メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2007年4月28日~5月12日

資産運用会社のビジネスモデルとモジュール戦略
資産運用会社のビジネスモデルとモジュール戦略大塚 明生

金融財政事情研究会 2007-01
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資産運用の最先端とモジュール戦略の有効性

著者は住友信託銀行常務執行役員で、同行の資産運用部門を担当している。

これまでにも、2001年以降、『戦略的年金経営のすべて』『運用難時代を切り拓くオルタナティブ投資』『デフレ時代の年金資産運用』と、立て続けに資産運用戦略についての著書を刊行している。

その著者が前著『続オルタナティブ投資』で提唱した「モジュール戦略」の有用性をあらためて解説している。

ニッチな分野に特化したブティック型運用会社であれば自社が開発した運用商品だけ(つまり、プロダクト・アウト)で十分かもしれないが、大規模な運用会社では顧客、市場が求めているものに応えていこうとする姿勢(つまり、マーケット・イン)がどうしても必要になる。

マーケット・インの立場を取れば、自社の運用商品(インハウス・プロダクト)だけでなく、他社の運用商品(アウトソーシング・プロダクト)も積極的に活用するオープン・プラットフォーム戦略が有力なビジネスモデルになる。

このオープン・プラットフォーム型マルチ・プロダクト・マネジャーが、さまざまな投資家ニーズに応えようとするとき有効となるのが「モジュール戦略」である。

「モジュール」という概念はIT業界では浸透しており、「一定の規格に基づく部品を集めて、製品やシステムをまとまりのあるものとして機能させる」ことを意味する。

本書では、個々の資産運用商品を部品と見立てて、資産運用にもこの概念を導入することにより、投資家にとって多様化する資産運用ニーズに合わせたポートフォリオを構築することの有用性を説いている。

こうした「モジュール戦略」の有用性と併せて、さまざまな投資家の運用ニーズに応える資産運用会社のひとつのあり方を、著者の長年の経験を踏まえて、示している。

金融業界における昨今の流れであるメガグループ化の下で、資産運用についても規模重視の考え方がある。

しかし、資産運用会社の成功の条件として重要なのは、「ブランド」の確立である。住友信託におけるビジネスモデルを具体例をもって開示していることは驚きであるが、トヨタ生産方式が分かっても誰もがトヨタになれないのと同じで、それを開示したからといって誰もが住友信託になれるわけではないとの自信があるのだろう。

資産運用分野の最先端で現在何が起こっており、それに対していかなる対応がとられつつあるかを理解するには最適の一冊である。【評者 田谷禎三 立教大学経営学部特任教授】

■2007/05/12, 週刊東洋経済

M&A 賢者の意思決定―成功企業に学ぶ4つの基本原則
M&A 賢者の意思決定―成功企業に学ぶ4つの基本原則デイビッド・ハーディング サム・ロビット 山本 真司

ダイヤモンド社 2007-02-17
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おすすめ平均 star
star総合評価では、良書です。

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投資銀行に騙されずM&Aを成功させるには

日本でもM&Aが活発化している。確かに日本企業にとっても、今後、自社の持続的成長のためにM&Aが有力な手段の一つになることは間違いない。しかし、その一方でM&Aの7割が失敗に終わっているという厳然たる事実も存在する。

ではどうしたらM&A成功の確率を上げることができるのか。本書では、経験豊富なコンサルタントが、豊富な調査結果や事例から、非常に論理的かつ明快にこの答えを導き出している。興味深いのは、企業をくっつけたりバラバラにすることで多額の報酬を得ている投資銀行には騙されるなと警鐘を鳴らしている点だ。

本書では、継続的に多数の小規模なM&Aディールを経験している企業のほうが、成功確率が高いとし、そこから成功のための四つの基本原則を導き出している。中でも、M&Aには「投資テーマ」が重要なこと、デューデリジェンスをやりすぎて困ることはないこと、企業文化の統合の問題がディールの成否を左右しかねないこと、統合後うまくいかない場合は早期撤退の勇気も必要なことを指摘する。

特に、企業文化の問題は、とかく財務的な側面に焦点が当てられ、人・組織の問題は疎かにされがちなだけに重要だ。

本書の最後で訳者が日本企業向けにまとめた七つの警告は、どれも示唆に富んでいる。しかし考えてみればどれも当たり前のことばかりだ。結局のところ、「基本に忠実」なことが成功の最大の秘訣といえるようだ。

日本はまだまだM&A発展途上国だ。1980年代の米国の二の舞いにならないためにも、そして狡猾な投資銀行や買収ファンドに翻弄されないためにも、企業の経営者、社内M&Aチームは自己研鑽に励む必要があり、本書は必読書といえよう。【評者 黒田康史 YSコンサルティング代表】

■2007/05/12, 週刊東洋経済

父・宮脇俊三への旅
父・宮脇俊三への旅宮脇 灯子

グラフ社 2006-12
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おすすめ平均 star
star真実を知るのははたして?
star娘の視点。家族にしか見せない顔
starまるで続編を読んでいるよう

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長女が発見した紀行作家・宮脇俊三

国鉄全線を完全乗車したドキュメント、宮脇俊三著『時刻表2万キロ』は画期的な本であった。鉄道マニアの趣味的報告でしかなかったものを、「紀行文学」に押し上げた宮脇俊三の功績は実に大きい。そのおかげで鉄道の旅への想いを呼び覚まされた者は多いだろう。

氏は、1978年、52歳の時、編集者の職を捨て、紀行作家になった。それまでは、休日に「ひとりで鉄道に乗り、黙って景色を眺めるという自己完結型の旅」をしていたのだが、以後は鉄道に乗り歩くことが仕事となった。だが本にはするが家族に語ることはなかったので、宮脇家の子どもたちは父親の旅行には関心がなかった。

作家になってからの旅は、もはや趣味ではない。それだけに「旅を書く」ことには相当うるさかった。一日の旅は、もちろん一日では書き終わらず、何日も推敲を重ねていた。お酒が大好きで「ちびちびやりながら書いていた」ので、「時刻表のような正確さとは程遠く、常に乱れたダイヤで執筆は進行し」、晩年はそれが嵩じてアルコール依存症になっていたという。

長女の著者が父親の書くものに関心を抱くようになったのは、畑こそ違え編集者になってからである。そのせいか、ここに描きだされた宮脇俊三は、必ずしもファンを満足させてくれるものではない。ファンとしては、時刻表と地図に囲まれて飄々と生きていたと思いたいのだが、そうはいかなかった。だが、著者が父親を愛していたということは、とてもよく伝わってくる。父を書くことは父を発見することであり、「父への旅」なのであった。帯の文句が言い得て妙である。「父の終着駅は、娘の始発駅」。

鉄道ファンにとっても宮脇家の子どもたちにとっても、「宮脇俊三」は永遠なのである。【評者 仲倉重郎 映画監督】

■2007/05/12, 週刊東洋経済

できる会社の社是・社訓
できる会社の社是・社訓千野 信浩

新潮社 2007-04
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おすすめ平均 star
star創業者の生き様が目に浮かぶような社是・社訓はやっぱりイイッ!
starサクッとコンプライアンス本

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会社は自然人と違って、倒産しない限り寿命のない法人である。会社の構成員や従業員は変化するが、会社には遺伝子やDNAがあるのではないかと思うことがある。

創業者が会社を興すにあたり、社是・社訓をつくるが、強い会社にはこの社是・社訓の強靱さが、会社の遺伝子となって、流れているのだろう。

本書はできる会社、強い会社の社是・社訓を集めたもの。気楽に読めるが、はっとさせられ、教えられることが多い。

「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」(日本電産)。「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……」(電通)は猛烈路線。

「スピード!! スピード!! スピード!!」(楽天)は、変化の速いIT業界の社是・社訓。ライブドアには社是・社訓はなかった、という。「三つの喜び(買う喜び、売る喜び、創る喜び)」(本田技研工業)はホンダらしい。

■2007/05/12, 週刊東洋経済

報道被害
報道被害梓澤 和幸

岩波書店 2007-01
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おすすめ平均 star
star報道のあり方を考える必読文献と思います

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事実誤認による報道は、人の人生を揺るがすこともある。本書は、報道被害にあった人々の実態を描いている。当初、「松本サリン事件」の犯人として誤った疑惑が向けられた事件被害者。この被害者を取り巻いた一連の報道経緯については、1章を丸ごと設けて詳細をつづり、情報操作の疑いすらある警察の動きや、その情報に安易にのったマスコミの姿勢を厳しく問うている。報道被害をなくす提言も説得力がある。

大事件の際、マスメディアは主流とは別視点の情報を意識して探るべき(「捜査情報の相対化」)など、有益な提案が並ぶ。

本書は同時に、ジャーナリズムが市民にとって持つ意味を浮かび上がらせている。「市民の知る権利」に奉仕するために、マスメディアの表現の自由は制度として守られなければならない。そのためには、報道する側の一人ひとりが、そのニュースに公共性があるのかを真摯に問う姿勢が求められるのである。

■2007/05/12, 週刊東洋経済

映画でベトナム―ベトナム映画19本+ベトナム文化
映画でベトナム―ベトナム映画19本+ベトナム文化金村 久美 窪田 守弘 グエン・アイン・フォン

南雲堂フェニックス 2007-03
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ベトナムといえば、激烈なベトナム戦争、それもあの世界一の超軍事大国アメリカを負かした国というイメージがつきまとう。だが、現在のべトナムは、豊かな母なるメコン川流域に広がる農業国である。 

本書に収録されているのは、ベトナム人の作品6本、アメリカ人の作品10本、フランス人の作品2本、韓国人の作品1本。いずれもビデオ化されている。

こうした映画を楽しみながら、ベトナムの言語や文化を学ぶようになっている。まず、ベトナム人の映画に注目したい。『季節の中で』『青いパパイヤの香り』『夏至』など、かなりの評判を得た作品であるが、現代のホーチミン市の社会の底辺に生きる姉弟の苛酷な運命を描いた『シクロ』は、第52回ヴェネチア国際映画祭でグランプリと国際評論家賞を受賞した作品。また、韓国映画『ホワイト・バッジ』は、ベトナム戦争のトラウマに悩まされる小説家の苦悩を浮き彫りにしている。

■2007/05/12, 週刊東洋経済

東京裁判の謎を解く―極東国際軍事裁判の基礎知識
東京裁判の謎を解く―極東国際軍事裁判の基礎知識別宮 暖朗 兵頭 二十八

光人社 2007-02
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おすすめ平均 star
star東京裁判の誤謬を正す

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東京裁判の評価をめぐっては、肯定、否定の立場から依然として論争が喧しい。

それにしてもまったく等閑に付されているが、B級・C級戦犯として旧占領地で逮捕・起訴され、然るべき弁護人も付かず、極めて不十分な審理の下、処刑された若き将兵たちの無念さはいかばかりか。

彼らは「生きて虜囚の辱めを受けず」と厳命した東條英機のような「自決未遂」すらできなかったし、ほかのA級被告のように自己韜晦すら許されない状況であった。

東京裁判自体が、仮に「世紀のフレームアップ」だとしても、被告席に立たされた指導者たちの体たらくは、やはり国家の指導者のあり方として恥ずべきものとして記憶しておきたいものである。

本書は、ある一定のスタンスから述べられた東京裁判観であるが、この裁判にかかわったほぼすべての人たちのエピソードを交えた人物評伝でもある。

■2007/05/12, 週刊東洋経済

新聞の時代錯誤―朽ちる第四権力
新聞の時代錯誤―朽ちる第四権力大塚 将司

東洋経済新報社 2007-02
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おすすめ平均 star
star日経の社内広告独自基準に抵触? ついに、この本の広告を拒否した日経の言い分

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オーソドックスで高度な新聞批判の書

勇気ある新聞人による勇気ある高度な内部告発の書である。

マスコミは「第四の権力」といわれているが、権力者的体質は政治権力に優るとも劣らない。マスコミを批判したものは容赦ない反撃を被る。文筆家はマスコミの仕事がなくなることを覚悟しなければならない。これがこの世の現実である。

こんななかで、日本経済新聞の第一線の記者だった大塚将司氏が、社員株主として株主総会で当時の鶴田卓彦社長の経営責任を追及し、懲戒解雇にもひるむことなく法廷闘争を闘い、解雇を撤回させて復職を実現したことは、快挙である。大塚氏の逞しい正義感と強靱な精神力に深く敬意を表する。

大塚氏は新聞の現状を鋭く批判し、ジャーナリズムの危機の本質を衝く――《「新聞」は公共物である。しかし、「第四の権力」に驕る「新聞社」では、公共物という認識を忘れてしまい、権力を乱用し「新聞」を私物化する。ジャーナリズムの危機はそこにある》。

一般の国民には、大新聞社の経営者が「新聞の公共性」を忘れ、傲慢な権力者になり、新聞を私物化しているということは信じられないかもしれないが、この指摘は正鵠を射ている。

大塚氏の追及は鋭く具体的である――《私物化するのは「新聞」や「電波」だけではない。当然のことながら、ヒトやカネ、つまり会社そのものも私物化するのだ。その典型が鶴田前社長時代の日経新聞社である》。

大塚氏は述べる――《バルザックは皮肉を込めて『ジャーナリズムの博物誌』の最後に「もしジャーナリズムが存在していないなら、まちがってもこれを発明してはならない」という公理を掲げ、締め括っている。その言わんとするところは「ジャーナリズムなんて害毒を流すだけだから存在しない方がいい。もしジャーナリズムがないなら、そんなもの、作っちゃ駄目だよ」ということである》。

日本のジャーナリズムの現状は惨憺たるものだ。誤報が日常化しているだけではない。今の日本のジャーナリズムは政治権力の広報機関化している。大多数の新聞記者、報道記者はジャーナリストとしてのモラルを失いサラリーマンと化している。

大塚氏は、日本の新聞の特権の起源は第二次大戦中の1940年につくられた「1940体制」にあり、これからの脱皮が急務だと主張している。確かにこれは有効な解決策である。

ただ私は、日本の大新聞の腐敗・堕落の中心は「政治部」だと思っている。モラルを失い政治権力の手先と化した大新聞の政治部ほど有害なものはない。政治部にメスを入れ、追及する第二の大塚氏の登場を待つ。【評者 森田実 政治評論家】

おおつか・しょうじ
日本経済研究センター主任研究員。1950年神奈川県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了後、75年日本経済新聞社入社。95年「三菱銀行・東京銀行の合併」のスクープで、同年度新聞協会賞を受賞。

■2007/04/28, 週刊東洋経済

闘う純米酒 神亀ひこ孫物語
闘う純米酒 神亀ひこ孫物語上野 敏彦

平凡社 2006-12-14
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おすすめ平均 star
starほかほかの気持ちになります

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小さな蔵をめぐるドラマ 正しい日本酒造りへの挑戦

湯に貴賤なし、という名言がある。同様、酒に貴賤なし、と私は思う。気持ちいい人と気持ちよく飲めればそれでいい。近頃、酒の銘柄にこだわり、うんちく傾けるヤツが多くてやだなあ、と読みはじめたのだが、どうして謙虚で丁寧な語り口だ。

埼玉県蓮田に神亀という小さな蔵がある。その7代目小川原良征は、20年前、製造の全量を純米酒に切り替えた。まだ醸造用アルコールを添加した淡麗辛口ブームのころである。東京農大時代の恩師の「混ぜ物の多い日本酒は、正しい造りに戻らない限り、いつかワインに負けてしまうだろう」という言葉、戦死した夫のかわりに蔵を守った祖母くらの「先祖伝来の田畑を売ってもかまわないから、自分の信じる道をお行きよ」という言葉を支えに。酒を熟成させていると「不良在庫」と見なす税務署、リベートを要求する問屋と闘い、小川原の造り方、生き方に共鳴する人の輪は少しずつ広がってゆく。

それにしてもモノつくりの現場を描くのは専門用語も多いし、むずかしい。私はこの本を二回読んだ。酒の味を表現するのもむずかしい。

いわく神亀「静謐の酒」「朴訥な旨みのある辛口濃醇な酒で、切れもいい」「ボディーがあってコクのある太い酒」「魅惑的でセクシーな酒」。うーむ、これ以上引くと提灯持ちになってしまうなあ。

造った本人いわく「かあちゃんの手料理とお燗で酒をゆっくり飲む」。つまり食の進む酒、しっかりして燗に耐える酒というらしい。

欲を言えば多すぎる登場人物、一人一人の学歴や酒通たちの神亀礼賛までは要らなかったのではないか。小川原という蔵元の生き方は、権威やお墨付きとは対極のところにあるのだから。でも、旨い本である。【評者 森まゆみ 作家】

■2007/04/28, 週刊東洋経済

今、あなたが中国行きを命じられたら―失敗事例から学ぶ中国ビジネス
今、あなたが中国行きを命じられたら―失敗事例から学ぶ中国ビジネス高田 拓

ビーケイシー 2007-03
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失敗例から学ぶ中国ビジネス入門書

大型書店に行くと、中国関連書籍がやたらに目立つ昨今だ。その多くが政治や経済に関する「論」なのに対して、本書は、豊富な失敗事例を中心に解説した中国ビジネスの入門書。著者は松下電器の中国現法に取締役として出向。主に量販店担当として北京、上海で販売責任者をしてきた。「失敗事例から学ぶ」というタイトルからも分かるように、著者が指摘する中国でのビジネス上の注意点は、いずれも実体験だけに、説得力がある。

本の構成も、総論に続いて、2章目に「与信・回収・債権管理」がくる。理由は、著者曰く「日本企業の最大の悩みは債権回収」にあるからだ。まず、長期化した債権を自ら回収に乗り出した話に始まり、取引先の信用調査、回収手段、未回収対応、裁判事例、債権回収にまつわる社員の不正問題などと続く。

取引先から「物品受領書」を確実に回収するのはイロハのイ。しかし、驚くのは回収手段。現金の場合、強奪やネコババもある。また、実際の現金が銀行口座に入金されない限り、「銀行印のある振込み受付書」だけでは信用できない例も挙げられる。

結局、「現款現貨(キャッシュオンデリバリー)」が基本で、現金・小切手・銀行保証手形をもらってから商品を出荷する「原則に徹する」ことが不可欠だと言う。さらに、3章の「エリア戦略」は、中国の大きさではなく、多様さに注意を喚起する。曰く「単一のヨーロッパ戦略がないように単一の中国戦略などない」と言う。しかも、日本を遥かに上回る農村と沿海都市部の所得格差。自ずと、ビジネスの仕方も変わる。さらに、商談の仕方、物流管理などほぼ満遍なく、現在の中国ビジネスの基本が実例や各種のデータを含めて語られる。読み進むうちに現在の中国の実像が手に取るように分かる本だ。【評者 日暮良一】

■2007/04/28, 週刊東洋経済

外国人投資家
外国人投資家菊地 正俊

洋泉社 2007-01
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おすすめ平均 star
star外国人投資家が、日本株市場を跋扈する。
star外国人投資家を知り、己を知れば、百戦危うからず
star三角合併についての説明を含む、タイムリーで実践的な良書。

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「外国人投資家」とは個人投資家にとってミステリアスな存在だ。著者はメリルリンチ日本証券の現役チーフ株式ストラテジスト。2000年から現職にあり、常に外国人投資家と接触しているために、彼らの価値観や運用手法、日本に対する理解度を肌で知っている。日本の株式市場は外国人投資家の買いが膨らまなければ、上がらない市場。今後、彼らは日本企業に対するM&Aでも存在感を増していくだろう。

投資家も上場企業も、外国人投資家を正しく理解しなくてはならない時代だ。

著者は「そもそも外国人投資家とは誰なのか」ということから、「その存在感はなぜ高まっているのか」「外国人に買われる株・売られる株」などについて解説している。

また、「外国人が日本の政治経済をどのように見ているのか」「日本企業への要求は何か」などについて書かれた章は、株式投資に関心がない人にとっても興味深いはずだ。

■2007/04/28, 週刊東洋経済

何のために働くのか
何のために働くのか北尾 吉孝

致知出版社 2007-03
売り上げランキング : 80

おすすめ平均 star
star学生から新入社員は必読だ
star王道の内容が、やさしく書かれています
star古典の紹介書

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著者は慶応義塾大学経済学部を卒業。三菱銀行を蹴って野村証券に入社。若くして頭角を現し、法人営業でその人ありといわれた。孫正義氏の招聘でソフトバンクに入社。ソフトバンクの財務を支え、現在は総合金融業を目指すSBIホールディングスのCEOである。

輝かしい成功を収めた新しい世代の経営者が、若者に向けて、どうすれば天職に巡り合えるか、仕事を成功に導く心の持ち方、仕事の達人になるための勉強法や、よりよく生きるためになすべきこと、などを伝授する。

「古典に学べ。ホリエモンの金儲け本など読んでも役に立たない」が著者の持論である。仕事をするうえでの基本となる「心の持ち方」を強調している。

仕事をやり遂げるうえで絶対に欠かせないもの、それは「憤」の一字だという。「何するものぞ」という負けじ魂が出ないと、本物にはなれない、と著者は本書で語る。

■2007/04/28, 週刊東洋経済

証券詐欺師―ウォール街を震撼させた男
証券詐欺師―ウォール街を震撼させた男ゲーリー・ワイス 青木 純子

集英社 2007-01
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おすすめ平均 star
starなかなかですね。

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著者は『ビジネスウィーク』のシニアレポーターとして活躍したベテラン金融ジャーナリスト。悪徳証券ブローカーとマフィアの癒着を同誌で発表したことを契機に、総勢120人の証券詐欺グループの一斉検挙につながった事例もある。

本書の主人公ルイスは、そんな著者の取材活動の最後に現れた19歳の証券詐欺師だった。ルイスは証券取引業免許も替え玉受験で取得し、持ち前のだましのテクニックを悪びれることなく繰り出し、7年間でクズ株を使って荒稼ぎをする。

彼らの手口は単純だ。超低位株を一般投資家に売りつけ、株価操作によって、通常の委託手数料とは別の「リップ」と呼ばれる、不当な利益をひねり出す。ブローカー、企業、顧客が応分に儲かるため足がつかず、規制当局の目をいともやすやすと盗んでいた。

この実話と実名を基に展開される詐欺ストーリーは、1990年代の米ウォール街の裏面史を記録した一冊である。

■2007/04/28, 週刊東洋経済

スペイン継承戦争―マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史
スペイン継承戦争―マールバラ公戦記とイギリス・ハノーヴァー朝誕生史友清 理士

彩流社 2007-03
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18世紀初頭にイギリスとフランスが欧州、北米を戦場にして世界の覇権を競ったスペイン継承戦争。この戦争にイギリスとオランダ、オーストリア、ハノーヴァーなどの同盟国が勝利し、第1次イギリス帝国が成立することになる。

本書はこの戦争でイギリスに勝利をもたらした名将・マールバラ公の活躍に焦点を当てながら、戦争全体の経緯と当時のイギリスの政治状況や王位継承問題について、わかりやすく記述する歴史書である。

主人公であるマールバラ公は、第2次世界大戦でイギリス勝利をもたらしたウィンストン・チャーチル首相の先祖であり、同時にダイアナ妃の先祖でもある。 

マールバラ公の姉はイギリス王ジェームス2世の愛人であり、妻のサラはアン女王(ジェームス2世の娘)の親友だった。郷紳出のマールバラ公が一代で名門公爵家を興せたのも華麗な宮廷人脈が背景にあったからだ。だが、最後は政争に敗れ、空しく引退する。

■2007/04/28, 週刊東洋経済

囲市
囲市高梨 豊

クレオ 2007-03
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仮装された街の裂け目から「世間」を見つめる

「裏の空き地に囲(カコ)いが出来た」「塀(ヘイ)」。本書を撮る動機を著者はなつかしいこの小咄に例えた。いま町を歩くと目につくのは建設現場や空き地を覆うフェンスやビニールシートや看板。そこには以前なにが在って、将来どんなものができるのだろう。重機の騒音や人けの無い更地に記憶のあいまいさと未知への不安をおぼえる。

写真家はそんな町の光景を拾って見せる。無計画でアナーキーな街並みにはもう慣れっこになってしまったが、「囲い」は所有された排他的な場所であり、改めて見せられると都市の実体は何者かが意図して、隠蔽しているかのようにも思えてくる。そして記憶の町はとうの昔に消え去り、途絶えることのない囲われた空間の連続こそ真の姿ではないかと思ってしまう。

著者は「表徴の裂け目から『世間』が見える」という。ロラン・バルトの『表徴の帝国』を「表徴の帝都」と読みかえ、愛用のライカをやめて中判のフィルムカメラのマミヤ7を手にし首都圏を歩いた。

1960年代、広告写真の売れっ子だった彼は、多木浩二、中平卓馬らの急進的な雑誌『プロヴォーク』に参加。その後、都市の地表や地層、地名をテーマに日本の風土を垂直にゆきつ戻りつして撮影をしてきた。それは知的な仕事ともいえるが、もとは神楽坂の花柳界に生まれ育った写真家。その体質にはしゃれや諧謔の江戸気質があり、本書の作品にも、観念的になりきらないユーモアや東京人としての「しょうがねぇなぁ」という町の変貌への嘆きと潔さが滲んでいる。カメラを持った永井荷風ならいまの風景をどう撮るだろうか。都市の表層からその奥を凝視する批評性をはらんだ写真集だ。【評者 写真家 中川道夫】

■2007/04/28, 週刊東洋経済

【東洋経済新報社からの近刊本】

お客様の心に響く直筆三行はがき術
お客様の心に響く直筆三行はがき術沼澤 拓也

東洋経済新報社 2007-04
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究極のセールスレター シンプルだけど、一生役に立つ!お客様の心をわしづかみにするためのバイブル
究極のセールスレター シンプルだけど、一生役に立つ!お客様の心をわしづかみにするためのバイブルダン・ケネディ 神田 昌典 齋藤 慎子

東洋経済新報社 2007-03-30
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おすすめ平均 star
star役に立つ部分もあります
starシンプル!

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時代遅れか?はがきと手紙

Eメール全盛のこの時代に、はがきや手紙の効用を解説した興味深い本が出版されたので紹介しよう。

まずは『お客様の心に響く 直筆三行はがき術』(沼澤拓也著)。本書の著者は若くして起業するも、甘い経営姿勢で会社は傾く。

そこで考えついたのが、手書きのはがきによる営業作戦だった。切手の種類からペンの色、書き方、出すタイミングに徹底的にこだわり、1年で約6000通を出しつづけている。

押し付けがましくない、心のこもった直筆はがきで、人脈も仕事も飛躍的に広がったという。本書では、受け取る相手の心をつかんで離さない、誰でもできる方法とその心構えを解説する。

次に全米一のコンサルタント、ダン・ケネディの『究極のセールスレター』(神田正典監訳)。セールスレターを開封させ、購入に結びつけるテクニックを28のステップで解説。米国で読み継がれる「定番本」待望の邦訳出版である。

ともに、顧客作りに悩む営業マン、商店主などにぜひお勧めだ。

■2007/04/28, 週刊東洋経済

■4月9日発売

金融読本
金融読本呉 文二 島村 高嘉 中島 真志

東洋経済新報社 2007-04
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日本経済インフレの危機―デフレが育てる「もの不足」
日本経済インフレの危機―デフレが育てる「もの不足」水谷 研治

東洋経済新報社 2007-04
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経済学入門 第2版
経済学入門 第2版石井 安憲

東洋経済新報社 2007-04
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現代史への視座―21世紀世界変革の可能性
現代史への視座―21世紀世界変革の可能性竹内 啓

東洋経済新報社 2007-04
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セミプロ農業が日本を救う―成熟化社会を先導する「農」の新たな役割
セミプロ農業が日本を救う―成熟化社会を先導する「農」の新たな役割大澤 信一

東洋経済新報社 2007-04
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信用リスクモデル入門―バーゼル合意とともに
信用リスクモデル入門―バーゼル合意とともにドナルド・ヴァン・デヴェンター 今井 賢司 三浦 良造

東洋経済新報社 2007-04
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■4月16日発売

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新帝国主義論―この繁栄はいつまで続くか
新帝国主義論―この繁栄はいつまで続くか武者 陵司

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実践力を鍛える戦略ノート 企業価値評価編
実践力を鍛える戦略ノート 企業価値評価編原田 勉

東洋経済新報社 2007-04
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■2007/04/28, 週刊東洋経済

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