し格好よすぎるかもしれませんが、「愛と歴史の物語」を目指して執筆しました。

――二足のわらじを履くこともできるのに、エリート銀行員の立場を捨てて作家に専念されたのはなぜですか。

銀行の仕事に対して情熱が冷めてきたことが最大の理由でしょうか。銀行は、4兆~5兆円もの公的資金をもらっていながら、大きな顔をしている変な業界ですよね。私たち庶民の税金を使っておいて、再生したら5億円以上の資産がある人を対象にしたプライベートバンクを目指すなどと平気で言う銀行がある。庶民は相手にせず金持ちのための銀行を目指すとは何事かと思いませんか。

しかも、最近の銀行を見ていると、ほとんど審査しないで不動産融資に走っている姿など、バブルの時そっくりになってきています。中身が何も変わっていない銀行を外から冷めた目で見てみようとも思ったのです。

江上剛(えがみ・ごう)氏
1954年生まれ、早稲田大学政治経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)入社、2002年、『非情銀行』で作家デビュー。翌年銀行を退社。

■2005/05/30, 日経ビジネス, 83ページ

営業の神様が教える25の習慣―顧客心理のつかみ方からトラブルの解決法まで
4594049052ステファン・シフマン

扶桑社 2005-03
売り上げランキング : 1,825


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販売競争が激化する一方の今日、営業マンの戦略や習慣も変わらなければならない。IBM、AT&T、フォード・モーターなど米国を代表する企業で営業教育を手がけてきた著者は、変化の時代に適応して成功を収めたスター営業マンたちが実践するという「25の習慣」を分かりやすくまとめた。著者が身につけよと強調するのは「日々の活動でプロの営業マンが取るべき立派な態度」である。市場や顧客の分析法ではなく、営業マン一人ひとりの小さな習慣の積み重ねが、大きな利益を生むのだと説く。

例えば午前9時に行くと言ったら、9時2分でも8時55分でもダメで、必ず9時に到着する。その姿勢が自らの言葉に100%責任を持ち顧客の信頼を勝ち取る基本だが、果たして日々実践できているかと問う。また、「営業マンは、結局のところ、コンサルタントでなければならない」と言う。今すぐ物を売るという立場を離れて顧客の抱える問題に適切な解決策を提案できるようになってこそ一流であると語る。さらに「他の社員より早めに出社せよ」「業界誌には必ず目を通せ」「ユーモアを忘れるな」などといった、具体的で誰にでも実践可能な習慣の大切さを説く。根底にあるのは誠意や和の精神であり、日本人にも受け入れやすい。

■2005/05/30, 日経ビジネス, 81ページ

ファンサイト・マーケティング
4478530378日野 佳恵子

ダイヤモンド社 2005-04-15
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おすすめ平均 star
star頷きと共感の連続でした。
star企業サイドから見たコミュニティサイト
star企業のPRやWEB担当にはおすすめ。

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著者は近年のインターネット事業において注目される経営者の1人である。タウン誌編集長などを経て、1990年に広島市で女性の企画集団「ハー・ストーリィ」を設立。インターネットの特性を有効に活用して10万人を超える主婦のネットワークを構築し、多くの企業でWebビジネスをサポートしたり、マーケティングを請け負うなどして事業を拡大させてきた。本書のタイトル『ファンサイト・マーケティング』は著者による造語だ。「個」としての顧客の声や動向をダイレクトかつ迅速につかみ、ファンを育てるWebサイトとは何かについて、自社のサイトや成功企業の事例を挙げながら解説する。

強調点の1つは「Webサイトは広告メディアではない」ということだ。Webサイトを宣伝のための新しいメディアだと考えると失敗すると注意を促す。Webサイトは顧客が自らの意思で訪れる「場」であり、企業が顧客との絆を強める場、同時に共通の価値観を持った顧客同士が出会う場であると指摘する。また、「ファンサイト」を構築し成功に導く秘訣は顧客のクチコミにあると言い、ダスキン、ベネッセコーポレーション、無印良品などの成功事例を示しながらクチコミパワーの有効性と活用法を示す。

■2005/05/30, 日経ビジネス, 81ページ

ビジネスを育てる
4901784641ポール・ホーケン 阪本 啓一

バジリコ 2005-04-02
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おすすめ平均 star
star自分のビジネスを構築する方法を物語で楽しめる
starビジネスとは実行である
star鳥肌が5分間消えなかった

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本書はスモールビジネスを立ち上げようと一念発起した人のための指南書である。しかし、会社設立のマニュアル本ではない。会社を作るということが創業者の人生においてどのような意味を持つのかを問い、正しい行いを積み重ねてこそビジネスはおのずと育つという道理を、作家として、事業家として大きな成功を収めた著者が語る。米国で雇用が不安定になり始めた1987年に上梓されて以来、全世界で約200万部が売れたロングセラーである。

メディアに頻繁に登場する「著名経営者による誰も知らないとっておきの成功の秘密」など存在しないと言う。世界的な大企業の経営者でさえ、常に自らの経営に不安を抱えているのが現実だと指摘。また、「カネさえあればうまくいく」などという考え方は論外で、不足しているのは資本ではなく起業家の想像力だと一喝する。他者の成功例や事業規模や儲けの算段に心を奪われず、まずは自分自身の特性と社会が求める新たなビジネスとは何かについて冷静に考え抜けと助言する。

著者が最も注意を促すのが「原資の問題」だ。友人からカネを借りたり、不相応な資金を調達して翻弄され傷つく事例が米国でも後を絶たないと言う。カネの考え方を根本的に改めることが成功への第一歩だと説く。

■2005/05/30, 日経ビジネス, 81ページ

再生巨流
4104753017楡 周平

新潮社 2005-04-21
売り上げランキング : 6,679

おすすめ平均 star
star営業マンの執念
star新しい経済小説
star元気の出るビジネス書

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■著者に聞く 楡周平氏[作家] 家電店は再生できる

巨大運輸企業を舞台に、流通改革に取り組む男たちを描いた経済小説。苦戦する家電店の再生を、実現可能なビジネスモデルとして物語に著した。ネット社会はアナログ企業こそチャンスと説く。

――通販の配送に街中の家電店を活用するというアイデアは新鮮でした。

大手の家電量販店が次々と出店している中で、規模で劣る地域の家電店の経営は相当厳しい状況に置かれているのはご存じの通りです。高齢化も進み事業継続を断念する店も増えています。しかし、家電店には地域の顧客情報を熟知しているという強みがあります。家電製品を配送するために、自動車なども既に用意されている。ならば家電に限らず、文具や生活雑貨など通販で買える製品の配送も、家電店に任せたら面白いビジネスが展開できるのではないかと考えました。

問題は何をどんな価格で配送するかですが、アスクルに代表される文具通販のように、カタログを配って利用者が好きなものを選べるようにすれば、多種多様な商品を供給できるし、一括仕入れによって商品の価格も下げられます。トイレットペーパーのようにかさばるものやミネラルウオーターなど重たい商品は、自宅まで届けてもらいたい。そのようなニーズは高齢者だけでなく、小さな子供を抱える家庭などでも高いと思います。私が考えたこうしたアイデアを基に、主人公たちが流通改革に取り組む姿を描いたのが本書です。

――実際にあり得そうな内容ですね。

家電店の数や市場規模といったデータは実際に取材をして得られた現実の数値を利用しましたし、私は本気で実現可能だろうと思っています。この本を発表してから、企業から多くのコンタクトがありました。中には、「事業として検討したい」という申し入れもありました。

実は、作家になる前に米国系企業で働いていて、そこで日本で新しい物流システムを構築するプロジェクトを任されていました。当時、日本の物流業界を徹底的に調べたこともあって、極めて現実的なビジネスモデルを示せたと思っています。新事業を立ち上げるための投資も妥当な金額に抑えてあります。小説という形を取っていますが、この本は僕の企画書と言えます。

個人的には、本作で示したビジネスモデルを実際に自分の手で実現させたいと思っています。臨時で構わないので、どこかの会社が雇ってくれないかと期待しています。その間、作家業はお休みしなければなりませんが(笑)。

――物流企業はもっと潜在力を生かすべきと考えられていますね。

ネットが普及したことで、楽天やライブドアのようなIT(情報技術)企業がもてはやされていますが、ネット社会ではアナログな物流企業こそチャンスが多いと感じています。

例えば佐川急便やヤマト運輸は、既に全国規模の物流ネットワークを整備しています。IT企業もネットワークを持っていますが、それはあくまでも電子的な情報のやり取りであって、実際に物を運ぶためには既存の物流業者に依存せざるを得ない。今は物流業者が荷物をもらう立場にありますが、本来は佐川やヤマトがイニシアティブを取れるはずです。

この本では、既存の宅配ネットワークに文具通販の仕組みや家電店の機能をうまく組み合わせることで、日本の流通を変革できることを示したつもりです。発想を少し軟らかくすれば、新しいビジネスを創出できることに気づいてほしいと思います。その意味で、物流業界だけでなく小売りやメーカーなどの企業人にも、ぜひ読んでもらいたいですね。

楡周平(にれ・しゅうへい)氏
1957年生まれ。米国系企業に勤務中の96年に書いた『Cの福音』(宝島社)がベストセラーとなり作家業に専念。『クーデター』『青狼記』など著書多数。

■2005/05/23, 日経ビジネス, 69ページ

ダメな会社ほど社員をコキ使う
419861993X宋 文洲

徳間書店 2005-03-20
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おすすめ平均 star
star身近にまだ有る消え行く会社!
star多くの主張に頷ける
star本来この本を読むべき人が

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非製造部門の効率改善を目的にソフト開発、コンサルティング事業を手がけるソフトブレーンの会長である著者が、日本企業に潜む無駄を指摘する。

営業現場にノルマ制や成果主義を導入する企業は多い。だが、結果ばかりに重点を置く経営を続けると、営業マンが買う気のない顧客にしつこく営業したり、成果や手柄を得るために苦手なことにも無理に手を伸ばすことになり、無駄が生じる。マネジャーは結果ばかりにこだわるのではなく、営業マンと一緒に営業プロセスの段階にある問題点をチェックし、解決策を議論することが重要。そのためには、営業プロセスを正確に記録し、社内で共有する仕組みを作る必要があると説く。

「いいモノを作ろう」というこだわりの強い製造現場では、商品の高性能化、高品質化を目指しがち。だが、本書はそうした商品は必ずしも消費者が求めるモノとは合致しないと指摘する。モノ作りでは満点や完璧を追い求めるよりも、合格点を決めてそれを追求することが重要。そのためには、顧客が何に価値を置いているかを理解することを最重視すべきと解説する。

古い発想の経営者が、科学性、客観性、本質論を無視したまま企業改革を行っても、社員は疲弊するばかりで一向に成果は出ないと主張している。

■2005/05/23, 日経ビジネス, 67ページ

人事の日本史―エコノミスト
4620317209遠山 美都男 関 幸彦 山本 博文

毎日新聞社 2005-03
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古代の聖徳太子から江戸時代の大老・井伊直弼まで、人事を巡るエピソードを紹介する。「エコノミスト」での連載を単行本化した。

本書は日本的人事の源流が、律令制システムにあると分析する。「官位」という肩書を重視する点、官位の間や地方と中央の間に厚い壁があり、優秀な人材を大抜擢しにくい点などは、現代の日本の人事にも影響を残していると指摘する。

その特徴を逆に利用したのが源頼朝。優秀な同志と家来を獲得するため、当時、中央の人事システムから外れ、無位無官だった東国武士に目をつけ、一人ひとりに「お前だけが頼りだ」と説得して味方に引き入れた。誇り高い武士の心をつかんだ頼朝は、平氏打倒に成功し、鎌倉幕府を開く。

江戸時代、老中の松平定信はそれまで家格と賄賂で決まっていた幕府人事に能力主義を導入。抜擢人事を断行し、成果を上げた。役に命じられる者は、前日、老中から奉書が届く。昇進を期待する者は気もそぞろだったという。定期異動を前にした現代のビジネスマンと変わらないと指摘している。

歴史上、重要な意味を持つ人事はどう決まったのか、古人は人事をどう考え、どう行動したかなどを知ることができ、興味深い。

■2005/05/23, 日経ビジネス, 67ページ

賭けた儲けた生きた―紅花大尽からアラビア太郎まで
4309906265鍋島 高明

五台山書房 2005-04
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リスクを背負いながら事業や投資に賭け、巨富を築いた30人の波瀾万丈の人生を紹介する。江戸時代から現代に至るまで活躍した多様な相場師・実業家が登場する。

山形特産の紅花を商い、巨利を得た鈴木清風。その羽振りの良さを嫉妬した江戸の紅花問屋が「不買同盟」を結ぶと、「せっかくの荷物を国に持ち帰るのも商人の名折れ」と、紅花の荷物をそっくり焼却してしまった。その日のうちに、紅花相場は急騰。頃合いを見計らって、清風は大量の紅花を放出し、数日間で3万両という大金を儲けた。先に焼却したのは紅花に見せかけた古綿花だったという。清風はその金を使って吉原で豪遊し、「紅花大尽」の異名を取った。

幕末、女貿易商として活躍したのが大浦お慶。ある時、イギリス商人から日本茶を大量に受注し、九州中の茶を買い占めた。こうして築いた巨額の資産は坂本龍馬ら幕末志士の資金援助に充てた。晩年は保証人となったのがきっかけで借金地獄に陥るが、お慶自身は「不注意のために残念なことになってしまった」とあっけらかんとしていたという。

歴史に名を残す相場師たちの度胸、たくましさ、スケールの大きさが非常に印象に残る。

■2005/05/23, 日経ビジネス, 67ページ

入管戦記―「在日」差別、「日系人」問題、外国人犯罪と、日本の近未来
4062128527坂中 英徳

講談社 2005-03
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おすすめ平均 star
star「小さくて美しい日本」を目指す著者の退官記念
star入管政策の第一人者の偉大な業績と、今後の課題

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■著者に聞く 坂中英徳氏[前・東京入国管理局長] 移民政策の議論急げ

経済界を中心に人口減による労働力不足を外国人で補う「開国論」が盛んに主張されている。著者は、理念なき拡大に警鐘を鳴らし、移民政策の国民的な合意が必要と指摘。「外国人との共生に、残る半生を賭けたい」という。

――1人の入国管理官として、「入管」のことをもっと国民に理解してほしい。それが本書を執筆した動機だそうですね。

入管(入国管理局)といっても、名前くらいしか知らない人が大半ですからね。日本が人口減少社会を迎えるに当たり、外国人の移民政策は、国の将来を間違いなく左右します。入管の仕事ぶりを通じて、1人でも多くの国民に、この問題の重要性を認識してもらいたかったのです。

日本に在留している外国人は2003年で192万人に上ります。特別永住資格を持つ在日朝鮮・韓国人が47万人いるので、残る145万人が新たに入国した外国人ということになります。

日本は在留資格を厳しく審査し、外国人比率を人口の約1.5%に抑えています。先進国の中でも最低水準です。建前上は、特有の才能を有する外国人を優先して入国させているのですが、実態はまるで違います。

愛知県豊田市に、全住民の過半数に当たる約3500人の日系ブラジル人が住む保見団地というところがあります。多くはトヨタ自動車グループや、下請け、孫請け企業で働いていますが、周辺住民とのトラブルや、少年犯罪が多発することで有名でした。

保見団地の日系人は、トヨタなどに労働者を斡旋する請負会社に期間限定で雇用されます。賃金は安く、年金や健康保険などの福利厚生も、十分に受けられていないのが実情です。

企業がコストカットに走ると、彼らが真っ先にしわ寄せを食らう。親は失業して生活保護を受け、子供たちは学校でひどい差別を受ける。犯罪に手を染めたり、中学でドロップアウトする子供たちも多いのです。この地域では、高校に進む子供たちは、わずか数人に過ぎません。外国人を人手不足を補う低賃金労働者としてしか見ない企業の姿勢が、問題の根底にあります。

――では、これまでの「労働鎖国」を改めて、外国人にもっと門戸を開けという主張には反対なのですか。

そんなことはありません。2050年に人口が3000万人も減るという予測がある中で、現状より受け入れを増やすべきなのは間違いありません。必要なのは、移民を1000万人単位で受け入れる「大きな日本」を目指すのか、移民を制限して人口減少とともに縮小する経済を甘受する「小さな日本」を選ぶのか、という国民的な選択でしょう。十分な議論もないまま奥田さん(碩・トヨタ会長)率いる日本経済団体連合会などが、外国人受け入れのさらなる拡大だけを主張する。これは問題だろうと言っているのです。

3月で法務省を退職し、自由な身になったので、日本人と外国人が共生できる社会を考えるNPO(非営利組織)を発足させます。後輩官僚や大学教授、ジャーナリストらの有志とともに、政府に政策提言をしていくつもりです。

――外国人との共生といっても、実現は容易ではないですね。

中国、韓国など隣国との関係すら、ぎくしゃくしているのが実情ですからね。具体策はこれから議論しますが、「移民庁」のような組織の新設を提案するつもりです。外国人が安心して仕事や住む場所を見つけたり、日本に長くとどまってもらうには、外国人政策を一貫して担う役所が、どうしても必要になります。

「日本に行ってみたい」「良い国だから長くとどまりたい」といった、日本のファンを内外に増やすことが、共生に向けた第一歩になるでしょう。

坂中  英徳(さかなか・ひでのり)氏
1945年生まれ。慶応義塾大学大学院修了後、法務省入省。一貫して入国管理政策に携わり、3月で退職。移民問題に関するNPOを発足予定。

■2005/05/16, 日経ビジネス, 75ページ

日本のお金持ち研究
4532351359橘木 俊詔 森 剛志

日本経済新聞社 2005-03
売り上げランキング : 204

おすすめ平均
starお金持ちの在り様
starお金持ちへの道
star実用書にあらず。

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本書はお金持ちになるためのハウツー本ではない。「日本で漠然とお金持ちと呼ばれている人間とは何者か」という疑問に、経済学者らが学術的視点から答えたものだ。まず著者らは国税庁が発行している「全国高額納税者名簿(2001年度版)」に記された年間納税額3000万円以上の層を「日本のお金持ち」と定義した。所得にすればおよそ1億円以上に当たり約9000人存在する。彼らへのアンケート結果などからお金持ちの定義を導き出していく。

職種で見ると最も多いのは企業家、次いで医師だ。この2つが「お金持ち」の45%を占める。いわゆるサラリーマン社長や勤務医ではなく、オーナー企業家や開業医である場合がほとんどだと言う。日本ではこうした「お金持ち」と、「上流階級」と呼ばれる人々が必ずしも一致していないとも言う。パワーエリートと呼ばれる政治家や官僚の中には、手にした高い学歴や社会的地位に所得が伴わない「地位の非一貫性」が見られると解説。結果として大企業、特にオーナー企業のトップに所得・権力・支配力のすべてを兼ね備えた上流階級が多いと論じる。企業家は自家用車にトヨタを、医師ならメルセデス・ベンツを選ぶ傾向が強いなど、日本のお金持ちならではの嗜好を読み解いていく。

■2005/05/16, 日経ビジネス, 73ページ

全てがゼロ、だから成功する―地図王への道
4062121913黒田 敏夫

講談社 2005-04-12
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著者は昭文社を世界屈指の地図会社に育て上げた創業者(現・最高顧問)である。50年前、まだ地図というものが一般商品としては認知されていなかった時代にあって、著者は直感的にその可能性を見いだしたと言う。その後は独自の方法論と商才を武器に事業を成功に導いていった。本書は、知られざる優良企業の実像を紹介する書であり、裸一貫で新たなビジネスに挑んだ男の成功秘話でもある。また、著者ならではのセールステクニックや経営哲学が随所に顔をのぞかせる。

小さな地図会社に飛び込んで、地図セールスの全国行脚に精を出していた頃、ビジネスには欠かせない直感力が磨かれたと言う。どの町のどの企業がどのような地図を求めているのかを見抜く力とともに、夜行列車を乗り継ぎ自らの足で歩いた町々のオリジナルデータが、頭の中に形成されていったと振り返る。その経験が後に全国地図を製作するエネルギーになったと語る。

経営者たる著者のモットーは「3秒で即決」だ。グルメブームとともに大ヒットシリーズとなった「たべあるき地図」や、セールスレディーのハンドバッグに入る地図として定番化した「ミニミニマップ」も、直感と3秒の即決で生まれたのだと解説。スピード経営がもたらすメリットを強調する。

■2005/05/16, 日経ビジネス, 73ページ

韓国の構造改革
4757121474高安 雄一

NTT出版 2005-04
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著者は経済企画庁に入庁し調査局などを経て、1999~2002年の3年間は在韓国日本国大使館一等書記官を務めた。そこでは主にマクロ経済情勢の調査と分析を担当し、特に韓国政府が1998年に着手した経済の劇的な構造改革に注目した。金大中政権(当時)の下でスタートした構造改革路線は、一昨年に誕生した盧武鉉政権に引き継がれ、今日に至っている。

韓国の構造改革に対する我が国での評判について、著者は次のように述べている。「日本の構造改革のお手本とすべく、一部の成功事例が誇張されて伝わっていたり、失敗が成功と伝わっていたりと、誤解されている部分が多い」。こうした認識に立ち、本書では「金融構造改革」「企業構造改革」「労働構造改革」それぞれについての背景、具体的施策、成果などを詳しく検証。日本の構造改革との比較を交えながら丹念に整理していく。

例えば日本と対比されることが多い銀行の立て直し策については、「日韓で大きな差があったわけではない」と見る。日本では公の介入を恐れて主要銀行が自己資本比率8%を守り抜いたのに対し、韓国ではクリアできない銀行が30行中14行に達してしまった。それにより政府は堂々と銀行の構造調整を主導できたのだと解説する。

■2005/05/16, 日経ビジネス, 73ページ

渋谷ではたらく社長の告白
4902843056藤田 晋

アメーバブックス 2005-03-31
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おすすめ平均
star起業をするということ -想像以上にリアル
starなんで
starいい!文句なくいい!

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インターネット広告代理店・サイバーエージェントの社長が自ら綴った半生記。起業までの道のりや、その後の苦悩を率直に振り返る。平凡なサラリーマン家庭に育った著者は、「1度しかない人生を悔いなく送りたい」と起業家を志すようになる。大学卒業後に入社したインテリジェンスでは休みも取らず猛烈に働き、実績を上げた。その働きぶりは宇野康秀社長(現USEN社長)の目に留まり、インテリジェンスの出資を得てサイバーエージェントを設立する。インターネットの拡大に伴って業績を伸ばし、2000年には26歳の若さで同社を東証マザーズ上場にさせた。

だが、間もなくネットバブルの崩壊に見舞われる。株価が低迷し、株主からの批判が社長に集中。ライバル企業からは買収話がいくつも持ちかけられた。急拡大したツケで、社内も混乱を極めた。著者自ら、株価対策に奔走するが、一向に効果が出ない。社内外から激しい突き上げを受け、絶望の淵に立たされた著者は、一時、USENの身売りを決意したと告白する。

つき合いのある堀江貴文ライブドア社長や三木谷浩史・楽天社長ら話題の経営者のエピソードも盛り込み、ネット業界の一面がうかがえる興味深い内容となっている。

■2005/05/09, 日経ビジネス, 87ページ

ぼくと会社と“にっぽん再生”―変質する企業社会戸惑う現場
453231206X日経産業新聞

日本経済新聞社 2005-03
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おすすめ平均
star日本経済V字回復の裏に請負会社の存在?

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デジタル製品の売れ行きが拡大するなど、日本の製造業の復活、再生が指摘されることが多い。だが、そうした回復ムードと異なり、企業の工場に高揚感は乏しい。本書は日本企業が正社員を大幅に減らし、社外戦力を活用し始めた実態を紹介。現場で働く人々の生の声から、経済復活の陰で変質した企業や地域の姿を明らかにする。日経産業新聞での連載を大幅に加筆した。

1990年代、高賃金の正社員では国際競争を戦えないと判断した日本企業は「業務請負」を急増させた。請負会社に登録するのは、正社員を望みつつ、かなわないフリーターや日系人など。彼らはいつ解雇されるか分からない不安定な環境下、低賃金で激務をこなしている。

請負労働者を多数抱える中では、製造現場での技能伝承や安全確保は難しい。雇用が安定せず、生活基盤を固められない若者の増加は社会不安の一因にもなる。一方で、請負労働者として働く外国人就労者の急増が、地域社会に大きな負担を強いるケースも出てきている。多くの問題を抱える中で、日本の工場は、ギリギリの戦いを余儀なくされている。「日本のモノ作りを死守した」と胸を張る経営者は多いが、本書は果たしてそう言い切れるのかと疑問を投げかけている。

■2005/05/09, 日経ビジネス, 87ページ

競争に勝つ大学―科学技術システムの再構築に向けて
4492222588沢 昭裕 寺沢 達也 井上 悟志

東洋経済新報社 2005-02
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国際経営開発研究所(IMD)が発表した2002年の『国際競争力年鑑』で、日本の大学教育は最下位の49位だった。2004年4月から国立大学が法人化されるなど、日本の大学教育システムは大きな転換点を迎えている。本書はこの機に日本の大学はレベルアップを図るべきとして、その方策を探る。

まず、基礎研究から応用研究まで、世界の先端を行く米国の大学システムを分析する。その最大の特徴は徹底した「競争」。米国では研究資金の確保、人材獲得などあらゆる面で大学間、また研究者間で厳しい競争が繰り広げられている。競争に勝つため、学長らはリーダーシップを発揮しながら大学の経営・教育・研究戦略を策定し断行する。内部では理事会がガバナンス機能を担い、外部からは様々な尺度で大学が評価される。こうした環境が大学の研究・教育レベルを上げている。

本書は米国で研究する日本人研究者へのインタビューを基に、日本の大学が米国とは大きく異なるシステムで運営されていることを指摘。「競争的研究資金の大幅拡大」「競争力のある人材を競争的に確保できる環境の整備」「学長・学部長が多層的にリーダーシップを発揮できる設計」など、日本の大学が国際的な競争力を獲得するために必要な9つの提言を示す。 この画面の先頭へ

■2005/05/09, 日経ビジネス, 87ページ

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