メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2006年3月25日~4月1日

貯蓄率ゼロ経済―円安・インフレ・高金利時代がやってくる
貯蓄率ゼロ経済―円安・インフレ・高金利時代がやってくる櫨 浩一

日本経済新聞社 2006-01
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日本の貯蓄率が高いということが定理のように信じられてきたが、近年大きく低下している。日本の貯蓄率の高さは、合理的に説明できることで、日本の伝統や文化に根ざすものではない。貯蓄率はいずれゼロ、さらにはマイナスになる。本書は、そのときの日本経済の姿を示し、どのように対処するかを考える。

まず、貯蓄率決定の理論と現実の貯蓄率の動きを説明する。日本の家計貯蓄率はアメリカよりは高いものの、すでにヨーロッパ諸国よりも低い。貯蓄の主要な目的は高齢で働けなくなったときの備えだから、高齢者は貯蓄を取り崩す。高齢者が多くなれば、日本の家計全体の貯蓄率も当然に低下する。

では、貯蓄率が低下すればどうなるだろうか。ここで著者は、国内の貯蓄投資バランスが経常収支に等しいという恒等式から多くの興味深い命題を引き出す。貯蓄率が低くなれば、資本ストックの成長率も低くなる。経常収支も赤字になって、円安になる。財政赤字に加えて経常収支も赤字になる。日本も双子の赤字になる。供給力が不足しているのでインフレになる。貯蓄が不足しているので金利が高くなる。すなわち、日本は、これまでの「経常収支黒字・円高・物価安定・低金利」から「経常収支赤字・円安・インフレ・高金利」という世界に転換する。では、どうすればよいのか。

少ない貯蓄を効率的に使うことが肝要だという。効率を上げるために必要なのは、科学技術とともに社会全体の効率を上げる「社会技術」が重要だという指摘は興味深い。他にも、人口が減ることはお客と同時にお店が減ることでもあるのだから需要減少に悩まされることにはならないなど、重要な指摘が多い。

貯蓄率ゼロ経済なら、経常収支赤字・円安・インフレ・高金利に向かう力が働くだろうが、それがどのくらいかという定量的な分析が不足しているように思われる。

経常収支は為替レートに影響を与えるだろうが、その影響が大きいという実証的証拠はない。そもそも将来の供給不足に備えて海外に貯蓄をした結果が経常収支黒字なのだから、その貯蓄を将来使えば海外から供給できてインフレにはならない。クルーグマンの「子守組合」の解説において、貯蓄とマネーを混同している。円高になっても海外の金利が高ければ必ずしも損はしない。将来円安になるなら得をするのではないか。

以上のように、いくつか疑問があるが、文化決定論で説明される貯蓄率に経済学のメスを入れ、貯蓄率ゼロの社会を描き出そうという重要で先駆的な試みを評価したい。【評者 原田泰 大和総研チーフエコミスト】

■2006/04/01, 週刊東洋経済

歪められる日本イメージ―ワシントンのパーセプション・ゲーム
近藤 誠一 (著)

ブッシュ政権になってから5年以上「貿易戦争」が起きず、2005年前半の世論調査では、米国民の72%が、「日本は信頼できる友邦である」と回答し、過去最高を記録したという。

著者は03年から2年間外務省文化交流部長を務めた人物である。本書は1994年から2年間の在米大使館勤務で見聞したことをまとめたものであるが、あらためてその時の状況を振り返ってみると隔世の感がある。当時は第一次クリントン政権の下、「日米貿易戦争」華やかりし時期であった。

このため「実態と虚構が交差する政治の都ワシントンDC」で著者は「日米パーセプション・ゲーム」に翻弄され、悪戦苦闘することになったのであるが、評者もこのゲームの一部に参加した一員として当時を懐かしく思う気持ちを禁じ得ない。

この本で指摘している、「米国の世論調査が政策決定を変える」「ゲームに加担するメディアとコンサルタント」「パフォーマンスと自己改革」などの日本にとってのアドバイスは今でも有効で、示唆に富む。

現在のブッシュ・小泉政権下の理想的な日米関係を手放しで喜んでいるだけで良いのだろうか。中国の台頭や日本経済の長期低迷によって、米国の知識層の間に日本に対する関心が低下し、「知日派」の数が減少し始めているという。

「油断は禁物である。米国の内政上の都合で、その矛先がいつどこに向かうとも限らない。世界がますます短期的成果を目指すパーセプション・ゲームの様相を示す中で、日本人は決して立ちすくんではならない」と著者は慢心を戒める。

この本が、「警世の書」にならないように、われわれはいまこそ危機感を持って、日米関係を軸とする外交関係を築かなければならないだろう。【評者 藤和彦 内閣官房内閣参事官】

■2006/04/01, 週刊東洋経済

ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日
ムンクを追え! 『叫び』奪還に賭けたロンドン警視庁美術特捜班の100日エドワード・ドルニック 河野 純治

光文社 2006-01-24
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1994年2月12日の早朝、ノルウェー国立美術館からムンクの傑作「叫び」が盗みだされた。2階の展示室に外からはしごを掛けて忍び込んだ犯人は、わずか1分足らずの間に時価約86億円の絵画を持ち去ったのである。それはリレハンメルの冬季オリピック開幕の日であった。ノルウェー国民は、せっかくの祭典が台無しにされたと憤激したという。

捜査に乗り出したのは、ロンドン警視庁の美術特捜班である。オスロの犯罪に、なぜロンドン警視庁が乗り出したのか。ロンドンは美術犯罪の一大中心地で、美術特捜班はオトリ捜査で数々の成果をあげていたからである。

この捜査官として白羽の矢が立ったのは、チャーリー・ヒルである。彼はベトナム戦争から帰還後、戦場の記憶を忘れるために美術の世界に救いを求めたという。オトリ捜査官として、過去20年間に、ゴヤ、フェルメールなど、総額1億ドル以上の名画を取り戻した凄腕として知られていた。半年前にも、フェルメールの「手紙を書く女と召使い」という名画を奪還したばかりで、美術犯罪捜査の大スターだった。

絵画が投資の対象になったのは、20世紀になってからだという。同時に美術品泥棒もばっこし始める。彼らの哲学は単純である。「なぜ盗むか。盗む価値があるからだ」。まず盗む。買い手のことは後回しだ。なによりも、世間をあっと言わせたいという虚栄心が優先する。

オトリ捜査官ヒルは、アメリカのゲティ美術館員として犯人に接触した。そして3カ月後、みごと奪還に成功した。

本書に描かれたオトリ捜査官と美術品泥棒の攻防は、美術界の闇を描いたスパイ小説のようである。また、オトリ捜査官の人間ドラマの趣もある。【評者 仲倉重郎 映画監督】

■2006/04/01, 週刊東洋経済

ドラッカー わが軌跡
ドラッカー わが軌跡P.F.ドラッカー

ダイヤモンド社 2006-01-27
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オーストリア・ハンガリー帝国のユダヤ人から多くの学者や、科学者が生まれている。精神分析の創始者フロイト、コンピュータの原理をつくったフォン・ノイマン、市場経済原理主義の思想を唱え、ハイエクに大きな影響を与えたミーゼス、文化人類学の創始者ポランニーなど多彩な知識人が生まれている。

ドラッカーもそのひとりである。ドラッカーは他の知の偉人と同じく非ユダヤ的ユダヤ人であるが、ユダヤ人故に米国に亡命を余儀なくされ、そこで大きな成功を勝ち取り、「経営学の神様」と呼ばれた。

この本は自らが書いたドラッカーの生涯である。ドラッカーとつき合いのあったユダヤ系、非ユダヤ系著名人との交流を通して、ドラッカーの思想と生涯がダイナミックに描かれている。そのリストはフロイトからGMの名経営者スローンにおよぶ。ドラッカーの「経営学」が、こうした知の交流に支えられていることがよく理解できる。

■2006/04/01, 週刊東洋経済

日本の富裕層―お金持ちを「お得意さま」にする方法
日本の富裕層―お金持ちを「お得意さま」にする方法臼井 宥文

宝島社 2006-02
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「下流社会」ばかりが話題になるが、実は日本には世界有数の富裕層がいる。メリルリンチの調査によれば、日本国内に富裕層と呼ばれる、金融資産100万・以上を持つ人は131万人以上もいる(2003年末時点)。世界の富裕層の17%は日本人だ。しかも団塊世代の退職により富裕層は増えることが予想される。日本には人口の1%を超える富裕層がいるのに、彼らに対するマーケティングはなく、どの企業も薄利多売を追求している。著者は「富裕層という市場があるのに、その市場向けの供給が不十分」という。

では企業はいかにして、富裕層向けマーケティングを展開すればいいのか。

本書では富裕層の好みやライフスタイルを分析。また、ダイヤモンドのデビアスやスイスを代表するプライベートバンクなど、富裕層向けビジネスを熟知した企業の実例に基づいたノウハウを紹介。さらに、著者と『下流社会』の著者、三浦展氏との対談も収録。

■2006/04/01, 週刊東洋経済

「企業の社会的責任論」の形成と展開
「企業の社会的責任論」の形成と展開松野 弘 合力 知工 堀越 芳昭

ミネルヴァ書房 2006-03
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企業の社会的責任(CSR)が大きな社会的テーマとなっている。規制緩和によって政府の役割が次第に後退していく中で、社会のさまざまな領域で大きな影響力をもつ企業の役割がクローズアップされるようになった。社会の企業に対する要請は、法令順守を最低限のこととして、これから多方面で質量ともに高度化することが予想される。こうした時代の要請を先取りし、CSRをこれから本格的に研究しようという人々にとって、本書は必読の書。

構成は第1部の基礎編と第2部の研究編の2部構成。基礎編では、日本における経営理念の変遷を展望しながら、実践面での社会的責任概念の推移と転換が示される。第2部の研究編では、社会的責任問題を企業倫理的アプローチ、ステークホルダーアプローチなど七つのアプローチによって多角的に考察することで、企業の社会的責任論について理論と政策の両面でそれぞれ深化・拡充が図られる仕組みになっている。

■2006/04/01, 週刊東洋経済

脈動する超高層都市、激変記録35年―西新宿定点撮影
脈動する超高層都市、激変記録35年―西新宿定点撮影中西 元男

ぎょうせい 2006-03
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初めに京王プラザビルが建ち、次に新宿住友ビル、その後を追うようにKDDビル……。本書は35年間、初台の12階建てマンション屋上の同じ場所から、4人のカメラマンが代わる代わる撮り続けた新宿高層ビル群の定点撮影の記録だ。現在も撮り続けているという。何もなかった淀橋浄水場跡地に、ニョキニョキッとビル群が生えてくるかのような連続写真が圧巻。

この定点観測を35年以上前に企画立案、本書を編集した中西元男氏は、早稲田大学戦略デザイン研究所の客員教授でPAOS&ワールド・グッドデザイン代表。NTTやベネッセ、マツダ、日本総研など社章のデザインを手掛けたCIの第一人者である。

その中西氏は東京都庁舎に批判的だ。「強烈な個性が全体の独自性や秩序を破壊させた」とし、西新宿地区は「反面教師的存在になった」と手厳しい。中山弘子・新宿区長との対談、白井克彦・早大総長らとの鼎談など、読み物も豊富だ。

■2006/04/01, 週刊東洋経済

ビッグ・ピクチャー―ハリウッドを動かす金と権力の新論理
ビッグ・ピクチャー―ハリウッドを動かす金と権力の新論理エドワード・J. エプスタイン Edward Jay Epstein 塩谷 紘

早川書房 2006-01
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職業病なのかもしれないが、シンクタンクの仕事をしていると、リポートを読んだだけで、どれだけのコストをかけたのか、だいたい見当がついてしまう。ハリウッドの業界動向を網羅したこの本は、少なくとも数千万円に相当する超一級のリポートだ。この本一冊で、ハリウッドを支える資金、人物、技術そして関連産業のすべてが分かってしまう。それだけの資料的価値を本書は持っているのだ。

しかも、本書は膨大な事実とデータを集録しながら、決して読み物としての楽しさを犠牲にしていない。500ページを超える分厚さに最初は驚くが、文章が読みやすいのと、全体が29章に分かれていて、一つひとつの章が完結した短編になっているので気楽に読める。しかも、内容が驚くことの連続で、時間が経つのを忘れてしまうほどだ。正直に言うと、私はハリウッド映画を年に1、2本しかみないから、私の知識は相当貧弱だ。その私が楽しいのだから、映画好きの人が読んだら、この「ハリウッドの裏話」はもっと楽しいに違いない。

通読して感じるのは、映画というソフトは、ハードの影響を相当強く受けているという事実だ。その宿命はハリウッドが成立したときから始まっている。

20世紀初頭、映画用のカメラと映写機の特許を持つエジソン・トラストは、ライセンスを持たないプロデューサーには、機材もフィルムも販売しなかった。アングロサクソン・プロテスタントの強圧的な支配に反発したユダヤ系の独立プロデューサーたちは「自由の地」を求めて、トラストの支配の及ばない荒れ地にハリウッド=映画産業を立ち上げた。エジソン・トラストからの自由を得たハリウッドのスタジオは、大きな収益を獲得するようになり、映画産業のなかで圧倒的な力を誇るようになる。しかし、その地位を脅かすことになるのは、皮肉にもエジソンが作ったハードの地位が低下したことだった。

テレビ、ビデオ、DVDの登場というハードの進化が、映画の観客を劇場から遠ざけていったのだ。しかし、スタジオは収益源を新しいメディアに移すことで生き残った。1980年にはスタジオの収益の半分がテレビ放映料になり、95年にはビデオが主役に、そして2005年にはDVDの収益が劇場の3倍以上に達している。

劇場が塩気の多いポップコーンで観客の喉を渇かせ、ソフトドリンクで収益をかさ上げする戦略にでる一方で、スタジオは新しいメディアに収益源を移していく。一見、華やかなハリウッドが、水面下でカネ稼ぎに奮闘する様を描ききったことが、本書の最大の魅力だろう。【評者 森永卓郎 経済アナリスト】

■2006/03/25, 週刊東洋経済

2010年の日本―雇用社会から起業社会へ
2010年の日本―雇用社会から起業社会へ山田 澤明 神尾 文彦 齊藤 義明

東洋経済新報社 2005-12
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本書は、わが国有数のシンクタンクである野村総研が2010年の日本を歴史的転換点と位置づけ、その総力を結集して、政策提言をまとめたものである。

「暗い日本の未来像」を回避するためにシステム改革の必要性を説く。論旨は明快で、よく練られ、実例も豊富で、読みやすい好著となっており、共感を呼ぶ。柱立ては5つに絞っている。

〔1〕団塊世代が自由人として、起業や社会還元の活動など自己実現に目覚め、セカンドライフ革命を起こす。

〔2〕希望格差社会にあって、若者の働く動機をどう再生するか。野性とチャレンジ精神を引き出す組織経営を提言。

〔3〕社会資本が役割の変化と維持コストの増大で、不良資産化する。その成熟社会に対応した減築、転用、再生により、創造的破壊を提唱。たいへん興味深い議論である。

〔4〕ユビキタス社会のインパクトと創発を担う個々の担い手、起業家の役割を説く。

〔5〕雇用社会から起業社会へ。知識情報化社会に向けた日本の挑戦である。

大企業や行政が変わり、NPOなど社会起業家の役割も増す。これが、本書の通奏低音ともなっている。

1990年代が「失われた10年」と否定的にいわれてきたが、その底流には日本が新たなシステム転換に向かうための、国民各層の意識改革が進んでいるのではないか。つまり、壮大なシステム改革の準備期間という積極的な評価もできると思う。

日本は、古くは大化の改新から、明治維新や戦後改革のように一気呵成に変革していく柔軟性を歴史的にも示してきた。今日では、憲法改正の道筋をどうつけるかも極めて重要な課題であると思う。【評者 滝本徹 内閣府沖縄部局参事官】

■2006/03/25, 週刊東洋経済

人は見た目が9割
人は見た目が9割竹内 一郎

新潮社 2005-10
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starなるほど、その通り
starタイトルで拍子抜け
starタイトルはうまいけど

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私は採用面接の合否の半分は、応募者がドアを入ってきた時の印象で決める。「第一印象は裏切れない」のである。人間にはサバンナの動物と同様、五感を使って状況を認識し危機を察知する能力が備わっていると考えている。それゆえ履歴書など諸書類や粉飾の可能性の高い本人の言辞にのみ頼る採用面接は、五感を使っていないがゆえに迫り来る危機を感得できない。採用面接に限らず言葉だけが伝達の手段ではない。

アメリカの心理学者アルバート・マレービアン博士によれば、人が他人から受け取る情報の中で、言葉によるものは7%に過ぎない。顔の表情から58%、声の質(高低)、大きさ、テンポから38%を理解するそうである。身だしなみ、仕草も大きく影響するとされている。そして著者は人は能力や性格もひっくるめて「見た目が9割」と主張する。それゆえ「7%の情報の中で生きている本をたくさん読む人の中に、人望もなく、仕事もできず、社会の仕組みがまったく理解できていないと思える人がたくさんいることを私たちは知っている」と手厳しい。

さらに、日本におけるノンバーバル・コミュニケーションは、言語の補助手段としての欧米のそれとそもそもの発想が異なる。世阿弥の「秘すれば花」、すなわち日本人は「相手が伝えたいことを察して、深く関わる」語らない民族だったのである。

ここまで来るとこれまでの日本人論であるが、作者の非凡でアカデミックな関心は男子トイレの法則、車の席順、リーダーの座席など具体的な現象にまで及ぶ。しかし書名、目次から連想するようなアメリカ的成功のためのノウハウ本と違って、ノンバーバル・コミュニケーションの分析・評価に留めて、その後は「自分で気付かせる」ところが日本人的で好ましい。【評者 河端真一 学究社社長 一橋大学大学院客員教授】

■2006/03/25, 週刊東洋経済

発達障害かもしれない 見た目は普通の、ちょっと変わった子
発達障害かもしれない 見た目は普通の、ちょっと変わった子磯部 潮

光文社 2005-04-15
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おすすめ平均 star
star現代社会で知っておくべき病気の特徴
starいいのかなあ、新書で安価に読んじゃって

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見た目は普通だが、しかし少し変わった子供がいる。軽度発達障害を抱えた子供である。社会や学校の理解は決して十分ではなく、教育現場に混乱を起こしている。何より学校や教育相談担当者の知識が十分ではない。自閉症とは引きこもりのことか、と尋ねる担当者がいるほどだ。背景にLD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)などの用語が先走りし、発達障害に関する理解が進まない現実がある。

特に軽度発達障害(高機能自閉症やアスペルガー症候群)を持つ子供への理解は遅れている。わがまま、身勝手と言われ、友達つき合いから外されたりする。

教師は親の養育態度に原因を帰し、周囲もそれに同調して親を追い詰める。

本書は発達障害の基礎知識を解説し、診断基準などにも触れている。実際の治療と社会復帰の豊富な臨床例は説得力がある。

著者の『人格障害かもしれない』と併読すると一層の理解が得られるだろう。

■2006/03/25, 週刊東洋経済

株で儲けるニュースの読み方 相場のプロが教える「先読み&裏読み」の極意
株で儲けるニュースの読み方 相場のプロが教える「先読み&裏読み」の極意藤本 誠之

ソフトバンククリエイティブ 2006-03-01
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現在マネックス証券の戦略事業部に所属し、ラジオNIKKEI等でもレギュラーコーナーを持つ著者による株式投資の解説本。「株式投資は連想ゲーム」と喝破する筆者が、政治・経済からスポーツ・芸能まで43のテーマを題材に、「過去にどんな連想が働いて値が動いたのか、そして今後はどうなるのか」を解説・予測している。

たとえば、「景気が上向けば、高額消費が活発になる」と予測できれば、まず百貨店銘柄が注目されるのは当然として、さらに「高級ホテルに特化した「ネット予約サービス」や「高級おせち」関連銘柄にも波及することを、具体的な数字やチャート等を示しながらわかりやすく説明している。

ほかにも「消防法改正で火災報知器が全新居住宅に設置されると」「宮里藍が活躍すると」といった身近なテーマから「もし富士山が噴火したら」といったテーマまで言及されている。株式投資の初心者はもちろん、中上級者にも参考になる。

■2006/03/25, 週刊東洋経済

最終版 間違いだらけのクルマ選び
最終版 間違いだらけのクルマ選び徳大寺 有恒

草思社 2006-01
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経済分野では、日本の基幹産業たる自動車産業は工場の「カイゼン」や経営手法で語られることが多いが、自動車は20世紀が生んだ「最強の消費財」でもある。商品を語らずして自動車業界は語れない。

本書は30年間続いたクルマ批評のベストセラーの最終版。過去の数千本の車種評からテーマ別に再編集された。商品の観点から見た日本の自動車産業史そのものとなっている。

たとえば、歴代モデルの車種評による「カローラvs.サニー」「マーク2vs.スカイライン」の章を読めば、30年余に及ぶトヨタと日産の攻防が手に取るようにわかる。初代から7代目を扱った「シビック」の章では、日本から米国に経営の軸足を移していくホンダの変遷が凝縮されている。

30年前、著者に酷評された日本車が徐々に世界的レベルに達していく姿や時代時代のトレンドの移り変わりも実感する。カタイ自動車本ばかり読んできた人にもお勧めの一冊だ。

■2006/03/25, 週刊東洋経済

ヒトラー・コード
ヒトラー・コードエーベル.H ウール.M 高木 玲

講談社 2006-01-27
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この本はたった一人の人物のために書かれたヒトラーの半生である。1945年4月、ヒトラーはソ連軍が包囲するベルリンの首相官邸の地下壕でエバ・ブラウンとともに自殺した。その際、ヒトラーの副官、側近らがソ連に連行された。ソ連の秘密警察・NKVDは、ヒトラーの身近にいたドイツ人から、ヒトラーの半生と私生活を聞き出し、それを報告書にまとめた。読者はただ一人の人物、スターリンである。

この本の記述や編集を見ると、スターリンがもう一人の独裁者ヒトラーのどういう点に関心を持っているか理解できる。政治や軍事の展開が主流になるのは当然だが、ヒトラーの人間関係や健康、女性関係なども書かれている。独裁者は、マクロの状況だけではなく、人間というミクロの情報に関心を寄せていることがわかる。スターリンは戦後もヒトラー生存説を流して、西側を揺さぶっているが、本人はヒトラー死亡を確認していたのだ。

■2006/03/25, 週刊東洋経済

これしかないよ日本の人事
これしかないよ日本の人事宋 文洲

ビジネス社 2006-01
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著者に聞く 『これしかないよ日本の人事』を書いたソフトブレーン社長/宋文洲

――日本で起業して、日本の会社を見て疑問に感じたことをまとめた『やはり変だよ日本の営業』(日経BP社)や『ここが変だよ日本の管理職』(東洋経済新報社)など宋文洲さんの一連の著書は日本のサラリーマンに広く読まれています。最新作『これしかないよ日本の人事』(ビジネス社)もとても面白い本に仕上がっています。

私は日本の会社でしか働いたことがありません。米国や中国の会社と比べて、これらの本を書いているわけではありませんが、日本の企業は常識的な観点から見て、生産部門と比べて管理部門や営業部門はとても効率が悪いうえ、不公平な人事制度を維持してきたと思います。東京の新橋で、サラリーマンが同僚とお酒を飲んで語ることは、そうしたグチや不満です。

日本の会社は能力主義、成果主義を唱えながら、実際は上司の好き嫌いで人事や昇進を決めてきました。例えば、営業部門では、手間がかからず成果が上がる会社を、上司の覚えのよい社員が担当し、そうでない社員は、目先の売り上げの上がらない会社を担当させられてきました。短期間で成果の上がらない会社を担当した社員が、コツコツと努力して、営業の基盤を築いても評価されない。

それでも社員のモラールが下がらなかったのは、終身雇用と年功序列のおかげでしょう。でもこの二つとも過去のものになりました。日本の会社は本当の成果主義の人事をしないと衰退するでしょう。

――本当の成果主義とは。

上司の主観ではなく、仕事のプロセス改善やお客さんの問題解決を図ったなど客観的な評価をすることで、公平、公正な人事評価に変わることです。

――これまでの日本の会社は成果が上がらなくとも、途中で汗と涙を流した、苦労した、ということもプラス評価してきましたが。

私の知っている大手銀行もリテール部門では、従順で使いやすく、ガッツのある体育会系の人材を好んで採用してきましたが、こうしたことも過去のものになってきています。50代以上の管理職はまだ体育会系の社員を好んでいますが、40代の管理職ではそうした人は減っています。第一にお客さんの金融知識が増して、「がんばりますから、任せてください」という体育会的な営業手法が嫌われています。

私は過去の日本の会社の人事や営業手法を否定して、新しい客観的な成果主義を導入することは、もはや優れた経営者のコンセンサスになっていると思います。関心はすでにどう実現するかの方法論になっていると感じています。

これまでの日本の会社が非効率的な管理、営業でやってこれたのは、生産部門があまりに強く効率的だったので弱点をカバーできたからです。今、日本の会社はデフレを克服して目覚ましい復活をしています。私は、日本の会社の多くは5年後には管理、営業手法を一新していると信じています。効率が高まるので残業もなくなり、日本の会社は世界一になると見ています。

■2006/03/25, 週刊東洋経済

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