メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2007年3月17日~3月24日
| 構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌 | |
![]() | 竹中 平蔵 日本経済新聞社 2006-12-21 売り上げランキング : 3988 おすすめ平均 ![]() 竹中さん本当によく頑張った 官僚に飲まれない政策形成の手本を示した良書です この10年で、竹中さんって、もっとも政治家らしい政治家かもAmazonで詳しく見る by G-Tools |
政策決定プロセス変更が構造改革の要だった
金融システムが安定性を取り戻し、日本経済が平時モードに移行する中で、霞が関と永田町の政策運営にも微妙な変化が生じつつあるように見える。
この変化を「正常化」の過程と見るのか、旧体制への復帰と見るのかは人によってさまざまであるが、小泉改革の5年半を総括することは、今後の政策運営のあり方を考えるうえで欠かすことのできない作業であろう。本書は、その手掛かりを与えてくれる貴重な記録である。
本書の前半では金融改革と郵政民営化を題材に、現実の政治過程の中で構造改革がどのように進められてきたのかが描かれる。小泉総理に請われて内閣の一員となった竹中氏が直面したのは「官僚の無謬性」の呪縛と「抵抗勢力」の圧力であった。
こうした中で竹中氏が活用したのは「竹中チーム」「ゲリラ部隊」と称される少人数の専門家集団であり、これらの集団が既存の勢力に対する対抗力となって政策形成が行われていくことになる。霞が関と永田町の常識からすれば、このような政策形成は危うげなものと映るが、本来改革を進めていくべき「正規軍」が最大の「抵抗勢力」なのであってみれば、このようなゲリラ戦もやむをえないことが理解されよう。
本書の後半では、経済財政諮問会議に焦点を当てて、小泉内閣の下で「政策プロセスの改革」がどのように進められてきたのかが明らかにされる。本書によれば「当初の骨太という言葉には、明らかに諮問会議には現実的な問題に口出しさせないという、ネガティブな意味が含まれていた」のだという。
竹中氏はこの「骨太」を構造改革の「指令書」とし、諮問会議を改革の「司令塔」とすべく、軌道修正を行う。マクロ経済政策と予算編成の整合性の確保は「安易な財政拡大待望論」と「極端な金庫番的発想」のいずれにも与しない形で構造改革と景気回復を両立させるための仕掛けであったが、その道のりは「ナロー・パス」であった。
本書を読んでわかるのは、政策決定のプロセスが政策の内容そのものを大きく規定するということである。行政は無数の制度とその下での行為の積み重ねであるから、政治が大枠を決め、官僚が制度の詳細を設計するやり方だと、改革はすぐ骨抜きになってしまう。
だからこそ、制度設計の詳細にまで関与することが必要だ(「戦略は細部に宿る」)ということになる。安倍内閣の下で諮問会議がどのような役割を果たしていくことになるのか、その「進路と戦略」は必ずしもまだ明確でないが、本書から多くのことを学ぶことができると評者には思われる。【評者 中里透 上智大学経済学部助教授】
| シャドーワーク―知識創造を促す組織戦略 | |
![]() | 一條 和生 徳岡 晃一郎 東洋経済新報社 2007-02 売り上げランキング : 208 おすすめ平均 ![]() 中高年よ、読め! アイデアの具体例が参考になりそうAmazonで詳しく見る by G-Tools |
プロデューサー人材というキーコンセプトを提唱
「見たことのないものを欲しがることはできない。顧客が見たことのないものをお前が見せてやれ」とは、評者が昔、マッキンゼーに入社した当時、大先輩から聞かされた言葉である。目からうろこが落ちた思いがした。
本書は、シャドーワーク(上司らの「目に見えない」仕事、通常の業務、意思決定プロセスからは外れた、個人の自主的な意志と裁量による創造的な仕事)という、ややもすると自己啓発論や精神論で終わりがちな、しかし今の組織においては極めて重要なテーマを、組織論として具体的、分析的、現実的に掘り下げている。
特に本書の考え方の基本に、「予定調和」をすべての基本とする、秩序と支配優先のマネジメントに対する警鐘があることは、問題の本質から逃げた精神論アプローチとはまったく異なる価値を生んでいる。
変化が激しく、顧客自身が自分は何を欲しいのかがわからない、顧客が感じる価値が機能的なものでなくわかりにくいなど、将来予測性や管理可能性が低くなった時代において、目的合理的マネジメント一本やりでは企業は尻すぼみになる。
グーグル、日産自動車、アサヒビール、リコーなどさまざまな企業における具体事例はもちろんのこと、そこから多くの意味合いを引き出すことが重要で、本書は、文字どおり企業という組織に属する実務家とコンサルタント、研究者がシャドーワークによってコラボレーションしたおかげで可能になった著作だと感じた。
序列による秩序と支配という工業化時代のパラダイムのまま、「人重視経営」を唱える経営者、制度人事に偏りがちな人事担当者、管理による秩序に求心力を求めがちな管理職にぜひ読んでほしい一冊である。【評者 高橋俊介 慶応義塾大学大学院教授】
| オシムが語る | |
![]() | シュテファン・シェンナッハ エルンスト・ドラクスル 小松 淳子 集英社インターナショナル 2006-12 売り上げランキング : 2303 おすすめ平均 ![]() オシム前史 "down-to-earth"なオシム氏の人生哲学が良く分かるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
オシムの信念と哲学その魅力を引き出す
評者の中では、今「オシム」ブームだ。これは、評者が大のサッカーファンだからだけではない。彼から人生、ビジネス両面で多くのことを学べるからだ。その点、本書は他の「オシム本」とは異なり、より彼の哲学や信念にフォーカスしており、それらを学ぶうえでは最適の書といえるだろう。
彼の魅力は、数学者になっていてもおかしくない頭脳明晰さ、選手や監督として世界に誇れる数々の輝かしい実績、マスコミを手玉に取るユニークな言動だけではない。カネや権力に屈しない彼の一本筋の通った生き方、決してぶれることのない信念は、一サッカー監督としての域をはるかに超えており、拝金主義、権威主義、権力主義がはびこる日本社会では貴重な存在だ。まさにわれわれが見習うべき存在といえる。
この謙虚で多くの人々から愛され、尊敬される人格者の根底にあるのは、悲惨な民族紛争や戦争の体験だ。本書でもこれらについての多くの記述があるが、あらためて平和ボケした日本人の「甘さ」を感じる。
興味深いのは、彼の考え方が、驚くほどビジネスの世界にも当てはまる点だ。「現実直視」「実行力」「自分の頭で考える」「客観性」「すべての人の尊重」……。これらは皆ビジネスの基本だ。彼がよく口にする「ポリバレンス」という考え方も大いに参考になる。
スポーツもビジネスも結果がつきものだが、短期的な結果ばかり追い求めるのは賢明ではない。得がたい人材を獲得した幸運な日本のサッカー界は、指導者も選手も彼からサッカー以外のことも含めて多くのことを貪欲に学び取り、マスコミもファンも長い目で温かく彼を見守っていきたい。そしてビジネスの世界でも、大いに「オシムジャパン」を見習いたい。【評者 黒田康史 YSコンサルティング代表】
| モノを作らないものづくり―デジタル開発で時間と品質を稼げ | |
![]() | 富士通・日本発ものづくり研究会 日科技連出版社 2007-01 売り上げランキング : 67134 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
急速な技術革新や顧客の多様化、市場のグローバル化の波の中、製品開発プロセスの革新・改革は、日本のものづくりにとってもはや避けては通れない課題だ。
程度の差こそあれ、デジタル開発(IT)を取り入れることはもはや必須といってよい。富士通が実践し、提案する「モノを作らないものづくり」、つまりデジタル開発の最前線を詳細な事例とともに解き明かしたのが本書である。メカ(機構)、エレキ(電気)、ソフト(組込みソフトウエア)の設計と製造部門の取り組みが生々しく描かれている。
本書が主張する「日本発ものづくり革新」のポイントは「情報システムを駆使したIT」「製品開発の流れは“情報の流れ”」「日本型ITの重要性」「人間同士のコミュニケーションが大切だという前提に立ったIT」「人材づくりが大切だという前提に立ったIT」の五つ。現場を活気づけるデジタル開発の秘密がわかる。
| 米軍再編 | |
![]() | 江畑 謙介 ビジネス社 2006-11 売り上げランキング : 58943 おすすめ平均 ![]() 再編と日本Amazonで詳しく見る by G-Tools |
イラク戦争の泥沼に足を取られているとはいえ、今でも米軍は世界最強の軍隊であろう。本書は軍事評論の第一人者が、今日の米軍の姿と、世界的に再編成が進む米軍の行方を分析する。
日米同盟、そしてアメリカと世界の今後を考えるために不可欠な書である。
第1章では、新しい米軍戦力構成計画(四つの米国家安全保障軍事戦略報告書の特徴など)を記述する。
第2章では、米軍部隊と基地の再編成(海外緊急展開構想ほか)を記述する。
第3章では在外米軍基地と部隊(米本土防衛関係ユニファイド・コマンドほか)を記述する。
第4章では、日本と密接な在日米軍部隊と基地の再編(沖縄の米軍再編と負担の軽減ほか)を記述する。
本書を読むと進化する米軍の姿と、その中で日本の地政学的位置が、アメリカにとって死活的重要性を持っていることが理解できる。米軍と自衛隊の一体運営の先行きも見えてくる。
| 新版あなたのイヌがわかる本 | |
![]() | ブルース・ フォーグル 奥山 幸子 新妻 昭夫 ダイヤモンド社 2007-02-02 売り上げランキング : 23498 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
イヌのブームである。近くの公園では毎日、イヌを散歩させている人々を見かける。若い夫婦から、定年退職後の伴侶としてイヌと暮らす人まで、多彩な人々がイヌに癒やされている。
本書は、300点を超えるイヌの写真を楽しみながら、かわいいイヌのしぐさや人間とともに暮らす生活の知恵を分析している。
著者は世界的に有名な動物行動学者であり、獣医師。
66ページの「社会秩序」のコーナーでは、「私たちと同じようにイヌにも厳格な秩序があり、第1位のイヌ、挑戦者のイヌ、自分の地位に甘んじているイヌ、そして負け犬がいます」と記述しながら、群れの仲間の間ではイヌ同士が死に至る闘争を避けるために、「微妙な儀礼的ディスプレイ」により、階層関係の決定がなされていると、著者は分析している。
最後に愛犬の性格診断表もある。19項目の診断表に答え、その合計点数が70点以上だと、「天使のイヌ」とされている。
| ヴァイキング事典 | |
![]() | スーザン M.マーグソン ピーター・アンダーソン 久保 実 あすなろ書房 2007-01 売り上げランキング : 635003 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
8世紀末から11世紀後半にかけて、北欧から出て、ヨーロッパ各地を席巻し、「北方の蛮族」として恐れられたヴァイキング。
実は、彼らの正式な名前は「ビーキング」であり、「ヴァイキング」は英語読みで慣用的に使われている。この名前の由来はいまだ不詳で、「入り江に住む民」というのが、最も有力な説である。
ヴァイキングの評価は、相反するものがある。海賊、掠奪軍団。これとは逆に、交易商人、農耕作人、狩猟者、工芸家。それはともかく、やがて、彼らは当時の分裂状態の王侯の中に入り、忠実な傭兵として雇われ、定住していった。
彼らが開拓した遠隔交易路に沿ってキリスト教の伝道が可能になり、北欧が異教徒社会からヨーロッパ・キリスト教世界へと編入された。つまり彼らはヨーロッパ文化の伝播者となるだけではなく、独自の北欧の文化の創造者および継承者という歴史的役割を果した。
| 学校と社会・子どもとカリキュラム | |
![]() | ジョン デューイ John Dewey 市村 尚久 講談社 1998-12 売り上げランキング : 48550 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 東京大学の歴史 大学制度の先駆け | |
![]() | 寺崎 昌男 講談社 2007-01-11 売り上げランキング : 52020 おすすめ平均 ![]() 現代日本の大学の原点 日本の基幹大学の歴史と大学改革における意外なる真実Amazonで詳しく見る by G-Tools |
本当の教育制度改革は古典・故事を学ぶことから始まる
昨今のわが国の教育の荒廃ぶりは凄まじい。いじめによる小・中学生の連鎖反応的自殺。それに対する教育委員会や校長の無責任な対応。児童・生徒の自殺者はゼロと嘯く文部科学省の厚顔さ。
ところで、教育改革を最重要政策の一つとして掲げ、教育基本法の抜本的改正を断行する安倍内閣が鳴り物入りで設置した教育再生会議は、国民の与り知らぬ秘密会であり、文部科学省の官僚の作文を追認するだけだという人もいる。この会議と中教審の答申が、教育3法の改革の伏線となっている。それにしても、こんなことで現在の荒廃した教育現場の改革は可能であろうか。
百年前、アメリカで「子どものの経験からの出発」「学校と社会の統合的結合」を教育理念とするジョン・デューイの学校には、現在も内外からの見学者は絶えないという(ジョン・デューイ著『学校と社会 子どもとカリキュラム』)。
しかも、荒廃しているのは義務教育だけではない。その頂点に立つはずの大学では、今や「受験生の全入」が始まり、もはや彼らの学力なんぞ云々できる状況ではない。
そんな学生に見合うというべきか、中には、目を覆いたくなるようなお粗末な教授もいる。たとえば、アメリカでは「学位工場(DM)」という怪しげな「大学」で「博士号」が売られている。相場は300万円ぐらい、ただし年に2回くらいバーゲンセールもあると聞く。DMから買っていたことが暴露された某大学の学長はDMとは知らなかったとの弁。国際主義を標榜している大学なのに。
だが、ほぼ百年前、夏目漱石は文学博士を辞退した。それはけしからんとする当時の学位授与者の文部大臣と論争を始める(寺崎昌男著『東京大学の歴史――大学制度の先駆け』)。漱石の潔さ、明治の気骨を見せられる思いだ。
百年前のこれらのエピソード、決して賞味期限は切れていない。なぜなら、底流には揺るぎない哲学があるからである。【評者 阿久根利具 文芸評論家】
トヨタの世界
中日新聞社経済部 (編さん)
トヨタの現場を知る貴重なドキュメント
評者は日本経団連副会長時代、当時の奥田碩会長とベトナムを訪問した。2006年のことである。世界各国から投資先として注目を集めるベトナムがわれわれを招待し、党と国家の首脳が多忙を極める中で奥田会長との懇談を行う姿に「世界のトヨタ」の力強さを垣間見た気がした。それまでの4年間に奥田会長と訪問した国は10カ国。元首や首相との会見はどの国でも経験する出来事であった。トヨタの売り上げは、一国家のGDPにも匹敵する規模である。その規模が強大なパワーとなっていることは間違いない。
しかしながら、そうした考えは一面に過ぎないことを知ったのがこの時であった。ベトナム中部の古都フエで、テト攻勢などで戦火に見舞われた旧王宮の修復作業に、長年にわたってトヨタ財団が携わっていたことへの謝意が行く先々で述べられたからである。「陰徳を積む。だから、このことは公表しなくていい」とは豊田章一郎名誉会長の判断である。日本ではほとんど知られていないこの事業が、ベトナムの人々のトヨタへの感謝と、ひいては日本全体への好意につながっている。
こうした世界各地での社会貢献活動と、優秀な品質により日本への憧れをも生み出すトヨタの製品は、国際社会で「顔が見えない」とされがちな日本からのメッセージとなっている。
本書は、「利益のみを追求する企業は世界で尊敬されない」(奥田取締役相談役)と考える「世界のトヨタ」の今を伝えるべく中日新聞紙上で、06年に長期連載された企画記事を一冊にまとめたものである。現場を大事にする会社を対象とするだけあって、地元紙の総力を挙げてたんねんに取材し、理論先行ではなく「定点観測」を積み上げた貴重な記録となっている。
本書のもう一つの特徴は、世にある多くの「トヨタ本」と異なり、社内外からの辛口のコメントも多く掲載されていることだ。なかには、世上の感情的なアンチ・トヨタ論に流された感のある表現や、当事者の反論が付されて然るべき内容もある。
しかし、こうした批判をも謙虚に受け止め、改善につなげる叡智と度量こそ、歴史的危機を乗り越え、今日、従業員や取引先に誇りを与えるまでに至ったトヨタの卓越した特質、会社としての「徳」にほかならない。
産業の空洞化に悩む1980年代のアメリカは「カンバン」「カイゼン」を研究し、経済再生を図った。本書で世界に通用するモノ作りに邁進する人々の真の姿を知ることができる。
本書の表層だけに目を奪われず、「『なぜ』を五回繰り返し」ながら、文章の奥にある真実を汲み取ることをお薦めしたい。【評者 柴田昌治 日本ガイシ会長】
| 米国マネーロンダリング―米国財務省・IRS‐CI捜査 基礎研究 | |
![]() | 本庄 資 税務経理協会 2006-12 売り上げランキング : 325404 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 国境に消える税金 | |
![]() | 本庄 資 税務経理協会 2004-09 売り上げランキング : 295798 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
米国の取り組みを紹介 日本に奮起を求める
財政学者や経済学者は歳入と歳出を中心として研究し、政策にも貢献している。だが、制度的・実務的に不正な歳出を防止し、失われる歳入を回収する方法について、適切な処方箋を書く学者は必ずしも多くない。
医学者が人体の仕組みの研究にとどまらず、病理現象とその治療方法の研究を当然の任務としているのに、日本の税法学者を含む社会科学者は健全な社会や税の仕組みの研究にとどまり、脱税やマネーロンダリングなどの社会病理現象の研究や、その防止措置の制度的・実務的研究をほとんど放棄している。本書を読むと、脱税やマネーロンダリングを学問の空白地帯にしておいてよいのかという、著者の長年の実務経験をふまえた切実な思いが伝わってくる。
本書が指摘する日本の制度的欠陥は、例えば脱税とマネーロンダリングはコインの表裏の問題だが、日本ではマネーロンダリング犯罪の前提犯罪を限定的に規定し、「脱税」を除外している。その結果、日本のマネーロンダリングの議論は、組織犯罪の行うマネーロンダリングのみの摘発に限られ、米国のように各省庁の統一的で組織的・戦略的な摘発を行う体制が、いまだ確立されるに至っていない。
悪賢い納税義務者に等しく税法を適用するにはどのような方策を講じるべきか、「課税の公平」という観点からして、これを学問として議論すべきだろう。本書は、まさにこの観点から、米国の現状を公開し、わが国政府、経済界、租税専門家・学者に奮起を求める一書となっている。
前著『国境に消える税金』(税務経理協会)に次ぐ本書には、著者ならではのメッセージが多く込められており、また一般人にも関心のあるテーマだけに、よりコンパクトな啓蒙書が期待される。【評者 石川純治 駒澤大学経済学部教授】
| インテリジェンス 武器なき戦争 | |
![]() | 手嶋 龍一 佐藤 優 幻冬舎 2006-11 売り上げランキング : 754 おすすめ平均 ![]() 一般人には評価不可能 インテリジェンスとインフォメーションの違いから話は始まる 映画のような外交の裏側Amazonで詳しく見る by G-Tools |
インテリジェンスが決める国家の命運
「永田町で切った張ったをしている人たちのインテリジェンス感覚は決して悪くない」と佐藤優氏は本書で語っている。衆議院事務局32年、参議院議員12年の、謀略人間とたたかれながらも滅私奉公してきた評者にも、書評の資格はあるだろう。
佐藤氏を「平成の鬼才」と名付けたのは評者だ。手島龍一氏とは、細川政権のころ「安全保障問題研究会」で論戦した仲で、NHKワシントン支局で活躍中に何回か日米関係について貴重な指導を受けたことがある。
二人の対談は国家権力の裏側を「浮世絵ののぞき窓」から眺めるような興味深い内容だ。日本国の政治家、外務省、二人がかかわった国際政治のエピソードの中に、「インテリジェンス」が国家の命運を左右することを証言している。
対談の中で、外務省の姿勢や官僚の人間性が語られていて面白い。評者と共通の知人もいて驚いたが、二人が評価している斉藤邦彦氏が外務次官のとき、私も使われた思い出がある。日米建設協議で、当時の建設省が外務省に情報を出さないことに対し、解決すべく裏工作をせよ、との要請だった。
また、1991年の湾岸戦争のとき外務次官の対応に怒った小沢一郎自民党幹事長に、当時の官房長の要請で斉藤氏を引き合わせたところ、斉藤氏は堂々と渡り合い外務省の危機を乗り切った。外務省の中にも世間には見えないが、ツボを知っている勇士がいた。
日本のインテリジェンスの弱点は、国益のためイスラエルでの国際会議をコーディネートした佐藤氏を背任容疑で起訴、裁判にかけるという現在の国家権力の感性にある。その責任は政治家にある。国家や人間を洞察できる人材がほとんどいない。「教員の質」も大事だが、「政治家の質の向上」が先ではないか。【評者 平野貞夫 元参議院議員】
| ドキュメント 現代の傭兵たち | |
![]() | ロバート・ヤング ペルトン Robert Young Pelton 角 敦子 原書房 2006-12 売り上げランキング : 110695 おすすめ平均 ![]() 現場のぼやきも銃撃戦も、スリル溢れる訓練もAmazonで詳しく見る by G-Tools |
社会のパラダイム崩壊の危機に瀕したとき、その脱出の道を戦争に求める。このような社会では、正規軍も解体し、大量の傭兵が出現する。世の東西を問わず、軍隊としての傭兵が出現する歴史的法則である。
本書は、「9・11」テロが誘発したイラク戦争にアメリカ軍の兵站維持のために従軍した「傭兵たち」のドキュメントである。
本書の著者が取材するために一緒に生活した元軍人や元警察官の彼らは、殺しのライセンスを持った「民間軍事(警備)要員」でもあり、また時には「傭兵」でもある。
こうした危険な職業を選んだ男たち。彼らに課せられた任務、軍事産業や民間警備の急成長がもたらした問題点。さらに、戦争から大義が剥ぎ取られ、カネがらみのビジネスに変貌し、しかもそこに命懸けで任務に就く男たち。また彼らの過剰防衛により殺害される無辜の住民たち。本書は、こうした側面も決して等閑視していない。
| 処刑台から見た世界史 | |
![]() | 桐生 操 あんず堂 2006-11 売り上げランキング : 38133 おすすめ平均 ![]() 最後まで読む人を飽きさせない テーマは面白かったのですが‥ 図版が多いので、視覚的にも楽しめるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
フランス革命は、近代の扉を開いた革命である。人間の理性を信じる啓蒙主義が革命の原動力であり、そのスローガンは「自由、平等、博愛」である。
だが、この革命では、理念とは反対に、おびただしい人々が、ギロチンにより、広場で公開処刑された。国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットなど王族・貴族から、最後は革命の指導者であるロベスピエールやサン・ジェストまで。
著者の桐生操氏は、「人間は見せ物を好む。特に処刑を。処刑される人が高貴な人であるほど民衆は喜ぶ。その気質は古代から現在まで変わっていない」と語る。
ローマ帝国の皇帝たちは「パンとサーカス」で民衆の歓心をかって、自分の権力を維持した。「サーカス」は、コロセウムでの剣闘士たちの殺し合いであったり、公開処刑だったりする。
こうしたきれい事では済まない人間の気質を、本書では古代から近代までの処刑史で描いている。
| 魚をまるごと食べたい 新版 | |
![]() | 水口 憲哉 七ツ森書館 2007-01 売り上げランキング : 191674 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「食べたい魚」と「食べさせられている魚」。日本の食卓に並ぶのはどちらなのか。それが本書の問いかけである。
大消費国の胃袋を満たすのは、世界各地で漁獲、養殖される魚介類。瞬時に冷凍される魚の目指す先には“空の港”も加わる。「長距離、長時間」の壁を超え、巨大市場が作られた。
一年中、切れ目なく好きな魚を食べることができる日本。それは恵まれているようでいて、実はそうではないのかもしれない。60年にわたって水産資源の研究を続ける著者は、日本の魚料理から「旬」が失われたと嘆く。
量販店をのぞけば、加工済みの魚がズラリと並ぶ。何となく感じる「食べさせられている」という不安は、目の前の「便利さ」にかき消される。旬の魚をおいしく食べるためにはどんな工夫が必要か。本書が提示する食べ方の数々は、魚食の現実に対するアンチテーゼである。12年ぶりの新版に込められた響きは重い
| イランを知るための65章 | |
![]() | 岡田 恵美子 鈴木 珠里 北原 圭一 明石書店 2004-10 売り上げランキング : 47499 おすすめ平均 ![]() 期待してなかったが、予想以上の情報量 雑多に情報を得ることができたAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| イラン人は神の国イランをどう考えているか | |
![]() | アーザル ナフィーシー アッバス キアロスタミ レイラ アーザム ザンギャネー 草思社 2007-02-22 売り上げランキング : 8656 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 物語 イランの歴史―誇り高きペルシアの系譜 | |
![]() | 宮田 律 中央公論新社 2002-09 売り上げランキング : 166115 おすすめ平均 ![]() イラン史を書ける人材の不足なのでは イーラーンの歴史ではありますが...Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 現代イラン―神の国の変貌 | |
![]() | 桜井 啓子 岩波書店 2001-07 売り上げランキング : 241857 おすすめ平均 ![]() ヴェラーヤテ・ファーギフ論 - 宗教国家イランの基本理念 国際政治という観点からも最良の「イラン現代史」 現代イラン社会の流れを知るAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| 革命イランの教科書メディア―イスラームとナショナリズムの相剋 | |
![]() | 桜井 啓子 岩波書店 1999-05 売り上げランキング : 686027 おすすめ平均 ![]() カリスマ支配の社会をかいま見たAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| イスラーム統治論・大ジハード論 | |
![]() | ルーホッラームーサヴィーホメイニー R ̄uh All ̄ah M ̄usav ̄i Khomein ̄i 富田 健次 平凡社 2003-10 売り上げランキング : 415477 おすすめ平均 ![]() 統治理論Amazonで詳しく見る by G-Tools |
「神の国」イランの過去から現在まで
3月21日、日本では春分の日だが、イランではお正月=ノウルーズである。この日、イラン人はお供え物や鉢に入った赤い金魚を飾り、新年を祝う。ノウルーズは、タジキスタンなど中央アジア5カ国やクルド人地区でも祝われる。イラン文明圏は広い。
市場のことをアラビア語のスークではなく、ペルシャ語のバザールと呼ぶ地域がイラン文明圏に属する。その地域は、欧州のボスニアからインドまで広がる。古代ペルシャ帝国から現代まで、イランは世界の政治や文明に大きな影響を与えてきた。
日本人はイラン人とアラブ人をしばしば混同するが、イラン人は「アーリア人」であり、人種的にイギリス人やドイツ人などの仲間である。
イラン人はイスラム教徒であるが、スンニ派ではなく、12イマーム派のシーア派を国教としている。歴史と文明を誇るイランを知ることで、世界を理解する視野も広がる。
岡田恵美子ほか編著『イランを知るための65章』(明石書店 2004年)は、イランの歴史と文化を網羅的に知るための好著。
第21「『風の絨毯』の舞台裏」では、日本でもファンの多いイラン映画事情が、景山咲子氏によって語られる。
宮田律著『物語 イランの歴史』(中公新書 02年)は、人々の日常生活から、ペルシャ帝国の栄光とイラン文化の形成、イラン文明のイスラムとの融合など古代から現代までをわかりやすく解説している。「誇り高きペルシャの系譜」という副題に、イスラム化してもアラブ化しなかったイラン人の矜持を表現する。
桜井啓子著『現代イラン』(01年 岩波新書)は、1979年のイラン・イスラム革命後のイランの政治、社会、宗教を解説している。
第3章「祖国をあとにした人々」では、革命後、米国に亡命したイラン人や、アルメニア人やユダヤ人をルポしている。在米イラン人は28万人に達しているという。
第4章「イスラーム神学校」では聖地ゴムにある神学校が、世界から留学生を受け入れ、「革命の輸出」に努力しているありさまを描く。
同じく桜井啓子著『革命イランの教科書メディア』(岩波書店 1999年)では、革命前のパーレビ政権時代と革命後では、イランの教科書がどのように変わったのかを記述している。それぞれの体制のイデオロギーと歴史認識がわかって興味深い。
欧米化を推進したパーレビ時代、教科書の多くが欧米のそれを翻訳したものだった。革命後は、イラン・イスラム体制の正統性を国民に「洗脳」する内容に変わったが、歴史認識では、イスラムとナショナリズムの相克に揺れている姿が見える。
R・M・ホメイニー著『イスラム統治論・大ジハード論』(平凡社 03年)は、イラン政治体制の根本理論である「ヴェラーヤテ・ファキーフ」(イスラム法学者の統治)を述べたものである。本書の序章では、欧米の法律体系を批判している。そして、イスラム法をいちばん理解しているイスラム法学者が、統治者になるべきだ、というホメイニー独自の理論を提起する。
レイラ・アーザム・ザンギャネー著『イラン人は神の国イランをどう考えているか』(草思社 07年)は、亡命イラン人の両親から生まれた米国在住のイラン人ジャーナリストが、国内と海外のイラン人知識人の本音を引き出している。腐敗した「ヴェラーヤテ・ファキーフ」体制への鋭い批判が目立つ。日本でも有名な映画監督キャーロスタミーも、検閲下にある映画制作事情を語っている。【評者 内田通夫】





オシム前史








一般人には評価不可能

テーマは面白かったのですが‥






