メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2008年4月19日~4月26日

昭和天皇 (岩波新書 新赤版 1111)
昭和天皇 (岩波新書 新赤版 1111)原 武史

岩波書店 2008-01
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おすすめ平均 star
star宮中祭祀への拘泥ぶり、皇祖皇宗第一主義の本気ぶりに脱力
star天皇のアイデンティティに対する理解がおかしい!
star昭和天皇と貞明皇太后

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宮中祭祀から見た昭和天皇の心象風景

昭和天皇については、すでに多くの研究、資料が発刊されている。本書は、宮中祭祀に焦点を当てて、戦前戦後の昭和天皇を読み解こうとする。

初めに、新嘗祭を除くと年に30回程度ある祭祀のほとんどが、明治に作られたものだとの指摘がある。祭祀は正座で行われるようだが、平安貴族は正座しなかったから確かに作られた伝統だろう。祭祀は、これらを「国体」の根幹となす後期水戸学によって後から作られたという。

明治天皇も大正天皇も祭祀には消極的だった。京都に強い郷愁を抱いていた明治天皇は、自分の在任中に、東京で宮中祭祀という、京都では必ずしも行われていなかった「伝統」が作られていくことに冷めた感情を持っていたと本書は述べる。

昭和天皇も同様だった。昭和天皇(皇太子時代のこともあるが、煩雑であるので天皇と書く)は、当初、生物学の研究を優先させて、宮中祭祀に出席しないことがあった。

だが、しだいに祭祀に熱心になっていく。母親の貞明皇后が、大正天皇が病気になるにつれて祭祀に熱心になっていったことによる。皇后は形式通りに祭祀を行うのではなくて、心から祈らなければ神罰が当たると考えるようになっていく。

もう一つの要因は、生物学の研究で自然界の森羅万象を見ていると、そこには秩序があって万物を生々化育せられる神の存在を考えざるをえないように思われるからだという。

さらに、昭和天皇が祭祀を重視するようになった要因は戦争への反省からだったという。戦争中、平和の神である天照大神に戦勝を祈ってしまった。その結果大照大神の御怒りを買ったという認識を持ち、戦後、祭祀を通じて平和を祈り続けたと本書は述べる。

作られた伝統という発想は、宮中の外の儀式にも向けられる。皇太子時代、天皇は欧州を訪問してジョージ5世とも出会った。天皇はロンドンと東京、パリと東京を比べることで、一国の首都がどうあるべきかを考えていた。

帰国後、天皇はイギリス王室の影響を受けた大規模な市民奉祝会に度々出席する。これを、超国家主義者たちは君民一体の空間が現実に現れたと解釈した。すると、超国家主義思想も作られた伝統によって生まれたことになる。

著者のストーリーは私には説得的であったが、必ずしも十分な文献的証拠があるわけではないようだ。このストーリーに異論がある方もおられようが、『大正天皇』(朝日選書)に続く、ユニークな視点からの著者の天皇論は刺激的で興味深い。【評者 原田 泰 大和総研チーフエコノミスト】

■2008/04/26, 週刊東洋経済

新たなる資本主義の正体 ニューキャピタリストが社会を変える (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
新たなる資本主義の正体 ニューキャピタリストが社会を変える (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)デイビッド ピット‐ワトソン スティーブン デイビス ジョン ルコムニク

ランダムハウス講談社 2008-02-28
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株式所有の機関化を分析 「新しい資本家」像を提示

今から30年以上も前にピーター・ドラッカーはこう指摘した。「年金基金がアメリカの大企業の大株主になっている、ということは年金の受給者である従業員が大株主になっているということだから、アメリカは社会主義国になったのだ」と。

その後、年金基金や投資信託などの機関投資家がアメリカの株式の過半数を所有するようになった。そこで従業員や投資家などの一般市民が今やアメリカの会社の「新しい資本家」になったのだ、というのがこの本の著者の主張である。

この「新しい資本家」は会社に対しても市民としての要求を突きつける。「会社は利益を上げて、株価を高くするように経営しなければならないが、同時に公害をなくしたり、人権を重視したりして、市民一般の要求にも応えなければならない」と。

しかし、アメリカの会社がそういう経営をしているというわけではない。それどころか、いかにアメリカの大企業が市民の利益を無視し、公害をまき散らしているか、ということを具体的に指摘している。だからこそ「新しい資本家」が会社の経営者に圧力をかけることが必要だし、経営者もその声を聞くことが大切なのだと、主張する。

だが、この「新しい資本家」は自分の年金基金がどのような会社の株に投資されているのかを知らない。それらの資金を運用しているのは機関投資家のファンド・マネジャーで、彼らは運用成績を上げて、自分の収入を増やすことしか考えていない。「新しい資本家」というけれども、自分がどのような会社の株主になっているのかさえ知らない。そんな資本家がいるのだろうか。機関投資家が大株主になっているというアメリカの現実をいかに理解するか。その理論的解明という点では掘り下げが足りないように思える。【評者 奥村 宏 株式会社研究家】

■2008/04/26, 週刊東洋経済

顔のない男―東ドイツ最強スパイの栄光と挫折
顔のない男―東ドイツ最強スパイの栄光と挫折熊谷 徹

新潮社 2007-08
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おすすめ平均 star
star伝説的スパイマスターの半生
star稀有なスパイマスターの人生を紹介
star旧東独のスパイ・マスター

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知られざる東西ドイツのスパイ合戦の内幕を描く

歴史上、有名なドイツ人スパイといえば、日本を舞台にして活躍したリヒャルト・ゾルゲや、西ドイツの連邦情報庁(BND)を率いたラインハルト・ゲーレンなどの名前が挙がるが、本書の主人公マルクス・ヴォルフも間違いなく伝説的スパイの一人である。

ヴォルフは弱冠29歳で東ドイツの対外情報組織、偵察総局(HVA)の長に抜擢され、その後30年の長きにわたり組織に君臨し続けた人物である。

西側情報機関は長らくその素顔すら知ることができなかったために、畏敬の念をこめてヴォルフを「顔のない男」と呼び、その正体をつかむことに全力を挙げていた。

本書はドイツで出版された多数の資料やヴォルフ自身へのインタビューによって、HVAの情報活動とヴォルフの実像に迫ろうとした労作である。

1970年、ヴォルフは自らのスパイ、ギュンター・ギョームを西ドイツ首相、ヴィリー・ブラントの個人秘書に仕立て上げ、そこから西側の機密を入手することに成功した。このいわゆる「ギョーム事件」によって、ブラントは首相を辞任するに至っている。

本書はこのような東西の知られざる情報戦について筆を進めているが、むしろ行間からはヴォルフの人間味溢れる側面が読み取れて興味深い。ヴォルフは血も涙もない情報オフィサーというよりは、情に厚い教養人のようであった。

またヴォルフは戦術的なスパイ戦には長けていたが、89年のベルリンの壁崩壊を予測できず、東ドイツの社会主義体制を守ることもできなかったことが本書内で指摘されている。ここからもヴォルフが神のような存在ではなく、時には過ちを犯すただの人間であったことがうかがえる。【評者 小谷 賢 防衛省防衛研究所教官】

■2008/04/26, 週刊東洋経済

ドイツ史を考える
ドイツ史を考えるトーマス・ニッパーダイ 坂井 榮八郎

山川出版社 2008-03
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明治維新後の近代化にあたり、モデルとした国がある。それがドイツ(プロイセン)である。官僚制度、陸軍、教育制度はドイツをお手本に作られた。戦後はアメリカの影響が強まったが、ドイツから移入された制度の骨格は残っている。

そのドイツの本当の姿やドイツ人自身の評価をわれわれは意外にも知らない。

本書はドイツの著名な歴史家ニッパーダイ(1927~92年)のドイツ史に関するエッセーである。

たとえば、ドイツのロマン主義的ナショナリズムについての評価が興味深い。フランス革命後、啓蒙主義的、普遍主義的ナショナリズムがドイツに入ったが、これに反発したドイツ人が受け入れたのが、ロマン主義、民族主義をより強調したロマン主義的ナショナリズムだった、という。

ベルリン大学をモデルにした研究大学をアメリカも日本も導入し、それがジョンズ・ホプキンズ大学、東京大学として残っているという指摘も興味深い。

■2008/04/26, 週刊東洋経済

地球の呼吸はいつ止まるのか?―エネルギー・環境連立方程式
地球の呼吸はいつ止まるのか?―エネルギー・環境連立方程式デヴィッド・ハウエル キャロル・ナフル 枝廣 淳子

ウェッジ 2007-12
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石油価格の上昇は、私たちの身近な商品やサービスの値上げとなって、生活に影響を及ぼしている。

一方で、石油が値上がりし、多くの国でエネルギー税が課されても、石油需要の伸びが鈍化する兆候はない。石油への過度な依存は将来の供給逼迫など、多くのリスクを抱えている。

本書はこうした地球レベルでのエネルギー問題と、気候変動という事態を同じ俎上に載せて、「議論と目的とを統合」しながら、その解決策を模索する。

たとえば温暖化を防ごうとすると、二酸化炭素を減らすためのエネルギー確保が難しくなり、逆にエネルギーさえ入手できればよいと考えると、温暖化の進行につながる。

「温暖化」と「エネルギー」を両立させながら、現実的な解決策を提示することは容易ではない。著者は新しいエネルギー源の開発、消費国と産出国との対話などを提案する。エネルギーと環境の未来を考えさせられる本である。

■2008/04/26, 週刊東洋経済

芥川龍之介と腸詰め―「鼻」をめぐる明治・大正期のモノと性の文化誌
芥川龍之介と腸詰め―「鼻」をめぐる明治・大正期のモノと性の文化誌荒木 正純

悠書館 2008-01
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「禅智内供の鼻と云えば、池の尾で知らない者はない。長さは五六寸あつて、上唇の上から顎の下まで下つている。形は元も先も同じように太い。云わば、細長い腸詰めのやうな物が、ぶらりと顔のまん中からぶら下がつているのである」

ほぼ誰でも知っている、芥川龍之介の「鼻」の冒頭部である。中学、高校の国語の教科書の定番である。

だが、禅智内供の心的風景の変化に関心があり、鼻の長さを具体的にどのくらいなのか注目しないで読み終えたような気がする。

本書は、この鼻自体を関心の原点に据えて、なぜ芥川が比喩として「腸詰め」を選択したのかを解明しようとする。具体的には、僧侶の「肉食妻帯」と「性」、性的隠喩としての「鼻」、芥川の短編『道祖問答』における“僧侶の性意識”、明治・大正期の性病の実態などに話を展開していく。そして、解明された結論は、意外や意外、禅智内供の鼻とは花柳病にかかった陰茎だったのである。

■2008/04/26, 週刊東洋経済

自然は緑の薬箱―薬草のある暮らし
自然は緑の薬箱―薬草のある暮らし植松 黎

大修館書店 2008-03
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昔は家庭に決まって常備薬としての薬草があった。

ドクダミ、ゲンノショウコ、センブリは「薬草の御三家」と呼ばれていた。

それらはいつの間にか姿を消してしまったが、近年、西洋医学の限界が見えてきたこともあり、自然療法、薬草療法が静かなブームとなってきている。これらは副作用が少なく、まさに生きる知恵だったのである。

本書は15種類の薬草を取り上げ、その薬としての効用と歴史などを実に興味深いエピソードや著者自身の体験談、それに薬学的解説を交えつつ、その本質に迫っている。

通常入手できるアロエ、ラベンダー、バラハス、センキュウなどを取り上げているが、われわれの知っている効用や使用法に、本書ならではの情報が付加されている。

「緑の自然から得られる恩恵はいつも人類文化の一部だった」とは、著者の言葉であるが、「医食同源」という考え方も含めて、銘記したいものである。

■2008/04/26, 週刊東洋経済

沖縄独立を夢見た伝説の女傑 照屋敏子
沖縄独立を夢見た伝説の女傑 照屋敏子高木 凛

小学館 2007-12-13
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おすすめ平均 star
star照屋敏子の魅力が今ひとつ伝わってこない
star沖縄独立の夢と現実

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沖縄人のために起業した女傑の破天荒な生涯

沖縄は今年で本土復帰36年目を迎える。沖縄返還運動が盛んだった頃には「沖縄独立論」が聞かれることはほとんどなかった。だが沖縄人の中に、独立を熱く語っていた女性がいた。それが照屋敏子である。

「沖縄の島はあんた、あくまで琉球人のものですよ。かつては琉球王国だったんだ。それを日本が母国のようにいう。いまさらなんだ」

照屋敏子は1915年(大正4年)、沖縄本島南部の糸満の網元の家に生まれた。とはいえ暮らしは決して楽ではなく、敏子が2歳の時、両親は子供を置いてブラジル移民となった。

だが母親はブラジルに着く前に病死。父親は4年後に帰国したが、間もなく病死した。

祖母に育てられた敏子は、9歳になると、大人の女に混じって魚を売り歩くようになった。糸満の女は頭にバーキ(魚籠(びく))を載せ那覇まで裸足で売りに行ったという。16歳の春、妻子ある船長とセレベス島に駆け落ちする。だがこの恋は実らなかった。19歳の時、小学校の恩師、照屋林蔚と再会、結婚する。照屋家は那覇の名家で、先妻の子二人と自分の子二人、それに気難しい舅の世話に追われたが、へこたれなかった。

1944年(昭和19年)、空襲をうけて家屋敷が全焼すると、照屋一族は漁船を借り切って鹿児島に疎開する。さらに熊本に移って終戦を迎えたが、米軍統治下に入った沖縄には戻らずに博多に移り住んだ。

敏子は、海外引揚者の沖縄人を救うため、福岡県の要請を受けて漁業団を結成する。玄界灘の漁業権を買い、沖縄人200人を集めた「沖ノ島漁業団」は、沖縄式漁法で成功する。そして瞬く間に福岡漁業界を牛耳るほどになり、「女親分」、「女海賊」の名をほしいままにした。

著者は脚本家だが、赤坂で沖縄料理店も経営している。その関連でシャンソン歌手の石井好子と知り合い、照屋敏子を知る。石井は復帰前の64年、敏子に会って魅了され、いつか彼女のことを書こうと思って会うたびに録音テープを回していた。著者はそれを石井から譲られて本書を書くことになったが、テープから聞こえる沖縄訛りの熱く激しい言葉に惹かれていった。

50年、沖縄式漁法全面禁止で、敏子は失業状態となる。だが58年、13年ぶりに沖縄に戻ると、ワニ皮バッグ・更紗等の店を始めて、成功する。決して陸に上がった河童ではなかった。特に復帰前夜の60年代後半は、次々と新事業を起こし、敏子らしさを存分に発揮した。

本書には、照屋敏子から石井好子へ、石井好子から著者へと、女3人によって、沖縄人の熱い思いが受け継がれている。【評者 仲倉重郎 映画監督】

■2008/04/19, 週刊東洋経済

「小さな政府」の落とし穴―痛みなき財政再建路線は危険だ
「小さな政府」の落とし穴―痛みなき財政再建路線は危険だ井堀 利宏

日本経済新聞出版社 2007-08
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star将来の子供たちへのツケ回しはもうやめよう。
star財務省よりの、冷徹な学者の本という印象が強い

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財政再建をめぐる増税派の論理を語る

わが国にとって財政再建が重要な課題であることはいうまでもない。重要であるがゆえに論争の的でもある。小泉内閣末期の「上げ潮路線」と「財政再建路線」の対決は福田内閣の今も持ち越され、現在でもその第2ラウンドが続いている。

本書は財政再建派の論理を最も詳細に語る。凡百の本を何冊も読むよりも、これ一冊を読めばよく、本書を高橋洋一著『財投改革の経済学』と読み比べると論争のだいたいの見取り図を描くことができる。

本書の主張は簡潔である。財政再建は必要であるが、政府規模をこれ以上小さくすることは望ましくなく、増税が必要になる。また、財政再建にあたっては経済成長という「神風」に頼ることは好ましくなく、やはり増税が必要である。どちらにせよ増税が必要という。

経済成長が「神風」であるかどうかは名目で考えるか実質で考えるかによる。名目成長率には日銀の責任である物価上昇率の動向が重要である。

本書は最近の日本経済の経験を基に名目成長率は低位にとどまるとしているが、デフレに陥った最近の日本経済は例外なのではないか。ともあれ、名目成長率がどのように決まるかについての議論が本書にないのは残念だ。

また、景気対策は金融政策を中心とすべきと著者はいう。これには賛成である。しかし、短期的に財政政策に効果があることは著者も認める。そのときに増税は経済にどう影響するのか。

さらに市場は万能ではないから政府の役割があると著者はいう。一般論としてこれに反対する人はいないだろう。

しかし、現在のように政府が巨額の資産を抱える状況は望ましいのかどうか。財政をめぐる論争に欠かせない本であることは確かである。【評者 若田部昌澄 早稲田大学政治経済学術院教授】

■2008/04/19, 週刊東洋経済

ヤマダ電機の品格―No.1企業の激安哲学
ヤマダ電機の品格―No.1企業の激安哲学立石 泰則

講談社 2008-01
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おすすめ平均 star
starヤマダ電機の現況に迫る
star驚くべき内容
star傑作のルポルタージュ

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ヤマダ電機のビジネスモデルを解き明かす

家電量販店といえば、ヤマダ電機、コジマ、ビックカメラなど大手の名前がすぐ頭に浮かぶ。しかし家電量販店の実態について深く切り込んで紹介した本は少ない。本書は業界トップ、ヤマダ電機について分析する。

ヤマダ電機の創業者山田昇は1943年宮崎県に生まれる。青雲の志を抱いて上京した山田はアルバイトの傍ら、千代田テレビ技術学校に通い、カラーテレビの技術を習得する。

30歳にして独立した山田は前橋市に家電販売店を開く。独創的な、他店がしないカラーテレビの無料調整サービスを行う。

これにより各家庭に自由に入り込み、売り込みをする。こういう話は、大学人である私は教育の効用として大いに感じるところがある。

好調に店舗を拡大した山田だが、ある日、不況の危機に遭遇する。支店をすべて手放し、在庫を本店に集中する。在庫に苦しめられた山田は捨て身の2割引きセールを実行する。あっという間に在庫はさばけた。家電販売は価格がすべて、と悟った山田は安売りを繰り返すが、それがメーカーの価格支配に弓を引くことになった。

巨大なメーカーに対抗するには売り上げを伸ばすしかない。ヤマダ電機は市場から直接資金を調達し、土地は買わず借地に店舗展開する方式で、全国展開を開始する。このプロセスの記述にはぞくぞくするような興奮を覚える。ある意味では戦国時代の織田信長の戦記物語や、映画の『仁義なき戦い』に通じるものがある。

今や向かうところ敵なしに見えるヤマダ電機であるが、店舗競合で苦戦するライバルがあったりする。こうしたヤマダ電機以外の量販店の戦略哲学も興味深いものがある。本書は、ヤマダ電機の強さも弱さもすべて白日の下にさらけだしている。【評者 脇 英世 東京電機大学工学部教授】

■2008/04/19, 週刊東洋経済

未完のロシア―10世紀から今日まで
未完のロシア―10世紀から今日までエレーヌ・カレール・ダンコース 谷口 侑

藤原書店 2008-02
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1970年代にいち早くソ連の崩壊を予言したフランスの女性歴史家によるロシア史の、10世紀から現在までの概説書である。

その中で、イワン雷帝からピョートル大帝、そしてニコライ二世に至るまでのロシア皇帝の歴史を振り返りながら、いかにロシアが近代化の道を歩んできたか、そしてそれに対する壁がいかに厚かったか、ということを皇帝の歴史としてまとめている。

そしてロシア革命以後のロシアは農奴制をより徹底したものであり、帝国への道を歩んだものであり、それを指導したレーニンは暴力に訴えるだけだった。その結果、いまやロシアは西洋社会から引き離され、もはや国家の態をなしていない、という。

2000年に書かれたこの本はロシアをまるで暗黒大陸のように描いているが、その後のロシア経済の台頭、プーチン政権の安定を見ると、ある時点での歴史の評価の難しさを考えさせられる。

■2008/04/19, 週刊東洋経済

親たちの暴走 日米英のモンスターペアレント (朝日新書 99)
親たちの暴走 日米英のモンスターペアレント (朝日新書 99)多賀 幹子

朝日新聞社 2008-03-13
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star親にも教師にも役に立つ一冊
star教師ですが、さっそく読みました

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なんとも奇妙な名称だが、モンスターペアレンツが学校を席巻している。

だが、そのモンスターはついに、大学にも現れた。しかも、モンスターペアレンツだけではなく、単位を落としたりしたらタダではすまないぞと直接担当教授を恫喝するモンスタースチューデントさえ現れ、実に困った存在となっている。

と思っていたら、本書によると、アメリカではヘリコプターペアレンツといわれる親がいるという。

イギリスではフーリガンペアレンツと称される親がいて、実際に教師に暴力を振るっているという。

この問題は一面では、かつて一部の教師が、子どもを人質にして、理不尽な体罰、不公平な扱いなどをしたことが、今日、親側の過激な抗議行動を引き起こしたと見ることもできる。

それにしても、教師と親との対立でもっとも損害を被るのは子どもたちである。これを基点として、両者が歩み寄るしか解決の方法はないだろう。

■2008/04/19, 週刊東洋経済

超人気ワークライフバランスコンサルタントが教える キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方
超人気ワークライフバランスコンサルタントが教える キャリアも恋も手に入れる、あなたが輝く働き方小室 淑恵

ダイヤモンド社 2008-03-14
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おすすめ平均 star
starとても希望が持てるようになりました。
star男性にも読む価値がありますよ
star一読の価値あり!

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週50時間以上働く労働者の比率は世界一。労働生産性の順位は主要先進7カ国最下位。ILOやOECDの調査は、日本人の働きすぎの実態と、その効率の悪さを明かしている。

仕事一辺倒の文化が、少子化など社会問題の背景にあると指摘されてきた。その問題解決に掲げられるのが「ワーク・ライフバランス」だ。本書は、育児休業者の職場復帰支援事業を手掛ける、いわば「ワーク・ライフバランスのプロ」による、仕事と家庭の両立のための方法論である。

本書では「子育てと家事の分担をめぐって夫と喧嘩した」などという著者自身の修羅場経験も打ち明けられる。だが、そこでの不満を愚痴にせず「夫との付き合い方」といったポジティブな提案に変えるところが、著者の面目躍如だ。

社会的認識の必要性、企業に求められる戦略、個々人ができること。女性にかぎらず男性読者も、複数の視点から仕事と生活の両立を見直す契機となる。

■2008/04/19, 週刊東洋経済

私は日本のここが好き!―外国人54人が語る
私は日本のここが好き!―外国人54人が語る加藤 恭子

出窓社 2008-02
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おすすめ平均 star
star私たちが気づかない日本の良さを
star前向きに生きたいあなたに!
star日本に生まれた幸せを痛感

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最近、親殺し、子殺し、青少年の無差別殺人事件などが増大している日本。

ごまかし、汚職、偽装詐欺などにも染まっている日本。こんな日本に誰がしたと恨みつらみを並べたくなるのだが、日本で暮らしている外国人ははたして日本をどう見ているのか。

外国人54人が日本の印象を語った本書によると、日本人の親切さ、約束や時間厳守、信頼性、清潔、平和、伝統文化、恵まれている教育制度、義理と人情、正直、繊細、謙虚さなどの特質を高く評価している。

このように高く評価されているとは、まさに面映いばかりである。

中には日本人の特質として政治的な問題や社会的な問題が起こったときでも暴動を起こしたりしない国民性を指摘しているが、それは、穏和な性格からというより、社会的諦観からきているのかもしれない。

それにしても本書を読むと、外国人の日本への評価が高いことに救われた気持ちがする。

■2008/04/19, 週刊東洋経済

日本海軍、錨揚ゲ! (PHP文庫)
日本海軍、錨揚ゲ! (PHP文庫)阿川 弘之 半藤 一利

PHP研究所 2005-08-02
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star帝国海軍を客観的に考証する、快著。
star爆笑必至!海軍こぼれ話の数々
star本音が表れていて面白い

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大海軍を想う―その興亡と遺産 (光人社NF文庫)
大海軍を想う―その興亡と遺産 (光人社NF文庫)伊藤 正徳

光人社 2002-03
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おすすめ平均 star
star日本海軍史の中でもとても読みやすい
star船と海戦を知る人の筆
star日本海軍を知る最高の傑作

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帝国海軍を回顧する その魅力は何だったのか

太平洋戦争は昭和史の「負の遺産」としてとらえなければならないのは当然であるが、その実態の多くがいまだ明らかにされていない。たとえば、陸軍に関する書籍はまさに汗牛充棟というほどあるのに、なぜか、海軍については少ない。

それにしても、司馬遼太郎の長編歴史小説『坂の上の雲』(文春文庫)のテーマである日露戦争において、連合艦隊はバルチック艦隊に文字通り完勝し、帝国海軍の名は指令官の東郷平八郎提督の名とともに、世界中に知れわたった。

これ以降、日本人にとって、連合艦隊は帝国海軍の代名詞となるが、その40年後には、敗戦により、まさに海の藻屑となってしまった。

英米とともに世界3大海軍の一つといわれ、巨大戦艦「大和」や「武蔵」を擁し、数え切れないほど多くの若き特攻隊員を死地へ送り込んだ帝国海軍とは何だったのか。

『日本海軍、錨揚ゲ!』(阿川弘之・半藤一利著 PHP文庫)は、26話におよぶ談論風発の対談集。

日本海海戦秘話、「本日天気晴朗なれども波高し」に隠された意味、昭和海軍変身の時代的背景、米内・山本・井上トリオ、人事の壁をうち破れなかったこと、井上成美と一緒に酒は飲みたくないなど、痛快無類の内容である。

この対談の中に何回も名前が出てくる伊藤正徳は、ワシントンの軍縮会議を取材し、「伊藤の前に伊藤はなく、伊藤の後に伊藤なし」(小泉信三)と謳われた比類なき大海軍記者である。

『大海軍を想う』(伊藤正徳著 光人社NF文庫)は、帝国海軍の誕生から敗戦まで通時的にまとめた古典的名著。まだ敗戦の自信喪失から立ち直れない昭和30年代初頭に刊行されたこともあってか、「戦争を決めた少数の犯人は万死に値する」と断罪しつつも、日本人の矜持を喚起するために、「この資源の乏しい国、百年遅れてスタートした小さな国が、よくもかの大海軍を造り上げたものだ」と読者に語りかけるくだりは、明治生まれの気概だろう。【評者 文芸評論家 阿久根利具】

■2008/04/19, 週刊東洋経済

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