メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2006年1月28日~2月4日

現代企業の組織デザイン 戦略経営の経済学
現代企業の組織デザイン 戦略経営の経済学ジョン・ロバーツ 谷口 和弘

NTT出版 2005-11-12
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本書の原題を直訳すると「現代企業:業績向上と成長のための組織デザイン」である。英国『エコノミスト』誌が2004年のベストビジネス書に選んだ良書である。

著者は「日本語版への序文」の中で「日本企業の成功をもたらした戦略や組織デザインの特徴の多くは、もはや存立しうるものではなくなっている」と断じている。日本企業の過去の成功は、その特異な戦略が組織や事業環境と整合性がとれ、相互に適合していたことによってもたらされたが、時代の変化とともにその整合性を失いつつあり、その結果長期の業績停滞を招いた、という見解である。

企業の業績は、当然のことながら、その企業の戦略、組織、そして環境の整合性に依存している。著者によれば「ゼネラルマネジャーの仕事は、業績を最大化するために、環境を勘案しながら、戦略―目標、範囲、ロジック、そして競争優位―を策定するとともに、組織一人ひとり、アーキテクチャ、ルーティン、そして文化(PARC)―を創造すること」である。

ということは日本のゼネラルマネジャーは長い間この基本的な責任を全うする能力に欠けていたことを意味する。

本書は多くの具体的なケースを使いながら、いかにして業績向上と成長を達成するための組織をデザインするか、を考えるための枠組みや概念を整理しながら議論を進めていく。最終章では、戦略や組織を構想し、展開していくためには、マネジャーは経営力(分析的な問題解決能力と管理能力)と同時にリーダーシップ(ビジョンを示し、組織を奮い立たせる能力)を兼ね備える必要がある、と結んでいる。

今、日本企業は長い停滞と大きな苦痛をともなうリストラを乗り越えて、新たなステージに差し掛かりつつある。これからは真の価値創造と成長を目指し、戦略的でイノベーティブな企業に変身していくことが求められる。このような変革にあたって多くの日本のマネジャーはいわゆるベストプラクティスといわれる手法を次々に脈絡もなく取り入れようとしている。

しかしながら、基本のロジックや整合性への配慮なしにベストプラクティスの後追いをすることは、本書が指摘するように、最も危険なアプローチである。そのような観点からすれば、本書で紹介された示唆に富んだ枠組みやロジックは日本のマネジャーにとって非常に有益である。本書は経済学の専門的な知識を持たなくても理解できるように書かれているが、メッセージが単純で読みやすい、いわゆるハウツー本の類ではないことを承知して読むことをお薦めする。【評者 清水紀彦 一橋大学国際企業戦略研究科客員教授】

■2006/02/04, 週刊東洋経済

日本の人事部・アメリカの人事部―日本企業のコーポレート・ガバナンスと雇用関係
日本の人事部・アメリカの人事部―日本企業のコーポレート・ガバナンスと雇用関係サンフォード・M. ジャコービィ Sanford M. Jacoby 鈴木 良始

東洋経済新報社 2005-10
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わが国は長い間、自己批判一色で覆われていたが、景気回復の定着とともに、自らの流儀を見直すゆとりも生まれてきた。本書はそのような流れにマッチした一種の日本型経営見直し論であり、絶好のタイミングで出版された。本書を単なる「人事部の業務の日米比較」と受け取ると的外れになる。もう少し広く「人事部を観測点に置いた日米企業経営比較研究」と捉えた方がよい。アメリカ企業では財務担当者・日本企業では人事担当者に主流が多いのはなぜか、と言い換えればわかりやすい。

その背景には、企業を極大利潤追求装置と見るか、それとも従業員運命共同体と見るか、に関する社会の考え方の違いがある。原題をそのまま訳せば「(社会の枠組みに)埋め込まれた企業」である。企業経営はその社会の国民性・歴史・慣行など様々の制約の中で営まれる。

市場原理が強調される最近の日本の人事管理は、アメリカ型に接近しているのか。本書の回答は結びの言葉に要約されている。「収斂が進行していると同時に、資本主義の多様性が存続し、それが現代世界経済の重要な特質であり続けている。事実が実証しているのは、この両面いずれもが本書の結論であるということである」。両国ともに多様性を内包しているが、総体としての格差はむしろ次第に拡大している。本書を読みながら、藤本隆宏氏の「日本のもの造り哲学」を思い出した。日米の人事管理の特色は、「擦り合わせ型」の日本と「組み合わせ型」のアメリカとの違いに対応しているのかもしれない。

企業幹部への入念な面接と多数のアンケート調査を積み上げた地道な研究報告であり、いちいち頷きながら読み進めることができる。米人学者が少し距離をおいて適時適切な分析を提供してくれたことを喜びたい。【評者 西村吉正 早稲田大学ビジネススクール教授】

■2006/02/04, 週刊東洋経済

真実無罪―特捜検察との攻防
真実無罪―特捜検察との攻防宮本 雅史

角川学芸出版 2005-12
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学校で習ったことや、国民が毫も疑わないことが、現実社会では全然違っている場合が少なくない。検察官は正義のために働き、裁判所は事件を公正に裁き、新聞は物事を正しく報道している、というのもその一つだ。

本書は、旧KSD(中小企業経営者福祉事業団)の古関忠夫・元理事長(懲役3年・執行猶予5年が確定済み)から賄賂を受け取ったとして、2001年に起訴された村上正邦・元労相の裁判を克明に描き、裁判制度とマスコミ報道に関する国民の無邪気な信仰を粉砕する。

冒頭は、一審で有罪になった村上の控訴審に、証人として出廷した古関の証言シーン。彼の証言が一審での村上有罪判決のほとんど唯一の根拠だった。ところが古関は「保釈されたい一心で、検察官に協力した。一審の証言はすべて嘘」と発言し、大津波を引き起こす。焦り、苛立つ検察の反対尋問にも、83歳の古関は憤然として反論。その迫力ある描写は、圧巻である。

前半のハイライトは、取調べでの、特捜検事と村上正邦の攻防戦だ。検事は、言葉尻を捉えて都合のいい調書を作文し、被疑者と弁護士の信頼関係にひびを入れようとし、「お前、殴り倒すぞ」「三途の川に送って、舌を二、三枚抜いてやる」と罵詈雑言を浴びせかける。

控訴審で弁護側は強力な新証拠を提出し、審理は特捜検事の証人尋問にまでもつれ込んだ。検察の杜撰な捜査の実態が明らかにされ、一審判決の根拠が次々にうち砕かれて行く。一方、かつて栄華を極めた古関は証言の約4カ月後、葛飾区のアパートで一人寂しく病死。そして、昨年12月19日に東京高裁が下した判決は……。

裁判は今も続いている。国民は司法の裁量でどうにでもなる「正義」の行方をしっかりと見届けなくてはならない。【評者 黒木亮 作家】

■2006/02/04, 週刊東洋経済

郵政攻防
郵政攻防山脇 岳志

朝日新聞社 2005-12
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著者は、わが国の大手新聞業界では数少なくなった粘り強く、クールな取材力の持ち主として定評があるジャーナリスト。

その特徴が郵政民営化でもいかんなく発揮された証左が本書と言える。郵政民営化については、民営化推進論、民営化反対論のいずれかに傾斜した書籍が目立つが、本書は客観的に民営化が決定されていくプロセスを追い続けている。

一般的にはほとんど報じられなかった民主党の動きにも目を配っている。本書を読むと、ヤマ場となった昨年の郵政民営化国会において、民主党が論理的に惨敗していった背景が十分に理解できる。

ところで、郵政民営化を巡って、現在、「とんでもない巨大独占企業を誕生させた」という批判がある。しかし、本書はその議論も突き放す。そして、このように提言する。「政府は、市場で公正な競争がなされるように粘り強くチェックしていく義務がある」。正論だろう。

■2006/02/04, 週刊東洋経済

データで示す日本の大転換―「当たり前」への回帰
データで示す日本の大転換―「当たり前」への回帰大武 健一郎

かんき出版 2005-12
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日本はついに人口減少社会へ突入した。人口統計に関する限り明治以来の大転換である。戦後日本の高度成長も人口増加がなければありえなかった。

その大転換は1975年に始まり、95年に本格化し、いまや加速化している。にもかかわらず、多くの日本人はこれまでの量的拡大志向から抜けきれずにいる。というのが著者みずからの反省をこめた問題意識だ。

著者は大蔵省(現財務省)の主税局に長く籍を置き、3年間の主税局長時代に日米租税条約を30年ぶりに改正するなど税制の企画、立案を担当してきた。

その税制が国家戦略のインフラとすれば、それが国民のニーズにマッチしたものにするにはどうすべきなのか、ということをずっと考えてきた。

本書は税制については何も論じていない。その前提として、いま日本がどういう状況にあるかをデータで示し、将来、どう対応すべきかということを実にわかりやすく説いている。

■2006/02/04, 週刊東洋経済

ニューヨーク美術案内
ニューヨーク美術案内千住 博 野地 秩嘉

光文社 2005-10-14
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おすすめ平均 star
starニューヨークを散歩
star今度はフリックコレクションでもいってみようか?

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若手実力派として人気も高い日本画家の千住博は、ニューヨークに制作の拠点を移して12年になるそうだが、「絵は楽しみながら面白がって読んでいくもの」と、実際の作品と対話しながら、読み解き方、楽しみ方を教えてくれる。NYは美術館の宝庫。メトロポリタン、MoMA(近代美術館)、フリック・コレクション等々。メトロポリタンだけでも、その膨大なコレクションは一日や二日で見切れるものではない。

といっても、本書はNYの美術品を網羅的に解説したものではない。ゴッホやモネなど著名な絵を前に、「画面から50センチの所に立ってみて」と勧める。その絵を描いている作者になったつもりで絵を見ると、様々な想像力が働くはず。また、大概の人は人物の絵では目を見るが、「耳を見てみたら」とも。画家の目から見た、なるほどねぇと思わせる出色の美術ガイドである。それにしても、やはりNYに絵を見に行きたいものである。

■2006/02/04, 週刊東洋経済

30分で読める!「働く人」のための資産形成読本
30分で読める!「働く人」のための資産形成読本大浦 善光

東洋経済新報社 2006-01
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「30分で読める」というキャッチコピーのとおり、要点だけをシンプルに図解した資産運用に関する入門書である。

著者は野村證券の専門家たちであり、本の監修は野村證券常務でライフプラン・サービスや投資信託、年金を担当する大浦善光氏。

全体を1ページずつ50の章に分けて、第1章「低金利が続いています」から、第50章「相談できる相手をみつけましょう」までを、わかりやく、かつ正確に、シンプルにまとめている。

今後、日本は人口減少社会に入っていく。こうした条件下では、賦課方式に頼る公的年金制度を現状の給付水準のまま維持することは、誰が見ても困難である。

したがって、政府も奨励するように個人、個人が資産運用の能力を獲得することが必要である。世の中にはあまたの類似書が溢れているが、正確かつシンプルに解説している本として、勤労者、自営業者、主婦などにもってこいの本である。

■2006/02/04, 週刊東洋経済

ブームとバブル―世界経済のなかのアメリカ
ブームとバブル―世界経済のなかのアメリカロバート ブレナー Robert Brenner 石倉 雅男

こぶし書房 2005-10
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ロバート・ブレナーの名を、長らく近世ヨーロッパ経済史の大家としてしか認識していなかった私にとって、本書の著者がまさしくそのロバート・ブレナーであることは、本書を実際にひもといてみるまで、ついぞ思い至らぬことであった。本書の第一の特徴は、20世紀の最後の3分の1から現在にいたるグローバル経済の過程が、あたかも未来の経済史家の手によって書かれた歴史のように、ある種の一貫性をもった構造的過程として描ききられていることである。

むろん、そこで描かれている対象は、現にわれわれが生きている(それゆえ不確実性に満ちた)現在の世界と直接につながっているわけであるから、それがあたかも確定した経済史のように描かれるためには、よく言えばある種の本質的な洞察、もう少し中立的に言えばある種の理論的な捨象が前提となる。ブレナーは、製造業における資本投資の拡大による生産性の向上だけを本質的な経済成長とみなす原理的な立場に立っており、加えて、より重要なことに、1970年代以来のグローバル経済は、総体として過剰生産状態に入っているという認識を前提としている。つまり彼が描いているのは、資本主義的な経済成長の本質的な不可能性が現実化する過程、すなわち古典的な言い方でいえば恐慌論のジャンルに属する「歴史」なのである。

グローバルな条件としての過剰生産能力=過剰生産経済を前提とすれば、局地的に継起するブームは、本質的にバブルの副産物としてしかありえない。そして逆に、そのグローバルな過剰生産経済を定常化しているのは、最終的な責任が問われえないところから発生する無限の貨幣供給、すなわちドルという妖怪の徘徊にほかならない。

本書のスケールにふさわしい人類史的な視野でこの議論の構図を反芻すると、想起されるのは、16世紀に、やはりアメリカ大陸から「無限に」供給された貨幣(銀)がひきおこした価格革命である。それは近世経済のグローバル化の契機となったが、それを苗床として現れたのは、帝国が割拠してグローバルなネットワークを管理する世界であった。それから4世紀後の現在、いわば2度目の価格革命のあとに現れる世界に向けて鳴らす警鐘こそが、おそらく近世経済史家ブレナーの面目であろう。

編集者および校正者がもう少し慎重に仕事をしていれば除きえたはずの不体裁が散見されるのが悔やまれるが、「景気回復」の本格化が進むなか、社会にバブルの再来を待望するかのようなムードも漂い始める今、冷静に一読したい作品である。【評者 山下範久 北海道大学大学院助教授】

■2006/01/28, 週刊東洋経済

改革の経済学
改革の経済学若田部 昌澄

ダイヤモンド社 2005-11-05
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前著『経済学者たちの闘い』(東洋経済新報社)で一般読者の前に颯爽と登場した「闘う学説史家」若田部氏であるが、今回の著作は月刊誌での連載時評をまとめたものである。しかしながらこうしてまとめられてみると、きれいに筋の通った読み物になっているのはさすがである。

デフレ不況と構造改革を巡る論戦を、一貫した問題意識のもとでフォローしてきた成果であるが、学説史家としての著者の広い視野がそのまとめに厚みを与えている。前著ではあえて「歴史」を重視し、同時代の議論や先端研究についての言及は抑えられていたのだが、本書ではその縛りも解け、著者の目は自在に時空を行き来し、「経済学」の枠さえ飛び越える。

それでもやはり本書に背骨を通しているのは、あくまでも経済学のロジックである。それゆえ目配りのよさ、話題の豊富さから経済学に暗い読者にもとっつきやすい本書は、経済学への入門書としての価値をも主張しうるのではないか。

その「背骨」とは具体的には、「インセンティブ(動機付け)重視」と「ミクロとマクロの切り分け」である。個々の企業や個人の自発性や固有の利害を無視して、頭ごなしに行う政策はうまくいかないが、かといってすべてを企業や個人に任せてうまくいくわけでもなく、とりわけ景気のようなマクロ的環境の改善を企業や個人の努力に求めるのは筋違いである。

小泉政権の構造改革論も「インセンティブ」を重視するものであるが、この「切り分け」の観点を欠いているため、往々にしてその「インセンティブ重視」政策は、個人や企業の自発性を尊重するつもりで、実際には過大な負担を強いるものとなっている。本書はその問題性をわかりやすく説いてくれる好著である。【評者 稲葉振一郎 明治学院大学社会学部教授】

■2006/01/28, 週刊東洋経済

構造改革の先を読む―復活する経済と日本株
構造改革の先を読む―復活する経済と日本株ロバート・アラン フェルドマン Robert Alan Feldman

東洋経済新報社 2005-11
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小泉総理の自民党総裁としての任期が8か月を残すのみとなり、“聖域なき構造改革”は総仕上げの段階に入りつつある。構造調整に向けた企業と政府の取り組みの結果、日本経済はようやく長期停滞の出口にたどりつき、一部には“ミニバブル”を懸念する声さえ聞かれるようになった。本書は、このような「構造改革」の取り組みに一貫して支持を表明し、助言を行ってきた著者が、これまでの評価を行うとともに、その「先を読む」試みである。

本書の前半部分では、構造改革がどこまで進展し、残された課題がどこにあるのかが論じられる。「日本企業は何も変わっていない(旧態依然のままだ)」という一部投資家の見解に対して、著者はさまざまなデータとエピソードをもとに反論を行い、バブル崩壊後の長期停滞は「“失われた10年”と言うより、再生策を“見つける10年”であった」との見方を示す。日本企業をとりまく環境が、「過去と負債」(これまでの実績と債務の返済能力)を重視する「信用の文化」から「将来と資産」(新しいビジネスプランと企業の将来性)に着目する「株式の文化」に移行しつつあるという指摘も興味深い。

本書の後半は日本株投資のためのガイドブックになっている。日本の株式市場の「先を読む」うえでは外国人投資家の動向と構造改革の進展状況から目が離せないが、長年、エコノミストとして日本経済を見てきた著者のアドバイスはユニークな着眼点を提示していて示唆に富んでいる。

なお、本書の印税は、バングラデシュに新たに設立されるアジア女子大学に寄付されるという。「世直しは、教育が一番肝心です」というフェルドマンさんの“米百俵”の精神に賛意を表したい。【評者 中里透 上智大学経済学部助教授】

■2006/01/28, 週刊東洋経済

角栄伝説―番記者が見た光と影
角栄伝説―番記者が見た光と影増山 榮太郎

出窓社 2005-10
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政治家の毀誉褒貶は通り相場とはいえ、田中角栄の場合は例外か。現役時代は「今様太閤」「庶民宰相」とはやされ、退陣後は復帰を目指して「闇将軍」といわれた彼の凋落は見事としか言いようがない。それも「刑務所の塀の上を渡っても決して、あちら側に落ちない男」が、「あちら側」に落とされたのだった。

だが、田中政治は、現在の小泉政権と比較してどうであろうか。これが、本書のテーマである。

田中が唱えた「日本列島改造論」は、「国土の均衡ある発展」を名目に、表日本の富を貧しい裏日本へ移すことであった。これを全国規模に拡大し、すべての国民に総中流、平等社会をもたらしたのだった。

ところで今や、小泉政権の提唱するグローバリゼーションが惨憺たる荒野を現出させ、その「負」の部分がようやく見えてきているが、それと対極にある「列島改造論」の世界も一度検討すべきである、と本書は結んでいる。

■2006/01/28, 週刊東洋経済

大日本帝国の真実―西欧列強に挑んだ理想と悲劇
大日本帝国の真実―西欧列強に挑んだ理想と悲劇黄 文雄

扶桑社 2005-07
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おすすめ平均 star
star今こそ認識されるべき真実
star地味な本ではあるが日本人なら絶対に読まなければいけない。
star史観よりも史実を、そして日本に誇りを

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筆者は日本の大学(早稲田大学商学部、明治大学大学院)を卒業した台湾人で、戦前の日本を肯定的に評価する数々の著作で知られている。本書はその集大成ともいえる本である。

著者は明治維新以来の日本の近代化と「大日本帝国」の形成を肯定的に評価したうえで、日本の台湾や韓国、さらには満州国の統治をも諸国民を前近代の足かせから解放して、近代化、工業化のインフラを形成したと高く評価してる。日清戦争、日露戦争も、「アジア防衛のために戦った」という評価になる。

本書は一貫して、中華文明から独立した、「日本文明」をアジアの周辺国にもたらした戦前の日本を手放しで誉めている。

こうした見方も一理あるが、残念なのは、「大日本帝国」自体が、アングロサクソン国家(英国)の後押しによって形成され、アングロサクソン国家(英米)と戦うことで滅んだ客観的な歴史には言及していないことだ。

■2006/01/28, 週刊東洋経済

「ドン・キホーテ」事典
「ドン・キホーテ」事典樋口 正義 本田 誠二 坂東 省次 山崎 信三 片倉 充造

行路社 2006-01
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馬に跨って風車に襲いかかる痩せた老騎士……言わずもがな、ドン・キホーテである。このあまりにも強烈な姿のために、『ドン・キホーテ』は荒唐無稽な物語と思われがちだが、もしそうなら、聖書やシェイクスピアの諸作品を追い抜いて、「世界一の文学」とは評価されないであろう。

理想主義者ドン・キホーテと現実主義者サンチョ・パンサの会話の中に、実に200余りの諺、ほぼ1300の格言および慣用句があるという。もちろん、これらは、人生や社会、国家や宗教に関する慧眼に裏打ちされた箴言なのだ。それゆえ、時代や国を超え、われわれの心に訴えるのである。

本書は、わが国におけるセルバンテス研究の第一人者たちがさまざまな分野について、「読み物風に」まとめた実にユニークな事典である。例えば、「名場面断章」「ことわざ選集」「日本におけるドン・キホーテ」など、「ドン・キホーテ」の入門書として活用できる。

■2006/01/28, 週刊東洋経済

1年で10億つくる!不動産投資の破壊的成功法
1年で10億つくる!不動産投資の破壊的成功法金森 重樹

ダイヤモンド社 2005-10-28
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star不動産投資をする前に必ず読むこと。
star相変わらずの煽動力
starロジックあり!

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著者の金森重樹氏は、「通販大家さん」の主宰者として知られている。金森氏が提唱している不動産投資法はこれまでの常識を破る画期的な内容である。

まず、〔1〕自宅より先に収益物件を購入すること。自宅は収益を生まず、値下がりのリスクがある。

〔2〕区分所有(マンション1戸ごと)は資産形成に不利。投資するなら、アパート・マンションの1棟買いをすること。

〔3〕億円単位の借入金をして、レバレッジを効かすこと。年収500万円でも収益物件からの収入で借入金を返済できるのなら、銀行(全部ではないが)は喜んで融資をする。

著者がこれまでの常識を破る不動産投資法を提唱した数年前に比べると、首都圏のアパート・マンション、ビルなどはリート(不動産投信)の買いもあり、急騰しているという。

こうした状況で、現在のアパ・マン投資の「出口」をどう考えるか。もっと書いて欲しかった。

■2006/01/28, 週刊東洋経済

2005年体制の誕生―新しい日本が始まる
2005年体制の誕生―新しい日本が始まる田中 直毅

日本経済新聞社 2005-11
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■著者に聞く 21世紀政策研究所理事長 田中直毅

――小泉圧勝から短時日で本書を上梓されましたね。

昨年8月から自民圧勝の様相を呈していましたが、堰で止められていたものが、「郵政」でかんぬきをはずされて一挙に流れ出すと感じていました。今回の総選挙は55年体制と呼ばれ半世紀に続いてきた自民党政治の結集点だったと思います。これまで諸部分利益を肥大化させ、集積化し、それを連ねることで政権ができていましたが、その結果、財政赤字が拡大し、政府保障の傘が開きに開いてしまったといえるでしょう。

そうしたシステムで、人口減少が始まった21世紀を生き残れるのか。諸部分利益を潰し、改革に伴って開放される経済的、人的資源を使いこなさないと、21世紀はないでしょう。

「郵政」が選挙で争点化されましたが、有権者は政治的な想像力を働かせ、「郵政」の意味を受け止めたのです。

今回の選挙は、改革の空間の陣取り合戦になると思っていましたので、9月11日の前に、自分の考えを目次化し、『中央公論』誌(05年10月号)に、その1部を『「05年体制」の誕生と衝撃』として書き、そこで2005年体制という言葉を使いました。その後、選挙結果が思ったとおりだったので、目次に沿って、4週間ほどで本にしました。

――今回の選挙は政治家の行動に画期的な影響を与えました。

政治家に説教など効きませんよ。有権者の付託がなければ、その地位にない、ということを通じてしか、政治家を動かすことはできません。

政治家は選挙を通じて学ぶのです。あなたがたがやらなければ、われわれの付託をこちらにつけるということだけが、政治家に内面的な緊張感を与えます。だからこそ、民主党の存在は極めて重要です。有権者の付託が向こうに振れるかもしれないということがあればこそ、政治家は有権者の思いを自分が代弁し、実行力があるということを示そうとするのです。

ですから、日本の改革に中折れがあるとすれば、民主党の理念とプログラム作りにおける低迷でしょう。

自民党的なものに、ある種、直感的に拒否感を持っている人も日本社会には多いので、民主党の政策プログラムを支援する人が出てきたほうが良いと思います。

――小泉改革の継続性について、本書で言及されています。

本人は退陣すると言われているが、政党政治の中に改革の持続性を残して欲しい。

改革を明日につなげるためには、今年、そのためのプラットフォームを作れるかどうかにかかるでしょう。首相の任期内に改革に至る道筋、骨格をどう作れるかです。骨格ができれば色々なものを乗っけられる。

改革と言うのは、真の弱者を絞り込み、弱者ヅラを許さないということでもあります。例えば単に中小企業だからとか、農業者だからとか、高齢者だから保護するといった考え方はしないということでしょう。自民党政治は小さな親切、大きな迷惑で、財政赤字を膨らませてきましたが、真の弱者には深い親切を示すべきです。

■2006/01/28, 週刊東洋経済

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