メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2008年1月12日~1月19日

波乱の時代(上)
波乱の時代(上)アラン グリーンスパン 山岡 洋一/高遠 裕子

日本経済新聞出版社 2007-11-13
売り上げランキング : 133

おすすめ平均 star
star世界経済の近代史の鳥瞰ができました
starぶれない軸と 変化への適応
starやはり一読はしておいた方がいい本だと思います

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波乱の時代(下)
波乱の時代(下)アラン グリーンスパン 山岡 洋一/高遠 裕子

日本経済新聞出版社 2007-11-13
売り上げランキング : 174

おすすめ平均 star
star 経済学を勉強してみたい気分
star思っていたよりは...
star下巻は"ご託宣"みたいなのがく、開発途上国の指導者たちに説く啓蒙書みたいな感じ

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元FRB議長が語る 半生と世界経済の未来

父親はルーマニア系、母親はハンガリー系の、ともにユダヤ人の子供として生まれたが、両親はグリーンスパンが生まれた後、まもなく離婚している。

以後、母親は家具店の販売員としてその子供を育てたが、野球選手になりたいと思っていた息子はやがてウォール街でエコノミストになり、その後、友人と二人でコンサルティング会社を作った。このような経歴の人物がやがて大統領経済諮問委員会の委員長になり、そしてFRB議長になる。

日本でこのような経歴の人物が日銀総裁になるなどということは、およそ考えられないことだ。それだけアメリカ社会が自由であるということか、それとも本人が世渡り上手なのか。おそらくその両方なのだろう。

自伝ともいうべき上巻は彼がいかにして金融界でのしあがり、ニクソン、フォード、レーガンなどの共和党政権に密着しながら、他方では民主党のクリントンともうまくやってきたか、ということがリアルに書かれていて面白い。

1996年秋、NY株式が6000ドルを超えたとき、これは「根拠なき熱狂」だとグリーンスパン議長が発言したところから一時株価が下げたことがある。ところが、それからしばらくすると、同じ人が今度は「アメリカ経済はニューエコノミーの時代に入った」といって株価をあおった。「あちらではああ言い、こちらではこう言う」。これがグリーンスパン流の世渡り術だということはボブ・ウッドワード著『グリーンスパン』(日本経済新聞社)に書かれている。あいまいな言い方がこの人の本領であるということがこの本でもよくわかる。

もっとも、下巻では、イラク戦争は石油のための戦争だということをアメリカ人は率直に認めるべきだと、はっきり書いており、このことがアメリカ政界で物議をかもした。その下巻では、世界の資本主義のあり方から、教育や所得格差、さらにはエネルギー問題などについての著者の考え方が書かれているが、その内容は常識的で、上巻ほど面白くない。

ただ、一貫しているのは競争的市場主義で、市場の「見えざる手」ですべてうまくいくという考え方で、ヘッジファンドも石油や不動産の投機取引もすべてよいものと是認される。

この本がアメリカで出た直後に、サブプライム・ショックでアメリカやヨーロッパの金融界が大混乱に陥ったが、これは著者がFRB議長として進めてきた金融緩和政策と投機促進策の産物ではないか、という批判が出ている。これに対しても著者は例のような口調で言い逃れするのだろうか。【評者 奥村 宏 株式会社研究家】

■2008/01/19, 週刊東洋経済

移りゆく「教養」 (日本の〈現代〉 (5))
移りゆく「教養」 (日本の〈現代〉 (5))苅部 直

NTT出版 2007-10
売り上げランキング : 4947

おすすめ平均 star
star「すべき」と言わない教養論

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現代社会の教養のあり方と意義を見事に解明する

自分では低いつもりが、実は高いのが「気位」。その反対に、自分では高いつもりが、実は低いのが「教養」、と言ってのけた人がいる。思い当たって、耳が痛い。しかし、そもそも教養とは何なのか。何のための教養かとなると案外わかってはいない。

だから最近は、読書は教養ではない、コミュニケーション能力やコンピューター能力、英会話こそが教養であるというような乱暴な議論も現れている。

本書は、そうしたわかったようでわかっていない教養論議を旧制高校や『三太郎の日記』(阿部次郎著)に代表される大正教養主義にさかのぼって歴史的に洗い直す。

そして、教養とはカルチャーであるとして、「人と人がさまざまな活動をおたがいに行なう上で、前提にしている共通のものの考えかた」とかみくだいて説明している。他人との関係の中で生きる知恵のことであり、そうした知恵を伝え合い、更新していくことである、という。

教養というと、知識がどれくらいあるかの量にかたむきがちである。この種のため込み系教養観から生まれるのが「ひけらかす」教養である。本書はそんな守旧的でエリート主義的な教養主義にはくみしない。

人と人とのつながりの中で活用される教養、そして文化を「感受する」教養の大事さが強調されている。

読書だけが教養ではないことは確かだが、人間が言葉によって世界と他者を理解し、自己表現していくかぎり、読書なくして教養は成り立ちにくい。著者はこう言う。「読書」は教養へと向かう「踏み台」となり、教養の営みと「伴走」するものである、と。至言である。

教養という古い革袋に新しい酒がそそがれている。味わいに広がりがあり、深い。【評者 竹内 洋 関西大学文学部教授】

■2008/01/19, 週刊東洋経済

模倣の法則
模倣の法則ガブリエル・タルド 池田 祥英 村澤 真保呂

河出書房新社 2007-09
売り上げランキング : 19784

おすすめ平均 star
star現代のための古典

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今でも通用する社会分析の書 近代社会を動かす原理を透視

かつてこれほど瑞々しい感受性をもって社会を分析した著作があっただろうか。今や古典中の古典とされる、フランスの社会学者ガブリエル・タルドの主著(原書は1890年刊行)の完訳版が、100年以上の月日を経て刊行された。とりわけ現代の日本でも話題になる「流行」や「コピー」といった現象を読み解くための、必読の理論書だ。

タルドによれば、「社会とは模倣であり、模倣とは一種の催眠状態である」という。衣服・言語・風習・ビジネスなど、私たちは催眠術をかけられたかのように、優れたものを模倣する。しかしそもそも催眠術にかかるような人は、催眠をかけられたいという欲望を持っており、催眠術師はその欲望を引き出す。模倣の場合も同様に、人々は根源的な「模倣欲望」を持っていて、それを引き出すのは「威信」であるとタルドは喝破する。

かつてアダム・スミスは、近代市場社会の原理を人々の「共感」(同感)に求めたが、タルドによればそれは誤りで、むしろ多くの人々は、威信のある人々を一方的に模倣することでもって社会が成立する。しかも模倣現象の増大によって、社会は爆発的に近代化していく。

大量の模倣現象は、人々が既存の社会慣習から解放されて、強度の高い都市生活の中で余剰と奢侈と美を求める場合に生じる。

それゆえ模倣の欲望を醸成するには、崇拝における魅惑と威圧の結合によって、人々の感覚を鋭敏にさせ、知覚を麻痺することが効果的だ。

模倣はしばしば、衣装などの外面から出発して内面的精神に達するといわれるが、タルドの説はその正反対である。

またタルドは文明化とともに、模倣が無意識化していくと論じている。驚きに満ちた観察眼だ。【評者 橋本 努 北海道大大学院准教授】

■2008/01/19, 週刊東洋経済

レアメタル資源争奪戦―ハイテク日本の生命線を守れ! (B&Tブックス)
レアメタル資源争奪戦―ハイテク日本の生命線を守れ! (B&Tブックス)中村 繁夫

日刊工業新聞社 2007-03
売り上げランキング : 39281

おすすめ平均 star
star社会科好きな大人の皆さんにお勧めする時事問題の“お勉強本”
star必携のレアメタル解説書
star日本産業界の将来は?

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液晶パネルの透明電極に使用されているインジウム。世界の生産量はわずか100トンほど。日本の液晶パネル用の使用量も数トンだが、これがないと液晶パネルの生産は完全に止まる。

このようにレアメタルは、必要な量はわずかだが、生産活動に不可欠な希少金属である。

レアメタルの生産は銅などのベースメタル以上に生産国が限られている。インジウムだけでなく、金属加工に不可欠なタングステンなども中国の依存度が高い。レアメタルの価格高騰、生産国の偏在などにより、経済安全保障を確保するうえで、レアメタルへの関心が高まっている。

本書はレアメタルビジネスに長年携わった著者が、レアメタルの現状と、「ハイテク日本の生命線を守れ」という問題意識から、海外での探鉱や代替材料の開発、リサイクルの推進などを提起する。包括的にレアメタルについて知ることのできる入門書になっている。

■2008/01/19, 週刊東洋経済

旧石器・縄文・弥生・古墳時代 列島創世記[全集 日本の歴史]
旧石器・縄文・弥生・古墳時代 列島創世記[全集 日本の歴史]松木 武彦

小学館 2007-11-09
売り上げランキング : 10557

おすすめ平均 star
star発達論的歴史学
star認知考古学に基づく抑制的な筆致
star新しい視点が多く参考になります

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小学館が創立85周年を記念して刊行する「日本の歴史」シリーズ。本書はその第1巻である。本書では旧石器時代から、古墳時代までを記述している。

こうしたシリーズでは通常、日本史の大家、権威が書くことが一般的だが、本書では、岡山大学文学部准教授である新進気鋭の歴史家が筆を執っている。

内容も最新の歴史学の成果を取り入れた、斬新でかつわかりやすい構成になっている。

本書によると、日本列島にヒトが住み始めたのは、約4万年前だという。日本列島のヒトが文字を持ち、記録するまでの無文字時代を、鮮やかに記述する。

長い縄文時代の後、外部からさまざまなルートで、弥生文化が日本列島に入り込む。そこで、縄文文化は弥生文化を取り込んで変容を遂げていく。

そして、歴史時代の始まり。朝鮮半島を経由して、新たなヒトと文化が流入することで、日本の歴史が始まる。

■2008/01/19, 週刊東洋経済

環境政策学のすすめ [京大人気講義シリーズ] (京大人気講義シリーズ)
環境政策学のすすめ [京大人気講義シリーズ] (京大人気講義シリーズ)松下 和夫

丸善 2007-10-26
売り上げランキング : 45000


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地球環境の劣化の阻止は一刻の猶予も許されない。先進国も後進国も国情より優先させねばならなくなった。それにしても、どうやって。著者は長く環境庁で環境政策の立案にかかわり、1980年代後半からは地球環境問題の国際交渉や国内対策をはじめとして、OECD環境局や国連地球サミット、京都議定書の策定など国際的な仕事にも携わってきた。

その後、京都大学大学院地球学堂教授として、現在は「環境政策」の教育と研究に従事しているが、本書は京大における講義内容を活字化したものであり、著者の豊富な国際経験が色濃く反映された、おそらくいちばんわかりやすい「環境政策本」といえる。

人間の活動が環境に与える負荷は増大する一方であり、特に気候変動による影響の拡大は対処を誤ると人類の存続自体を脅かすものになる。「持続可能社会」への変革手段としての環境政策をじっくり考える格好の本である。

■2008/01/19, 週刊東洋経済

明鏡ことわざ成句使い方辞典
明鏡ことわざ成句使い方辞典北原 保雄 加藤 博康

大修館書店 2007-07-10
売り上げランキング : 10652

おすすめ平均 star
starこんな辞典を待っていた!

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「四字熟語」と並んで「ことわざ」または「俚諺」は、古くから広く知られ使われてきた、いわば「国家的遺産」である。だが、残念なことに、最近それらは使われなくなってきている。これが日本語の貧弱さに連動しているのである。

いや、もっと的確に言うなら、思考や判断が一段と浅薄化し、それに応じてわれわれの基本的な言語活動も劣化してきているのだ。

このままの状態では、はたして日本語は、日本人は、どうなるのであろうか。まさか現在の小学生の国語の貧弱さを補うために、小学生から英語会話教育を導入などといった噴飯ものを主張するわけではあるまい。

やはり、「ことわざ」は先人の貴重な言行であり、われわれが物事を判断する際の基盤となるのである。

本書に収録された約2300の成句に、「使い方」「誤用」「出典」「類表現」が一目でわかるように示されている。私が、たまたま見つけた気になる成句は「偕老同穴」であった。

■2008/01/19, 週刊東洋経済

スパイと言われた外交官―ハーバート・ノーマンの生涯 (ちくま文庫 く 10-2)
スパイと言われた外交官―ハーバート・ノーマンの生涯 (ちくま文庫 く 10-2)工藤 美代子

筑摩書房 2007-03
売り上げランキング : 127073

おすすめ平均 star
star殉教者となったH.ノーマン
star昔の事を知るために

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ウルトラ・ダラー (新潮文庫 て 1-5)
ウルトラ・ダラー (新潮文庫 て 1-5)手嶋 龍一

新潮社 2007-11
売り上げランキング : 5080

おすすめ平均 star
star国際情勢をめぐるおもしろ小説
star手島のウィンク
star「上から目線」と丁寧さ

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冷戦終結後も終わらない インテリジェンス戦争

第2次大戦期に中立国スペインに赴任していた須磨弥吉郎公使は、スペイン人スパイ組織「東」機関の創設者として、敗戦直後、A級戦犯に指名され、1946年春、マルセイユ経由で帰国する。

須磨は逮捕は免れ、在宅のまま取り調べを受けるが、結局、不起訴処分となる。占領軍当局の取り調べに対して「外交官が自国のために情報活動するのは、当然の権利である」と論破したという。

外交官は自国の国益のために粉骨砕身するものだが、自国からスパイと疑われたらどう対応すべきか。

工藤美代子著『スパイと言われた外交官』によると、カナダの駐エジプト大使ハーバート・ノーマンは、宣教師の息子として日本に生まれた。大のジャパノロジストであり、敗戦直後にGHQの諜報部分析課長として来日し、ついでカナダ政府代表部の責任者として、天皇退位論の渦中の真っただ中で天皇制擁護を主張する。だが、やがて理不尽な「マッカーシズムの赤狩り」のために、共産主義者、ソ連のスパイの容疑を受け、57年に苦悩の末、カイロで謎の自殺を遂げた。47歳であった。

ところで、91年のソ連解体によるKGB対CIAの熾烈な諜報戦争の終結と思いきや、94年CIAの幹部職員オルドリッチ・エイムズが9年間も旧KGBの「モグラ」だったとして逮捕された。

あのMI6の高官キム・フィルビーと比肩する大物スパイだった。また、ロンドンで元ロシア国内保安部幹部職員が暗殺され、元KGB工作員である犯人の身柄引き渡しをめぐって、英・露双方の外交官の国外追放劇を引き起こしている。

いまだこうした冷戦期の構造が残されているが、やはり、9・11事件以来、民族紛争、宗教紛争などの「テロ」が頻発している。手嶋龍一著『ウルトラ・ダラー』は、北朝鮮の精巧な偽百ドル札を追跡するMI6のエージェントが、世界のさまざまな秘密組織を暴いていく壮大なインテリジェンスロマネスクである。【評者 文芸評論家 阿久根利具】

■2008/01/19, 週刊東洋経済

神と科学は共存できるか?
神と科学は共存できるか?スティーヴン・ジェイ・グールド 新妻 昭夫

日経BP社 2007-10-18
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おすすめ平均 star
starNOMA理論による科学と宗教の共存

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宗教は科学の領域に入り込むなという悲鳴

グールドの科学エッセイはクリスプなユーモアがあふれていて、評者は大好きだが、本書はそれとはだいぶ手触りが違う。この本でグールドが主張しているのは「宗教は科学の領域に踏み込まず、科学は宗教の領域に踏み込まず、それぞれ敬意をもった不干渉を保ち、穏やかで生産的な対話をめざすべきだ」という考えである。グールドはこれを「非重複的教導権の原理」(Non-Overlapping Magisteria)と術語化する。

たとえ自分が相手と意見が違っていても、「あちら」には「あちらのお立場」というものがあり、それはそれとして尊重しなければならない。自分の奉じる理説の正しさばかり非妥協的に言い立てていると話が前に進まないというのは、社会人にとってはごく常識的なことである。その「常識的なこと」をこれだけ声高に語らなければならないところまで、アメリカにおけるキリスト教原理主義の自然科学への「領域侵犯」は進行しているらしい。

だから、この本のもたらすもっとも興味深い論件はグールドの主張する非干渉原理そのものではない(申し訳ないけれど、私たちにとっては「そんなの常識」だからである)。むしろ、その「常識」が「常識」として通らない社会が現に北米大陸に存在し、そこが世界のスーパーパワーであり、かつ学術の中心であるという事実の方ではないかと思う。

アメリカは文化的出自の異なる移民たちが作り上げた異文化共生社会であり、現在でもなお文化的なイノベーションは、そのつどアメリカ社会にうまく適合できていない人たちによって担われている。この文化的な不整合を国民国家内部に抱え込んでいるという事実そのものが、アメリカの知的アクティヴィティを担保しているというふうには考えられないであろうか。そう考えると、自然科学分野で最先端の業績を現に上げている国に、進化論を否定する人たちが蟠踞して、進化論を学校で教えることを禁止させるための裁判を起こし、ID(Intelligent Design)論のようなそれなりに精緻な論によって執拗に進化論を攻撃するという奇妙な事態にも説明がつく。

地球は聖書に書いてあるとおり紀元前5000年ほど前に神によって創造されたという理論を誰にでもわかるように反証するためには、国民の科学的なリテラシーをとにかく上げていかなければならない。

進化論に誰も反対しない国(たとえば日本)と激烈な反対がある国のどちらで進化論が理論的・実証的に深みを獲得してゆくか。答えはあきらかである。アメリカはディープだ。【評者 内田 樹 神戸女学院大学文学部教授】

■2008/01/12, 週刊東洋経済

核を売り捌いた男ー死のビジネス帝国を築いたドクター・カーンの真実
核を売り捌いた男ー死のビジネス帝国を築いたドクター・カーンの真実ゴードン・コレーラ 鈴木 南日子

ビジネス社 2007-11-13
売り上げランキング : 42282


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カーン博士が築いた核兵器ビジネスの脅威

パキスタンの「核の父」と呼ばれたアブドゥル・カディール・カーン博士の核兵器ビジネスと、それを追う米英情報部(CIA、MI6)との暗闘を描いた現代国際政治の裏面史である。

現在、世界的な核拡散が深刻な問題となっており、その代表例はリビアやイラン、そして北朝鮮などによる核開発である。本書によるとこれらの国々は、世界十数カ国に張り巡らされた「カーン・ネットワーク」に頼り、原料や機材、核開発のノウハウからミサイル技術まで入手していた。一方、世界の情報機関共通の目的は、大量破壊兵器の拡散を阻止することにある。そのためCIAやMI6にとってネットワークの解明は至上命題であったが、米国政府の政治的思惑からカーンを野放しにしてしまったのである。

そもそも事の発端は1970年代のパキスタン政府による核兵器開発であり、そのプロジェクトの中心に据えられたのがカーン博士であった。政府の庇護の下でカーンは核兵器開発のノウハウを吸収し、その知識を利用して国際的な核開発ネットワークを築いていったのである。

CIA、MI6はカーンを追い続け、ついにネットワークの尻尾をつかむことに成功する。米国は様々な証拠書類をパキスタン政府に突きつけ、その核拡散ビジネスについて訴えるに至った。カーンの存在がパキスタンを危機にさらすと判断したムシャラフ大統領は、2004年2月に彼を自宅軟禁に処した。

しかしこれで問題が解決したわけではない。カーンが残したネットワークの残滓や、核物質、遠心分離機などの機材は依然行方不明のままであり、もし第2、第3のカーンが登場すれば、世界は再び核拡散危機に直面する可能性がある。国際政治の現状に対する警世の書であろう。【評者 小谷 賢 防衛省防衛研修所教官】

■2008/01/12, 週刊東洋経済

野口悠紀雄の「超」経済脳で考える
野口悠紀雄の「超」経済脳で考える野口悠紀雄

東洋経済新報社 2007-10-26
売り上げランキング : 3160

おすすめ平均 star
star7人のエコノミストがいれば、8つの異なる答がある

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経済学的な頭脳で問題を考え、解決する

法律問題について考察するうえでリーガルマインドが重要であるように、経済問題を考える際には「経済学的なものの考え方」が役に立つ。本書のタイトルにある「超」経済脳は、リーガルマインドに相当する経済学的な思考法のことである。

本書に示されている「経済学的なものの考え方」の基本をなすものは「需要・供給の法則」と「比較優位の原則」だ。ゴールドラッシュの時に一攫千金を夢見てカリフォルニアにやってきた人達の多くは、大金持ちにはなれなかったという。それは「大勢の人が一挙に集まったために、需要・供給の法則が働いて、生活必需物資の価格が急上昇した」からである。

日本の食料自給率が低いことはしばしば問題とされるが、「食料の安全供給を実現するには、自給率は低いほどよい」と著者はいう。無理やり自給率を高めようとすれば、比較優位に基づく「交易の利益」を失うことになるし、食料の供給源を多様化しておけば、天候不順による不作などのリスクを軽減することができるからである。

「超」経済脳から導かれる結論の中には、世間の「常識」(通説)からすると理解しがたい「逆説」のようなものも含まれているが、では「通説」が正しいかというと、「人々が信じて疑わない通説で常識になっている考えが、実は間違い」という事例は数多くある。本書のQ&Aの一つにも取り上げられている、村上ファンドのインサイダー取引事件の判決文の中に「ファンドなのだから、安ければ買うし、高ければ売るのは当たり前と被告は言うが、このような徹底した利益至上主義には慄然とせざるを得ない」という有名な一節があるが、このような「名文」が世に迷い出ないようにするためにも、本書は多くの人に読まれるべきである。【評者 中里 透 上智大学経済学部准教授】

■2008/01/12, 週刊東洋経済

焼かれる前に語れ
焼かれる前に語れ岩瀬博太郎 柳原三佳

WAVE出版 2007-09-21
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日本の変死体、つまり明らかな病死と見なされる以外の死体は2006年で14万9239体。このうち司法解剖された遺体は5524体。率にして3・7%。残る遺体のうち一部監察医制度のある東京などで行われる行政解剖を入れても5・7%。あとはすべて外表検査によって心不全、自殺等で処理されている。

つまり、解剖による正確な死因の特定がなされていない。こんな現実に鋭く迫ったのが本書。比較として海外ルポ(ウィーン)が掲載されているが、同地では変死体はほぼすべて解剖され、死因が特定されるという。そのことで市民の医療体制の向上だけでなく、隠された犯罪の発見にもつながっているという。

この差について司法解剖医である著者は、〔1〕日本では、警察による犯罪性の判断が最優先され、外表検査等で犯罪性なしとした場合、解剖されない、〔2〕解剖医の絶対的不足と僅少な対価(1体当たり7万円)にあると指摘する。

■2008/01/12, 週刊東洋経済

悪魔の呪文「誠意を示せ!」―悪質クレーマー撃退の50ポイント (〈シリーズ〉“負けない企業人”になるための本)
悪魔の呪文「誠意を示せ!」―悪質クレーマー撃退の50ポイント (〈シリーズ〉“負けない企業人”になるための本)深澤 直之

東京法令出版 2007-09
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おすすめ平均 star
star弁護士に任せるタイミングが大切です。
starバイブルになりえる本です
star「顧客は神様」をやめろ

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顧客からのクレームを穏便に処理することは、企業イメージを守るうえで必要な措置という常識は、間違っていると著者は語る。

「誠意を示せ!」とは、過剰な金品を求める悪質クレーマーの常套句にほかならない。

これまでの「お客様は神様だから、なるべく言うことを聞く」という間違った顧客至上主義に基づく過剰な対応は、クレーマーを利するだけで、顧客の平等原則にも、コンプライアンスにも反する。クレーマー対応のために法的根拠のない支出をすれば、背任に問われることもある。

本書で百戦錬磨の弁護士が、クレームの内容を正しく把握し内容が法的根拠のあるものかどうかを判断し、合理的な解決を図るための方法を細かく指南する。悪質クレーマーを見分けるための24の類型は有用。クレーマーにつけ込まれないための、経営陣の意識改革と情報共有化による企業側の風土改革が必要だ。

■2008/01/12, 週刊東洋経済

直筆で読む「坊っちやん」 (集英社新書 ビジュアル版 6V) (集英社新書 ビジュアル版 6V)
直筆で読む「坊っちやん」 (集英社新書 ビジュアル版 6V) (集英社新書 ビジュアル版 6V)夏目 漱石

集英社 2007-10-17
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おすすめ平均 star
star初めての読書体験
starコツをつかめば意外に読める
starよ、よ、読めない・・・(爆)

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わが国にある「文学記念館」で、いちばん人気があるのは、作家の「手書き原稿」である。明治初年期の作家であれば、筆で書かれた原稿であり、われわれが読もうとしてもなかなか判読できず、さながらパズル解きのようである。また、これが日本語かと驚くほどの奇妙な「達筆」もあり、この作家にはきっと専属の担当文選工がいたに違いない、と思ったりした。

本書は、「親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりして居る」で始まる、漱石が40歳のときに3週間で書き上げたといわれる青春小説の傑作『坊っちゃん』の直筆原稿を写真版で完全収録したものである。

「意外と読みやすい肉筆だ!」これが第一印象である。また、文学記念館などでよく見かけるように、あまり書き直しをしていない。自信の表れというべきであろう。

作家の肉筆はほぼ過去の遺物となる運命にある。今後も貴重な手書き原稿の出版が期待される。

■2008/01/12, 週刊東洋経済

技術経営・歴史の検証 [MOTテキストシリーズ] (MOTテキスト・シリーズ)
技術経営・歴史の検証 [MOTテキストシリーズ] (MOTテキスト・シリーズ)桑原 裕/丸山 瑛一 野中 郁次郎

丸善 2007-11-01
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日本の産業は戦後、多くの分野で世界をリードする優れた技術・製品を数多く生み出してきた。

これらのイノベーション実現には、外から見える華々しさとは裏腹に、開拓者たちの血のにじむ辛苦の連続があった。

本書では、世界をリードする主な先端産業を紹介する。元シャープ副社長・浅田篤氏がデジタル家電、エルピーダメモリ取締役・牧本次生氏が半導体産業、本田技研工業顧問・西田通弘氏が自動車産業、マイクロソフト顧問・田中芳夫氏がパソコン産業、東大名誉教授・伊藤良一氏が半導体レーザー、日立製作所フェロー・小高俊彦氏がコンピュータ産業の秘話をそれぞれ解説する。

当事者ならではの今だから話せる開発・販売秘話を通して、「日本発技術経営」の神髄を浮き彫りにしていく。経営者のみならず、ものづくり(研究開発)の現場で従事している人にとっても、目からウロコの話題が満載である。

■2008/01/12, 週刊東洋経済

僕のアルバム
僕のアルバム植田 正治

求龍堂 2007-11
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おすすめ平均 star
star写真家の妻の本として傑作

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鳥取砂丘をスタジオに愛妻を撮ったモダニスト

家族の写真をいつまで撮っていただろうか。子どもの誕生をきっかけに始める記念写真も、成長につれて枚数は減り、やがて嫌がられるようになってしまう。妻は母となり、旅にでも出ないかぎりレンズを向けることを忘れている。山陰地方の港町から生涯離れることなく妻と子どもを撮りつづけた男がいた。

白いトーンのモノクロ写真に家族が点景のように写っている。場所はいつも鳥取砂丘。何もない空間はまるでスタジオのホリゾント(白壁)だ。和服に日傘、学生帽に自転車、おかっぱ髪と花束と、被写体は日常でありながらその映像は寺山修司の芝居のようで、またシュールレアリスムの味わいもある。「植田調」というこの写真、いまも静かなブームを呼んでいて海外でも評価が高い。

植田正治は大正2年、鳥取県境港市生まれ。中学時代に写真の魅力にとりつかれ、短い期間東京で写真を学び、19歳で地元に写真館を開業。だが生業にあきたりず写真雑誌に投稿をつづけて名を知られる。戦前日本の写真表現をリードしていたのは関西の作家達だったが、山陰にこだわる植田は岡山の石津良介とともに「中国写真家集団」を創設する。石津は東京のメディアに強いパイプがあり(VANジャケット創業者の石津謙介は弟)、植田は地方でもモダニズムの養分を吸収していた。

著者を支えたのが妻だった。彼女は詩歌好きで夫のモデルにもなる。「妻がさきにいってしまった」。本書はその亡き妻を軸にして、1935年から50年ころの作品で構成されている。植田は2000年、87歳で亡くなり、この未整理のネガが発見された。妖精のような妻の顔が頁を閉じても瞼に残る。【評者 写真家 中川道夫】

■2008/01/12, 週刊東洋経済

東京 社用の手みやげ 贈って喜ばれる極上の和菓子
東京 社用の手みやげ 贈って喜ばれる極上の和菓子宮澤 やすみ

東洋経済新報社 2007-12-14
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ビジネスに使える和菓子

得意先へのご挨拶、依頼やお詫びにうかがうとき、手みやげを持っていくことは多いだろう。しかし、相手の好みや状況を考えると、どのようなものを持っていくべきか悩むこともまた多いはず。

そのようなときに、便利な本が出た。『東京 社用の手みやげ』(宮澤やすみ著)がそうだ。

本書は単なるガイドブックではなく、目的別、状況別に分け、東京のおいしい和菓子を紹介するという便利な本だ。

たとえば、初対面のときには空也の「空也もなか」、大事な依頼をするときには塩瀬総本家の「本饅頭」、女性の多い職場には花月の「かりんとう」といった具合に、その目的に合ったページをめくれば、ぴったりの和菓子に出合えるのだ。

また、本書は写真も美しい。和菓子のカラー写真を見ながら、名菓の由来などを読むと、すぐにでも買いに行きたくなる衝動に駆られる。

巻末の「キーワード索引」も便利だ。「日持ちする」「個包装で配りやすい」など、10項目に分類されている。

受け取る側のことを考えながら選べる工夫がされていて、読者にとってはありがたい。

年末年始などのご挨拶回りに、本書を活用してみてはいかがだろうか。

■2008/01/12, 週刊東洋経済

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