メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2006年12月23日

株式会社
株式会社ジョン・ミクルスウェイト エイドリアン・ウールドリッジ 高尾 義明

ランダムハウス講談社 2006-10-12
売り上げランキング : 5309

おすすめ平均 star
star株式会社の存在こそが資本主義

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法律で命を与えられた株式会社の不思議な歴史

産業化や市場社会。世界貿易に、労働者と資本家。そして経済学。自由主義経済のしくみのほとんどは、イギリスで生まれた。そのなかでただ一つ、イギリス生まれでない、少なくともそう断言できないものがある。 株式会社の制度である。だからこそ、イギリス人が書く会社の話は面白い。本家の自負ゆえの、微妙な屈折と疎外感。それが会社という、わかるようでわからないものをとらえるうえで、絶妙な距離をつくり出すのだろう。経済学でいえば、ロナルド・コースの仕事などはまさにそうだが、株式会社の過去と現在をふり返るこの本にも、同じことがいえる。

共同事業として見れば、株式会社は人類史と同じくらい旧い。自由に設立できる有限責任の法人として見れば、ほんの150年前にできた、ごく新しい制度である。その事実一つとっても、株式会社の歴史を書くむずかしさがわかる。が、この本は古代メソポタミアから、数年前に破綻したあのエンロンまで、手際よく実例をはさみながら、うまく鳥瞰して見せる。

だから、読み物としても十分面白いが、それだけではない。会社論としても一読の価値がある本である。

もちろん、専門書ではないから、オリジナルな知見があるわけではない。筋が通らない箇所もある。「株式会社だって本当はイギリス生まれだ!」と息巻いた後で、イギリスでいかに株式会社が定着しなかったかを延々と述べたりする。

しかし、その揺れがこの本のいちばんの魅力でもある。「会社とはこういうものだ!」と決めつけないのだ。営利追求と社会的責任、規模の経済と身軽な柔軟さ、あるいは国民経済への貢献とボーダーレス化。株式会社が相反する二つの顔をずっともちつづけてきたことをやわらかく描き出し、それを通じて、会社の歴史とは、むしろそういう決めつけの書き換えであることを教えてくれる。

ジャーナリストならではの健康的な懐疑と、イギリス人らしい歴史へのセンスを感じた。

もう一つ、好感をもった点がある。著者たちは、英米でも1970年代までは、専門能力と忠誠心を売り物にした「会社人」が、会社を支えただけでなく、会社の変革者でもあったと指摘する。そのうえで、現代の株式会社がどう変容しつつあるかを論じるのだが、その間に、自分たち自身は一つのメディア企業で終身雇用的に働いていることをさりげなく明かす。

大学教員にもマスコミ人にも、自分の雇用形態を棚に上げて、会社論をぶつ人は多い。そのなかで、ユーモアにくるんだ棚に上げなさが爽やかだった。【評者 佐藤俊樹 東京大学助教授】

■2006/12/26 週刊東洋経済

ピーク・オイル・パニック―迫る石油危機と代替エネルギーの可能性
ピーク・オイル・パニック―迫る石油危機と代替エネルギーの可能性ジェレミー レゲット Jeremy Leggett 益岡 賢

作品社 2006-09
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おすすめ平均 star
starピークオイル問題の全体像を分かりやすく述べた良書

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原油枯渇説は狼少年 その主張はナンセンス

養老孟司氏の名言によれば「人間の死亡率は100%」である。再生不能な枯渇性資源である石油もいつかは100%無くなる。しかし、原油高騰の背景にあるピークオイル説は、あなたが40年後ではなく、数年以内に死ぬと宣告するようなものである。本書の売りは、著者が石油事業にも携わった地質学博士であり、説明が精緻であることだろう。だが、石油業界に多くいる地質学博士の多数派は、ピークオイル説に与していない。本書で何度も引用されているキャンベル博士が、20年間も「数年以内に石油供給のピークが来る」と狼少年を演じ続けていることにも著者は触れない。

原油発見量推移などの「社会統計」を読むには、その統計の前提を良く吟味する必要があるが、本書はあたかも自然現象の統計のごとく無批判に扱っている傾向もある。たとえば、シェル社の原油埋蔵量偽装問題も、実態は時代遅れの米SEC計上基準に対する「形式犯」だ。

発見量推移統計も各油田発見後の埋蔵量成長分を発見年に繰り戻しているカラクリがあるし、発見の前提となる投資動向との関係が看過されている。

著者は今後の石油技術革新には否定的で、代替エネルギー技術には非常に楽観的だが、過去20年間の実績は全く逆であった。本書の主張は、伝統宗教のように「あなたはいずれ死ぬのだから普段から心の準備をしておくべきだ」と言わずに、すぐに生命保険金を何倍かに引き上げ、身辺整理をしなさいと言うようなものである。人間は心配し過ぎると免疫力低下で病気になりかねない。つまり、根拠のないピークオイル説を真に受けた若い人材が石油業界に来なくなったり、資源ナショナリズムを刺激することで、人為的ピークがすぐにも来かねない。読者はどう判断するだろうか。【評者 石井彰 石油天然ガス・金属鉱物資源機構首席エコノミスト】

■2006/12/26 週刊東洋経済

会社法の基本を問う
会社法の基本を問う稲葉 威雄

中央経済社 2006-09
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新会社法の問題点を理念に照らして明かす

2005年6月に成立した会社法は、3つの法務省令とともに06年5月に施行された。時まさに「新会社法ブーム」、書店には幾種もの解説書やハウツーものが平積みされるといった状況を呈している。そんななか、それらと一線を画した本書は、まさに「基本を問う」と言うように、理念に照らした根源的な問題点を明らかにしている。

とりわけ、会社法に限らないが、理念よりも現実のニーズに傾きがちな今日の立法にあって、長年の実務経験(判事、裁判所長、法務省民事局)をふまえた著者の発言は、そのバランス感覚に裏打ちされた貴重な問いかけになっている。

ここで本書の構成を紹介しておくと、会社法の制定(序章)、会社法の趣旨・法改正の理念(第1章)、会社法の構造の理解(第2章)、定款自治の拡大(第3章)、株主(社員)の有限責任(第4章)、剰余金分配規制・計算(第5章)、会社法がもたらした課題(終章)である。

なかでも重要なのは、繰り返し言及されている「資本」の意味とその矮小化の問題であろう。まさに理念(原理)にかかわる基本論点だからである。その点で、あらゆる法の基本にある公正の確保という見地から説かれた第4章と第5章は重要だ。

この他にも、会社法の体系性の問題、定款自治の拡大と限界、法改正のスクラップ&ビルドのあり方、法律事項と省令との区別の問題、規制緩和とソフトローなど、本書には会社法を既成事実に流されずに読み解くいくつもの視点が与えられている。

最後に、「立法を権威として受け取り、これを批判して、恥をかくことへの危惧を、学者も実務家も持っているのではないか」(167ページ)は気になるところだ。この点で、本書は学者の態度や学問のあり方を問う一書にもなっている。【評者 石川純治 駒澤大学教授】

■2006/12/26 週刊東洋経済

バカとは何か
バカとは何か和田 秀樹

幻冬舎 2006-11
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「バカの状態を克服しよう」との趣旨で書かれている。物事を白黒はっきり分けて見る「二分割思考」や、「かくあるべし」という考えに固執する人などバカの例がいくつも紹介される。ただ、そういったパターンには誰もが一つ二つ相当するかもしれない。今うまくいっている人でも、このような思考では、将来転落する可能性もある。

そうならないためには、「知識は本当に足りているのか」とチェック(「メタ認知」)を繰り返し、新しい知識を常に身につけること(「生涯学習」)などによる「自己改造」が必要であろう。「知的謙虚」という姿勢で複眼的にものを見ることが重要なのだ。その際、著者が提唱するように、欠点のないリコウではなく、「よりましになる」ことを目指すべきなのかもしれない。奈良県の医師宅放火事件など、「バカな」とうなる痛ましい出来事が少なくない。老若男女の誰もが、一歩立ち止まって考える余裕が必要ということか。

■2006/12/26 週刊東洋経済

99.9%成功するしかけ キシリトールブームを生み出したすごいビジネスモデル
99.9%成功するしかけ キシリトールブームを生み出したすごいビジネスモデル藤田 康人

かんき出版 2006-11-21
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おすすめ平均 star
starマルチWINという考え方に感動!!
star勇気が出ました
starWIN-WINの究極系

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本書は、社員4人の小さな食品素材メーカーが「キシリトール」で2000億円市場を創ったB to B to C戦略を語る。

著者は、日本で歯によい甘味料であるキシリトールの認可と普及を勝ち取ったマーケティングの達人である。その苦闘と成功の物語。

商品力だけでは、ブームは作れない。キシリトールブームを生み出すためには、メディアなどへの働きかけが不可欠だった。

こうしたPR戦略がどのように展開されたのか、本書で記述されている。本書には、PRと広告の違いが図になって示されているが、こうした基本も大切な知識である。

ある日、テレビ朝日のニュースステーションで、メインキャスターの久米宏(当時)が、「キシリトールは歯によいそうですね」という趣旨の発言をする。

これを契機にキシリトールの認知度が一気に高まったという。

現在、著者は食物繊維の普及に懸けている。

■2006/12/26 週刊東洋経済

韓国歴史地図
韓国歴史地図韓国教員大学歴史教育科 吉田 光男

平凡社 2006-11-11
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歴史地図を見るのは楽しい。本書は韓国教員大学歴史教育科がまとめた。「地図で見る韓国の歴史の本としては、韓国で初めて出版された」という。

『チャングムの誓い』など韓流ブームだが、われわれ日本人は意外に韓国の歴史を知らない。

本書を見るとビジュアルで韓国の歴史を追うことができる。

韓国の歴史と日本の歴史は密接に結ばれている。

たとえば、20ページの図を見ると、現在の上海あたりで発生した最初の水稲栽培技術が、百済を通じて日本に到来したことが示されている。

42、43ページの図では、日本に伝わった百済文化が示されている。近畿、北九州などが百済文化の影響を受けた地域だと示されている。

55ページの図では、統一新羅が唐や日本と積極的に交易を行ったことが示されている。古代、中世だけではなく、日本の支配期や朝鮮戦争時の図も興味深い。韓国史を知りたい方にお薦め。

■2006/12/26 週刊東洋経済

中国軍事用語事典
中国軍事用語事典茅原 郁生

蒼蒼社 2006-12
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中国に行ったことがある方なら、彼の国で軍がいかに大きな存在かをご存じだろう。軍事予算が年々拡大していることもあり、その実力についての関心が高まっている。中国の軍拡ぶりをセンセーショナルに取り上げる雑誌なども増えた。だが、中国の軍事動向をウォッチするには装備面の分析だけでは十分でない。

人民解放軍は国軍ではなく、中国共産党の軍隊だ。その独特の行動様式を理解するには、軍をめぐる諸制度などの知識が欠かせないが、包括的に紹介した資料は少ない。本書は中国研究者から現職自衛官まで、さまざまな立場の専門家によってバランスよく編まれている。解放軍の全体像を知るための、かつてないガイドブックである。

各軍の編制や軍事年表などの付録も充実しており、台湾軍についての解説・データも豊富だ。中国の台頭によって東アジアの安全保障環境がどう変わっていくかに関心のある向きには必携の資料といえる。

■2006/12/26 週刊東洋経済

累犯障害者
累犯障害者山本 譲司

新潮社 2006-09-14
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おすすめ平均 star
star矯正施設としての刑務所の存在意義とは
starなぜこれまで書かれなかったのか
starまずは問題を明るみに !

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著者に聞く 『累犯障害者』(新潮社)を書いた 福祉活動家(元衆議院議員) 山本譲司

受刑者の4分の1が知的障害者という実態

――前作の『獄窓記』では刑務所内には、障害や病気を抱えた多数の受刑者がいることを指摘されました。

身体的にも知的にもハンディキャップを負っている人が多い。私は栃木県の黒羽刑務所で、特別な介護を必要とする受刑者がいる寮内工場と呼ばれる部署の介助係をしていましたが、そこだけでなく一般工場にもたくさん待機者がいました。知的障害や認知症で、自分がどこにいるかもわからない受刑者もいます。

――新作の『累犯障害者』では、法務省の統計から受刑者の4人に1人が知的障害を抱えている可能性があることが示されています。

障害者手帳(療育手帳)の交付基準では、IQ50から75が軽度の知的障害者となっています。ところが新受刑者の22%がIQ69以下です。しかしこうした受刑者のほとんどは入所前にも入所後にも、知的障害者として認定されることなく、福祉的なケアの対象とはなっていません。

――知的障害者が犯罪を重ねてしまう現状を詳しくお書きになっていますね。

福祉という受け皿があれば犯罪を犯さずに済み、あるいは犯罪を犯しても実刑判決を受けるはずのないケースが非常に多い。本の中にも出てきますが、2001年4月の東京・浅草での女子短大生殺人事件の犯人(レッサーパンダ帽の男)、06年1月の下関駅の駅舎放火事件の犯人など、いずれも適切な福祉支援が行われていれば防げたかもしれません。彼らは刑務所と一般社会とを行き来するなか、取り返しのつかない重大な罪を犯してしまいましたが、幼児期以来の境遇はとても悲惨なものです。

どこの国にも知的障害者は人口の2~3%はいるとされています。日本では300万人程度はいるはずです。しかし、療育手帳を持ち公的な福祉支援を受けているのは46万人しかいません。それ以外の障害者は、行政からも司法からも障害者と認定されることなく、罪を犯せば健常者と同じように扱われるわけです。

――本書を読むと、福祉の網から漏れた知的障害者の最後の行き場所が、刑務所しかないことがわかります。

就業の機会や生活保護の体制も不十分なままで、罪を犯してしまう。しかも本人が犯罪の認識を欠いていることが多い。身元保証人のいない元受刑者が入る更正保護施設は、知的障害者を受け入れてくれません。身寄りのない障害者は、そのまま社会に放り出されている。その多くがホームレスのような生活を送るなかで、住居侵入や窃盗を犯す。その繰り返しです。

――知的障害者は自己を防御する術を持っていません。

知的障害者は、取り調べでも法廷でも、相手の言うままに話したり同意したりします。しかも、謝罪を表す能力を持ち合わせておらず、結果として、微罪であっても刑務所送りになってしまいます。

知的障害があるから犯罪者になっているわけではない。原因は貧困であったり劣悪な家庭環境にあります。ときにその家庭環境は想像を絶するようなケースがあります。社会から彼らを孤立させないこと、それを真剣に考えるべきです。

やまもと・じょうじ 1962年生まれ。早稲田大学教育学部卒。菅直人衆議院議員秘書、都議会議員を経て96年衆議院議員。2000年に政策秘書給与流用事件を起こし01年に実刑判決。433日間の獄中生活を『獄窓記』(新潮ドキュメント賞受賞)にまとめる。

■2006/12/26 週刊東洋経済

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