メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2007年12月1日~12月8日

株式会社ロシア―渾沌から甦るビジネスシステム
株式会社ロシア―渾沌から甦るビジネスシステム栢 俊彦

日本経済新聞出版社 2007-10
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成長するロシア経済 そこに産業政策はあるのか

ロシアは奇跡ともいえる経済復活をはたした。振り返れば、ロシアはソ連崩壊以降、1998年までほぼ一貫して経済危機のただ中にあった。

98年8月政府は対外債務の90日間支払い停止を行う財政危機に直面し、世界を震撼させた。しかし、ロシアは2007年上半期に実質GDP成長率7・8%を達成し、今後数年は6~7%の経済成長が予測されている。かつロシアの外貨準備高は急速に伸び、中国、日本に次いで世界第3の地位にある。

中期的にみれば、ロシア経済を持ち上げている原油高は持続し、ロシア経済の高成長と豊富な外貨準備高は今後も継続すると予測される。

それは、世界の原油生産の主力である中東での不安定が継続すると予測されるからである。ロシアの高経済成長が期待されれば、日本企業はロシアへの進出を考える。現にトヨタ自動車など大手企業のロシア進出が活発化している。

そうなれば、当然ロシアの産業政策に関心が高まる。この絶妙のタイミングで本書が出版された。著者は93年から97年、さらに02年から06年、日本経済新聞記者としてモスクワに駐在している。したがって、ロシアの産業政策について記述する最もふさわしい著者であろう。

本著でのヤロスラブリ電気工業等ロシア中小企業の記述はきわめて詳細である。さらに03年のロシア最大の疑惑事件はロシアの欧米派とロシア派の路線対立であり、ロシア派の逆転勝利であるとの説明には説得力がある。ただし、本書で今日、および将来のロシアの産業政策が十分に理解できるかとなると、そうとはいいがたい。

07年10月JETROはロシア側と「ロシアの産業政策」について協議をし、私も専門家の一人として参加した。偶然の一致であるが、相手は第1章に出る「実業ロシア」である。

ロシアの産業政策はロシアに資金的余裕ができたここ1~2年の間で真剣に討議されはじめたが、依然流動的である。

したがって、ロシアの専門家の中でも見解が割れた。ロシアは政府主導で産業政策を創設しようとしている、重点分野はエネルギー、航空、造船、インフラ整備等と説明する者もいた。ソ連崩壊後経済の自由化が説かれ、その影響を受け、今もロシアに産業政策はないと主張する専門家もいた。

プーチン後をにらみ政争が進行中の今、産業政策も政争の具となり、とても固まらないとする見解もある。日本国内で、ロシアの産業政策解説の要求は強い。豊富な経験を有する著者が流動的な動きを見極め、続編を出されることを期待したい。【評者 孫崎 享 防衛大学校教授】

■2007/12/08, 週刊東洋経済

日本を滅ぼす教育論議 (講談社現代新書)
日本を滅ぼす教育論議 (講談社現代新書)岡本 薫

講談社 2006-01
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おすすめ平均 star
star教育論と文明批評
star批判多し。しかし本質を突く。
star他者を鑑に己を知る

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日本人が陥りがちな教育論議の非論理性を批判

教育については、100人いれば100人がそれぞれの経験があり、その経験に基づいた意見があり、政策としてまとめるのは容易ではない。

今、地方分権論議は国と地方によるコップの中の争いの様相を呈しており、国民にとっての分権化社会のメリットが見えない状態にある。それを打開できるのは教育の分権化を進め、その成果を国民に評価してもらう以外にないと考えている。

著者の岡本薫氏は、現在政策研究大学院大学教授だが、以前は文部科学省企画、体育課長なども歴任し、教育政策研究のため80カ国以上を訪問した国際通である。また2007年7月には産経新聞の教育特集号で「教育委員会を廃止せよ」という、元文部科学省官僚としては先鋭的な意見を発表している。

岡本氏はわが国の教育論議の混乱の最大の原因を、日本人の多くが、「社会問題を教育で解決できる」と考える、教育を崇拝する「教育教信者」のようであり、論理的な答えを出す努力を怠る傾向にあることに求めている。

また「いじめ」の問題については、「子供の心の中には他の子供をいじめたいという欲求が潜んでおり、これを抑制する手段を考えるべきところを、心の教育によってそうした欲求を撲滅することを目指そうとする」誤りと、「人はこうあるべき」より「人は自分の欲求の方向にしか動かない」という本質を直視すべきだと指摘する。

いわゆるリスクマネジメントがなされておらず、戦前の日本軍の精神主義的な特徴が、今も私たちの思考回路の中で生きているとも指摘する。本書は教育から見た日本文化論といっても過言でなく、日本人の組織の弱点など軍隊組織等と比較しながら、具体的に指摘しており、興味の尽きない一冊である。【評者 石川良一 東京都稲城市長】

■2007/12/08, 週刊東洋経済

スペイン内戦とガルシア・ロルカ
スペイン内戦とガルシア・ロルカ川成 洋

南雲堂フェニックス 2007-10
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スペイン内戦の悲劇を体現した天才詩人の墓標

戦争と革命の20世紀。人類史上最大の両大戦間に起こったスペイン内戦。ちょうど、わが国では2・26事件の勃発した1936年の7月だった。

スペインの将軍たちの軍事反乱とそれに抗した共和国側民衆の果敢な抵抗は、スペインを、あらゆる国の左翼諸党派にとっての希望と良心の戦場に変えてしまった。世界55カ国から集まった国際義勇軍の参戦、ソ連の援助とスターリン式の粛清導入、列強の代理戦争的側面、子どもも含む非戦闘員の殺戮、無差別絨毯爆撃が行われた。

これらの悲劇はスペイン内戦の終結によって消滅したわけではなく、その後の国際紛争や内戦でも見られた。したがってスペイン内戦は「未完の現代史」として位置づけなければならない。

スペイン内戦が現代史に刻印した悲劇はとてつもないほどであるが、その代表例として挙げられるのは、20世紀スペインが生んだ不世出の天才詩人・劇作家ガルシア・ロルカの受難であろう。

生まれ故郷のグラナダで反乱軍に逮捕され、自らの墓穴を掘らされ、銃殺されたのであった。実に38歳という若さであった。

内戦後ロンドンの国際ペンクラブからの正式の問い合わせに対して、内戦の勝利者フランコ将軍の軍事独裁体制は戦死と報告した。

その後36年間、ロルカ、そして彼の作品はタブーであった。現在、グラナダには、国王夫妻によってテープカットされた「ロルカ記念公園」がある。

グラナダで妨害や弾圧にあいながらもロルカの評伝を上梓したアイルランドの詩人、イアン・ギブソンが「右派はロルカを祝うべきではない」との声明を発表した。観光立国とはいえ、割り切れない気持ちを抱いているのは、私ひとりではあるまい。【評者 阿久根利具 文芸評論家】

■2007/12/08, 週刊東洋経済

温暖化地獄―脱出のシナリオ
温暖化地獄―脱出のシナリオ山本良一

ダイヤモンド社 2007-10-05
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おすすめ平均 star
star複眼的視点が重要
star「地球温暖化キャンペーン」に惑わされないために・・・

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著者は東京大学生産技術研究所教授。地球温暖化はもはや引き返すことのできない段階に入っている、と警告する。地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)は、300年間は地球にとどまり、累積的な効果を与える。

さらに温暖化によって、氷河、海中などにあるメタンガスや二酸化炭素など、温暖化をもたらすガスが大気中に放出され、温暖化が温暖化を呼ぶ負のスパイラルが加速される。

2050年には地球の気温が平均3度上昇し、100万種の生物種が絶滅する。アマゾンの熱帯雨林は枯れ始め、大量の二酸化炭素が放出される、という。

こうした破局を避けるためには、空前絶後の政策転換を図るしかない。

著者が提案するのはエコイノベーションとサステナブル社会への移行である。

政策、技術、社会の各方面でさまざまな提案がなされているが、その中心は、省エネルギーと環境に配慮したモノづくりである。

■2007/12/08, 週刊東洋経済

決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール
決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール勝間和代

ランダムハウス講談社 2007-10-25
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おすすめ平均 star
star点と線をつなぐように
star2007年度一押しの会計本
star決算書の文字面の先を感じ取るための本

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2006年1月にライブドアの不祥事が発覚した当時、著者は外資系証券会社でインターネット業界担当のアナリストをしていた。

以前からライブドアを含む一部の企業が利益を大きく見せる会計手法を使っていると気づいていたにもかかわらず、事件が表沙汰になって市場が混乱する前にうまく伝えることができなかったを悔やむ。そんな思いがあって著者は本書を執筆したという。

上場企業の経営者は「利益を捻出せよ!」という魔のささやきにさいなまれ、株式市場には経営者を会計操作に駆り立てるプレッシャーが常に存在する。監査法人やアナリストにも厳しい監査や分析がしにくい事情がある。財務諸表が会社の「素顔」なのか、自分自身で見抜くほかはない。

決算書の背景にあるさまざな思惑や事情が解説されており、財務諸表の読み方から会計操作の見抜き方まで「暗号」の解き方がすんなり頭に入る構成になっている。

■2007/12/08, 週刊東洋経済

凍える森 (集英社文庫 (シ16-1))
凍える森 (集英社文庫 (シ16-1))アンドレア・M.シェンケル

集英社 2007-10
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おすすめ平均 star
star独自のスタイルを貫いた’07年ドイツミステリー大賞受賞作
starドキュメンタリー・ノベルの秀作。

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1922年、ドイツ南バイエルンの田舎町の大きな農家で一晩のうちに6人が惨殺された。

犯人が数日間現場に残り、家畜に餌をやり、台所で食事した跡があった。しかも、その農家は裕福なのに、多額の現金は手つかずのままだった。

ミュンヘン警察は当時の捜査の常套手段である2人の霊媒師を使って犯人捜査を試みたが、無駄に終わった。結局、迷宮入りとなり、現在、その屋敷跡はアスパラガス畑と化し、近くに慰霊碑が立つのみである。

この85年前のドイツ犯罪史上最もミステリアスな事件を1950年代という時代背景に設定して、一つの物語を紡ぎ出したのが本書である。

全くのどかなドイツの農村で、全く同じ事件が起こる。「殺人屋敷」と呼ばれた被害者の周辺部のさまざまな人々の証言が次第に事件の真相をあぶり出していく。そして犯人は誰か、そして結末はどうなったのか。

■2007/12/08, 週刊東洋経済

滝山コミューン一九七四
滝山コミューン一九七四原 武史

講談社 2007-05-19
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おすすめ平均 star
starほぼ事実どおり
star後半の盛り上がりに欠ける
star戦後史における、一つのケースとして。

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日本で実践された集団教育 生徒の側からの貴重な証言

戦後教育は、個人を尊重した自由なものだと評価されている。だからこそ、個人尊重の教育を守るべきという議論と、そのような自由主義教育が日本を劣化させたという議論が対立しうる。しかし、現実の日本の教育は、もっと集団的なものだったのではないか。1970年代初期、東京郊外の滝山団地において、左翼教師とそれに協調する父兄たちの集団主義的教育を是とする小学校のコミューンが成立していたと著者はいう。

ただし、50年代の後半から60年代初めを小学校で過ごした私は、集団主義は70年代に限られてはいなかったと思う。

コミューン教育とは、水道方式という算数の教え方と学級集団づくりだった。水道方式とは、理解を助けるものであるかもしれないが、実際には教える内容を減らしてしまうものだと、著者はいう。そうすると、水道方式とはゆとり教育の先駆になる。学級集団づくりとは、教師の指導により、核となる児童のリーダーを育て、学級ひいては学校の諸活動がその核を中心として展開されることを目指すもので、ソ連の教育理論を日本に導入したもののようだ。

滝山コミューンとは、集団の中に個を埋没させること、教師の意見と感情を生徒みんなの考えと気持ちとすることだと認識した著者は、子供心に感じた違和感を丁寧に再現していく。著者は、その世界を息苦しく感じ、中学受験のための塾に自分の居場所を求めていく。

そもそも、滝山コミューンには無理がある。社会主義国家であれば、核である児童は、社会のリーダーになれる。赤いスカーフを巻いたピオニールである。しかし、日本でエリートになるには、ピオニールになるのではなく、偏差値の高い大学に行くことが有利だ。

著者の家族は滝山団地を離れる。私は東欧の団地が日本と同じであることを見て、日本の団地とは社会主義であると感じ入ったことがある。滝山団地は寂れたが、少しでも高い偏差値を求めて著者が引っ越していった街は現在も栄えている。社会主義は、資本主義に敗れる前に、偏差値主義に敗北していた。

しかし、偏差値主義への反発は今も強い。左翼教師が、子供たちを集団として自分の陣営に誘導できるなら、右翼の側も同じことを試みるだろう。実際に、戦前にはそうしていたのだ。

本書は、戦後教育について、単純な左右の対立ではなくて、集団と個の対立ととらえる見方を提供し、紋切り型の思考を突き抜けている。本当のところ、教育で何が行われていたのか、それが自分にとって何を意味していたのか、幼い記憶をたどって考えたい気持ちにさせる。【評者 原田 泰 大和総研チーフエコノミスト】

■2007/12/01, 週刊東洋経済

会社は頭から腐る―再生の修羅場で見た日本企業の課題
会社は頭から腐る―再生の修羅場で見た日本企業の課題冨山 和彦

ダイヤモンド社 2007-07-13
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おすすめ平均 star
star本に引き寄せられる
star「対峙」に値する密度の濃い書
star人や組織はインセンティブと性格の奴隷

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企業トップのレベルは低い 修羅場からの再生提言

本書は、元産業再生機構COOが、自らの体験をもとに日本のビジネスパーソンに向けて熱く語った、日本企業のよりよい未来のための提言書だ。

著者は、日本企業の真の強さが、経営者の優秀さではなく、現場の強さにあるとしたうえで、多くの企業の経営者のレベルの低さを嘆き、そこに危機意識を抱く。そして経営者(頭)がダメな会社は腐ってくるとし、腐りかける会社のタイプを三つに分類している。実際、読者自身、この3タイプのいずれかに当てはまる会社が自分の周囲にも数多くあることに気づき、思わず苦笑するのではないだろうか。

さて、会社腐敗の予防策として、本書では「ガバナンスの確立」と「本物のリーダー育成」について論じられているが、二つの点で興味深い。まず一つは、従来の試験型エリートでは本物のリーダーは務まらないとしている点だ。これは、教駒、東大、司法試験合格と歩んできた典型的な試験型エリートの道を途中であっさり捨て、コンサルティング会社立ち上げや経営で苦労してきた、そして産業再生機構COOとして多くの企業の修羅場を見てきた著者の発言だからこそ、説得力がある。

もう一つは、もっと人間に対する洞察力や人間力(=人間性×能力)に優れたリーダーの育成が必要と説いている点だ。

著者は、そのためにはガチンコ勝負の経験や、時には挫折を味わう経験が必要と説く。この点については、コンサルタントやベンチャーキャピタリストとして数多くの企業を、特に「人」という観点から見てきた評者も、まったく同感だ。

今後の日本企業の方向性や経営者のあり方等について、多くの教訓や示唆が得られる本書は、すべてのビジネスパーソン必読の書といえるだろう。【評者 黒田康史 YSコンサルティング代表】

■2007/12/01, 週刊東洋経済

この国の姿―藤原作弥のマルチ・エッセイ
藤原 作弥 (著)

日本と日本人のアイデンティティを読み解く

時事通信の記者から日本銀行副総裁へ異色の転身をした藤原さんだったが、その後、日立総研社長をこの春、無事「卒業」された。日銀時代は金融政策・調節の本業とは別に、広報にタッチしていたので、通信社(報道)36年、中央銀行(広報)5年、日立総研(調査)4年の間、どの稼業にも共通していたのが調べて書くこと、すなわち「コミュニケーション」を主業としていた。その意味で、本書は「生涯一ジャーナリストの初志を貫徹できた」(あとがき)という氏の、70歳で一区切りをつけた卒業論文的エッセイ集である。といっても、自分の来し方をただ回顧する類の書ではない。

興味深かったのは、氏のジャーナリストとしての視座が、戦前の満州からの引き揚げ体験と特派員としてのアメリカ生活もあって、日米関係と日中関係を主軸とした三角形に基づいていることで、日本と日本人、つまり私と私たちのアイデンティティとは、世界の中の日本とは何かを常に考えてエッセイが綴られていることである。

氏は、日本「耐用年数40年説」を唱える。明治維新、日露戦争、第2次大戦、プラザ合意という40年ごとのエポックを区切ってみると、2025年まで「経済大国」の後半期が続くが、その後は「生活大国」になるべく、「教育、環境、福祉といった広い意味での生活文化を重視したバランスの取れた国づくりを、成熟した個人の意思を反映しながらしていかなければならない。そのとき日本はナンバーワンになる必要もない。日本という国の特質がそこで現れてくればいいのではないか」と。

本書は、こうした提言だけでなく、読書、映画、紀行など、藤原さんの優しい人柄とジャーナリストとしての透徹した観察眼に溢れ、読んでいて楽しい。【評者 内藤 哲 ジャーナリスト】

■2007/12/01, 週刊東洋経済

石油ピークが来た―崩壊を回避する「日本のプランB」 (B&Tブックス)
石油ピークが来た―崩壊を回避する「日本のプランB」 (B&Tブックス)石井 吉徳

日刊工業新聞社 2007-10
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書店の店頭で何気なく手に取り、つい読み始めてしまうという本がある。本書もその一つ。著者は東大理学部を卒業、石油開発会社に勤務後、東大工学部資源工学科教授を務めた、エネルギーの専門家である。

現在の原油価格高騰は主として投機によるものだが、相場を支えている理論がピークオイル説である。つまり、原油の生産はピークに達してこれから減少する、もしくは原油の生産は世界の経済成長と需要の増加に追いつかない、という説である。著者は後者のピークオイル説にくみする。

オイルサンドなどの非在来型石油の埋蔵量を入れると今後280年は大丈夫というのが、多くの業界関係者の見解だが、非在来型石油を取り出すのには多くのエネルギーを投入するので現実的ではないという。

ではどうするのか。著者持論の「もったいない」精神の実践である。1970年前後の生活に戻り、エネルギー消費を半分にするしかないというのが結論だ。

■2007/12/01, 週刊東洋経済

拡大するイスラーム金融
拡大するイスラーム金融糠谷 英輝

蒼天社出版 2007-09-15
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伝統的な(欧米的な)金融システムとは異なるイスラーム金融が関心を集めている。イスラーム金融のセンターは、バーレーンとマレーシアである。バーレーンの中央銀行総裁は、「イスラーム金融はIMFも公認している国際的な、第2の金融システムである」と語っている。

本書はそのイスラーム金融成長の要因や、仕組み、イスラーム銀行、欧米や日本での現状を概説している。著者は旧東京銀行出身の金融マンだ。イスラーム金融を知るうえで、貴重な本である。

イスラーム金融とは、イスラーム法にのっとった金融システムである。「利子を取ってはならない」というイスラーム法の規則をどうくぐり抜けて、伝統的な金融システムに近いスキームを作り上げていくのか。売買や投資、リース、信託などの形態を駆使して、単純な利子を取る金融から脱している。その原理は債権者と債務者が対等にリスクを分担することにある。

■2007/12/01, 週刊東洋経済

普通の家族がいちばん怖い―徹底調査!破滅する日本の食卓
普通の家族がいちばん怖い―徹底調査!破滅する日本の食卓岩村 暢子

新潮社 2007-10
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おすすめ平均 star
star「フツーの家族」、という言い方・・・
star本当に怖い。
star現代の家庭・食卓のするどい危機の指摘

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元日朝の食卓写真。各自バラバラに起きて食べたというテーブルは、菓子パン類にみかん。おせち料理は嫌いなので「無理はしない」一家はうどん、パン、あんまん、おにぎり。朝帰りした「息子の一声」で元日の朝をお汁粉とカフェオレに変更した家。1999~2000年、04~05年の2回、223世帯を対象にした「フツウの家族の実態調査」の一コマだ。回答は日記、写真、インタビューの三段構えで、記述と実態とのギャップもとらえている。

そこに表れる現実は親自身の強い「私中心」。自分が自分を尊重するように、家族にも押しつけたくない。正月だろうとそろって食べることを強要しない「寛容さ」。テレビで取り上げる(=みんなやってるらしい)流行はウチもやる。

元気で幸せな家族をアピールしようとクリスマス電飾に情熱を注ぐ家ほど、元日の朝はバラバラだったりする。ありがちな話の数々だが、立ち現れるのは不気味な日本の家庭風景だ。

■2007/12/01, 週刊東洋経済

大空眞弓の健康格言―おばあちゃんに学ぶ暮らしの知恵
大空眞弓の健康格言―おばあちゃんに学ぶ暮らしの知恵大空 眞弓

れんが書房新社 2007-10
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現在、舞台女優として活躍している大空眞弓さんは、超未熟児として生まれ、小学校にも週の半分しか通えない虚弱児だった。しかも、驚くべきことに、最近5年間に乳ガン、胃ガン、食道ガンと立て続けに4回もガンを患ったという。なのに、どうして、このように元気一杯なんだろうか。

「おばあちゃん子」の大空さんが幼児期を過ごした敗戦直後の日本は、衛生状態や医療水準は最低であり、いわば食うや食わずの状況だった。そこに、同居していたおばあちゃんの生活の知恵が「格言」として屹立していたのだった。

本書は、大空さんが受け継いできた「格言」に、大谷氏がそれが生まれた社会的な背景を解説し、大野氏が医学的・栄養学的観点から補足説明している。たとえば、「ツゲの櫛を手放すな」「牛乳はお風呂で飲め」とはいかなる効用なのか。また「台所は女の化粧箱」こそ、戦後の女性の凛とした強い生き方を表現している。

■2007/12/01, 週刊東洋経済

「人間力」の育て方 (集英社新書 417E) (集英社新書 417E)
「人間力」の育て方 (集英社新書 417E) (集英社新書 417E)堀田 力

集英社 2007-11-16
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おすすめ平均 star
star子どもに、人間力をつけることが必要と感じました
starミーハーですが
star変わっていくこと、変えなくてはいけないこと

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著者に聞く 『「人間力」の育て方』集英社新書を書いた弁護士・さわやか福祉財団理事長 堀田 力

自助共助のグループ教育で子どもを育てる

――この本を書かれた理由を教えてください。

私は16年間、福祉のボランティア活動をしてきました。その過程で多くの子どもたちに接し、子どもの覇気のなさ、活力のなさを痛感しました。その原因の多くは教育の歪みにあることを知りました。戦後民主主義教育は、「みんな平等」です。これを徹底したので、子どもは自分の個性や才能を封印しています。

一方で、明治時代から続く知識詰め込み型のエリート養成教育は、文部科学省が教える内容、範囲を決めて、教室でそれをたたき込んで、子どに知識の量を競わせています。これについていけない子どもは学習に無関心になり、意欲を失います。

双方に欠点があります。それを「子どものしたいことをさせる」「勉強の意味を理解させて行う教育」、つまり自助共助の教育に変えなければ日本の未来はありません。

私は1998年の中教審の席上で、義務教育で教える量の画期的減少、個性に応じた選択性、子どもが自ら考え、実行する科目など、いわゆる「ゆとり教育」の提案をしました。文部科学省の幹部が賛同して、2002年からゆとり教育が実施されました。

ところが、03年に実施した「OECD生徒の学習到達度調査」(PISA)で日本は「読解力」で世界41カ国中14位に下がったという結果が出ました。ショックを受けた政治家などが、原因を「ゆとり教育」に求め、その修正や廃止に動きました。

本当はPISAのテストは読解力を求めているので、自分で考えるゆとり教育が浸透すれば、結果はよくなるはずです。ところが、逆に受け止められて、安倍晋三前首相がリードした教育再生会議では、ゆとり教育の廃止を打ち出し、07年10月の中央教育審議会の答申で、その方向の修正が決まりました。

まことに残念な事態で、詰め込み教育の誤りを繰り返すのか、と言いたい。日本が欧米に追いつき、欧米に範を求める過程では、詰め込み教育も必要でしたが、それは70年代で終わり。社会に出た時に、役に立たない知識を詰め込んで子どもをスポイルしていいのか、と訴えたい。

――「人間力」を育てる方法を教えてください。

まず、親が子どもを自立させることです。子どもを自立させるには、自助の意欲を植え付けることです。それから、子ども同士のふれ合いを取り戻し、そこで人間関係の作り方など生きていく知恵を学ぶことです。われわれが子どものころはこうして育てられました。それを取り戻す。

今やインターネットで簡単に得られる知識を詰め込まれるより、こうした自助共助の精神を子どもに植え付けたほうが、将来の役に立ちます。今の子どもに経済的な物欲はありません。勉強の動機づけは「楽しさ」だけなのです。

――堀田さんが理想とする教育のモデルはありますか。

やはり、フィンランドなど北欧型の教育にひかれます。そこでは、読み書き、コミュニケーション能力など基本的な学習を重視しながら、生徒が主体になったグループ学習を行います。こうした過程で人間力が育成されます。

■2007/12/01, 週刊東洋経済

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