メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2006年1月14日~1月21日

財界とは何か
財界とは何か菊池 信輝

平凡社 2005-10-25
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おすすめ平均 star
star正統な経団連論

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戦後の日本を支配してきたのは「政・官・財の三位一体構造」だといわれているが、財界が政治家や官僚とどのように結びつき、どのように力を発揮してきたか、ということを明らかにするのが財界論の課題である。

この本は「〈財界〉がいかに日本の政治や経済に強い影響を与えているかについて知ってもらうために書かれたもの」であるという。これまで財界、あるいはその総本山ともいわれる日本経団連について書かれた本の多くは財界担当の新聞記者によるもので、それは財界の内幕物、あるいは財界人の人物論が中心であった。

これに対し、新聞記者でない、社会経験のある若い大学助手がこういう課題に取り組んだことは高く評価される。ただ、その試みが成功しているか、どうか、となると話は別だ。

この本では戦前の財閥支配の時代から始まって、戦後の経団連や経済同友会、日経連、商工会議所などの財界団体の形成とその後の歴史を追うと同時に、財界と政治家や官僚との関係を詳しく分析している。

そして財界と政府、官僚との関係については、いかに財界が政府の介入を嫌ったか、ということに力点がおかれている。確かに経済同友会の発表文書などを見るとそう見えるが、それよりも、もっと重要なのは、表では政府を批判しながら、実際にはいかに政府と結びついてきたか、ということではないか。

現に政府の審議会や調査会などの会議には必ず財界人が入って、政府の政策に深くかかわっている。新産業体制論の時のような対立も確かにあったが、それは一時的なものであった。

政治家との関係では、小泉内閣の郵政民営化問題への過度の政治的資源の集中、あるいは靖国神社参拝での中国との軋轢などを挙げ、財界にとって小泉内閣は障害物になっている、というが、それならもっと財界から小泉内閣批判があってよいはずだが、そうはなっていない。

財界人はいうまでもなく、それぞれ個別企業の利益を代表している。その個別企業間の利害対立の上に立って財界が存在するのだが、ホンネの部分は表からは隠されている。それを明らかにすることが必要である。

タテマエとホンネは違うといわれるが、とりわけ財界団体ではそうだ。それが発表する文書は宣伝であったり、世論操作のためのものであったりする。これを真に受けて財界の方針だと勘違いしてはならない。

財界を研究する場合、それが発表する文書よりも、実際に何をやっているか、という実態を分析することが大事である。また財界人の生態についてもっと突っ込んだ分析が必要だ。【評者 奥村宏 経済評論家】

■2006/01/21, 週刊東洋経済

スティーブ・ジョブズ-偶像復活
スティーブ・ジョブズ-偶像復活ジェフリー・S・ヤング ウィリアム・L・サイモン 井口 耕二

東洋経済新報社 2005-11-05
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star勉強になります。

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本書は、アップル社の復活したCEOであり、コンピュータ、映画、音楽という三つの分野での歴史的革新を成し遂げ、今なお新しい何かを期待させるカリスマ経営者スティーブ・ジョブズのスリリングな「非公認伝記」である。

第一部は、もはや伝説となった感のあるアップル社創業から、同社会長の座を追われるまでが描かれる。アップルという会社に対して単なるコンピュータ会社以上の愛着を感じている読者にとってはほとんど周知の事実だと思われるが、コンピュータといえば仕事で使うウィンドウズ・マシンしか知らないという読者にとっては、アップル社の個性すなわちジョブズの個性は驚きに満ちたものであるかもしれない。

アップル社の最初の成功がジョブズの力だけによるものでないことは、まさにその通りである。しかし、ジョブズの個性なくしてアップルという会社がこれほど魅力ある企業に成長しえたのかを理解することは難しい。

またジョブズがネクスト社時代にジョージ・ルーカスから買収して立ち上げたピクサー社が、なぜ映画業界を根底から揺さぶる成功を収めたのか。ディズニーの前CEOマイケル・アイズナーとの対決を含めて、本書中もっとも面白い部分の一つだ。ある意味では似た者同士である二人の決定的な違いは、ジョブズの「何かを真に理解するためには、全身全霊で打ち込む必要がある……そこまでのことをする人はめったにいない」という言葉に尽くされている。アイズナーもカリスマ経営者であったが、何ものかを創造する経験を欠いていた。

iPodが大成功を収めたのも、まさにクリエーターとしてのジョブズが全身全霊を打ち込んだ結果なのだと言えよう。【評者 中村宗悦 大東文化大学経済学部教授】

■2006/01/21, 週刊東洋経済

萌え経済学
萌え経済学森永 卓郎

講談社 2005-10-30
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おすすめ平均 star
star新しい経済学の登場
star「頭」で「萌え」を理解したい人にも最適
star時代の転換期には、講談社が萌えという名の書籍を。

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「萌え」とはアニメやコミック、パソコンゲームなど二次元のキャラクターに恋愛することを意味する。世の中はいまオタクやサブカルに注目する論評で満ち溢れている。秋葉原が家電やパソコンの街からオタクシティーに変化したこと、オタクを主人公にした『電車男』の各種メディアでの大成功、メイド喫茶やアニメなどのオタク関連市場の規模が数千億円にのぼるという各種調査が公表されるなど、まさに昨年は萌えとオタクがブレイクした年でもあった。

そしてかねてからミニチュアカーの蒐集などでオタク魂を発揮してきた著者が準備万端で世に放つ軽快な経済書が登場した。萌え市場の特徴として著者は、ただ単にアニメ作品そのものにとどまらず、関連グッズやイベントなどのメディアの融合化をもたらすことで規模の経済を生み出していることに注目している。食玩(食料品のおまけ)のアニメキャラクターなどはその典型だろう。さらに萌え系の人たちは新品と中古品を区別しないことでオークション市場の成熟を伴うとも指摘し、さらに調査は中国上海の萌え市場にも及んでいる。

また萌え系の人たちが多く出現した理由として、著者は従来の愛の「抱き合わせ販売」といえる性愛・相互理解・相互依存が崩れ去り、非情ともいえる「イケメン」と「キモメン」(気持ち悪い顔)との恋愛格差社会が出現したことに求めている。この恋愛格差社会の敗者が二次元恋愛のプレイヤーとして新しい恋愛の姿を求めているのだ。

著者の萌え系の人への視線はひたすら温かい。世の中の萌えやオタクへの偏見(例えば性犯罪との関連性)はまったく根拠がないと著者は断言する。私も著者の推論には各所で激しく同意した。優れた経済書として本書を熱く推薦する。【評者 田中秀臣 上武大学助教授】

■2006/01/21, 週刊東洋経済

小説 圓朝
小説 圓朝正岡 容

河出書房新社 2005-07-05
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本書は、明治時代に落語界にその名をとどめ、また「落語の神様」と謳われた三遊亭円朝の長い修業時代の半生記である。

彼が生まれたのは天保10(1839)年、橘屋円太郎の子として生まれ、父と同じく円生門下となり、7歳で小円太と名のって初高座を務め爆発的な人気を獲得するが、もともと下級武士の家系という理由から、母親と義兄に芸人になることを反対され、彼はいろいろな仕事の小僧として就くが、長続きせずに、病に倒れ、診断した医者の強い勧めもあって、結局、落語界に復帰する。

17歳のとき、衰退する三遊派の再興を期して円朝と改め、真打に昇進する。

弟子もつくが、経済的な困窮は相変わらず。窮状を打開するために、派手な衣装や道具を使った、さながら歌舞伎のごとき芝居噺を始め人気を集める。だが、幕末の大動乱で一切合切を失い、「扇一本、舌三寸の境地」に到達。後に「無舌居士」と号した。

■2006/01/21, 週刊東洋経済

こちら南極ただいまマイナス60度―越冬460日のホワイトメール
こちら南極ただいまマイナス60度―越冬460日のホワイトメール中山 由美

草思社 2005-12
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本書は、女性記者として初めて南極観測越冬隊に同行、越冬し、南極の観測基地であるドームふじへの2000キロメートルに及ぶ旅を記録した報告書である。

厳しい寒さ、昭和基地の建物を揺るがすブリザード、4カ月に及ぶドームふじへの雪上車による雄大な旅、まさに血湧き肉躍る体験ではあるまいか。

ところで記者とはいえ、取材だけしているわけにいかず、ドラム缶転がし、雪かき、ゴミの処理など雑用をする当直に加わり、また時には衛星施設の設備の手伝いなどをすることもある。

6月初め、極夜の到来、太陽の全く出ない日が1カ月半続き、極夜は人間の感覚を狂わせ、人々を苛つかせ、そのためトラブルも起こる。日が長くなると、いよいよ標高3110メートルのドームふじへ向かい、100万年前の地球の気候を探るために、ここで14万年前の氷を採集する。

地球の変化を知るための観測の大切さを教えてくれる1冊である。

■2006/01/21, 週刊東洋経済

東大法学部
東大法学部水木 楊

新潮社 2005-12-15
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筆者は日本経済新聞社の論説主幹を経て、現在は作家である。日本を代表する経済新聞の記者としての体験を交えながら、東大法学部を多面的に描く。言うまでもなく東大法学部は明治以来の日本の制度の中で頂点に立っている学部である。キャリア官僚をいちばん輩出する学部だからだ。

しかし、制度の頂点にあるからといって、研究・教育も頂点というわけではないのが、東大法学部だ。

評者は経済誌の記者として、多くの東大法学部卒業の経営者に会ってきたが、彼らが異口同音に指摘するのが、「大教室でのマスプロ授業のつまらなさ」である。そう、法学部は工学部に次いで学生数が多いうえ、学科も少ない。自然とマスプロ授業になる。

だが、こうしたつまらない授業に耐えて、法学部の学生は、国家1種、司法試験などに合格するために、厭わず勉強する。こうした無味乾燥な勉強に耐える人材が明治以来の制度が求める人材なのだ。

■2006/01/21, 週刊東洋経済

小さな会社 儲かる会社はここが違う!
小さな会社 儲かる会社はここが違う!川名 康行

有楽出版社 2005-12
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著者はちばぎん総合研究所取締役経営コンサルティング部長である。長年の銀行マンとしての経験を生かして、中小企業のコンサルティング業務をしている。 この本では儲かる小さな会社に共通する四つの共通点を挙げている。

例えば、〔1〕方針が明確である、〔2〕社長が行うべきことをきちんと実施している、〔3〕顧客から支持された商品やサービスがある、〔4〕計数に明るい――ということである。

社長が明確な方針を出して、現場に徹底させること。当たり前の指摘だが、現実にはなかなかできていないのが中小企業の現実だ。「決断できない社長」の特徴として、経営哲学がない、ロジカルでない、という点を指摘する。明確な経営哲学=方針を持ち、ロジカルに判断して、現場に浸透されることが、小さいが儲かる会社をつくる基本である。

この本は、経営の基本をわかりやく描いているので、得るものが多い。

■2006/01/21, 週刊東洋経済

世界の路地裏100

日本人の海外旅行もずいぶん変わった。リピーターが増えたこともあるだろう、その目的も観光名所やブランドショッピングから「世界遺産」やエコロジー、スポーツやエステや雑貨探しなど多彩だ。

その旅でもほっとひと息つきたくなることがある。そんなとき普通の人びとの生活が見られる場所に足が向く。下町の広場やカフェ、市場や旧市街の裏通りを徘徊する。なかでも路地裏は自身が素にもどれる旅人のオアシスだ。

本書はフランス、イギリス、スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャ、チェコ、メキシコ、韓国の路地で老人が佇み、ネコが居眠りし、カラフルな洗濯ものがひらひらし、お母さんの元気な声が聞こえてきそうなそんなシーンを写真で見せてくれる。

読者はそこで、エーゲ海の小島の午睡を味わい、コルドバでユダヤ人の影を追い、プラハの迷路に散歩するカフカを想うのもよい。ヨーロッパ中心の紙面構成が気になるが、日本人が安心して歩ける路地といえばこのような選択もありだろう。路地裏は人情味あふれる空間だけれど、ところによっては犯罪が多発する危険ゾーンでもあるのだから。

掲載されている写真は一部をのぞき通信社のフォトライブラリーから集められたものだ。ひとりの写真家の路地裏も見たいが、本書のような主観を排した匿名の写真群には見る者の想いを投影しやすい。旅のしかたが百人百通りであるように。

庶民の生活があるかぎり、世界には無数の路地裏が存在する。日本の大都市の整備がすすめばすすむほど路地裏の魅力はこれからも増すだろう。姉妹編に『日本の路地裏100』がある。【評者:写真家 中川道夫】

■2006/01/21, 週刊東洋経済

デフレから復活へ―「出口」は近いのか
デフレから復活へ―「出口」は近いのか伊藤 隆敏

東洋経済新報社 2005-10
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デフレが終焉しつつあることを、多くの人が実感している。日銀短観などのアンケート調査からは、株価が大底を打ち回復に転じた03年後半頃から企業部門などでデフレ予想の後退が始まっていたことが確認される。

きっかけは何であったのか。本書は、90年代以降のデフレ下の日本経済とそこからの脱出を目指した政策について、わかりやすく論じたものである。著者は、日本を代表する経済学者であると同時に、財務省の副財務官などを歴任し、政策現場で経済学を実践してきた。このため、学界での分析やそれに基づく処方箋だけでなく、政策担当者の採った処方箋やその効果などについても述べている。

デフレが深刻だった当時、ゼロ金利下で、もはや効果のある金融政策は存在しないと考える人が少なくなかった。その状況を変えるきっかけとなったのは03年の通貨・金融政策の大転換であると、著者は指摘している。

まず、金融政策無効論を唱えデフレに寛容な速水優氏に代わって日銀総裁に就任した福井俊彦氏は、就任直後から積極的に当座預金残高の拡大を行った。

さらに、それが財務省の溝口善兵衛財務官の下での35兆円にのぼる巨額の円売り介入と歩調をあわせて行われた点が重要だったという。つまり、当座預金残高の拡大により介入資金の部分非不胎化が行われた。

政府のドル買い資金を日本銀行がファイナンスする形で非不胎化すれば、それは日銀の外債購入という非伝統的な金融政策と同じ効果を持つ。理論上効果があるとわかっていても、それまで大規模介入は国際政治の観点から実行不可能と考えられていた。また、速水時代に日銀は予想に働きかける政策の有効性や非不胎化を否定していた。

しかしこの通貨・金融政策の大転換は実行され、企業や家計のデフレ予想や資産デフレ予想の後退のきっかけになった、というのである。

デフレ脱却を確実にするために、著者はインフレ・ターゲット(正確には、上昇経路を伴う物価水準ターゲット)の導入を提唱している。望ましいインフレ率のレンジを明示することで、高いインフレ率を目標としていないことを市場に伝え、デフレ脱却後も長期金利の急上昇など金融市場の混乱回避に役立つとしている。

通貨・金融政策だけでなく、デフレ脱却後の日本の課題である財政再建や年金改革など、持続的成長に必要な構造改革について幅広く、かつ、わかりやすく論じている。デフレからの出口に近づきつつある現在、90年代以降に起こったことを今一度整理したい方々に是非お薦めしたい。【評者 河野龍太郎 BNPパリバ証券チーフエコノミスト】

■2006/01/14, 週刊東洋経済

少子高齢化の死角―本当の危機とは何か
少子高齢化の死角―本当の危機とは何か高橋 伸彰

ミネルヴァ書房 2005-10
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日本ではまだ婚外子の割合が非常に低く1・9%にすぎない。アメリカの34%、スウェーデンの56%などと比べると桁違いに少ない。日本ではまだ結婚してから子供を生むという風潮が根強く残っている。一方、着実に晩婚・未婚化は進み、30歳代前半の男性の43%、女性の27%が未婚の状態にある。当然子供の数は減る一方だ。その統計的事実に基づけば「少子化の原因は晩婚・未婚化の増加」という言説は確実に正しい。

しかし、少し待てよと著者は言う。晩婚・未婚化は結果であって原因ではない。そこでよく持ち出されるのが「女性の社会進出」であるが、女性の社会進出が日本よりはるかに進んでいる国で必ずしも出生率が低くはなく、むしろ女性の労働力率と出生率が正の相関を示していることが説明できない。

著者によれば、社会保障の仕組みには大きく3通りあるという。一つは、アメリカなどの「福祉は個人の所得に応じ、国家が最低限の保障のみを行う」自由主義的福祉。二つ目は、日本や南欧諸国などの「母性を支援する家族手当を給付し、家族のサービスに依存する」家族依存的な福祉。三つ目は、北欧諸国などの「高い税率を基礎に、全層平等に高い水準の福祉を約束する」社会民主主義的な福祉。

このうち1980年代以降、出生率の低下が顕著なのは家族依存的な福祉国家であるという。女性の高学歴化も進み、社会的な上昇志向も高まる一方で、日本の現状では親など家族に子育てを依存することが困難になっている。育児と仕事の両立が難しいこのような状況で女性が結婚に躊躇するのも当然であろう。少子化の末に待っている超高齢化社会。その時代に備えた年金その他の社会保障が著しく未整備な日本はこの先どうなるのであろうか。【評者 橋元良明 東京大学大学院情報学環教授】

■2006/01/14, 週刊東洋経済

パチンコ「30兆円の闇」―もうこれで騙されない
パチンコ「30兆円の闇」―もうこれで騙されない溝口 敦

小学館 2005-09
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starなぜみんな喜んで献金するの?
star客だけが損している
starパチンコ産業は、オーストリア一国の経済を上回る

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以前、北海道を友人の車で走っていた時、廃屋となったパチンコ屋が国道沿いに何軒もうち捨てられていた。異様な光景のわけを尋ねると、ハンドルを握っていた友人いわく「パチンコ屋は2、3年やって儲けると、税金も払わずに姿をくらます」。

パチンコ屋は8割が北朝鮮・韓国系で、残り2割が日本人と台湾系。年間に飛び交う金は約30兆円で、中央競馬(3兆円)や競輪(1兆円)をはるかに凌ぎ、自動車産業の41兆円と比べても遜色ない。

この巨大な蜜壷をいちばんの食い物にしているのが警察だという。その影響力の源泉は、景品の換金を法的に曖昧なままにしておく典型的な裁量行政。警察とパチンコ屋の付き合いは「お茶、酒、飯、女、旅(海外旅行を含む)」と進み、警察署長は1回異動すると400万~500万円の餞別が入るという。

機器メーカー三洋物産の販売会社の出張所長は年末のボーナスが2000万円、パチンコ屋に忍び込んで機械に細工し、不正操作で儲ける中国人ゴト師は5年間で3億円を稼ぎ、パチンコ業界からは北朝鮮に巨額の資金が送金されている。

これだけ儲かるパチンコ産業を警察の好きにさせず、きちんと徴税すれば財政赤字は縮小するはずだ。しかし著者は「日本の税務署は面倒なところからは徴税しない」と指摘する。国税庁は1976年に在日朝鮮人商工会(朝鮮総連系)と「五箇条の密約」を交わし、北朝鮮系のパチンコ店などの税務申告を実質的にノーチェックで通してきたという。

本書は、パチンコ屋の儲けの秘密を暴くにとどまらず、業界に巣食う警察、政治家、機器メーカー、中国人マフィア、北朝鮮関係者にスポットライトを当てることで、現代日本の病巣を見事にえぐっている。【評者 黒木亮 作家】

■2006/01/14, 週刊東洋経済

チョッちゃん
チョッちゃん石井 宏

草思社 2005-10
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star犬様あっぱれ

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ある初夏の朝、何匹も犬や猫を飼っている動物好きの西井家に突然1匹の放浪犬が現れる。よく見かける普通の犬ではない。毛がほとんど抜け、おそろしく痩せた雌犬であった。餌を与えるとまさに貪り食ったのだった。牛丼でいえば20杯位、それに牛乳一升。それから毎日やってきては、たらふく食べる。それでも全く太らないのだ。「チョッ、チョッ」と歩くので、チョッちゃんと名付ける。

チョッちゃんの後をつけて分かったのだが、その雌犬はもらった餌を吐き出し、3匹の仔犬に与えていた。やがて、その仔犬は愛犬家に引き取られ、チョッちゃんも西井家の犬となる。母犬としての務めを果たし安心したのか、なんと二晩で毛がはえ、立派な柴犬となった。だが、その後間もなく突然死んでしまう。「わたくし、幸せでした」という顔を周囲に残して。これは、本当にあった話である。犬には美談に事欠かない、と言われているが……。

■2006/01/14, 週刊東洋経済

中国のマスコミとの付き合い方―現役外交官第一線からの報告
中国のマスコミとの付き合い方―現役外交官第一線からの報告井出 敬二

日本僑報社 2005-12
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かつては中国のマスコミといえば共産党や政府の機関紙だけだった。だが、現在はかなり多様化が進んでおり、インターネットの普及とあいまって中国社会へ の影響力を強めている。

そうしたマスコミとの付き合いは、中国に進出した日本企業にとって悩ましい問題の一つだ。無知や誤解によってセンセーショナルに報道され、企業イメージに打撃を受けるケースも珍しくない。

著者は在中国大使館の広報担当公使としてマスコミ対応の第一線に立っている。積極的な広報姿勢で知られ現地メディアに頻繁に登場。中国社会での認知度が高い人物だ。その経験を、インタビューの実例とともにまとめたのが本書である。「マスコミが誤解しないように、情報を継続的に提供し、当方の考え方を総合的に理解してもらう方策が重要」という指摘には大いにうなずかされる。中国メディアの現状や、その日本観を知るためにも有益な一書だ。

■2006/01/14, 週刊東洋経済

だから歌舞伎はおもしろい
だから歌舞伎はおもしろい富沢 慶秀

祥伝社 2005-10
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いま歌舞伎がおもしろい。市川海老蔵、中村勘三郎、坂田藤十郎と3年越しの襲名披露興業で、大歌舞伎の大入り満員が続いている。映画やテレビで人気の出た若手俳優も多いせいか、客席に若い女性たちも増えている。そんなわけだから、歌舞伎の入門書も結構たくさん出ている。本書はベテランの芸能・演劇記者の手になるものだが、素人の素朴な疑問からなった歌舞伎入門書として、楽しい読み物になっている。評者も、かつてはこの世界に興味もなかったものだが、ここ数年は毎月の歌舞伎座通いを欠かさない。

歌舞伎の醍醐味は、なんといっても400年の伝統から来る知恵、洗練された様式の美しさ、ただならぬ奥行きの深さにある。しかし、何でそんな約束事なのと不思議に思うことが、観ているとよくある。みんな理由のあることなのだが、そんな素人の疑問に答えてくれるのが本書。だから歌舞伎はおもしろい、というわけである。

■2006/01/14, 週刊東洋経済

高学歴ノーリターン The School Record Dose Not Pay
高学歴ノーリターン The School Record Dose Not Pay中野 雅至

光文社 2005-11-22
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筆者はキャリア官僚として14年間旧労働省に勤務。その体験から、東大など有名大学を卒業した「エリート」がそれにふさわしい待遇(給与、労働条件など)を得ているかどうか、疑問を投げかけている。「高学歴者が幸せに見えない」が筆者の結論だ。高学歴者は、

〔1〕リスクを取る勇気やリーダーシップのある「カリスマ性のある高学歴者」
〔2〕親が金持ちの「ボンボン高学歴者」
〔3〕下・中間層出身で目立った取り柄のない「冴えない高学歴者」
に3極化しつつある。

〔1〕の代表はホリエモン(東大文学部中退)だろう。
〔2〕の代表は、慶応卒の2世経営者だろう。
〔3〕の「旧帝大出身」「早慶出身」の「普通の高学歴サラリーマン・公務員」は、明らかに報われていない。これまでの東大を頂点とした学歴社会は終わり、運と人脈がモノをいうギャンブル社会が到来するという。それぞれがリスクを取る生き方を勧める。

■2006/01/14, 週刊東洋経済

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