メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2007年10月6日~10月13日

フラット革命
フラット革命佐々木 俊尚

講談社 2007-08-07
売り上げランキング : 1334

おすすめ平均 star
starインターネットがつくるフラットな空間
starネットにとどまらない視野
starメディアに興味のあるブロガーやマイミクの必読の書

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原子的個人に分解されるネット社会の未来は

トム・フリードマンは『フラット化する世界』で、経済のグローバル化とインターネットによってアメリカとインドの差はなくなり、世界がグローバルな(アメリカ的な)生活様式に統合されていく、と楽天的な未来を語った。しかしフラットな世界は、それほど心地よいものだろうか。著者は日本社会のミクロな観察から、フラット化の影の部分を丹念にたどる。

匿名掲示板「2ちゃんねる」には、子供の臓器移植手術のための募金活動を「死ぬ死ぬ詐欺」と呼んで攻撃する群衆が集まる。それを「匿名の暴力」と批判する新聞は、自分たちが特権的な立場にいると信じ、ネット上の言論を蔑視しているが、情報にそんな序列はない。ネットでは匿名の投稿も新聞記事も、内容だけで価値が決まるのだ。

夫が破産し、離婚して生活苦のどん底にいる女性が、出会い系サイトで多くの男性とその場限りの肉体関係を重ねる。彼女は普通の家庭の幸せというものが信じられなくなり、個人と個人の刹那的な関係だけを求めるようになったのだ。

オンライン百科事典「ウィキペディア」は、600万項目もの巨大なデータベースになったが、誰でも匿名で書き込めるため、個人攻撃や民族差別による「編集合戦」が起こる。誰にも最終的な編集権がないため、執拗に悪口を書き込んだ者が勝つ。ある有力なブロガーが、実はオウム真理教の出家信者だったことがわかって、彼の言論を抹殺しろという攻撃と、彼にも言論の自由はあるという側がネット上で論争を繰り広げるが、答えは見出せない。

人々が何もコミュニティを共有しない原子的な個人に分解したとき、彼らをまとめる「公共性」はどこに求めればいいのだろうか――。この問いの答えを著者は「ラディカルな民主主義」に求めているが、その具体的な内容は明らかではない。

かつてトクヴィルは、デモクラシーとは対等な個人がつくる人工的な共同体のことだとし、それは強靭な意志の力で支えないと、アナーキーに陥る危険をはらんでいると指摘した。アメリカは「新大陸」だったがゆえにそういう生活様式しか採りえなかったのだが、ネットは全世界にアメリカ的デモクラシーを広げてしまった。

この動きを「格差社会」などという現象面でとらえて税金をばらまいても、解決にはならない。今起こっているのは、近代社会を支えてきた主権国家や資本主義などの集権的メカニズムの解体だからである。その先にある絶対的な孤独に私たちは耐えられるのだろうか。あるいは新しいコミュニティは建設可能なのだろうか。【評者 池田信夫 上武大学大学院経営管理研究科教授】

■2007/10/13, 週刊東洋経済

世界を壊す金融資本主義
世界を壊す金融資本主義ジャン・ペイルルヴァッド 林 昌宏

NTT出版 2007-03
売り上げランキング : 23467

おすすめ平均 star
star資本主義の行く末は?
starコンパクトだが中身の濃い本

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金融資本主義の暴走は政治的規制で止めるしかない

個人が大株主として株式会社を支配していた時代から、個人や企業などの資金を運用する機関投資家が大株主になって会社を支配する時代になった。

この機関投資家のファンド・マネジャーは資産運用の成績を上げるために、上場会社の経営者に株価を上げるような経営をせよと要求する。そして株式の買い占めによる会社買収や乗っ取りを盛んにさせる。

このような状況を著者は金融資本主義としてとらえ、それは資本主義の勝利ではあるが、同時に生態系の不均衡や国家間、そして国民間の富の不均衡を増大させ、人類に大きな不幸をもたらしていると告発する。

にもかかわらず、著者によれば資本主義に代わるモデルは存在しない、そして市場経済、グローバル化のみが経済を成長させるのだという。

では、どうすればよいのか。資本主義を維持しながら、それに政治的な規制を加えることによってでしかないというのが結論だ。この結論は読者を失望させるだろうが、それほど解決困難な問題に人類は今、直面しているということだ。

先に『資本主義対資本主義』という本で大きな衝撃を与えたM・アルベールと同様に、この本の著者もフランス大銀行の経営者として知られる大物である。それだけに書かれていることは必ずしも理論的に筋が通っているとは思えないが、経済の現実をリアルにとらえている。

とりわけフランスはもちろん、他のヨーロッパ、そしてアメリカにおける機関投資家の行動について書いているところは興味深く読ませる。ただ、訳文には債権と債券を混同したり、配当性向という言葉を誤って使用したり、投資機関化という意味不明な用語が出てきて読者を混乱させる。証券用語の訳にはもっと注意が必要である。【評者 奥村 宏 株式会社研究家】

■2007/10/13, 週刊東洋経済

知られざる真実―勾留地にて―
知られざる真実―勾留地にて―植草 一秀

イプシロン出版企画 2007-08
売り上げランキング : 249

おすすめ平均 star
star静かな衝撃、誠意と覚悟の書
star単なる陰謀論妄想では片付けられない何か
star考えされられた。

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政治権力がメディアと司法を支配して行う「偽装」を告発

この本の最大の魅力は、第1章「偽装」である。政治権力が司法とメディアを支配することによって作り出す、「見逃されている偽装」を詳細に告発した貴重な著述といえよう。

日本経済は1996年にバブル崩壊後の不況から脱出したが、97年度の超緊縮予算によって、「平成金融恐慌」(菊池英博著『金融恐慌の罠』)に陥る。この時「NHKスペシャル」や「クローズアップ現代」がいかに失政の偽装に協力したことか。「金融再生プログラム」の失敗で株価が暴落し、再び金融恐慌前夜となった2003年春、大銀行といえども退出すべきは退出させるという前言を翻し、りそな銀行を救済した時の不公平で理不尽な政策偽装。

これに伴う株価急反発と一連の不良債権処理の中で、いかに外国資本に利益供与が行われたことか。この米国隷属の政策は、郵政民営化の推進力でもあったが、これも見事に偽装された。

読み進みながら、「メディアが形成した世論という怪物が言論を支配している」(辻井喬著『新祖国論』)、「検察の捜査の本質は権力体制を守護する国策捜査である」(田中森一著『反転』)という言葉を、私は何回も思い起こしていた。

第2章「炎」は、著者の人生体験で、前半は著者の性格形成の背景を成す子供時代、後半は権力に支配されたメディアとの出会いが再びつづられている。

第3章「不撓不屈」は著者の人生観、社会観、そして巻末資料「真実」で、著者が巻き込まれた三つの事件の記述がある。

これらの部分について読者の意見は分かれるかもしれないが、「試されない生は価値のない人生である」(ソクラテス)「不条理と理不尽は絶えないが、他者に注ぐ愛と慈しみが損なわれた人の心を救う」という文章を、私は強い感動をもって読んだ。【評者 鈴木淑夫 鈴木政経フォーラム代表】

■2007/10/13, 週刊東洋経済

M&A時代の企業防衛術 [朝日新書066] (朝日新書 66)
M&A時代の企業防衛術 [朝日新書066] (朝日新書 66)津田 倫男

朝日新聞社 2007-09-13
売り上げランキング : 15505


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かつては乗っ取りとして日本では排斥されたM&A(企業買収・合併)も外部成長を図り、企業価値を向上させる有力な手段として肯定的に評価されるようになっている。

一方で、内外の投資ファンドが過去数年行ったM&A劇は、実態は株を高く買わせるためのグリーンメール(脅迫)ではないかとか、買収した企業の資産を切り売りするハゲタカではないか、という批判が強まっている。

また5月に解禁された三角合併は、時価総額で日本企業を上回る外国企業による日本企業買収を容易にするとの認識から、日本企業の多くが敵対的買収への防衛策を採用したり、それを回避するための日本企業同士の合併が進行している。

本書は日本の大手銀行、海外の大手銀行に勤務し、現在はM&Aのアドバイザーをつとめる著者が、M&Aについての解説をする。 分析は非常に正確かつ冷静で他の追随を許さない内容になっている。

■2007/10/13, 週刊東洋経済

デキる女とダメな男の脳習慣 (角川oneテーマ21 A 71)
デキる女とダメな男の脳習慣 (角川oneテーマ21 A 71)大島 清

角川書店 2007-09
売り上げランキング : 74920

おすすめ平均 star
starうーん、男に限った話なのだろうか?

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応仁の乱で始まった戦国時代は、1600年の関ヶ原の戦いで、最終的な戦国大名、武将の勝ち組、負け組が決定する。明治維新まで大名として家名を残せた家を勝ち組とすると、武田信玄は負け組、上杉謙信は勝ち組、北条氏真はかろうじて勝ち組になる。

織田信長は子孫が小大名、旗本で家名を残しているので微妙だが、天下人寸前になった家の没落ぶりを考えると負け組になるだろう。同様に豊臣家は家名すら残さなかったので完全な負け組になる。

負け組の再チャレンジも行われた。大坂の陣の真田幸村である。幸村の父昌幸は関ヶ原の戦いの際、徳川秀忠率いる徳川主力軍を食い止めた。もし、西軍が勝っていたら、昌幸は信濃、甲斐、上野を領有する大大名になっていたはずだ。

ところが、幸村も徳川家康をあと一歩に追い詰めながら敗死する。敗者は後世の歴史家から貶められるが、著者は運が分かれ道になっていることを力説する。

■2007/10/13, 週刊東洋経済

〈負け組〉の戦国史 (平凡社新書 (391))
〈負け組〉の戦国史 (平凡社新書 (391))鈴木 真哉

平凡社 2007-09
売り上げランキング : 16522

おすすめ平均 star
star支持されるべき「客観的史観」
star読むべきはあとがきのみ

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応仁の乱で始まった戦国時代は、1600年の関ヶ原の戦いで、最終的な戦国大名、武将の勝ち組、負け組が決定する。明治維新まで大名として家名を残せた家を勝ち組とすると、武田信玄は負け組、上杉謙信は勝ち組、北条氏真はかろうじて勝ち組になる。

織田信長は子孫が小大名、旗本で家名を残しているので微妙だが、天下人寸前になった家の没落ぶりを考えると負け組になるだろう。同様に豊臣家は家名すら残さなかったので完全な負け組になる。

負け組の再チャレンジも行われた。大坂の陣の真田幸村である。幸村の父昌幸は関ヶ原の戦いの際、徳川秀忠率いる徳川主力軍を食い止めた。もし、西軍が勝っていたら、昌幸は信濃、甲斐、上野を領有する大大名になっていたはずだ。

ところが、幸村も徳川家康をあと一歩に追い詰めながら敗死する。敗者は後世の歴史家から貶められるが、著者は運が分かれ道になっていることを力説する。

■2007/10/13, 週刊東洋経済

イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1ジョン・J・ミアシャイマー スティーヴン・M・ウォルト 副島 隆彦

講談社 2007-09-05
売り上げランキング : 767

おすすめ平均 star
star知識人必読の書です
starヴィヴァアメリカーナ
starもう訳が出てしまいました

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米国の第一級学者が書いたイスラエル・ロビー批判

今日、アメリカの外交政策、特に中東政策には、多くの疑問がある。「米国世論はイラク撤退を主張しているが、全面的撤退の可能性は低い」「米国は北朝鮮の核兵器保有を事実上容認し、イランには軍事攻撃の選択を残している」。なぜか。これらの疑問には、過去の大量破壊兵器保有説やアルカイダの存在、原油獲得だけでは説明がつかない。

イラクでは少なくないイラク国民が米軍攻撃を正当化している。アルカイダだけではない。

イラク戦争を原油獲得で説明する試みもある。しかし投資回収に長年を要する石油開発は政治的不安定を嫌う。石油メジャーはイラク戦争に反対だった。米国の意思が強く働くイラク政府の石油政策では、原油鉱区は公営であり、民営ではない。

「米国はなぜイラク戦争を開始し、駐留しているか」「米国の政策がどうしてイランと北朝鮮で異なるか」などの疑問に答える際には「米国外交政策決定過程におけるイスラエル要因」を抜きに説明できない。

過去、イスラエルの陰謀説などの本は多い。しかし、信頼に足る学者、政治家による本はほぼ皆無だった。この中で、米国の第一級の国際政治学者ウォルト、ミアシャイマーが世に問うたのがこの本である。

ハーバード大学ケネディスクール学長は学界で極めて信頼の高い人物が就く。ジョセフ・ナイ教授もこのポストにいた。著者ウォルトはこのポストに2002年から06年まで就いた最高級の学者だ。

ではウォルト、ミアシャイマーはこの本で何を主張したか。 〔1〕イスラエルの利益になるように実行された政策により、米国の安全保障は危機に瀕している、〔2〕この状況はイスラエル・ロビーの活動による、〔3〕次の大統領が誰であれ、イスラエル重視の政策は変化しない、〔4〕米国政治家はイスラエル・ロビーを恐れている。

ウォルト、ミアシャイマーは資金の流れや、脅しなどの具体例を引用しながら、上記の主張を綿密なデータで補強する。

この本の意義は内容のみでない。この本は「イスラエル・ロビーについて公然と語ることはますます困難になった。イスラエルの正当性に疑問を呈することとみなされる」環境下で書かれた。現に二人は厳しい批判を受けた。将来米国の著名な学者がこの本のテーマを書くことはない。間違いなく猛烈な批判を受ける。学者生命を危うくする。

その意味でこの本は極めて希有な本である。このまま放置すれば米国はだめになる。この認識の下、あえてこの本を書いたウォルト、ミアシャイマーの第一級の学者としての責任感と蛮勇に心からの敬意を表したい。【評者 孫崎 享 防衛大学校教授】

■2007/10/06, 週刊東洋経済

オイル・ジレンマ
オイル・ジレンマ山下 真一

日本経済新聞出版社 2007-06
売り上げランキング : 21874

おすすめ平均 star
starバランスのとれた内容

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原油価格はなぜ暴騰する その背景を包括的に分析

原油価格が1バレル当たり80ドルを突破するなど原油価格高騰が止まらない。このためエネルギーに関する記事が新聞・雑誌をにぎわすことが多かった。

しかし、実際どうなっているかについて、包括的かつ明快に説明を加えた書籍というのは依然ごく少数のようだ。ましてエネルギー業界に身を置かない人間でも理解できる本を、探し出すのがなかなか困難であった。

そのような中で、本書は貴重な存在である。本書は日本経済新聞社シカゴ支局長であった著者が執筆した記事を基に最新情報を加えて書き直し、まとめたものである。

原油市場における投資マネーの流入と過剰流動性の発生による原油価格上昇、大手国際石油資本の苦闘、資源ナショナリズムの盛り上がり、カナダのオイルサンド開発、エタノール等の導入にかかわる現状と問題点、といったエネルギー市場・産業において注目されている事象とその背景について取り上げ、細切れではなく包括的に解説している。新聞記者だけあって関係者へのインタビューを織り込みつつ展開されているところが、日本の他のエネルギー関係本とは違うところであり、この点は興味深い。

ただ、天然ガス版OPECの結成や、欧州天然ガス市場に対するロシアの攻勢に関しては、業界には異なる見方(たとえば世界的ガス市場は未成熟でありガス版OPEC結成には時間がかかる等)もあるようなので、それを盛り込んでもよかった。

しかし、それでも全体としてはバランスがとれているものと思われる。

本書は比較的平易に書かれているので、業界の方のみならず、一般ビジネスマンの方にも、お薦めできよう。世界エネルギー情勢について考えるよいきっかけになる。【評者 野神隆之 石油天然ガス・金属鉱物資源機構上席エコノミスト】

■2007/10/06, 週刊東洋経済

人間山口信夫―信じた道を曲げず
人間山口信夫―信じた道を曲げず綱淵 昭三

中央公論新社 2007-08
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旭化成の住宅事業を育てた伝説の経営者の半生を描く

旭化成会長、日本商工会議所会頭山口信夫は伝説の経営者である。住宅事業は最も困難な事業である。あらゆる経営資源を持つトヨタ自動車が30数年かけても住宅事業を育てきれていないことでも理解できる。旭化成の住宅事業を育て、収益柱にしたのが、山口信夫である。歴史にイフは許されないが、もし山口信夫がいなかったら、旭化成は住宅事業から撤退を余儀なくされただろう。

旭化成は経営者に恵まれた企業である。中興の祖・宮崎輝は「ダボハゼ経営」と揶揄されながらも、高度成長期に船の帆を大きく広げて、多角化経営に邁進した。多少玉石混交でも企業は成長した。正しい判断だった。

宮崎輝の後を継いだ山口信夫は、バブル崩壊後にふさわしい経営判断をした。延びきった戦線を整理し、選択と集中を実施する。食品・酒類から撤退した。代わりに半導体、高機能素材などに大胆な投資をする。これも正しい判断だった。

山口信夫のすごさは、参謀と野戦司令官の両方をそつなくこなせることだ。これから先は評者の憶測になるが、宮崎輝は山口信夫を重用しながらも、一面では恐れ、嫉妬したのではないか。そのことは宮崎が後継の社長に参謀タイプの弓倉礼一を指名したことでうかがえる。

しかし、宮崎の急逝、弓倉の病気、山口への社内での人望が山口を旭化成の最高経営責任者に押し上げる。

日本商工会議所の会頭になってからの山口信夫の活躍は周知のとおりだ。傘下の中小企業の意見を集約し、政治に反映させる。ここでも決断と実行がある。 本書は伝説の経営者山口信夫の半生を描く。その原点が陸軍少尉としてシベリア抑留の苦難を味わったことにあることも描く。ただ、細部はやや物足りない点もある。続編が望まれる。【評者 内田通夫】

■2007/10/06, 週刊東洋経済

グリコ・森永事件「最終報告」 真犯人
グリコ・森永事件「最終報告」 真犯人森下 香枝

朝日新聞社 2007-09-07
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おすすめ平均 star
star真犯人に近づく

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副題はグリコ・森永事件「最終報告」。著者は『週刊文春』で辣腕を謳われた森下記者。期待するな、というほうが無理だろう。

1994年、福徳銀行神戸支店から5・4億円が強奪された。この「史上最大の強盗事件」を敢行した「鉄ちゃん」こそグリ森事件の真犯人ではないのか。

警察の膨大な捜査報告書を発掘し、読みこなす力量はさすがである。関係者の取材も丹念だ。が、299ページの本書のうち、「鉄ちゃん」の解明は3分の1。残りの3分の2はグリ森事件の「復習」になっている。

グリコ社長の頭髪についていた金属クズなど、「鉄ちゃん」とグリ森事件を結ぶ「点」がいくつか指摘されるが、線にはならない。陰影を持つ「鉄ちゃん」の人間像の掘り下げもいまひとつ。「史上最大の強盗」とグリ森事件が同一犯かもしれない、という魅惑的な可能性を前に、活字化を急ぎすぎた感がないでもない。これを「中間報告」とし、濃厚な続編を望みたい。

■2007/10/06, 週刊東洋経済

きみが最後に出会ったひとは なぎさの媚薬 4
きみが最後に出会ったひとは なぎさの媚薬 4重松 清

小学館 2007-05-31
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おすすめ平均 star
starあなただったら、誰の過去を救いますか?
star家族愛、メルヘン、ファンタージー
star新たな続編を希望します・・・

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2001年『ビタミンF』で直木賞を受賞した作家重松清氏のサスペンスを織り交ぜた官能小説である。

渋谷の街角に立つ伝説の娼婦なぎさとなぎさが持つ「過去に戻れる媚薬」をめぐってドラマが展開する。

ドラマの筋立てもわくわくするが、途中で繰り広げられる官能シーンの表現が意外に美しい。表現に気品を保ちながらも、登場人物の内面に迫っている。

主人公・田山章は52歳の週刊誌のフリーライター。妻とはとっくの昔に離婚して独り暮らしだ。フリーライターとしても限界を感じている。田山にはあゆみという長い間音信不通の一人娘がいるが、なんと質の悪い監督に捕まって、AV女優になっている。その後、娘は飛び降り自殺をしてしまう。

これに憤る主人公は娼婦なぎさとともに「過去に戻れる媚薬」を飲んで、過去に旅立つ。なぎさも主人公が「最後の客」になるという予感を持ちながら。そこで発見したものは……。

■2007/10/06, 週刊東洋経済

会津藩什の掟日新館が教えた七カ条―武士階級の子供のしつけ方
会津藩什の掟日新館が教えた七カ条―武士階級の子供のしつけ方中元寺 智信

東邦出版 2007-08
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安倍前首相が鳴り物入りで立ち上げた教育再生会議の混迷ぶりは、教育を食い物にした似非教育専門家の馬脚を現したというべきか。まさに噴飯ものである。

それにしても、子供たちの「学業」はおろか、「生き方」での教育の徹底化が必要な段階に来ている。

この問題を解決する特効薬は見つからないのかもしれないが、本書で紹介する江戸時代の会津藩のやり方が範になるかもしれない。

会津藩は藩政改革の一環として人材育成のために藩校・日新館を創設し、教育を徹底させた。即ち6歳から9歳までの藩士の子弟は、住んでいる地区ごとに 10人ほどの組に分けて統括され、その組を「什」と呼んだ。これを終えて、10歳になると、晴れて日新館に進む。この「什」には、社会生活を学ぶ教育として「什の掟」に無条件に従わせる。従順、礼儀、誠実、正義、優しさ、品格、自覚の七つの掟である。これらを教え込むことで、凛とした藩造りに成功する。

■2007/10/06, 週刊東洋経済

ペニシリン産業事始
ペニシリン産業事始武田 敬一

丸善プラネット 2007-09
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ペニシリンは、現代医学に革命的な変革をもたらした20世紀最大の発見の一つといわれている。1942年米国で実用化されたことから、戦後占領軍によってわが国に導入されたイメージが強いが、既に戦時中(43年)に日本でも研究が始まり、粗製ながらも終戦間際に実用化されている。

この間の経緯については角田房子の名著『碧素・ 日本ペニシリン物語』に詳しい。

本書はその続編とも位置づけられるもので、敗戦直後、あらゆる物資が欠乏していた混乱期にペニシリンの実用化に尽力した人々の奮戦記である。

企業間の垣根を越えた技術交流、産学の共同研究、医療現場との交流、占領軍当局との折衝など、産業史上では希有な、総力を挙げた協力体制が短期間での成功をもたらした。これまで、ごく一部を除きあまり触れられることのなかったペニシリン開発についての空白の歴史が、今ようやく明らかにされる。

■2007/10/06, 週刊東洋経済

官邸崩壊 安倍政権迷走の一年
官邸崩壊 安倍政権迷走の一年上杉 隆

新潮社 2007-08-23
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おすすめ平均 star
starまさに「アサヒる」の典型
star笑わせんなよ!
star何でも人任せの人間の末路

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著者に聞く 『官邸崩壊』(新潮社)を書いた フリージャーナリスト上杉隆

使えないお友達ばかり集めて自壊する

――チーム安倍の危うさを感じ始めたのはいつですか。

昨年9月の組閣の時点で、この政権は危なっかしいと思っていた。何人かの議員秘書に取材すると「あの面子はやばいぞ」と。お友達というよりも、手柄を取りにいく幼稚な人の集まりで、政治の世界では評価されていない人たちばかりだった。塩崎恭久さん、世耕弘成さん、石原伸晃さんは、メディアを通して見るイメージと秘書から見るイメージはまったく逆。典型的な使えない人たち。官僚にうまく使われて、重鎮クラスの政治家に手玉に取られるだろうなと思って取材を始めた。

やっぱり黒子の人は手柄を取りにいってはダメです。(小泉元首相の秘書官である)飯島勲さんは手柄を取っているように見えますが、実際は事務の秘書官に手柄を全部渡していた。会議中は、会議室に入らず事務の秘書官に席を譲っていた。一方、(安倍前首相の秘書官である)井上義行さんは会議中、安倍さんの隣に座っていた。これは、歴代最悪の秘書官といわれる(橋本政権時代の)江田憲司さんでさえやらなかったこと。しかも、安倍事務所は内部で争いがあり、秘書同士が口もきかない関係にあった。

安倍さんはおぼっちゃんだから、小さい頃から周りがすべてお膳立てしてくれて、自分から積極的に考えたことがなかった。総理大臣になって初めて自分で考えてみたが、50歳を越えて、今までできなかったことが急にできるわけがない。組織の動かし方も知らなかったし、胆力がないから他人の批判を受け入れられない。リーダーとしての能力が欠如していた。

――しかし、小泉さんは安倍さんを評価していたのでは。

それは、マスコミがつくった美しい師弟関係です。たぶん小泉さんは安倍さんのことを最初からなんとも思っていない。小泉さんは自分の言うことを聞く人なら誰でもいい。そして、安倍さんは小泉さんのことを本当に怖がっているから、絶対逆らわない。 小泉さんは本当に自民党をつぶすことしか考えていない。彼の再登板は絶対になくて、唯一の興味は政界再編。もし政界再編が起きたとき、彼が自民党を飛び出せば、きっと武部グループも、小泉チルドレンも、民主党の前原誠司さんもついてくるはずです。

――なぜマスコミの情報と、現実に起きていることがこんなに乖離しているのですか。

政治部のせいです。政治部の報道は本当のことを出さない。勝手に自主規制して自らを縛っている。彼らが向いているのは自分たちか政治家。読者をまったく見ていない。

この本を出版した後も早速、記者クラブから文句がきました。著書の中で、(産経新聞の)阿比留瑠比記者、石橋文登記者、(NHKの)岩田明子記者について書いたことに対して、「上杉はとんでもないやつだ。なんで記者の名前を書くんだ」と。彼らは自分が本を出すときは名前を出すくせに、都合が悪くなると逃げ込む。そこで「批判があるなら、ここが間違っていると新聞に書けばいい」と主張したら、政治部の他の記者からも苦情が殺到した。まあ政治部からは元から嫌われているから構わないんですが(笑)。

■2007/10/06, 週刊東洋経済

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