メイン > 日経ビジネス書評『新刊の森』(2005年) > 2005年11月14日~12月5日
| 告白 | |
![]() | チャールズ・R・ジェンキンス 伊藤 真 角川書店 2005-10-08 売り上げランキング : おすすめ平均 ![]() ジェンキンスさんの告白 素直におもしろかった 数奇な運命を辿った著者の赤裸々な自伝Amazonで詳しく見る by G-Tools |
拉致被害者・曽我ひとみさんの夫の半生記。米軍兵として駐留していた韓国から北朝鮮へ渡った理由、曽我さんとの出会い、北朝鮮からの出国などを記す。横田めぐみさんら、他の拉致被害者に関する貴重な証言も出てくる。
「特権的な暮らしを享受していたとさえ言える」著者だが、それでも、寒さと空腹と不衛生と戦う日々だった。兵士が物ごいに来たり、学校の備品が盗まれないよう、生徒が交代で見張りに立つなど、困窮した北朝鮮社会の実情を振り返る描写が生々しい。
今の望みは夫婦2人、佐渡で幸せな日々を送ること、娘たちが幸せで充実した人生を歩むことという。「選択の自由がある社会で暮らしていることをありがたく思う」との言葉に実感がこもっている。
| どうするニッポン―古稀の憂いと願い | |
![]() | 初亥会 日経BP企画 2005-09 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
昭和で最初の亥年である1935年生まれの経済人が中心となって発足した「初亥会」。古希を迎えたメンバー43人が、半生を振り返り、自らの経験を基に、日本が豊かで明るい社会であるためにどうすべきかを提言する。
福井俊彦日本銀行総裁は、日本の若者について「自分の土俵を必要以上に狭く限定したり、最後まで独りで考え抜く自信と気迫に欠ける」とする一方、高齢者は「従来からの国内的な常識を破る若い人たちの行動に対し、本能的に違和感を抱き、少しの欠点を見いだしては『けしからん』と一喝してしまう」と指摘。ボキャブラリーから、思考停止を招きかねない「けしからん」を抹消することを提案する。
宮内義彦オリックス会長・グループCEO(最高経営責任者)は、21世紀を生きる若者は、「自分が日本人であるということ」「世界の中で生きていくことが求められていること」を認識すべきだと主張する。外国語を習得し、芸術・宗教・哲学など教養を学び、一生の座標軸になるものをつかんだうえで、政府にも会社にも頼らず、自立した人間として歩んでいくことを考えるべきだとする。巻末にはメンバーに対して行ったアンケートの結果を収録。日本の政治と教育に不満を募らせている様子などが浮かび上がる。
| 職人力 | |
![]() | 小関 智弘 講談社 2005-10 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
2003年に発刊した『職人学』の第2弾。熟練技能とは単なる手技ではなく、問題解決能力であること、また固定的なものではなく、常に現場で進化することを多くの事例を挙げて解説する。
パイプの曲がり角の継ぎ手、「エルボー」の専門メーカー・トキワ精機は、「誰にもできない、どこにもない」を合言葉に低コストのエルボー開発に取り組んだ。近所のプレス工場、金型職人、パイプ業者など、“アメーバ形ネットワーク”の知恵を借りながら、肉厚パイプを折り曲げて成形する新製法を開発。豊田自動織機、コマツなど十数社に納品している。
精密部品の加工を手がける大阪工作所では、工作機械の重要部分である多軸スピンドルの組み立ての際、部品や金属素材に精通し、部品加工を体験し、そのためのソフトが分かり、電気や油圧にも理解の深い熟練組立工が活躍する。熟練工は部品の一つひとつにあるゆとりを微調整し、先を読んで予測を立てながら、組み立てる。
生産現場の技術・技能を支えてきた団塊世代が定年退職期を迎える「2007年問題」が注目されている。マニュアル化、デジタル化できる熟練技能はほんの一部であり、高精度高品質なものを作ろうとするほど、“人”が大切になるということを強調している。 選択した文字列で記事検索します
| ネクスト・マーケット 「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略 | |
![]() | C.K.プラハラード スカイライト コンサルティング 英治出版 2005-09-01 売り上げランキング : 314 おすすめ平均 ![]() 久しぶりに骨太な本 常識をくつがえす MBA必読Amazonで詳しく見る by G-Tools |
世界には、1日2ドル未満で生活する貧困層が40億人いる。本書は、経済ピラミッドの底辺に位置するこの貧困層(Bottom of the Pyramid=BOP)こそ、今後急速に成長する魅力的な市場だと指摘。企業は彼らを、慈善や援助の相手としてはなく、ビジネスの対象として重視すべきと主張する。
貧困層を「顧客」や「消費者」に変えるには、先進国向けの製品・サービスに少し手を加えるといった対応では不十分。技術、製品・サービス、ビジネスモデルそのもののイノベーションが欠かせない。
BOP市場の基本となるのは、「パッケージ単位が小さく、1単位当たりの利潤も低い。市場規模は大きいが、少ない運転資本でも利益を出せる」ビジネス。例えば、米P&Gは低収入で現金不足のBOPに消費力を作り出すため、「使い切りパック」のシャンプーを販売した。ブラジルの家電チェーンは無理のない利子とカウンセリングで、BOPにも高品質な家電が買えるようにした。その他、医療、金融サービス、農業関連ビジネスなど様々な分野の成功事例も詳しく解説する。
BOP市場に参入することで得たノウハウ、実現したイノベーションは、先進国市場でも活用でき、企業の成長、発展に大いにつながると説いている。
| オタク市場の研究 | |
![]() | 野村総合研究所オタク市場予測チーム 東洋経済新報社 2005-10-14 売り上げランキング : 3,633 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く-パーソナルライフ-北林謙氏 野村総合研究所オタク市場 予測チームリーダー 4110億円市場が浮上中-
「オタク」市場に野村総合研究所(NRI)が挑んだ。調査対象は1万人、市場規模は4110億円。旧来のマニアも包含し、爛熟する消費を先導する。
――アニメやコミックにとどまらず、旅行やファッションなど、え、これがオタク?と思う分野も含まれていますね。
オタクというとどうしてもアキバ系を連想されますが、我々は、旅行や、カメラ、ファッションなどにもオタクな人は存在する、いわゆるアキバ系の人たちだけがオタクではない、という立場を取っています。
「こだわりがある対象」に、時間やお金を集中的に消費する人々を改めて見直すと、やはり昔から言う「マニア」「コレクター」「フリーク」と基本的には同じなんですよ。
ただし、生活が豊かになり、江戸時代の元禄時代のように、消費が爛熟してきた。社会の変化が、マニアの意識や行動も変えつつあるわけです。
今回は、12の分野を横断的に分析することによって、それぞれのオタクたちの共通要素を引き出しました。それが収集(collection)、創造(creativity)、コミュニティー(community)です。成熟した消費をリードする彼らに、企業経営や、もちろんマーケティング面でどうアプローチするかについて、この「3C」が1つの方法論になると思います。
――マニアからオタクへの変化には、インターネットの影響が大きそうです。
ネット普及以前は存在が目立たなかった層が一気に浮上したんですね。例えば鉄道模型のマニアの雑誌は、40年近い歴史があって、そこで強固なコミュニティーができていた。でも、本屋でちらっと見かけるぐらいなので、普通はよほどの意思がないとその棚に手を伸ばさない、という状況だった。それが、グーグルで検索をすれば一発で出てくるという環境になって、「そういえば昔、こんなのに興味があったな」という人がふっとそのコミュニティーに入れるようになってきた。時間も距離も超えて結びつけるわけです。
同時に、収集にはオタク同士のネットワークやオークション、創造には言うまでもなくブログやホームページ、と、ネットはものすごく有効ですからね。ブロードバンド環境の浸透とも重なって、新しいオタク像というものが、旧来のコレクターから変換されて出てきているのかな、と。
僕は旅行分野を担当しているので、いろいろなページを眺めるんですが、「温泉オタク」のページって中高年が圧倒的なんですよね。そういう方は自分でパソコンの参考書を買ってきて、一からホームページを作っている。
――オタクに年齢は無関係。
むしろ中高年のオタクは定量的に見ると、存在感は非常に大きいという印象です。特に購買力がほかの世代より高いですし。カメラオタクでも、デジタル一眼レフを買うような人はプロかオタクかです。10代、20代の人が好きだからと買えるかといったら、なかなか買えないわけですね。3Cに資金力と大人の目線が入るんですから、これは強力です。
今回はNRI内の有識者(オタク)たちに広く協力を求め、リチャード・クーさん(プラモデル)をはじめ多くの方に原稿を頂いたんですが、それぞれの世界に「えっ、こんなことがあるの」と気づかされて、読むのがものすごく面白かったんですよ。改めて、日本の消費社会は成熟し、驚くほど多様性があることを思い知りました。大げさに言えば歴史の中で「オタク」が誕生する時期に来ているんだろうなと思っています。
オタク市場予測チーム 北林謙(きたばやし・けん)氏をリーダーに野村総合研究所の研究員7人で構成、得意(オタク)分野を中心に本書の執筆に当たった。
| 日本経済の環境変化と労働市場 | |
![]() | 阿部 正浩 東洋経済新報社 2005-08-19 売り上げランキング : 88,626 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者が本書で主題に据えたのは、我が国の労働市場において最も憂うべき問題「失業」である。完全失業率は1990年代後半から悪化の一途をたどり、2001年後半からは5%を超えて戦後最悪の状況となった。著者は、「未曾有の失業率上昇がバブル経済崩壊による労働需要不足だけでは説明できないことを明らかにしたい」と述べたうえで、日本社会の根底で進行する構造的な変化に着目した。今日の労働市場は、理論上では需要と供給の量的バランスが取れているにもかかわらず、職業能力、年齢、居住地などのミスマッチによる「構造的失業」が肥大化していると指摘する。
雇用のミスマッチを生じさせる要因は、大きく2つに分類できる。1つは、労働力の高齢化、労働力の高学歴化、女性の社会進出などによる「労働の供給構造の変化」である。もう1つは、経済のグローバル化や技術革新などの影響による「労働の需要構造(求人)の変化(複雑化、高度化)」だ。著者は、要因の一つひとつについて子細な分析を加えていく。また、雇用のミスマッチによって必然的に増加する転職行動については、個々人が前の職場で培った特殊スキルを無用化し、結果的に賃金と人的資本の価値の低下を招いているだけだと警鐘を鳴らす。
| 少子高齢化の死角―本当の危機とは何か | |
![]() | 高橋 伸彰 ミネルヴァ書房 2005-10 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
立命館大学の教授であり、日本経済を独自の視点で論じてきた著者は、少子高齢化を巡る今日の議論にはいくつもの死角があると訴える。例えば、「老い」と一言で言っても、比較的健康で就業率も高い前期高齢者と、「老い」が苦しみや悩みとなって表れる75歳以上の後期高齢者に分けて考えるべきだと言う。これまでの日本は前期高齢者が多かったために、「老人は裕福」などというイメージが社会に定着していた。しかし今後はそれが一変して、「自らの暮らしを支えきれない弱者」が溢れる本当の高齢化社会がやってくると警告する。
また、少子化の原因については「産まない理由」と題して、女性の社会進出との関連性を探っていく。女性の社会進出そのものを少子化の原因とする見方には、「女性に対する一方的な責任転嫁だ」と怒りをあらわにする。女性が男性と等しく企業や社会で地位を得ようとすれば、結婚、ましてや出産と育児に時間を費やしていられない不平等な社会、いまだに家庭内の役割の多くを女性に押しつけているいびつな社会の側にこそ問題が潜んでいると指摘。昨年小泉政権の下で打ち出された年金改革については「信頼も安心もできない」と言い、医療費や介護保険制度と併せて問題点を抽出していく。
| 中国の貯蓄と金融―家計・企業・政府の実証分析 | |
![]() | 唐 成 慶應義塾大学出版会 2005-08 売り上げランキング : 166,073 おすすめ平均 ![]() 中国経済の行方Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中国の経済発展をもたらした原動力の1つは、中国社会における高い家計貯蓄率である――。中国で生まれ育ち、現在は慶応義塾大学で講師を務める著者は、これまでほとんどの研究者が触れなかった家計や政府の金融面から、中国経済の強さの解明を試みた。
豊富なデータと現地事情に通じた著者ならではの調査に基づき、中国の豊かな資金循環について、他国のパフォーマンスと比較して検証する。そこから、計画経済期以降の「移行経済期」には、家計貯蓄が国内資本の形成に重要な役割を果たした事実を導き出す。また、家計貯蓄率の高さを国際比較によって明らかにしつつ、都市部と農村部の世帯別、所得階級別の貯蓄の特徴を子細に分析。貯蓄行動の背景には「住宅取得資金」や「子供の教育資金」といった動機があることを示す。
また、それらの資金を循環させていくべく、中国国内で急速な発展を遂げている「金融仲介機関」の種類、仕組み、役割などについても論じる。国有商業銀行はもとより、その他の銀行、信用組合、投資会社、保険会社が台頭して複合的な金融市場を形成している実情を示す。そうした中、不良債権など新たに生じつつある問題点についても触れ、制度構築のための政策提言を行う。
| 大人のための読書法 | |
![]() | 和田 秀樹 角川書店 2005-09 売り上げランキング : 2,464 おすすめ平均 ![]() すぐ読める ちょっとムッときました 確かに「大人のため」であるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
本を上手に読みこなし、必要な時に必要な情報を効率よく集めるにはどうすべきか。意外なことに子供の頃から読書嫌いだったという著者が、大人になって習得した読書法を披露する。
まず、「本は最初から最後まで読まなければならない」という思い込みを捨てるべきと説く。可能な限り、面白く有益な情報に触れるには、必要なページだけをじっくり読む「一部熟読法」がいい。総論的なことが書いてある第1章だけ読んだり、最新の情報や考え方を取り入れている「あとがき」から読むのも効果的という。
ハズレのない本の選び方や著者の推薦図書を紹介するほか、情報の整理方法や本以外の情報源の活用方法も解説する。大量の情報があふれる現代を賢く生きるノウハウ集となっている。
| 国家の自縛 | |
![]() | 佐藤 優 産経新聞出版 2005-09 売り上げランキング : おすすめ平均 ![]() 「国家主義者」佐藤優 圧倒的な外交経験値と知力に感嘆する 永田町の皆様へAmazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者に聞く 佐藤優氏[外務省元主任分析官] 目標言わぬ日本外交
512日も拘置されながら無罪の主張を曲げず、鈴木宗男衆院議員をかばった。前作の『国家の罠』は国策捜査の実態を克明に描き、9万部近いベストセラーに。国家に尽くした男が、今度は国益について語る。
――長い拘置に耐え、裁判を戦い続けるモチベーションはどこから来ますか。
もし私だけの問題なら、検察のシナリオに乗ったかもしれません。檻の中の生活は決して楽ではないし、外で待っている人もいましたから。でも、鈴木宗男さんに法を犯すよう言われたわけでも、共謀してお金を作ったわけでもありません。鈴木さんを巻き込むと、一生鈴木さんの顔を見ることはできないし、鈴木という名前を新聞で見ただけでビクビクしなければなりません。
拘置所暮らしは最初つらかったんですが、人間には順応能力があります。あそこでは欲望がとても小さくなります。例えば金曜日に文房具を注文して水曜日に受領する。この時がとってもうれしい。私は崩壊期のソ連で要人が突然牢屋に入るのを見ましたから、予行演習ができていたのでしょう。
――きれいな鷹より汚れた鳩の方がいい、と言っていますが、問題はどこにあったと考えていますか。
外交は国民の感覚からずれたことをしないとできない部分があります。僕らが犯した万死に値する間違いは、国民に対する説明責任を果たさなかったことです。北方領土に関して、「4島に関する日本の主権が確認されるならば、返還の時期、条件については柔軟に対処する」とスタンスを変えているのに、それすら国民には説明してきませんでした。
ビジネスの世界でも、今までの慣行に従って仕事を一生懸命やっていたら、ある日流れが変わってとんでもない犯罪をしたとして捕まってしまうかもしれない。橋梁談合のように、ビジネスマンも突然背任罪でやられる。要は汚れすぎた鳩はダメなのです。
僕はまだ外務省に籍があり、このようなインタビューを受ける時は届けています。本当は外務省を辞めた方が楽なのですが、そうすると何かあったらまたトカゲのしっぽを切ろうとするでしょう。しっぽが切れない、あるいは毒が本体に回ってくると分かれば、しっぽ切りには慎重になります。
『国家の罠』も『国家の自縛』も外務省の許可を得て、事前の検閲を受けています。何も言われなかったのは、外務省の懐が広いのか、私が怖いから触りたくないのか。後者だとすれば不作為です。組織は意思を持って動いています。組織でしたことは組織皆で責任を取るべきです。役所の背任に個人犯罪はあり得ません。情報活動の必要があるなら、そのための基金を作ればいい。予算はないけどやれと言うのは、重大かつ明白な瑕疵です。日常的に皆がそういう仕事をさせられています。
――日本は建前の法律が厳しい割に、守られません。車の制限速度1つ取っても、厳密に取り締まると皆捕まってしまう。法治国家というより人治国家です。
そうそう。ソ連もそうでした。法律と掟という二重基準です。法律があまりに厳しすぎて、重視するのは掟でした。でも「法律を順守しろ」というのが、新自由主義的なグローバルスタンダードです。我々に必要なのは新たな掟だと思います。
外務省に優秀な人はいますが、ロシアに限るとダメです。司令官である課長クラスが今のままだと全滅しますよ。日本外交の問題は、目標を言わないことです。靖国問題にしてもプーチン氏の訪日にしても、終わってから言うから、成功か大成功しかない。泥沼化した日中戦争と同じです。プーチン氏訪日では「来なければもっと日露関係は悪くなっていた」と言うでしょう。
佐藤 優(さとう・まさる)氏
1960年埼玉県生まれ。85年外務省入省。ロシア問題の専門家として鳴らすが、2002年背任などで逮捕・起訴され執行猶予付き有罪に。控訴中。
| 黒澤明と早坂文雄―風のように侍は | |
![]() | 西村 雄一郎 筑摩書房 2005-10 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
世界から高く評価される「黒澤映画」はいかにして生まれたのか。30年間にわたって映画監督・黒澤明と対話を続けた著者が、6年の歳月をかけて書き上げた大著。黒澤映画を生み出した2人の天才の生涯が克明に綴られている。そこには、創造的な作業を成功させる秘訣がちりばめられている。
黒澤明と音楽家・早坂文雄――。2人の天才が出会い、名作を生み出していった舞台は「日本離れした空間」だった。フォト・ケミカル・ラボラトリー。財界人、植村泰二が設立した映画専門現像所で、ソニー創業者の井深大も在籍した。東京・砧にステージを持ち、映画制作に乗り出していく。米国のプロデューサーシステムを導入し、自由かつ合理的な社風だった。戦前に、黒澤と早坂が入社。抑圧と統制の時代に、2人は自由の地、砧撮影所で才能を磨き上げる。そして戦後、世界を驚嘆させる作品を生み出していく。
黒澤が「夢の工場」と語った自由空間は、東宝スタジオとして現存する。スタッフが談笑した芝生こそなくなっているが、ガラス張りで、日の光が全面に差し込む食堂は、「黒澤時代」そのままに、今もクリエーターの憩いの場となっている。そんな「創造空間」で繰り広げられた天才たちのドラマが、モノ作りの原点を教えてくれる。
| CFOインサイト~常勝企業のアウトソーシング術 | |
![]() | スチュワート・クレメンツ マイケル・ドネラン アクセンチュア 東洋経済新報社 2005-08-26 売り上げランキング : 39,329 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
競合他社を凌駕する業績を収め続ける「常勝企業」であるためには、CEO(最高経営責任者)、CFO(最高財務責任者)が果たすべき役割が非常に大きい。本書は特にCFOがアウトソーシング分野で取り組むべき課題を明らかにし、その視点を提供する。CFOへのインタビューやケーススタディーを豊富に取り入れながら、費用対効果の策定、適切なアウトソーシング事業者の選定、リスクの軽減など、アウトソーシングの実践方法を解説する。
欧米企業の多くが、単なるコスト削減のためではなく、全社的な変革を促し、パフォーマンスを向上させるための手段としてアウトソーシングを利用している。英BPは財務・経理業務のうち、方針策定、意思決定支援、判断業務だけを社内に残し、アウトソーシングの範囲を最大限に拡大。これにより、経営スタイルはより革新的になった。米P&Gは北米と南米の業務はコスタリカ、欧州地域の業務は英国、アジア太平洋地域の業務はフィリピンで処理するなど、グローバルなアウトソーシング体制を確立することで、世界中の業務プロセスとシステムの標準化を実現した。
終章で、アウトソーシングのリスクに対する懸念が強く、広範な活用が進まない日本の現状も分析している。
| 利益が上がる!NPOの経済学 | |
![]() | 跡田 直澄 集英社インターナショナル 2005-09 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
米国では、NPO(非営利組織)の活動は息が長い。メトロポリタン美術館、ハーバード大学など、NPOが運営する有名組織も多い。一方、日本のNPOは登録数こそ2万を超えているが、多くは小規模で、持続性を持って活動しているところは少ない。著者は「NPO=ボランティア」という思い込みが問題だと指摘。「利益が上がるNPO」のビジネスモデルを示す。
NPOの多くは、公益性の高いミッション、志を抱いて、政府の手が届かず、逆に経済合理性から企業が手を出さないニッチ分野で活動している。志を持続させるには、様々な収入を得て、NPOそのものを永続させることが重要。具体的には、運営費を自前の稼ぎ、補助金・助成金、寄付という3要素で賄うのが理想と説明する。
日本のNPO業界は寄付金集めが非常に弱い。著者は日本で「寄付市場」を創り出すため、金銭的、社会的なリターンの設定を考えること、NPOの事業をプレゼンテーションする優秀な営業マンや財務マンを雇うことなどが必要と提案する。
多くのNPOが安価で質の良いサービスを提供するようになれば、民間の経済活動全体が拡大し、政府はスリムになる。NPOは資本主義経済の潤滑油だと指摘している。
| 勝つ人の考え方 負ける人の考え方 | |
![]() | 林野 宏 かんき出版 2005-07 売り上げランキング : 5,439 おすすめ平均 ![]() 知的感性時代の革新的リーダーAmazonで詳しく見る by G-Tools |
西武百貨店系列のクレジットカード会社、クレディセゾンのトップが明かす“勝てるビジネスパーソンになる法”。コツはビジネスを勝負事だと信じ込むこと、勝つことや一番になることにこだわり、持続性を持って楽しむことだと言う。自身の会社をクレジットカード業界において取扱高1位(2002年)の座に導いた経営手法や成功秘話を披露する。
多くの社員は知性と感性いずれかの方向に偏重ぎみだから、2つをバランスよく育てるよう工夫せよと言う。雇用については「今後は優秀な女性を積極的に登用する企業が勝つ」という読みを示す。また、「私は今でも堤清二門下である」と断言して、堤氏の業績を改めて評価する。
| 視聴者が動いた 巨大NHKがなくなる | |
![]() | 田原 茂行 草思社 2005-09-22 売り上げランキング : 181,997 おすすめ平均 ![]() 視聴者からNOをつきつけられたNHK。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
■著者に聞く 田原茂行氏[常磐大学人間科学部講師] 問われるテレビの公共性
不祥事が続発したNHKが抱える問題点と原因を明らかにし、将来の姿を論じた。視聴率主義に影響され、テレビ放送の公共性の議論がないがしろにされていると指摘。民放テレビ局を含む業界全体の流れにも一石を投じる。
――9月にNHKは「新生プラン」を発表しました。これで本当に変わることはできるのでしょうか。
率直に言って、現状では容易ではないでしょう。数カ月かけて作り上げた新生プランのはずなのに、郵政民営化のように内外で議論が尽くされたわけでもありません。内容も具体性に欠けていると言わざるを得ません。それを新生プランとして出してくることがNHKの問題であり、公共放送の役割や重さを深く考えなくなっていることの表れだと思います。
今のNHKの状況を建築物に例えて言えば、中心の柱が腐食しており、本格的な建て替えが必要な状況にあります。規模を縮小して外から見える部分を変えるだけではなく、本質的な中身を掘り下げて議論していかないと、問題は何も解決しません。もちろん、視聴者のためにもなりませんし、芽生えた不信感も拭えないと思います。
――なぜ、このような状況になったと見ていますか。
これまでのNHKは、民放のすさまじい視聴率主義の影響を受けて、民放と同じようなことを何となくやってきたからだと思います。組織も肥大化して、公共放送のあり方を組織として考えていなかったように思います。様々な問題が起きた今こそ、視聴率を意識せずにできることを真剣に考える機会ではないでしょうか。
民放テレビ局にも問題はあります。民放幹部は「NHKは公共性を保つべきだ」と主張していますが、本来は民放だって公共性を考えなければいけない立場にあります。それなのに、外部に制作を発注してばかりいますし、視聴率主義が蔓延して、より収益を重視するようになってしまいました。もはや公共性なんて存在しないと言っていいでしょう。
――NHKに限らず、民放テレビ局を含むマスメディアの不祥事が増えたのも、こうした問題が顕在化したからなのでしょうか。
その通りだと思います。NHKだけでなく民放が意識すべき公共性の議論を置き去りにしたという意味で、キー局を中心とした視聴率「三冠王」の礼賛主義がはびこった罪は、重いと感じています。最近は楽天がTBSの買収や提携を模索していますが、今のままで実現したとしても、決して良い方向には進んでいかないような気がしてなりません。
――楽天やライブドアのように、インターネット企業がテレビ局を買収しようとする動きが活発になっています。実現すれば、テレビ局のあり方や体質を変える原動力になり得るでしょうか。
そもそも、テレビ局の内部には閉塞感があります。例えば、多メディア化やテレビ放送のデジタル化、多チャンネル化が放送の未来を開くと言われましたが、それは幻想だという見方もあります。
今のままでは大きな変化も未来も見えない状況にあり、業界内の意欲ある人々にとっては息が詰まる状況です。その点で、インターネット企業との提携が議論されている今の状況を、突破口にしなければならないと思います。
それと同時に、放送の公共性という原点を見つめ直すべきとも感じています。外国資本に限らず、社会に対する影響力が高まっているネット企業がテレビ局を支配する構図に問題がないのかも含めて、本質的な議論を進めていく良い機会ではないでしょうか。
田原 茂行(たはら・しげゆき)氏
1931年横浜市生まれ。東京大学法学部卒業後、TBS入社。スターチャンネル専務取締役、常磐大学人間科学部教授を経て、同学部講師。
| ヨーロッパのCSRと日本のCSR―何が違い、何を学ぶのか。 | |
![]() | 藤井 敏彦 日科技連出版社 2005-09 売り上げランキング : 7,553 おすすめ平均 ![]() CSRの本質を分かりやすく整理し、明快に解き明かした経営者必読の書 EUに関心がある人必読の書 ヨーロッパの理念性への洞察に満ちた、EUに関心がある人必読の書Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本書がテーマとしているCSRとは、Corporate Social Responsibility、日本語では「企業の社会的責任」と訳されている。法令順守、企業倫理の明示、環境問題、労働問題など、市民社会の発展や安全に対して企業が積極的な役割を果たす行為を指す。本書は、経済産業省の官僚として欧州に駐在し、欧州連合(EU)の政策決定にも関わってきた著者が、CSRの本質とその向かうべき先を論じたもの。
CSRというと環境問題に重きを置きがちな日本企業とは異なり、欧州企業は、社会問題、特に失業者や発展途上国からの労働者の人権に関わる労働問題を機軸に据えることが多いという。それらの問題は、もはや政府の力だけでは解決できない状態にあるからだ。「法律上、契約上の義務」を上回る社会貢献への自主性を企業が有し、同時にそれを業務の一部として取り込まない限り、「社会の持続的発展」は望めないという危機意識が欧州企業にはある。またこの点こそが、本来の業務とは切り離した「慈善的事業」によってCSRを実現しようとしている米国企業との決定的な差異であると指摘。これらを踏まえたうえで、若年層の失業、外国人の増加、地域社会の崩壊などの課題に直面する日本企業のCSRについて検討する。
| 消費税15%による年金改革 | |
![]() | 橘木 俊詔 東洋経済新報社 2005-08-31 売り上げランキング : 19,214 おすすめ平均 ![]() 素晴らしい提案と思う。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者は、時代の急激な変化にさらされている生活者の現状や問題点を、経済的な視点から鋭く指摘している京都大学大学院の教授だ。近年では『家計からみる日本経済』『脱フリーター社会』『日本のお金持ち研究』などの著書を通じて、日本社会の根底で生じている歪みをあぶり出してきた。今回は研究室の学生との共同作業によって、我が国における公的年金制度の問題点を掘り下げ、抜本的な改革案を示す。それが、「公的年金制度の一元化と、基礎年金の全額を消費税で賄う方式」だ。その際の消費税率は「15%前後が適切」という大胆な提言である。
これによって引退した夫婦に月額17万円の年金支給が可能になるという。実際にそうなれば、今日の年金未納の原因である「老後を生きるに足る支給額が保証されていない」という問題が解消される可能性が高い。そのほかにも、年金保険料がゼロになることで経済成長率が高まる、現状の保険料徴収管理コストが減る、第3号被保険者(専業主婦)問題がなくなるなど、メリットは計り知れない。とはいえ、15%という高い消費税率がもたらすマイナス効果に加え、年金一元化の前に横たわる難問は山積だ。著者らはこの点に関しても可能な限りの解決策を模索している。
| そんな新事業なら、やめてしまえ! 既存の資産と能力を活かす6つの原則 | |
![]() | セルジオ・ジーマン 中野 雅司 山本 暎子 ダイヤモンド社 2005-09-15 売り上げランキング : 131,971 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
イノベーション(技術革新)によってビジネスを成長させようとすること自体、全くもって怠惰であり、大多数の企業では機能しない――。こう指摘されたら新規事業に賭けようとしている経営者、新規事業の責任者、プロジェクト関係者、投資家はどう思うだろうか。著者は元コカ・コーラ社マーケティング部門の最高責任者であり、多くの世界的企業のマーケティング・広告戦略に知恵を貸してきた人物である。
イノベーションに頼る行為は、言い換えれば“本業の行き詰まりから来る焦り”にすぎないと言う。新規事業による商品がブームになったり、株価が上がったりするのはあくまでも一時的な現象で、企業に実質的かつ長期的発展をもたらす利益やブランドが構築できたかどうかは疑わしく、成功例は少ないと指摘。失敗の原因は、経営者が自社の本質を見誤っていることだと言い、会社が本来持ち合わせている性格(コアエッセンス)と、ノウハウや資源の強み(コアコンピテンシー)を混同するなと忠告する。著者が推奨するのは、コアエッセンスを核に据えて行う「リノベーション(本業見直し改善)」だ。米国の有名企業が行った本業改善の事例や、反対にコアコンピテンシーに頼ったイノベーションの失敗例を示して子細に検証する。


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