メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2006年9月30日~10月7日

日米開戦の真実 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く
日米開戦の真実 大川周明著『米英東亜侵略史』を読み解く佐藤 優

小学館 2006-04-22
売り上げランキング : 4532

おすすめ平均 star
star説得力
star日本の主張
star日米開戦の理由の正当化としては秀逸

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戦後の常識に囚われず「大川周明」を読み解く

昭和16年12月8日の「宣戦布告」や、父親が熱心に聞いていた大川周明の講演――6歳だった私はそれらを報じるNHKラジオの声を記憶している。

その後25年経て衆議院副議長秘書時代、大川周明に師事し、松沢病院(精神病院)に入院した大川を世話した僧侶・蒲池繁氏に、本書のテーマである「米英東亜侵略史」を勉強するように薦められたことがある。そうしたことから、今回の書評の依頼に運命的なものを感じた。

昭和の天才大川周明の問題の書物を、平成の鬼才佐藤優が読み解き、真の改革思想を学び直そうという精神に、著者の新境地を見る思いだ。偏狭なナショナリズムが跋扈し始めたわが国で、国家存立の根本を考えるに必読の書である。

大川周明の論旨は著者が指摘するように歴史の真実に沿い、客観的かつ論理的である。私は第2次世界大戦の原因について、著名な歴史学者で『危機の20年』(1939年)という有名な本を発表したE・H・カー教授の学説を修士論文のテーマにしたことがある。日本の開戦が単純な侵略戦争であるとの論を避けたE・H・カーは、帝国主義植民地獲得の後発国として、結果的に暴発を余儀なくされ戦争となった状況を論証していた。大川周明の論旨と同じであることに驚いた。

大川周明が反米主義者でなく、ペリー提督の「反植民地主義」に共感していたとの指摘にも驚いた。私はジョン万次郎を顕彰する運動をしているが、ペリー来日の際、万次郎が幕閣に説明した「米国は日本を侵略し、植民地化する意思なし」に若干の疑問を持っていた。それが本書を読んで解消した。現実に日露戦争のころから、日米友好に貢献した万次郎の物語は国民から忘れられていく。日米双方に国家戦略に変更があったとの著者の指摘と符合する。

著者は大川周明が松沢病院を退院後、東京裁判の法廷に呼び戻されなかったことについて、日本が開戦に追い込まれた理由を、大川が論理的に展開することを米国が怖れたためであると推論している。前述した蒲池氏も、そのことをしきりに残念がっていた。

著者は政治の究極の形態を戦争と位置づけ、政治の本質は思想の戦いであるとも喝破している。日本の政治、とりわけ外交力の劣化の根本原因は思想の欠如である。改革も当然、思想の闘いである。成功するには、「自国の善をもって自国の悪を討つ」方策しかないとの大川周明の論は至言である。戦争責任という戦後の常識に囚われ、大川周明の思想の根底を見ようとしなかった私は、本書から多くのことを学んだ。【評者 平野貞夫 元参議院議員】

■2006/10/07, 週刊東洋経済

漢字伝来
漢字伝来大島 正二

岩波書店 2006-08
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おすすめ平均 star
star「漢字伝来」をより広い視点から描く
star漢字の日本語化、その巧みさあればこそ
star日本文化史上最大の事件

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日本に渡った漢字の変遷を克明に解説

もう亡くなったが、河野六郎という学者がいた。学士院会員で、言語学の方面ではきわめて偉い人だったが、謙虚な方で、私が東大の文学部東洋史学科を受けるに当たっても、親切に相談に応じてくださった。

本書の著者の大島正二氏も、河野六郎を「恩師」と呼んでいるから、その学統に属する人なのだろう。

本書に先立つ大島正二著『漢字と中国人』(岩波新書)は、まことにブリリアントな出来で、いろいろな漢字の辞典類を概論して、現代の「注音字母」に及び、これ一冊で中国の漢字問題のすべてがわかるといってもいい。

それにくらべて本書『漢字伝来』は、やや問題がある。そのおもな原因は、太安万侶が712年に『古事記』を撰上したと、著者が無邪気に信じていることだろう。

実はこの説の根拠は『古事記』の漢文の序だが、賀茂真淵も疑っていたとおり、『古事記』はそれより百年あまり後の、平安朝はじめの偽書であり、太安万侶自身も文人ではなく、『古事記』のような歴史の著作はおろか、『日本書紀』の編纂委員会にも加わっていない。

それでも本書は、漢字に興味があるすべての日本人にとって一読の価値がある良書である。  

日本に渡った漢字がどんな運命を経て今日の盛況に至ったかを、各時代の変化をたどりながら、ていねいに説明する。

とくに「補章 日本漢字音と中国原音の関係を知るために」は、よくできている。ベルンハルド・カールグレンが研究した、隋・唐時代の漢字音の復元を中心とし、河野六郎の修正を加えて示すこの章は、漢字音はいかにも複雑だが、それを昔の日本人がたいへん苦心して、日本語に適するように直したあとを解説するものである。【評者 岡田英弘 東京外国語大学名誉教授】

■2006/10/07, 週刊東洋経済

チャベス―ラテンアメリカは世界を変える!
チャベス―ラテンアメリカは世界を変える!ウーゴ チャベス アレイダ ゲバラ Hugo Ch´avez

作品社 2006-06
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米国の覇権に挑戦するベネズエラ大統領の実像

米国を「悪魔」呼ばわりし、キューバのカストロ議長を兄として慕い、イランの首脳とも積極的に親交を深める。常に米国をいらだたせる、奇っ怪な指導者という印象を残すベネズエラのチャベス大統領。そのチャベスの生い立ちや考え方を、チェ・ゲバラの娘がインタビューした内容をまとめたもの。

チェ・ゲバラを敬愛するチャベス氏は、娘への語り口も尊敬と配慮を示している。その発言の中から読み取れるのは、チャベス氏は南米民族主義運動の革命家である「シモン・ボリーバル」の再来を目指しているということだ。

石油輸出国として、その利権を中心に群がる旧支配層と、その恩恵に与からず、貧困にあえぐ民衆。チャベス氏はこの対立の構図を「南米民族主義の発展」の機会ととらえる。これはまさに、19世紀に民族主義を説いたボリーバルの革命=ボリバリアーナの延長線上にあるという考え方だ。彼が目指す「ボリバリアーナ」革命とは、端的に言えば、内には潤沢な石油収入を多数の貧困層に回すこと、そして海外では米国の覇権と市場経済に異を唱え、民族の自立を促すことなのだろう。

ただ、訳者が解説として指摘しているように、彼の革命に「石油収益分配革命」との性格が否めない限り、将来、石油収益が激変した場合に革命の正当性が疑われてしまうこと、さらには農地改革という土地革命の段階に到達すれば、すなわち革命が真正の革命に達すれば、現在は雌伏する反体制勢力の巻き返しがどれほどの力を持つかわからない、という爆弾を抱えているのも事実だろう。

日本人にはあまりなじみのない南米の指導者の性格がよくわかる本。読者にはまず、訳者による解説を先に読まれることをおすすめする。

■2006/10/07, 週刊東洋経済

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来
若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来城 繁幸

光文社 2006-09-15
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おすすめ平均 star
star今さらながら良い内容
star現状の企業人事の分析が非常に鋭い書
star現状認識が出来る本.

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「なぜ最近の若者はすぐに会社を辞めるのか」

そう団塊の世代に問いかければ、十中八九、「忍耐力がないから」という答えが返ってくるだろう。本書は、そんな通説に風穴を開け、「定期昇給もない、かといって成果主義による抜擢もないでは、やってられない」という若者の言い分を、理論的に解明している。

長く勤めれば、自然と給与がアップしていく昭和の良き時代は終わった。今後は大企業でも、ほんの一部の出世組を除き、昇給が30代後半から40代前半でストップしてしまう。つまり、数少ないポストを巡る出世競争に敗れると、30代と同じ給与で退職まで平社員を続けなければならなくなる。

こうした状況下、「将来報われる可能性の低い下働きを続けるくらいなら、転職して勝負を賭けたい」と考える若者の心の機微を、著者は丁寧に記述している。本書を読めば、若者の抱える苦悩を、中年世代も少しは理解できるはずだ。

■2006/10/07, 週刊東洋経済

サムスンはいかにして「最強の社員」をつくったか―日本企業が追い抜かれる理由
サムスンはいかにして「最強の社員」をつくったか―日本企業が追い抜かれる理由李 彩潤 洪 和美

祥伝社 2006-09
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韓国を代表する電子メーカー・サムスン電子はいかにつくられたか。これを人材開発に的を絞って解説したのが本書である。

サムスングループの創業者は日本の松下電器を参考にして、「人材第一」をモットーに企業を成長させたが、その精神は息子のイ・ゴンヒ会長に継承されている。

日本企業をマネたサムスン電子だが、今や日本の電機メーカーを凌駕し、世界でも有数の規模と利益を誇る企業となっている。

1990年代後半のIMFショックを経て、サムスンは日本型経営と米国型経営の長所を取り入れたハイブリッド型人材育成を目指しているように見える。

サムスンがGEなど米国企業CEOに見られるような、「天才的」リーダーの育成に力を入れ、その優れたリーダーが次のリーダーを育てるという指摘は興味深い。今や、サムスンの経営戦略や人材育成を日本企業が見習う段階に来ているのかもしれない。

■2006/10/07, 週刊東洋経済

ドイツ現代史の正しい見方
ドイツ現代史の正しい見方セバスチャン ハフナー Sebastian Haffner 瀬野 文教

草思社 2006-04
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著者はドイツを代表する歴史ジャーナリスト。本著はそのエッセイ集である。

まず、プロイセン国家は「人工的につくられた国家だった」とする持論に引き込まれる。リベラルな入植政策の採用による民主主義的改革、宰相ビスマルクのドイツ統一によるナショナリズムの追求。この二つの理念が複雑に絡んだ背景には、結局「軍事力の強化」があったという。

また、「ドイツがヴェルサイユ条約を拒否していればヒトラーは出現しなかったし、第二次世界大戦も避けられた」と、大戦はドイツがポーランドに侵攻したことによって始まったという定説をあっさりと覆す。さらに、ヒトラーの大躍進は暴力テロによってではなく、「庶民大衆が何か新しいものを望み、『最後の希望』として積極的にヒトラーを押し上げた」と解釈する。

歴史とは文学的な観点から書かれた一種のフィクション。そう割り切って展開されるハフナーの大胆な歴史解釈は、説得力がある

■2006/10/07, 週刊東洋経済

たそがれの挽歌
たそがれの挽歌大森 光章

菁柿堂 2006-05
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本書は、11人の作家の逝去をめぐって著者との交友を回顧したものである。 これらの11人の作家は、生前はこんな人だったと、文学仲間であり、また場合によっては弟子である著者が解き明かしてくれる。彼らの作品から、仮に私小説的内容であっても、到底想像できない世界である。

たとえば、「武田泰淳――文章千古」は、本書の著者の貧しい下宿先に新婚ほやほやの泰淳・百合子夫妻が移り住む。後に北大文学部中国文学科教授になるほどの中国文学者である泰淳は、若き著者に『史記の世界』をプレゼントするが、その本に「文書千古 得失寸心知」という献辞が書かれていた。

その頃、文学の道を進むかどうか相談に来る文学青年たちに決まって「文学なんか止めた方がいいですね」と諭したという。

また「尾崎秀樹――近くて遠い人」「色川武大――やさしき無頼派」なども面白いエピソードを交え、語っている。

■2006/10/07, 週刊東洋経済

古武術からの発想
古武術からの発想甲野 善紀

PHP研究所 2003-02
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おすすめ平均 star
star考え方が変わるのか?否、カラダの動かし方が変わるのだ。
star著者の体の動きを見てみたくなる。
star「小よく大を制す」の思想

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黄金の天馬
津本 陽 (著)

物騒な時代、護身術に武道を せめて気合だけでも学ぼう

近年とみに治安が悪くなってきている。理由なき殺人や凶悪な暴力行為といったニュースが、さながら日常茶飯の出来事のごとく報じられているのだ。いつ、何か深刻なことがわが身に降りかかってくるかもしれない。そう用心すべきだといえば大袈裟すぎるであろうか。そろそろ欧米並みに護身術でも身につけなくてはならなくなったようである。たとえ不意打ちであっても、実際には難しいことであるが、相手との「間合い」をしっかりと取りたいものである。

そのために、管見であるが、是非勧めたいのは武道である。武道といっても、「獲物」(武道界では、例えば、竹刀、日本刀、杖、薙刀、短刀、銃剣などの武器をさす)の使用は通勤や通学といった日常生活には馴染まない。しかも、「獲物」を使う武道の有段者でもそれを使えなければ、失礼な言い方になるが、ほぼ無力となってしまうようだ。

したがって、「獲物」を使わない武道とは、柔道、合気道、空手、少林寺拳法、日本拳法などであるが、これらは、正直言って、さまざまな流派があり、また基本技を体得するためには相当長期間の、砂を噛むような稽古を必要とする。

そこで、頭を変えてみたい。「私の武術には稽古は必要としない」と公言する、お馴染みの甲野善紀の『古武道からの発想』、『武術の新・人間学』(ともに、PHP文庫)は、既存のさまざまな武道とは全く別個の「武術」、「小よく大を制す武術」の復活を提唱し、彼独自の「井桁崩しの原理」を実践している。これらを読み、それなりに体を動かせば、ささやかな「自信」というものが目覚めるかもしれない。

また長年、剣道と抜刀術の鍛錬を重ねている津本陽の『黄金の天馬』(文春文庫)は、さまざまな古武道を研鑽した合気道の開祖、植芝盛平の天才の秘密を詳らかにした伝記である。この脆弱そうな小柄の武の達人の心構えこそ、危険に対する「間合い」や「目付け」、そして「気合い」が大切なことがわかるであろう。【評者 阿久根利具 文芸評論家】

■2006/10/07, 週刊東洋経済

大塚久雄 人と学問―付 大塚久雄「資本論講義」
大塚久雄 人と学問―付 大塚久雄「資本論講義」石崎 津義男

みすず書房 2006-07
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一世を風靡した大塚史学の知的背景を現す「伝記」

本書は大塚久雄(1907~96年、元東京大学教授)の伝記ではないと筆者は言うが、実は見事な伝記になっている。

そこでは一人のまじめで優秀な少年、青年が、時代の波にもまれながら成長し、思い悩む姿が描かれている。東京帝大卒業を控えて、恩師である本位田祥男教授から助手として大学に残らないかという誘いを受けた。これが西洋経済史の研究者になるきっかけになった。

研究者としての重要な学説は、「前期的資本」の法則性についてであった。「わたしなんかもたった一つの言葉を見つけただけで、すべていまのことをやってきたのです」と本人が回顧したことを述べている。しかし、本位田教授からは叱られ、矢内原忠雄教授からは「いい加減なことは書かないほうがよい」と忠告されたという。

戦後の大塚久雄はこの学説をもって「大塚史学」と呼ばれる学派の頂点に立った。著者は「この件に限らず、学会では従来の学説に抵触するような新説はなかなか容認されない」と書いて、「大塚は現代日本の経済史的位置づけを明らかにするためにも、経済史的観点に立って、中世末から近世にかけてのヨーロッパを概観してみることが必要だと思った」ので、フランス専門の高橋幸八郎、ドイツ専門の松田智雄の両教授と相談して、そのための講座を作ることを計画したという。「西洋経済史講座」のことである。

この部分では、「大塚史学の学術的評価については言及しない」という著者が、賞賛の方向に動いているように見える。

しかし、イギリス経済史で発見した前期的資本の法則性を、他国に無理やり当てはめていくことが事実から反した虚構になったという側面がある。また、マルクス経済学者が大塚史学批判の側であるかのように書いているが、そうではない。

戦前の日本資本主義論争で形成された「講座派」はマルクス経済学の主流だったが、大塚史学はそれを補完する側面を持っていた。「明治維新は市民革命ではなく、天皇制は絶対主義であった」という基本理論が講座派のものであるが、大塚史学はそれを強力に主張したから、講座派の別働隊のようになった。

大塚史学によると、16世紀のスペイン、ポルトガルと戦前の日本が同列に置かれることになる。「そこまで日本が後進国だったのか」と疑問を出す人がいると、講座派の学者と大塚史学の学者が手を組んで批判者をたたいてきた。こういう論争は今なお続いているので、本書では人物伝に限定して事実を知り、評価については慎重に判断するという姿勢が望まれるのではないか。【評者 小林良彰 日本大学大学院非常勤講師】

■2006/09/30, 週刊東洋経済

ブランド王国スイスの秘密
ブランド王国スイスの秘密磯山 友幸

日経BP社 2006-02-23
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おすすめ平均 star
star日本がこのような道を歩むことは無いでしょうね
starブランド本ではありません
starSWISS MADE と MADE IN JAPAN

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世界最強のブランド国家スイスの戦略を明かす

時計、食品、航空、金融、保険など、スイスには数多くのブランド企業が存在する。観光も含めてスイスは世界最強のブランド国家である。本書は、日本のメディアがこれまであまり切り込むことのなかったスイスのブランド戦略の秘密をきわめて具体的に解き明かしている。

本書の構成を紹介しておくと、スイス産業はいかにして「ブランド」を創ったのか?(第1章)、「スイス」というブランドの力(第2章)、ブランド立国までの足取り(第3章)、スイス・ブランドの曲がり角(第4章)、ブランド論で語る「国のかたち」(第5章)である。

ネスレ(食品)と比較した日本型ブランドマネジメントの欠陥(第1章)、おなじみのスイス・アーミーナイフに見られる国旗が商品になる(第2章)など興味深い点が多いが、特筆すべきは将来の国のグランドデザイン、つまり「国のかたち」まで及んでいる点だ(第6章)。

ブランドは狭義の商品ブランドにとどまらず、企業ブランドや国家のブランドにも通じる。日本がどうやって「ヒト」「モノ」「カネ」を集める魅力的な国になっていくか、企業から地域、国までがブランド戦略を立てていくことが求められている今日、2年間のチューリッヒ支局長という現場の目を通したスイス論は、スイスと共通点の多い日本のブランド戦略を考えるうえで大きなヒントを与える。

さらに、会計的視点から読むと、著者は前著『国際会計基準戦争』(日経BP社)で時価会計を軸にした国際会計基準を通して企業及び国の国際競争力を論じたが、本書ではその時価会計の延長にある無形固定資産、とりわけブランドに焦点を当てて同じく企業と国の競争力を論じている。その点で、前著との「連作」として読むと、著者の一貫した視点が読み取れる。【評者 石川純治 駒澤大学教授】

■2006/09/30, 週刊東洋経済

図解・鉄道の科学
図解・鉄道の科学宮本 昌幸

講談社 2006-06-21
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おすすめ平均 star
starこの本、面白いです。
star鉄道がわかる。
star電車ってすごい!

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電車が走り、曲がり、止まるメカニズムを総合的に解説

鉄道はあらゆる分野の技術を結集して運行されている。機械、電気、通信、土木等々である。

単純に鉄のレールの上を鉄の車輪によって走らせているわけではない。そこには鉄道が発明されて以来180年の技術の積み上げがある。さらにはわが国ではこの20年間で飛躍的に鉄道技術が向上した。

とくに新幹線にそれが強く表れている。最高速度が220キロから300キロになった。にもかかわらずエネルギー消費は激減し、騒音も小さくなった。通勤電車ではそれまでの電力消費の3分の1以下にもなっている。

鉄道に関する総合的な技術開発の積み重ねがそうさせたのである。しかし、それを簡略に紹介する本は少ない。あまりにも分野が広すぎるからである。

本書はそれを要領よくまとめている。安全、快適、高速、省エネ運転のしくみを解説するだけでなく、一般の人々にはほとんど知られていない鉄道車両が曲がるという基本的なメカニズムの大元が車輪がレールに当たる面の形状に秘密があること、など鉄道の基本的な特徴についても要領よく解説している。

列車を走らせるためには線路、車両、信号、電気といった大きな部門があり、それらはもっと細かな部門に分けられる。

だから、どうしても鉄道専門用語を多用しなければ簡潔には語れない。そのため最新技術の解説にいけばいくほどこれら鉄道用語に慣れていない人にとっては読みづらい面もあろう。

各種の技術書がそうであるように、わからない用語があれば、それいついて解説しているページを開いて理解して、元に戻るというようにページをいろいろとめくりなおす必要がある。

本書をそのようにして読み進めれば鉄道技術について完全に理解することができる。手元に置いておきたい一冊である。【評者 川島令三 鉄道アナリスト】

■2006/09/30, 週刊東洋経済

われ巣鴨に出頭せず―近衛文麿と天皇
われ巣鴨に出頭せず―近衛文麿と天皇工藤 美代子

日本経済新聞社 2006-07
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starもうひとりの天皇としての貴種・近衛を描いた書
star近衛公擁護論

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この本は戦前に3度も首相となり、日中戦争開戦当時や太平洋戦争開戦前夜に大きな役割を果たした政治家・近衛文麿を描く。著者は小説家である。

近衛文麿は敗戦の年の12月に青酸カリを飲んで服毒自殺した。GHQによって戦犯として裁かれることを潔しとしなかった名門の誇りからだ、と著者はいう。

近衛文麿は五摂家筆頭の名門に生まれ、長身でハンサム、かつ一高、東京帝大、京都帝大に進んだ秀才である。この近衛文麿が昭和史に果たした本当の役割は相変わらず謎である。体系的な伝記も少ない。それゆえ、この本が読まれているのだろう。実母を誕生時に亡くし、叔母(実母の妹)を実母と信じて育ったことなど、近衛の背景が語られる。

ただ、残念なのは、近衛文麿の思想に踏み込んでいないことである。近衛文麿は著名なマルクス経済学者・川上肇に師事するため、京大に移籍した。こうした史実もさらりと触れられているだけである。

■2006/09/30, 週刊東洋経済

スピノザ―「無神論者」は宗教を肯定できるか
スピノザ―「無神論者」は宗教を肯定できるか上野 修

日本放送出版協会 2006-07
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おすすめ平均 star
starスピノザの画期的な宗教批判を解明

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スピノザは17世紀オランダの哲学者である。ポルトガル系ユダヤ人の家系に生まれ、ユダヤ教の律法学者になるべく、勉学を重ねたが、やがて神の存在を否定する考えを持つ。その考えは、『神学・政治論』などの著書で本心をぼかした「奴隷の言葉」で表明される。

「旧約聖書が語る人格神は存在しない。自然が神そのものである」という結論であり、「宗教と政治が一体となった古代のヘブライ人国家は一時的な存在であり、近代国家では宗教と政治は分離されなければならない」というものだ。

スピノザ思想の危険性を読みとったユダヤ教指導者は彼を破門する。しかし、スピノザの考えは、フランス革命で成立した国民国家で実現する。スピノザは近代的な政治制度の理論的基礎をつくった哲学者であり、その後、ヘーゲルやマルクスなどの哲学者に多大の影響を与える。本書のサブタイトルは、「無神論者は宗教を肯定できるか」。スピノザの内面を探る本。

■2006/09/30, 週刊東洋経済

『会社四季報』がもっとわかる 株で儲けるための「会社の数字」の読み方―株式投資家のための会計知識
『会社四季報』がもっとわかる 株で儲けるための「会社の数字」の読み方―株式投資家のための会計知識井口 秀昭

東洋経済新報社 2006-07
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おすすめ平均 star
star投資家必読です
star四季報の読み方に理論的裏づけとなった

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「投資家のバイブル」と呼ばれる『会社四季報』だが、これを本当に使いこなすにはちょっとした会計知識が必要だ。それを実践的に補ってくれるのが本書。

著者は公認会計士で元銀行員。長年、財務諸表を基に会社の実力を見抜いてきた。今回は、その知識を株式投資に応用。「投資家として他人にはない自分なりの判断基準を確立することの一助になれば」との思いが本書には貫かれている。

「危ない会社の見分け方」や「のれんが損益を大きく左右する」「適正な有利子負債比率とは」などのテーマを、「会計的には」や「投資のポイント」に分けて、基礎から解説。さらに各テーマごとに四季報誌面の具体的な会社を採り上げ、この数値・記述がこうなっているときは、このように判断すればよい、ということが実践的に書かれている。会社をより深く知りたい、『会社四季報』をより深く読みこなして株式投資に役立てたい、と思っている人には必携の書と言えよう。

■2006/09/30, 週刊東洋経済

スペイン市民戦争とアジア―遥かなる自由と理想のために
スペイン市民戦争とアジア―遥かなる自由と理想のために石川 捷治 中村 尚樹

九州大学出版会 2006-09
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今からちょうど70年前の1936年、わが国では2・26事件の起こった年、遥かスペインでほぼ全国的規模での軍部の反乱と共和国側につく民衆の果敢なる武力抵抗によるスペイン市民戦争が勃発した。この戦争は、世界史に重大な影響を与えることになった。

たとえば、ソ連による共和国への援助と最終的な支配権の確立、共産主義者によるアナーキストやトロツキストの粛清、ドイツ、イタリアの反乱側への支援、英仏の傍観、バスクでの無差別爆撃、など枚挙のいとまがない。

とりわけ55カ国から約4万人もの「国際旅団」の義勇兵、さらに2万人余りの後方支援要員が参戦した出来事が大きい。日系米国人ジャック白井も参加している。本書は、等閑に付されていたアジア人、すなわち、中国人、朝鮮人、ベトナム人、インド人、フィリピン人などのスペイン市民戦争への関わりを明らかにした、実に刺激的な内容の本である。

■2006/09/30, 週刊東洋経済

ルフトパウゼ―ウィーンの風に吹かれて
ルフトパウゼ―ウィーンの風に吹かれて篠崎 史紀

出版館ブッククラブ 2006-03
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おすすめ平均 star
starN響へのエール
star音楽の楽しみ倍増!

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著者に聞く 『ルフトパウゼ~ウィーンの風に吹かれて』(出版館ブッククラブ)を書いたNHK交響楽団第1コンサートマスター 篠崎史紀さん

若手の自由な発想と伝統の融合を図る

――本書の中で「コンサートマスターはオーケストラの主治医」と書かれています。

オーケストラにとって指揮者はゲストです。一方、オケの仲間は目や耳、内臓など、いわば自分のパーツ、身の一部です。パーツではあるけれど、それぞれが音楽に対していろいろな考え方と想いを持っています。個人的なトラブルを抱えていると音楽にも現れます。そこまでケアできるのは、指揮者ではなく身内であるコンマスです。

音楽の面でも、オケの中で妥協ではなくお互いがどこかで折り合うポイントを見つけなければなりません。さらに指揮者に対しても、時には「裏切る」という苦渋の決断も下さねばならない。

幸い音楽には創作者が別にいます。モーツァルトなら250年前に創作され、現在まで長い時間をかけて人間が蓄積してきたノウハウがあります。必然的に落としどころは決まってくる。楽器の特性、作曲家の特徴、ホールのサイズ、観客の空気を読んでいけば、楽譜から読みとれる選択肢が30とおりとすれば、最終的には2~3に絞られる。

指揮に納得がいかないときは、楽屋に出向いて直接話し合うこともあります。それでも音楽の本質と無関係なところで新奇さ、派手さでウケを狙おうとする指揮者は、裏切らざるを得ない。ゲストである指揮者よりも、オーケストラ(の持つ音楽性)を守る責任があるからです。

――一般企業でもSEなど専門性の高い職場のマネジメントは非常に難しいと言われています。N響の楽員も、若くしてコンクール優勝経験のある方も多く、プライドが高い方が多いと聞きます。こういう芸術家集団をどうやってまとめるのでしょうか。

音楽家は全員が「いい演奏会にしたい」という強い気持ちを持っています。その気持ちを信じ、理解することです。ただ、クラシックは再生音楽であり、新しい発想が生まれにくいという限界がある。これを楽員の中からどう引き出していくかが重要になります。

かつてのN響は親分肌の個人が強烈に引っ張っていくスタイルでしたが、最近では上から押しつけても人は動きません。個人の発想をいかに全体に生かしていくか。

――最近のN響は楽しそうに演奏されていて、以前の謹厳実直な雰囲気から大きく変わったように見えます。

確かにここ3年ほどで変わってきました。N響にも2007年問題があり、ヴァイオリンセクションだけでも、2年で10人が入れ替わります。若い楽員が増えていますが、それだけでは足りない。若手には無謀なくらい自由な発想で面白いことをやって欲しいですね。

演奏の中でも若手の暴走をギリギリまで許容し、うまくコントロールして収めていくと同時に、クラシック音楽の伝統を伝えていかなければならない。さらに、われわれの上の世代が、何もないところから世界に追いつくために注いできたテンションとパッションを、いかに若手に伝えジョイントしていくか。

僕が今、N響でコンマスという立場にいる意味もそこにあると考えています。

■2006/09/30, 週刊東洋経済

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