メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2007年1月27日~2月3日

ヘッジファンド運用入門
ヘッジファンド運用入門寺本 名保美

財経詳報社 2006-11
売り上げランキング : 13329

おすすめ平均 star
star初心者向けの最良のテキスト
star丁寧な基礎知識編

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ヘッジファンドを知る格好の入門書

近年世界的にヘッジファンドの隆盛はすさまじいものがある。いまやその規模は1兆ドルを超え、運用会社の数も8000社余りという。日本でも銀行、生保などの機関投資家はもとより、年金資金にも急激に浸透している。それはヘッジファンドに対する大いなる期待の表れと同時に、既存の伝統的な資産運用の限界と表裏一体をなしているのかもしれない。

ところでヘッジファンドというと外部からは何かうかがい知れないハイリスク・ハイリターンの運用手法を駆使しているというイメージが先行しているのではないか。またそれゆえに運用成績だけを見て運用戦略の具体的内容については問わないという傾向がある。もっともそれには運用者側からの十分な情報の開示があることが前提だが。

本書はヘッジファンドの最大の特徴を、絶対リターンの運用を目指すものとし、ヘッジファンドの代表的な運用手法である、マーケットニュートラル、株式ロング・ショート、イベントドリブン、債券裁定、ディストレスト、グローバルマクロ、などの個々の運用戦略をリターンだけでなくそのリスクも含め簡潔かつ明瞭に説明している。

日本では投資家の大半は、ファンドオブヘッジファンズの形態で投資を行っているが、その際資金の配分やモニターを行うゲートキーパーの役割がきわめて重要だ。同時に運用報酬体系にも注目する必要があろう。

ヘッジファンドはその70%は設立から50カ月以内に消滅すると言われる。そこからヘッジファンドインデックスのいわゆる生存者バイアスの問題が生じ、インデックスの過去のリターンを計測すると高めに出るのはそのためと言われる。それでも自ら投資したヘッジファンドのリターンをインデックスと比較してレビューすることは最低限必要であり、種々のインデックスの特性を理解することもあわせて肝要である。

著者は資産運用コンサルティング業務を行う独立系の会社を設立、ユニークな地位を確立しているが、ヘッジファンドの運用会社のリサーチと評価を行い、この分野の業務に通暁している。「顧客である年金基金が初めてヘッジファンド手法を取り入れる際にはまず株式ニュートラルや債券裁定などの単独の商品からの導入を勧めて」いると述べ、具体的なアドバイスも忘れない。

このヘッジファンドの世界も業界用語が多い。巻末の50ページに及ぶ用語辞典を活用し、テクニカルタームを一度理解してしまえば、より濃度の高いコミュニケーションが可能となろう。ヘッジファンドの格好の入門書として、強く推薦したい。【評者 高橋 誠 三井住友アセットマネジメント執行役員】

■2007/02/03, 週刊東洋経済

ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか―感情労働の時代
ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか―感情労働の時代武井 麻子

大和書房 2006-12
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おすすめ平均 star
starイイ本なのだが
star立ち去り型サボタージュのもう一つの理由
star分析でも対処法でもなく、エッセイ

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看護、介護など感情労働者が磨耗しないで働くためには

本書は「感情労働」という視角から現代のさまざまな事件や出来事を読み解いた刺激的で感動的な書物である。感情労働とは表情や態度や声のトーンを調整して適正な感情の演出を求められる仕事。看護や介護をはじめ接客業や対人サービスなどひと相手の仕事全般がこれに含まれる。こうした仕事に就く者は、地の部分と演出部分との間を頻繁に往き来するために、深部に侵食する独特な疲労を抱え、ついには弾性限界を超えて回復不能の状態に至ることが多い。

歪んだ抵抗ややり場のない怒りが生じ、簡単にいえばキレたり壊れたりするのである。

著者は、「やさしさ」「いい人」「接遇マニュアル」など感情の演技を過剰なまでに強制され、さらにはその「偽りの自己」を本人も積極的に求めてしまう現代を「感情労働の時代」と呼ぶ。それは、看護や介護の「自動機械」化とともに感情労働の国際分業的市場化が進み、感情の希薄化と裏腹にテレビドラマや小説の「涙もの」ブームが流行する時代である。こうした時代に、ひと相手の仕事の核心である共感や気働きといったことを自然体で実践することは可能なのだろうかと著者は問う。

精神看護学を専門とする著者は『感情と看護』というこの領域の記念碑となる前著の中で、医療や看護や介護の仕事が善意の職業でも聖職でもない、人間の仕事であることを論じた。これはこの分野で働く者の人間宣言となった。著者はそのうえで、生身の人間の行う日々の実践の大切さを見直そうとする。企業はもちろん、医療や福祉や教育の現場でも利益優先の市場原理が席捲し機械的対応が蔓延する現在、感情労働の瀬戸際を生き延び、心を擦り切らさずに働き、人間らしく生きるための手がかりを、真正面から語りかけている。【評者 江口重幸 東京武蔵野病院・精神科医】

■2007/02/03, 週刊東洋経済

迷いと決断
迷いと決断出井 伸之

新潮社 2006-12-14
売り上げランキング : 588

おすすめ平均 star
star読む価値あります
star日本で一番有名なサラリーマン
star批判された経営者の反撃

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ソニー元CEOが赤裸々に語る「失敗」の内幕

1995年から2005年まで10年にわたってソニーを率いた出井伸之氏の回顧録。本書を通じ、出井氏は前任CEOだった大賀典雄氏=創業者世代から、自分=「ソニー初のプロフェッショナル経営者」への求心力の移行が思うように進まなかったことを訴えている。

大賀氏との確執は言葉を選びながらも相当、細かく書いている。「生意気なことを言うな。私はCDというフォーマットを作ったんだ。きみはいったい、これまでにどんな商品を作ったというんだ」と叱責された「事件」にも触れている。大賀氏に感想をたずねると「本が出ていることを知らなかった。新潮社ですか。今度読んでみますよ」とのこと。読後の感想を、ぜひ聴いてみたい。

なかには首をかしげたくなるような記述もある。たとえばテレビ事業における失敗について。薄型テレビへの展開が遅れたことに対し、出井氏は「時間軸の誤算」と総括。「この程度の誤算はたいした問題ではない」と言い切る。「その後、ソニーが液晶戦線で巻き返して、今では液晶のトップメーカーの一角を占めている通り、ちょっとした時間軸の誤算はまた時間が解決してくれます」。

しかし、ソニーのテレビ事業の損益状況は厳しいままだ。本当に時間が解決してくれたのか。その疑問を出井氏にぶつけると「今現在のことを書いているわけではないからね」とサラリ。本書には「(薄型テレビの技術として)プラズマトロンをトップラインの商品として続けるという選択肢もあったかもしれない」と記している。この意味についてたずねると、「本にはスペースの都合でプラズマトロンと書きましたが、有機ELが本命だと思っている」という。

出井氏には、引退した今も、「迷い」があるのだろうか。

■2007/02/03, 週刊東洋経済

ヒルズ黙示録・最終章
ヒルズ黙示録・最終章大鹿 靖明

朝日新聞社 2006-11
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おすすめ平均 star
star取材とは・・・
starJournalistが記すNonfiction娯楽作品!
starとにかく緻密な大作

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前作『ヒルズ黙示録』の続編。筆者はライブドア事件や村上ファンドのインサイダー事件を検察による国策捜査と批判しているが、本書でも豊富な取材から、検察が事件を作った様子を描き出す。国家権力に切り込む様は爽快だ。

ただ、取材の中心がライブドアや村上ファンド関係者であるためか、彼らの主張に寄り過ぎな印象も受ける。取材対象に食い込まないとネタは取れないが、近づきすぎると相手に共感を寄せる恐れが出てくる。

ライブドアはソニー買収を計画していた。摘発がなければどうなったかわからないが、それが可能かもしれない金融環境に慄然とする。違法かどうかはともかく、彼らの利益のほとんどはインチキで本業のネット事業は大赤字だったことは明らかだ。にもかかわらず、莫大な時価総額がつき、巨額の資金調達が容易にできてしまう。短期的には株式市場は間違いを犯すし、金融市場に倫理観がないことがよくわかる。

■2007/02/03, 週刊東洋経済

スズキのインド戦略―「日本式経営」でトップに立った奇跡のビジネス戦略
スズキのインド戦略―「日本式経営」でトップに立った奇跡のビジネス戦略R.C. バルガバ R.C. Bhargava 島田 卓

中経出版 2006-12
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おすすめ平均 star
starスズキvsインド政府

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インドビジネスといえばスズキの成功が有名だ。今やスズキグループの総売り上げの約10%はインド。インド国内でのシェアは50%を超えている。

スズキの成功要因について記された本はこれまでほとんどなかった。著者はスズキのインド子会社マルチ・ウドヨグ社の立ち上げから参画し、その後社長となったR・C・バルガバ氏。

スズキは社会主義的経済体制のインドへ、単に日本的経営を持ち込んだわけではない。インド的にアレンジしながら、ある時は多少の妥協をしながら根付かせていったのだ。

最近、インドが話題になるが、それでも実際に進出している日本企業は多くない。インドビジネスは簡単ではないが、21世紀中に中国を凌駕する可能性を秘めたインドに無関心ではいられない。本書はこれからインドに進出する企業はもちろん、既にインドでビジネスを行っている企業にとっても貴重な示唆を与えてくれる。

■2007/02/03, 週刊東洋経済

修羅場をくぐった広報マン
修羅場をくぐった広報マン島谷 泰彦

講談社 2006-11-09
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企業の不祥事が後を絶たない。そこに共通していることは、嘘をつく、隠す、逃げるの三つである。嘘をつかない、隠さない、逃げない。それは広報の大原則であり、企業人の基本と、著者は指摘する。どうしてそんな当たり前のことを当たり前にできないのか。すべてはトップと現場とのコミュニケーション不在が原因である。

その点で、やはり広報の役割は重要である。トップの声を社内外に周知する、社内コミュニケーションの活性化を図る、一方で社外の声を経営に取り入れる。 広報のあり方は、強い企業から尊敬される企業へと脱皮する第一歩なのではないか。長く経済記者を務め、「やじうま広報塾」という勉強会まで主宰する著者は、早くから企業における広報の重要性を訴えてきた。「広報コミュニケーションを教える唯一の手段はケースである」と語るとおり、各社の広報マンに焦点を当てたケースで構成される実録的広報論である。

■2007/02/03, 週刊東洋経済

漱石先生からの手紙―寅彦・豊隆・三重吉
漱石先生からの手紙―寅彦・豊隆・三重吉小山 文雄

岩波書店 2006-11
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漱石の書斎である「漱石山房」に学生が集ったのは、『我輩は猫である』の連載が佳境に入った頃の明治38年頃から彼の死去する大正5年に至るまでであった。

後に「漱石山脈」と呼ばれた彼らの中で、本書は、寺田寅彦、小宮豊隆、鈴木三重吉の3人に宛てた漱石からの手紙を中心に、師弟関係を詳らかにしている。

文豪「漱石先生」の手紙であるが、高圧的な内容ではなく、実に謙虚で、ユーモラスで、それでいてきちんと要点を定めている。門下生が自作を送ると、それぞれを批評し、さらに知り合いの雑誌社に売り込んだ。

一番弟子の寅彦は、「ホトトギス」の寵児になり、やがて物理学者のかたわら、随筆家吉村冬彦として文名を馳せる。豊隆は漱石に最も愛された弟子であり、独文学者になるが、漱石全集を編纂する。三重吉は在学中に漱石の推薦で文壇にデビューし、後に「赤い鳥」を創刊する。本当にうらやましい師弟関係であった。

■2007/02/03, 週刊東洋経済

私家版・ユダヤ文化論
私家版・ユダヤ文化論内田 樹

文藝春秋 2006-07
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おすすめ平均 star
star邪悪な人にならないように、自分の仮説に反する事実にも目をそらさないでいよう
star怪しげな人気者
star知性とは、「立ち位置」のことである。

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著者に聞く 『私家版・ユダヤ文化論』を書いた神戸女学院大学文学部教授 内田樹

ユダヤ人という不思議な実存を多面的に考察

――本書では広範囲にユダヤ文化論を考察していますが、その中での「ユダヤ人と日本人は関係がない」「ユダヤ人とは誰かわからない」など、論理と結論は明快で、非常に面白く読めます。

私はユダヤ系フランス人の哲学者レヴィナスに師事して現象学や実存主義を学びましたが、レヴィナスは安息日を守る敬虔なユダヤ教徒で、フランス・ユダヤ人の精神的支柱でした。その哲学の根底にはユダヤ思想があります。

そのため若いころから、ユダヤ思想に興味を持つようになり、今日まで研究を重ねました。その「集大成」をわかりやすく、しかも当のユダヤ人が読んだとしても理解できるように書いたつもりです。

一つの結論は、ユダヤ人とは宗教集団でもなく、人種や民族でもなく、われわれが持っている概念や認識の枠組みでは理解できない存在であることです。しかし、ユダヤ人は「実存」しており、国際的にもある種のネットワークを持っていることは事実で、非常に不思議な存在です。

普通宗教的、民族的に少数集団は、集団内で均一性を求めますが、ユダヤ人の場合、それがまったくありません。

ユダヤ教はキリスト教のように統一された教義がなく、学派の違うラビたちの聖書やタルムードの解釈によって、教えが生成・発展していきます。この教義の体系と、周囲の反ユダヤ主義者に「捕食」されないがために、「知性」を発展させたことが、ユダヤ人が人類に貢献したイノベーション(革新)につながっていると思います。

多分、18世紀以降の人類が経験したイノベーションの90%はユダヤ人がもたらしたのではないか、と思います。

米国のユダヤ人未来学者トーブは、いつか米国でも反ユダヤ主義が台頭することを懸念していますが、ユダヤ人のいない米国は、オーストラリアのような牧歌的な国になるだろうとも書いています。

粗っぽく言えば、もし、この世界にユダヤ人という存在がなかったら、三つの一神教も共産主義も、原爆もコンピュータもなく、ハリウッド映画やカウンターカルチャーなどもなかったことでしょう。

――こうしたユダヤ人の過剰な存在が、反ユダヤ主義者をいらだたせるのでしょう。

本書第3章「反ユダヤ主義の生理と病理」では、ヒトラー思想の原型にもなった『ユダヤ的フランス』を書いたフランス人作家ドリュモンや、最初のファシスト・モレス侯爵を書いていますが、彼が望んでいるのは、牧歌的で温かい人間関係に満ちた静止化した社会ですね。

彼らの考えや用語の使い方は、現在の日本や世界で見られるグローバリズム経済批判者によく似ています。  

もし、世界にユダヤ人がいなかったら、われわれはもっと原生的な生き方をしていたでしょう。反ユダヤ主義者がいうように、そのほうが人類にとって幸福だったかもしれません。だが、そうした状態では、形而上学的認識がないので、扇動者、宗教的狂信者の行動によって、簡単に絶滅していたかもしれません。ユダヤ人とは人類が進化するために、神が与えてくれたファクターかもしれません。

■2007/02/03, 週刊東洋経済

楽園の夢破れて
関 貴星 (著)

凍土の共和国―北朝鮮幻滅紀行
金 元祚 (著)

北朝鮮に消えた友と私の物語
北朝鮮に消えた友と私の物語萩原 遼

文藝春秋 2001-05
売り上げランキング : 184200

おすすめ平均 star
star北朝鮮入門書か?
star一気に読んでしまった。
star推理小説のごときノンフィクション

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闇からの谺―北朝鮮の内幕〈上〉
崔 銀姫 (著), 申 相玉 (著)

闇からの谺―北朝鮮の内幕〈下〉
崔 銀姫 (著), 申 相玉 (著)

北朝鮮を知りすぎた医者
北朝鮮を知りすぎた医者ノルベルト・フォラツェン

草思社 2001-05
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おすすめ平均 star
star訳が・・・
star数少ない第三者的視点のレポート
star西洋人からの視点

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朝鮮総聯の大罪―許されざる、その人びと
朝鮮総聯の大罪―許されざる、その人びと金 昌烈

宝島社 2006-05
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韓国はなぜ北朝鮮に弱いのか
韓国はなぜ北朝鮮に弱いのか田中 明

晩聲社 2004-11
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日本外交はなぜ朝鮮半島に弱いのか
日本外交はなぜ朝鮮半島に弱いのか佐藤 勝巳

草思社 2002-03
売り上げランキング : 368762

おすすめ平均 star
star題名の如くこのことに疑問を抱く方は、是非お読み下さい。
star信じられないような事実を高い信憑性で暴く!

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ならず者国家―世界に拡散する北朝鮮の脅威
ならず者国家―世界に拡散する北朝鮮の脅威ジャスパー ベッカー Jasper Becker 小谷 まさ代

草思社 2006-09
売り上げランキング : 176822

おすすめ平均 star
star世界に拡散するテロリズムの禍根
star恐ろしいのは「ならず者」なのか「国家」なのか
star国家としての存在を許されない‥その実態とは

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北朝鮮本をどう読むか
北朝鮮本をどう読むか和田 春樹 高崎 宗司

明石書店 2003-02
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おすすめ平均 star
starノックダウンされた本
starバカにつける薬無し!
star「拉致はない」と言っていた和田氏

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北朝鮮を知る10冊 この国をもっと以前から知っておくべきだった

拉致、核実験などで北朝鮮への関心が最近になって高まっているが、日本人は以前からもっとこの国に関心を持つべきだった。1959年からの北朝鮮帰国事業では、「地上の楽園」という宣伝に踊らされて3000人の日本人妻を含む10万人の在日朝鮮人が帰国し、その多くが殺され、餓死し、圧政に苦しんでいる。

帰国事業とは、金日成が在日朝鮮人を人質とするための策略だったという。実際、在日朝鮮人は帰国者を人質とされ、発言の自由を奪われ、献金を求められ続ける。北朝鮮についての情報が極めて限られていた中で、在日朝鮮人は、本来は貴重な情報源であるはずだった。しかし、在日の人々は、人質を取られ、うそをつくしかなくなっていた。

帰国運動直後の最初の貴重な証言として、関貴星著『楽園の夢破れて』(62年)がある。楽園の祖国と思って北に渡った人々が、独裁政権の現実に失望する有様が活写されている。朝鮮総聯の幹部は、関氏に「本当のことを知らせると帰国者がいなくなってしまうからな」と言ったという。同胞をだまして、北のために奴隷の労働力と人質を送ったのだ。

二十余年後、金元祚著『凍土の共和国』(84年)では、帰国した姉に会いに北朝鮮を訪れた弟は、恐るべき北の現実を知り、この国にこそ真の革命が必要だという言葉で結ぶ。

萩原遼著『北朝鮮に消えた友と私の物語』(98年)は、北に帰った友人を『赤旗』平壌特派員となった著者が探す。金正日が金日成の党内粛清に活躍したことによって後継者の地位を確実にしたという指摘が恐ろしい。日本のテレビで、からかい気分で見ていられるような二代目のボンボンではないということだ。

崔銀姫・申相玉著『闇からの谺』(88年)では、60年代の韓国映画を代表する申監督とその夫人でスター女優の崔女史が、北朝鮮に拉致され、北で映画を作るよう金正日に依頼される。90年代以前に、北の政権中枢の姿を描いたのは画期的だ。金正日は、自分を礼賛する人々を指して、申先生、あれはみんなうそですよ、と言ったという。

90年代になって、ドイツ人によって、北の実態を知らせる報告が書かれる。ノルベルト・フォラツェン著『北朝鮮を知りすぎた医者』(2001年)は、残忍極まりない制度によって、ロボットのように動く兵士を「培養」している北の体制を告発している。著者は、最も関心を寄せると考えていた同族の韓国でこそ最も反応が冷たかった、韓国は北朝鮮の現状について見て見ぬふりをすると言う。

北にだまされた人々は世間知らずで無責任な日本のインテリだけではなく、在日朝鮮人もだ。しかも、日本という異国で差別されながら、徒手空拳で一財産を作った立派な人々までもが含まれている。世間の表も裏も知り尽くしたはずの人々までをもだます北朝鮮のシステムはどんなものか。 

金昌烈著『〈増補版〉朝鮮総聯の大罪』(03年)は、帰国者という人質、洗脳、利益供与、手段を弄して人々を陥れる総聯の活動を描いている。そこにしか生きる道のない人間を作れば、組織の奴隷ができるという原理は、北も総聯も同じだとわかる。総聯は、力のない野党と協力しても意味がないとして、自民党や右派の団体にも資金提供を通じて結びついていたという。

奇跡の成長を遂げ、自由な民主主義国となってOECDにも加盟した韓国で、飢餓と圧政の北朝鮮に対して融和的な態度が高まっているのはなぜなのか。

田中明著『韓国はなぜ北朝鮮に弱いのか』(04年)は、北の対南工作の結果という。北がどのような国かわかっているのに、工作されるのはなぜか。私には必ずしも説得的でないが、貴重な情報は詰まっている。

日本も北に弱くないとは言えない。佐藤勝己『日本外交はなぜ朝鮮半島に弱いのか』(02年)によれば、北は、日本の技術と、在日朝鮮人と朝銀の不良債権のカネで核兵器を造ったようだ。朝銀の不良債権は日本の税金で埋めているのだから、何のことはない、日本の税金で造ったと言える。同書には、総聯の暴力、有力者への利益供与、在日朝鮮人の脱税幇助の実態が実名を交えて書かれている。真偽のほどは私には判断できないが、そうだったのかと思わせる迫力はある。

では、どうすればよいのか、よかったのかと言えば答えはある。3000人の日本人妻と10万人の在日朝鮮人を日本に取り戻すべきだった。日本に戻させなければ経済制裁を発動すべきだった。

戻せばスパイが紛れ込んだだろうが、強力な反北朝鮮団体ができた。北に協力するマイノリティの社会は破壊された。日本からの送金停止もできた。北の体制の恐ろしさが知られ、日本から技術と資金が流出することはなかった。拉致もなされなかっただろう。自由と人権を擁護し、助けるべき人々を助けることが最大の安全保障になる好例である。

今どうしたらよいかというと、打つ手が限られている。国境を接する中国と韓国が経済制裁に協力し、北の民主化と核兵器除去に動かないかぎり、効果は限られる。アメリカが軍事的に動かないかぎり、核の除去も難しい。情けないが、外国は何をしてくれそうかを考えるしかない。

ジャスパー・ベッカー著『ならず者国家』(06年)は、アメリカによる北朝鮮崩壊のシナリオを描く。北の悲惨を描く口調が、在日朝鮮人や日本人の悲痛な語りかけとは異なって、どこか距離を置いているように感じるのが残念だ。北に批判的な本ばかりを挙げてきたから、好意的な本を1冊挙げておこう。和田春樹・高崎宗司編著『北朝鮮本をどう読むか』(03年)は、北に批判的な本を批判的に紹介した本だ。私にとっては、何を今さらという中身だが。【大和総研チーフエコノミスト 原田泰】

■2007/02/03, 週刊東洋経済

脳障害を生きる人びと―脳治療の最前線
脳障害を生きる人びと―脳治療の最前線中村 尚樹

草思社 2006-10-28
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おすすめ平均 star
star脳―見えない障害の恐怖
star脳治療の光と影

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脳障害治療の最前線を描いた感動的なドキュメント

病気からであれ、あるいは事故からであれ、「人間活動全体の司令塔」である脳に障害を受ける人が増えてきている。しかも、こうした障害を持った人は、今までと全く異なる生活状況に放り込まれ、さらに彼らを取り巻く家族にも深刻な影響を与える。一般論であるが、脳障害そのものが、ともすれば「死に至る病」と思われ、余りにも怖ろしいために自分は無関係でありたいと願う期待が働くためか、他の重大な疾病と比べて、知識がほぼ皆無に近い。

したがって、担当医の診断に従わざるをえないのである。それに現行の健康保険制度の診療報酬のために、長期入院は歓迎されず、治療がとりあえず終われば系列の療養型病院へと移されてしまう。もちろん、ここでは慢性期となった患者を受け入れるだけで、さながら八方塞がりの状況である。

本書は、次のような驚くべき事例を紹介している。交通事故で脳障害を受け、意識不明のまま、搬送先の病院での手術・治療が終わり、主治医はその患者の母親に退院を強く迫る。転院するあてもない母親に「両足を切断すれば、別の治療となるのでこの病院にいられ、事実、同じ様な症例があります」と断言する始末。直ちに転院し、その後奇跡的にも、患者が自分の意思を伝えられるようになる。患者によると、入院の数日後に、意識が回復していたという。

それにしても、脳障害が起こる可能性をゼロに出来ないという現実の対策として、われわれ自身が医療の現状をしかと認識しなければならない。

本書の第1部「知られざる現実」は、モンテ・クリスト症候群とも呼ばれる封じ込め症候群、施錠症候群。また俗に植物状態とも呼ばれる遷延性意識障害。さらに、はた目からはそうとは見えない社会的な障害といわれる、高次脳機能障害といった病状から、「生」を取り戻す患者、その患者を支える家族と医療関係者の感動的なドキュメントである。

第2部「脳障害を乗り越えて」は、脳治療の最前線としての脳の再生の可能性、さらに理学療法の成果、芸術と医療を融合させた音楽運動療法の挑戦と信じ難い成果。それとは逆に、最近の健康志向ブームにのって活況を呈している脳ドックの危険性や「金のなる木」とも言われる過剰な予防医学への警鐘などをも含めて、新しい医療スタイルを詳らかにしている。

そして本書は、「医療や福祉業界の論理を前提にするのではなく、患者の論理、障害者の論理、そして人間の論理で社会を見つめ直すこと、それこそ真の『構造改革』なのではないだろうか」と結んでいる。【評者 川成洋 法政大学工学部教授】

■2007/01/27, 週刊東洋経済

腐蝕生保(上巻)
腐蝕生保(上巻)高杉 良

新潮社 2006-11-14
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おすすめ平均 star
star取材は素晴らしいが描写が薄っぺらい
star帯の文句に釣られたけれど・・・
starリーマンの、リーマンによる、リーマンのための小説。

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腐蝕生保(下巻)
腐蝕生保(下巻)高杉 良

新潮社 2006-11-14
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おすすめ平均 star
star取材は素晴らしいが描写が薄っぺらい
starトップ批判のモデルを提供する小説。(実力者に限る?)
star魅力のない主人公像

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群を抜く面白さ 赤裸々な権力抗争を描く

本書は読み出したらとまらなくなる。企業小説第一人者である高杉良氏が大手生保を題材にその社内の実態を描いた最新作である。評者は高杉氏の著書はすべて読んでいるファンである。『辞表撤回』(講談社文庫)では実在の主人公を同氏に紹介した関係でもある。同氏の著作は大きく二つのタイプに分けられる。主役を評価して賞賛するもの・たとえば、ワタミの社長をモデルにした『青年社長』など。

もうひとつは、主役の悪事を暴き、ペンの力で制裁を加えるもの・たとえば、労組委員長をモデルにした『労働貴族』や日経トップをモデルにした『乱気流 小説・巨大経済新聞』など。

後者の作品の中でも、ミドルが悪事に挑むケースが多い。本書もその範疇に入るが、多くの著作の中で面白さが光る。

サラリーマンの普段好きな話題は人事が多い。中でも、役員の人事ネタは酒席などで一番好まれる。その大企業役員内部のパワーポリティックスをここまで赤裸々に描き出したものはほかにないと思える。しかも、高杉小説は「書いてあることの9割は事実」といわれている。

トップの選ばれ方からして、驚愕する。社内に愛人を持つ前トップから、人気のない「暗いベリヤ的人物」が次期社長に指名される。その社長は社内で専制政治を敷くとともに、夫人を同伴して社費で豪遊をする。

それに対して、正義感に燃えミドルの理想を体現するかのような主人公が出てくる。一方で、現場で働く人の立場に立って実績をあげ、不倫もありながら、執拗に強大なトップに挑んでいく。一企業を超えたミドルの生き様を考える題材がぎっしり入っている。自分や自社に置き換えて読むことで日々の仕事への自身の姿勢も同時に問われてくる、まさに生きた経営学のテキストである。【評者 西山昭彦 東京女学館大学教授】

■2007/01/27, 週刊東洋経済

あなたが平等主義者なら、どうしてそんなにお金持ちなのですか
あなたが平等主義者なら、どうしてそんなにお金持ちなのですかジェラルド・アラン コーエン Gerald Allan Cohen 渡辺 雅男

こぶし書房 2006-10
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おすすめ平均 star
star善意で舗装された「われらの行く道」

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ユダヤ人思想家の遍歴と考察 伝統的マルクス主義を批判

書名は、一般向け啓蒙書のようにも見受けられるが、すらすら読める本ではない。本書は、著者コーエンがエディンバラ大学の伝統ある招聘講義、「ギフォード講義」を担当したときの講義録をまとめたものだ。

本書の課題は、書名の〈問い〉そのものにせまること。社会主義とか平等主義的な正義といったものについて、国家の正義や個人的選択にまつわる正義をも視野に入れつつ、マルクス主義の諸問題、最近の政治哲学上の争点、ユダヤ教やキリスト教の諸概念をからめて探求している。そのため、マルクス主義と新自由主義とが対比的に考察され、あわせてキリスト教概念が検討されている。扱っている領域の広さからして、読者は現代思想を概観し、それが抱える諸問題まで知らされた思いになることだろう。

コーエンといえば、伝統的マルクス主義とは一線を画すようになったアナリティカル・マルクシズムの潮流を代表する一人として日本の研究者のあいだでも話題になる人物だ。とはいえ、このような学問的潮流に傾斜する人たちの背景には、いかなる苦悩があったのか、具体的に知られているわけではない。

本書の魅力の一つは、深淵な講義の随所で、著者の生い立ちと思想遍歴が述べられている点だ。とくにマルクス主義の強い影響下で育ったというコーエンが、伝統的マルクス主義と決別したばかりか、それを自分の成長の結果だと称してとりあげる根拠は、現代のマルクス主義者が共通していだく諸論点のうち最重要のものをふくんでいるだけに、十分考察に値する。全巻をとおして、著者自身の体験をふまえて論じられているから説得的だ。格差拡大にかんする議論は盛んだ。学界でもそうだ。時宜にかなった邦訳書だといえよう。【評者 瀬戸岡紘 駒澤大学経済学部教授】

■2007/01/27, 週刊東洋経済

有望株の選び方
有望株の選び方鈴木 一之

日本経済新聞社 2006-12
売り上げランキング : 83443

おすすめ平均 star
starバランスの取れた入門書

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「実践的」株式投資本の多くは、チャート分析の指南を売り物とする。一方で、マクロ経済や企業収益から銘柄を選ぶファンダメンタル分析はどうしても理屈っぽくなりがち。手っ取り早く結果を求める読者には敬遠されてしまう。

本書はファンダメンタル分析の指南本ながら、その内容は実践的だ。株式投資のスタイル別に解説を行っているが、中でも圧巻は、景気の波に連動して株価が動く企業に投資するシクリカル投資の解説だ。

原材料の価格動向に企業収益がストレートに反映するシクリカル株は、景気動向に反応するトップバッター。つまりシクリカル株の動きを観察することで、その後の日経平均の動きも予想できるという。

「株価は景気に先行するのではなく、景気の実相をストレートに表現している。景気統計の発表が実態から遅れるために、株価が先行しているように見えるだけ」という指摘にも思わずうならされる。

■2007/01/27, 週刊東洋経済

自転車依存症
自転車依存症白鳥 和也

平凡社 2006-11-16
売り上げランキング : 133805

おすすめ平均 star
star後半息切れ

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自転車ブームだが、一部のマニアにとって、対象は使用を前提とせず純粋に鑑賞するための存在になる。理由は、「使うと傷む」からだ。使わないのだから性能は問わない。「このブレーキパーツはたとえようもなく美しいが、唯一ささいな問題があって下り坂で利かないのだ」。屋外放置など論外。自宅の書斎に少なくとも数台が常時ディスプレイされ、ていねいに磨かれほこりを払われているさまはまるで骨董品。

オーダーフレームに生産中止の希少部品となれば価格も1台100万円はくだらない。こんな自転車フリークが最近増殖している。

健康志向の自転車ブームを発端にMTBからツーリング、ロードに移行、さらに室内自転車派への転向組が増えたためらしい。

著者はこの中では伝統的で健全な自転車乗り。それでも世間一般からは相当変わった人物に見えるだろう。この書が世の自転車乗りの認知度向上に一役買うことを祈りたい。

■2007/01/27, 週刊東洋経済

写真集 硫黄島
写真集 硫黄島『丸』編集部

光人社 2006-12
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太平洋戦争末期の1945年2月19日から始まった硫黄島での戦闘。総兵力25万を擁するアメリカ軍の上陸作戦に対して、日本軍守備隊2万1200名。まさに多勢に無勢、わずか5日間で攻略すると豪語したアメリカと軍を対峙して、3月26日の日本軍の玉砕で戦闘は終了した。その後、硫黄島は戦略爆撃機B29の中継基地となる。

本書は、その一カ月余りの死闘の写真集である。おそらく、各場面からして、アメリカ側の従軍カメラマンが写したものであろう。

硫黄島の写真といえば、5人の兵士が星条旗を立てようとした瞬間を捉えた余りにも有名な写真。それに反して本書の巻末部の日本人将兵の戦死写真。捕虜となった将校が洞窟の中に逼塞している部下の兵士に投降を呼びかけるが、それすら信じられなくなって「生きて虜囚の辱めをうけず」を選んだのだった。その他、装備や兵站の雲泥の差、毎日の記者会見、これでは勝負にならなかった。

■2007/01/27, 週刊東洋経済

現代社会の倫理を考える・第7巻 教育の倫理学
現代社会の倫理を考える・第7巻 教育の倫理学加藤 尚武

丸善 2006-11-30
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おすすめ平均 star
starヒント集としての活用なら

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子どもが、積極的に勉強するようになるのは、その内容が面白くて、課題を解くことが楽しみという内発的な関心だけではないだろうか。教育制度全体が、子どもの能力の発展を抑えないようにするというのが根本の原理であろう。

ところが、わが国の文科省とそれに隷属する教育委員会が強権を行使して、学校教育の枠の中に収まるような従来型の教育観を堅持している。

かつてイギリスで小学校の教育改革が行われた時、BBC2で午前中、小学生、保護者、教師、学識経験者、文部大臣などが1週間にわたって激しい討論を展開し、実にオープンな改革論議があった。

本書は、プラトン以来の西洋教育哲学と儒教的教育哲学と教育史の大筋を述べ、しかも、教材が印刷物から電子情報へと転換することの影響を、教育の根幹に迫る根本的な改革の契機としてとらえ、教育の未来像を提示したタイムリーな著作である。

■2007/01/27, 週刊東洋経済

ドイツ・1936年―名取洋之助写真集
ドイツ・1936年―名取洋之助写真集名取 洋之助

岩波書店 2006-12
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ナチス政権下のドイツを駆け抜けた青年のまなざし

『写真の読みかた』という名著がある。発行は1936年。それは永く写真を志す者や編集者にはバイブルのようなものだった。写真は一点主義ではなく、ストーリー性のある組写真として見せることで強力なメッセージを産む、という実例を使った啓蒙の書。名取洋之助の名はこの著者としてよく知られていた。

名取の生涯は52年間。その大半はフォトディレクター、プロデューサー、出版経営者、軍部とのネゴシエーターなど八面六臂だったが、始まりは写真家だ。三田閥の家に生まれ、慶應普通部からドイツに渡り工芸デザインを学んだ。1930年代はグラフジャーナリズムの勃興期。名取はドイツ人女性を妻に得て欧州最大の出版社のウルシュタイン社の契約カメラマンとなった。時代はナチスの成熟期であり、ヒトラーとゲッぺルスは視覚表現の力を信奉し、大衆のプロパガンダにその最新の技術と才能を総動員した。オリンピックベルリン大会(36年)はその第三帝国の威信を懸けたものだった。

本書の前半には日本人選手を中心にした写真が選ばれている。「前畑がんばれ!」の水泳、「友情のメダル」の棒高跳び、日本人としてマラソン金メダリストとなる孫基禎などの伝説の選手たち。

ナチ式敬礼をする超満員のスタンドはいま見るとグロテスクだが、名取はニュルンベルグのナチス党大会も撮影したという。本書の後半には26歳の名取がメルセデスを駆ってドイツ各地を私的に撮影旅行した作品が掲載されている。保守的なバイエルンなど南部地方が多いが、素朴な人びとと風景、ロマネスク建築に注がれた目には悠揚の時を感じる。その後の名取の波瀾の人生はここにはまだ無い。【評者 写真家 中川道夫】

■2007/01/27, 週刊東洋経済

これから情報・通信市場で何が起こるのか―IT市場ナビゲーター〈2007年版〉
これから情報・通信市場で何が起こるのか―IT市場ナビゲーター〈2007年版〉野村総合研究所情報通信コンサルティング一二部

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ITロードマップ〈2007年版〉情報通信技術は5年後こう変わる!
ITロードマップ〈2007年版〉情報通信技術は5年後こう変わる!野村総合研究所技術調査部

東洋経済新報社 2006-12
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これからのIT市場はどうなるのか

あっという間に企業や個人の生活の隅々に浸透したIT(情報技術)。そのITが創り出す市場や進化の模様を解説し、今後を予測する本を2冊ご紹介しよう。

『これから情報・通信市場で何が起こるのか IT市場ナビゲーター2007年版』(野村総合研究所 情報・通信コンサルティング一・二部著)と『ITロードマップ 2007年版』(野村総合研究所 技術調査部著)である。

ITは話す、伝えるという通信技術として活用されるだけでなく、いまや、貯める、聴く、観る、創造するという「生活」「文化」の世界を広げる技術として進化しつづけていることは、周知の事実だ。

この進化により、他業界との融合が進み、新しいサービスが提供され、巨額の取引を生む市場が形成されていることを忘れてはならないだろう。

めまぐるしく変化し成長するため、チャンスもリスクもはらむIT市場。だからこそこの2冊は、業界関係者のみならず、企業の戦略立案を担当する多くの方方にご一読いただきたい。

■2007/01/27, 週刊東洋経済

【東洋経済新報社からの近刊本】

■12月23日発売

あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実
あなたのTシャツはどこから来たのか?―誰も書かなかったグローバリゼーションの真実ピエトラ リボリ Pietra Rivoli 雨宮 寛

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現代マクロ経済学講義―動学的一般均衡モデル入門
現代マクロ経済学講義―動学的一般均衡モデル入門加藤 涼

東洋経済新報社 2006-12
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star世界標準のマクロ経済学=Dynamic General Equilibrium

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お金持ちだけが知っている スマートマネー株式投資戦略〈2007年版〉
お金持ちだけが知っている スマートマネー株式投資戦略〈2007年版〉中丸 友一郎

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starやや難しいが読みごたえあり

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「健全な市場社会」への戦略―カナダ型を目指して
「健全な市場社会」への戦略―カナダ型を目指して八代 尚宏

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■12月25日発売

「陰」と「陽」の経済学―我々はどのような不況と戦ってきたのか
「陰」と「陽」の経済学―我々はどのような不況と戦ってきたのかリチャード クー Richard C. Koo

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star経済がわからない人の為の経済学の本
star経営者のはしくれとして共感をもった

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戦略的株式公開―ビジネスプランで実現する
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