メイン > 週刊東洋経済書評 『ブックレビュー』 > 2006年10月14日~10月21日

マイモニデス伝
マイモニデス伝A.J. ヘッシェル 森泉 弘次

教文館 2006-07
売り上げランキング : 173584

おすすめ平均 star
star迷える者のための道案内

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後世に多大の影響を与えた中世最大のユダヤ人哲学者

夜の大教室。必ずしも哲学や宗教を専攻としているわけではない学生たちに向けて、評者はこんな文章を読み上げる。

「現代のユダヤ人意識そのものが混濁している。現代ユダヤ人の不安な魂は〈人々の投げつける石から律法を護るために〉マイモニデス(1135~1204年)が12世紀に築いた壁のなかに、その避難所と慰安を見出すことができる。マイモニデスはアリストテレスと聖書とのかの和解を果敢に遂行した」

これは20世紀の代表的ユダヤ人哲学者E・レヴィナスが、1935年に発表した「マイモニデスの現代性」の一節である。

多分マイモニデスの名を初めて聞いたであろう学生たちに、評者は、「タルムード」と呼ばれるユダヤ教解釈学の広大な運動について、マイモニデスの時代の地中海沿岸の複雑な情勢について、マイモニデスの放浪について、彼がアラビア語で書いた理由について、マイモニデスの多才について、「宗教的法悦よりも慎重さ、熱狂よりも論理、神秘よりも文法」を重んじるマイモニデスの立場とその反対者たちについて、一種の「階型理論」によってアリストテレス的「不動の動者」と「無からの創造」を両立させる彼の知的戦略について語りかける。彼らのなかでいつか数々の意想外な接合や連想や応用が生まれることを期待しながら。

訳者も述べているように、本書の著者ヘッシェルはレヴィナスとほぼ同時代を生きた偉大なユダヤ人思想家で、何よりもまず、一方は反ハシディズム、他方は親ハシディズムを標榜するこれら二人の思想家が同じ年にマイモニデス論を書いているのは実に興味深い。

評者自身は、レヴィナスを通じてマイモニデスを読む必要を感じて、『迷える者たちの道案内』『ミシュネー・トーラー』の仏語訳や、J・グットマンの『ユダヤ哲学』など二次文献を通じてマイモニデスの思想を齧ってきたにすぎないが、あのトマス・アクィナスに多大な影響を与え、H・コーエン、L・シュトラウス、さらにはデリダの関心を引きもしたこの中世最大のユダヤ人哲学者について、これまでわれわれは、アラビア語原文からの翻訳はもとより、本格的な伝記や参考書さえ持つことがなかった。

その意味で、本書の訳出は画期的な意義を有している。ユダヤ思想の専門家だけではなく、「危機の宗教」「宗教の危機」の時代にあって、宗教的実存、宗教的叡智の何たるかを考え直すために恰好の良書である。訳文も明解で、年譜の添付など読者への配慮も行き届いている。スピノザとの関連についてはもっと語って欲しいところだが。【評者 合田正人 明治大学教授】

■2006/10/21, 週刊東洋経済

イェール大学CFOに学ぶ投資哲学
イェール大学CFOに学ぶ投資哲学デイビッド・スウェンセン 瑞穂 のりこ

日経BP社 2006-08-18
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おすすめ平均 star
starみんな投信に食い物にされている。
star投信は買わない方がいい

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米国投信の実証分析 勝つポートフォリオとは

「貯蓄から投資へ」のかけ声の下、世はまさに投資信託ブームだ。しかし個人投資家は数ある投信をどう選択し、組み合わせたらよいのだろうか。こうした問いに答える指南書が本書である。資産運用に関わるものにとって今やバイブル的な「勝者のポートフォリオ運用」を書いたイェール大学の年金運用者として名高い著者が、今度は投信の種々の実証分析を利用して、個人投資家のために書いたものである。

著者は、米国労働者が退職資金を自己責任の下で運用せざるをえなくなった現実に鑑み、合理的な投資の枠組みを説く。それは、〔1〕分散を十分に効かせ、〔2〕株式を中心にし、〔3〕パッシブ型に投資し〔4〕利益追求型でない運用をする会社を選ぶ。これらを考慮したモデルプランは、米国株式30%、外国株式(先進国)15%、同新興国5%、不動産20%、国債15%、物価連動国債15%というものだ。

これらはコア資産と呼ばれ、これら以外の非コア資産(外債、オルターナティブなど)に対し著者は完全に否定的である。

情報や時間に制約のある個人投資家はどう投資信託を選ぶべきか。著者は積極運用型の投信がインデックス投信になぜ勝てないかを、執拗なまでに詳述する。信託報酬、取引コストなどの目の見えるコストと目に見えないコストのために、市場平均を目指すインデックス投信に勝つのは至難の業であり、勝てるファンドを探し出すのは一層困難である。

したがってコスト高の積極型よりコストの安いインデックス型がお勧めということになる。わが国の積極型投信が米国と同様の状況かどうかは、まず投信の詳細な実証分析が必要だ。著者は日本で今はやりの毎月分配で再投資型の投信の話を聞いたら腰を抜かすかもしれない。【評者 鷹真琴 ファイナンシャルコンサルタント】

■2006/10/21, 週刊東洋経済

トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇
トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇『週刊東洋経済』村上ファンド特別取材班

東洋経済新報社 2006-07-28
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おすすめ平均 star
star村上批判本です。
starさすがの東洋経済
star村上氏の正体とは…テレビのイメージと現実

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村上ファンドの実態を解明 「劇場型買い占め」を批判

村上ファンドとはいったい何であったのか。それは福井俊彦日銀総裁や宮内義彦オリックス会長などを巻き込んで大きく報道されたが、いまでも村上世彰氏を、日本のコーポレートガバナンスを改革しようとした「志ある若者」として評価する向きがある。そして、村上氏を摘発した東京地検のやり方を「国策捜査」だと批判する人もいる。

これに対し本書は村上ファンドの手口を徹底的に解剖することで、その無法者ぶりを暴いており、読んでいて小気味良い。

村上氏の生い立ちから、東大、通産省時代の人脈を詳しく追っており、福井日銀総裁や宮内オリックス会長との関係についても詳細に解明している。

村上ファンドが行った株の買い占めは昭栄から始まって東京スタイル、そしてニッポン放送、TBS、さらに阪神電鉄株にまで発展していったが、その手法は、株価をつりあげることで短期的に儲けるというやり方である。アメリカのアクティビスト・ファンドが長期投資であるのに対し、村上ファンドは短期投資であるという指摘もなるほどと思われる。

村上ファンドのやり方はマスコミを巻き込んで、騒ぎを大きくすることで株価をつりあげるというもので、それはまさに「劇場型買い占め」であった。

それに利用されたマスコミ関係者が多いのだが、本書の記者たちは、このようなマスコミのあり方に対しても厳しい目を向けている。昨年から今年にかけてライブドアや村上ファンド、楽天などの動きがマスコミで大きく取り上げられたが、なぜこのような株の買い占め事件が次々と起こったのか。本書では、村上ファンドはいわゆる金融ビッグバンが生んだ「時代の徒花」だとしているが、日本の株式会社の矛盾がこのような事件を生んだのではないか。【評者 奥村宏 株式会社研究家】

■2006/10/21, 週刊東洋経済

剛腕維新
剛腕維新小沢 一郎

角川学芸出版 2006-08
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おすすめ平均 star
star安倍政権誕生で小沢党首の「繊細な」活躍に期待する!
starモノ足りない
starまずは、小沢一郎の考え方を知る

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小沢一郎氏が『夕刊フジ』に書いているコラム「小沢一郎の剛腕コラム」(2003年から06年6月)をまとめて単行本にしたもの。内容は、政治、経済、外交、安全保障、格差、教育など、日本が抱えるさまざまな問題に対して大胆な提言を行い、国民のため、国益のため、日本の進むべき道を示している。

こうした提言の根底にあるのは、著者の日本社会に対する鋭い危機感である。日本社会はモラルの崩壊を引き起こしており、それは一般国民ばかりでなく、政界、官界、財界にも広く及んでいる。その傾向は、言葉を弄び、実態から目をそらすことに終始した小泉政権の時代に、さらに強まったと危惧する。

こうしたあしき潮流を断つためには政権交代を行い、日本の体制を一度リセットしなければならない、という。「日本に残された時間は少ない。しかし、何としてでも抜本的改革を成し遂げなければならない」と著者は訴える。

■2006/10/21, 週刊東洋経済

ハリウッドで勝て!
ハリウッドで勝て!一瀬 隆重

新潮社 2006-08-17
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おすすめ平均 star
star体験すること…
star期間2年のCEO

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ホラー映画の新潮流を築いた『リング』などをプロデュースした一瀬隆重氏の半生紀である。いまやハリウッドで最も成功した日本人として脚光を集めるが、1990年代初めに米国に乗り込んだときは、4年で撤退を余儀なくされた。

その試行錯誤の連続から、『リング』以降の成功が決して運だけでは得られなかったことが見て取れる。本書はハリウッドと、日本の映画制作システムの違いについても言及する。

米国では事前の観客アンケートの結果次第で作品の内容を変更する手法を「ハリウッドのビジネスエリートが作品に自信を持っていない証拠」と、一刀両断。

邦画については、ヒット作の多くがテレビ局主導で制作されていることを危惧し、「近い将来、日本映画はもう一度観客の信用を失うことになる」と言い切る。業界環境には手厳しい指摘が相次ぐものの、制作現場への視線は優しい。映画ビジネスに関心を持つ人には必携の書である。

■2006/10/21, 週刊東洋経済

お世継ぎのつくりかた―大奥から長屋まで 江戸の性と統治システム
お世継ぎのつくりかた―大奥から長屋まで 江戸の性と統治システム鈴木 理生

筑摩書房 2006-09
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タイトルよりも、サブタイトル「江戸の性と統治システム」が、本書の内容をとらえている。本書では、約300年続いた徳川政権の根底にあった「男女間の壮絶な闘い」が綴られている。

好色と子沢山で知られる徳川家康に限らず、この時代の武家は一夫多妻妾制であった。後継者が産まれなければ家の継続は絶たれるため、女性の階級・階層を問わず、その「腹を借りて」男子を産ませる必要があったという。また、女持ちの氏族も「その男に似合う適齢の女を『投資』」したと著者は語る。

徳川家は養女を抱え、それらにも男子をつくらせた。そして、その資質に応じて要所に据えることで政権を維持しようとした。まさに、「経営者として頼れる部下は、わが血を引くもの」という戦国乱世を生き抜いた武将の思考が、全編を通じて浮かび上がる。ただ、現代と「江戸資本主義」の類似性を分析するとの著者の試みは、論旨がやや飛躍している感が否めない。

■2006/10/21, 週刊東洋経済

シクロフスキイ 規範の破壊者
シクロフスキイ 規範の破壊者佐藤 千登勢

南雲堂フェニックス 2006-07
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知覚が日常の中に閉ざされ、習慣化され、新鮮さを失うといったもどかしい状況を「自動化」された現象という。このような「自動化」を否定するための方法として「異化」という手法をとらねばならない。つまり、無意識的、受動的な日常的知覚を意識的な芸術的知覚に変えるための「異化」の理論を提唱したのは、ロシア革命の勃発した1917年、ロシアの若き評論家・作家のヴィクトル・シクロフスキイであった。

このロシア・フォルマニズムの中核をなす「異化」という概念は、帝政の崩壊を背景に、文学における伝統形式の破壊と権威の転覆を呼びかけ、1920年代前半の文学・芸術に決定的な影響を与えたと言われている。

しかし、30年代になり、社会主義リアリズムによって断罪され、シクロフスキイは56年のスターリン批判までは沈黙を守らねばならなかった。その生涯は規範の設定と破壊の永続革命であった。

■2006/10/21, 週刊東洋経済

ザ・キムラカメラ
ザ・キムラカメラ木村 恒久

パロル舎 2006-07
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おすすめ平均 star
star“パロディー”がまだまだ手法として有効だった時代

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魔術的フォトモンタージュ 過激な30年の軌跡

本書のカバー作品からど肝を抜かれる。ニューヨークの摩天楼が洪水に襲われている。それは近年のSFパニック映画『ディープインパクト』そっくりの光景だ。著者木村恒久によるタイトルは「都市はさわやかな朝を迎える」。

この作品の初出は1975年。地球温暖化による水害の恐怖を目の当たりにすると、この画像には予言めいたものを感じる。

予言といえば85年の作品「ニューヨークの晩鐘」が収められている。崩壊したワールドトレードセンターが夕陽のなかに屹立し、その前の荒地で農夫が祈りを捧げている。ミレーの名作「晩鐘」のパロディーなのだが、9・11事件を予感したものか。木村の無気味な透視力にあ然とする。「写真はミステリアスなブラックボクスの魔術だ」という木村。驚くのはデジタル技法の近作をのぞけば画像は写真を手作業で切り貼りしたものだということ。

フォトモンタージュの巨人木村のテーマは、戦争、政治、経済、エコロジー、風俗流行など時代のシリアスな話題から人々の日常までにわたっている。それは木村の知的関心の幅と貪欲な好奇心がそうさせているのだろう。

写真のモンタージュといえばベルリンのダダイストでナチスドイツを揶揄し、批判したジョン・ハートフィールドが創始者だといわれる。彼へのオマージュのように、木村は戦後世界と日本の事象を大阪人のユーモアと諧謔でするどく風刺してきた。木村は今年78歳。みずから暗箱=カメラと化したキムラカメラのグラフィックなアジテーションはまだまだ続きそうだ。同名の本は79年に上梓され(パルコ出版)、本書はその後の作品を含めて再編集された。【評者 写真家 中川道夫】

■2006/10/21, 週刊東洋経済

【東洋経済新報社からの近刊本】

BRICs富裕層―爆発する巨大市場を攻略せよ
BRICs富裕層―爆発する巨大市場を攻略せよ門倉 貴史

東洋経済新報社 2006-10
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新世代富裕層の「研究」―ネオ・リッチ攻略への戦略
新世代富裕層の「研究」―ネオ・リッチ攻略への戦略宮本 弘之 尾日向 竹信

東洋経済新報社 2006-10
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おすすめ平均 star
star初めて役に立った富裕層本。

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日本とBRICsの富裕層を研究する

多くの企業がターゲットとする富裕層。そのライフスタイルや消費行動などをグローバルな視点で研究し、ビジネスに生かすべく執筆された本をご紹介しよう。

その本とは『BRICs富裕層』(門倉貴史著)。BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)は、今や消費の中心地として注目されている。その理由は「富裕層」「ニューリッチ」の出現だ。急速な経済発展の波に乗り、豊かな生活を享受する彼らは、自動車など高単価商品を積極的に購入する。総人口に占める割合は小さくても人口規模が大きいため、「富裕層」のトータル数は多くなる。

その豊かな層に対し、ビジネスを仕掛けない手はない。本書はBRICs富裕層へ、どのようにビジネスを展開すべきかを解説する興味深い書である。

関連書に、日本のお金持ちに焦点をあてた『新世代富裕層の「研究」』(野村総合研究所 宮本弘之+尾日向竹信著)がある。こちらは、金融機関や金融サービス業に携わる方々にご一読いただきたい書である。

■10月10日発売

図解 コンプライアンス経営
図解 コンプライアンス経営浜辺 陽一郎

東洋経済新報社 2006-10
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新世代富裕層の「研究」―ネオ・リッチ攻略への戦略
新世代富裕層の「研究」―ネオ・リッチ攻略への戦略宮本 弘之 尾日向 竹信

東洋経済新報社 2006-10
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おすすめ平均 star
star初めて役に立った富裕層本。

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■10月16日発売

出会いをドラマに変える2分の法則―第一印象の心理術
出会いをドラマに変える2分の法則―第一印象の心理術植木 理恵

東洋経済新報社 2006-10
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おすすめ平均 star
star第1印象に悩んでいる人にはとにかくおすすめ

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BRICs富裕層―爆発する巨大市場を攻略せよ
BRICs富裕層―爆発する巨大市場を攻略せよ門倉 貴史

東洋経済新報社 2006-10
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企業分析シナリオ―Financial Analysis
西山 茂 (著)

コーポレートガバナンスの評価に基づいた投資のすすめ―銘柄選択の新潮流
アレクサンダー・フラッチャー (著)

世代間最終戦争
立木 信 (著)

■10月23日発売

観想力 空気はなぜ透明か
観想力 空気はなぜ透明か三谷 宏治

東洋経済新報社 2006-10-20
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■2006/10/21, 週刊東洋経済

日本経済は本当に復活したのか
日本経済は本当に復活したのか野口 悠紀雄

ダイヤモンド社 2006-08-25
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おすすめ平均 star
starもちろん、「復活していない」
star気になるあとがき

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市場経済の立場から日本経済の現状を批判

近ごろ「正論」という言葉が右寄りのナショナリズムと同義で使われるようになってきたのは大変残念なことである。本書は本来の意味での「正論」を明快な理論モデルと精緻な論理構成によって堂々と展開した好著である。野口があとがきで述べているように、論理が「風」に弱くなり、その多様性を失ってきていることに評者も強い危機感を持っている。その意味でもこの野口の「正論」は貴重なものだし、読後感が極めて爽快である。よく言ってくれたと、胸がすっとするような指摘が幾つもある。

「企業が行う寄付は本当の寄付か」の中で野口は次のように述べているが、誠に正論である。 「(株主に容認される企業の寄付は)間接的に利益に貢献すると考えられるから、企業が行うことが認められる寄付である。こうした活動は実のところ広義の『広告宣伝』にほかならない。これは企業の『社会的責任』ではなく、利益活動の一環である」。

返す刀で野口は「財界団体などは必要ではない」という彼の持論を展開する。

「それに、経団連、『財界』というものの存在自体が、そもそも時代錯誤的だ。経団連の歴史をさかのぼっていくと、一九四〇年ころに形成された戦後経済体制に行き着く。財界や経団連に重要な役割が期待されている限り、日本にマイクロソフトやシスコ型の企業が誕生することはないだろう。『財界』という言葉が死語となり、経団連のような組織が消滅するとき、日本の産業構造が初めて未来に向かっての歩みを始めるときだろう」

企業はルールを守って利益を上げることが使命であって、偽善的な「社会貢献」などは必要ないという論理は極めて明快である。野口のモデルがかなりアメリカ的なのは気になるが、ライブドアなどの事件についての彼の評価は極めて厳しい。ライブドアを賞賛した日本社会の体質を批判し、「企業価値は錬金術で高まることがない」と切って捨てる。

ライブドアとグーグルを比べるのは、グーグルに失礼だが、野口の言うようにこれと同じようなコンテクストで見る日本人が少なかったのは確かである。

一見、かなり極端な議論のように思える部分が少なくないが、市場メカニズムと市場のルールを重視するエコノミストの立場からすれば、野口の多くの立論はまさに正論である。

特に日本の企業がIT革命に対応できておらず、メインフレームから分散型へ、あるいはオープンシステムへの流れに遅れてしまっているという指摘には多くの経営者が耳を傾けるべきであろう。【評者 榊原英資 元大蔵省財務官】

■2006/10/14, 週刊東洋経済

ドイツ病に学べ
ドイツ病に学べ熊谷 徹

新潮社 2006-08-24
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おすすめ平均 star
starそして日本はどこへ行くのか
starこの国の姿 ドイツと日本
starドイツ社会の全体像

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ドイツ病は日本の近未来ドイツの苦闘から学ぶこと

書は、「ドイツ病」、すなわち1990年ごろからのドイツ経済の構造的な停滞の症状と治療の進展状況、治癒の見通しを論じたものである。戦後の急激な経済復興、バブル崩壊後の構造的不況を経て、少子高齢化や新興国の追い上げという共通の課題への対応を迫られる日本が、ドイツの経験から何を学べるのかも本書のテーマの一つである。

筆者は、低成長・大量失業という「ドイツ病」の症状は、企業の生産拠点の中東欧などへのシフトによるもので、「元凶」は、「グローバル化の影響を完全に見過ごし」、社会保険料負担に押し上げられた割高な労働コストや企業に対する高課税、企業活動への過剰な規制の見直しを怠ったことにあるとする。

治療への取り組みは、98年に誕生したシュレーダー左派連立政権の下で本格化、戦後最大の社会保障制度改革が実施された。しかし、有権者は、総論では改革の必要を認めながらも、「ドイツ病」の裏側にある手厚い社会保障制度や短い労働時間、労働者の権利保護などの既得権の放棄には抵抗がある。

2005年9月の連邦議会選挙で、改革の必要性を説いた与野党ともに過半数の支持を獲得できない結果に終わったのは、「国家依存症の甘い毒」が「ドイツ人の心に浸透している」表れであり、それだけに「ドイツ病の治癒には相当な時間がかかる」というのが筆者の見方だ。

本書の最大の特徴は、16年にわたりドイツに住み、取材・執筆活動を続けている著者ならではの生活実感や身近な実例が豊富に盛り込まれ、理解の助けとなる点にある。「ライン型資本主義」と呼ばれるドイツ経済と、アメリカ型の「アングロサクソン型資本主義」や日本のシステムとの比較という視点も提供してくれる。【評者 伊藤さゆり ニッセイ基礎研究所主任研究員】

■2006/10/14, 週刊東洋経済

アレクサンドリアの風
アレクサンドリアの風池澤 夏樹

岩波書店 2006-07
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「地中海の花嫁」の過去と現在を美しく描写

「わずかに気候風土のみが、涼しい北風と海のみが、三千年前の昔と変わらぬ清らかさを保っている」(E・M・フォスター著『アレクサンドリア』より)。

中川道夫の写真集『アレクサンドリアの風』を眺めていて思い起こした一節である。「地中海の花嫁」と呼ばれるエジプトの港町アレクサンドリアは幾多の戦の度に劇的にその外観を変えてきた場所であり、この写真集の中には、崩壊しては誕生していった過去のアレクサンドリアが二重写しのように焼きつけられているように見える。

国際都市として無数の文化が入り乱れて存続してきた港町はいたるところにギリシャ時代やローマ時代の痕跡を残しており、写真の中の人々は、時間が折り重なった無数の遺物と共に暮らしている。

写真家の冷徹な眼は過去の姿を留めたわずかな痕跡の中に、一時も留まらぬかりそめの都市の中に、層のように折り重なった、その場所を垂直に貫く時間を嗅ぎとり、亡霊となっては消えた無数のアレクサンドリアの「おもかげ」を現像してゆく。

フォスターの言葉にあった昔と変わらずに吹く北風こそが大理石の街を風化させ、その姿を徐々に変容させてきたものであろう。「アレクサンドリアの風」は木々と波として見えるのであり、我々は風それ自体に焦点を合わせることはできない。そして、三千年の長きにわたり、アレクサンドリアの姿を変え続けてきた不可視の風こそが歴史と呼ぶべきものである。この写真家がレンズを通して見ようとするのは「ここではないどこか」にある幻想の都市ではなく、新陳代謝を繰り返し、脈々と存在し続けてきた現実の都市の歴史にこそある。歴史とは我々の背後で、我々があずかり知らぬところで吹く、写真に写らぬ風のようなものではないだろうか。【評者 小原真史 映画監督・写真批評家】

■2006/10/14, 週刊東洋経済

インドビジネス―驚異の潜在力
インドビジネス―驚異の潜在力島田 卓

祥伝社 2006-08
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おすすめ平均 star
star混沌をほぐす手がかり

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BRICsの一角であり、IT人材の宝庫として脚光を浴びているインド。 だが、日本人にとってインドビジネスはわからないことばかり。著者は1991年から東京銀行ニューデリー支店次長として現地に駐在。自由化によるインド経済の変動を目の当たりにする。その後97年に退社してインドビジネスのコンサルタント会社を設立した。日本におけるインドビジネスの草分けであり、インド政財界に幅広いネットワークを持つ。

そんな著者が実体験をベースにインドビジネスのノウハウを平易に解説したのが本書だ。本書は2部構成。

第1部はエッセイ風にまとめられており、「カーストよりコストが上?」、「インド経済をダメにしたネルー親子」など興味深いテーマが続く。第2部はインド全般についての解説。政治・経済・宗教といった教科書的な内容だけでなく、インド映画についての解説もある。インドビジネスを知るために、役に立つ。

■2006/10/14, 週刊東洋経済

ならず者国家―世界に拡散する北朝鮮の脅威
ならず者国家―世界に拡散する北朝鮮の脅威ジャスパー ベッカー Jasper Becker 小谷 まさ代

草思社 2006-09
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外交、人権擁護、大量破壊兵器などに関する国際秩序を守ろうとしない「ならず者国家」、北朝鮮。英国人ジャーナリストである著者が脱北者へのインタビューなどを基に、べールに包まれた「謎の国」の全貌を徹底的に解明している。

「邪悪な暴君」金正日の正体に迫るアプローチは読み応えがある。父である金日成との微妙な関係、好き放題の退廃的な生活と多方面に切り込み、「金王朝が永続するようなことになれば、北朝鮮への打つ手はなくなる」と言い切る。

さらに、経済崩壊の事実にも肉薄。慢性的な食糧不足を指摘し、「餓死者が300万人にも上る」との脱北者の証言も紹介する。経済状況が緊迫しているとは漠然と想像していたが、ここまで深刻で、かつ背景には大量虐殺ともいえる金政権の無作為があるのかと、愕然とさせられる内容だ。 全編を通じて、「北朝鮮の意図に対する世界の無関心を打ち砕きたい」という著者の思いが貫かれている。

■2006/10/14, 週刊東洋経済

60歳からのチャレンジ起業―いまからでも遅くない!
60歳からのチャレンジ起業―いまからでも遅くない!津田 倫男

ベストセラーズ 2006-08
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著者は大手銀行、外資系銀行に勤務した経営コンサルタント。多くの企業と経営者を見てきた。

著者は、50歳代、60歳代からの起業は低リスクだ、という。起業は60歳からでも決して遅くないのだ。

著者の基本的な視点は、定年退職後の人生は結構長く、家で「粗大ゴミ」扱いされるより、「楽々起業」をしたほうが本人にとっても社会にとっても有益である、ということだ。

しかも中高年サラリーマンは、会社で経験を積み、人脈もある。若者に比べてリスクは小さいと励ましてくれる。だが、そのためには戦略と戦術、そして起業家になるあなた自身の心構えが必要だ、という。

著者は、独立・起業するための四つの大前提と三つの心構えから説く。

そして、ヒト、モノ、カネに関する具体的な扱い方を教える。「社員の過ちは2回まで許す」「2度目の裏切りは許さない」など教訓に富んだ教えがある。類書にない深さがある。

■2006/10/14, 週刊東洋経済

禿鷹狩り―禿鷹〈4〉
逢坂 剛 (著)

逢坂剛の「悪徳刑事シリーズ」第4巻目。主人公は禿富鷹秋。通称ハゲタカ、神宮警察署・生活安全特捜班の警部補であるが、実は渋谷一帯を仕切る暴力団を翻弄する悪徳刑事である。

よくもこんな極悪非道なことを冷酷にやり遂げるものだと呆れさせられる。

冒頭部でヒットマンに襲われ、その男を殺し、しかも雇い主からまんまと「禿富殺害の礼金」1000万円をせしめた禿富警部補。彼の芳しからぬ噂が本庁に届くが、それを糾弾すべき具体的な証拠が何もなく、外部に知られないように内々に調査するよう密命を受けたのが、女性刑事の岩動寿満子警部だ。

彼女も禿富の関係する暴力団と対立する南米マフィアを手足に使っている。両悪徳刑事の息をのむような虚々実々の駆け引きが繰り広げられる。結末は、この種の小説のゆえに明かすわけにいかないが、果たして誰が何のために罠を仕掛けているのかとしばし考え込むこともあった。

■2006/10/14, 週刊東洋経済

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