メイン > 日経ビジネス書評『新刊の森』(2005年) > 2005年1月3日~1月17日

養生の実技
4047041637五木 寛之

角川書店 2004-12-17
売り上げランキング : 37,734

おすすめ平均 star
star自然に
star自分自身でありなさいってことかな
star心に染み入る、優しい現代の生き方

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■著者に聞く 五木寛之氏[作家] 養生は気休めでいい

ベストセラー作家として知られる著者が、健康の秘訣を初めて実技書として明かした。自らも50年間にわたって病院に通わないなど、展開する持論は常識破りなものばかり。体のことをよく知り、日頃から養生することが最も重要と説く。

――なぜ、養生することが大切だと考えるようになったのでしょうか。

そもそも病気を治療するということは、火事になってから消火器を買いに走るようなものです。火が出たら消すという努力だけでなく、火を出さないように普段から工夫することが重要だと考えるようになりました。

薬を例に挙げると、100万人に100万通りの処方をするのは不可能に近いですから、屈強な20代の若者も70代も同じ量を飲むように指示されます。しかし実際は、体に対する薬の影響力は人によって異なります。

こうした現実を前にして、病から自衛するには自らの体をよく知り、経験に基づいて自分で判断するしかないという結論に達しました。それが、養生するということなのです。医療は治療から養生の時代へと、大きな転換期に来ているのではないかと思います。

心の健康は体の健康と密接に関連していますし、その関連性を今までの作品でも追究してきました。そこで論として唱えるだけではなく、実際に私が試して効果があると感じた方法を紹介することにしたのです。

――紹介されている養生法は、通説や科学的な常識にとらわれないものが多いですね。

あくまで私が試して効果があった手法ですから、誰にでも有効とは限りません。自分の体のことを知り、何が効果的なのかを発見していただきたいという思いを込めて紹介しました。

そこでは、世の中で言う科学的常識にはとらわれていません。例えば一般に、よく噛んで食べるべきだと言います。しかし、徹底的に咀嚼して流動食のようになった食事を繰り返していては、胃腸の働きが退化してしまいます。ですから私は、1週間のうち5日間はしっかり噛んで、残りの2日間は噛まずに飲み込んで胃腸を驚かせてやります。そうすれば、胃腸が頑張って働く気を起こすようになるからです。

養生の一つひとつは決して難しいものではありませんが、それは続けるためには簡単な方がよいからです。呼吸法1つを取っても、あまりに煩雑で挫折する人が多いですから。養生というのは、明日死ぬと分かっていてもやるから養生なんです。人間の寿命には限りがありますし、気休めのつもりでやるという意識を持つことが重要だと思います。

――心と体の関連性を考えていくと、哲学や宗教との密接なつながりも見えてきます。

体の健康とは、人の生き方や人生観、人生そのものと密接につながっています。ですから健康法を突き詰めていくと、最終的には哲学や宗教に行き着いてしまいます。そう自分でも感じることはありますが、ストレートに向かっていってしまうことには、今のところ警戒心を抱いています。

養生や健康だけでなく、政治も企業経営も宗教に根ざしています。特に欧米のようなキリスト教文化圏では、市場原理を貫徹することも神の意思です。市場での戦いは、聖なる戦いですから、どんな手段を使っても神の意思に沿っているという自信があります。

これに対して日本の実業家は、あくまでビジネスだと思っている。金儲けをやっていると思うから、胸を張って聖なる戦いを挑んでくる相手にかなうわけがありません。日本では、リストラをすると経営者が罪の痛みを感じる。それが日本の経営を支えてきたとも言われますが、世界を相手にしていくのならば、こうした考えにとらわれるべきではないと思います。

五木寛之(いつき・ひろゆき)氏
1932年福岡県生まれ。『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞受賞。81年、一時休筆して龍谷大学に通う。エッセイとして『大河の一滴』などが知られる。

■2005/01/17, 日経ビジネス, 73ページ

だから顧客が盗まれる
ハーベイ・トンプソン 沢崎 冬日

ダイヤモンド社 2004-12-18
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残念っ!

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昨年末、米国IBMは中国最大のパソコン会社、聯想集団にパソコン事業を売却すると発表した。突然の路線変更にも見えるが、その源流は1990年代後半に始まった企業変革にある。80年代まで、IT(情報技術)業界の巨人として確固たる地位を築いていたIBMだが、90年代半ばになると競合他社の追い上げによって市場シェア、株価ともに急落する。

同社の改革を手がけたコンサルタントである著者は、当時、新規参入企業が顧客のニーズに合わせた製品やサービスを提供し始めていたのに対し、IBMは依然として「うちで開発したものに顧客が合わせる」という発想にとどまっていたと指摘。過去の成功体験による傲慢さと惰性から抜け出せない企業で、顧客の離反が進む悪いお手本だったと言う。

既存顧客の維持こそ、今やビジネスにおける最重要課題の1つであるとまで言い切る。維持と獲得では根本的に顧客の見方が異なる。例えば「すべての顧客に均質なサービスを」という一見正しい考え方も、優良な顧客を維持しようという目的においては何の役にも立たないと説く。収益性の低い顧客には、「コストがかからないサービスのみを提供すべきである」とも助言し、真の顧客ロイヤルティーを発見する数多くのヒントを示す。

■2005/01/17, 日経ビジネス, 72ページ

戦争請負会社
P.W.シンガー

日本放送出版協会 2004-12
売り上げランキング : 2,058

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非経済学者が「情報の経済学」を学習する動機付けの書
冷戦後の世界を考える際の必読書。

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米軍が侵攻した後のイラク国内で、軍事作戦に関わっていた複数の“米国一般人”が殺害された。彼らは軍人か、傭兵か、民間人か――。本書は、米国で国家安全保障問題を研究している著者が、世界で初めて「民営軍事請負企業」の実態とそのビジネスの全貌を明らかにするもの。米国をはじめ多くの国々は軍事予算を削減し、軍縮を進めている。しかしボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、イラクなどの地域での戦争や紛争は増えているのが現状だ。

そのギャップを埋める私企業が既に多数存在し、食料・燃料輸送などの後方支援、兵士の訓練、実際の戦闘に従事しているという。その市場規模は拡大の一途をたどり、1000億ドルとも言われている。

本書ではまず軍事の民営化に至る歴史的経緯に触れ、もはや戦争や紛争の現場が公の部隊だけで独占し得る状況ではないことを示す。次いで、世界に広がる民営軍事請負企業をサービスの内容から「軍事役務提供企業」「軍事コンサルタント企業」「軍事支援企業」に分類し、それぞれの代表的な会社を例に取って解説する。軍事外注化を適切に管理するには必要条件があるが、ここ10年の米国政府による民営化策は無計画であり、当該企業の法的地位すら不明確だと警鐘を鳴らす。

■2005/01/17, 日経ビジネス, 72ページ

〈改革〉の技術―鳥取県知事・片山善博の挑戦
田中 成之

岩波書店 2004-11
売り上げランキング : 33,692

おすすめ平均
片山知事の改革を読みやすく紹介

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6年前の鳥取県知事選で初当選して以来、2期目を迎えた現在も「改革派知事」として精力的に活動する片山善博知事。それまでの常識を打ち破った手法で公共事業の見直しや情報公開を断行するなど、地方分権時代の旗手として注目されている。

本書は毎日新聞社の記者である著者が、鳥取支局在籍時代に追い続けた片山県政についてまとめたもの。東京都石原慎太郎知事や長野県田中康夫知事の「天賦の個性による余人にはマネのしようがない政治手法」に比べ、片山知事の改革は極めて合理的な「技術」によるものだと指摘。つまりマネが容易であり、地方改革の実践的モデルになり得ると語る。

まず、徹底した情報公開を自ら率先して実現していく。提案を有力議員に「根回し」する慣習を断ち、県議会や記者会見といった公の場での議論を最優先に据えた。そのうえで、前任者の残した大型ハコモノ事業など“負の遺産”の存在を広く県民に示す。同時にその相続をきっぱりと放棄するのが片山流改革である。

財政再建に向けて無駄を削るだけでなく、2000年の鳥取県西部地震の被害者には、国の反発を押し切って全国初の住宅再建支援策を施した。ただ「東芝製品不買発言」など、知事の施策や発言の一部に生じ始めている綻びも指摘している。

■2005/01/17, 日経ビジネス, 72ページ

公会計革命
4061497480桜内 文城

講談社 2004-10-19
売り上げランキング : 91,471

おすすめ平均 star
star公会計はどうあるべきかを原点にかえって主張
star国の財政状況をワンシートで示す試み
star日本国憲法の英文は『官報』には掲載されていない

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■著者に聞く 桜内文城氏[新潟大学助教授] 予算編成方法が変わる

財務省から出向中の著者が、将来世代の負担をシミュレーションできる公会計ソフトを開発。「国家財政ナビゲーション・システム(国ナビ)」で、特許も出願した。企業会計至上主義とは一線を画し、予算の重要性を説く。

――昨年12月には『公会計』という専門書も出しましたが、「国ナビ」の発想はどこから来たのですか。

2003年3月に日本公認会計士協会から「公会計概念フレームワーク」を公表し、理論を明確にしました。しかし、具体的な数字がないと、世の中は動きません。経済産業研究所から予算を頂き、財務諸表を作り始めたのがきっかけです。

国の資本、つまり純資産の変動原因を分析し、シミュレーションできるものを作りたいと思いました。将来世代と現役世代の間の資源のやり取りなどをきちんと会計処理し、分かりやすいフォーマットで表現できないかなと工夫し、今の形ができました。

総理大臣とか閣僚など意思決定する人が使うことを想定していますが、議会や議員が行政をチェックするために使うことも可能です。特徴は勘定体系にあります。複合仕訳と呼んでいますが、企業会計に比べると勘定科目が多く、予算を入力すればシミュレーションできるようになっています。利用料や手数料といった料金収入には収益という勘定科目を作りましたが、公共事業などを実施することによる経済効果をどう見るかは課題です。一般均衡モデルを使って波及効果を測定するようにしています。需要の予測や意思決定をどういう理由で行ったのか、注記しておくのがミソです。

――行政官に予算編成を任せてはいけないとまで書いています。

古巣に喧嘩を売りたくはありませんが、公会計に本気で取り組むなら、予算編成のやり方を変えなければなりません。財務省の権限の源泉は予算編成権です。「増分査定主義」や「シーリング方式」といった従来のやり方なら非常に強い力がありました。でも、国ナビを使った公会計が普及すると、おいしいお店の秘伝のたれのレシピを公開するような話になります。役所とは別の立場でやった方がいいと思い、2年半前に大学に移ったのです。

公会計の世界では、国家は誰のものかということが実はハッキリしていません。NPM(ニュー・パブリック・マネジメント)を普及させた英国やニュージーランドは、国の所有者は議会で、国民は顧客という立場です。しかし、私は違うと思います。政府が国会に対して受託者責任を負うという考え方は、国民が蚊帳の外に置かれかねないからです。企業でも顧客向けと株主向けでは説明すべきことの質が異なります。国民主権である以上、国の所有者も国民のはずです。

――公会計は現金主義・予算重視から民間方式の発生主義・決算重視の流れにありますが、予算も重要だとか。

決算を重視するのは1つの流れだし、企業会計の目的である受託者責任の明確化にもかないます。しかし、国の政策を評価し、委託している国民の立場を考えた場合、意思決定そのもの、つまり予算を扱わないことには公会計は成り立ちません。

今でも国債の残高などを見れば、将来負担はある程度分かります。加えて、年金の積み立て不足のような見えざる債務や、建設国債の見合いの資産が実際は減損していることも、ハッキリさせたかったのです。たとえ資産が残っていても、将来使えるキャッシュは制約されます。負債も時価評価すべきなのです。国ナビでタックスイーターがいなくなるわけではありませんが、少なくともどれだけ税金を食っているかは分かるようになります。今までは値札さえ見せませんでしたから。

桜内文城(さくらうち・ふみき)氏
1965年愛媛県生まれ。88年に東京大学法学部を卒業し大蔵省(現財務省)入省。米国留学などを経て、2002年に出向の形で新潟大学助教授就任。

■2005/01/10, 日経ビジネス, 77ページ

楽天の研究―なぜ彼らは勝ち続けるのか
山口 敦雄

毎日新聞社 2004-12
売り上げランキング : 2,550

おすすめ平均
「研究」というより紹介
表紙がカッコイイ
三木谷氏の起業精神とショッピングモール事業の課題

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プロ野球への新規参入で注目を集める楽天。インターネット利用者や投資家の間では知名度が高いが、一般には、その実態はあまり知られていない。本書は三木谷浩史社長をはじめとする経営陣へのインタビューを基に、楽天という企業の本質、正体に迫る。

楽天社内には、三木谷社長による「成功のコンセプト」が張られている。その内容は「様々な手段をこらして何が何でも物事を達成する」「勝つために人の100倍考え、自己管理の下に成長していこうとする姿勢が必要」といったもの。著者は、プロ野球参入でも、このコンセプトが実践されたと指摘する。ひげを剃って登場したり、財界の重鎮を集めた経営諮問委員会を作ったやり方は、「何が何でも達成する」三木谷経営の真骨頂というわけだ。

一方、著者は楽天を三木谷社長のワンマン企業ではなく、それぞれ専門分野を持つプロ集団だと見る。特に、頻繁に行われたM&A(企業の合併・買収)に関して、経営陣の中に高度なノウハウを持つバンカーや弁護士が揃い、「M&Aの成功を巧妙に仕組み化している」と分析する。

創業メンバーのインタビューも掲載。先進のIT(情報技術)企業らしからぬ、「どぶ板営業」で楽天飛躍の足がかりをつかんだことなどを明らかにする。

■2005/01/10, 日経ビジネス, 75ページ

内なる敵に克つ 経済復活のメカニズムをつくる
田中 直毅

東洋経済新報社 2004-12-03
売り上げランキング : 216,178


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郵政民営化、財政再建、ドルの安定、中国の調整など、経済のあらゆる局面で問われるのは「統治の仕組み」であり、「内なる敵に克つ」ことが何より重要だと主張する。「週刊東洋経済」での連載を単行本化した。

郵政民営化は、日本が「内なる敵に克つ」ことができるか否かの試金石となる。政府保証の枠組みの下で、郵便貯金・簡易保険は個人の金融資産残高の4分の1まで肥大化し、結果として資金配分の基準喪失につながった。高齢化社会とは、勤労時代に積み立てた資金の運用成果に依存する新しい金融資産依存者を生み出す社会であり、リスクへの挑戦を課題とする資本市場作りが必要。だが、「内なる敵」となる人々やその行動は、高齢化社会を充足する要件に反しがちだ。

また、財政再建は無駄な支出の削減と政府活動の見直しによって実現すべきとの主張は多いが、具体論に入れば、統治の視点が不可欠と説く。「内なる敵」に挑戦を繰り返し、その成果についての評価基準作りを続けることで、統治の質を改善すべきと訴える。

日本経済の新たな展開を形成する要因を分析する中で、経済を決定づけるのはもはや一国のみの要因ではなく、国境を超えた共通の経済的地殻の構成が影響しているとも指摘する。

■2005/01/10, 日経ビジネス, 75ページ

3分間社長塾―スピード判断力をつける
高井 伸夫

かんき出版 2004-12
売り上げランキング : 5,109

おすすめ平均
経営者の座右の本になると思います
教訓短編集です。
ちょっと期待はずれかも・・・

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勝ち組企業の優秀な「デキる社長」と負け組企業の「デキない社長」の違いは何か。弁護士で、社長向け勉強会「社長フォーラム」の塾長も務める著者は、その差は「スピード判断力」だと指摘する。「のんびり社長に明日はない」として、どのように情報の取捨選択、思考、物事の判断・決断にかかる時間を短くすべきかを解説する。

企業経営で、時間をかけずに判断・決断を下すには、自社がこれからどこに向かって進んでいくべきかというビジョンを持つことが必要である。ビジョンとは、言い換えれば「お金の落ちているところ」。どんな市場があり、どんな魅力があるか、誰がその商品やサービスにお金を出すのかを示すことが経営者の最大の仕事だという。

著者は、社長として適正な仕事量は「秘書を10人使っても利益が出るほど」だと説明する。著者自身、全スタッフ30人ほどの法律事務所で、10人の秘書をつけ、それぞれ、資料集め、講演の準備、スケジュール管理など担当する仕事を振り分けている。考える時間を少しでも多く確保し、迅速に対応するために、様々な雑事を人にやってもらうことが効率的だという。

著者が考える70項目余りの社長の心得を、1項目3分間で読めるようコンパクトにまとめている。

■2005/01/10, 日経ビジネス, 75ページ

公共事業を、内側から変えてみた
桑原 耕司

日経BP社 2004-12-09
売り上げランキング : 28,308

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考えさせられる
「行政無駄遣い列島」矯正の実例
談合との戦い

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清水建設で30年近く建築の現場を見続けてきた著者は、1988年、「建築費は2割安くなる」という信念を掲げた建設会社、希望社を起業した。同社が提案するのは「JCM」と呼ばれる独自の設計・施工プロセスだ。これは、建築費を透明化して効率的に工程を管理する方法である。一般社会では当然の仕組みだが、「残念ながら建設業界の中では異端である」と語る。

一方、公共建築の分野に目を転じると、「予算削減と厳格な管理」が叫ばれて久しいにもかかわらず、依然として談合や癒着の温床であると言う。そうした中、政・官・業の馴れ合いに歯止めをかけ、公共事業を市民の利益になる方向に本気で変えようと動き始めたのが佐賀市である。

2003年、同社の建築生産システムに興味を抱いた木下敏之・佐賀市長から、公共工事に関わってもらえないかという打診をきっかけに、佐賀市と同社による“公共事業のあり方に一石を投じる試み”が始まった。著者らは、市内の小学校改築工事を巡ってJCMの導入に尽力する。それには、地元業者の談合体質と真っ向から対峙しつつ、志のある地元議員や、旧習を断とうとする改革推進派の役人との連携が不可欠であった。本書にはその顛末がドキュメントタッチで描かれている。

■2005/01/03, 日経ビジネス, 94ページ

この情報共有が利益につながる―経営課題に適した4つの実践アプローチ
リアルコム

ダイヤモンド社 2004-11
売り上げランキング : 18,468

おすすめ平均
キーワードは、「人中心」と「横展開」。
目から鱗
豊富な事例がすばらしい!

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企業のトップが「情報共有化を推進している」と言えば聞こえはいいが、IT(情報技術)ベンダーが喧伝するシステムを導入したことで、本当に経済効果を得られているのか――。本書ではその問いに対して、東京三菱銀行やソニーなど大手企業をクライアントに持つリアルコムが疑問符を突きつける。「利を生む情報共有化とはどうあるべきか」について、新たな考え方と導入方法を示す。

ITを駆使したシステムも経営課題の克服や業務改革などの手段にすぎず、目的ではないことをまず認識せよと言う。あくまでも「人」を中心に据えた基本設計が重要だとし、それによって変革を成し得た戸田建設や日本ロシュなどのプロジェクトの事例を紹介する。問題解決に向けては、「着実な手順を踏むこと」の大切さを強調する。

情報共有化においても「見える・捨てる・分ける・使わせる・見直す・決める」といった製造現場に見られるカイゼン活動と同じ手法が有効だと言う。著者らはこれを「情報のトヨタ生産方式」と呼び、情報アクセスの最適化を求めるならば、まず最初になすべきことであろうと助言する。本書はIT関連書ではあるが難解な用語はない。既存のマネジメントに新たなヒントを示す書として読み解きたい。

■2005/01/03, 日経ビジネス, 94ページ

ザ・コーポレーション
ジョエル・ベイカン 酒井 泰介

早川書房 2004-11-10
売り上げランキング : 78,796

おすすめ平均
株式会社の病理
企業経営へのリベラル宣言
大企業の悪行

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近年、世界各国で巨大企業による反社会的とも言える不祥事が相次いでいる。米国のエンロン、ワールドコムの粉飾決算に端を発した破綻劇はまだ記憶に新しい。カナダの大学で教壇に立つ著者は、それらの原因は個々の企業の経営や風土にあるのではないと見る。企業とは本来、「病的な存在であり、人間と社会に対して大きな影響力を持つ危険な存在である」という大胆な見解を前提に、市場競争主義に基づく営利活動が及ぼす悪影響を挙げ、それを防ぐために何が必要かを論じる。

企業が、株主など所有者のために利潤をひたすら求めることを最大の目的としている限りは、他者を思いやる社会や個人が尊重される社会とは決して相容れないと指摘。「企業は人を非人間化するという義務を有している」とまで言う。米ゼネラル・エレクトリック(GE)が1990年から2001年までに40以上の法律違反で罰せられたことには、「実際的なビジネスの見方では罰金など事業上のコストの1つに過ぎない」と語り、その反社会的な性格を糾弾する。

日本でも議論され始めている「教育市場」への企業の参入についも懸念をあらわにする。とはいえ、本書は共産主義的な思想書ではない。グローバリゼーションを盲目的に信仰する風潮を憂える識者の警告である。

■2005/01/03, 日経ビジネス, 94ページ

考える技術
大前 研一

講談社 2004-11-05
売り上げランキング : 496

おすすめ平均
やる気が出ます。
どの本も同じような気がする。
大前さんはやっぱりすごい

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あなたの話はなぜ「通じない」のか
山田 ズーニー

筑摩書房 2003-10
売り上げランキング : 152

おすすめ平均
想いを伝えることに熱心で誠実な人へ
読み進めるのに苦痛がともないます
ペンネームでなければベストセラーになっていると思います

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これまでの思考回路を新しいものに切り替えなければ出世は難しいと主張する書がランクインした。キーワードは「論理性」だ。今の社会では、論理的に考えた結果をうまく表現できるか否かが、勝者と敗者を分けるという。

『考える技術』は、経営コンサルタントであり、現在は米・韓の大学で教壇に立つ大前研一氏の最新刊だ。「自らがあらゆる場で実践してきた論理的思考術そのものをまとめた」と言い、過去の成功体験や経験則に基づく「思い込み」だけで導き出したアイデアを真っ向から否定する。インターネットという共通フォーマットによって、世界中の人間の挙動がおおむね似てきたという指摘はユニークだ。それを「大前の法則」と名づけて、意思疎通のヒントとせよと語る。

『あなたの話はなぜ「通じない」のか』は、「進研ゼミ」の小論文担当者として「考える力・書く力」の研究に取り組んできた著者が説得術を指南する書だ。他人に話が通じない原因は、「内容に論理性がない」「正しい内容でも、話す人が信頼されていない」の2つだと言う。まずは「自分というメディアの信頼性を高めていく必要がある」と助言する。

■2005/01/03, 日経ビジネス, 94ページ

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