メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2007年10月20日~10月27日
| ワープする宇宙―5次元時空の謎を解く | |
![]() | リサ・ランドール 塩原 通緒 日本放送出版協会 2007-06 売り上げランキング : 330 おすすめ平均 ![]() 高次元から見ること 実験により、余剰次元の発見可能性のあるモデル理論かもしれない! とても楽しめた。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
美人理論物理学者が解明する5次元の世界
世界的なベストセラーとなっている著書の日本語訳である。著者のリサ・ランドール教授は、NHKの番組「未来への提言」で宇宙飛行士の若田光一さんと対談し、また最近は東京大学での学生向けの講演や学生との対話などが放映され、日本でも知名度が上がっている。
彼女を「ハーバード大学教授でモード誌の表紙も飾ったこともある才色兼備の女性理論物理学者」などと紹介すると、本の内容とは関係ないことと、彼女からおしかりを受けるかもしれない。
この本の内容は極めて学術的で、寝ころんで読めるようなものではない。最近の宇宙論の驚くべきテーマは、われわれの住んでいる世界は5次元やそれより高い次元の空間に浮かぶ「膜」なのだとする、ブレーンワールド理論である。
もちろん現実に実感しているわれわれの住む世界は、左右、前後、上下という三つの方向が存在する3次元空間である。
通常3次元の空間の中で膜と言えば、2次元だが、高い次元の空間の中での「膜」は3次元であることも数学的に証明が可能である。
ブレーンワールド理論で言う宇宙はこのような3次元の膜宇宙なのである。そしてこの膜宇宙の外側、われわれの宇宙とならなかった次元は「余剰次元」として膜の外に広がっていることになる。
ランドール教授は共著者と共に、画期的な「ワープした余剰次元」という論文を書き、今日のブレーン宇宙論の興隆のきっかけを作ったのである。先ほど寝ころんで読める本ではないと書いたが、決してそれは難解だというのではない。極めて丁寧に「ワープした宇宙」にいたる物理学的、かつ歴史的背景がこの本の半分のページを割いて解説されているのである。
それだけではない。各章の始めには、巧みにその章の内容を表すような愉快なショートストーリーも書かれており、疲れた頭をリラックスさせる工夫もされている。
ランドール教授の理論が本当なら、今ジュネーブ郊外に建設中で来年稼働を始める、巨大加速器、ラージハドロンコライダーで極微のブラックホールができるかもしれない。
ブラックホールの蒸発理論を提唱したイギリスのスティーヴン・ホーキング教授は、このブラックホールがいろいろな素粒子を放出して蒸発する様子が観測されたなら、ノーベル賞はいただきだ、とジョークを飛ばしている。突飛な話と思われるかもしれないが、世界の優れた理論物理学者たちが描き出した最先端の宇宙像を味わうのに良い本である。【評者 東京大学理学部教授 佐藤勝彦】
| 検証 現代中国の経済政策決定 | |
![]() | 田中 修 日本経済新聞出版社 2007-09-07 売り上げランキング : 22057 おすすめ平均 ![]() 読み応えある大著Amazonで詳しく見る by G-Tools |
改革開放路線は限界に是正されない3つの格差
中国の存在感が大きくなるにつれて、多くのエコノミストや経済学者が、中国について語ることを求められる。私もそうだが、そうなると中国の経済データを集め、そこから何かを言おうとすることになる。
しかし、中国政府の政策決定過程、その意図を探るという作業なしの統計的分析には危ういものがある。もちろん、専門家の意見を参照しながら分析を行うわけだが、危ういことは変らない。
本書は、当時の政治・経済情勢から、なぜそのような政策決定がなされたのかを詳細に解説している。公式文書を読み解くと、中国政府の意図と苦悩が見えてくる。改革開放路線以来、中国の発展が続いていることは確かだが、その過程で多くの問題が生まれてきた。
都市と農村の格差、発展する東部と遅れたままの西部との格差、都市内部の貧富の格差という三つの格差が生まれている。中国を改革開放路線に転換させた鄧小平自身、この問題に気づいており、「先に豊かになった地域が利潤と税金を多く納めて貧困地域の発展を支援する」べきと指摘していたが、格差はかえって拡大したままであるという。これは第2部に詳細に解説されており、ここを読むだけでも中国経済の問題の全貌が把握できる。
また、中国が市場経済化するとともに、市場経済の諸制度、所有権、税制の整備、財政金融政策によるマクロ・コントロールが重要となってくるが、整備は十分でなく、方針は混乱しているようにも見える。
500ページを超える大著であるが、大きな流れは最後の総括部分に要約されており、理解しやすい。また、当時の状況が解説されているので、要人の言葉や一見なんでもない公式文書の言葉も味わい深く理解できる。【評者 大和総研チーフエコノミスト 原田 泰】
| 誰が日本の医療を殺すのか―「医療崩壊」の知られざる真実 (新書y 180) | |
![]() | 本田 宏 洋泉社 2007-09 売り上げランキング : 464 おすすめ平均 ![]() 是非 専門店で手術を受けたい物です 「日本医師会」の犬なのか 医療崩壊を知るための入門編Amazonで詳しく見る by G-Tools |
崩壊寸前の日本の医療 今こそ真の医療改革を
この国の医療はどこに向かっているのだろう。医療の現場から見ても非常にあいまいである。医療費削減に躍起になる行政は当てにはできない。
社会保障として最小限提供しなければならない医療が崩壊しつつある一方で、より快適な医療への要求が増大している。時代が豊かになれば、「大部屋が標準で、プライバシーがないのも同然」の医療が支持されなくなってくるのは当然である。
この両者は同じ土俵で解決策が得られるはずはない。無差別平等の原則を貫きながら、快適な医療の要求を満たす医療サービスをどのように進めていくのか。二極化を認めるのか、長期的な展望を視野に入れた医療改革が避けて通れない。
ところが、行政側の一方的な政策が医療現場に混乱を招いている。高齢化に伴う医療需要の増加に対応して医療費を抑制している。「このまま医療費が増え続ければ国家がつぶれる」という医療費亡国論が現場を主導してきた事実がある。だが、満足いく医療を提供する責務が行政にも医療界にもある。
医療の現場は決して責務に見合う報酬を希望しているわけではない。医師も人である以上、不眠で数日診療を続ければ、医療ミスも生じる。医療には常に不確実性と限界がある。過酷な労働環境と利用者の非常識による危機的状況に不満が集中している。個々の問題について各論的な検討がなければ、解決は導けない。タクシー代わりの救急車利用などに対する対策などが実現しつつあるが、多くは問題山積のまま放置されている。
今、国全体で医療改革に真剣に取り組まなければ、いずれ盲腸の手術さえ受けられずに亡くなることが珍しくない時代が来るかもしれない。誰が日本の医療を殺すのか、一人ひとりが考える時期に来ている。【評者 医師 杉村浩美】
| スタバではグランデを買え! ―価格と生活の経済学 | |
![]() | 吉本 佳生 ダイヤモンド社 2007-09-14 売り上げランキング : 24 おすすめ平均 ![]() 大学で教える内容が本で理解できる 経済学の基礎をわかりやすく説明してくれる。 信頼というコストは高いAmazonで詳しく見る by G-Tools |
ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』を筆頭に、身近な疑問から会計を学ぶ本が一時ブームとなった。同様に、身近な商品やモノの値段がどう決まるのかといったうんちく本も、多数発刊された。
本書がそうした本と違うのは、「取引コスト」という考え方を取り入れた点だ。取引コストとは、買い物に伴う商品価格以外のコストのこと。買い物にかける時間や労力、情報収集のコストなどである。
著者曰く、「我々はつねに、モノの価格+取引コストをなるべく安くしようと行動している」とのこと。
確かに、平日は忙しく時間に余裕がない人にとって、毎日の食材を駅前商店街で買わずに、コンビニや大型ショッピングセンターで買うのは、取引コストを考慮すれば合理的行動だといえる。宅配サービスやセルフレジの増加も、同様に取引コストから説明できる。繁盛店と消費者の生活がいかに深く結び付いているか、気づかされる一冊だ。
| 騙される脳 (扶桑社新書 18) | |
![]() | 米山 公啓 扶桑社 2007-08-30 売り上げランキング : 5587 おすすめ平均 ![]() やや期待はずれ 自分で決めてますか? クチコミの正体がわかったような。Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ハンカチ王子現象に東国原知事ブーム……。昨今の“ブーム”は火がついてから全国へと広がるスピードが、従来のブームの比ではない。それにはインターネットの影響も大きいだろう。今や企業側も、商品セールスにブログを介した口コミマーケティングを活用しようと、躍起である。
テレビや雑誌だけでなくネットを通じて、いかに消費者に商品の魅力を訴求するか――。宣伝、PR戦略を極限まで練り上げた総力戦が繰り広げられている。
そうした商品の作り手(送り手)側と比べ、消費者サイドはあまりに受け身である。本書はそうした消費者の思考状態を「騙される脳」と断じ、医師の立場から脳の仕組みを解き明かす。「ブームは大脳に刺激が加わることから生まれる」「人は“新しい言葉”を口にすると刺激を感じる」など少し抽象的ではあるが、受け手視点からのブーム解説は新鮮である。「騙されない脳」を作る参考になる。
| 崩壊した神話 エレベーター 安全を守るのは誰か? | |
![]() | 宮内 明朗 丸善プラネット 2007-08-08 売り上げランキング : 19590 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
シンドラー社事件に代表されるように、この1~2年、エレベーターに関する事故が頻繁に報道されているが、 その多くは安直な「安全神話の崩壊」の文脈で語られている。はたしてエレベーターは「まったく安全」なシステムなのか、この根源的な問いかけに対し、本書はエレベーターの構造、発達の歴史の解説を交え、解き明かす。
著者は定年退職するまで40年余り、真に現場一筋を貫いたエレベーター専門家である。その知識と経験から、「安全」と考えられている「安全装置」の性能の限界と法令に関しての疑問を指摘して、いかにすれば安全、快適に乗れるかをイラストや漫画風の挿絵を多用し、対話方式でわかりやすく解説している。
書名からはありきたりな業界告発本が連想されるが、本書には奉職した専門分野に対する真摯な警告と利用者への実用的な助言があふれている。多くの写真、図版を収録しており資料的価値も高い。
| 大学ランキング 2008年版 (2008) | |
![]() | 朝日新聞社出版局 2007-04 売り上げランキング : 22753 おすすめ平均 ![]() 大学受験生向けというよりは、大学職員になりたい人向けAmazonで詳しく見る by G-Tools |
昨今の大学の混迷はすさまじい。18歳人口の激変を受けて、私立大学の倒産の危機、AO入試の無原則的拡大、さらに受講生による教師評価、これでは大学がますます劣化の一途をたどる。
一方、安倍前政権は、大学教育の見直しの目玉として、9月入学と入学決定者の3カ月間ボランティア活動の義務化を提唱。こんな的外れの改革を押し付けるとは!
大学改革のためには、大学側は、受験生の学力を伸ばし、適切に評価する入試を行うべきである。これしかないのだ。長い人生で、大学入試という「18歳の試練」くらいでへこたれてほしくない。
大学の情報はあまりに少ない。大学にとって「不都合な事実」、たとえば、専任教員数と実際の学生数などは参考になるだろう。本書のアンケートに対して「情報非公開」ないし「未回答」の大学名とその項目について、本書は公表している。
| 東京―忘却の昭和三〇年代 | |
![]() | 金子 桂三 河出書房新社 2007-05 売り上げランキング : 184636 おすすめ平均 ![]() カメラマン金子桂三が撮りためた懐かしい東京の写真集ですAmazonで詳しく見る by G-Tools |
回想の昭和30年代ブーム「美しい国 日本」がある
昭和30年代を描いた映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の大ヒットは記憶に新しいが、11月その続編が公開される。今回もまた、今はない東京をCGで再現しているが、そのハイライトは高速道路が架かる前の日本橋の風景だ。橋上に蓋をしたような今の重苦しい姿に比べ、なんとすがすがしく開放的なのだろう。高架道路の建設がはじまる昭和37年、薗部澄の『追憶の街・東京』の表紙はこの日本橋の写真で飾られている。著者は敗戦の廃墟から復興する30年代の東京の街と人を生き生きと写しており、読者はなじみの場所と重ね合わせ、その変貌ぶりにため息をもらすに違いない。とくに三鷹や練馬など郊外の田園風景のギャップが著しい。
昭和30年代の東京は戦災から高度経済成長、東京五輪へと至る時代。東京タワーの竣工が33年、五輪が39年。35年の安保闘争を挟んで町も社会も大きく変貌した。だがこのころは、地域の共同体も社会のモラルも家族の有り様も崩れることなく、貧しくても希望と人の情けがあった。戦後は岩波写真文庫で日本全土を歩いた薗部は、確かな眼で東京のそれをとらえた。
『東京 忘却の昭和30年代』の金子桂三は落語など寄席を専門にする写真家で、昭和30年代に入り、日本特有の情緒や生活環境がこのままでは失われてしまうと予感し、東京を撮りはじめる。著者は漁師町の羽田に生まれた。東京湾周辺の作品は貴重なもので、伝説化した隅田川岸のお化け煙突の写真は30年代ものの東京写真の秀作だろう。
この二つの写真集を眺めていると、とつぜん辞任した前首相のいう「美しい国 日本」とはこの昭和30年代のことかと錯覚してしまった。【評者 写真家 中川道夫】
| A4一枚で書類はまとめなさい (Biz plus α) | |
![]() | 矢矧 晴一郎 あさ出版 2004-07 売り上げランキング : 240558 おすすめ平均 ![]() 「相手のプラスになる書類を作る」Amazonで詳しく見る by G-Tools |
| 使える!モチベーション仕事術―70のヒント&ツール | |
![]() | リンクアンドモチベーション 東洋経済新報社 2007-10 売り上げランキング : 926 おすすめ平均 ![]() ダントツにわかり易い!モチベーションのハック本!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
生産性を上げるシンプルな方法
仕事漬けの毎日から脱したいと思いながら、相変わらず残業や土日出勤を余儀なくされている諸氏も多いはず。そんな方々にお役立ていただける本が出版された。
『「A4一枚」仕事術』(三木雄信著)である。著者はソフトバンク社長室長として激務をこなし続けた「仕事人」。その著者が、これまでの経験を基に編み出した仕事術を披露している。
スケジュール管理から、思考力や企画力の強化、マネジメント力のアップまで、A4一枚で構成されたさまざまなフォーマットとその使い方が解説されている。
本文掲載のフォーマットをコピーして書き込むというシンプルさが、取り組みやすそうである。
手抜きが目立つ部下に、管理職のあなたから本書を渡し、実践させれば、生産性向上につながるかもしれない。
生産性を上げる前に、現場のモチベーションアップも大切と感じるときには、『使える! モチベーション仕事術』(リンクアンドモチベーション著)もご一読いただきたい。
| アラビアのバフェット“世界第5位の富豪”アルワリード王子の投資手法 [ウィザードブック125](DVD付) (ウィザードブックシリーズ 125) | |
![]() | リズ・カーン 塩野未佳 パンローリング 2007-08-09 売り上げランキング : 4320 おすすめ平均 ![]() 人物は興味深いが・・・Amazonで詳しく見る by G-Tools |
サウジアラビア王子の日本株投資のあいさつ状
約600ページにもなる分厚い本である。サウジアラビアの王子で「世界第5位の富豪」であるアルワリードの華麗なる半生の記録であれば、別に驚くことでもない。
本のあらすじは、アメリカの巨大企業シティグループを始めとする窮地に立たされた企業の救済やフォーシーズンズ・ホテルズなどトップブランドへの投資の物語であるが、なんといっても投資の神様ウォーレン・バフェットに「私がアメリカのアルワリードと呼ばれている」といわしめた資産約240億ドルの億万長者の生活を垣間見られるのが、この本の最大の魅力である。
しかし、この本の中でアジアに関する記述は2ページのみである(韓国の大宇・現代自動車への投資)。アルワリードが「実は東アジアに注力したことは一度もなかった」というように、日本における活動の記述はまったくない。
訳者が指摘しているとおり、この本は王子「公認の」ドキュメントであるため、客観性という点ではやや疑問が残るのは否めないが、アルワリードにとってこれまで縁もゆかりもなかった日本でこの分厚い本が1890円という廉価で出版されたのである。王子が率いるキングダム・ホールディング社の企業戦略の一環であると評者は推測するが、その狙いは何か。
世界経済は米国のサブプライム問題に端を発する「信用収縮」で先行きの見通しが不透明になりつつある。日本の株式や通貨は米国市場の動きに見事に連動して「乱高下」を繰り返しており、日本経済や株式に対する弱気の見方が広まっている。
このような状況にあって日本株に対して「熱い視線」を注いでいるのが意外にも中東の投資家たちだ。たとえば、ドバイ政府系投資会社DICは「日本の株式市場は3年前のドイツ市場と同じでエキサイティング」と語っている。アブダビ政府系投資会社IPICも今年10月にコスモ石油の筆頭株主になった。韓国メディアによれば「9月に入ってからサウジアラビア、UAEなどからオイルマネーがソウル市場に押し寄せている」という。
日本ではUAEの動きが先行しているが、真打ちはなんといってもサウジアラビアだろう。前述した韓国自動車会社への投資が「アジア通貨危機」のときであったことを考えれば、日本への投資はこれからが本番ではないだろうか。
この本が中東投資家の雄であるアルワリードの日本へのあいさつ状であるとしたら、日本側はこれに対して積極的に応じる「腹」を今から固めておかなければならない。【評者 藤 和彦 内閣官房内閣参事官】
| プリンセス・マサコ―完訳 菊の玉座の囚われ人 | |
![]() | ベン・ヒルズ 藤田 真利子 第三書館 2007-08 売り上げランキング : 2604 おすすめ平均 ![]() ともかく自分で読んで判断しましょう! 結果的に宮内庁批判 この本の意義は宮内庁が明白にしたAmazonで詳しく見る by G-Tools |
外国人が見た皇室のすがた 日本人には素直に読めない表現も
小和田雅子嬢が皇太子さまと結婚したとき、日本中はわき立ったが、外国のメディアの反応は冷ややかだった。『ニューズウィーク』誌は「いやいやながらのプリンセス」と報じた。
1986年秋宮中晩餐会で皇太子さまは雅子嬢を見初めた。「彼女に会った瞬間、何かに撃たれたようだった」と後に友人に語ったという。だが「タフネスまーちゃん」といわれ「野心に満ちた外交官」として歩み始めたばかりの彼女は、皇太子さまの想いに応えなかった。しかし、皇太子さまは諦めない。7年後の93年6月、雅子嬢はついに皇太子妃となった。
最初は大歓迎だった日本のメディアは、すぐにプリンセスに優しくなくなる。雅子妃がなかなか懐妊しなかったからである。そして宮内庁との確執が伝えられるようになった。8年たって長女が誕生したが、バッシングは収まらなかった。体調を崩した雅子妃は「適応障害」であることが公にされた。外国メディアでは「不幸せな皇太子妃」が定説になっていた。
2004年5月、皇太子さまは記者会見で衝撃的な発言をした。「雅子の人格を否定するような動きがあったことも事実です」。雅子妃の不幸は本当だったと知り、多くの国民は事態を憂いた。だがその後、どれほど改善されたのか。「十四回目の結婚記念日が近づくが、雅子妃の行き先は見えない」と著者はいう。
本書は日本人に向かって書かれたものではない。だが天皇制(皇室)が外国人にどう見られているかを知る上ではなかなか面白い。とはいえ素直には読みにくい書きっぷりである。日本の文化に無知なのか、あるいはそうよそおっているのか、いささか悪意も感じる。それは必ずしも著者のせいだけではないかもしれない。翻訳の役割が大きい。翻訳の「品格」が問われる。【評者 仲倉重郎 映画監督】
| よみがえる心臓―人工臓器と再生医療 | |
![]() | 東嶋 和子 オーム社 2007-04 売り上げランキング : 23881 おすすめ平均 ![]() 「日本人もやるもんだ」Amazonで詳しく見る by G-Tools |
人工臓器と再生医療の現状を克明にリポート
心臓移植しか手段はないと診断されたら、たちまち頭が真っ白になるだろう。1966年札幌医大でのわが国初の心臓移植後、30年間も心臓移植が中断されていたからだ。
それにしても、本書によると、ようやく心臓病の治療に関して愁眉を開くような状況になっている。胸壁からわずか数センチの深さにある心臓に、外科医の手が届くまでには、医聖ヒポクラテスから実に2400年もの歳月を要したのだった。そして現在、心臓移植は、内科的・外科的治療では救えない患者のための最終的治療法として欧米ではすでに定着し、年間4000人が心臓移植を受けている。
しかるに、日本の場合、心臓移植が必要な患者は約1600人といわれているが、臓器提供者の慢性的な不足のために、実際に年間40人前後しか心臓移植登録していない。日本での移植を待ちきれずに海外で移植を受ける患者がしだいに多くなり、それも発展途上国で移植を受けるのが一般化している。
「移植は命の贈り物」という言葉の背後では座視し得ない深刻な臓器売買を引き起こしている。さらに小児の心臓移植は、よくテレビのニュースでも見かけるように、現行法のもとでは渡航移植に頼らざるを得ない。小児用はもとより、日本人の体型に見合った人工心臓の開発は焦眉の課題であった。アメリカに渡った日本の若き医学研究者たちが造った人口心臓が逆輸入され、それが日本人用に調整された。ついに、国産の次世代型補助人工心臓「エバハート」が患者の胸に装着された。
再生医療の分野において、いつまでもアメリカやドイツの後塵を拝するのではなく、政府も本腰を入れて、優秀な医療関係者と工学関係者を集め、わが国独自の医療産業を興さねばならない、と本書は力説している。【評者 川成 洋 法政大学工学部教授】
| 「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ | |
![]() | 小宮山 宏 中央公論新社 2007-09 売り上げランキング : 11842 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
小宮山氏は現職の東京大学総長である。専門は応用化学とエネルギー問題。その著者が、人類が直面する最大の課題であるエネルギーと環境問題などについてわかりやすく解説しているところが、この本の最大の魅力である。
「課題先進国」日本という意味は、日本にはどの国も解決したことのない課題が山ほどあるということであると、著者は言う。エネルギーや資源の欠乏。環境汚染。高齢化。都市の過密と地方の過疎、教育問題、農業問題などなど。
これらの課題はやがて世界のどの国も直面する課題になると著者は指摘する。
ところが、日本は経済規模に比してエネルギー消費が非常に少ない国である。高度成長期に深刻だった環境汚染もかなり克服した。
こうした課題解決力を高めることで、日本は世界のフロントランナーになれるという。具体的には、2050年にエネルギー効率を3倍にすることを目標にするべきだと語る。
| ブリタニア列王史―アーサー王ロマンス原拠の書 | |
![]() | ジェフリー・オヴ・モンマス 南雲堂フェニックス 2007-09 売り上げランキング : 154266 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中世ロマンスの3大主人公といえば、古代マケドニア王のアレクサンドロス大王、神聖ローマ皇帝のシャルルマーニュ大帝、そしてブリタニア王のアーサー王である。
アーサー王は6世紀前半にサクセン人と戦ってしばしば敗走せしめたケルト人の将軍であった。しかし、ついにケルト人は、サクソン人に征服され、ウェールズ、スコットランド、アイルランドに逃れ、一部は海を渡ってフランスの北西部ブルターニュに定住した。
こうして、6世紀から12世紀に至るケルト人の願望と夢は、自らの救国の英雄アーサーを世界最高の王者に仕上げたのだった。
本書は、ケルト人の間に口碑伝承された諸伝説や年代記作者の記述をラテン語で集大成したものであり、アーサー王の伝説から歴史化を経て、12世紀後半にフランスを中心に豪華絢爛に咲き誇った「アーサー王ロマンス群」の気宇壮大な一大絵巻物語の原書といわれている。
| 「昭和」とは何だったのか (講談社文庫) | |
![]() | 保阪 正康 講談社 2007-08-11 売り上げランキング : 129334 おすすめ平均 ![]() いまいちかなAmazonで詳しく見る by G-Tools |
| 昭和天皇ご自身による「天皇論」 (講談社文庫) | |
![]() | 半藤 一利 講談社 2007-08-11 売り上げランキング : 202808 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
昭和の歴史から学ばなければならないこと
「戦後レジームとの訣別」などと威勢のいい進軍ラッパを吹き、無責任にも退陣した安倍晋三前首相の「教育改革」とは、太平洋戦争期の従軍慰安婦、沖縄で軍が関与した集団自決、などを歴史教科書から抹殺することであった。
これに反対する沖縄の11万人あまりの抗議集会を目の当たりにして、あわてふためく文部科学省。そもそも、時の政治権力に敏感に反応して検討基準を変える教科書検定制は本当に必要なのか。
それにしても、疾風怒濤の昭和の歴史から学ぼうとしない前首相。また、現代史を教えていない学校教育。昭和の中心に据えるはずの太平洋戦争をしっかりと認識していない世代が増えている。
こうした歴史的無知や社会的アパシーが今日の日本をつくっている。国会の論戦の形骸化、感情的なナショナリズムの跋扈するメディア、憲法改正の強行的プログラム。
これらの逼塞した政治的状況から東條英機が連想されると危惧しているのが、保阪正康著『「昭和」とは何だったのか』(講談社文庫)である。
「過去の歴史を教師とする謙虚さをもっている」ことが、現在の政治指導者の資質であると力説する著者は「戦争を語り継ぐ昭和の証言者たち」の歴史を執拗に再構築していくという。
ところで、太平洋戦争における天皇の「戦争責任」はどうであろうか。道義的には責任なしとはいえないのではないか。それゆえ、前書は「開戦責任から終戦責任まで含めて、歴史的・道義的責任を痛感している」と述べている。
また、半藤一利著『昭和天皇ご自身による「天皇論」』(講談社文庫)によると、太平洋戦争期においても、天皇は「憲法の遵守」「国際協調」に関してしばしば明言し、さらに「天皇機関説にたいして、もっとも明快な意見をもっていたのが、天皇その人であった」という。なんたる歴史の皮肉としか言いようがない。
昭和の歴史を正しく理解すること、これが混迷と彷徨の真っ只中にいる日本の一つの指針となるであろう。【評者 阿久根利具 文芸評論家】


高次元から見ること
実験により、余剰次元の発見可能性のあるモデル理論かもしれない!



信頼というコストは高い





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