メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2006年6月10日~6月17日

障害者の経済学
障害者の経済学中島 隆信

東洋経済新報社 2006-02-10
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経済学を障害者の問題に適応する利点は、経済学は何をすべきかを議論しないことにある。経済学は、障害者の便益を上げるために、社会の負担を増やすべきだという議論をせずに、そのために何がもっとも効率的かを議論する。効率を上げるためには、インセンティブが重要である。

現在の障害者支援の制度が、正しいインセンティブの構造を持っているかを問題とする。本書は、以上の問題意識により、この問題を分析する。

日本の制度は「転ばぬ先の杖」型のルールで、外国では「産むが易し」型のルールだと言う。事前に規制する思考と、問題が起きてから規制すれば良いという思考の違いがあるという。この違いが、障害者の問題にも大きな影響を与えていることが説得力をもって説明される。

障害者のための新しい入所施設は、著しく立派であることが多い。公的施設が立派であることは、福祉に熱心であることの象徴になるからだという。この点は、豪華な建物で建設費をかさ上げしたい関係者の策謀ではないかとも思われる。

そして、立派であるにもかかわらず障害者のニーズに沿っていないことが多い。

通常のサービスであれば、サービスを受けている主体がその価値を判断できる。しかし、障害者は、そのサービスについて発言できない場合が多い。親も、障害児を預かってもらっているということから、立場が弱くて発言できない。

障害者施設は、設立者の理念に従って運営される建前だが、実際にそうなっているかには疑問がある。施設で働く職員のモラルの維持も難しい。養護学校のコストも高い。コストの高い原因は、養護学校教師に教員免許を義務付けることにある。

また、養護学校での手厚い指導に慣れた生徒とその保護者が、その意識のままに社会に出ると、大きなギャップを感じるという。

障害者を取り巻く制度問題の多くは、そのサービスを受けている人々が、その質について発言できず、かつ、自分でそのコストをまかなえないということに起因しているのであるから、これはより広い範囲の問題とも共通している。

病院での介護がコスト高になること、成果を問われない学校という制度の中にいた子供が、社会でショックを受けることなどと共通である。

本書は、知られざる問題に経済学を適応し、新しい視点を切り開いている。それは障害者の問題に限られず、社会の基本的ルールのあり方、介護、教育、ニートなどにも広がって、深い洞察を与える。【評者 原田泰 大和総研チーフエコノミスト】

■2006/06/17, 週刊東洋経済

駅伝がマラソンをダメにした
駅伝がマラソンをダメにした生島 淳

光文社 2005-12-13
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私は学生時代、早稲田大学の選手として箱根駅伝に二度出場した(3年3区、4年8区)。3年の時は、2区の瀬古利彦選手から首位でタスキを貰い、首位で4区に渡した。

当時のチームメイトたちと、「箱根もずいぶん変わったね」と話すことが多い。私たちの頃では考えられないほどスピード化した反面、選手たちがガラス細工のようにもろく、途中棄権が頻発する。

著者は箱根駅伝が変わったのは、1987年に日本テレビが中継を始めた時だと断言する。各大学が駅伝を宣伝の好機ととらえて、選手強化に拍車をかけたのだ。それはユニフォームを見てもわかる。伝統校の日大はN、早稲田はW、中央はCのマークだが、日テレ時代になって登場した山梨学院や城西大学など七校はすべて漢字で大学名が記されている。そして選手に重圧がかかるあまりに、選手が「燃え尽き症候群」に陥り、卒業後、引退してしまう。その結果、日本の男子マラソンが弱くなった、と。駅伝の「市場経済化」の影響というべきか。

本書の中程で、著者は駒沢など新興校三校と、順天堂など伝統校五校を分析している。その中で「早稲田は中村清(監督)の時代を除き、まったく不安定な成績しか残せていない」と指摘している。中村清氏が早稲田の監督に就任したのは、私が1年生の時だった。前年早稲田は予選会落ち。就任後、13位、6位、4位、3位と、瞬く間に順位を上げた。その秘密についても、本書は見事に解き明かしている(当時の選手の私がいうのだから、間違いない)。

著者は、箱根駅伝は2000年以降、また新たな進化の段階に突入したという。もし25年遅く生まれていたら、私のような「たたき上げ」は出番がなかったかもしれない。【評者 黒木亮 作家】

■2006/06/17, 週刊東洋経済

医療保障が壊れる
医療保障が壊れる相野谷 安孝

旬報社 2006-02
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「みんな一斉に格差と言い始めたが、今の日本で凍死したり餓死したりする話はほとんど聞かない」2006年4月7日付の日本経済新聞で、奥田碩日本経団連会長(当時)はこう語っている。

奥田氏は財界の代表として、小泉首相による構造改革を後押しした人物だ。しかし、奥田氏の認識とは異なり、この日本では最近、餓死する人が後を絶たない。とくに身寄りのない高齢者が団地の一室で人知れず亡くなる「孤独死」が急増。食事も取れず、病院に行くこともできないうちに衰弱死するケースが少なくない。また、介護に疲れたお年寄りの心中や殺人事件、国民健康保険の保険料滞納を理由に医者にかかれなくなり、命を落とす悲劇も相次いでいる。

本書はそうした恐るべき実態を明らかにしたうえで、取り返しのつかぬ結末をもたらすものとして、今般の医療制度改革の問題性を告発している。

「公的医療保険だけでは必要な医療が受けられない制度に変質させる、医療の市場化を加速する、そのための大きな第一歩を踏み出すのが今回の『改革』提案なのです」(本書より)。

医療制度改革法案の成立により、08年度から中低所得の高齢者の窓口負担が現在の1割から2割に倍増。保険の効かない医療の拡大に道を開く混合診療も事実上解禁される。12年度には介護型療養病床が廃止され、手厚い介護を必要とするお年寄りが病院から退去を迫られる。自民党内では、法案成立を待たずに、少額の医療費を保険対象外にする「保険免責制」の導入論が強まっている。

医療費増大に歯止めをかけることを狙った改革によって、医療を受けることができない人が増えてしまうのであれば、それを改革とは呼ばない。本書の指摘は傾聴に値する。

■2006/06/17, 週刊東洋経済

遺伝子が解く!万世一系のひみつ
遺伝子が解く!万世一系のひみつ竹内 久美子

文藝春秋 2006-05
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皇室典範改正論議で、天皇は男系男子でいくのか、女性・女系も認めるのか、という論議が盛り上がった。男系派の主張の中には、「Y染色体」説がある。男性の持つY染色体は、男系男子を通じて、そのままの形で継承されていく。現在の皇室典範が天皇を男系男子に限っているのは、こうした遺伝学的な「根拠」もある、という主張である。

著者は動物行動学者で、本書は『週刊文春』『文藝春秋』などのエッセイをまとめた本である。

タイトルはたまたまホットな男系、女系天皇論議からとられたが、全体は動物行動学に基づき、一般の読者の素朴な疑問に洒脱に答えているエッセイだ。

「やせの大食いのひみつ」では、食べても食べても太らないうらやましい人は、祖先が飢餓による淘汰を受けなかったことから、「エネルギー倹約遺伝子」を持たない人だという。逆に「エネルギー倹約遺伝子」を持った人は、飽食の現代では注意が必要、という。

■2006/06/17, 週刊東洋経済

マラドーナ!―永遠のサッカー少年“ディエゴ”が話すのを聞いた
マラドーナ!―永遠のサッカー少年“ディエゴ”が話すのを聞いたマルセロ ガントマン アンドレス ブルゴ Marcelo Gantman

現代企画室 2006-05
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「サッカーの天才」と謳われたアルゼンチン生まれのマラドーナは、ブエノスアイレス近郊の極貧地区に生まれた。子どもの教育どころか、暴力と犯罪だけがクローズアップされる地域であり、サッカーは極貧から脱出する手段であった。

マラドーナは1979年の日本でのワールドユースでデビューし、赤貧から贅沢までの過程を一気に飛び越え、全く準備のないまま新たな環境への適応を強いられることになった。過剰な期待に耐えられず、アルゼンチンから飛び出したものの、バルセロナで怪我のために欠場を強いられ、初めて麻薬を経験する。

それ以降、麻薬がらみで数々のスキャンダルを引き起こすが、今年の2月、ようやくコカイン依存からの脱却に成功した。長いトンネルであった。

本書は、彼がさまざまな場面で語った言葉を収録したものである。確かに毀誉褒貶はたやすいが、ここは彼の心の叫びに耳を傾けたい。

■2006/06/17, 週刊東洋経済

五〇歳からの危機管理―健康・財産・家族の守り方
五〇歳からの危機管理―健康・財産・家族の守り方河村 幹夫

角川書店 2006-05
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1997年以降の金融危機・デフレ経済への移行は日本経済と企業、そしてサラリーマンのあり方を変えている。企業がサラリーマンのシェルターになって、守ってくれた時代から、サラリーマン本人がリスクに向き合って、自分と家族を守る時代に変わった。

この本はこうした時代を生き抜くための有益な本である。サブタイトルは、「健康・財産・家族の守り方」。

著者は一橋大学卒業後、三菱商事に入社。取締役に就任後、50歳代後半で多摩大学教授に転身した。経歴から見れば、立派な「勝ち組」である著者が、自身の体験から、「信頼喪失社会」をどう生き抜いていくか、という視点からさまざまなアドバイスを提示する。

基本的な提案は、サラリーマンが直面している多くのリスクにどのように対応して、チャンスに変えていくかということである。

「考え抜く力」「品格を大事にする」「人生にも中締めを」など有益なアドバイスが多く並んでいる。

■2006/06/17, 週刊東洋経済

海に眠る船 コロンブス大航海の謎
海に眠る船 コロンブス大航海の謎クラウス・ブリングボイマー クレメンス・ヘーゲス シドラ 房子

ランダムハウス講談社 2006-05-25
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中南米のパナマに、コロンブスの旗艦船ビスカイナ号が沈んでいるという。だがそれが本物かどうかの決め手がない。

コロンブスの難破船が一隻も発見されなかったのはなぜか。

そこで、コロンブスの4回の航海を吟味するために、彼の航海日誌や息子の書いた伝記、さらにセヴィリヤのインディオス古文所館に収められている同時代人の回想記などを点検。また現に海底に眠る難破船の断片のC14放射線年代測定による同定、さらにコロンブス以前の航海者、たとえば、彼よりも1000年も前に、聖ブレンダンを船長とするアイルランドの修道士たちが、北大西洋を渡り、アメリカ大陸にたどり着いたという信じがたい逸話も飛び出す。実に壮大で波乱万丈のコロンブスの航海が現出するのである。

そして現在、探策は学問vs.金儲け、考古学者vs.宝探し、といったお馴染みの確執の中で全く進捗していないようである。

■2006/06/17, 週刊東洋経済

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる
ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる梅田 望夫

筑摩書房 2006-02-07
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検索エンジン・グーグルは素晴らしい。インターネットも我々の情報系を大きく進化させてきた。しかし、それだけである。とても「『知の世界の秩序』が再編される」ほどのこととは思えない。著者は、「知の世界」の革命がインターネットによって起こった、もしくは今後起きると主張する。確かにインターネットや検索エンジンは便利であり、かつ安価な道具だ。けれど道具として便利なのであって、「道具の革命」というなら賛同できるが、「知の革命」であり世界の経済秩序をも変化させるとまで言われると、インターネット企業を経営している私でもそこまでは賛同できない。

ビジネスは最後の一マイルである。アイデアがいい、便利であるからといってそれだけでは商売にはならない。ITブームにおける雨後の竹の子のような起業の中で、成功した企業はほんの少数でしかなく、それらにしたところでリアルの世界で行われている商売をネットに置き換えたというだけのものがほとんどである。

最後の一マイルとは、それが便利なものであっても、対価としてお金を払ってまで欲しいかどうか、というビジネスにおける永遠の課題、高いハードルである。それを乗り越えるには人間存在とビジネスの経験法則に対する深い理解が必要で、とても「WEB2・0」「ロングテールの法則」などという思いつきで越えられるとは思えない。

著者が理想化して語るウェブ社会で活躍する「永遠の少年」とは、実は肯定的な表現ではない。思いつき、ひらめき、アイデアで勝負する子供っぽい姿勢が大人になっても治らない、という否定的な意味合いである。

大人とは、10年、20年の努力の継続で勝負するものである。ブログは思いつき、ひらめき、アイデアの羅列である。確かに参考になるものもあるが、ブログ自身がビジネスになるという幻想は否定しておいた方が世のためだろう。面白いから読むということと、そこで買い物をする、さらにそれがビジネスになるということとの距離は果てしなく遠い。著者はブログの世界で「量が質に変化した」「面白い人は100人に1人はいる」というが、それだけではビジネスとダイレクトに結びつかない。インターネットがもたらす「コストゼロ社会」で、世界の人々が「総表現者」になれば、そのブログがグーグルで検索され、アフリエイトやアドセンスによって、発展途上国では大金である500ドル程度の収入がもたらされ、「世界をよりよき場所にする」「経済的格差の是正」が実現できるという主張に至っては、夢物語としか言いようがない。【評者 学究社社長/河端真一】

■2006/06/10, 週刊東洋経済

反社会学の不埒な研究報告
反社会学の不埒な研究報告パオロ・マッツァリーノ

二見書房 2005-11
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おすすめ平均 star
star痛憤に裏打ちされた軽快な文体

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バブル経済崩壊以降流行った学問といえば、「経済学」と「社会学」と評者は答える。不況で先の見えない時代ということもあって、この二つの学問が流行したのかもしれない。本書は「本来ならもっと愉しくてもいいはずの社会学がスーペー学者とクソ真面目学者たちのせいでつまらない方向へばかり向いています」というように、現在の社会学の在り方に一石を投じたものである。「スーペー学者」とは、スーパーペシミスト(超悲観主義者)の略称で、「ステレオタイプの倫理・道徳・歴史観に凝り固まったアタマで社会現象を分析し、感情的悲観論を垂れ流す人たち」である。

このような基本的認識に基づきながら、本書は様々な分野を取り出しておもしろおかしく、かつ、鋭く切り取っていく。その中から垣間見えるのは社会学を中心に「統計」「数字」を巡る現代学問・学者の矛盾である。例えば、GDPの計算方法を採り上げて、統計を錦の御旗のように使う経済学の数字の扱いが実はすごく「胡散臭い」ものであることを指摘する。その一方で、治安の悪化や子供の安全などを煽る社会学(学者)に対しては、統計に基づいて厳密に検証すれば現代社会の治安がそれほど悪いわけでもないことを指摘する。

どちらの事例にしても統計がキーワードになっている。統計に基づかない思い込みは避けなければいけない一方で、統計を使うのであれば「正しく」使われるべきであって誤魔化すために使うべきではないということである。社会を学問として研究したり論じる人には耳が痛いところもあろう。他方で、評者は「思い込みで書かれた書籍」がベストセラーになれば、それは(社会科学の)どんな正確な統計より社会の実態を反映していると思うのだが、どうだろうか。【評者 兵庫県立大学助教授 中野雅至】

■2006/06/10, 週刊東洋経済

「芸能ビジネス」を創った男 ナベプロとその時代
「芸能ビジネス」を創った男 ナベプロとその時代野地 秩嘉

新潮社 2006-03-16
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日本の芸能ビジネスのあり方を変えたのはテレビである。その先頭をつき進んできたのが「渡辺プロ」であった。

学生時代からジャズ・べーシストとして活躍していた渡辺晋は、卒業後、生涯のパートナーとなる曲直瀬美佐と出会う。二人は、結婚に先立つ昭和30年、「渡辺プロ」をつくった。

渡辺プロは二つの点で画期的だった。第1は「月給制」である。ミュージシャンの多くが不安定な収入に困っていたのを救うためだった。第2がヤクザの関係する興行との決別。米軍クラブというヤクザの手が回らない場所から仕事を始めた。

渡辺プロの名を決定的にしたのは、昭和33年の「ウエスタン・カーニバル」である。ロカビリー喫茶で大人気だった歌手やグループを日劇に集めた一大イベントの狂騒は、社会的ニュースになった。

新しいタレントの発掘にも力を入れた。第1号がザ・ピーナッツである。新人は自宅に住まわせて育てた。それだけではない。「マネージャーは付き人ではない、プロデューサーである」をモットーに社員をも育てた。

次に目指したのは、テレビで音楽番組を制作することであった。昭和34年の「ザ・ヒットパレード」が最初である。レコードやテレビ番組を制作することで、渡辺プロは、芸能ビジネスを労働集約型から権利ビジネスに変えた。20年後の昭和50年代には傘下42社の一大企業集団になっていた。

創業者には伝説や神話がつきものである。渡辺晋もご多分にもれない。だが、ザ・ピーナッツやクレージー・キャッツ、中尾ミエ、伊東ゆかり等々、青春を渡辺プロのタレントたちへの憧れと共感で過ごした者には、その足跡は、戦後と、そして昭和という時代の象徴として、みな信じられる真実なのである。【評者 映画監督 仲倉重郎】

■2006/06/10, 週刊東洋経済

算数・数学が得意になる本
算数・数学が得意になる本芳沢 光雄

講談社 2006-05-19
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「算数は嫌い」「数学は苦手」という人は、分数の割り算とか、因数分解とか、どこか具体的な単元の学習でつまずいた経験を持っていることが多い。本書は小学校の算数から高校の基礎的な数学までの範囲でつまずきやすいポイント、間違って理解してあとで困ることになるようなポイントを具体的に絞り込んで、わかりやすく説明している。

「条件反射丸暗記」が得意な人はつまずきをほとんど意識しないが、本当の意味で数学が得意になる可能性がある人ほどつまずきに敏感で、著者も小学生の時にたて書きの掛け算でつまずいたという。

大切なのは、つまずきそうになったときにさじを投げたり、適当にやりすごしたりするのではなく、踏みとどまって考えることだ。そのことが数学的な思考力を養うことになる。算数や数学を学ぶ目的は「処理能力」を上げることではなく、考える力・論理的に説明する力を養うことという著者の主張は一貫している。

■2006/06/10, 週刊東洋経済

中東和平 歴史との葛藤―混沌の現場から
中東和平 歴史との葛藤―混沌の現場から中西 俊裕

日本経済新聞社 2006-04
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著者は日本経済新聞社国際部次長で、1995年から99年までカイロ支局長を務めた。

この本はイスラエル・パレスチナ和平問題を中心テーマに中東問題を追っている。複雑な中東問題の歴史的経緯と第3次中東戦争などの評価や背景がきちんと描かれている好著である。

たとえば、エジプト、シリアが惨敗して、イスラエルが聖地エルサレム(旧市街)とヨルダン川西岸を占領した1967年6月の第3次中東戦争は、ソ連がエジプトに「イスラエルの攻撃が近い」とうその情報を教えたことが発端になったこと、73年の第1次石油危機は、エジプト軍の敗北を防ぎ、「アラブの盟主」の座を得たいサウジアラビアが起こしたことなどが書かれている。

全面和平にあと一歩まで近づいた2000年のキャンプ・デービッド会談でイスラエルがパレスチナ側にどのような占領地の返還を提案したか、はっきりと書かれている。

■2006/06/10, 週刊東洋経済

現代スペイン語俗語・慣用語集
現代スペイン語俗語・慣用語集榎本 和以智

南雲堂フェニックス 2005-09
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南欧四カ国の中で、最も「ラテン系」な民族であるスペイン人。だが、わが国では、大学教育の一環ということもあろうが、彼らの言葉であるスペイン語について、意外とオーソドックスというべきか、フォーマルな言葉しか接していない。スペイン語のどこに「ラテン系」の言語が?と思った人もいるに違いない。民族の使用言語は、いわずもがな、彼らのアイデンティティを表す唯一の媒体である。スペイン人を理解するには、彼らの「俗語」であろう。

本書によると、「俗語」には、われわれの想像以上の多義的な意味があり、もちろん、英語にある「四文字語」も、実にふんだんに紹介されている。これも、ルネッサンスやプロテスタントを拒否し、1834年まで異端審問制度が続いた厳格なカトリック教国、軍部の政治への干渉による不安定な社会に対するしたたかなスペインの庶民文化、といえそうである。

■2006/06/10, 週刊東洋経済

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