メイン > 日経ビジネス書評『新刊の森』(2005年) > 2005年2月7日~2月28日

何があっても大丈夫
4104253073櫻井 よしこ

新潮社 2005-02-26
売り上げランキング : 4,299

おすすめ平均 star
star勇気づけられました
star母は偉大なり
star一家で読みました★

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■著者に聞く 櫻井よしこ氏[ジャーナリスト] 母の最高のプレゼント

社会派ジャーナリストとして活躍する著者が劇的な半生を綴った初の自伝。帰らない父、外国人記者との結婚と離婚、そしてニュースキャスターへの抜擢。いつも心に響いていたのは母の言葉だった。

――華やかな経歴とは裏腹に、複雑な家庭環境で育ったことを知って驚きました。書名はお母様の口癖だとか。

母は、びっくりするほど前向きな人です。父は仕事一筋で、母と子供を置きざりにして自分の夢を追い続けた人でした。遠い場所で別の女性と生活していた父は家に戻ることはありませんでしたが、母は女手一つで兄と私を育ててくれました。そんな母がいつも私たちに言ってくれたのが、「何があっても大丈夫」という言葉です。

振り返れば、今の私があるのも母のこの言葉があったからです。ハワイから帰国してジャーナリストを目指した時、日本テレビ放送網から「きょうの出来事」のニュースキャスターをやらないかと声をかけられた時、そして1人の言論人として物書きに戻ると決心した時…、いつも背中を押してくれたのは母でした。どんなことに対しても前向きに取り組むことを教えてくれたこの言葉は、母からもらった最高のプレゼントだと思っています。

母は90歳を過ぎてもなお元気で、毎年誕生日近くなると踊りの会を開いています。本当に前向きな人です。

――お父様に対して、今生きていれば何と声をかけますか。

いろいろ試練を与えてくれて、本当にありがとうと言いたいですね。父がいなければ、今の仕事はなかったのですから。

高校を卒業したものの、父が大学の入学金を工面してくれず進学を諦めざるを得ませんでした。当時父は新事業のためハワイへ移住していて、母に説得されて父を助けるために渋々ハワイに旅立ちました。ハワイに行かなければ日本人であることを深く考えることもありませんでしたし、世界を眺める視点は母からではなく、父からもらったものだと思っています。

父と私はベタベタした関係ではなかったけれど、お互いに認め合っていました。私は父に対して、欠点は多いけれど立派な人だと、心のどこかで尊敬していました。家族を捨てた父に対して尊敬の念を持っていたのは、やはり母の言葉が大きかった。母はいつも「お父さんは本当に立派な人なのよ」と言って私たち兄弟を育てました。

今、日本の多くの家庭で父親がないがしろにされていることを、とても残念に思います。妻にしても、自分が愛した人を「つまらない人」とけなしたところで、その人を選んだ自分がつまらない人だと子供に思われてしまうのではないでしょうか。

――昔に比べれば恵まれた環境にあるのに、子供の教育が今問題を抱えています。

子供を教育する前に、親の教育が必要だと思っています。今の若い親は子供のことよりも、仕事や趣味など自分がしたいことを優先しがちではないでしょうか。私は子供を育てた経験はありませんが、どんなに優れた才能を持っていても、親がそれに気づいてやらなければ子供は腐ってしまいます。

ただし、子育てを母親だけに任せられたのでは、キャリアを目指す女性にとっては辛いと思います。大事なのは、子育てのために一度職場を離れた女性がきちんと元の仕事に戻れる仕組みを整備することです。今後就業人口が減っていくのですから、企業も社会も変わっていく必要があります。

昔と同じように、コミュニティー全体で子供を育てる仕組みも必要でしょう。若い夫婦が働きに出ても、地域の高齢者が子育てを支援する。高齢者も「役に立っている」という実感があれば、生き甲斐にもなります。

櫻井よしこ(さくらい・よしこ)氏
1945年ベトナム生まれ。ハワイ州立大学卒。日本テレビ「きょうの出来事」ニュースキャスターなどを経てフリーに。『日本の危機』など著書多数。

■2005/02/28, 日経ビジネス, 87ページ

「知恵・情熱・意志」の経営―映像コンテンツ・ビジネスを支える「古くて新しい」原則
佐久間 昇二

ダイヤモンド社 2005-01
売り上げランキング : 26,076


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「衛星放送多チャンネル時代」が叫ばれて久しいが、放送局をはじめとする新規参入各社の実情は決して好調とは言えない。パイオニア企業の1つであるWOWOW(ワウワウ)であっても例外ではない。そうした厳しい状況にありながら、強力なリーダーシップで同社を牽引し、危機を克服すべく改革の大鉈を振るっているのが佐久間昇二代表取締役会長である。

松下電器産業の副社長を経て、1993年にWOWOW(当時は日本衛星放送)の社長に就任。以来、徹底したコスト管理と営業強化によって、倒産すら危ぶまれていた同社を一度は再建に導いた。しかし近年はデジタル放送化への投資がかさむなど、再び苦境に立たされている。著者の挑戦は終わっていないのだ。社員に対しては、逆境こそ攻めの好機であると説く。広報誌に掲載している自らのコラム「さくま発」や社内メールを通じて、松下で培ったビジネスの原点や、チャレンジ精神の大切さを粘り強く浸透させていく。

同社の入社案内(97年)は、「ふつうの人生を送りたかったら、WOWOWだけはやめておきなさい」の言葉で始まり「それでもWOWOWでやりたい、キミを待つ」で終わっている。同社と佐久間氏が信じる「古くて新しい」ビジネスの原則が集約された1冊である。

■2005/02/28, 日経ビジネス, 83ページ

たった3日で売れ出すキキダス・マーケティング―訊き出す、効き出す、危機脱す!
中山 マコト

日本能率協会マネジメントセンター 2005-01
売り上げランキング : 10,309

おすすめ平均
あっこれだ!恐るべし「キキダス・マーケティング」
たった3日で売れ出すキキダス・マーケティング―訊き出す、効き出す、危機脱す!
内容はいいが、書名がよくないので星4つにしました

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売りたいモノが売れないのは、販売促進の担当者がその方法を自分の頭だけで考えているからだ――。市場調査や販促計画の立案を手がけてきた著者が、数多くの失敗事例を見たうえで至った結論だ。そこで著者は、消費者の本音を訊き出す独自の技術で効果的な販促プランを生む方法を開発し、「キキダス・マーケティング」と命名した。

「訊き出す」というからには、周到な準備と徹底したインタビューが不可欠である。会議室で行う2時間程度のグループインタビューやアンケートをいくら繰り返しても、消費者の本音は引き出せないと主張する。「1人が年収1000万円、もう1人が100万円。それを足して2で割って、『この地域に住む人の年収は550万円です』って、そんな人は1人もいないのに…」とも指摘し、従来のリサーチがいかに的外れなものであるか考え直せと言う。

「キキダス・マーケティング」に欠かせない最低限の知識や技術は3日間でマスターできると解説。まずは売りたいモノを1つに絞り、最も有効と思われる「訊き出す相手」を決める。次いで相手の心に波長を合わせるコツをつかみヒアリングする。最後は訊き出した本音を分析して、販促用のキャッチコピーに置き換える。各ステップの実践法を段階別に示す。

■2005/02/28, 日経ビジネス, 83ページ

中国人にエアコンを売れ!
高橋 基人

草思社 2005-01
売り上げランキング : 7,837

おすすめ平均
中国ビジネスに関わる人に必読の書
「各論」で語る中国ビジネスの可能性

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中国エアコン市場で外資系メーカーとしてはトップシェア(金額ベース)を誇るダイキン工業。初代中国部長として快進撃の陣頭指揮を執ったのが著者である。香港を足がかりに中国本土に乗り込む時は、「行くも地獄、残るも地獄」という心境だったと言う。後発組であったはずの同社が展開した緻密な戦略と、著者が体当たりでつかみ取った「中国ビジネス成功のコツ」を、明快な言葉で説く体験記だ。

激烈な競争の中では、後発組の利点が生きたと言う。安売りの消耗戦には目もくれずに、高価格高品質に徹底して「空調のベンツ」を目指した。業務用機器の導入決定権を持つ中国の役人たちは「コスト意識が低く、最先端製品好きで、ええかっこしいだ」と読み取ったからだ。この戦略は見事に功を奏す。

一方で著者は、中国人を理解し、同社が彼らから愛されるための「秘訣」を探し求めた。「中国ビジネスに情けは無用。提携しても信じきるな」「“土地の無償貸与”など甘い口車に乗るな」といった教訓を示す。中国人は義理人情に厚いと論じる一方で、「徹底した拝金主義者であることを忘れるな」とも助言する。さらには、中国マフィアとのつき合いや、色仕掛けの罠にはまりそうになった体験など、驚きのエピソードも飛び出す。

■2005/02/28, 日経ビジネス, 83ページ

女探偵が教える心ののぞき方
4763196081山崎 世美子

サンマーク出版 2004-12
売り上げランキング : 76,748

おすすめ平均 star
star内容は、タイトルほど刺激的ではないかも。
starメチャメチャ面白かったです。
star知っていた方が良さそうな女性に関する知識(笑)

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■著者に聞く 山崎世美子氏[エンジェル社長] 携帯が不倫を増やした

女性のための探偵事務所を設立して人気の女性社長が明かす世の中の浮気の実態。個人間の連絡が簡単に取れる携帯電話の普及が不倫を蔓延させた原因だと言う。女性上司や部下とのつき合い方についての考察も面白い本だ。

――女性のための探偵社を創業されて7年たったそうですね。業績も好調だと聞いています。

私が探偵社を開くきっかけとなったのは、自分自身が離婚問題で調査を依頼しようとしたのがきっかけでした。その時、大阪では有名な女性社長の探偵社に電話したのですが、対応は信じられないものでした。まだ依頼するとも決めていないのに、「調べてやるから何でもしゃべりなさい」と言わんばかりに、初めから高飛車な態度で根ほり葉ほり聞き出そうとするのです。すぐに行くから住所を教えろとも。

カネ目当て見え見えで、こちらの身になって相談に乗ってくれる雰囲気では全くありませんでした。ほかの探偵社も似たり寄ったりだったので、いっそのこと自分で女性依頼者のための探偵社を作ってしまえ、と事業を始めました。私に高飛車な態度で接した女性社長が経営する探偵社の全く逆をやれば成功するに違いないと思って。狙いはぴったり当たりました。

例えば、探偵社のほとんどが依頼者のところに探偵を派遣しますが、私たちはオフィスに来てもらうようにしました。オフィスを見れば、私たちの会社や仕事ぶりが分かるでしょう。子供のいる依頼者のために託児所も用意しました。創業から7年で2万人以上の女性の相談に乗っています。

――不倫や離婚に関する相談が最近はものすごく増えているそうですね。

日本の社会で不倫がものすごく増えているからですよ。その大きな要因は携帯電話だと思います。以前だったら、異性に対して連絡を取ろうとしたら、手紙を書いたり自宅に電話したりしなければならなかったでしょう。これって、ものすごくハードルが高いでしょう。しかし、携帯電話の普及で簡単に連絡が取れるようになりました。しかも、携帯メールの普及がそれに拍車をかけています。

電話に相手が出なくても一方的にメールを送りつけておけば、声を出さなくてもいいですしね。昔に比べればはるかに簡単に異性と連絡が取れるようになったと思いませんか。実際、私たちのところに来る相談件数も携帯電話の普及に比例して増えてきました。不倫している人たちは例外なく携帯メールの達人ですよ。

――上場企業の社長さんも相談に来るそうですね。

愛人のいる社長さんって結構いらっしゃいます。「彼女の動向が最近とっても変だから、ほかに男がいないか調べてほしい」というケースが多いんです。そして、男がいることが分かると「ぼくたちの6年半は何だったんだ」と、急にメソメソし始める。

そういう社長さんたちとは後で友達になる場合も多くて、お酒を飲みながら泣き言を聞いてあげています。「山崎さん、女々しい男だと思わないでくれよ」と言いながら、ほかの人には言えないからなのか、いろいろなことを私に話したいみたいです。

――不倫する年代や場所にも特徴があるそうですね。

厄年の人が多いですね。場所では、高圧線が通っていてほこりっぽい所。こういう所に会社のビラをまくとヒット率が極めて高い。逆に高級住宅地ではほとんど反応がありません。

不倫で泣くのは結局、女性です。女を泣かせるなら不倫なんかするなと言いたい。それでもしたいなら証拠は絶対に残さないことです。

山崎世美子(やまざき・せみこ)氏
大阪府生まれ。27歳でターゲット21設立。ブティック・占いの館の経営を始める。1998年女性探偵事務所エンジェルリサーチを設立し社長。

■2005/02/21, 日経ビジネス, 81ページ

企業とは何か
P.F.ドラッカー 上田 惇生

ダイヤモンド社 2005-01-29
売り上げランキング : 4,445

おすすめ平均
企業
マネジメント
難しすぎ

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1946年に出版したマネジメントの古典を新訳で刊行した。著者が米ゼネラル・モーターズ(GM)の経営と組織を1年半かけて調べた経験を基に、企業と産業社会のあり方を探る。

著者は米社会を分析するに当たって、人の生活と生き方を規定し、方向づけ、社会観を定め、問題を生み問題を解決していく社会組織をまず取り上げるべきだと指摘。現代の米国では企業がその組織に相当するとした。企業はいかに機能すべきか。「事業体としての企業」「社会の代表的組織としての企業」「産業社会の存在としての企業」という3つの面から考察していく。

例えば、企業の経営政策は、状況の変化と問題の発生に対応する柔軟性が必要だと説く。経営陣は仕事と製品に誇りを持ちたいという従業員の意欲を喚起する関係を築くべきであり、労働力をコストではなく資源としてとらえるべきだと提言する。また、企業は公益に関わりがあり、社会問題にも関係を持たざるを得ないとの考えも示す。

初版刊行後、GMは本書の内容に反発し、提言をことごとく無視したという。一方、日本企業は仕事改善プログラムや品質管理サークルを導入するなど、本書の考えを積極的に取り入れ、競争力向上に生かした。普遍的な内容で、今でも参考にできる部分が多い。

■2005/02/21, 日経ビジネス, 79ページ

ポール・ボルカー
ジョセフ・トリスター

日本経済新聞社 2005-01
売り上げランキング : 219,919


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1979年に米連邦準備理事会(FRB)議長に就任したポール・ボルカー氏は、戦後最悪のインフレを鎮圧するため、思い切った金融引き締め策を取った。インフレ鎮火に成功した米国は、その後、記録的な経済成長を果たす。本書は、今や伝説的な人物となった彼の半生を様々な角度から描く。

同氏の前任者たちもインフレ抑制に努めていたが、国民が痛みを訴えるたびに手を緩め、果てしなく物価が上昇する結果となっていた。インフレが決定的に悪化したカーター政権下、FRB議長に就任したボルカー氏は、決然とした行動が必要との信念を抱く。金融引き締めは景気の悪化と失業の増大を招いたとして多大な非難を受けたが、意思を曲げることなくやり抜いた。レーガン政権下では政治との緊張関係が増し、リーガン、べーカー財務長官らが、金融政策に注文をつけたが、自分が正しいと信じる道を歩んだ。

本書は少年時代にさかのぼりながら、ボルカー氏の私生活にも踏み込む。真面目なタウンマネジャー(市行政官)だった父、若年性糖尿病という重い持病を持っていた妻、脳性麻痺のハンディを負った長男などを紹介しながら、質素を旨とし、公共精神を尊び、高潔さに最大の価値を見いだすボルカーの生き方の源を探る。

■2005/02/21, 日経ビジネス, 79ページ

淋しきカリスマ堤義明
立石 泰則

講談社 2005-01
売り上げランキング : 71,234

おすすめ平均
立石氏の作品としては・・・・
最後の土地神話、崩壊!
寄せ集め

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有価証券報告書への虚偽記載で上場廃止となった西武鉄道。カリスマ経営者と言われた総帥の堤義明氏は、西武グループの凋落をどう見ているのか。長年、グループを取材してきた著者が、堤一族の興亡や堤商法の詳細を描く。

著者は、堤商法の原点はグループ創業者で義明氏の父である康次郎氏の事業観にあると指摘し、その波瀾万丈の人生を振り返る。康次郎氏は利益を得るためには非合法すれすれのビジネスも厭わなかった。周囲に身近な人間を置いて、閉鎖的な個人企業体として運営した。私生活も奔放で、義明氏や異母兄の清二氏(元セゾングループ代表)らは複雑な家庭環境に置かれた。

康次郎氏が亡くなった後、西武グループを引き継いだ義明氏は、康次郎氏の思想と経営手法を踏襲し、絶えず康次郎氏の立場に置き換えて考え、決断してきたという。著者は、「私が自信をもって経営できるのは、親父の思想でやっているからです。それでうまくいかなくてもどうってことない」というかつての発言をとらえ、義明氏は西武王国の主としての自分の人生を憎んでいたのではないかと分析する。康次郎氏が育んだ西武グループが社会から否定され、消え去ることが義明氏の希望だったのかもしれないとの独自の見方を示す。

■2005/02/21, 日経ビジネス, 79ページ

南京事件「証拠写真」を検証する
4794213816東中野 修道

草思社 2005-01-31
売り上げランキング : 1,405

おすすめ平均 star
starもっともっと検証を
star南京事件は、中国政権維持の道具になっている。
star見破ります

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■著者に聞く 東中野修道氏[亜細亜大学教授] 証拠写真は1枚もない

旧日本軍による「南京事件」の証拠とされた143枚の写真を徹底的に検証した。その結果、すべての写真に合成や改ざんなどの跡が認められたという。本への批判は検証の精度を上げるため大歓迎だそうだ。

――「南京事件」に関して、多くの日本人は罪の意識から「申し訳ない」と思うことで、恣意的に目をそらしてきたのではないかと思います。そこに今注目したのはなぜですか。

1997年にアイリス・チャン氏が『ザ・レイプ・オブ・南京』という著書を出し、世界中から注目を集めました。その時、私に専門家としてのコメントや評価を求める問い合わせが殺到するようになったのが直接の理由です。私の本来の専門は東欧の社会思想史なのですが、この本業に差し支えるのではないかと思えるほど連日のように問い合わせが続きました。政治的なプロパガンダを全く取り除いた状態で、誰かが南京事件の真相について総括的な研究をしておかなければならないと思って始めたのです。

そもそも私が南京事件に注目したのは、10年ほど前に学生から旧東ドイツで南京事件について記された公文書が発見されたという話を聞かされてからです。その公文書や別の資料を取り寄せ、調べてみると掲載されている写真の中に奇妙な点をいくつも発見しました。

例えば、日本兵が切り取ったばかりの生首を手に下げているという残酷極まりない写真があるのですが、よく見ると生首とされる人の髪の毛が非常に短い。人間の頭は大変重いもので、長さ数cmしかない髪の毛を引っ張って吊り下げるのは困難です。しかも、日本兵とされる人の軍服についている襟章が旧日本軍のものとは思えません。明らかに日本軍を装ったやらせ写真です。そんな写真が最近は日本軍による大虐殺があった証拠として大量にインターネットで流れています。

私自身に南京事件を否定しようという意図は全くありません。しかし、証拠の改ざんで歴史をねじ曲げて伝えようとするのは間違いだと思います。

――結論は、南京事件の証拠写真として残っている143枚の写真すべてに改ざんなど何らかの手が加えられているというショッキングなものです。

私たちの研究グループは、証拠とされる写真をすべてデジタルカメラを使ってパソコンに取り込み、スクリーンに大映しにして、写真に改ざんの跡はないか、季節に誤りはないか、影の方向や長さに奇妙な点はないかなど、科学的に詳細に検討してきました。その結果、すべての写真について、オリジナルの写真に何らかの手が加えられて利用されていることが判明しました。これは明らかに南京事件を政治的に利用しようという意図があったとしか思えません。そうした動きは年を追うごとに増えています。

――今年は終戦60周年に当たります。過去のことに改ざんを加えてまで日中関係を悪くしようという意図があるとしたら何だと思いますか。

中国国内で高まっている民主化への圧力に対し、国民の関心を外へ向けさせることで何とか回避しようとしているように思えてなりません。共産党の一党独裁体制が多くの矛盾を露呈し始めている中で、政権を維持するには反日愛国主義が不可欠だと考えているのでしょう。もう1つ考えられる理由は東アジアにおける覇権を握りたいということではないでしょうか。

そのためには日本の異常な行為を喧伝して日米間の関係に亀裂を入れ、東アジアの中で日本を孤立させたいという意図もあるのではないかと疑いたくなります。正しい日中関係は日本にとって大切なことです。それを築くには過去の歴史についての正しい認識が不可欠だと思います。

東中野修道(ひがしなかの・しゅうどう)氏
1947年生まれ。鹿児島大学卒、大阪大学大学院博士課程修了。独ハンブルク大学客員研究員を経て亜細亜大学教授。専門は東欧の社会思想史。

■2005/02/14, 日経ビジネス, 83ページ

グローバリズムの「失敗」に学ぶ15の原則―世界を揺るがす危機を読み解く
M.ゾニス D.レフコビッチ S.ウィルキン

アスペクト 2005-01
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おすすめ平均
ローカルな政治力学再考

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グローバリゼーションは必然の2文字で片づけられるような単純な未来図ではない。賛成派も反対派も同様に、最大の問題点を見落としている――。シカゴ大学大学院国際政治経済学部で教壇に立つマービン・ゾニス教授とリスクマネジメントの専門家らは、各国で起こる極めてローカルな一つひとつの出来事が世界大の危機に連動している危険性を示し、その仕組みの解明を試みる。

象徴的な出来事が「キムチ問題」だ。1990年代後半、米マイクロソフトは圧倒的な資金力と綿密な計画のうえで韓国市場に乗り込んだにもかかわらず、ハングルを支配しようとする外敵だと見なされ、国民的な反対運動にさらされる。同社のビル・ゲイツ氏は、植民地主義者のレッテルを張られるまでに至った。欧米人にとってキムチは得体の知れない食べ物だが、それを口にすることなしに、韓国を理解することは不可能だという教訓である。

日本の圧力団体、サウジアラビアの反体制勢力、シンガポールの官僚制など各国が内包する“地雷”を、為政者のリーダーシップ・制度・国民の不満など15の原則に当てはめて明らかにする。最終章では中国について分析。華やかな発展の陰に潜む“地雷”の存在を、政治力学的観点から検証していく。

■2005/02/14, 日経ビジネス, 81ページ

いかに「問題社員」を管理するか
DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー編集部

ダイヤモンド社 2005-01
売り上げランキング : 12,725

おすすめ平均
とても考えさせられる
笑えるー!
甚だしく現実性に欠ける

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米国のリーダーは部下を冷静に評価し、ある基準に達していなければ躊躇なく解雇する…。本書を読めば、そんなイメージがごく一部の会社に限られた例外であることが分かる。どんな組織にも「Cクラス社員」の扱いに日々頭を悩ませるリーダーがいて、考えるとうっとうしいのでほったらかしだと言う。本書は多くの専門家や研究者が「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌上で示した解決策をまとめたものだ。

まずは「Cクラス社員」による弊害を整理して把握し、それを基に厳格なルールを打ち立てて、現場の管理者が課題に取り組める環境を作ることが大切だと指摘。次いで「Cクラス社員」の識別を行い、個々のアクションプランを作成して課す。結果は3つで、第1は「少なくともBクラスまで業績を上げる」、第2は「本人の能力に適した別の仕事に変わる」、そして第3は「退社してもらう」。適切な指導によって役割を変えることで能力を引き出し、大幅な改善を見せることもあり得ると言う。

しかしそのようなきれいごとだけで済まないケースも想定している。「いかなるマネジャーも社員の性格は変えられない」と認めたうえで、生身の人間として部下と対峙する勇気が必要だと唱える。その他豊富な事例から教訓を導き出していく。

■2005/02/14, 日経ビジネス, 81ページ

日本の流通100年
石原 武政

有斐閣 2004-12
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流通論や流通システム論を扱う文献や研究者は増えたが、流通史研究となると、ほぼ空白と呼ぶしかない状態だったと編者らは述べている。本書は、日本における近代産業の成立期である1900年頃から今に至る経済発展史を、「流通」という観点から追うもの。我が国で初めて本格的にまとめられた「現代流通史」でもある。

加工食品業・医薬品・家庭電器・衣料品など商品・業態別に、流通機構の構築段階やメーカーによる系列化、その解体の流れをひもといていく。戦前と戦後、社会構造が劇的な変化を遂げる中で変容を余儀なくされた業態がある一方で、価格維持のために強固なネットワークを存続させた事例もあるという指摘は興味深い。

日本の小売業と流通を語るうえで、百貨店の存在は無視できない。その生誕について先発の三越と後発の高島屋、松坂屋を比較して解説する。さらに、百貨店と納入業者との間に特異な取引関係が成立していく過程を追い、やがてそれ自身が競争力減退の一因になったと分析する。日本の流通業界には、こうした大規模流通システムの対極に、無数の中小小売商が存在していた。その歴史的背景や、「過小・過多、低生産性」など、功罪の罪の部分についても詳しく解説する。

■2005/02/14, 日経ビジネス, 81ページ

リテール・ユニバーサルバンキング時代の到来―負けない銀行モデルはイギリスにあった
富樫 直記

日本評論社 2004-12
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おすすめ平均
21世紀前半の邦銀の将来像の大いなる仮説
生き残りへの道筋

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日本のメガバンクは今後、どのような経営を目指すべきか。著者は日本の金融界と金融制度は、制度改革、不良債権処理問題への対応など、英国を10~15年遅れでたどっていると指摘。英国の銀行との比較を基に、邦銀が取るべき戦略を明らかにする。

本書の前半では、今後、本格化するリテール・ユニバーサルバンキング時代に邦銀が勝ち残るための鉄則として「株式は持ち合うな」「“インターナショナル” への憧れは捨て去れ」「投資銀行業務に淡い夢を抱くな」など6項目を挙げる。特に、リテールビジネスの要である支店の重要性を強調し、保険、株式、投資信託など幅広い資産運用商品の販売によって収益を拡大していくには、600~700店舗程度の今のメガバンクの販売ネットワークは少なすぎると指摘する。

後半は1986年のビッグバンから20年近くの間に英国の銀行で起きた様々なドラマを振り返り、邦銀勝ち残りの処方箋を探る。4メガバンクのうち、ナットウエスト、バークレイズの2行は投資銀行業務の強化に突き進んだが、あえなく挫折した。対照的に、ロイズ、ミッドランドの2行はリテール強化に集中した。本書は特にロイズの戦略遂行から学ぶ点が多いとして、その経営モデルを紹介する。

■2005/02/07, 日経ビジネス, 77ページ

BMW物語―「駆けぬける歓び」を極めたドライビング・カンパニーの軌跡
デイビッド・キーリー

アスペクト 2004-12
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おすすめ平均
深い内容が書いてあると思いますが、翻訳が最悪
愛車がBMWという方に

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BMWを「最も安定した、強靱な、奥の深いブランド」と自動車ジャーナリストの著者は表現する。それを構築できた背景には、一貫したポリシーに基づく製品開発、マーケティング戦略などがあると言う。

BMWは常に、「走りに完璧な歓びを求める人の欲望を満たす高速・高性能の車」をテーマに新車開発を進めてきた。1970年代に「究極のドライビングマシン」という広告コピーを作って以来、このメッセージを変更していない。自動車業界で5年間同じブランド方針を守り通す企業はめったにない。一貫して運転の歓びを追求してきたことこそ、BMWブランドの神髄だと著者は分析する。その成功を担った重要人物として、前製品開発担当役員のヴォルフガング・ライツレ氏、デザイン担当役員クリス・バングル氏の2人を取り上げ、彼らが、製品にどのような影響を及ぼしたかも解説する。

一方、40年にわたる経営の唯一の失策として94年のローバー・グループ買収を挙げる。結局、ローバーはBMWの足を引っ張るものでしかないと判明し、2000年に売却したが、総額80億ドル以上の損失を計上した。この経験はBMWが自らのブランドや価値を見直し、再評価するきっかけになったと意義づける。

■2005/02/07, 日経ビジネス, 77ページ

Edit

 
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