メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2007年12月15日~12月22日
| 1997年――世界を変えた金融危機 (朝日新書 74) | |
![]() | 竹森 俊平 朝日新聞社 2007-10-12 売り上げランキング : 433 おすすめ平均 ![]() 必読。ただし、危機は常に予想もしない形でやって来る。 「不確実性」を前提とした政策当局の危機管理の必要性説く 頭の整理になるが学者の限界も見えるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
「ナイトの不確実性」から金融危機の結果を分析
ブラックマンデーから10年経った1997年は、日本では、戦後初の銀行・証券の破綻が発生した年であり、世界的にもこの年はアジア通貨危機をはじめとする混乱の年であった。
国内では橋本龍太郎首相による財政再建を優先した消費税率引き上げ等の施策がとられ、そのデフレ効果により、第1次石油危機以来の初めてのマイナス成長を記録した。
その中で、11月には拓銀、山一証券という主要金融機関の倒産が起こり、著者によれば「政府が管理できたはずの経済問題が日本を内部から危機に陥れた年」であった。
著者は、海外での流動性危機やソルベンシーにかかわる危機という基準では測れない、日本の内なる「政治の不確実性の危機」を90年代前半にさかのぼって焙り出す。
一方で、著者は、この年7月のタイの流動性危機に端を発したアジア通貨危機による混乱収拾にあたったIMFの行動に厳しい評価を下す。実力はつけてきているが流動性の枯渇に直面した新興工業国に対して、中央銀行に代わる「最後の貸し手」としての機能発揮を模索せず、財政緊縮策や構造・制度改革などの誤った選択を押し付けたという評価である。
ようやく半年近く経った12月になって、流動性危機への対応がとられ、各国はかなりの混乱を経つつも何とか立ち直ることができたが、この間の経緯は、かえって投資家の慎重な選択行動をもたらし、アジア諸国をめぐる金融はその後、比較的安定を保つこととなった。
東アジア諸国を中心とした成長著しい発展途上国自身も、97年までの活発な借入国から貸出国に転じていき、バーナンキが指摘したような世界的な貯蓄過剰を招来して、結果としての低金利時代を到来させる一因となった。
97年から、さらに10年が経過した2007年には、00年の米国ITバブル崩壊後の景気後退からの脱出策として功があった金融緩和策のツケが、サブプライムローン問題として表面化してきた。米国での住宅ローンの破綻の増加という古典的なバブル崩壊に加えて、現代的な金融工学的手法を駆使した新金融商品に起因する世界的なリスクの広がりは、まさにその真のリスクを計量化できない。経済学者フランク・ナイトが指摘した不確実性の世界である。
ともすると派手な動きに翻弄されて本質的な部分が見えづらくなる内外金融をめぐる話題を、歴史的な視点に立脚しつつ、理論面からの解説を交えながらダイナミックに展開していく著者の筆致には自然と引き込まれていく。【評者 門多 治 電力中央研究所上席研究員】
| カモメになったペンギン | |
![]() | ジョン・P・コッター 藤原和博 藤原 和博 ダイヤモンド社 2007-10-27 売り上げランキング : 715 おすすめ平均 ![]() 簡単にコッターの理論を理解できる プロセスはわかった、が…… 書かれていることはわかる、でもできないAmazonで詳しく見る by G-Tools |
組織変革を実現するリーダーシップ論の教材
本書は、リーダーシップ論で有名なハーバード・ビジネススクールのジョン・コッター教授が、変革のマネジメントの8段階のプロセスを、わかりやすくペンギンの寓話におきかえて説いたユニークな作品だ。
わずか100ページ足らずで、1時間もあれば読める本だが、その中味は非常に濃い。
危機意識の醸成、変革推進チームの組成、変革のビジョンの創造と浸透、短期的な成果の創出、新しい文化の構築といった各段階での具体的な行動のアイデアが、ペンギンの世界の例を使って巧みに描かれており、読者は楽しみながら学べる。
中でも、コミュニケーションの大切さ、人間の理性だけでなく感情にも語りかけることの大切さは、見落とせないポイントだ。また、リーダーシップが特定の人だけのためにあるのではなく、すべての人々に必要なものであることもしっかり学びたい。
今やどんなにうまく行っていても常に「変革」が求められる時代だ。こうした時代では、この「変革のリーダーシップ」を身につけ、発揮することは、すべてのビジネスパーソンにとって必要なことだ。また、「変革」は企業だけに限ったものではなく、あらゆる組織に必要だ。
むしろ学校、病院、官庁、地方自治体、政党といった組織のほうがよほど必要なところが多いのではないだろうか。そういった意味では、あらゆる人々に本書を読んでいただきたい。
本書は、リーダーシップやマネジメント研修の教材としてふさわしいといえよう。本書を題材にグループ内で「変革」についての活発な議論をすることを期待したい。この変革のプロセスについてより深く学びたい人には、姉妹書である『企業変革力』『ジョン・コッターの企業変革ノート』を薦めたい。【評者 黒田康史 YSコンサルティング代表】
| イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 2 | |
![]() | J.J. ミアシャイマー S. ウォルト 副島 隆彦 講談社 2007-10-17 売り上げランキング : 11728 おすすめ平均 ![]() イスラエルの戦史と米国のイスラエルロビーの実態が分かりますAmazonで詳しく見る by G-Tools |
「イスラエルのために」動く米国外交を批判
『イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策2』が1に引き続いて出版された。1が総論、2が各論の位置づけである。
1で「今日の米国外交はイスラエル・ロビーに影響され、米国の国益を損ねている」との主張がなされたが、2ではさらに、詳しくその主張を展開する。
イラク戦争については、「多くの米国人はイラク戦争が石油関連の動機で始められたとみているが、それを支持する証拠はなく、逆にこの考えに疑念を持たせる証拠がある」「イラク戦争は少なくともイスラエルをより安全にするために開始された」と述べている。
イランに関しては、共和党、民主党を問わず、「次の大統領候補の発言をみると、ブッシュ後継大統領がイラン攻撃を行なう可能性がある。攻撃は一部はイスラエルのために行なわれる」と指摘している。
これらの指摘が余りにも「通説」と異なるため、読者はこの本をどの程度信用して良いか戸惑うであろう。「イラク戦争は大量破壊兵器とアルカイダとの結びつきで説明されていたはずだ。イランに強硬姿勢をとるのはイランが核兵器開発を実施しようとしているからだ」と。
しかし、この点に関して二つ指摘しておきたい。第一にブッシュ政権の米国メディア操作は極めて優れ、自己の政策実現のため、都合のいい情勢分析を定着させてきた。通常日本のメディアはこれを追う。
レベルの高い米国政策批判がほとんど紹介されていない。日本の読者はブッシュ政権の主張に慣れ親しんでいる。
第二に著者ウォルトはこの本を書くまで極めて高い評価を受けてきた学者であることだ。著者の主張を念頭において、今後、事実関係を見ていけば、著者の主張の正しさが次第次第に理解されていくだろう。【評者 孫崎 享 防衛大学校教授】
| 大阪経済大復活 | |
![]() | 増田 悦佐 PHP研究所 2007-08 売り上げランキング : 32421 おすすめ平均 ![]() 読んでみる価値はありますが。。。 大阪(関西)の明るい未来を描く内容です。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
戦後の日本経済に絶大な影響を与えた政治家・田中角栄。今話題の道路特定財源なども田中の発案でできた。だが、最大の罪悪は「均衡ある国土の発展」をうたい、東京、大阪のコア地域に新しい工場や大学を造らせない法律を作ったことだ。この法律の被害をいちばん受けたのが大阪だった、と著者は指摘する。
工業生産で最も生産性の高い大阪が、その潜在能力を封じられたからだ。
だが、この「天下の悪法」(大阪商工会議所)である工業等制限法も、2002年に撤廃された。ようやく大阪のコア地域で自由に工場が新設できるようになったのだ。今、大阪湾岸には、シャープの液晶工場、松下電器のプラズマ工場などができつつある。日本の地方や海外に行っていた工場の一部が戻ってきた。こうして大阪は本来の実力を取り戻そうとしている。なお著者によれば、トヨタ自動車が飛躍できたのは愛知県に工業等制限法が適用されなかったため、という。
| 名もない顔もない司法―日本の裁判は変わるのか (NTT出版ライブラリーレゾナント 40) | |
![]() | ダニエル H.フット 溜箭 将之 エヌティティ出版 2007-11 売り上げランキング : 76446 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者はハーバード・ロー・スクールを卒業後、米国連邦地裁のロークラークや弁護士、日産自動車などを経て、現在は東京大学大学院法学政治学研究科教授を務める。
本書では日本と米国の裁判制度を比較している。日本の裁判制度には批判が高まっている。刑事、民事とも市民社会の感覚から外れた判決が多い。刑事、民事とも判決に時間がかかり、問題解決の機能が弱いこと。刑事では、裁判官が検察が起訴した事件の99・9%に有罪の判決を出すという、旧ソ連やナチス・ドイツも顔負けの異常な高率。警察調書、検察調書を最重要視して、公判で新たな証言や証拠が出ても平気で無視する裁判官に批判が集まる。
こうした日本の裁判制度の制度設計や「生理」について、著者は分析する。
そこにあるのは、名もない顔もない裁判官、日本の司法制度である。日本の司法制度の改革を考えるうえで貴重な示唆を与える。
| 世界のとんでも法律集 (中公新書ラクレ 259) | |
![]() | 盛田 則夫 中央公論新社 2007-10 売り上げランキング : 85355 おすすめ平均 ![]() 暇つぶしに最適 とんでも法律??? 実は合理的。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ところ変われば人の考え方が変わり、国が変われば法律が変わる。
イギリスは「自殺したら死刑」と定めた。死んでいるのに、死刑も何もないだろう、と思うのは日本人だから。キリスト教では自殺は神への冒涜であり、極刑に処させねばならない。さすがに、廃法になったが、「ダーウィンの進化論を学校で教えていけない」という法律(米国アーカンソー州)はちゃんと生きている。
フランスには「死人と結婚する場合、大統領の審査が必要である」という法律がある。フランスが戦争に熱中したナポレオン時代、戦死した恋人と入籍する女性が急増したために制定されたが、大統領が許可するケースがあるのだろうか。
ラスベガスの地区条例は「ホームレスに食べ物を与えたら、最高6カ月の懲役」と定めている。理由は、ホームレスが観光産業の妨げになるから。神戸市条例は「猪に餌をやってはいけない」としているが、かの国のホームレスは猪並みか。
| 科学者ってなんだ? | |
![]() | 進藤 典男 菅 裕明 隅蔵 康一 丸善 2007-11-01 売り上げランキング : 6795 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
労働力人口換算ベースでは、100人に1人が科学者(=理系研究者)との事実には、一瞬驚いたが、確かに、科学技術立国である以上、そのくらいの人数がいてもおかしくはないと、後で納得した。実はそれだけ科学者というのは身近な存在なのかもしれない。本書は、「科学者になるには? 科学者として成功するには?」を主題に据えて、ノーベル賞と科学者、競争的研究資金、論文の書き方、大学院の選び方、ポスドクのサバイバル法、企業内研究者のライフサイクル、職務発明、女性研究者をめぐる現状、論文捏造などの関心の高い話題を通して「科学者の実像や実態」に迫っている。 東工大での人気講義を基に書き下ろされただけあって、内容はすこぶる充実している。また2006年および07年科学ジャーナリスト大賞受賞者も執筆陣に参加しており、執筆陣の豪華さも特筆できよう。科学者をめぐる教養書として格好の書。
| 公認会計士vs特捜検察 | |
![]() | 細野 祐二 日経BP社 2007-11-15 売り上げランキング : 72 おすすめ平均 ![]() これが日本の司法の現状かと思うと恐ろしい 裁判所の怠慢 この小説の最大の悲劇は、これが事実であるということだ。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者に聞く 『公認会計士VS特捜検察』書いた 公認会計士 細野祐二氏
会計士が暴いた検察捜査の暗部
――細野さんは東証1部上場会社「キャッツ」(2004年2月に民事再生法申請、上場廃止)をめぐる刑事事件(粉飾決算容疑)で逮捕され、最高裁に上告中の現在に至るまで、一貫して無実を主張し続けています。そして今回の著作の中で、「この判決は憲法違反であり、著しく正義に反する」と述べておられます。
粉飾決算のスキームを考案し、監査に耐えられるように理論づけしたというのが、私に対する罪状です。もちろん、事実無根ですし、そのことを公判を通じて立証してきました。会計論争では検事を打ち負かしたし、アリバイもしっかりある。それでも一審、二審で敗訴した。いったいなぜなのかと、考え抜きました。
そして裁判を通じて、日本の検察捜査の問題点がいくつも浮かび上がってきました。
――たとえば……。
日本国憲法には自白だけでは有罪にできないと書いてありますが、本人が自白しなくても関係者が自白したら、それで有罪にできるかという問題があります。それでは有罪にできないという少数説もありますが、多数説および現行の司法実務では、関係者の供述調書は本人の自白ではないので、これはほかの証拠と同じだとされている。しかし、関係者は実刑を免れたいあまりに、虚偽の供述をしてしまう可能性がある。本来、裁判官はそこをきちんと見抜くべきですが、現行の司法では検面調書(証人の検察官に対する供述調書)が無条件で信用できるとされています。
――「本件は検察官による裁判史上最悪の証人テストによる証言のねつ造による冤罪事件である」と細野さんは著作で言い切っています。
私とともに起訴され、すでに有罪が確定していた大友裕隆元社長に二審時に尋ねたところ、一審で私の粉飾決算への関与を証言すべく、40回も検事と丸暗記のリハーサルをしたというのです。大友さんは句読点一つを間違えただけでも検事から何度も証言のやり直しをさせられたと私に打ち明けました。その大友さんは、自責の念から公証人役場に出向き、私の無実を証言した3通の宣誓供述書を作ったのです。それらはほかの6人の証言者の宣誓供述書とともに二審時に提出されましたが、裁判長はこれらを一顧だにせず私に有罪判決を下しました。このような裁判が公正と言えましょうか。
――細野さんは著作の中で「少なくとも現在起訴され有罪となっている被告人のうち16%強は冤罪の可能性がある」と述べています。
わが国では1928(昭和3)年から戦時刑事特別法が制定される直前の43(昭和18)年まで、陪審制が敷かれていました。その間の陪審裁判での無罪率は17%弱。これに対して現在の職業裁判官による刑事事件の有罪率は99・9%に達しています。この間に国民が凶悪化したとも検察官の立件能力が飛躍的に高まったとも考えがたく、16%強には冤罪の可能性が付きまとっていると思います。
――裁判員制度や取り調べの可視化によって、事態の改善は期待できますか。
難しいでしょう。むしろ冤罪事件の構造に国民を巻き込むのではと危惧しています。
| 財投改革の経済学 | |
![]() | 高橋 洋一 東洋経済新報社 2007-10 売り上げランキング : 15224 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
財政投融資を経済学で解明した貴重な理論書
本書は、小泉・安倍内閣を通じて、公的金融改革の理論的支柱とうわさされていた著者の分析を集大成したものだ。実務家として与えられた仕事をしながら、理論に依拠し、大勢に従わない姿勢は爽快だ。
大蔵省(当時)の郵便貯金についての扱いは、予算と同じく、郵貯資金をどれだけ資金運用部に取るかだったという。
しかし、金融であれば、資金量と期間に応じた金利が問題になる。そう考えると、郵貯と資金運用部はともに金利リスクを抱えていた。そのリスクをどう処理するかという問題が、著者の公的金融分析の出発点となる。
当時、郵貯の定額貯金は不合理な金融商品であると銀行に攻撃されていた。著者は、それは解約自由のオプション料をどう見るかだけの問題だと見抜いたが、世間ではまったく理解されなかったという。定額貯金のオプション料の計算は、金融工学を学んだ優秀な大学院生にも計算できたと思うが、プロである日本の銀行がそれを理解できなかったことに驚く。
民間金融機関が不良債権という信用リスクに苦労していた1990年代後半、資金運用部は金利リスクの問題を抱えていたが、それは認識されなかった。著者は、行政として手続きの正しさを満たせば良いとする組織の体質に満足せず、金融としてどうリスクを管理するべきかを問題にし、その回答を与えた。
郵政は、経営の柱である郵貯を民営化するしかなかった。郵貯が資金運用部に預ける際の金利が国債金利プラス0・2%で、これが「ミルク補給」になっていたからだという。
これは、資金調達側の財投機関にとっては調達コストを高める要因となっていた。しかし、そのような「ミルク補給」を財投機関の犠牲によって続けることはできない。郵貯は民営化し、自ら運用収益を上げるしかなかった。これが郵貯民営化の必然だったという。ただし、私は郵貯と財務省が霞が関で熾烈な戦いをしている中で、なぜミルク補給をしていたのか、釈然としない気分になった。
道路公団改革についての世間とは異なる評価は重要な問題提起だ。著者は、道路公団は債務超過ではなく、むしろ優良資産であると分析する。確かに、大都市の高速道路は高い料金を取ることができるので、優良資産かもしれない。債務超過としたことによって、国民は、民営化に際して、もっと高速料金を下げるという利益を失ったのだという。さらに、政府の資産改革、金融政策のあり方についても分析されている。財投という複雑な制度を理論的に分析するのは困難なことであるが、本書はそれをやり遂げている。【評者 原田 泰 大和総研チーフエコノミスト】
| IT投資で伸びる会社、沈む会社 | |
![]() | 平野 雅章 日本経済新聞出版社 2007-08 売り上げランキング : 101284 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
IT投資の成果は組織IQにかかる
著名なニコラス・カーの論文の引用などによって、ITに対する期待の大きさと明確な効果を得ることの難しさのギャップを指摘することから、本書は始まる。誰も反論できない世間一般の認識を強調したうえで、著者は自身の調査に基づく、IT投資・組織能力・企業業績の間の関係について研究結果を説明する。
著者によると四つの新事実が判明した。それは、〔1〕IT投資と企業業績には関連がある、〔2〕IT投資が増えるほど、組織能力が企業業績に与える影響は大きい、〔3〕組織能力が高くなるほど、IT投資が企業業績に与える影響は大きい、〔4〕組織能力が低いときには、IT投資を増やしても効果は薄い、というものである。
著者の言うところの「組織能力」とは、簡単に言えば、「コミュニケーションと意思決定のためのルールや仕組みの性能」ということになる。組織能力はヘイム・メンデルソンらの研究による組織IQというツールで測定することができるとのことで、IT投資で会社が伸びるも沈むも、組織IQ次第ということに共感できる読者なら、十分読み応えがある内容となっている。
しかし、著者が発見したとする四つの新事実の一つであるIT投資と企業業績の関連については、調査結果に統計的な有意差が見られなかっただけでなく、何となく従来から言われること、すなわち、IT投資は多少なりとも企業業績にプラスの影響をもたらすだろうという結論を超えるメッセージは感じられない。2章でIT投資と成果のとらえ方について十分読み応えのある内容が記述されているだけに、「やはりIT投資だけでは限界があるのか」というため息が読者から聞こえてきそうな印象が残る点は残念である。【評者 黒須 豊 スクウェイブ代表】
過ぎゆくもの
谷川 俊太郎/浅田 次郎他 (著), 山本 容子 (イラスト)
鉄道ファンに贈る山本容子のオマージュ
2007年10月14日、さいたま市に新しい鉄道博物館がオープンした。そのアートワークを担当した銅版画家山本容子が鉄道をテーマとした縦3メートル、横10メートルの巨大なステンドグラスを創った。
制作にあたって、鉄道ファンにエッセイを書かせ、それにインスパイアされた世界を絵にしたという。谷川俊太郎の詩を基調に、浅田次郎、嵐山光三郎、池内紀、池澤夏樹、江國香織、小川洋子、関川夏央、中沢新一、辻原登、湯川豊による、10篇のエッセイと10枚の絵のコラボレーションである。
巻頭に縦長に描かれた10枚の絵が見開きで収められている。汽車や列車にまつわるさまざまなイメージである。一枚一枚完結しているようでいて連続している。それは、エッセイに対応して本文の中にも置かれている。それらの白黒のデッサンが散らばっているのも楽しい。
エッセイは、浅田次郎の「『鉄道員(ぽっぽや)』縁起」や池内紀の「山の駅」もいいが、辻原登の「夜汽車の行方」が鉄道ファンの心をそそる。これまでに書いた小説の3分の1には夜行列車が出てくるそうだ。「夜汽車が走る。ただそれだけで何事かなのだ」。
辻原がすすめる小津映画が2本ある。いずれも夜行列車のシーンで終わる。一つは旅回り一座の座長の哀切を描いた『浮草』。息子に拒絶された座長が女優と二人、夜行列車で去っていく。もう一つは『東京暮色』。かつて子どもを捨てた母親(山田五十鈴)が成長した娘と再会するが、許しあうことなく上野駅から旅立つ。発車を待つ間、東北線を案内するアナウンスが省略されずに流されているのがこたえられないという。小津安二郎は隠れた鉄道ファンかもしれない。新しい鉄道博物館に行きたくなる大人の本である。【評者 仲倉重郎 映画監督】
| 東京からはじめよう―国の再生をめぐる九つの対論 | |
![]() | 猪瀬 直樹 ダイヤモンド社 2007-10-27 売り上げランキング : 58527 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
『東京からはじめよう』とあるが、何も「東京」について語っている本ではない。内容はサブタイトルにある「国の再生をめぐる9つの対論」がメインである。
本書は、ニュースチャンネル「朝日ニュースター」で放送された著者とゲストとの対談を、書籍にしたものだ。『ミカドの肖像』『土地の神話』など一連の著作で、巨大都市・東京の形成過程を再現した著者が、副知事となった今、「東京」についてどう考えているのか――。
残念ながら本書にその言及は少ないが、東京、そして日本が抱える問題の構造について、著者とゲストの会話からわかりやすく理解できる内容になっている。
たとえば、産業再生機構を率いた冨山和彦氏との対話では、日本にはあるべき「経済の循環サイクル」が不十分だと説く冨山氏に対し、著者がその問題の本質を突いていく。他にも働き方、結婚など論点は多岐にわたる。諸問題の論点を整理するのに役立つ一冊だ。
| イスラム金融入門 | |
![]() | 吉田 悦章 東洋経済新報社 2007-09 売り上げランキング : 1721 おすすめ平均 ![]() 現時点での最良の入門書。 丁寧でとっつきやすい入門書 著者の体験に基づく記述がいいAmazonで詳しく見る by G-Tools |
1970年代に伝統的な(欧米的な)金融に続く第2の国際的金融システムとして再興し、90年代から成長しているイスラム金融。イスラム金融には次のような原則がある。
〔1〕金利(アラビア語でリバー)という概念を用いない、〔2〕金融取引先の事業でイスラム法に反するものは排除される、〔3〕コンプライアンスを維持するため、イスラム法学者で構成される審査委員会で取引や金融スキームの審査がされる。
イスラム金融の精神は、イスラム法で規定されている。それは、債権者、債務者とも、リスクと果実を対等に分け合うことだ。
イスラム金融はオイルマネーの増大、一部のイスラム教徒資産家の伝統的な金融への反感、バーレーンやマレーシアなどイスラム金融センターを目指す国の努力によって、21世紀になって急激に拡大している。
日本でも関心が高まるイスラム金融を体系的に分析した貴重な本である。著者は国際協力銀行の担当者。
| レバレッジ勉強法 | |
![]() | 本田直之 大和書房 2007-09-25 売り上げランキング : 1333 おすすめ平均 ![]() 読みやすく勉強した気になりました 出来たらいいな、と思いますが・・・。 他の著書と内容が重複してるところが多いかなAmazonで詳しく見る by G-Tools |
人生で成功するには、レバレッジ(テコ)を利かせた勉強をしなければならないと著者は説く。第1のレバレッジは、効率的な時間の使い方だ。残業をして少しの残業代を稼ぐより、その時間を勉強に充てたほうが投資効率が高い。仲間と酒を飲む時間があれば、これも勉強に充てるべきだ。
第2のレバレッジは効率的な勉強法を採用すること。まず、目標を設定すること。そうしないと効率的な勉強はできない。
次にゼロから構築せず、先人の知恵を自分のモノにすること。だから、成功した経営者の本を読むことは意味がある。
自分に数字で「ノルマ」を設定することも、モチベーションを維持する効能がある。実社会で成功するための「リアル勉強」では、完璧主義は百害あって一利なしだ。試験勉強では「過去問」から入ること。
こうしたレバッレジを利かせた勉強のノウハウが詰まった本である。著者はコンサルタント。
| 暮らしのテクノロジー―20世紀ポピュラーサイエンスの神話 | |
![]() | 原 克 大修館書店 2007-03 売り上げランキング : 371960 おすすめ平均 ![]() 金儲けの欲望が世界を発展させたということが分かるAmazonで詳しく見る by G-Tools |
20世紀は科学の時代といわれている。だが、われわれは科学が生み出した新製品というモノだけを介して、科学と接触しているだけである。それらは例外なく、誰もが否定できない利便性や合理性が主眼とされている。
だが、こうした便利な最新技術の背後に、日々の暮らしの中の記憶や価値観、さらに社会のあり方の変容といったものが隠されている。
本書は、給仕ベルトコンベヤー、回転寿司、ショッピングカート、自動ドア、リモコン操縦、花粉症グッズ、パーキングメーター、ドライブイン、アルコール検出器、スクールバス、カーナビなど、われわれの日常生活に不可分の11種のアイテムを例示する。科学がもたらしたモノを通じて文明を考察する。
結論を言えば、より快適な生活を約束する一方で、ヒトの身体感覚やかつての人間味のある共同体のきずなは減衰していったのである。
| 古本病のかかり方 (ちくま文庫 (お34-4)) | |
![]() | 岡崎 武志 筑摩書房 2007-10 売り上げランキング : 213937 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 発掘!子どもの古本 (ちくま文庫 き 17-3) | |
![]() | 北原 尚彦 筑摩書房 2007-01 売り上げランキング : 336816 おすすめ平均 ![]() なつかしすぎるっ!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
古書はこわい。内容、装丁でその国の実力が見えるから
古書の話をしたい。
10月末、神田神保町の古本祭りの最中、ここに仕事場を構えている作家逢坂剛さんと昼飯を食べた。私が編集した本の推薦文を書いてもらったので、そのお礼を兼ねて、出版社の編集長と一緒に神田詣でと相成ったのである。
中華料理店で昼食を食べながら、さっそく「古書談義」が始まった。テーマは、言わずもがな、スペイン、そしてスパイ。その極め付きはロンドンのハマースミス書店とウェールズの古書店村ヘイ・オン・ワイであり、われわれ「古書病」患者は、しばし時の経つのを忘れたのだった。
それにしても、古書漁りという「一期一会」の場面で、本の価格や保存状態で買うか否かと一瞬迷うことがある。
その逆に、信じられない安価でさりげなく獲得した途端にその店を飛び出すこともあった。ささやかな悲喜交交(こもごも)というところか。「欲しい本のみをガツガツ買いすぎると、余裕のない息苦しい蔵書になってしまう」(岡崎武志『古本病のかかり方』)とは、もっともな指摘である。
かつて私はヴィクトリア朝の児童文学書をイギリスで渉猟したことがあった。「七つの海を支配している」と豪語したあの時代の児童文学なればこそ、その装丁は見事。1頁ごとに異なる透かし絵や縁取り絵がほどこされたり、レザーバインディングされた一般書顔負けの本もあった。
また没落した貴族階級が放出したのだろう、由緒ある実に凝ったエクスリブリス(蔵書票)が貼られている本も。 北原尚彦『発掘!子どもの古本』は、明治35年刊の「猫と金太郎」という御伽噺を紹介しているが、これはヴィクトリア朝の児童書とはまったく比較にならない。
まして、戦後「仙花紙本」と総称された粗悪な洋紙の児童書が戦後10年になる1955年ころまで続いていたというから、こんな資源のない国があんな無謀な戦争を仕掛けたものだ、とあきれてしまった。児童書を見ただけで、その国の勢いや教育理念などがわかってしまうのだ。【評者 阿久根利具 文芸評論家】


必読。ただし、危機は常に予想もしない形でやって来る。
頭の整理になるが学者の限界も見える



読んでみる価値はありますが。。。












