メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2007年9月8日~9月15日
| 経済財政戦記―官邸主導小泉から安倍へ | |
![]() | 清水 真人 日本経済新聞出版社 2007-06 売り上げランキング : 20197 おすすめ平均 ![]() 2007年最高のノンフィクション! なるほど、そうだったのかい! まあまあAmazonで詳しく見る by G-Tools |
「与謝野の方程式」をめぐる上げ潮派と増税派の攻防
「要対応額 歳出削減額=増収措置」。本書はこの等式(与謝野の方程式)をめぐる「上げ潮派」と「財政タカ派」の攻防の記録である。2005年の郵政解散を経て、小泉内閣の重点課題は財政健全化の道筋をどのように付けていくかという点に移ったが、そこで焦点となったのは消費税率の引き上げを、いつ、どの程度の幅で実施するかということであった。
「小さな政府」を指向し、歳出削減を重視する竹中平蔵総務相と中川秀直政調会長は、「上げ潮政策」によって成長率の引き上げを図れば「増税なき財政再建」も不可能ではないとのスタンスであったが、与謝野馨経財相と谷垣禎一財務相の「麻布連合=財政タカ派」には、「上げ潮」路線は「堅実な前提」を欠いた「楽観説」と映った。
要対応額(自然体の歳出増を考慮したうえで、2011年度におけるプライマリーバランスの黒字化を達成するために、歳出削減と増税で対応することが必要な額)を見積もり、このうち歳出削減で対応可能な分がどれだけあるかを考えれば、増税の必要性が自ずと明らかになる。これが「与謝野の方程式」の含意であったが、「竹中・中川ライン」からすれば、このロジックは「増税バイアス」そのものにほかならなかった。
面白いのは、一見すると経済政策のテクニカルな論点をめぐる対立と思われるこの論争が、実はポスト小泉をにらんだ政局の主導権争いと絡む「政策闘争」でもあったということだ。
安倍政権の実現に向けてスムーズに事を運びたい「竹中・中川ライン」。「歳入改革」を含む財政健全化を旗印に、ポスト小泉に名乗りをあげようとする谷垣財務相。二階俊博大臣の下、「新経済成長戦略」で復権を果たしたい経産省。この微妙な勢力均衡の下で間合いを計り、政権の総仕上げを進めていこうとする小泉総理。「与謝野の方程式」をめぐる政策論争は「政治色を帯びる宿命から逃れられない」のである。
本書でなされている重要な指摘の一つは、郵政選挙を境に政策決定プロセスが、「官邸対抵抗勢力」という「対決型」から、政府・与党一体の「協調型」に移行したということである。
竹中総務相はこの変化を「諮問会議が改革のエンジンではなく、アリーナになってしまった」と評したが、「協調型」への移行を契機に、経済財政運営をめぐる政治力学が微妙に変化していく様子はとても興味深い。
小泉総理の退任から1年が経過しつつある永田町の風景は、本書に描かれたものとはだいぶ様変わりしたようだ。「官邸主導」はこの先、どのように変わっていくのだろうか。【評者 中里 透 上智大学経済学部准教授】
| 「女性自身」が伝えたアメリカの戦争―ベトナムからイラクまで | |
![]() | 松田 優 寺坂 有美 大正大学出版会 2007-05 売り上げランキング : 448048 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
戦争を女性誌はどう伝えたか 時代の変化を切り取る
本書は、ベトナム戦争・湾岸戦争・イラク戦争という、アメリカが始めた三つの戦争に関する報道のありようの研究書であり、また貴重な資料集でもある。
編著者の一人、松田優氏の卒業論文がベースである。女性を読者対象にした場合、通常の報道とどんな違いがあるか、というのが研究意図である。
その対象に『女性自身』を選んだのはベトナム戦争以後の全バックナンバーが入手できたからだというが、その選択は間違っていなかったといえる。
収集された記事は、ベトナム戦争が69本。湾岸戦争37本、イラク戦争36本。
ベトナム戦争では、戦場の残虐な写真や記事が多いが、当然ながら女性や子供を中心にしたものである。それは「私たちの想像する“戦争”を報道する傾向」があったからだという。だが湾岸戦争になると、戦場の記事よりも日本に関する記事が増える。イラク戦争になるともっと極端で、全体の4分の3に及んでいるという。ベトナム戦争はまさにアメリカの戦争だったが、湾岸以後は日本も直接参加している。その違いであろう。
ベトナム戦争では、マスメディアは、世界に〈リアル〉な戦争を伝えたが、湾岸・イラク戦争では、人が死ぬという戦争の〈リアル〉な部分は報道されなくなったという。だが『女性自身』は、マスメディアの変化に連動しながらも、芸能人やスポーツ選手に反戦の思いを語らせるという方法で、終始反戦の姿勢が貫かれていたという。
収録された記事を読んでいると、日本という国の変化がよく見える。同時に、報道を受け取る側の変化も見える。そこに本書の価値がある。解説や分析が少なく、記事そのものがきちんと収録されているのがすばらしい。本書の価値は、後になればなるほど高まるだろう。【評者 仲倉重郎 映画監督】
| トヨタとインドとモノづくり―トヨタ流インドビジネスの真髄 | |
![]() | 島田 卓 日刊工業新聞社 日刊工業新聞社 2007-03 売り上げランキング : 6271 おすすめ平均 ![]() あえて性善説でAmazonで詳しく見る by G-Tools |
世界一難しい国インドで成功するためには
GMを抜いて今まさに世界第1位の自動車メーカーになろうとしているトヨタ自動車。しかし、そのトヨタでさえ一度は撤退を余儀なくされた国、それがインドだ。最近「中国の次はインド」という話をよく聞く。インドに興味を持つ日本企業が増えてきたが、インドで成功するのは容易なことではない。
トヨタ自動車は1984年にインドに進出したが、94年に撤退。97年に再度挑戦することになった。本書は生産部門の責任者宝田和彦氏、販売部門の責任者河端正彦氏の二人を中心にトヨタがインドで成功するまでを追っている。
宝田氏はインドネシアやタイで新工場を立ち上げた実績を持つが、それでもインドでは苦労の連続だった。現地パートナーは自動車生産の経験がないし、労働者は自動車を運転したこともない。宝田氏は「能力はあるが、それを発揮する機会を与えられていない若者が、世界で一番多い国」とインドを表現し、人材教育に取り組んだ。一方の河端氏は中国で販売網を確立した実績が評価されてインドプロジェクトに抜擢された。
トヨタが海外で車を売る時はまず、日本で造った完成車の輸出から始まり、徐々に販売網を広げていく。いざ、現地生産を開始した時にはその販売網を使えばいい。しかし、インドでは新工場で生産した車を販売する体制をゼロから作らなければならず、しかも与えられた時間は2年を切っていた。
著者は元東京銀行ニューデリー支店次長で、現在はインドビジネスのコンサルタント会社社長。トヨタのインドプロジェクトに外部スタッフとして参加していた。本書は「インドビジネスの実践編」として日本のビジネスマンに役立つのはもちろん、異文化交流との視点から読んでも興味深い。
| リサイクルは資源のムダ使い--地球に正しい生活マニュアル | |
![]() | 小若 順一 食品と暮らしの安全基金 講談社 2007-06-28 売り上げランキング : 14751 おすすめ平均 ![]() 常識について考えさせられる本 タイトルと中身にずれがあるが、読む価値はあるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
簡単に燃えるプラスチックを、燃えないゴミに分別する。ペットボトルをわざわざ石油を使って繊維に再生する……。省エネ・省資源からみると原理的に「正しくない」ことが「正しい」とされていると、著者は警鐘を鳴らす。本書は、そうした常識を覆す「異説」を紹介しながら、地球環境問題について、いかに「的外れな対策」が採られているかを詳らかにしていく。
たとえば、クリーンな自然エネルギーとして急速に普及している「太陽光発電」。しかし、太陽光発電システムを造るには実際、大量の石油が消費され、決して環境に負担は少なくないという。
タイトルは『リサイクルは資源のムダ使い』だが、食料、大気汚染、省エネまで、「エネルギーを無駄に使わない」ための知識を複数紹介しながら、地球といかに付き合うべきかを提案する。「エコ」や「リサイクル」=「正しい」という風潮を客観視するためにも、一読する価値はある。
| ひとの役に立つ人間になりなさい。徳は才に勝る。―人生でもっとも大切な2つの訓え | |
![]() | コウ チョン ヘソン 蓮池 薫 海竜社 2007-08 売り上げランキング : 9052 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
韓国は日本をはるかに上回る学歴社会だ。ソウル大学を頂点に、延世大学、高麗大学など日本でも知られている有名大学への進学を目指して、親も子も血眼になる。1997年の韓国通貨危機以降は、ソウル大学の上にアメリカの名門大学が座ってしまったようだ。
著者の子ども6人は、全員がハーバード大学、イェール大学、MITなどの名門大学を卒業して、活躍している。
著者は子どもたちに「ひとの役に立つ人間になりなさい。徳は才に勝る」という「人生でもっとも大切な二つの訓え」を言い聞かせて、育てたことが、子どもが名門大学に進学し、その後も社会で活躍する原動力になったと語る。
子どもを育てる心構え、コーチングが詰まった有益なエッセイだ。日本人にも有益なアドバイスが多い。
家庭の文化、読書環境が子どもの学習能力を決めるため、家庭内図書室の提案もする。訳者は拉致事件の被害者・蓮池薫氏。
| もう、国には頼らない。経営力が社会を変える! (NB Online book) | |
![]() | 渡邉 美樹 日経BP社 2007-06-28 売り上げランキング : 927 おすすめ平均 ![]() ちょっと感情的な本 泣ける よくぞ言ってくれました渡邉社長Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ワタミの経営だけでなく、日本経団連理事や「教育再生会議」有識者委員など、財界、政界の活動にも積極的に携わる渡邉美樹氏。本書は渡邉氏が、多くの事業分野に参入してきた経験から、そこに一貫する「経営力」で社会は変えられると説く一冊である。
渡邉氏の主張は明解だ。学校や病院、老人ホームなど「官」が整備してきたが、今ほころびが目立つ公的サービスも、「お客様に満足を提供する」という「民の経営手法」で改革は可能だというのである。
確かに、居食屋「和民」だけでなく、学校法人・郁文館夢学園、岸和田盈進会病院、「ワタミの介護」などの経営で実績のある渡邉氏の主張だけに、「民の経営力」への評価には説得力がある。しかし、食の偽装問題や介護報酬の不正請求など、「民任せ」への信頼が揺らいでいるのも事実である。官対民の単純比較でなく、「誰のためのサービスか」という原点に立ち戻ることが必要なのだろう。
| 正倉院の謎 | |
![]() | 由水 常雄 魁星出版 2007-06-30 売り上げランキング : 69426 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
正倉院といえば、日本文化の精華である7、8世紀の貴重な宝物が勅封によって守られてきたことに、日本人であれば誰も疑問を挟まないであろう。事実、イギリスの歴史学者アーノルド・トインビーは「7、8世紀のさまざまな遺品を、あれほどまでに数多く、しかも完璧な姿で保存されてきた正倉院の宝物は、まさにかけがえのない“宝石”である」と賞賛している。
だが、『東大寺献物帳』から始まり、昭和に至るまでの各時代の宝物目録を調査した著者によると、大量の宝物が亡失し、また新規に納入されているという。
具体的には、現在、聖武天皇の遺品は、4分の1に満たない、150点ほどであり、しかも宝庫には1万点余りの宝物が収められている。それは、明治以降、各時代の政治権力者たちが、敗戦直後のGHQも含めて、決まって正倉院を開封させたことと無関係ではないようである。一刻も早い事実の解明が待たれる。
| 熱湯経営―「大組織病」に勝つ (文春新書 586) | |
![]() | 樋口 武男 文藝春秋 2007-08 売り上げランキング : 4508 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く 『熱湯経営』(文春新書)を書いた大和ハウス工業会長CEO 樋口武男
社内を熱くしてやる気を引き出す
――「熱湯経営」の内容を教えてください。
「ぬるま湯経営」の反対です。ぬるま湯だと気持ちが良くて、そこから逃げ出せなくなります。だが、やがてゆでガエル状態になって最期を迎えます。そうではなく、最初から熱湯をかけると、社員は釜から飛び出し、しゃきんと動きます。人間は強い刺激を加えられると、本能的に反応し、生き残ろうとします。これを経営者が応用することで、会社を良くすることができます。「熱湯経営」で「大組織病」を克服できます。
――バブル崩壊後、赤字になり、多額の有利子負債を抱えて、債務超過に陥っていた大和団地を8年間で見事に再建します。
私が1993年に大和団地の社長になったとき、社内はお公家さん集団と化し、本当に「ぬるま湯経営」でした。私は社内に熱湯をかけて、エネルギーを引き出そうとしました。現場を回り、管理職は全員と一対一の面接。それ以外の社員とはグループで話し合いました。会社を熱湯にしたら社員900人の会社で120人が辞めました。
そんなものは中途採用、新卒採用で簡単に補充ができます。あえてリストラをしなくとも、従業員の入れ替えができました。
私が社長を務めた期間に、市場環境は悪くなる一方なのに、売り上げは2・3倍になり、利益も大きく伸びました。 社員のやる気さえ引き出せば、大きな成果が出ます。
――2001年には再建がなった大和団地と大和ハウスが合併し、樋口さんが大和ハウスの社長になります。
みんなびっくりしました。子会社に出た役員が戻ったことはなかったから。私が出ていた間に、本社もかつての野武士集団から、お公家さん集団に変わっていました。
これではいけない。私は「熱湯」をかけて、社内の活性化に取り組みました。17年間続いた事業部制を廃止して、支店長に人事権や投資の決裁権を与えて、それまでの上を見るばかりの「ひらめ社員」撲滅を図りました。
支店長に大きな権限を与えることで、人材の活性化も実現できます。能力の差はやる気の差です。やる気が出れば、経営資源は同じでも大きな結果が出ます。
――本書は単に樋口さんと大和ハウスの軌跡を書いただけでなく、他の企業の経営者や社員が教訓を得られる内容になっています。
組織を活性化し、大きな成果を上げることが経営者の役割です。大和ハウスには石橋信夫さん(故人)という偉大なオーナーがいて、私を支えてくれましたが、普通のサラリーマン経営者でも志があれば、同じことができます。
企業の盛衰を決めるのは経営者の資質、能力です。若い社員に勧めたいことは、自分の会社の経営者を見て、これは将来がないな、と思ったら思い切って転職することです。そうした会社に限って、「ぬるま湯」で居心地は良い。だが、自分の将来もない。
私は大学卒業後、中小の鉄鋼商社に入りました。高度成長期、何もしないでも売り上げは伸び、楽な会社でした。でも、これではだめだと考え、入社2年で転職したのです。
| ナショナリズムの由来 | |
![]() | 大澤 真幸 講談社 2007-06-29 売り上げランキング : 1315 おすすめ平均 ![]() 壮大な失敗作!?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ナショナリズムの二重規範を解明した大作
大澤社会学の真骨頂。延べ15年にわたる構想を経て誕生した記念碑的労作である。現代のあらゆる思想を通観し、自らの理論体系を縦横無尽に拡張しながら現代史を踏破する。そのスリリングな知性の結晶化に、私は心底、感動を覚えた。
2000枚に及ぶ大作ではあるが、読み始めたら止まらない。最近の思想の動向が明快な構図の下に立ち現れ、その背後にある根本原理は、本書の理論なのだということがわかってくる。
著者によれば、ナショナリズムの本質は、遠心化(普遍化)作用に対する防衛機制にある。
たとえばナショナリズムは、「人々はみな平等に扱われなければならない」という普遍主義を掲げる一方で、その範囲を制約しつつ、特殊主義の信仰へと反転してしまう。ナショナリズムはきわめて近代的・普遍主義的な現象でありながら、主観的には古代から続いてきた実体とみなされ、信仰の対象にもなっている。
こうした普遍主義と特殊主義の二重規範においてとらえてみると、ナショナリズムとは、つまり二つの規範がもたらす運動であって、その背後には資本主義のダイナミズムがある。
私たちの経験可能領域(規範的地平)は、資本主義の運動と共に拡張されるが、その地平を具体化する求心力によって、ナショナリズムは生まれ、成熟し、そして現在、乗り越えられようとしている。
むろんナショナリズムは、簡単には乗り越えることができない。たとえばフランス人は、「フランス人であることによって真のヨーロッパ人になる」のであって、最初から無媒介にヨーロッパ人という普遍的価値を実現することはない。私たちは、現代社会がいかにグローバル化しようとも、ナショナリズムへのコミットメントなしに、普遍的な価値を担うことができない。
国民国家は不十分な単位であるが、アイロニカルな仕方であれ、そこに没入しなければ普遍的価値を実現できない。なぜなら資本主義は、私たちの経験可能領域を広げていく一方で、同時に個人の存在根拠を侵食してしまうからである。この侵食を防ぐには、ナショナリズムであれ原理主義であれ、意味を与える共同体を求めるほかない。
しかし著者によれば、逆説的なことに、私たちの内密な核を「敵対的な他者(異邦人)」が担うという反転が生まれている。自己の中核を、敵が占め始める。この逆説がさらなる現代史を駆動する、というのが本書の診断だ。ではナショナリズムや原理主義を超える理路とは何か。著者はキリストへの逆説的な愛のなかに見出している。【評者 橋本 努 北海道大学経済学部准教授】
| ジャック・ウェルチの「私なら、こうする!」 | |
![]() | ジャック ウェルチ スージー ウェルチ 斎藤 聖美 日本経済新聞出版社 2007-04-20 売り上げランキング : 2560 おすすめ平均 ![]() 箴言集、深みはないが洞察に満ちている 真摯で明快な回答 真剣に、しかも的確にAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ビジネス、そして人生で成功する知恵が詰まった本
GEのCEOとして巨万の富と名声を得て、若い女房ももらって、もう説教なんかしなくても良いではないかと言いたいが、この説教がめっぽう面白い。世界中から寄せられたビジネスや人生の悩みについての質問への答えは率直で具体的で鋭い。
若い学生に「どんなカルチャーでも、若者がリスクを取って失敗するのに寛大なところがある、この利点を活かさないでどうする」と簡単に起業を勧める一方で、すでに働いている人間には、起業の困難さを嫌になるほど解説する。
年長の部下への対処の仕方、解雇の難しい国でどう人員整理をするのか、同族企業の問題、優しい上司の弊害、ほとんどのボスは組織のいろいろな問題に気を取られ売り上げの重要性は中ほどか下の方になっている、社内政治の弊害など、日本が特殊だなどとは思えない質問が並ぶ。ボス嫌いや不満家がなぜダメかを簡明に述べる。
必要なのは率直さだと何度も繰り返す。本書にも率直さが横溢している。女性が昇進できない理由を問われて、「ビジネス界は男女差別の世界だからだ」と答える。小さな会社でどこまで情報をオープンにすべきか、社員の愚痴を止める法、という問いへの答えも感心した。
ウォルマートに反対する人は、ありもしなかったノスタルジアを語っていると言う。小さな町でいちばん豊かな人はお店のオーナーだが、その店で働く人は健康保険に加入させてもらってはいなかったと指摘する。
ビジネスで勝利できなかったらどうしたらよいのか。本書は人生で勝利する方法も教えている。前向きに考え、自分の選んだ人生を送ることだという。
本書は、ビジネスのみならず、アメリカ的生き方の真髄を語っている。確かに、成功するための知恵が詰まっていると思う。【評者 原田 泰 大和総研チーフエコノミスト】
| 「洋酒天国」とその時代 | |
![]() | 小玉 武 筑摩書房 2007-05 売り上げランキング : 12497 おすすめ平均 ![]() 酒に酔い、作家に酔い、時代に酔う 「遊びを遊ぶな、真剣に遊べ」Amazonで詳しく見る by G-Tools |
昭和30年代、日本に勢いがあった時代の華麗な物語
昭和31年、経済企画庁の「戦後は遠くになりにけり」というスローガンがうたわれ、TVでは、「チロリン村とくるみの木」「スーパーマン」が始まった年。「トリスバーで配るマッチの代わり」に、洋酒の寿屋、後のサントリーのPR誌『洋酒天国』が発行された。表紙を飾った柳原良平のイラストレーション「アンクルトリス」が異様に目立った。これは、寿屋のPR誌だったが、会社のコマーシャル色を一切排除し、面白くて、ためになり、博識とプレーを兼ねたものを目指していた。これを許した寿屋。「やってみなはれ!」という佐治敬三社長の名言。これは戦後の日本人が模索しながらも進むべき「フロンティア・スピリット」を示唆していたのだ。
初代編集長は当時25歳の開高健、2代目編集長は山口瞳。この雑誌に書かれたテーマは、香水、西洋骨董、エッセイ、おつまみ、やがて世界旅行、洋風生活、ファッション、銀座の高級バー。そしてその書き手は、植草甚一、淀川長治、薩摩次郎八、埴谷雄高、山本周五郎、織田作之助、大岡昇平、金子光晴、小松清など、文学が熱かった時期だった。雑誌は、時代から一歩か二歩先んじる、時代の牽引車だったのだ。当時を回想して開高健は、「一言で言えば、血まなこで遊んでいたのだ。奇妙な表現だけど、私たちは血相を変えて“楽しい!”と叫んでいた」と述べている。さすが「雑誌狂」の異名をほしいままにした連中である。
この雑誌の編集に途中から携わった本書の著者も「空気の濃い時代であった。いかに貧しくとも、どこかに充実感があった」と結んでいる。そして、昭和39年、そう、東京オリンピックが開催された年。『洋酒天国』は、61号で終刊した。時代が終わったのである。【評者 川成 洋 法政大学工学部教授】
| 沖縄密約―「情報犯罪」と日米同盟 | |
![]() | 西山 太吉 岩波書店 2007-05 売り上げランキング : 4024 おすすめ平均 ![]() ヒラメ判事よ! これでもまだ国家の番犬でしかないのか!? これって、その通りでしょう。 「密約」の政治的経済的理由Amazonで詳しく見る by G-Tools |
1965年8月、戦後初めて沖縄を訪問した佐藤首相の「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、わが国にとって戦後は終わらない」というメッセージが、本当かどうか。沖縄へ行ってみれば誰でもわかるはず。
本書の著者(当時毎日新聞政治部記者)が、沖縄返還交渉の取材中に「沖縄密約」をスクープする。沖縄返還の代わりに、米軍の基地を存続させ、しかも日本が費用を“肩代わり”するという「密約」であった。
国会の予算委員会でもこの「密約」の存在について政府が追及された。
著者とその情報を流した女性外務事務官は、「機密漏洩」として断罪され、有罪の判決を受ける。そして政府はこの「密約」の存在を認めていない。本書は、豊富な資料を基に、国民の知る権利を隠蔽する政府とその広報的役割を果たしたメディアの「情報犯罪」であり、こうした構図は、現在のテロ特措法まで、なし崩し的に続いている、と鋭く告発している。
| 携帯から「金」をつくる!―“都市鉱脈”発掘のパイオニア・横浜金属の挑戦 | |
![]() | 相原 正道 ダイヤモンド社 2007-06-01 売り上げランキング : 303659 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
金といえば南アフリカの金鉱山を連想するが、廃棄された携帯電話は金鉱山より30倍も含有率の高い優秀な鉱脈だという。
古代から装飾品や貨幣として尊重されている金だが、その変質しにくい、電導性が高いなどの特性から 半導体など情報通信産業にとってなくてはならない素材になっている。
携帯電話には半導体やリードフレームなどに多量の金が使用されている。この携帯電話が数年で捨てられ、金の都市鉱脈になっているのだ。携帯電話だけでなく、パソコンなどにも多量の金が含まれている。
今や世界最大の金鉱山は南アフリカではなく、東京にあるのかもしれない。
著者は資源リサイクルを営む横浜金属の軌跡を通じて、都市型の資源リサイクルを解析する。
本書は横浜金属という企業のPR本のようにも見えるが、あまり知られていない金のリサイクルや環境問題について考えさせる本になっている。
| 株式会社という病 (NTT出版ライブラリーレゾナント 34) | |
![]() | 平川 克美 エヌティティ出版 2007-06 売り上げランキング : 4654 おすすめ平均 ![]() いっぱい集めたら一番賢い? 問題点を整理できる良質なまとめ本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者は哲学者内田樹氏の同級生であり、早稲田大学理工学部卒業後、一緒にベンチャービジネスを立ち上げた仲間でもある。その著者が株式会社について書いた本である。
中身は本格的な論文というよりエッセイだが、経営者としても経験を踏まえ、株式会社についての本質的な論考を行っており、なかなか面白い本になっている。株式会社に所属し、日々激務に追われているサラリーマン、経営者がふと立ち止まり、自分は何のために働いているかを考える材料になる。
「専門書は人間の内面と会社の関係について教えてくれない」と著者は語る。
この問題意識から、株式会社について考えているのが、本書の肝である。
考えれば考えるほど株式会社は奇妙な存在である。 その奇妙な株式会社からなぜわれわれは心理的にも逃れられないのか、こうした問いかけと論考が続く。著者の結論はないが、思考を深める土台にはなる。
| 日本刀―日本の技と美と魂 (文春新書 (571)) | |
![]() | 小笠原 信夫 文芸春秋 2007-05 売り上げランキング : 16749 おすすめ平均 ![]() 堅い専門書か?Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「一本の刀も無限の歴史を語る」と言ったのは、かの明治の宰相伊藤博文であった。愛刀家の博文は、1909年のハルピン行きに際しても、名刀当麻国行・来国次の短刀を携え、和泉守兼剣を仕込杖にして持って行き、常時それを離すことはなかったという。博文の死後作成された博文所蔵の刀剣類の目録によると、行平・行光といった国宝級の名剣が数十振り含まれている。
精神的支柱としての日本刀を歴史の流れの中でとらえている本書によると、戦の道具から、ひとかどの人間であることの象徴として平時でも携える習慣が長く続き、明治以降、刀剣は実社会では無用の長物になったが、それらへの趣味が知性教養のメルクマールとなっていることを社会的に認められていた、という。
本書の圧巻は、名刀の代名詞として世に広く知られている「正宗」という刀工について詳らかにしている「第四章正宗出現」である。


2007年最高のノンフィクション!
まあまあ



タイトルと中身にずれがあるが、読む価値はある







これって、その通りでしょう。



