メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2006年11月25日~12月2日

百姓から見た戦国大名
百姓から見た戦国大名黒田 基樹

筑摩書房 2006-09
売り上げランキング : 3945

おすすめ平均 star
star戦国時代の見方を一変!!
star明治22年以前の世界
star戦国時代ってそういう時代だったんだなぁ。

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教科書的な戦国時代観を一掃する画期的な本

戦国時代の村とは、黒澤明監督の『七人の侍』に出てくるような村ではなかった。村は武装し、用水や入会地を巡って隣村と争っていた。

飢餓は日常だった。戦争は飢餓に拍車をかけた。戦争において、他村の収穫物や武具を奪い、女や子供をさらって奴隷として売り払っていた。収穫物を奪われれば、すぐさま飢餓となる。

戦争は飢餓の原因を作り出したが、飢餓は戦争の原因ともなった。収穫物を奪われた村は、別の村を襲って食糧を得るしかない。生きるために、人々はそうするしかなかった。

村の争いは、他村を巻き込み、すぐさま領主を巻き込む戦争となる。村が争いに負けて略奪されれば、領主は年貢を取れなくなる。戦争と飢餓が日常的な時代だった。戦国大名は、配下の領主、村々の争いを止めさせる権力として現れ、それは村々にも歓迎された。戦国大名の支配下では、領主間の争いも村々の争いも禁止され、戦国大名は公平な調停者として現れる。

戦国大名は、万人の万人に対する争いを止めさせるリヴァイアサンとして現れた。戦国大名は、争いを調停し、平和を維持する権力であることを自ら認識していた。大名は公平な調停を行い、村が平和に成立するように心を砕き、村は大名に年貢を支払うという社会契約が成立するようになっていった。

戦国大名は、争いを止めさせ、天災による飢餓には年貢を減免し、種籾を貸し出した。

戦国大名の領内では平和が成立したが、その外では異なっていた。戦国大名は巨大な権力として国を形成したが、他の戦国大名の国には攻め入った。武田信玄は常に国外で戦争し続けたが、それに伴う略奪によって甲斐と支配下の国々の「民百姓まで、ことごとく富貴し」たと『甲陽軍艦』にあるという。

『甲陽軍艦』は、歴史を研究する人々が容易に入手できる記録である。そこから当然に推測できる実体ではなくて、なぜ人々が戦国時代を『七人の侍』のようなイメージで理解するようになったかは分からないが、それでは多くのことが理解できない。戦国大名には、略奪によって獲得される富があって初めて成立する仕組みがあったという。

豊臣秀吉が天下統一の後、朝鮮を侵略したのは、略奪による富を求めてのことだったという。略奪による富の配分という戦略が失敗して、初めて徳川の平和が訪れる。平和のもたらす生産の増加によって、天下を安定させるために、戦国大名は、領民との平和の社会契約を守ることに全力を尽くすことになる。戦国時代のイメージを一新し、「徳川の平和」の意味を考えさせる。【評者 原田泰 大和総研チーフエコノミスト】

■2006/12/2, 週刊東洋経済

可視経営で内部統制―実益をあげながら進める企業体質強化
可視経営で内部統制―実益をあげながら進める企業体質強化石橋 博史

日経BP企画 2006-08
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可視化技術で業務革新と内部統制の両立を

2006年5月には大会社に対して業務の適正を確保するための内部統制構築を求める会社法が施行され、また6月には上場会社に対し財務報告の信頼性確保のための内部統制を義務づける「金融商品取引法」(日本版SOX法)が成立した。

時まさに「内部統制ブーム」、関係する業界・学界も“日本版SOX法特需”といった活況を呈し、本誌9月30日号でも「内部統制虎の巻」なる特集号が掲載された。本書はそうしたなか、著者が長年追求している「可視化技法」を活用した内部統制の構築を明らかにしている。

本書の構成を紹介しておくと、内部統制構築で“強い会社”をつくる(第1章)、内部統制とは何か?(第2章)、可視化技術で具現化する内部統制(第3章)、HITを活用した内部統制の事例紹介(第4章)、人を活かす内部統制を実現する(第5章)である。

本書の類書にない特徴は、著者ならではの「可視化技法」による内部統制構築を指南している第3章と、その実際の適用事例を扱っている第4章に見出せる。特に可視化支援ツールHITによる企業グループの先進的な取り組みは、現場で内部統制の構築に取り組んでいる者にとって有益な示唆となるだろう。

財務報告の信頼性のためというと、経理や財務だけの守りの内部統制になりがちだ。だが、本書では内部統制は企業経営そのものとの立場が貫かれ、手間とコストがかかるわりに費用効果が見込み難い点も、HITによる事例を通してコストを上回る利点が強調されている。

こうして内部統制構築と経営哲学は表裏一体、守りの内部統制から攻めの内部統制へ、この理念とその具体化を説いた本書は、業務革新と内部統制の両立を狙い、強い企業になるための有益な一冊になっている。【評者 石川純治 駒澤大学経済学部教授】

■2006/12/2, 週刊東洋経済

満洲切手
満洲切手内藤 陽介

角川学芸出版 2006-09
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郵便メディアが読み解く「満洲国」の実像

切手、はがき、消印などは多くの人々の目に触れることを通じて一種のメディアとして機能している。したがって、国家はこれらの「郵便メディア」を通じて各種のメッセージを発し、プロパガンダをおこなってきた。また郵便物がどのように取り扱われてきたのかによって、その国の実効支配が及ぶ範囲や複数の国々の力関係を読み取ることができる。

著者は、これら「郵便メディア」の発するメッセージを読み解いていくことを専門とする「郵便学者」であり、これまでにも数多くの著書の中で、われわれに新たな歴史解釈の視点を提供してきた。本書でもこれまで以上にスリリングな議論を展開している。何しろ扱われている素材が「満洲国」である。「傀儡国家」「偽国家」の「満洲国」にまともな切手などあったのだろうか。誰もがそう思うであろう。しかし、著者ははじめからそのような教科書的見解に与せず、虚心坦懐、「満洲国」の「郵便メディア」を読み解き、自然と読者を驚きに満ちた「満洲国」の世界に誘っていく。

たとえば「満洲国」における治外法権撤廃と満鉄付属地消滅の記念切手、あるいは満洲赤十字社創立の記念切手の発行。「満洲国」が、いかに国際的に独立国の体裁を取ろうとしたのか。物言わぬ切手をしてこれほど雄弁に語らせる著者の力量に感嘆せざるをえない。

本書末において著者は、現在の中華人民共和国が(その公式見解はともかくも)、「満洲国」の遺産なくしてありえなかったことは、示してきた数多くの切手やカバーの背景をたどっていけば、自然に行き当たる事柄であろうとしている。しかし、誰もが自然に「郵便メディア」を読み解けるわけではない。まさに著者の「眼光紙背に徹する」力量のなせる技である。【評者 中村宗悦 大東文化大学経済学部教授】

■2006/12/2, 週刊東洋経済

ガイアの復讐
ガイアの復讐ジェームズ ラブロック James Lovelock 竹村 健一

中央公論新社 2006-10
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おすすめ平均 star
star地球は今怒っている、と。
star叡知へと向かう書

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本書は「地球の臨床医」であるイギリスの科学者ジェームズ・ラブロックが、人類によって壊されていく地球の再生への可能性を語った処方箋だ。ガイアとは生命体としての地球のこと。今、「彼女」が病んでいる。人類は食料や燃料のために地球を収奪してきた。

さらに、石炭・石油などの炭素をエネルギー源としてきたため地球温暖化が止まらない。風力、太陽光など「再生可能なエネルギー」で「持続可能な発展」を継続することが模索されているが、時間的余裕は少ない。

しかし、ラブロックはガイアの機能を失うことなく人類を支えていくことはまだ可能だと言う。それは「秩序正しい持続可能な撤退」だ。原子力によるエネルギー確保と、化学合成のみによる食糧生産により、人間の生活を自然のサイクルから完全に切り離す。

原発推進の書という批判もあるが、単に切り捨ててしまうのは惜しい。著者の警鐘に耳を傾けるべきだろう。

■2006/12/2, 週刊東洋経済

知られざる東京権力の謎―中間的自治体の発見
知られざる東京権力の謎―中間的自治体の発見安達 智則 鈴木 優子

花伝社 2006-08
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東京都は日本に一つしかない特異な自治体である。戦時下の1942年、東京府と東京市が合併し東京都ができた。東京都は基礎自治体(市)と広域自治体(府県)の機能を兼ねている。

だが、一つの自治体が両方を兼ねることは難しい。この本の著者は、「隠れた東京市」の存在を指摘する。それが、財団法人「特別区協議会」である。飯田橋駅近くに高層ビルがある。東京区政会館である。この中に特別区協議会が入居している。特別区協議会は、都民が名前すら知らない財団法人だが、「東京市」の機能を果たしてきたという。

「東京区政会館に、総務・福祉・環境・医療・教育の行政組織が、実在していた」という。こうした不透明な組織を都民の目に見える中間的自治体=東京市に改編すべきだという。

著者の立場は、おそらく日本共産党に近く、主張には一部誇張もあるだろう。事実と主張が混在し、読みにくい。だが、東京都のあり方を考えさせる本だ。

■2006/12/2, 週刊東洋経済

ピラミッド事典
ピラミッド事典ジェームズ パトナム James Putnam

あすなろ書房 2005-11
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おすすめ平均 star
star「時はすべてのものをあざけるが、ピラミッドは時をあざける」(アラブの諺)

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「時はすべてのものをあざけるが、ピラミッドは時をあざける」とは、ナイル河畔の台地に4500年以上も立ち続けるピラミッドを敬ったアラブの昔の諺である。

それにしても、古代エジプト人は、何のためにあの巨大な石の建物を建てたのであろうか。考えられるのは、当時のファラオ(王)によって、彼らの肉体の最終的な安らぎの場所として造られたのであろう。

ピラミッドの建造法については古代エジプト人による記録は皆無に近いが、ヘロドトスの『歴史』の記述や近年の実験考古学の成果により大筋は解明されたようである。

本書で紹介されている「ピラミッドの建設計画」「建築道具」「ピラミッドの建造」なども、ただ驚くばかりである。そして、この何世紀にも後に、中南米の人びともピラミッドを造り、神殿として使用し、いまだ何百ものピラミッドがジャングルの奥深い所に隠れているという。

■2006/12/2, 週刊東洋経済

南の悪魔フェリッペ二世―スペイン黄金の世紀の虚実〈2〉
南の悪魔フェリッペ二世―スペイン黄金の世紀の虚実〈2〉伊東 章

鳥影社 2006-10
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フェリッペ二世は影が薄い君主である。16世紀、全盛期のスペインの君主であり、その領土は欧州から新大陸に及び、「太陽が沈まない帝国」だった。だが、今日フェリッペ二世の名前は、フィリピンという国名にしか残っていない。

彼が関係した人物、たとえば妻にしようとした英国のエリザベス女王や、庶子弟で、キリスト教徒がオスマン帝国に勝利したレパント沖海戦の指揮官であるドン・ファンのほうが後生に名前を残している。

だが、彼は忙しかった。オスマン帝国と戦う一方で、欧州ではオランダやフランス、ドイツでプロテスタントの異端と戦い、本国のスペインでは隠れユダヤ教徒や隠れイスラム教徒の異端の撲滅を図る。

欧州の異端に与する英国の征服を図るが、「無敵艦隊」は英国沖で壊滅する。

彼はポルトガル王女や英国女王メアリーなどと4回結婚、戦争で国家を4回も債務不履行に追い込んだ。波乱の君主の物語。

■2006/12/2, 週刊東洋経済

全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦
全米No.1投資指南役ジム・クレイマーの株式投資大作戦ジム クレイマー James J. Cramer 井手 正介

日本経済新聞社 2006-07
売り上げランキング : 1080

おすすめ平均 star
starお気に入りの一冊に
starバリュー株投資本にプラスしてどうぞ
star原著より安い♪

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米カリスマ運用者の株式投資必勝作戦

最近、日本でも投資に対する意識は非常に高まってきており、書店では投資関連本が所狭しとばかりに並んでいる。しかし、株式投資の実践書としては良書が少ないのが現状だ。その点本書は、数少ない良書のうちの一冊といってよいだろう。

著者のジム・クレイマーは今や全米でも人気者の「カリスマ投資指南役」だ。彼は、投信やヘッジファンドのファンドマネジャーとして、長年にわたって市場平均をはるかに上回った実績があり、彼の失敗談や成功談も含めたさまざまな経験・実績に基づく実践的な指導やアドバイスは、彼の人気の秘密の一つといえよう。さらには、軽妙な語り口と難しいことをわかりやすく説明する能力もまた、彼の大きな魅力の一つである。

ジム・クレイマーの投資手法は分散投資が基本だが、その大きな特徴は、分散投資のポートフォリオの中に20%までだったら、「投機的」銘柄も積極的に取り入れている点だ。この「賢明な投機」を分散投資に巧みに組み込むことによって市場平均に打ち勝つことこそ、まさに彼の投資哲学の真骨頂といえよう。

彼の投資手法のもう一つの特徴は、最近バフェット等の投資手法で一躍脚光を浴びている「バイ・アンド・ホールド」ではなく、「バイ・アンド・ホームワーク」を主張している点だ。彼によると、1銘柄につき1週間に最低1時間は「ホームワーク」が必要であり、分散投資といっても5から10銘柄もあれば十分という。そして「ホームワーク」ができない人は個別銘柄への投資はあきらめ、インデックスファンド等、投信への投資に甘んじるべきと言い切る。

その根底にあるのは、株式投資で財産を築くのは楽なことではなく、強い意思と毎日の地道な努力が必要だという当たり前のことだ。

本書では、マクロ経済動向の分析から、個別銘柄のファンダメンタル分析まで、しっかりとこなす必要があることが繰り返し強調されている。

彼はまた、株式市場にはいつでも多くの儲けるチャンスがあり、個人投資家こそ、そのチャンスを物にするために最も有利な立場にいると主張している。

彼によれば、まったくあてにならない証券会社のアナリスト、限界のある投信やヘッジファンドのファンドマネジャーに頼るのではなく、ハードな「ホームワーク」を自ら課し、実際に自分で確かめ判断すること、そして本書にある基本ルールと規律に従うことによって、それが可能になるという。未熟な日本の株式市場で最近痛い目に遭っている個人投資家には、勇気と希望を与えてくれる一冊だ。【評者 黒田康史 人事プロフェッショナル】

■2006/11/25, 週刊東洋経済

データの罠―世論はこうしてつくられる
データの罠―世論はこうしてつくられる田村 秀

集英社 2006-09
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おすすめ平均 star
starああ毎日新聞
star冷静な批判
starマジックの種明かしを見る面白さ

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「世論調査」や「統計」は本当に信頼できるのか

世論(よろん)はかつては「輿論」と表記された。神輿(みこし)のように人々に担がれて、世上に広く唱えられた、時として無責任な「論」が世論だったのである。だが、輿論が世論(せろん)になり、政治的な意思の表明として一定の正統性を持つようになると、自分たちに都合のよいデータを並べて世論を特定の方向に誘導しようとする勢力が現れ、「データの罠」が出現することなる。

著者の言う「データの罠」には二つのタイプがある。一つは、統計データそのものの特性に由来する「罠」である。統計調査の多くはサンプリング調査なので、調査結果が誤差を伴うのは避けがたい。データの分布に偏りがあれば「平均」は必ずしも統計量として十分な情報量を持ち得ない。このことを踏まえれば、「わずかの数字の差でしのぎを削る視聴率競争」は無意味であるし、「勤労者世帯の平均貯蓄額は1273万円」という報道が生活実感とずれていても不思議ではないということになる。

このような統計そのものの「罠」よりもやっかいなのは、特定の意図をもってデータが「作られる」場合である。著者によれば、国家公務員の定数削減は、国立大学や国立病院が「独立行政法人化にともない国の定数管理の対象から自動的にはずされたために」形のうえで達成されたものに過ぎないという。耐震偽装問題について著者は「お墨付きを与える機関と、お墨付きをもらう組織」の「結びつきを弱めないと、馴れ合いのチェックやいい加減なチェックになりかねない」と指摘しているが、これは政策形成における一部の省庁とその審議会の関係にも当てはまりそうだ。

本書は大本営発表に踊らされて「データの罠」に落ちないためのガイドブックとして、お薦めの一冊といえる。【評者 中里透 上智大学助教授】

■2006/11/25, 週刊東洋経済

下流喰い―消費者金融の実態
下流喰い―消費者金融の実態須田 慎一郎

筑摩書房 2006-09
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おすすめ平均 star
starもはや必須本
star孫引きの孫引き
star消費者金融にノーベル平和賞が貰えるのに、日本は遅れている

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低所得者を食い物にする消費者金融業の実態を暴く

今臨時国会で貸金業法改正法案が成立することはまちがいない。これによって、利息制限法で定めた上限金利を超える金利で、貸金業者が融資することはできなくなる。いわゆるグレーゾーン金利の撤廃だが、裏返して言えば、従来はグレーゾーン金利での融資は実質的に認められてきた。

これは、内閣府令が「利息制限法金利超、出資法金利以内」の金利からの利息を「みなし利息」として是認したからだ。今回、その内閣府令の解釈が無効になった。その論議が高まる背景にあったのは多重債務者問題にほかならない。本書を読むと、問題の本質は決してグレーゾーンという上限金利のダブルスタンダードにあったわけではないことが理解できる。

順法精神を欠いた業者の行動、監督官庁が明確ではなかった制度的な不備、さらに制度の運用のあいまいさ等々、日本の社会そのものが個人向け無担保ローンという領域を自己増殖させていったとしか思えない。

その結果が本書のタイトルにもなっている「下流喰い」、つまり、低所得者を食い物にするような金融ビジネスの跋扈だった。

ある者は生活資金のためにお金を借り続けて、返済のために売春したり、ある者は自殺に追い込まれる。そんな事例が紹介されている。多重債務者の女性を風俗業者の「競り」にかける場面など、衝撃的な記述もある。

紹介事例を読むほどに、構造問題にみえてくる。離婚した母子家庭の生活の困難さは、社会政策の欠如の結果でもあるし、そんな人たちをターゲットとするヤミ金融は高い金利云々という以前に、アングラ勢力の資金作りという意味で違法な存在だろう。本書は、そうした構造問題を平易に読み手に提供してくれている。【評者 浪川攻】

■2006/11/25, 週刊東洋経済

日銀インサイダー
日銀インサイダー本吉 正雄

廣済堂出版 2006-09-26
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おすすめ平均 star
star元・日銀マンの本

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日銀はだれのものか
日銀はだれのものか中原 伸之

中央公論新社 2006-05
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おすすめ平均 star
star唯一の良心が日銀の4年間を振り返り提言する
starよく書けています。

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今や財務省ではなく日本銀行が日本経済の行方を決める存在である。米国ではとっくの昔から、財務省ではなくFRB(連邦準備制度理事会)が「経済の支配者」であるが、日本でも同じような事態になった。

そもそもバブルを引き起こし、崩壊させたのは日銀であり、その動機は、大蔵省(当時)から独立し、それに代わって経済の支配者になろうとした日銀の「陰謀」だ、という説も根強い。

日銀とは何か。何を目指しているのか。それらを元日銀マンの著者が本書で提示している。

中原伸之著『日銀はだれのものか』が、金融政策の舞台裏を暴いた高度な本だとすれば、本書は、日銀マンのインサイダー取引や接待汚職、人事、金融機関いじめなど、日銀の「体質」や「生理」を暴いた本である。

正直、レベルの高い本とは言いにくいが、『日銀はだれのものか』と併読すると、「円の支配者」として君臨する日銀の体質が、理解できるだろう。

■2006/11/25, 週刊東洋経済

ヒトラーとホロコースト
ヒトラーとホロコーストロベルト・S・ヴィストリヒ 相馬 保夫 大山 晶

ランダムハウス講談社 2006-11-09
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著者はイスラエルにあるヘブライ大学現代ユダヤ史教授。ユダヤ人の立場から第二次世界大戦のさなかに起きたナチス・ドイツによる欧州ユダヤ人の絶滅行動を分析する。

1942年初頭、ドイツはモスクワ攻防戦に敗北。同時に米国が参戦したためドイツが戦争に勝利する希望は消えた。ヒトラーは、欧州を征服し、ドイツの生存空間を確保するという主目標と、欧州からユダヤ人を排除するという従属目標を持っていたが、前者の目標が消えてからは、後者の目標を追求する。

このとき、欧州ユダヤ人を助ける勢力はなかった。英米もドイツに対する勝利を優先し、ユダヤ人救出を後回しにした。カトリック教会も「黙認」した。

そして、ドイツがユダヤ人共同体に命令してつくらせた「ユダヤ人評議会」が、ドイツ官僚機構の末端に位置づけられて、ユダヤ人殺害に協力させられた。こうした人類史上、類例のない悲劇の原因を分析する。

■2006/11/25, 週刊東洋経済

ピークフリー社会―人口減時代の新ライフスタイル
ピークフリー社会―人口減時代の新ライフスタイル電通消費者研究センター

丸善プラネット 2006-09
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現在の日本は、右肩上がりの成長モデルが崩れ、少子高齢化や人口減といったインパクトに直面し、日本人の生活価値観は根本的変化の兆しを示しつつある。

横並びで成長や達成を目指す「一極ピーク志向社会」から、個々人の価値観やライフスタイルに即したマイピークを発見・追求する「ピークフリー社会」への舵取りが個人にも組織にも必要となっている。

「ピークフリー」とは、「勝ち組・負け組」という言葉に象徴されるような、従来の唯一絶対のピーク観にこだわらない自分なりの目標や生き方を設定して進んでいく生活意識や行動を意味する。

個々人がそれぞれベクトルを持ちつつ、連携・調和が図られる生活や社会は、その目標を「富士山登頂型」から「連峰縦走型」へと転換することによって実現される。

団塊の世代やその前後の世代の方々にはもちろん、幅広い年齢層に読んで欲しい本だ。

■2006/11/25, 週刊東洋経済

軍犬ローマ号と共に―ビルマ狼兵団一兵士の戦い
軍犬ローマ号と共に―ビルマ狼兵団一兵士の戦い志摩 不二雄

光人社 2006-10
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太平洋戦争期の軍馬について聞いたことがあるが、軍犬は寡聞にして知らなかった。だが、軍犬は、戦場で行方不明の戦友の捜索、敵兵への警戒や攻撃など、実に重大な任務を果たす。

本書の著者は、昭和18年6月、4頭の軍犬とともにビルマ戦線に従軍する。彼の担当は、ローマ号という6歳の黒毛のシェパード犬であった。嗅覚の敏感なことは軍犬の中で随一であるこの犬が唯一無二の親友となる。

部隊が移動中、敵の奇襲攻撃を受け、著者とローマ号は本隊と離れ離れになる。日本軍の形勢不利を受けて、親日的なビルマ軍の離反、ゲリラ化した現地人の跳梁、日本軍の脱走兵などとの遭遇で幾度も命の危機を忠実なローマ号に助けられ、ようやく本隊を発見する。だが、老年のために動けなくなったローマ号は、著者が偵察隊員として出かけているうちに、いつの間にかいなくなる。著者を求めてか、全くの行方不明であった。

■2006/11/25, 週刊東洋経済

国際NGOが世界を変える―地球市民社会の黎明
国際NGOが世界を変える―地球市民社会の黎明功刀 達朗 毛利 勝彦

東信堂 2006-08
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著者に聞く 『国際NGOが世界を変える』(東信堂)の共同編著者である 国際基督教大学 COE客員教授 功刀達朗さん

国際ガバナンスの最前線を知る

――国際NGOに関する本はまだ少ないです。

本書を刊行したのは、国際NGOの役割が世界で認知され、すでに大きな影響力を持っているのに、日本では十分に知られていないからです。現代世界では、国家、国際機関に加え、グローバリゼーションの波に乗って、NGOと企業体が主要な社会的アクターになっています。それぞれが参加、協力した国際的なガバナンスがうまく機能するかどうかで、世界は良くも悪くもなります。

――協働するうえで重要なポイントは何でしょうか。

国連は各国の利害調整もしますが、利害を超越した形で、地球社会の利益を追求します。特に貧困削減と弱者の保護に力を入れています。国際NGOも目標が同じで、その点、国連とは協働しやすい関係です。ただ、異なったアクター間では、互いの個性、能力を認め合ったうえで、どう相乗効果を導き出すかが肝心です。力関係で片方に引きずられ、片方が下請けになってしまうようではいけません。食べ物の食い合わせが悪く、中毒を起こすような事態になってもいけないのです。その意味で、シナジー効果をどう構築して、管理、運営していくかが、重要なポイントになってきています。

――本書の大きな特色は執筆者の大半が、ピースウィンズ、オックスファム、アムネスティ、オルタモンドなど世界有数の国際NGOの最前線で活躍している日本人であることです。

彼らのビジョンと試行錯誤の苦労談も入っていますし、今後の地球市民社会形成を担う若い世代へのメッセージも含めていただきました。

――副題に「地球市民社会の黎明」とありますが。

国際基督教大学では近年「グローバルガバナンス論」というコースを日本で初めて創りましたが、これに関連し、私が1993年度に「国際NGO論」を開講した原点は、国連事務総長の特別代表として、カンボジアで人道援助を行った経験にあります。カンボジアとタイの国境には、当時二十数万人の難民がおり、カンボジア国内では飢餓と保健衛生が深刻な問題でした。そこで知ったのは、国連が国際NGOを頼り、お世話になっている現実でした。国際NGOは現地について専門的な知識を持ち、食糧、水、医療などの必要量を正確に見積もったり、人道援助の実施を献身的に手伝ってくれたのです。

これからのグローバルガバナンスは、従来の国家主権論から離れて、地球市民の福利に主眼を置いて解決を模索することです。トップダウンで物事を処理するアプローチではなく、さまざまなアクターと横の関係を築いて、物事に対処する。共生の原理で、互いの違いを認め合い、持ち味を活かし合って、事にあたらねばなりません。国際社会におけるリーダーシップが内外で欠如していますが、これからの国際的なリーダーシップは、ある方向性を示し、多面的、重層的に活動する多様な主体に働きかけ、支持と信頼を得ながら、目標を実現することだと思います。実際、国連と国際NGOの協働はその力強い推進役となっています。

■2006/11/25, 週刊東洋経済

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